(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0018】
(1)第1の実施の形態
(1−1)本実施の形態によるロボットシステムの構成
図1において、1は全体として本実施の形態によるロボットシステムを示す。このロボットシステム1は、テーブル2に固定されたワーク(被加工物)3に対してバリ取りなどの所定の加工処理を施すロボット4と、当該ロボット4の動作を制御するロボット制御部5とから構成される。
【0019】
ロボット4は、基台10上に設置された多関節のロボットアーム11を備え、当該ロボットアーム11の先端にフランジ部12を介して力覚センサ13が固定されている。また力覚センサ13には、スピンドルモータ14を介して手先工具15が交換自在に取り付けられており、これにより手先工具15がワーク3に接触したときに手先工具15がワーク3から受ける負荷の大きさを力覚センサ13によって計測し得るようになされている。
【0020】
ロボット制御部5は、制御装置6及びコントローラ7から構成される。制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)20及びメモリ21等の情報処理資源を備えるコンピュータ装置であり、例えばパーソナルコンピュータから構成される。制御装置6は、図示しないCAD(computer aided design)システムから与えられたCADデータと、力覚センサ13から与えられる計測値と、コントローラ7から与えられるロボット4の位置及び姿勢を表す位置及び姿勢データとに基づいて手先工具15を移動させるべき軌道を計算し、かかる計算により得られた軌道データをコントローラ7に通知する。
【0021】
コントローラ7は、制御装置6と同様に、CPU22及びメモリ23等の情報処理資源を備えるコンピュータ装置であり、例えばパーソナルコンピュータから構成される。コントローラ7は、制御装置6から与えられる軌道データと、ロボット4内の図示しない各センサから取得した上述の位置及び姿勢データとに基づいて、手先工具15が制御装置6により算出された軌道上を移動するようにロボット4の位置及び姿勢を制御する。
【0022】
(1−2)本実施の形態による力覚センサ検査方式
次に、かかるロボットシステム1において定期的(例えば1日に1回)に実行される力覚センサ13の検査処理(以下、これを力覚センサ検査処理と呼ぶ)について説明する。
【0023】
上述したロボットシステム1において、ロボット4が手先工具15をテーブル2の上面等の所定の押当て面に垂直に押し当てる動作を行った場合、手先工具15が押当て面から受ける反力は、押当て面に対する手先工具15の押当て方向(押当て面と垂直な方向)と反対方向の力のみであるため、力覚センサ13が正常に機能しているときには、力覚センサ13によって手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分がほとんど計測されない(理想的には0)。
【0024】
一方、力覚センサ13に異常が発生しているときには、ロボット4が手先工具15を所定の押当て面に垂直に押し当てる動作を行った場合、力覚センサ13によって手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分が計測される。これは力覚センサ13内の不具合が生じたセンサ素子から誤った電圧レベルの信号が出力され、この信号に基づいて任意の座標系における各方向成分を算出する際に、誤差成分が各方向に分散されるため、本来生じるはずのない押当て方向と垂直な方向の力成分を検出したかのような算出結果となることに起因する。このとき押当て方向の力成分にも誤差成分が混入しているが、別の手段により真の押当て力を計測できなければ、押当て方向の力成分における誤差成分の有無は判別することができない。
【0025】
そこで、本実施の形態によるロボットシステム1では、ロボット4のロボットアーム11の先端に取り付けられた手先工具15を、傾き角が既知の押当て面(以下、テーブル2の上面とし、これをテーブル面と呼ぶ)に垂直に押し当て、このとき力覚センサ13により検出される、手先工具15がテーブル面から受ける当該手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分の大きさに基づいて、力覚センサ13に異常が発生しているか否かの判定を行う。
【0026】
