(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記速度管理部は、前記第2の場合には、前記第1位置よりも前記停止位置から離れた第3位置で前記第1速度から減速を開始させ、前記第2位置よりも前記停止位置から離れた第4位置から前記第2速度で走行させる、請求項1に記載の搬送車システム。
【背景技術】
【0002】
従来、経路と、経路上に設けられた複数のステーションと、経路に沿って走行して物品を搬送する複数の搬送車と、搬送車の走行を制御するシステムコントローラと、を有する搬送車システムが知られている。
経路上を搬送する複数の搬送車同士の衝突を防止するために、例えば特許文献1には、障害物が存在する場合には搬送車を低速走行させ、障害物が存在しない場合には搬送車を高速走行させる走行制御技術が開示されている。
また、衝突を防止するためのブロッキング制御も知られている。ブロッキング制御とは、搬送車が次に走行するセグメントの割り付けを、他の搬送車との衝突が生じないように行う制御のことを言う。例えば、一の搬送車があるセグメントにブロッキング要求を行った場合、すでに他の搬送車に当該セグメントが割り当てられている場合にはシステムコントローラはブロッキング要求を許可しない。そのため、次のセグメントが割り付けられない搬送車は、次のセグメントが割り付けられるまで走行を停止する。このような従来の搬送車システムにおけるブロッキング制御を
図10に示す。
【0003】
図10は従来の搬送車の速度制御を示す説明図であり、
図10の(a)は搬送車Aについての各ポイントと速度との関係を示す関係図であり、
図10の(b)は各時刻における搬送車Aと搬送車Bとの走行状況を示す説明図である。経路には、搬送車が搬送指令を受ける複数のポイントが設けられており、ポイント間がセグメントである。
図10では、経路にはポイントP0、P1、P3・・・が設けられている。ポイントP0とポイントP1との間がセグメントaであり、ポイントP1とポイントP2の間がセグメントbであり、同様にセグメントc、セグメントd・・・が設けられている。
図10では、搬送車Aと、搬送車Aに先行する搬送車Bと、が経路上を走行している。
【0004】
図10の(b)に示すように、時刻t0では、搬送車Aは、セグメントb及びcが割り付けられており、定常速度で走行してポイントP1を通過している。一方、搬送車BはポイントP4に停止しており、セグメントd及びeが割り付けられている。
時刻t1では、搬送車Bは時刻t0と同様にポイントP4に停止しており、セグメントd及びeを割り付けられている。このとき、搬送車Aがセグメントdに対してブロッキング要求を行っても、すでにセグメントdが搬送車Bに割り付けられているので、システムコントローラはブロッキング要求を許可しない。そして、システムコントローラは搬送車Aに減速を指令し、搬送車Aは
図10の(a)に示すようにポイントP2とポイントP3との間において、定常速度から減速を開始する。
時刻t2では、システムコントローラは、搬送車Bに停止継続を指令しており、搬送車AにはポイントP3での停止を指令している。よって、搬送車BはポイントP4で停止を継続し、搬送車Aは速度を減速してポイントP3に停止する。搬送車Aは、
図10の(a)に示すようにポイントP2及びP3間の間で定常速度から減速して、ポイントP3の手前で低速クリープ速度に達し、ポイントP3では停止する。
【0005】
時刻t3では、システムコントローラは、搬送車Bに走行開始を指令し、搬送車Bへのセグメントdの割り付けを解放する。そして、システムコントローラは、搬送車Bからのブロッキング要求に基づいて、搬送車Bに新たなセグメントfを割り付ける。
時刻t4では、搬送車Bは、ポイントP4から加速しつつ走行を開始している。システムコントローラは、セグメントdが解放されたので、搬送車Aのブロッキング要求に基づいて搬送車Aにセグメントdを割り付け、搬送車Aに走行の開始を指令する。
【0006】
時刻t5では、搬送車AはすでにポイントP3から離れて加速している。
図10の(a)に示すように、搬送車Aは速度ゼロから加速し、定常速度に向かって加速している。また、搬送車Bは、定常速度に達しポイントP5を通過して走行している。搬送車Aにはセグメントd及びeが割り付けられており、搬送車Bにはセグメントf及びgが割り付けられている。
時刻t6では、搬送車Aは定常速度に達し、ポイントP4を通過して走行している。搬送車Bは、定常速度で走行しポイントP6を通過している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、多数の搬送車が経路を走行している場合には、次のセグメントが割り付けられるまでに時間を要し、その間、搬送車は停止しなければならないこともある。また、ある搬送車が停止することにより他の搬送車も停止する必要が生じ、その場合は渋滞が頻発する。また、搬送車の急速な減速及び加速が頻発し、搬送車のモータ及びブレーキ等に負荷がかかり、故障が発生しやすくなるとともに、消費電力が増加する。
例えば
図10に示すように、搬送車Aは、搬送車BがポイントP4で停止しているので、ポイントP2を通過してから減速を開始し、ポイントP3で停止している。また、搬送車Aは、搬送車Bに走行開始の指令が出され、搬送車Bに割り付けられていたセグメントdが解放され、かつ解放されたセグメントdが搬送車Aに割り付けられるまで停止する必要がある。よって、この搬送車Aの停止により、搬送車Aの後続の搬送車も停止する必要があり、そのため渋滞が頻発する。さらに、
図10に示すように、搬送車Aは、停止位置であるポイントP3に近い位置から急速に減速している。また、走行開始の指令を受けて、搬送車Aは速度ゼロから定常速度まで加速している。このような急速な減速及び加速によって、モータには大きな負荷がかかっている。
また、特許文献1のように、障害物の有無により低速走行及び高速走行を切り替える場合にも、低速及び高速の切替によりモータ及びブレーキ等に負荷がかかり、その結果、故障の発生及び消費電力の増加を招く。
【0009】
本発明の課題は、搬送車の故障を抑制し、消費電力を低下させるとともに渋滞を緩和させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る搬送車システムは、予め定められた経路を走行する複数の搬送車と、搬送車の速度を管理する速度管理部を有するコントローラと、を備えている。
速度管理部は、搬送車を所定の停止位置で停止させることが予め決定している第1の場合には、停止位置の手前の第1位置において第1速度から減速を開始させて、停止位置で搬送車を停止させる。
また、速度管理部は、搬送車を停止位置で停止させることが予定されているが、停止位置を通過させる可能性がある第2の場合には、停止位置で停止させる際には、第1位置よりも停止位置に近い第2位置で、第1速度よりも小さい第2速度から減速を開始させて、停止位置で搬送車を停止させる。
【0011】
上記搬送車システムでは、搬送車を所定の停止位置で停止させることが予め決定している場合と、搬送車を停止位置で停止させることが予定されているが、停止位置を通過させる可能性がある場合と、で搬送車の速度制御を異ならせる。
