(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光導波路型半導体素子は、光を閉じ込めるコア層を含む光導波路部と、光導波路部に結合された受光素子部などの光半導体素子部とが、共通の半導体基板上にモノリシックに形成された構造を備えている。このような素子では、光導波路部の半導体層構造と、光半導体素子部の半導体層構造とを含むメサ構造が半導体基板上に設けられる。更に、光半導体素子部の半導体層構造上には金属電極膜が設けられ、この金属電極膜は、メサ構造の周辺に設けられたパッド電極と配線パターンを介して接続される。そして、金属電極膜とパッド電極とを配線パターンを介して接続する際、パッド電極の位置によっては、メサ構造の長手方向の端面を越えて配線パターンを延ばすことがある(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
図17及び
図18は、光導波路型半導体素子の製造過程の一部を示す図である。
図17(a)は、光導波路型半導体素子の製造工程(埋込領域形成工程)を示す平面図であり、
図17(b)は、
図17(a)のXVII−XVII線に沿った側断面図である。また、
図18(a)は、光導波路型半導体素子の製造工程(配線形成工程)を示す平面図であり、
図18(b)は、
図18(a)のXVIII−XVIII線に沿った側断面図である。
【0006】
図17に示されるように、この光導波路型半導体素子100は、InP基板101を備えている。InP基板101は、該InP基板101の(100)面に沿った主面101aを有する。また、この光導波路型半導体素子100は、InP基板101の主面101a上に形成されたメサ構造130を更に備えている。メサ構造130は所定の光導波方向に沿って延びており、該所定の光導波方向に沿った両側面130aと、該所定の光導波方向における端面130bとを有する。なお、
図17は製造途中を示すので、メサ構造130の上にはエッチングマスク150が残存している。
【0007】
メサ構造130は、主面101a上に設けられたn型バッファ層131と、n型バッファ層131上に設けられた光導波路部110のためのコア層111及びクラッド層112と、n型バッファ層131上に設けられた受光素子部120のための光吸収層121、ヘテロ障壁緩和層122、p型クラッド層123、p型ヘテロ障壁緩和層124、及びp型コンタクト層125とを有する。光導波路部110のためのコア層111と、受光素子部120のための光吸収層121とは、互いに接しており光学的に結合されている。なお、受光素子部120において光導波路部110と接する端面とは反対側の端面には、光導波路部110と同じ半導体層構造を有する半導体領域140が形成されている。
【0008】
図17に示される工程では、メサ構造130の両側面130a及び端面130bを覆うように半導体埋込領域160を形成する。この半導体埋込領域160は半絶縁性InPから成り、エッチングマスク150上を除く主面101a上の領域に選択的に成長する。
【0009】
半導体埋込領域160を形成したのち、エッチングマスク150を除去する。そして、
図18に示されるように、絶縁膜162によってメサ構造130の上面及び半導体埋込領域160の表面を覆ったのち、受光素子部120上の絶縁膜162に開口を形成してオーミック電極層164を該開口に形成する。その後、オーミック電極層164上からメサ構造130の外部に至る金属配線層166を形成し、メサ構造130の外部における金属配線層166の上にパッド電極168を形成する。
【0010】
図17及び
図18に示された製造方法においては、メサ構造130の長手方向をInP基板の[110]方向とする場合がある。しかしながらそのような場合、次の問題が生じる。
図19(a)は、メサ構造130の端面130b上に成長する半導体埋込領域160の成長過程を模式的に示す断面図である。また、
図19(b)は、比較のためメサ構造130の側面130a付近における半導体埋込領域160の成長過程を模式的に示す断面図である。
【0011】
メサ構造130の長手方向がInP基板101の[110]方向に沿っている場合、メサ構造130の端面130b付近では、InP結晶の(111)A面が、
図19(a)に示される位置に存在することとなる。そして、(111)A面の法線方向へのInPの成長速度は、他の方向への成長速度よりも速い。したがって、
図19(a)に示されるように、半導体埋込領域160の表面はA11、A12、及びA13のように成長し、メサ構造130の上面に覆い被さるように突出してしまう。半導体埋込領域160は、信頼性確保の観点から主面101a上における成長厚さに換算して0.3μm程度を必要とするが、その場合、半導体埋込領域160の突出部分(図中の部分B)の高さは0.6μm〜0.9μmにもなる。なお、メサ構造130の端面130b付近では、
図19(b)に示されるように、半導体埋込領域160の表面はA21、A22、及びA23の順に成長し、メサ構造130の上面を超えることはない。
【0012】
このように、半導体埋込領域160がメサ構造130の上面に覆い被さるように突出すると、
図18(b)に示されたように、金属配線層166が半導体埋込領域160の突出部分Bを越えて配設されることとなる。したがって、半導体埋込領域160の突出部分B付近において金属配線層166が断線し易くなり、光導波路型半導体素子の信頼性が低下してしまう。