具体的に、本実施の形態によるロボットシステム1では、まず、ロボット4の手先工具15をテーブル面に接触させない程度に近付けた状態で、当該手先工具15をテーブル面に押し当てる姿勢をロボット4にとらせる。そしてこの状態における力覚センサ13の計測値を取得し、記憶しておく。
【0027】
このときの力覚センサ13の計測値
SF
0は、力覚センサ13が6軸力覚センサであるものとして、次式のように表すことができる。
【数1】
【0028】
なお(1)式において、F
x0、F
y0及びF
z0は、力覚センサ13により計測されたセンサ座標系Σ
S(
図2参照)のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の力をそれぞれ表し、T
x0、T
y0及びT
z0は、センサ座標系Σ
SにおけるX軸回りのトルク、Y軸回りのトルク及びZ軸回りのトルクをそれぞれ表す。
【0029】
また(1)式において、左上の添え字はその座標系を表す。例えば、
図2に示すように、「E」はフランジ部12に固定された座標系(以下、これをフランジ座標系と呼ぶ)Σ
Eを表し、「S」は力覚センサ13に固定された座標系(以下、これをセンサ座標系と呼ぶ)Σ
Sを表す。また「TCP」は手先工具15の先端近傍に設定されたツール・センタ・ポイント(Tool Center Point)を原点とする座標系(以下、これをTCP座標系と呼ぶ)Σ
TCPを表す。さらに「TBL」はテーブル面に固定された座標系(以下、これをテーブル座標系と呼ぶ)Σ
TBLを表し、「R」はロボット4の基台10(
図1)に固定された座標系(以下、これをロボット座標系と呼ぶ)Σ
Rを表す。
【0030】
従って、(1)式の「
SF
0」は、センサ座標系Σ
Sでの計測値であることを意味する。因みに、力覚センサ13内の各センサ素子が歪ゲージである場合、個々の歪ゲージの出力電圧の変化にその歪ゲージ固有のパラメータ行列を乗算することにより力覚センサ13の計測値
SF
0を得ることができる。
【0031】
続いて、手先工具15の先端をテーブル面に垂直に押し当てるようロボット4を動作させる。この結果、ロボット4はテーブル面から当該テーブル面に対して垂直な方向の反力を受ける。この際、かかる反力が予め定めた目標値になるように制御しても良いが、ここではとにかくロボット4の手先工具15の先端をテーブル面に垂直に押し当てていれば良い。
【0032】
次いで、ロボット4の手先工具15の先端をテーブル面に垂直に押し当てている状態(手先工具15がテーブル面から反力を受けている状態)で、再度、次式で表される力覚センサ13の計測値
SF
1を取得する。
【数2】
【0033】
この計測値
SF
1には、テーブル面からの反力だけでなく、手先工具15の重量成分も含まれている。そこで、次式のように、(2)式で表される計測値
SF
1から、(1)式で表される計測値
SF
0を引くことにより、手先工具15がテーブル面から受ける反力
SFのみを算出する。この際、力覚センサ13のゼロ点誤差も除去されることになる。
【数3】
【0034】
次いで、(3)式で表されるセンサ座標系Σ
Sでの反力(力及びトルク)
SFを、次式
【数4】
で表されるテーブル座標系Σ
TBLの力及びトルク
TBLFに変換する。このような変換は、次式
【数5】
により行うことができる。
【0035】
なお(4)式において、F
x,F
y及びF
zはそれぞれテーブル座標系Σ
TBLのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の力を表し、T
x,T
y及びT
zはテーブル座標系Σ
TBLにおけるそれぞれX軸回り、Y軸回り及びZ軸回りのトルクを表す。また(5)式において、
TBLR
Sはテーブル座標系Σ
TBLを基準としたセンサ座標系Σ
Sの回転行列を表し、
TBLr
Sはテーブル座標系Σ
TBLを基準としたセンサ座標系Σ
Sの並進ベクトルを表す。
【0036】
ここで、センサ座標系Σ
Sとテーブル座標系Σ
TBLとの相対位置関係は、実際は多くのデータを経由する。例えば
図2について上述したテーブル座標系Σ
TBLは、ロボット座標系Σ
Rを基準とした位置及び姿勢で表現されている。またTCP座標系Σ
TCPは、ロボット4のフランジ座標系Σ
Eを基準とした位置及び姿勢で表現されている。センサ座標系Σ
Sも同様に、ロボット4のフランジ座標系Σ