搬送車の走行方向に沿って、第1位置、第2位置及び停止位置の順に位置している。また、第1速度>第2速度関係にある。コントローラの速度管理部は、搬送車を予め所定の停止位置で停止させる第1の場合には、第1位置において、例えば定常速度である第1速度から急速に減速させて、停止位置で停止させる。一方、速度管理部は、搬送車を停止位置で停止させることが予定されているが、停止位置を通過させる可能性がある第2の場合には、第2位置で第2速度から減速を開始させて、停止位置で搬送車を停止させる。
第2位置は、例えば停止位置の直前の位置である。第2の場合には、通過する可能性がある停止位置の直前まで搬送車を第2速度を維持したままで走行させることができる。よって、搬送車を最終の目的地までより迅速に走行させることができる。
また、第2の場合において一の搬送車が頻繁に停止する場合、後続の搬送車は、衝突防止の観点から一の搬送車との距離をある程度保つために頻繁に停止し、その結果、渋滞が頻発することとなる。しかし、一の搬送車が停止位置の直前まで第2速度で走行を継続するので、後続の搬送車も停止することなく走行が可能であり、渋滞を緩和することができる。
【0012】
さらに、第2の場合において、搬送車が第2位置に到達するまでに、搬送車を停止させずに通過させることが判明した場合には、速度管理部は、搬送車を停止の状態から加速させるのではなく第2速度から第1速度に向けて加速する。そのため、搬送車を加速させるためのモータに対する負荷を小さくしつつ、容易に第1速度まで到達させることができる。また、モータに対する負荷が小さいので消費電力を小さくすることができる。
【0013】
このように、第1の場合と第2の場合とで速度制御を異ならせることで、第1の場合には、搬送車Aは、予め定められた目的地である停止位置に迅速に到着することができる。一方、第2の場合には、加速時の負荷を小さくすることができるので、搬送車の故障発生の抑制、消費電力の低減及び経路の延命化を図ることができる。
【0014】
速度管理部は、第2の場合には、第1位置よりも停止位置から離れた第3位置で第1速度から減速を開始させ、第2位置よりも停止位置から離れた第4位置から第2速度で走行させてもよい。
【0015】
例えば、搬送車の走行方向に沿って、第3位置、第4位置、第1位置、第2位置及び停止位置の順に位置している。第2の場合には、第1の場合に減速を開始させる第1位置よりも早い段階である第3位置において、第1速度から減速を開始させ、第2位置では搬送車はすでに第2速度で走行している。つまり、第2の場合には搬送車は緩やかに減速することができる。よって、第2の場合には、第1の場合に比べて減速時のブレーキ及び経路への負荷を緩和することができる。
【0016】
速度管理部は、第2の場合において、停止位置で停止させることが搬送車が第2位置に到達するまでに判明した場合は、第2位置において第2速度から減速を開始させ、停止位置で搬送車を停止させてもよい。また、停止位置で停止させずに通過させることが搬送車が第2位置に到達するまでに判明した場合は、第1速度に向けて加速を開始させてもよい。
【0017】
第2の場合において搬送車を停止させる場合には、第2位置において第2速度から減速させて停止位置で停止させることができる。停止位置直前の第2位置から減速して停止位置に停止可能であるのは、定常速度である第1速度よりも遅い第2速度で搬送車が走行しているからである。
一方、第2の場合において第2速度で走行している搬送車を再び第1速度で走行させる場合には、加速のためのモータに対する負荷を小さくしつつ、容易に第1速度まで到達させることができる。
【0018】
経路は所定の長さを有する複数のセグメントの連続により構成されている。また、複数の搬送車には、第1搬送車と、第1搬送車の走行方向に対して前に存在する第2搬送車と、が含まれる。
コントローラは、ブロッキング要求判定部と、セグメント割付部と、をさらに有している。ブロッキング要求判定部は、新たなセグメントまでの割り付けを要求するブロッキング要求を第1搬送車から受け付け、ブロッキング要求に応じてセグメントの割り付けを許可するか否かを判定する。セグメント割付部は、ブロッキング要求判定部の判定結果に基づいて、第1搬送車に走行可能なセグメントを割り付ける。
第2の場合において、
ブロッキング要求判定部が、第1搬送車がブロッキング要求を行ったセグメントと、第2搬送車に割り付けられているセグメントと、が少なくとも一部重複していると判断すれば、速度管理部は、第1位置に達する前に、第1搬送車を第1速度から第2速度に減速させて、第2位置まで第2速度を維持させ、ブロッキング要求判定部は、第1搬送車と第2搬送車との間隔が所定距離となる第2位置に到達するまでは、重複するセグメントを第1搬送車に仮に割り付ける仮割付状態と判定する。
仮割付状態において、
セグメント割付部が第2搬送車に割り付けられているセグメントを解放すれば、ブロッキング要求判定部は、仮割付状態を変更し、重複するセグメントの第1搬送車への割り付けを許可し、速度管理部は、第2速度から第1搬送車を加速させる。
【0019】
搬送車は、割り付けられたセグメントに従って経路を走行することができる。搬送車の衝突を回避するため、一のセグメントは一の搬送車にのみ割り付けられるのが通常である。
ここで、第1搬送車がブロッキング要求を行ったセグメントが第2搬送車にすでに割り付けられている場合もある。この場合、速度管理部は第1搬送車の速度を第1速度から第2速度に減速させる。これに基づいて、ブロッキング要求判定部は、第1搬送車がブロッキング要求を行ったセグメントと第2搬送車に割り付けられているセグメントが重複していても、仮の状態で第1搬送車に当該セグメントを割り付ける。よって、第1搬送車は停止位置直前の第2位置まで、中程度の速度である第2速度で走行可能である。
【0020】
停止位置で停止しなければならないと判明した場合には、仮割付状態のセグメントの第1搬送車への割り付けが禁止され、第1搬送車は第2速度から減速して停止位置で停止する。逆に停止位置で停止しないと判明した場合には、仮割付状態から脱し、第1搬送車には重複しているセグメントが実際に割り付けられる。よって、第1搬送車は、第2速度から第1速度に向けて加速して走行できる。
このような仮割付状態を設けることで、第1搬送車を停止位置の直前の第2位置まで第2速度で走行させることができるので、後続の搬送車も走行を継続でき、渋滞を緩和することができる。また、第2速度から第1速度に加速させる際のモータに対する負荷を小さくし、その結果消費電力を小さくできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る搬送車システムでは、搬送車の故障を抑制し、消費電力を低下させるとともに渋滞を緩和させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1)本発明の概要
(1−1)搬送車システム
本発明の搬送車システムは、経路と、経路に沿って走行する複数の搬送車と、搬送車の走行を制御するシステムコントローラと、を備える。経路には、搬送車の一通過地点である複数のポイントが設けられており、ポイント間がセグメントとして定義される。