【0013】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、メサ構造の上面からメサ構造の外部へ配設される金属配線層の断線を低減することができる光導波路型半導体素子の製造方法、および光導波路型半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明による光導波路型半導体素子の製造方法は、光を閉じ込めるコア層を含む光導波路部と、該光導波路部に結合された光半導体素子部とを共通のInP基板上に有する光導波路型半導体素子を製造する方法であって、InP基板の主面上において光導波路部の光導波方向に順に並ぶ第1、第2及び第3の領域のうち第2の領域上に、光半導体素子部のための層構造を有する第1の半導体積層部を形成し、第1及び第3の領域上に、光導波路部のための層構造を有する第2の半導体積層部を形成する半導体積層部形成工程と、第1及び第2の半導体積層部上において光導波方向に延びるエッチングマスクを第1の領域上から第3の領域上に亘って形成し、該エッチングマスクを用いて第1及び第2の半導体積層部をエッチングすることにより、光半導体素子部の層構造及び光導波路部の層構造を含み第3の領域上に端面を有するメサ構造を形成するエッチング工程と、メサ構造の端面、及び第2の領域上から第3の領域上に亘るメサ構造の側面を覆う半導体埋込領域を成長させる埋込層形成工程と、メサ構造の光半導体素子部上から端面上を経てメサ構造の外部に至る金属配線層を形成する配線層形成工程とを備え、光導波方向がInP基板の[110]方向に沿っており、エッチング工程の際に、主面に沿った面内における端面とInP基板の[110]方向との成す角度θが0°<θ<90°を満たすようにメサ構造を形成することを特徴とする。
【0015】
また、本発明による光導波路型半導体素子は、光導波路型半導体素子の製造方法は、所定の光導波方向に順に並ぶ第1、第2及び第3の領域を含む主面を有するInP基板と、光を閉じ込めるコア層を含む光導波路部のための層構造を第1及び第3の領域上に含み、光導波路部に結合された光半導体素子部のための層構造を第2の領域上に含み、光導波方向を長手方向として主面上に設けられ、第3の領域上に端面を有するメサ構造と、メサ構造の端面、及び第2の領域上から第3の領域上に亘るメサ構造の側面を覆う半導体埋込領域と、メサ構造の光半導体素子部上から端面上を経てメサ構造の外部に至る金属配線層とを備え、光導波方向がInP基板の[110]方向に沿っており、主面に沿った面内における端面とInP基板の[110]方向との成す角度θが0°<θ<90°を満たすことを特徴とする。
【0016】
上記の光導波路型半導体素子の製造方法および光導波路型半導体素子では、InP基板の主面に沿った面内における、メサ構造の端面とInP基板の[110]方向との成す角度θが、0°<θ<90°を満たしている。換言すれば、InP基板の主面の法線方向から見て、メサ構造の端面がInP基板の(110)面に対して傾斜している。このようにメサ構造の端面を傾斜させることによって、メサ構造の端面に対する半導体埋込領域の(111)A面の位置が変化し、半導体埋込領域がメサ構造の上面に覆い被さるように成長する(
図19(a)を参照)現象を抑えることができる。したがって、上記の光導波路型半導体素子の製造方法および光導波路型半導体素子によれば、メサ構造の上面から端面上を経てメサ構造の外部へ配設される金属配線層の断線を低減することができる。
【0017】
また、光導波路型半導体素子の製造方法は、角度θが
θ≦(1/2)・[arcsin{d2/(n・d1)−1}]+45°
(但し、d1は主面上における半導体埋込領域の成長厚さ、d2はエッチングマスクの厚さ、nは2以上3以下の定数)を満たすようにメサ構造を形成することを特徴としてもよい。これにより、半導体埋込領域の突出部分の高さがエッチングマスクの高さを下回るので、金属配線層の断線をより効果的に低減することができる。
【0018】
また、光導波路型半導体素子の製造方法では、半導体埋込領域の平坦化のため、半導体埋込領域を成長させる際に塩化メチルを添加することがある。塩化メチルは、メサ構造の上面に覆い被さる半導体埋込領域の成長を助長するので、上記の光導波路型半導体素子の製造方法は、このような場合に有用である。
【0019】
また、光導波路型半導体素子は、InP基板上に、光導波路部のための層構造、及び光半導体素子部のための層構造を含むメサ構造が複数形成されており、複数のメサ構造は、光導波方向に垂直な方向に並んで配置されており、金属配線層は、光導波方向に延伸して設けられていることを特徴としてもよい。このような構成により、複数の光半導体素子部の各電極パッドを、光導波路型半導体素子の端縁に沿って配置することができる。したがって、複数の光半導体素子部の各電極パッドと、他の電極パッドとを電気的に接続するボンディングワイヤを、光導波路型半導体素子の端縁に沿って、光導波路方向に垂直な方向に、ほぼ同じ長さで、かつ短い距離で、それぞれ配置することが可能となる。その結果、大きなリードインダクタンス成分による周波数応答特性の劣化や、各信号間での周波数応答特性のばらつきを回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による光導波路型半導体素子の製造方法および光導波路型半導体素子によれば、メサ構造の上面からメサ構造の外部へ配設される金属配線層の断線を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光導波路型半導体素子の製造方法および光導波路型半導体素子の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光導波路型半導体素子を備える受光デバイス1Aの構成を示す平面図である。また、
図2(a)は
図1のIIa−IIa線に沿った断面を示しており、
図2(b)は
図1のIIb−IIb線に沿った断面を示しており、
図2(c)は
図1のIIc−IIc線に沿った断面を示しており、
図2(d)は