Eを基準とした位置及び姿勢で表現されている。さらにフランジ座標系Σ
Eは、ロボット座標系Σ
Rを基準とした位置及び姿勢データとして取得することができる。
【0037】
この場合において、ロボット座標系Σ
Rからテーブル座標系Σ
TBLへの同次変換行列
RT
TBL、フランジ座標系Σ
EからTCP座標系Σ
TCPへの同次変換行列
ET
TCP、フランジ座標系Σ
Eからセンサ座標系Σ
Sへの同次変換行列
ET
S及びロボット座標系Σ
Rからフランジ座標系
RT
Eへの同次変換行列
RT
Eはいずれも既知である。
【0038】
またセンサ座標系Σ
Sからテーブル座標系Σ
TBLへの同次変換行列
TBLT
Sは、次式
【数6】
で与えられ、この同次変換行列
TBLT
Sは次式を満たす。
【数7】
【0039】
よって、既知の同次変換行列
RT
TBL、
RT
E及び
ET
Sを利用して(7)式により同次変換行列
TBLT
Sを算出し、算出結果と(6)式とを比較することにより(5)式の回転行列
TBLR
S及び並進ベクトル
TBLr
Sを得ることができる。
【0040】
また[r
Q×]は、次式
【数8】
で表されるベクトルの外積行列を表す。この外積行列は、次式のように表される。
【数9】
【0041】
以上により(5)式の右辺の変換行列を得ることができ、この変換行列を用いて(5)式の演算を実行することにより、センサ座標系Σ
Sでの力及びトルク
SFを、テーブル座標系Σ
TBLの力及びトルク
TBLFに変換することが可能となる。
【0042】
続いて、以上のようにして算出したテーブル座標系Σ
TBLの力及びトルク
TBLFに基づいて、力覚センサ13の状態を判定する。
【0043】
例えば、テーブル座標系Σ
TBLのZ軸がテーブル面に垂直な方向に設定されている場合、(4)式で表されるテーブル座標系基準での力及びトルク
TBLFにおいて、Z軸方向の力成分F
z以外の成分(F
y,F
z,T
x,T
y,T
z)は、上述のように理想的に「0」となる。
【0044】
そこで、かかるZ軸方向の力成分F
z以外の成分のうち、X軸方向の力成分F
x及びY軸方向の力成分F
yを利用して、これら力成分F
x及びF
yが予め設定された第1の閾値(以下、これを第1の異常判定閾値と呼ぶ)よりも小さいか否かに基づいて、力覚センサ13に異常が発生しているか否かを判定する。この際、力成分F
x及びF
yに加えて、X軸回りのトルク成分T
x、Y軸回りのトルク成分T
y及びZ軸回りのトルク成分T
zを力覚センサ13の異常判定に利用するようにしても良い。具体的には、トルク成分T
x、T
y及びT
zがそれぞれそのトルク成分T
x、T
y及びT
zについて予め定めた第1の異常判定閾値よりも小さいか否かを判定し、判定結果を力覚センサ13に異常が発生しているか否かの判定に利用すれば良い。
【0045】
以上のような方法により力覚センサ13に異常が発生しているか否かを判定することができるが、1つの姿勢での検査だけでは、手先工具15のテーブル面への押当て方向が障害が発生した歪ゲージの検出結果が影響しない方向であったときに、力覚センサ13の異常を見落とすことになる。
【0046】
そこで、本実施の形態による力覚センサ検査方式では、上述のような判定をロボット4の位置及び姿勢を変えながら複数回行い、その結果に基づいて総合的に力覚センサ13に異常が発生しているか否かを判断する。
【0047】
(1−3)第1の力覚センサ検査処理
ここで、上述のような力覚センサ検査処理(以下、これを第1の力覚センサ検査処理と呼ぶ)は、制御装置6のメモリ21に格納されている図示しない制御プログラムに基づき、
図3に示す処理手順に従って、当該制御装置6のCPU20の制御のもとに定期的に行われる。
【0048】
実際上、制御装置6のCPU20は、第1の力覚センサ検査処理を開始すると、まず、手先工具15をテーブル面に接触させない程度に近付けさせ、かつ、当該手先工具15をテーブル面に押し当てる姿勢をとるようにロボット4を動作させる(SP1)。この後、CPU20は、(1)式について上述したこの姿勢における力覚センサ13の計測値
SF
0を取得し、取得した計測値
SF
0をメモリ21に格納する(SP2)。
【0049】
続いて、CPU20は、手先工具15をテーブル2の上面(テーブル面)の所定位置に垂直に押し当てる動作をロボット4に開始させ(SP3)、この後、力覚センサ13の出力信号に基づいて、ロボット4の手先工具15がテーブル面に接触するのを待ち受ける(SP4:NO)。
