(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962457
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】医療用押出成形二層チューブおよび輸液バッグ製品
(51)【国際特許分類】
B32B 1/08 20060101AFI20160721BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20160721BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20160721BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20160721BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20160721BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
B32B1/08 B
B32B7/02 105
B32B27/32 E
B32B27/30 B
B32B27/08
A61J1/00 330B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-256219(P2012-256219)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-100895(P2014-100895A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】竹爪 秀幸
【審査官】
飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−123314(JP,A)
【文献】
特開平11−290422(JP,A)
【文献】
実開昭54−89674(JP,U)
【文献】
特開平5−115560(JP,A)
【文献】
特開平6−98923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
A61J 1/00−19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製医療用被接合部材に外側から挿通して加熱によるブロッキングにより密着接合させる医療用押出成形二層チューブであって、
内層には、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、もしくはこれらの混合物ないしこれらを主成分とする素材であって、前記加熱温度以下の融点をもつ素材を用い、
外層には、ポリプロピレン、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、もしくはこれらの混合物ないしこれらを主成分とする素材であって、前記加熱温度を越える融点をもつ素材を用い、
外層の肉厚がチューブ全体の肉厚に対して2%〜5%であることを特徴とする医療用押出成形二層チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用押出成形二層チューブを組み込んだ輸液バッグを包装用樹脂フィルムに収容した後に加熱し、医療用押出成形二層チューブを密着接合させたことを特徴とする輸液バッグ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用押出成形二層チューブおよびこれを用いた輸液バッグ製品に関し、特に、加熱滅菌時にチューブ同士またはチューブとその他の部材とのブロッキングが生じない医療用押出成形二層チューブおよび取扱性に優れる輸液バッグ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用チューブに要求される性能には、薬液等に対する安全性、柔軟性、被接合部材との接合性などが挙げられる。
【0003】
例えば、患者が自宅で用いる腹腔透析バッグなどの輸液バッグは、衛生性を保つために、包装用樹脂フィルムで輸液バッグ製品を個別包装し、所定程度で加熱後流通する。このとき、医療用チューブと輸液バッグその他の被接合部材とは、熱負荷を利用したブロッキングにより密着接合する。
【0004】
これにより、チューブを組み込んだ製品製造においては、工程数の削減、接着剤等の使用材料の削減、過剰包装の抑制などを図ることが可能であった。換言すれば製品製造効率を高めることが可能であった。
【0005】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
ブロッキングによる密着接合は、被接合部材等との所望の接合箇所では好適であるものの、チューブ同士のブロッキングや、チューブと包装用樹脂フィルムとのブロッキングも生じ、患者が包装用樹脂フィルムを剥がしにくく、製品の取扱性に劣るという問題点があった。
【0006】
一方で、医療用チューブの素材は、要求性能や使用実績、製造容易性の観点から素材変更が困難であるという問題点があった。特にチューブには適度な柔軟性が求められ、一般に、加熱滅菌時の温度で、比較的柔軟な素材の場合は被接合部材と好適に密着接合し(しかしながら不必要なブロッキングも生じ)、逆に、比較的硬い素材の場合は不必要なブロッキングは生じないものの所望の被接合部材ともそもそも密着接合しないため、現状では柔軟素材を用いているというのが実情である。
【0007】
従来では、特公平1−31389に開示されるように、チューブ表面と被接合部材の接触面積を少なくする方法も提案されているが、ブロッキングの緩和にとどまり、解消までには至っていない。
【0008】
また、チューブと包装用樹脂フィルム等とのブロッキングを防止するため、不織布等の他のシートを嵌挿する方法も考えられるが、製品製造の工程数の増加や廃棄物の増加、価格の観点から必ずしも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平1−31389号公報
【特許文献2】特開2012−130439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、好適な柔軟性を有し、製品取扱性に優れ、製品製造効率も維持可能な医療用押出成形二層チューブを提供することを目的とする。
【0011】