搬送車は荷物を搬送する台車である。システムコントローラは、荷物を目的地に搬送する搬送命令の入力を外部から受け付けて、最適の搬送車を選択して、選択した搬送車に荷物の搬送指令を行う。また、システムコントローラは、搬送車間の衝突を防止するための制御を行う。
【0024】
(1−2)本発明の速度制御
本発明の搬送車システムでは、第1の場合と第2の場合とで速度制御を異ならせる。第1の場合とは、搬送車Aを所定の停止位置で停止させることが予め決定されている場合である。第2の場合とは、搬送車Aを停止位置で停止させることが予定されているが、停止位置を通過させる可能性がある場合である。言い換えれば、第2の場合とは、搬送車Aを停止位置で停止させる可能性があるが、停止させない場合もある。
【0025】
以下に、
図1を用いて本発明の速度制御の概要について説明する。
図1は本発明における搬送車の速度制御を説明するための説明図である。
図1の例の場合、搬送車Aと、搬送車Aに先行する搬送車Bと、が経路上を走行しているものとする。また、最初、搬送車Bは停止しており、搬送車Aは経路上を走行し搬送車Bに近づいていく。そして、搬送車Bはある時点で停止から再び走行を開始する。このような状況を例に挙げて、搬送車Aの速度制御を説明する。なお、
図1において、二点鎖線が第1の場合を示す速度制御である。また、実線が、第2の場合において搬送車Aを停止させずに再び加速させる場合の速度制御である。実線から分岐した破線が、第2の場合において搬送車Aを停止位置で停止させた後、加速させる場合の速度制御である。
【0026】
(a)第1の場合の速度制御
第1の場合、搬送車Aは、例えば停止位置で停止する指令をシステムコントローラから走行を開始する時点に受信しており、停止位置で停止することが予め決定されている。この場合、搬送車Aは、システムコントローラの指令に基づいて、停止位置の手前の所定の第1位置において第1速度から所定の第1減速率で第3速度まで減速する。ここで、第1位置は、停止位置から所定距離L1手前にある第1a位置において、搬送車Aが第3速度に到達可能な位置である。また、第1速度とは搬送車Aが経路を走行する際の定常速度であり、例えば定常速度の100%で表される。
搬送車Aは、第1位置から第1減速率で減速することで、第1a位置において第3速度にまで減速する。その後、搬送車Aは、第3速度で走行を継続した後、予め定められた停止位置で停止する。第3速度は例えば定常速度の10%であり、搬送車Aは第1a位置から停止位置直前まで低速クリープ走行する。
【0027】
(b)第2の場合の速度制御
(b−1)中速クリープ走行
第2の場合、搬送車Aを停止位置で停止させることが予定されているが、停止位置を通過させる可能性がある。よって、搬送車Aは、例えば走行途中において、一旦、所定の停止位置で停止する指令をシステムコントローラから受信したが、場合によっては停止位置を通過させる指令をシステムコントローラから受信する。。さらに言い換えれば、搬送車Aは、停止位置の直前まで停止位置で搬送車Aが停止するかどうかは不明である。そのため、最初、搬送車Aは定常速度で走行しており、停止している搬送車Bに対してため徐々に近づいている。
搬送車Aは、走行を継続するために、走行している経路の延長上にある新たな経路での走行を要求するブロッキング要求を行う。しかし、システムコントローラは、搬送車Bが停止しており、搬送車Aが定常速度のままで走行を継続すると搬送車Aと搬送車Bとが衝突する可能性があると判断する。よって、システムコントローラは、搬送車Aのブロッキング要求を許可しない。さらに、システムコントローラは、搬送車Aと搬送車Bとの衝突を回避するために、第3位置において、所定の第2減速率で第1速度から第2速度に減速するように搬送車Aに指令する。この指令に応じて、搬送車Aは、第3位置において第1速度から減速を開始する。ここで、第3位置は、停止位置から所定距離L2手前にある第3a位置において、搬送車Aが第2速度に到達可能な位置である。
【0028】
第3位置は、第1の場合に減速を開始する第1位置よりも停止位置から離れた位置にある。つまり、第3位置と停止位置との距離は、第1位置と停止位置との距離よりも大きい。よって、第2減速率を、第1の場合の第1減速率よりも小さく設定することができる。その結果、搬送車Aは第1速度から第2速度に緩やかに減速する。
図1においても、第1の場合に第1速度から第3速度に減速するときの傾きより、第2の場合に第1速度から第2速度に減速するときの傾きの方が緩やかであることが分かる。なお、第2速度は例えば定常速度の30〜40%であり、第1速度よりも大きい。
搬送車Aは、第3位置から減速することで第3a位置において第2速度にまで減速する。そして、第3a位置から停止位置の直前の第2位置まで、搬送車Aは第2速度で中速クリープ走行する。
【0029】
(b−2)停止
次に、搬送車Aは、例えば光センサにより搬送車Bとの間隔が所定距離L3以下となったと判断すると、第2速度から減速して停止位置で停止する。
図1において、搬送車Aと搬送車Bとの間隔が所定距離L3となる位置が第2位置である。
図1の破線に示すように、搬送車Aは第2位置から減速を開始して停止位置で速度がゼロとなる。ここで、前記所定距離L3は、搬送車Aが第2速度から減速して所定の停止位置に停止可能な距離に設定されている。
前記では、搬送車Aが停止すべきと判断して停止するが、搬送車Aはシステムコントローラからの指令に応じて停止位置で停止してもよい。例えば、システムコントローラは、搬送車A及び搬送車Bから位置データ及び速度等を含む走行データを取得しており、搬送車Aと搬送車Bとの間隔が所定距離L3以下となったかどうかを判断する。システムコントローラは、搬送車間の間隔が所定距離L3以下になったと判断すると、第2速度からの減速を搬送車Aに指令し、停止位置で停止させる。
【0030】
(b−3)第2速度からの加速
ここで、搬送車Bが例えば第2速度で走行中にシステムコントローラの指令に基づいて、停止の状態から加速して走行を開始したとする。搬送車Bが走行を開始したことから、搬送車Aと搬送車Bとの衝突を回避することができる。システムコントローラは、上記の(b−1)では、搬送車Aが要求したブロッキング要求を許可することができなかった。しかし、システムコントローラは、衝突を回避できると判断すれば、搬送車Aを第2速度から加速させる。
図1の実線に示すように、例えば搬送車Aが第2位置に達する直前で衝突を回避可能となれば、搬送車Aは第2速度から第1速度に向けて加速する。
【0031】
(b−4)停止からの加速
逆に、搬送車Aが第2位置よりも進んだ段階で、搬送車Bが停止の状態から加速して走行を開始したとする。例えば、搬送車Aが停止位置で停止した後に搬送車Bが走行を開始した場合でもよい。搬送車Aが第2位置よりも進み、搬送車Aと搬送車Bとの間隔が所定距離L3以下となったため、一旦、搬送車A3は上記(b−2)に示すように停止する。その後、搬送車Bが走行を開始したことから、搬送車Aが走行を開始しても搬送車Aと搬送車Bとの衝突を回避することができる。よって、システムコントローラは、搬送車Aに速度ゼロから第1速度まで加速するように指令する。搬送車Aは、システムコントローラからの指令に基づいて、