【0050】
CPU20は、やがて力覚センサ13の出力信号に基づいてロボット4の手先工具15がテーブル面に接触したのを確認すると(SP4:YES)、(2)式について上述したそのときの力覚センサ13の計測値
SF
1を取得する(SP5)。
【0051】
そしてCPU20は、ステップSP5において取得した計測値
SF
1と、ステップSP2において取得した計測値
SF
0との差分をとることにより、(3)式について上述したこのときロボット4の手先工具15がテーブル面から受ける反力
SFを算出し(SP6)、この後、このようにして得られたセンサ座標系での反力
SFを、(4)式について上述したテーブル座標系Σ
TBLの力及びトルク
TBLFに変換する(SP7)。
【0052】
続いて、CPU20は、ステップSP7において得られたテーブル座標系Σ
TBLの力及びトルク
TBLFのうち、テーブル面と垂直な方向以外の力成分が、いずれもその力成分について予め設定されている第1の異常判定閾値よりも小さいか否かを判断する(SP8)。
【0053】
ここで、この判断で否定結果を得ることは、力覚センサ13に異常が発生している可能性があることを意味する。かくして、このときCPU20は、力覚センサ13のチェック又は交換を促す警告画面を例えば制御装置6に表示させ、又は、オペレータに力覚センサ13をチェック若しくは交換すべき旨のメールを送信するなどの処理を実行した後(SP9)、この力覚センサ検査処理を終了する。
【0054】
これに対してステップSP8の判断で肯定結果を得ることは、そのときのロボット4の姿勢において実行した検査では力覚センサ13に異常が発見されなかったことを意味する。かくして、このときCPU20は、検査対象の姿勢として次に設定されている姿勢があるか否かを判断する(SP10)。そしてCPU20は、この判断で肯定結果を得ると、ステップSP1に戻り、この後、次の姿勢についてステップSP1〜ステップSP9の処理を同様に繰り返す。
【0055】
そしてCPU20は、やがて予め定められたすべての姿勢についてステップSP1〜ステップSP9の処理を実行することによりステップSP10で肯定結果を得ると、必要に応じて力覚センサ13に異常が発生していない旨を制御装置6に表示させ又はその旨のメールをオペレータに送信した後、この第1の力覚センサ検査処理を終了する。
【0056】
(1−4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態によるロボットシステム1では、ロボット4の手先工具15をテーブル面に垂直に押し当て、このとき力覚センサ13により検出される手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分に基づいて力覚センサ13の異常の有無を判定するようにしているため、力覚センサ13の過去の計測値を記憶しておく必要も、また当該計測値を適宜更新する必要もない。また本ロボットシステム1では、力覚センサ13の異常判定を手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分が第1の異常判定閾値よりも小さいか否か(手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分が第1の異常判定閾値以上か否か)に基づいて行うため、緩やかな精度劣化を見落とすこともなく、さらに当該第1の異常判定閾値を力覚センサ13の特性変化を許容する十分な余裕を含んだ値に設定する必要もない。よって本ロボットシステム1によれば、精度良くかつ簡易に力覚センサ13の検査を行うことができる。
【0057】
また本実施の形態によるロボットシステム1では、上述のような力覚センサ13の検査を複数の位置及び姿勢で行うため、力覚センサ13の計測精度の劣化が一方向にのみ生じた場合においても、力覚センサ13の異常を確実に検出することができる。
【0058】
(2)第2の実施の形態
上述のようにロボット4の手先工具15をテーブル面に垂直に押し当てる際に何らの力制御をすることなく、単に力覚センサ13により検出された手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分が所定の閾値よりも小さいか否かだけで力覚センサ13の異常の有無を判定しようとすると、精度良く力覚センサ13の異常を検出し得ないおそれがある。