図1のIId−IId線に沿った断面を示している。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態の受光デバイス1Aは、光導波路型半導体素子2と、信号増幅部3と、キャパシタ4とを備えている。光導波路型半導体素子2は、略矩形状といった平面形状を有しており、InP基板上に形成された光導波路部5、受光素子部6、金属配線層7a及び7b、並びに電極パッド8a及び8bを備えている。光導波路部5は、所定の光導波方向Aに沿って延びている。光導波路部5は、屈折率が比較的大きい材料(例えばInGaAsP)から成るコアと、屈折率が該コアよりも小さい材料(例えばInP)から成り該コアを覆うクラッドとによって好適に構成される。
【0025】
受光素子部6は、本実施形態における光半導体素子部である。受光素子部6は、PINフォトダイオードとしての構成を有しており、光導波方向Aにおける光導波路部5の一端と光学的に結合されている。受光素子部6のカソードには、一定のバイアス電圧が供給される。受光素子部6は、光導波路部5を介して光信号を受け、この光信号の光強度に応じた電気信号(光電流)を生成する。光導波路型半導体素子2上には、受光素子部6のアノードと電気的に接続された信号出力用電極パッド8aが設けられている。信号出力用電極パッド8aは、光導波路型半導体素子2の端縁2bと受光素子部6との間に配置されている。信号出力用電極パッド8aは、ボンディングワイヤ27aを介して、後述する信号増幅部3の信号入力用電極パッド3aと電気的に接続されている。
【0026】
キャパシタ4は、光導波路型半導体素子2の側方に並んで配置されている。キャパシタ4は、バイアス電圧が供給される受光素子部6のカソードと、基準電位線(GND線)との間に電気的に接続される。すなわち、キャパシタ4を構成する一対の電極のうち一方が受光素子部6のカソード及びバイアス電源に接続され、他方が基準電位線(GND線)に接続される。光導波路型半導体素子2上には、受光素子部6のカソードと電気的に接続されたバイアス電圧側電極パッド8bが設けられている。キャパシタ4の一方の電極は、ボンディングワイヤ27bを介してバイアス電圧側電極パッド8bと電気的に接続されており、また、ボンディングワイヤ27cを介してバイアス電源と電気的に接続されている。
【0027】
信号増幅部3は、受光素子部6から出力された電気信号(光電流)を増幅する増幅器(プリアンプ)である。信号増幅部3は、信号入力用電極パッド3aを有しており、信号入力用電極パッド3aに入力された電気信号の差動増幅を行って一つの電圧信号を生成する。前述したように、信号入力用電極パッド3aは、ボンディングワイヤ27aを介して信号出力用電極パッド8aと電気的に接続されている。
【0028】
ここで、
図2(a)〜
図2(d)を参照して、光導波路型半導体素子2の断面構造について詳細に説明する。
図2(a)〜
図2(d)に示されるように、本実施形態の光導波路型半導体素子2は、InP基板21を備えている。InP基板21は、InP結晶の(100)に沿った主面21aを有している。
図2(c)に示されるように、主面21aは、光導波方向A(
図1を参照)に沿って順に並ぶ第1の領域21b、第2の領域21c、及び第3の領域21dを含んでいる。また、光導波路型半導体素子2は、光導波方向A(
図1を参照)を長手方向とするメサ構造25を備えている。光導波方向Aは、InP基板21の[110]方向に沿っている。メサ構造25は、光導波路部5のための層構造を領域21b上及び領域21d上に含んでおり、受光素子部6のための層構造を領域21c上に含んでいる。また、メサ構造25は、光導波方向Aにおける端面25g(
図2(c)を参照)を領域21d上に有する。
【0029】
図2(b)及び
図2(c)を参照して、光導波路部5の断面構造について説明する。光導波路部5は、InP基板21の領域21b上に設けられたバッファ層22と、バッファ層22上に設けられた光導波コア層23と、光導波コア層23上に設けられたクラッド層24とを含んで構成されている。InP基板21は半絶縁性のInPからなり、バッファ層22はn型のInPからなる。光導波コア層23は、屈折率がバッファ層22よりも大きく且つバッファ層22と格子整合できる材料(例えばInGaAsP)からなり、光導波路部5を伝搬する光を閉じ込める。一例では、光導波コア層23のInGaAsPのバンドギャップ波長は1.05μmである。クラッド層24は、屈折率が光導波コア層23よりも小さく且つ光導波コア層23と格子整合できる材料(例えばアンドープInP)からなる。バッファ層22の一部、光導波コア層23、及びクラッド層24は、所定の光導波方向に延びるメサ構造25に含まれている。このメサ構造25により、光導波路部5において光導波コア層23内を光信号が伝搬することができる。なお、光導波路部5におけるメサ構造25の一対の側面25a,25b及び上面25cは、絶縁膜26に覆われることによって保護されている。絶縁膜26は、例えば絶縁性シリコン化合物(SiN、SiON、またはSiO
2)から成る。
【0030】
次に、
図2(a)及び
図2(c)を参照して、受光素子部6の断面構造について説明する。受光素子部6は、InP基板21の主面21a上に順に積層された、n型バッファ層22、光吸収層34、i型またはp型のヘテロ障壁緩和層35、p型クラッド層36、p型ヘテロ障壁緩和層37、及びp型コンタクト層38を有している。n型バッファ層22は、前述した光導波路部5と共通の層である。光吸収層34は、例えばアンドープInGaAsからなる。i型またはp型ヘテロ障壁緩和層35は、例えば2層のアンドープまたはZnドープInGaAsPからなり、2層それぞれのバンドギャップ波長は例えば1.3μm及び1.1μmである。p型クラッド層36は、例えばZnドープInPからなる。p型ヘテロ障壁緩和層37は、例えば2層のZnドープInGaAsPからなり、2層それぞれのバンドギャップ波長は例えば1.1μm及び1.3μmである。p型コンタクト層38は、例えばZnドープInGaAsからなる。
【0031】