図1の破線に示すように、停止位置において速度ゼロから第1速度まで加速を開始する。
【0032】
(c)本発明の効果
上述の通り、第1の場合、搬送車Aが停止位置で停止することが予め決定されている。搬送車Aは停止位置の手前の第1位置において第1速度から急速に減速をし、第3速度で低速クリープ走行し、停止位置で停止する。搬送車Aは第1位置までは第1速度で走行可能であり、目的地である停止位置まで迅速に到着することができる。
一方、第2の場合、搬送車Aが停止位置で停止するかどうかは不明である。そこで、搬送車間の衝突を回避するために搬送車Aは第3位置において緩やかに減速を開始し、その後に第2速度で中速クリープ走行する。
ここで、第3位置は第1位置よりも停止位置から離れた位置にある。よって、第3位置における第1速度からの第2減速率を、第1位置における第1速度からの第1減速率よりも小さくすることができる。言い換えれば、搬送車は第3位置において緩やかに減速することができる。よって、第2の場合には、第1の場合に比べて減速時のブレーキへの負荷を緩和できるとともに、経路への負荷も緩和することができる。
【0033】
停止位置の直前の第2位置において、第1の場合では搬送車Aはすでに定常速度の約10%の第3速度にまで減速しているが、第2の場合は第1速度よりも速い第2速度で走行している。よって、停止位置で停止させるかどうか不明の第2の場合には、停止位置の直前まで搬送車をある程度の中速度を維持したままで走行させることができる。そのため、停止させるかどうか不明の場合に、搬送車を最終の目的地までより迅速に走行させることができる。
ここで、搬送車Aがもし頻繁に停止する場合には、衝突防止の観点から搬送車Aとの距離をある程度保つために、搬送車Aの後続の搬送車もまた頻繁に停止し、渋滞が頻発することとなる。しかし、第2の場合の速度制御では、搬送車Aはある程度の中速度である第2速度で走行を継続するので、後続の搬送車も停止することなく走行が可能であり、渋滞を緩和することができる。
【0034】
さらに、第2の場合において、搬送車Aが第2位置に到達するまでに搬送車Aを停止させないことが判明した場合には、搬送車Aを停止の状態から加速させるのではなく第2速度から第1速度に向けて加速することができる。また、第2速度は、定常速度である第1速度よりは遅いものの、第1の場合の減速後の第3速度よりは速い。そのため、第3速度から第1速度に加速する場合よりも、第2速度から第1速度に加速させる場合の方が、モータに対する負荷を小さくしつつ、容易に第1速度まで到達させることができる。つまり、モータに対する負荷が小さいので、消費電力を小さくすることができる。
このように第1の場合と第2の場合とで速度制御を異ならせることで、第1の場合には、搬送車は、予め定められた目的地である停止位置に迅速に到着することができる。一方、第2の場合には、減速時及び加速時の負荷を小さくすることができるので、搬送車の故障発生の抑制、消費電力の低減及び経路の延命化を図ることができる。
【0035】
(2)具体的説明
(2−1)搬送車システム
図2及び
図3を用いて本発明の一実施形態が採用された搬送車システム1について説明する。
図2は、本発明の一実施形態が採用された搬送車システムの模式図である。
図3は搬送車システムの制御構成を示す構成図である。
搬送車システム1は、経路2と、経路2上を走行する複数の搬送車3と、搬送車3の走行を制御するシステムコントローラ40と、を有している。
経路2は、走行レール4とガイドレール6を有している。走行レール4は、左右の第1走行レール4a及び第2走行レール4bから構成されている。第1走行レール4a及び第2走行レール4bは、平坦な走行面を有している。
【0036】
経路2には、搬送車3の一通過地点である複数のポイントが設けられており、ポイント間がセグメントとして定義されている。
ガイドレール6は、第1ガイドレール6a及び第2ガイドレール6bを有している。第1ガイドレール6a及び第2ガイドレール6bは、第1走行レール4a及び第2走行レール4bの外側端にそれぞれ設けられている。第1ガイドレール6a及び第2ガイドレール6bは上方に延びている。
また、第1走行レール4a及び第2走行レール4bに沿って、図示しない給電線が設けられている。
【0037】
システムコントローラ40は、荷物を目的地に搬送する搬送命令の入力を外部から受け付け、経路2に設けられたポイントにおいて各搬送車3に荷物の搬送指令を行う。また、システムコントローラ40は、搬送車3間の衝突を防止するためのブロッキング制御を行う。そのため、システムコントローラ40は各ポイントにおいて搬送車3と通信を行う。例えば、システムコントローラ40は、各ポイントでの通過、停止、速度などの搬送車3の状況を示す情報を搬送車3から受信する。システムコントローラ40は、荷物の搬送命令及び搬送車3の状況を考慮し、減速、加速、停止、各搬送車3へのセグメントの割り付けなどの指令を搬送車3に行う。
【0038】
(2−2)搬送車
搬送車3は、搬送車本体10と、駆動走行部11と、従動走行部12を有している。搬送車本体10の構造は従来と同じであるので説明を省略する。搬送車3は例えば荷物を搬送するボギー代車であり、駆動走行部11及び従動走行部12は、搬送車本体10に対してそれぞれ回動自在に取り付けられる。
図2を用いて、駆動走行部11を説明する。駆動走行部11は、主に、本体フレーム13と、第1駆動輪ユニット14と、第2駆動輪ユニット15と、を有している。
第1駆動輪ユニット14は、本体フレーム13の右側端部に装着されており、第1駆動輪17と、第1モータ18と、第1エンコーダ19とを有している。第1駆動輪17は、第1走行レール4aの走行面の上に載っている。第1モータ18は、第1駆動輪17に連結されている。第1エンコーダ19は、第1モータ18の回転を計測して、パルス信号を送信する。これにより、第1モータ18の回転速度や回転回数を得ることができる。
【0039】
第2駆動輪ユニット15は、本体フレーム13の左側端部に装着されており、第2駆動輪20と、第2モータ21と、第2エンコーダ22とを有している。第2駆動輪20は、第2走行レール4bの走行面の上に載っている。第2モータ21は第2駆動輪20に連結されている。第2エンコーダ22は、第2モータ21の回転を計測して、パルス信号を送信する。これにより、第2モータ21の回転速度や回転回数を得ることができる。
従動走行部12は、主に、本体フレーム16と、第1従動輪23と、第2従動輪24と、を有している。第1従動輪23は、走行レール4の第1走行レール4aの上に載っている。第2従動輪24は、走行レール4の第2走行レール4bの上に載っている。
【0040】
(2−3)センサ及び被検出部
搬送車本体10にはさらに反射テープ25及び光電センサ32が設けられている。反射テープ25は例えばアルミなどからなる反射率の高いテープであり、例えば搬送車3の後部に設けられている。光電センサ32は光を検知するセンサであり、例えば搬送車3の前部に設けられている。後続の搬送車3が例えば光を出射し、先行の搬送車3の反射テープ25に光が照射されると、後続の搬送車3は反射された光を光電センサ32により検出する。後続の搬送車3は、光を検出することで先行の搬送車3との間隔を計測し、停止することができる。よって衝突を回避することができる。