【0059】
これは、ロボット4の手先工具15をテーブル面に垂直に押し当てる際の押当て力が弱いと、力覚センサ13によって検出される手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分も小さくなるため、力覚センサ13に異常が生じていたとしても、(4)式で表されるZ軸方向の力成分F
z以外の成分(F
y,F
z,T
x,T
y,T
z)が上述の第1の異常判定閾値よりも小さくなることがあるからである。
【0060】
この場合において、ロボット4の手先工具15をテーブル面に垂直に押し当てたときに力覚センサ13によって検出される手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分の大きさは、そのとき力覚センサ13により検出される手先工具15の押当て方向の力成分(すなわちテーブル面と垂直な方向の力成分)の大きさに比例する。
【0061】
そこで、本実施の形態によるロボットシステム30(
図1)では、ロボット4の手先工具15を既定の押当て力(圧力)で垂直にテーブル面に押し当てるように当該ロボット4の力制御を行い、このとき力覚センサ13により検出される手先工具15がテーブル面から受ける当該手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分の大きさに基づいて、力覚センサ13に異常が発生しているか否かを判定する。
【0062】
具体的に、ロボットシステム30では、ロボット4の手先工具15をテーブル面に垂直に押し当てる際、(4)式で表されるテーブル座標系Σ
TBLの力及びトルク
TBLFのうち、テーブル面と垂直な方向の力成分(F
z)の大きさが予め設定された目標値となるようにロボット4の力制御を行う。そして、このときのテーブル座標系Σ
TBLにおける手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分(F
x,F
y)が、予め設定された閾値(以下、これを第3の異常判定閾値と呼ぶ)よりも小さいか否かに基づいて、力覚センサ13に異常が発生しているか否かを判定する。
【0063】
図4は、本実施の形態によるロボットシステム30において、
図3について上述した第1の力覚センサ検査処理に代えて、制御装置31(
図1)のメモリ21に格納された図示しない制御プログラムに基づき、当該制御装置31のCPU20によって定期的に実行される第2の力覚センサ検査処理の具体的な処理手順を示す。
【0064】
実際上、制御装置31のCPU20は、本実施の形態による第2の力覚センサ検査処理を開始すると、ステップSP20〜ステップSP26を第1の力覚センサ検査処理(
図3)のステップSP1〜ステップSP7と同様に処理し、この後、ステップSP26において得られたテーブル座標系Σ
TBLの力及びトルク
TBLFのうち、Z軸方向の力成分F
z((4)式参照)が予め設定された目標値となったか否かを判定する(SP27)。
【0065】
CPU20は、この判定で否定結果を得ると、ステップSP24に戻り、この後ロボット4がより強い押当て力で手先工具15をテーブル面に押し当てるようにロボット4を制御しながら、ステップSP24〜ステップSP27を同様に繰り返す。
【0066】
そしてCPU20は、やがてかかるZ軸方向の力成分F
zが目標値に到達することによりステップSP27において肯定結果を得ると、この後、ステップSP28〜ステップSP30を、
図3について上述した第1の力覚センサ検査処理のステップSP8〜ステップSP10と同様に処理し、この後、この第2の力覚センサ検査処理を終了する。
【0067】
以上のように本実施の形態によるロボットシステム30では、ロボット4の手先工具15を既定の押当て力で垂直にテーブル面に押し当てるように当該ロボット4の力制御を行い、このとき力覚センサ13により検出される手先工具15がテーブル面から受ける当該手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分の大きさに基づいて、力覚センサ13に異常が発生しているか否かの判定を行うようにしているため、第1の実施の形態のロボットシステム1と比べてかかる判定をより精度良く行うことができる。
【0068】
(3)第3の実施の形態