図2(a)に示されるように、n型バッファ層22の一部、n型ヘテロ障壁緩和層33、光吸収層34、i型またはp型ヘテロ障壁緩和層35、p型クラッド層36、p型ヘテロ障壁緩和層37、及びp型コンタクト層38は、所定の光導波方向に延びるメサ構造25に含まれている。そして、光導波方向における光吸収層34及びヘテロ障壁緩和層35の一端は、前述した光導波路部5の光導波コア層23と接することにより、光導波コア層23と光学的に結合されている。また、受光素子部6におけるメサ構造25の一対の側面25d,25eは、例えばFeドープInPといった半絶縁性材料からなる半導体埋込領域41によって埋め込まれている。
【0032】
受光素子部6は、絶縁膜26を更に有している。絶縁膜26は、前述した光導波路部5と共通のものであり、メサ構造25の上面25fから半導体埋込領域41上にかけて設けられており、これらを覆って保護している。また、絶縁膜26は、受光素子部6におけるメサ構造25の上面25f上に開口を有しており、該開口により絶縁膜26から露出したp型コンタクト層38の上には、p型オーミック電極39が設けられている。p型オーミック電極39は、例えばAuZn若しくはPtとコンタクト層38との合金からなる。そして、p型オーミック電極39上には、金属配線層7aが設けられている。
図2(c)に示されるように、金属配線層7aは、光導波方向に延びており、該方向におけるメサ構造25の端面25gを越えて、p型オーミック電極39と信号出力用電極パッド8aとを電気的に接続する。金属配線層7aは例えばTiW/Au若しくはTi/Pt/Auといった積層構造を有しており、信号出力用電極パッド8aは例えばAuメッキによって形成される。
【0033】
また、
図2(a)に示されるように、絶縁膜26は、受光素子部6のメサ構造25から離れたn型バッファ層22の上にも、別の開口を有している。該開口により絶縁膜26から露出したn型バッファ層22の上には、n型オーミック電極43が設けられている。n型オーミック電極43は、例えばAuGe若しくはAuGeNiとn型バッファ層22との合金からなる。そして、n型オーミック電極43上には、金属配線層7bが設けられている。金属配線層7bは、n型オーミック電極43とバイアス電圧側電極パッド8bとを電気的に接続する。金属配線層7bは例えばTiW/Au若しくはTi/Pt/Auといった積層構造を有しており、バイアス電極側電極パッド8bは例えばAuメッキによって形成される。
【0034】
図2(c)に示されるように、メサ構造25は、InP基板21の領域21d上に、上述した光導波路部5と同一の層構造を有する半導体部分9を更に含んでいる。すなわち、この半導体部分9は、バッファ層22と、光導波コア層23と、クラッド層24とを有する。また、前述したメサ構造25の端面25gは、この半導体部分9によって構成されている。領域21d上におけるメサ構造25の両側面及び端面25gは、受光素子部6と共通の半導体埋込領域41によって埋め込まれている。つまり、半導体埋込領域41は、メサ構造25の端面25g、及び領域21c上から領域21d上に亘るメサ構造25の側面を覆っている。また、絶縁膜26は、受光素子部6と共通のものであり、半導体部分9の上面から半導体埋込領域41上にかけて設けられ、これらを覆って保護している。
【0035】
ここで、
図3は、半導体部分9及びその周辺の構成を詳細に示す断面図であって、
図2(c)のIII−III線に沿った断面(主面21aに沿ったメサ構造25の断面)を示している。また、
図3には、InP基板21の[110]方向及び(110)面が示されている。
図3に示されるように、メサ構造25の端面25gは、主面21aの法線方向から見て、InP基板21の(110)面に対して傾斜している。言い換えると、主面21aに沿った面内における、メサ構造25の端面25gとInP基板21の[110]方向との成す角度θは、0°<θ<90°を満たしている。
【0036】
以上の構成を備える光導波路型半導体素子2を製造する方法について、以下に説明する。
【0037】
<半導体積層部形成工程>
図4は、半導体積層部形成工程を示す斜視図である。この工程では、まず、所定の光導波方向(図中の矢印A)に並ぶ領域21b〜21dを主面21aに有するInP基板21を準備する。次に、
図4に示されるように、受光素子部6のための層構造を有する第1の半導体積層部60をInP基板21の領域21c上に成長させ、また、光導波路部5のための層構造を有する第2の半導体積層部70をInP基板21の領域21b上及び領域21d上に成長させる。
【0038】
具体的には、まず、n型バッファ層22のための半導体層58、光吸収層34のための半導体層61、ヘテロ障壁緩和層35のための半導体層62、p型クラッド層36のための半導体層63、p型ヘテロ障壁緩和層37のための半導体層64、及びp型コンタクト層38のための半導体層65をInP基板21上の全面に成長させる。そして、これらの半導体層61〜65のうち領域21c上の部分を覆うエッチングマスクを半導体層65上に形成し、このエッチングマスクを用いて、半導体層61〜65をエッチングする。その後、エッチングマスクに覆われていない基板21上の領域(すなわち領域21b及び21d)に、光導波コア層23のための半導体層71、及びクラッド層24のための半導体層72を選択的に成長させる。以上の工程により、受光素子部6のための半導体層58,61〜65を含む第1の半導体積層部60と、光導波路部5のための半導体層58,71及び72を含む第2の半導体積層部70とが好適に形成される。
【0039】
<エッチング工程>
図5及び
図6は、エッチング工程を示す斜視図である。この工程では、まず、
図5に示されるように、第1及び第2の半導体積層部60,70上において、光導波方向(図中の矢印A)に延びるエッチングマスクM1を、領域21b上から領域21d上に亘って形成する。このエッチングマスクM1は、シリコン化合物(SiN、SiON、またはSiO