【0041】
(2−4)制御構成
再び
図3を用いて搬送車システム1の制御構成を説明する。
(a)システムコントローラの制御構成
搬送車システム1のシステムコントローラ40は、コントローラ本体42と、メモリ43と、を有している。コントローラ本体42はCPU等からなり、メモリ43はRAM、ROM等からなる。
コントローラ本体42は、複数の搬送車3を管理し、これらに搬送指令を割り付ける割り付け機能を有している。この割り付け機能により、各搬送車3に割り付けられるセグメントの重複を防ぎ、搬送車3間の衝突を防止するブロッキング制御を行っている。
【0042】
コントローラ本体42は、搬送車3への搬送指令を作成するために各搬送車3と連続的に通信している。また、コントローラ本体42はこの通信により各搬送車3から位置データ及び速度等を含む走行データを取得し、その位置情報を把握している。
このようなコントローラ本体42は、速度管理部44、ブロッキング要求判定部45及びセグメント割付部46などの制御機能部を有している。コントローラ本体42が、メモリ43に記憶された制御プログラムを実行することで、各制御機能部が構成される。
【0043】
(a−1)セグメント割付部
セグメント割付部46は、荷物を目的地に搬送する命令である搬送命令の入力を外部から受け付けると、最適な搬送車3を選択し、搬送命令に基づいて搬送車3にセグメントを割り付ける。なお、「搬送命令」は、走行に関する命令や、荷つかみ位置と荷おろし位置に関する命令を含んでいる。
また、セグメント割付部46は、ブロッキング要求判定部45の判定結果に基づいて各搬送車にセグメントを割り付ける。セグメント割付部46はブロッキング要求判定部45がブロッキング要求を許可すればセグメントの割り付けを行い、許可しなければセグメントの割り付けを行わない。このようなセグメントの割り付け制御により、搬送車3間の衝突が防止され、搬送車3は割り付けられたセグメントを走行可能となる。
【0044】
(a−2)ブロッキング要求判定部
ブロッキング要求判定部45は、各搬送車から次に走行するセグメントに対するブロッキング要求を受け付け、ブロッキングを許可するか否かを判定する。ブロッキング要求とはセグメント割り付けの要求である。ブロッキング要求判定部45は、原則として、すでに他の搬送車3に割り付けられているセグメントに対してブロッキング要求がなされた場合は、そのブロッキング要求を許可しない。言い換えれば、ブロッキング要求がなされたセグメントと、すでに割り付けられているセグメントと、が重複している場合にはブロッキング要求は許可されない。
【0045】
ここで、ブロッキング要求を行った一の搬送車3は、減速をして減速後の速度で走行している間に、他の搬送車3へのセグメントの割り付けが解放されるのを待機することができる。そして減速後の速度で一の搬送車3が走行している間に、他の搬送車3が当該セグメントを出ていけば当該セグメントの割り付けが解放される。そうすれば、ブロッキング要求判定部45は一の搬送車3のブロッキング要求を許可することができる。よって、ブロッキング要求判定部45は、他の搬送車3へのセグメントの割り付けが解放される可能性がある場合には、ブロッキング要求のなされたセグメントの割り付けを仮に許可する。このようにセグメントを仮に割り付けることを、仮割付と言うものとする。
【0046】
この仮割付状態において、該当のセグメントが解放されればブロッキング要求を許可し、該当のセグメントが解放されなければブロッキング要求を許可しない。
例えば、仮割付状態において、他の搬送車3が該当するセグメントに含まれるポイントを通過すれば、そのことに基づいて、セグメント割付部46は該当するセグメントを解放する。ブロッキング要求判定部45は、一の搬送車3がブロッキング要求を行っているセグメントが解放されたので、当該セグメントの一の搬送車3への割り付けを実際に許可する。この割り付けを、仮割付と区別するためにここでは本割付と言うものとする。
一方、仮割付状態において、セグメント割付部46は、搬送車3間の間隔が衝突する可能性のある所定距離L3以下となったことを検出すると、当該セグメントの解放は行わない。そのため、ブロッキング要求判定部45は、当該セグメントの割り付けを禁止し、ブロッキング要求を禁止する。あるいは、セグメント割付部46は、ブロッキング要求を行っている一の搬送車3が第2速度から減速を開始したことを検出すると、当該セグメントの解放は行わない。
以上のようなブロッキング制御により、セグメント割り付けの重複を防ぎ、搬送車3間の衝突を防止する。
【0047】
(a−3)速度管理部
速度管理部44は、予め所定の停止位置で停止することが決定されている第1の場合と、搬送車3を停止位置で停止させることが予定されているが、停止位置を通過させる可能性がある第2場合と、で速度制御を異ならせる。また、速度管理部44は、セグメント割付部46により割り付けられたセグメント及びブロッキング要求判定部45での判定結果に基づいて、各搬送車3の速度を制御する。
【0048】
i)第1の場合の速度制御
速度管理部44は、第1の場合は、外部から入力された搬送命令を解析し、解析に基づいて搬送車の停止位置を把握している。よって、速度管理部44は、
図1に示すように、停止位置の手前の第1位置において第1速度から所定の第1減速率で減速するように搬送車3に指令する。ここで、第1位置は、停止位置から所定距離L1手前にある第1a位置において、搬送車Aが第3速度に到達可能な位置である。さらに、速度管理部44は、減速後の第3速度で低速クリープ走行して、停止位置で停止するように搬送車3に指令する。その後、搬送車3に新たなセグメントが割り付けられれば、速度管理部44は搬送車3に第1速度への加速を指令する。
【0049】
ii)第2の場合の速度制御
一方、速度管理部44は、第2の場合は、
図1に示すように、第3位置において第1速度から所定の第2減速率で減速し、第2速度で中速クリープ走行するように一の搬送車3に指令する。ここで、第3位置は、停止位置から所定距離L2手前にある第3a位置において、搬送車Aが第2速度に到達可能な位置である。
【0050】
具体的に説明すると、一の搬送車3はあるセグメントに対してブロッキング要求を行ったが、すでに他の搬送車3に当該セグメントが割り付けられているので、ブロッキング要求が許可されていない。そして、外部から入力された搬送命令から、一の搬送車3は当該セグメントにおいて停止する命令を受けていないことが分かる。つまり、当該セグメントが解放されれば、一の搬送車3は走行を続けることを予定している。速度管理部44は、一の搬送車3のブロッキング要求が許可されていないとの情報をブロッキング要求判定部45から取得する。さらに、速度管理部44は、一の搬送車3が当該セグメントに停止する予定が無いことを、外部から入力された搬送命令から把握する。これらの情報によれば一の搬送車3が所定の停止位置で停止するか不明であるので、速度管理部44は、前述の通り第1速度から減速して第2速度で中速クリープ走行するように一の搬送車3に指令する。