上述のように、力覚センサ13に異常が生じている場合、ロボット4の手先工具15をテーブル面に垂直に押し当てたときに力覚センサ13によって検出される手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分の大きさは、そのとき力覚センサ13により検出される手先工具15の押当て方向の力成分(テーブル面からの反力)に比例する。
【0069】
従って、力覚センサ13により検出される手先工具15の押当て方向の力成分と、そのとき力覚センサ13によって検出される手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分との比は、力覚センサ13の状態に応じて、ロボット4の手先工具15をテーブル面に垂直に押し当てる際の押当て力(圧力)に関わりなく一定となる。またこの比の値は、力覚センサ13によって検出される手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分が大きいほど(つまり力覚センサ13の状態が悪いほど)大きくなる。
【0070】
そこで本実施の形態によるロボットシステム40(
図1)では、ロボット4の手先工具15を垂直にテーブル面に押し当てるように当該ロボット4を動作させ、このとき力覚センサ13により検出される手先工具15がテーブル面から受ける当該手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分と、当該押当て方向の力成分との比の値に基づいて、力覚センサ13に異常が発生しているか否かを判定する。
【0071】
具体的に、ロボットシステム40では、(4)式で表されるテーブル座標系Σ
TBLの力及びトルク
TBLFのうち、手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分(F
x、F
y)と、当該押当て方向の力成分(F
z)との比の値が予め設定された第2の閾値(以下、これを第2の異常判定閾値と呼ぶ)よりも小さいか否かに基づいて、力覚センサ13に異常が発生しているか否かを判定する。
【0072】
図5は、本実施の形態によるロボットシステム40において、
図3について上述した第1の力覚センサ検査処理に代えて、制御装置41(
図1)のメモリ21に格納された図示しない制御プログラムに基づき、当該制御装置41のCPU20によって定期的に実行される第3の力覚センサ検査処理の具体的な処理手順を示す。
【0073】
実際上、制御装置41のCPU20は、本実施の形態による第3の力覚センサ検査処理を開始すると、ステップSP40〜ステップSP46を第1の力覚センサ検査処理(
図3)のステップSP1〜ステップSP7と同様に処理し、この後、スステップSP46において得られたテーブル座標系Σ
TBLの力及びトルク
TBLFのうち、手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分(F
x、F
y)を当該押当て方向の力成分(F
z)で割る(除算)ことにより、手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分(F
x、F
y)と、当該押当て方向の力成分(F
z)との比の値を計算する。そしてCPU20は、この計算により得られたかかる比の値が、いずれも手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分についてそれぞれ予め設定されている第2の異常判定閾値よりも小さいか否かを判断する(SP47)。
【0074】
CPU20は、この判断で否定結果を得ると第1の力覚センサ検査処理のステップSP9と同様の異常検出処理を実行した後(SP48)、この第3の力覚センサ検査処理を終了する。
【0075】
これに対してCPU20は、ステップSP47の判断で肯定結果を得ると、検査対象の姿勢として次に設定されている姿勢があるか否かを判断する(SP49)。そしてCPU20は、この判断で肯定結果を得ると、ステップSP40に戻り、この後、次の姿勢についてステップSP40〜ステップSP49の処理を同様に繰り返す。
【0076】
そしてCPU20は、やがて予め定められたすべての姿勢についてステップSP40〜ステップSP48の処理を実行することによりステップSP49で肯定結果を得ると、必要に応じて力覚センサ13に異常が発生していない旨を制御装置41に表示させ又はその旨のメールをオペレータに送信した後、この第3のセンサ検査処理を終了する。