2)から成り、その平面形状はメサ構造25(
図2を参照)の平面形状と一致している。すなわち、エッチングマスクM1の一部分は、半導体積層部70のうち光導波路部5及び半導体部分9となる領域を覆う。また、エッチングマスクM1の他の部分は、半導体積層部60のうち受光素子部6となる領域を覆う。また、エッチングマスクM1は、領域21d上に直線状の端縁M1aを有しており、端縁M1aは、主面21aの法線方向から見て、InP基板21の(110)面に対して傾斜している。言い換えると、端縁M1aとInP基板21の[110]方向(すなわち光導波方向A)との成す角度θは、0°<θ<90°を満たしている。
【0040】
その後、
図6に示されるように、このエッチングマスクM1を用いて、半導体積層部60,70に対しドライエッチングを行う。このエッチングは、半導体層58の途中で停止されるとよい。このエッチングによって、領域21d上に端面25gを有するメサ構造25が形成されるとともに、受光素子部6のn型バッファ層22、光吸収層34、ヘテロ障壁緩和層35、p型クラッド層36、p型ヘテロ障壁緩和層37、及びp型コンタクト層38が形成される。また、このエッチングによって、光導波路部5及び半導体部分9のn型バッファ層22、光導波コア層23及びクラッド層24が形成される。また、エッチングマスクM1がInP基板21の[110]方向に対して傾斜した端縁M1aを有する結果、光導波方向におけるメサ構造25の端面25gと、InP基板21の[110]方向との成す角度θは0°<θ<90°を満たすこととなる。
【0041】
<埋込層形成工程>
図7及び
図8は、埋込層形成工程を示す断面図である。
図7及び
図8の(a)〜(d)それぞれは、この工程における
図2(a)〜
図2(d)それぞれに相当する断面を表している。この工程では、メサ構造25の端面25g、及び領域21c上から領域21d上に亘るメサ構造25の側面を覆う半導体埋込領域41を成長させる。
【0042】
具体的には、まず、
図7(b)及び
図7(c)に示されるように、光導波路部5の上面及び両側面を覆うマスクM2を形成する。また、このとき、
図7(a)に示されるように、n型バッファ層22の露出表面の一部の領域上にマスクM3を形成する。なお、マスクM2及びM3は、シリコン化合物(SiN、SiON、またはSiO
2)から成る。マスクM2及びM3が形成された結果、受光素子部6および半導体部分9がマスクM2から露出し、更に、n型バッファ層22のうちマスクM3に覆われた部分を除く領域が露出する。そして、これらの露出部分の表面に対して、ダメージ除去のためのウェットエッチングを行う。
【0043】
続いて、
図8(a)〜
図8(d)に示されるように、マスクM2及びM3から露出した部分上に、例えばFeドープInPといった半絶縁性のInPからなる半導体埋込領域41を成長させる。この工程において、半導体埋込領域41は、メサ構造25における受光素子部6及び半導体部分9の両側面、及びメサ構造25の端面25gを埋め込むように成長する。更に、半導体埋込領域41は、露出したn型バッファ層22の表面を埋め込むように成長する。なお、半導体埋込領域41の表面の平坦性を高めるため、半導体埋込領域41を成長させる際、塩化メチルを添加することが望ましい。
【0044】
ここで、
図9(a)は、半導体埋込領域41成長後のメサ構造25の端面25g付近を示す平面図である。また、
図9(b)は、
図9(a)に示されるIXb−IXb線に沿った断面図である。
図9(a)にはInP基板21の[110]方向及び(110)面が示されており、
図9(b)には半導体埋込領域41の(111)A面が示されている。
【0045】
前述したように、本実施形態では、主面21aに沿った面内におけるメサ構造25の端面25gとInP基板21の[110]方向との成す角度θが0°よりも大きく、90°よりも小さい。したがって、
図17に示されたようにメサ構造の端面が[110]方向に対して垂直である場合と比較して、メサ構造25の端面25gと半導体埋込領域の(111)A面との相対的な位置及び角度の関係が変化する。したがって、
図19に示されたような、半導体埋込領域がメサ構造の上面に覆い被さるように成長する現象を効果的に抑えることができる。
【0046】
図10は、端面25gと[110]方向との成す角度θと、メサ構造25の上面を基準とする半導体埋込領域41の成長高さh(
図9(b)を参照)との関係を示すグラフである。また、
図11(a)〜
図11(c)は、それぞれ角度θが0°、45°、90°である場合の半導体埋込領域41の断面形状を模式的に示している。
【0047】
なお、このグラフは、試みとして円柱状のメサ構造を(100)面InP基板上に作製し、そのメサ構造の周囲を塩化メチル添加FeドープInPによって埋め込んだのち、InP基板の結晶方位とメサ構造の上面へのFeドープInPの成長高さとの関係を調べることにより得られたものである。
図10に示された関係は、主面21a上における半導体埋込領域41の成長厚さをd1(
図9(b)を参照)として、次の近似式(1)によって求められる。
h≒n・d1・[sin{2(θ−45°)}+1] ・・・(1)
(但し、nは2以上3以下の定数)
【0048】
図10及び
図11に示されるように、θ=90°である場合(すなわち端面25gが[110]方向に対して垂直である場合、言い換えると[1−10]方向に対して平行である場合)に成長高さhが最も高くなり、θ=0°である場合(すなわち端面25gが[110]方向に対して平行である場合)に成長高さhが最も低くなる。そして、θが90°から0°に近づくに従い、成長高さhは次第に低くなる。
【0049】
また、後の工程において半導体埋込領域41を越えて金属配線層7aを引き出すことを考慮すると、半導体埋込領域41の成長高さhは、エッチングマスクM1の厚さd2(