【0051】
一の搬送車3が第1速度から減速を開始すれば、一の搬送車3がブロッキング要求をしたセグメントが、他の搬送車3のセグメントと重複していても、ブロッキング要求判定部45は一の搬送車3に当該セグメントの割り付けを仮に許可する。このような仮割付状態において一の搬送車3が第2速度で中速クリープ走行している間に、他の搬送車3が当該セグメントを出て行くことで当該セグメントが解放されれば、ブロッキング要求判定部45が一の搬送車3のブロッキング要求を許可し、セグメント割付部46が当該セグメントを一の搬送車3に割り付ける。そして、セグメント割付部46は、仮割付状態を脱し、一の搬送車3に実際にセグメントが割り付けられたことを速度管理部44に報告する。速度管理部44は、セグメント割付部46からの報告に基づいて、第2速度から第1速度へ加速することを一の搬送車3に指令する。
また、速度管理部44は、仮割付状態において一の搬送車3が中速クリープ走行している間に、他の搬送車3との間隔が所定距離L3以下となったと判断すれば、第2速度から減速して停止するように一の搬送車3に指令する。なお、この場合、一の搬送車3が、他の搬送車3との間隔に基づいて停止してもよい。その後、一の搬送車3に新たなセグメントが割り付けられれば、速度管理部44は搬送車3に第1速度への加速を指令する。
【0052】
(a−4)メモリ
メモリ43内には、制御プログラム以外にさらにルートマップが記憶されている。ルートマップとは、走行ルートの配置、原点の位置、原点を基準とする基準位置や移載位置の座標を記載したマップである。座標は、原点からの走行距離を搬送車3のエンコーダの出力パルス数などに換算したものである。
【0053】
(b)搬送車の制御構成
搬送車3は走行制御部30を有している。走行制御部30は、CPU、RAM、ROM等からなりプログラムを実行するコンピュータである。走行制御部30には、第1エンコーダ19、第2エンコーダ22、第1モータ18、第2モータ21及び光電センサ32が接続されている。
走行制御部30は、システムコントローラ40からの搬送指令に基づいて搬送車3を目的地まで走行させる。また、走行制御部30は、第1エンコーダ19から第1モータ18の回転速度や回転回数を取得する。同様に走行制御部30は、第2エンコーダ22から第2モータ21の回転速度や回転回数を取得する。これにより、走行制御部30は、搬送車3の位置情報及び速度情報などの走行データを取得する。走行制御部30は、システムコントローラ40からの搬送指令及び搬送車の走行データなどに基づいて搬送車3の走行を制御する。また、走行制御部30は走行データをシステムコントローラ40に送信する。
【0054】
(2−5)第2の場合における速度制御
本発明では、停止位置で停止させることが予め決定している第1の場合と、搬送車を停止位置で停止させることが予定されているが、停止位置を通過させる可能性がある第2の場合と、で速度制御を異ならせる。その中でも特徴的な、第2の場合の速度制御についてまず説明する。
【0055】
(a)第2の場合において、停止後に加速する場合の速度制御
第2の場合の速度制御は、一旦停止した後に加速する場合と、停止せずに加速する場合と、が含まれる。まず、一旦停止した後に加速する場合について
図4を用いて説明する。
図4は停止後に加速する場合の速度制御を示す説明図であり、
図4の(a)は搬送車Aについての各ポイントと速度との関係を示す関係図であり、
図4の(b)は各時刻における搬送車Aと搬送車Bとの走行状況を示す説明図である。
経路には、搬送車が搬送指令を受ける複数のポイントが設けられており、ポイント間がセグメントである。
図4では、経路にはポイントP0、P1、P3・・・が設けられている。ポイントP0とポイントP1との間がセグメントaであり、ポイントP1とポイントP2の間がセグメントbであり、同様にセグメントc、セグメントd・・・が設けられている。例えば搬送車Aと、搬送車Aに先行する搬送車Bと、が経路上を走行している。
【0056】
図4において、二点鎖線が第1の場合を示す速度制御である。また、実線が、以下に説明する、第2の場合において搬送車Aを停止させて再び加速させる場合の速度制御である。
図4(b)に示すように搬送車Bは時刻t3までポイントP4に停止しており、搬送車Bに対して搬送車Aが近づいていく。ここで、システムコントローラ40は、搬送車AがポイントP3で停止するとの命令を外部から受信していない。例えば、システムコントローラ40は、搬送車AをポイントP7で停止させるとの命令を外部から受け付けている。しかし、もし搬送車Bが停止し続けるならば、搬送車Aが搬送車Bに衝突してしまう。衝突を防止するためには、搬送車Aを停止させる必要がある。この実施形態では、搬送車Bが停止しているポイントP4の1つ手前のポイントP3において、搬送車Aを停止させる必要があるとする。他方、搬送車Bが走行を開始すれば、搬送車AはポイントP3で停止する必要はない。以上のことから、搬送車AがポイントP3で停止するかは状況によって変わり得る。つまり、搬送車AがポイントP3で停止するかどうか不明である。
【0057】
まず、時刻t0では、搬送車BはポイントP4に停止しており、セグメントd及びeが割り付けられている。また、搬送車Aにはセグメントa、b、cが割り付けられており、搬送車AはポイントP1の手前からポイントP2に向かって走行している。
時刻t1では、搬送車Bは時刻t0と同様にポイントP4に停止しており、セグメントd及びeを割り付けられている。一方、搬送車AはポイントP1を通過している。
次に、搬送車Aの走行制御部30は、走行する予定であるセグメントdへのブロッキング要求をブロッキング要求判定部45に送信する。しかし、セグメントdは搬送車Bに割り付けられている。つまり、搬送車Bに割り付けられているセグメントと、搬送車Aがブロッキング要求を行ったセグメントと、が重複している。そのため、ブロッキング要求判定部45は、ブロッキング要求を許可しない。そして、速度管理部44は、セグメントdへのブロッキング要求を許可できないとの報告を、ブロッキング要求判定部45から受信する。速度管理部44は、搬送車AがポイントP3で停止するとの命令を外部から受信していないが、セグメントdの割り付けが許可されないことから、搬送車AをポイントP3で停止させる可能性があると判断する。そこで、速度管理部44は、ポイントP1において所定の第2減速率で第1速度から第2速度に減速するように搬送車Aに指令する。搬送車Aの走行制御部30は、減速の指令を受信し、ポイントP1において第1速度から所定の減速率で第2速度に向けて減速を開始する。その結果、搬送車Aは、ポイントP3の手前にある位置Laで第2速度になる。
【0058】
ブロッキング要求判定部45は、搬送車Aの走行制御部30から走行データを受信し、搬送車Aが第1速度から減速を開始したことを確認する。これに基づいて、ブロッキング要求判定部45は、搬送車Aに対してセグメントdへの仮割付を許可する。
時刻t2では、搬送車Bは時刻t0と同様にポイントP4に停止しており、セグメントd及びeを割り付けられている。搬送車Aは第2速度にまで減速し、ポイントP2の手前にある位置Laを中速クリープ走行している。