【0077】
以上のように本実施の形態によるロボットシステム40では、ロボット4の手先工具15を垂直にテーブル面に押し当てたときに力覚センサ13により検出される手先工具15がテーブル面から受ける当該手先工具15の押当て方向と垂直な方向の力成分と、当該押当て方向の力成分との比の値に基づいて、力覚センサ13に異常が発生しているか否かを判定するため、ロボット4の手先工具15をテーブル面に垂直に押し当てる際の押当て力の強弱に関わりなく、力覚センサ13の異常の有無を精度良く検出することができる。
【0078】
(4)他の実施の形態
なお上述の第1〜第3の実施の形態においては、力覚センサ13が6軸力覚センサである場合について述べたが、本発明はこれに限らず、力覚センサ13が6軸力覚センサ以外の例えば3軸力覚センサである場合にも本発明によるセンサ検査方式を適用することができる。
【0079】
また上述の第1〜第3の実施の形態においては、制御装置6,31,41及びコントローラ7を別装置として構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これら制御装置6,31,41及びコントローラ7を同一装置として構成するようにしても良い。
【0080】
さらに上述の第1〜第3の実施の形態においては、ロボット4の手先工具15を押し当てる押当て面をテーブル2の上面(テーブル面)とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、かかる押当て面をテーブル2の側面やワーク3の一面に設定するようにしても良い。このようにしても同様の効果を得ることができる。
【0081】
さらに上述の第1〜第3の実施の形態においては、複数の位置及び姿勢で力覚センサ13の検査を行うようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、ロボット4の位置及び姿勢を一定にして、手先工具15を押し当てる方向を変える(個々の押当て方向からそれぞれ異なる押当て面に手先工具15を垂直に押し当てる)ようにしても良い。
【0082】
さらに上述の第1〜第3の実施の形態においては、ロボット4の力覚センサ13を検査するセンサ検査装置を制御装置6,31,41の一部機能として構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、かかるセンサ検査装置としての機能を有する装置を制御装置6,31,41及びコントローラ7とは別個の装置として設けるようにしても良い。
【0083】
さらに上述の第1〜第3の実施の形態においては、
図3について上述した力覚センサ検査処理を定期的に実行するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば定期的な実行に代えて又は加えてオペレータからの指示に基づいてかかる力覚センサ検査処理を実行するようにしても良い。
【0084】
さらに上述の第1〜第3の実施の形態においては、第1〜第3の力覚センサ検査処理時、ロボット4の手先工具15をテーブル面に垂直に押し当てるようにロボット4を制御するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、手先工具15をテーブル面に対して垂直以外の方向に押し当てるように制御装置6,31,41のCPU20がロボット4を制御するようにしても良い。手先工具15をテーブル面に押し当てたときのテーブル面と手先工具15との間の摩擦力が小さい場合(テーブル面及び手先工具15の少なくとも一方の摩擦係数が小さい場合)には、このようにしても第1〜第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
さらに上述の第1〜第3の実施の形態においては、ロボット4の手先工具15をテーブル面に垂直に押し当てたときに当該手先工具15がテーブル面から受ける当該手先工具のテーブル面の押付け方向と垂直な方向の力成分に基づいて力覚センサ13の故障の有無を判定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、手先工具15をテーブル面に垂直に押し当てたときに当該手先工具15がテーブル面から受ける当該手先工具のテーブル面の押付け方向と垂直な方向以外の方向の力成分に基づいて力覚センサ13の故障の有無を判定するようにしても良い。