図9(b)を参照)よりも小さいことが望ましい。すなわち、成長高さhは、次の関係式(2)
h=n・d1・[sin{2(θ−45°)}+1]≦d2 ・・・(2)
を満たすことが望ましい。上記の関係式(2)を書き換えると、角度θは
θ≦(1/2)・[arcsin{d2/(n・d1)−1}]+45° ・・・(3)
を満たすことが望ましい。
【0050】
<マスク除去工程>
図12は、マスク除去工程を示す断面図である。なお、
図12(a)〜
図12(d)それぞれは、この工程における
図2(a)〜
図2(d)それぞれに相当する断面を表している。上述した埋込層形成工程において半導体埋込領域41を成長させた後、マスクM1〜M3を除去する。この工程により、光導波路部5の上面及び両側面、並びに受光素子部6及び半導体部分9の各上面が露出するとともに、マスクM3に覆われていたn型バッファ層22の一部分が露出する。
【0051】
<素子分離工程>
図13は、素子分離工程を示す断面図である。なお、
図13(a)〜
図13(d)それぞれは、この工程における
図2(a)〜
図2(d)それぞれに相当する断面を表している。この工程では、メサ構造25を基板21上の他の領域から電気的に分離するため、メサ構造25の周囲の半導体埋込領域41及びバッファ層22をエッチングして基板21を露出させる。
【0052】
<絶縁膜及びオーミック電極形成工程>
図14は、絶縁膜及びオーミック電極を形成する工程を示す断面図である。なお、
図14(a)〜
図14(d)それぞれは、この工程における
図2(a)〜
図2(d)それぞれに相当する断面を表している。この工程では、基板21上の全面に絶縁膜26を形成する。これにより、光導波路部5の上面及び両側面、並びに受光素子部6及び半導体部分9の各上面が絶縁膜26によって覆われる。その後、半導体埋込領域41から露出しているn型バッファ層22上の絶縁膜26に開口を形成してn型バッファ層22を露出させ、また、受光素子部6上の絶縁膜26に開口を形成してp型コンタクト層38を露出させる。
【0053】
その後、絶縁膜26から露出したn型バッファ層22上にn型オーミック電極43を形成する。また、絶縁膜26から露出したp型コンタクト層38上にp型オーミック電極39を形成する。
【0054】
<配線層形成工程>
図15は、配線層形成工程を示す断面図である。なお、
図15(a)〜
図15(d)それぞれは、この工程における
図2(a)〜
図2(d)それぞれに相当する断面を表している。この工程では、p型オーミック電極39上からメサ構造25の端面25g上を経てメサ構造25の外部に至る金属配線層7aを形成する。また、同時に、n型オーミック電極43上からメサ構造25の側方へ延びる金属配線層7bを形成する。その後、金属配線層7a上には信号出力用電極パッド8aを、金属配線層7b上にはバイアス電圧側電極パッド8bを、それぞれ形成する。
【0055】
以上の工程を経て、
図1及び
図2に示された光導波路型半導体素子2が完成する。
【0056】
本実施形態の光導波路型半導体素子2及びその製造方法によって得られる効果について説明する。上述した光導波路型半導体素子2及びその製造方法では、InP基板21の主面21aに沿った面内における、メサ構造25の端面25gとInP基板21の[110]方向との成す角度θが、0°<θ<90°を満たしている。このように端面25gを傾斜させることによって、
図10及び
図11に示されたように、半導体埋込領域41の成長高さhを小さく抑制し、半導体埋込領域41がメサ構造25の上面に覆い被さるように成長する現象を抑えることができる。したがって、メサ構造25の上面から端面25g上を経てメサ構造25の外部へ配設される金属配線層7aの断線を低減することができる。
【0057】
また、本実施形態では、角度θが上述した関係式(3)を満たすようにメサ構造25を形成することがより好ましい。これにより、半導体埋込領域41の突出部分の高さがエッチングマスクM1の表面の高さを下回るので、金属配線層7aの断線をより効果的に低減することができる。
【0058】
また、本実施形態のように、半導体埋込領域41の平坦化のため、半導体埋込領域41を成長させる際に塩化メチルを添加する場合がある。塩化メチルは、メサ構造25の上面に覆い被さるような半導体埋込領域41の成長(すなわちInPの(111)A面の法線方向への成長)を助長する作用を有する。本実施形態の光導波路型半導体素子2及びその製造方法によれば、このような場合であっても、半導体埋込領域41の成長高さhを十分に抑制し、金属配線層7aの断線を低減することができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
図16は、本発明の第2実施形態として、光導波路型半導体素子を含む多チャネル光導波路型受光デバイス(以下、単に受光デバイスという)の構成を示す平面図である。
【0060】
図16に示されるように、本実施形態の受光デバイス1Bは、光導波路型半導体素子10と、信号増幅部50A,50Bとを備えている。光導波路型半導体素子10は、略矩形状といった平面形状を有しており、InP基板上に光導波路部15a〜15fが形成されて成る。光導波路型半導体素子10は、2つの入力ポート11a,11bと、光分岐部(光カプラ)12とを有している。また、光導波路型半導体素子10は、InP基板上に形成された第1〜第4の受光素子部13a〜13dと、第1〜第4のキャパシタ14a〜14dとを更に有している。
【0061】
2つの入力ポート11a,11bは、光導波路型半導体素子10の一方の端縁10aに設けられている。一方の入力ポート11aには、QPSK方式によって変調された4つの信号成分を含む光信号Laが受光デバイス1Bの外部より入力される。また、他方の入力ポート11bには、局部発振光Lbが入力される。入力ポート11a,11bそれぞれは、光導波路部15a,15bそれぞれを介して光分岐部12と光学的に結合されている。なお、光導波路部15a,15bは、第1実施形態の光導波路部5と同様の構成を有する。