なお、搬送車AがポイントP1を通過すると、走行制御部30は搬送車Aの走行データをシステムコントローラ40に送信し、搬送車AがポイントP1を通過したことを報告する。これにより、システムコントローラ40のセグメント割付部46はセグメントaを解放する。
【0059】
時刻t3では、搬送車BはポイントP4に停止したままである。搬送車Aは位置Lbに到達しており、搬送車Aと搬送車Bとの間隔が所定距離L3以下となっているとする。搬送車Aの走行制御部30は、搬送車間の間隔が所定距離L3以下になったことに基づいて、位置Lbにおいて第2速度から所定の減速率で減速させ、ポイントP3で搬送車Aを停止させる。別の例として、速度管理部44が、搬送車A及び搬送車Bの走行データから搬送車間が所定距離L3以下となったと判断し、ポイントP3で停止するように搬送車Aに指令してもよい。
時刻t4では、搬送車Bは、システムコントローラ40からの搬送指令に基づいて速度ゼロから加速して走行し、ポイントP4を通過している。また、搬送車Bには、セグメントfへのブロッキング要求に応じてセグメントfが新たに割り付けられている。搬送車BがポイントP4を通過したため、セグメント割付部46はセグメントdを解放する。そして、ブロッキング要求判定部45は、搬送車Aへのセグメントdへの仮割付状態を本割付に変更する。これにより、セグメント割付部46は搬送車Aにセグメントdを割り付ける。速度管理部44は、搬送車Aにセグメントdを割り付けたとの報告をセグメント割付部46から受け、搬送車Aに停止から第1速度への加速を指令する。よって、搬送車Aの走行制御部30は、搬送車Aを停止から再び走行させる。
【0060】
時刻t5では、搬送車Aは搬送指令に基づいて速度ゼロから所定の加速率で第1速度に向けて加速し、ポイントP3とポイントP4の間を走行している。このとき、セグメントcは解放され、搬送車Aにはセグメントd、eが割り付けられている。一方、搬送車Bはセグメントf、gが割り付けられ、ポイントP5とポイントP6との間を第1速度で走行している。
時刻t6では、搬送車Aは第1速度で走行し、セグメントe、fが割り付けられている。搬送車Bもまた第1速度で走行し、セグメントg・・・が割り付けられている。
【0061】
(b)第2の場合において、停止せずに加速する場合の速度制御
次に、第2の場合において、停止せずに第2速度から加速する場合について
図5を用いて説明する。
図5は第2の場合において、停止せずに加速する場合の速度制御を示す説明図であり、
図5の(a)は搬送車Aについての各ポイントと速度との関係を示す関係図であり、
図5の(b)は各時刻における搬送車Aと搬送車Bとの走行状況を示す説明図である。
図5において、破線は
図4の第2の場合において停止後に加速するときの速度制御を示し、実線が停止せずに加速する場合の速度制御を示す。
時刻t3の手前までは
図4と同様であるので説明を省略する。
【0062】
図5の時刻t3では、搬送車Aは位置Lbを第2速度で走行している。前述の
図4の場合では、搬送車Aと搬送車Bとの間隔が所定距離L3以下となったので、搬送車Aは位置Lbにおいて第2速度から減速し、ポイントP3で停止した。しかし、
図5においては、時刻t3において、搬送車Bは搬送指令に基づいて速度ゼロから加速して走行し、ポイントP4を通過している。また、搬送車Bには、セグメントfへのブロッキング要求に応じてセグメントfが新たに割り付けられている。搬送車BがポイントP4を通過したので、セグメント割付部46はセグメントdを解放する。これにより、ブロッキング要求判定部45は、搬送車Aへのセグメントdへの仮割付状態を本割付に変更する。そして、セグメント割付部46は搬送車Aにセグメントdを割り付ける。速度管理部44は、搬送車Aにセグメントdを割り付けたとの報告をセグメント割付部46から受け、第2速度から第1速度への加速を搬送車Aに指令する。よって、搬送車Aは、停止することなく、第2速度から所定の加速率で第1速度に向けて加速して走行することができる。
【0063】
時刻t4では、搬送車Aは第1速度に到達し、ポイントP3とポイントP4の間を走行している。このとき、セグメントcが解放され、搬送車Aのブロッキング要求に応じて新たにセグメントeが搬送車Aに割り付けられている。一方、搬送車Bはセグメントf、gが割り付けられ、ポイントP5とポイントP6との間を第1速度で走行している。
時刻t5、時刻t6では、搬送車A及び搬送車Bはそれぞれセグメントを割り付けられ第1速度で走行している。
停止後に加速する場合(破線)と、停止せずに加速する場合(実線)と、を比較すると、停止せずに第2速度から第1速度に加速する方が、第1速度に速く到達する。よって、停止することによる渋滞の発生を抑制しつつ、減速及び加速によるモータへの負荷の抑制することができる。ひいては、搬送車の故障発生の抑制、消費電力の低減及び経路の延命化を図ることができる。
【0064】
(2−6)第1の場合における速度制御
第1の場合の速度制御は、従来例と同様であるので再び
図4を用いて簡単に説明する。速度管理部44は、搬送車AをポイントP3で停止させるとの搬送指令を外部から受信している。よって、速度管理部44は、
図4に示すように、位置Lcにおいて第1速度から所定の第1減速率で減速するように搬送車Aに指令する。さらに、速度管理部44は、減速後の第3速度で低速クリープ走行して、ポイントP3で停止するように搬送車Aに指令する。その後、搬送車Aに新たなセグメントが割り付けられれば、速度管理部44は搬送車Aに第1速度への加速を指令する。
【0065】
(2−7)処理の流れ
本実施形態の処理の流れについて
図1、
図3、
図6を用いて簡単に説明する。
図6は、本実施形態の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
ステップS1:速度管理部44は、着目している搬送車Aについて、停止位置で確実に停止させることが予め決定されているか判断する。例えば、速度管理部44は、走行を開始する時点において、所定の停止位置で停止するとの搬送命令を外部から受けているか否かなどを判断する。Noの場合はステップS2に進み、Yesの場合はステップS10に進む。
ステップS2:速度管理部44は、搬送車Aがブロッキング要求を行ったセグメントと、搬送車Bに割り付けられているセグメントとが重複しているか否かを判定する。Yesの場合はステップS3に進み、Noの場合は待機する。
【0066】
ステップS3:速度管理部44は、停止位置の手前の所定の第3位置において第1速度から第2速度に減速を開始するように搬送車Aに指令する。
ステップS4:ブロッキング要求判定部45は、搬送車Aが減速したのに応じて、搬送車Aに前述の重複しているセグメントを仮に割り付ける(仮割付)。
【0067】
ステップS5:搬送車Aの走行制御部30は、先行の搬送車Bとの間隔が所定距離L3以下となったか否かを判断する。所定距離L3以下であればプロセスはステップS7に移行し、所定距離L3を超えていればプロセスはステップ6に移行する。