また、取扱性に優れる輸液バッグ製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の医療用押出成形二層チューブは、樹脂製医療用被接合部材に外側から挿通して加熱によるブロッキングにより密着接合させる医療用押出成形二層チューブであって、内層には、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、もしくはこれらの混合物ないしこれらを主成分とする素材であって、前記加熱温度以下の融点をもつ素材を用い、外層には、ポリプロピレン、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、もしくはこれらの混合物ないしこれらを主成分とする素材であって、前記加熱温度を越える融点をもつ素材を用い、外層の肉厚がチューブ全体の肉厚に対して2%〜5%であることを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項1に係る発明は、好適な柔軟性を有し、製品取扱性に優れ、製品製造効率も維持可能な医療用押出成形二層チューブを提供することができる。具体的には、肉厚比を規定した二層構造により素材選択肢を増やして柔軟性を担保し、被接続部材とのブロッキングによる密着接合は維持しつつ、接合部以外は耐ブロッキング性を備えた医療用押出成形二層チューブを提供できる。
【0014】
なお、外層の肉厚は、融点が高く相対的に内層より硬い傾向にあるため、柔軟性を従来と同等とする観点から、好ましくは3%以上4%以下である。加熱温度は特に限定されないが、110℃〜130℃程度を挙げることができ、例えば120℃で加熱する場合は、内層素材の融点は120℃以下、外層素材の融点は120℃を超える素材を選択する。なお、例えば、スチレン系エラストマーは、従来の医療用チューブにも使用される軟質材であり、その融点は120℃程度以下のものがあり、単独で、または、他のより融点の高い素材との混合素材であっても、120℃雰囲気下でスチレン系エラストマー部分が軟化または溶融し、内層素材として用いるのに好適である。一方、例えば、ポリプロピレンは融点が160℃を越え、柔軟性には劣るものの120℃では溶融せず、ブロッキングが生じないため、外層素材として用いるのは好適である。
【0015】
請求項2に記載の輸液バッグ製品は、請求項1に記載の医療用押出成形二層チューブを組み込んだ輸液バッグを包装用樹脂フィルムに収容した後に加熱し、医療用押出成形二層チューブを密着接合させたことを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項2に係る発明は、取扱性に優れる輸液バッグ製品を提供することができる。具体的には、包装用樹脂フィルムを剥がしやすく、廃棄物の増加を招来しない輸液バッグ製品を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、好適な柔軟性を有し、製品取扱性に優れ、製品製造効率も維持可能な医療用押出成形二層チューブを提供することができる(請求項1)。また、取扱性に優れる輸液バッグ製品を提供することができる(請求項2)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の医療用押出成形二層チューブは、内層と外層とを有する二層構造であり、内層には柔軟性素材を使用し、外層には、融点の高い素材を採用する。
【0019】
まず、予備試験をおこなった。内層には、いずれも従来の医療用チューブに用いられている融点が120℃以下のスチレン系エラストマーの複合素材を2種用意し、外層は、各社のポリプロピレンを用いその厚みを全体に対する厚みの4〜14%としてチューブを押出成形した。
【0020】
評価としては、包装用樹脂フィルムとの間のブロッキングの有無を調べることとした。具体的には、チューブを、ポリアミド系合成繊維とポリプロピレンの二層シートからなる包装用樹脂フィルムのポリプロピレン側(包装内側素材)に載置し、120℃で所定時間加熱後、ブロッキングの有無を調べた。
【0021】
また、チューブの柔軟性も評価した。チューブの柔軟性は一面的な試験数値では評価しづらく、実際に手で様々に曲げてみて、従来品と比較することを目安とした官能評価とした。
【0022】
表1に、評価結果を示す。なお、表では外層素材の曲げ弾性率もあわせて掲載した。
【表1】
【0023】
表1から、外層の厚みがおよそ6%以下と、ある程度小さくなければ好適な柔軟性を有さないことが確認できた。
【0024】
次に、上記の予備試験の結果をふまえて、外層割合と、内層素材の混合比を検討した。内層については、水添スチレン−ブタジエンゴム(融点約120℃)を主成分とし、ポリプロピレン(融点約160℃)の添加量を変えた複合素材とし、外層についてはポリプロピレン(融点約160℃)を用いその厚みを8%〜2%とした。
【0025】
評価項目は、予備試験と同様のブロッキングと柔軟性の評価に加えて、被接合部材に対する挿入のし易さ、および、チューブを挟んで止液するクランプを用いた操作性について官能評価をおこなった。表2に、評価結果を示す。
【0027】
試験2と試験7とを比較すると、外層厚が同じであっても、PPの添加割合が少ないとチューブが全体として柔らかくなっていき挿入性も損ねる。また、試験2と試験4とを比較すると、外層厚が1%でも厚くなると、チューブが全体として硬くなっていくことが分かる。
【0028】
一方、試験2、試験3、試験4を比較すると、これらは外層厚がいずれも薄いものであるが、試験4のように極薄となると耐ブロッキング性が劣る。また、試験1と試験5を比較すると、外層がかなり厚いが、柔軟性に劣ったり、ブロッキングが発生したりしている。
【0029】
以上から、従って、内層の素材構成より、外層の肉厚がチューブの柔軟性、挿入性、またブロッキングに与える影響が大きいことが確認できた。すなわち、外層の肉厚は、全体の3%以上4%以下が好ましく、内層素材、その配合比、チューブ太さ、長さ、用途等も総合的に考慮すれば、2%〜5%の範囲内で設定可能であると判断できた。なお、2%を下回ると、押出成型時のムラによりブロッキングが発生しやすくなり、5%を越えるとチューブが硬くなっていく。
【0030】
なお、本発明は上記の態様に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、もしくはこれらの混合物ないしこれらを主成分とする素材であって、前記加熱温度以下の融点をもつ素材を用い、外層には、ポリプロピレン、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、もしくはこれらの混合物ないしこれらを主成分とする素材であって、前記加熱温度を越える融点をもつ素材を用いることができる。適宜、用途に応じて医療用チューブに要求される特性ないし物性を備える素材を選択すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のチューブは、ブロッキングで被接合部材と密着接合する用途に好適である。