【0062】
光分岐部12は、90°光ハイブリッドを構成する。すなわち、光分岐部12は、MMIカプラによって構成されており、光信号Laと局部発振光Lbとを相互に干渉させることによって、光信号Laを、QPSK方式によって変調された4つの信号成分Lc1〜Lc4それぞれに分岐する。なお、これら4つの信号成分Lc1〜Lc4のうち、信号成分Lc1及びLc2は偏波状態が互いに等しく、同相(In-phase)関係を有する。また、信号成分Lc3及びLc4の偏波状態は、互いに等しく且つ信号成分Lc1及びLc2の偏波状態とは異なっている。信号成分Lc3及びLc4は、直角位相(Quadrature)関係を有する。
【0063】
受光素子部13a〜13dそれぞれは、光導波路部15c〜15fそれぞれを介して光分岐部12の4つの出力端と光学的に結合されている。光導波路部15c〜15fは、第1実施形態の光導波路部5と同様の構成を有しており、受光素子部13a〜13dは、第1実施形態の受光素子部6と同様の構成を有している。すなわち、光導波路型半導体素子10は、第1実施形態のメサ構造25と同様の構成を有する4本のメサ構造を備えている。これらのメサ構造は、光導波路部15c〜15f及び受光素子部13a〜13dをそれぞれ含んでおり、更に、第1実施形態の半導体部分9に相当する半導体部分をそれぞれ含んでいる。そして、これらのメサ構造の長手方向(光導波方向)はInP基板の[110]方向に沿っており、且つ、これらのメサ構造の長手方向の端面は、InP基板の主面に沿った面内において、InP基板の[110]方向に対して角度θ(0°<θ<90°)だけ傾斜している。また、受光素子部13a〜13dの両側面、及びメサ構造の長手方向の端面は、第1実施形態の半導体埋込領域41と同様の構成を有する半導体埋込領域によって埋め込まれている。
【0064】
受光素子部13a〜13dは、光導波路型半導体素子10の端縁10bに沿って、この順で並んで配置されている。受光素子部13a〜13dのカソードには、一定のバイアス電圧が供給される。受光素子部13a〜13dそれぞれは、4つの信号成分Lc1〜Lc4それぞれを光分岐部12から受け、これら信号成分Lc1〜Lc4それぞれの光強度に応じた電気信号(光電流)を生成する。光導波路型半導体素子10上には、受光素子部13a〜13dのアノードに電気的に接続された信号出力用電極パッド16a〜16dが設けられている。信号出力用電極パッド16a〜16dは、第1実施形態の信号出力用電極パッド8aと同様に、受光素子部13a〜13dを含むリッジ構造の端面上を経て配設される金属配線層(第1実施形態の金属配線層7aに相当)を介して、受光素子部13a〜13dそれぞれのアノードと電気的に接続されている。また、信号出力用電極パッド16a〜16dそれぞれは、ボンディングワイヤ20a〜20dそれぞれを介して、後述する信号増幅部50A,50Bの信号入力用電極パッド51a〜51dそれぞれと電気的に接続されている。
【0065】
キャパシタ14a〜14dは、例えば、光導波路型半導体素子10上に積層された2層の金属層と、該2層の金属層間に挟まれた絶縁層とを有するMIM(Metal Insulation Metal)キャパシタによって好適に構成される。キャパシタ14a〜14dそれぞれは、バイアス電圧が供給される受光素子部13a〜13dそれぞれのカソードと、基準電位線(GND線)との間に電気的に接続される。すなわち、2層の金属層のうち一方の金属層が受光素子部13a〜13dのカソードに接続され、他方の金属層が基準電位線(GND線)に接続される。
【0066】
キャパシタ14a〜14dそれぞれは、上記一方の金属層に接続されたバイアス電圧側電極パッド17a〜17dそれぞれと、上記他方の金属層に接続された基準電位側電極パッド18a〜18dそれぞれとを有している。バイアス電圧側電極パッド17a〜17dそれぞれには、ボンディングワイヤ20i〜20mそれぞれの一端が接続されている。ボンディングワイヤ20i〜20mそれぞれの他端は、図示しないバイアス電圧源と電気的に接続されている。
【0067】
基準電位側電極パッド18a〜18dそれぞれには、ボンディングワイヤ20e〜20hそれぞれの一端が接続されている。ボンディングワイヤ20e〜20hは、ボンディングワイヤ20a〜20dに沿って設けられており、ボンディングワイヤ20e〜20hそれぞれの他端は、信号増幅部50A,50Bの基準電位用電極パッド52a、52c、52d及び52fそれぞれに接続されている。
【0068】
信号増幅部50A及び50Bは、受光素子部13a〜13dから出力された電気信号(光電流)を増幅する増幅器(プリアンプ)である。信号増幅部50Aは、2つの信号入力用電極パッド51a及び51bを有しており、信号入力用電極パッド51a及び51bに入力された電気信号の差動増幅を行って一つの電圧信号を生成する。また、信号増幅部50Bは、2つの信号入力用電極パッド51c及び51dを有しており、信号入力用電極パッド51c及び51dに入力された電気信号の差動増幅を行って一つの電圧信号を生成する。前述したように、信号入力用電極パッド51a〜51dそれぞれは、ボンディングワイヤ20a〜20dそれぞれを介して信号出力用電極パッド16a〜16dそれぞれと電気的に接続されている。
【0069】