ステップS6:搬送車Bが重複しているセグメントから出て行くと、セグメント割付部46は、当該セグメントを解放する。当該セグメントが解放されればステップS8に進み、そうでない場合はステップS5に戻る。つまり、先行の搬送車Bとの間隔が所定距離L3を超えている間は、重複しているセグメントが解放されるのを待つ。
ステップS7:搬送車Aの走行制御部30は、停止位置の直前にある第2位置において第2速度から減速させて、停止位置で搬送車Aを停止させる。
【0068】
ステップS8:ブロッキング要求判定部45は、搬送車Aのブロッキング要求を許可して仮割付状態を本割付に変更する(本割付)。セグメント割付部46は、解放されたセグメントを搬送車Aに割り付ける。
ステップS9:速度管理部44は、第2速度から第1速度への加速を搬送車Aに指令する。
ステップS10:停止位置で確実に停止させることが予め決定されている場合は、速度管理部44は、停止位置の手前の第1位置において第1速度からの減速を搬送車Aに指令し、第3速度で低速クリープ走行させた後、停止位置で搬送車Aを停止させる(ステップS7)。
【0069】
(2−8)本発明のメリットの一例
図7、
図8を用いて、上述の第2の場合を適用したときのメリットの一例を説明する。
図7及び
図8は本発明の第2の場合を適用したときのメリットを説明するための模式図である。
図7の(a)は従来例であり、(b)は本発明の第2の場合を適用した例である。
図8の(a)は従来例であり、(b)は本発明の第2の場合を適用した例である。
なお、第2の場合とは、搬送車を停止位置で停止させることが予定されているが、停止位置を通過させる可能性がある場合である。そして、本発明の第2の場合を適用すると、
図1に示すように、搬送車は停止位置の直前の第2位置まで第2速度で中速クリープ走行することができる。一方、停止位置で停止させることが予め決定している第1の場合には、搬送車は第1位置において第1速度から急速に減速し第3速度で低速クリープ走行した後、停止位置で停止しなければならない。従来及び第1の場合では、停止位置直前の第2位置において第3速度で走行しているが、本発明の第2の場合では第2位置において第2速度(>第3速度)で走行しており、第3速度よりも速い速度で走行している。
【0070】
図7において、走行順は、先頭から搬送車B、搬送車A1及び搬送車A2の順であり、搬送車B及び搬送車A1は直進方向に進み、搬送車A2は分岐している経路を走行しようとしている。
まず従来の場合、
図7(a)に示すように、搬送車BはポイントP1及びポイントP2間を走行しており、搬送車A1にはポイントP1及びポイントP2間のセグメントを割り付けることができない。よって、搬送車A1はポイントP2で停止している。そのため、搬送車A2にポイントP2及びポイントP3間のセグメントを割り付けることができない。結果として、搬送車A2はポイントP3で停止し、分岐した経路を進むことができない。
【0071】
一方、本発明の第2の場合、
図7(b)に示すように、搬送車は停止すべき位置の直前まで中速の第2速度で走行することができる。図において、搬送車BはポイントP1及びポイントP2間を走行している。搬送車A1は速度を中速に低下させて走行しているため、搬送車A1にはポイントP1及びポイントP2間のセグメントが仮に割り付けられる。よって、搬送車A1は、中速の第2速度で走行してポイントP2を通過することができ、それに加えてポイントP2及びポイントP3間のセグメントが解放される。そのため、搬送車A2にはポイントP2及びポイントP3間のセグメントが割り付けられ、搬送車A2はポイントP3で停止することなく通過することができる。さらに、分岐先のセグメントが搬送車A2に割り付けられれば、搬送車A2は分岐した経路を走行することができる。
従来の場合は、搬送車A1がポイントP2に停止しているので、搬送車A2はポイントP3で停止しなければならず分岐した経路に進むことができない。しかし、本発明の第2の場合には、搬送車A1がポイントP2を通過しているので、搬送車A2は分岐した経路に進むことができ、目的地に早く到達することができる。
【0072】
次に
図8を用いて本発明の第2の場合を適用したときのメリットを説明する。
図8において、走行順は、先頭から、搬送車B、搬送車A1、搬送車A2及び搬送車A3の順である。
まず従来の場合、
図8(a)に示すように、搬送車BはポイントP1及びポイントP2間を走行しており、後続の搬送車A1、搬送車A2及び搬送車A3はそれぞれポイントP2、P3、P4で停止しているとする。この状態で、搬送車BがポイントP1を通過すれば、搬送車A1にポイントP1及びポイントP2間のセグメントが割り付けられ、搬送車A1はポイントP2を通過して走行し始める。これにより、搬送車A2に対して、ポイントP2及びポイントP3間のセグメントが割り付けることが可能となる。しかし、このときには、実際には搬送車A2にはセグメントが割り付けられておらず、搬送車A2はまだ停止している。そのため搬送車A3も待ち状態で停止している。つまり、搬送車が走行できるようになる条件は、先行の搬送車がポイントを通過して、走行しようとしているセグメントが解放されて、解放されたセグメントが新たに割り付けられることである。このようにして、複数の搬送車が走行することによって渋滞が頻発する。
【0073】
一方、本発明の第2の場合には、
図8(b)に示すように、搬送車は停止すべき位置の直前まで中速の第2速度で走行することができる。図において、搬送車A1、搬送車A2及び搬送車A3は、搬送車Bに続いて、中速の第2速度でポイントP1に向かって走行している。そして、搬送車BがポイントP1を通過した時点で、搬送車A1、搬送車A2及び搬送車A3はポイントP1付近まで進んで走行している。
よって、本発明の第2の場合によれば後続の搬送車を中速の第2速度で走行させることができ、従来の場合よりも同じ時間内での進行距離を大きくすることができる。
【0074】
(3)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(a)上記の実施形態では、搬送車Aを所定の停止位置で停止させることが予め決定されている第1の場合、搬送車Aは、停止位置の手前の第1位置において第1速度から減速を開始して第1a位置において第3速度まで減速する。そして、搬送車Aは、第1a位置から停止位置まで第3速度で低速クリープ走行する。
しかし、第1の場合において搬送車Aは低速クリープ走行を必ずしも行う必要が無い。
図9は、本発明における搬送車の別の速度制御を説明するための説明図である。
図9に示すように、搬送車Aは、停止位置の手前の第1位置において第1速度から急減速を開始して停止位置で停止する。このとき、搬送車Aは上記
図1のように第3速度の低速クリープ走行は行わない。
(b)上記の実施形態では、第2速度を第1速度(定常速度)の30〜40%としたが、渋滞の状況に応じて第2速度をどの程度とするかを変更してもよい。例えば、搬送車の前が渋滞している場合は第2速度を第1速度の30%より小さくし、逆に、渋滞が無い場合は第2速度を40%より大きくするなどする。
(c)経路2は吊り下げられて設けられていてもよいし、地上に設けられていてもよい。