また、信号増幅部50Aは、3つの基準電位用電極パッド52a〜52cを更に有している。信号入力用電極パッド51aは基準電位用電極パッド52a及び52bの間に配置されており、信号入力用電極パッド51bは基準電位用電極パッド52b及び52cの間に配置されている。同様に、信号増幅部50Bは、3つの基準電位用電極パッド52d〜52fを更に有している。信号入力用電極パッド51cは基準電位用電極パッド52d及び52eの間に配置されており、信号入力用電極パッド51dは基準電位用電極パッド52e及び52fの間に配置されている。前述したように、信号増幅部50A,50Bの基準電位用電極パッド52a、52c、52d及び52fそれぞれは、ボンディングワイヤ20e〜20hそれぞれを介して基準電位側電極パッド18a〜18dそれぞれと電気的に接続されている。
【0070】
以上の説明した本実施形態の受光デバイス1Bによって得られる効果について説明する。上述した受光デバイス1Bは、光導波路型半導体素子10を備えている。光導波路型半導体素子10では、第1実施形態の光導波路型半導体素子2と同様に、メサ構造の端面とInP基板の[110]方向との成す角度θが、0°<θ<90°を満たしている。これにより、半導体埋込領域の成長高さを小さく抑制し、半導体埋込領域がメサ構造の上面に覆い被さるように成長する現象を抑えることができる。したがって、メサ構造の上面から端面上を経て信号出力用電極パッド16a〜16dへ配設される金属配線層の断線を低減することができる。
【0071】
また、光導波路型半導体素子10は、複数の受光素子部13a〜13dと、当該複数の受光素子部にそれぞれ光学的に接続された光導波路部15c〜15fを備えており、これらの受光素子部13a〜13dは、光導波路型半導体素子10の端縁10bに沿って、光導波方向と垂直な方向に、配置されている。これにより、複数の受光素子部13a〜13dの信号出力用電極パッド16a〜16dは、光導波路型半導体素子10の端縁10bに沿って配置することができる。このような配置を採用することで、複数の受光素子部13a〜13dの信号出力用電極パッド16a〜16dに対して、信号増幅部50A,50Bの信号入力用電極パッド51a〜51dも光導波路型半導体素子10の端縁10bに沿って配置することができる。また、信号出力用電極パッド16a〜16dのそれぞれと、信号入力用電極パッド51a〜51dのそれぞれとを電気的に接続するボンディングワイヤ20a〜20dは、光導波路型半導体素子10の端縁10bに沿って、光導波路方向に垂直な方向に、ほぼ同じ長さで、かつ短い距離で、それぞれ配置することが可能となる。この結果、大きなリードインダクタンス成分による周波数応答特性の劣化や、各信号間での周波数応答特性のばらつきを回避することができる。このような効果は、光導波路型半導体素子10が、複数の光導波路部に光学的接続された複数の受光素子部を備える場合により顕著である。
【0072】
また、本実施形態のように光導波路型半導体素子10がMIMキャパシタ14a〜14dを備える場合、MIMキャパシタ14a〜14dは、第1実施形態の素子分離工程(
図13を参照)と同様の工程によって露出したInP基板の表面上に形成されることがある。そして、InPウェハの面内においてMIMキャパシタ14a〜14dの耐圧分布を均一に近づける為には、MIMキャパシタ14a〜14dが形成されるInP基板の表面の平坦性が高いことが望ましい。しかしながら、素子分離工程においてInP基板を露出させる際、半導体埋込領域の表面の凹凸がInP基板の表面に転写されてしまい、InP基板の表面の平坦性が損なわれることがある。特に、半導体埋込領域を成長させるときにジクロロエチレンを添加する場合、半導体埋込領域の成長表面に多数のヒロック(Hillock)が発生し、素子分離工程においてそれらのヒロックがInP基板の表面に転写されてしまうので、InP基板の表面の平坦性が大きく損なわれてしまう。
【0073】
このような問題は、半導体埋込領域を成長させる際に塩化メチルを添加剤として用いることによって解決できる。塩化メチルは、半導体埋込領域の成長表面のヒロックの発生を抑え、成長表面を平坦にする作用を有するからである。しかし、半導体埋込領域に塩化メチルを添加すると、(111)A面の法線方向への成長速度がより速くなるので、従来の光導波路型半導体素子ではメサ構造上面への半導体埋込領域の被り(
図19を参照)が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0074】
この問題に対し、本実施形態の光導波路型半導体素子では、上述したようにメサ構造の端面とInP基板の[110]方向との成す角度θが、0°<θ<90°を満たしているので、メサ構造上面への半導体埋込領域の被りを効果的に抑制することができる。そして、塩化メチルの添加によって半導体埋込領域の表面の平坦性を高め、MIMキャパシタ14a〜14dの耐圧分布を均一に近づけることができる。
【0075】
本発明による光導波路型半導体素子の製造方法および光導波路型半導体素子は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記各実施形態では、光半導体素子部として受光素子部を例示しているが、本発明における光半導体素子部は、光導波路部との間で光の入射又は出射を行う半導体構造と、該半導体構造上の電極とを有していればよく、受光素子部に限られるものではない。
【0076】
また、上記各実施形態では、光導波コア層及び光吸収層の組成としてInGaAsPを例示しているが、光導波コア層及び光吸収層の組成は、InGaAsP系に限られず、例えばAlGaInAs系といった他の組成であってもよい。
【0077】
また、上記各実施形態では、InP基板上のバッファ層をn型とし、光導波コア層及び光吸収層上のクラッド層をp型としているが、各半導体層の導電型はこの逆であってもよい。
【0078】
また、上記各実施形態のInP基板上では、光導波路部及び光半導体素子部の他に、InP系電子デバイス(例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタ)、キャパシタ、及び抵抗が更に設けられ、これらが光電変換回路を構成しても良い。