(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962488
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】漏液防止機能付き液体内蔵素子及びこれを搭載したコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/14 20060101AFI20160721BHJP
H01G 9/10 20060101ALI20160721BHJP
H01G 9/04 20060101ALI20160721BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
H01G9/14 Z
H01G9/10 Z
H01G9/04 310
H01G9/00 321
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-275955(P2012-275955)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-120674(P2014-120674A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2014年12月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武史
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−216610(JP,A)
【文献】
特開2011−009279(JP,A)
【文献】
特開平10−199772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/14
H01G 2/02
H01G 9/04
H01G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続相手に対する電気的接続部が装着された装着面を有し、内部に液体が内蔵された液体内蔵素子と、
前記装着面を覆い、液体を吸収する液体吸収部材と、
前記液体吸収部材を収容しつつ前記液体内蔵素子の前記装着面側にシール状態で被せ付けられる絶縁材より成る容器とを備え、
前記容器は前記液体内蔵素子に対し、前記装着面側から前記液体内蔵素子の前記装着面を超える位置まで被せ付けられる一方、
前記電気的接続部は前記装着面から突出した一対のリード線であり、かつ、前記容器内には、前記液体吸収部材により吸収された液体により前記液体内蔵素子の前記リード線間が短絡することを防止する短絡防止壁が設けられていることを特徴とする漏液防止機能付き液体内蔵素子。
【請求項2】
前記容器はゴム製の弾性体にて形成され、開口縁部が前記液体内蔵素子の側面全周に弾性的に密着することを特徴とする請求項1に記載の漏液防止機能付き液体内蔵素子。
【請求項3】
前記短絡防止壁と前記容器とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の漏液防止機能付き液体内蔵素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の漏液防止機能付き液体内蔵素子をハウジングの内部に搭載することを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
前記漏液防止機能付き液体内蔵素子がコンデンサであることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏液防止機能付き液体内蔵素子及びこれを搭載したコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体内蔵素子であるアルミ電解コンデンサ(以下、コンデンサと称する)の内部には電解液が収容されている。従来より、電解液の性質やかしめ等の不具合により、リード線の付け根部分より漏れ出す場合があることが知られている。電解液が漏液し、コンデンサを実装している回路基板に落ちると、回路が短絡するなどの不具合が発生する可能性がある。
【0003】
このような問題に対して、コンデンサの直下の回路基板上に漏液受け止め用部品を設けて、リード線を伝って漏れ出してくる電解液を受け止めることで回路の短絡を防止する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−154637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構造では、漏液受け止め用部品とコンデンサとの位置関係が上下の位置関係に限定されてしまい、様々な位置関係に対応できない。よって、車載コネクタ用途など様々な向きで素子が使用される場合には、コンデンサの直下に漏液受け止め用部品を設けたとしても漏れ出た液体を完全に受け止めることはできない。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コンデンサの取付け姿勢によらず、漏液を確実に防止する漏液防止機能付き液体内蔵素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の漏液防止機能付き液体内蔵素子は、
接続相手に対する電気的接続部が装着された装着面を有し、内部に液体が内蔵された液体内蔵素子と、
前記装着面を覆い、液体を吸収する液体吸収部材と、
前記液体吸収部材を収容しつつ前記液体内蔵素子の前記装着面側にシール状態で被せ付けられる絶縁材より成る容器とを備え、
前記容器は前記液体内蔵素子に対し、前記装着面側から前記液体内蔵素子の前記装着面を超える位置まで被せ付けられ
る一方、
前記電気的接続部は前記装着面から突出した一対のリード線であり、かつ、前記容器内には、前記液体吸収部材により吸収された液体により前記液体内蔵素子の前記リード線間が短絡することを防止する短絡防止壁が設けられていることを特徴とする。
また、第2の発明のコネクタは、
第1の発明の漏液防止機能付き液体内蔵素子をハウジングの内部に搭載することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明によれば、液体を吸収しやすい液体吸収部材が液体内蔵素子の液漏れが発生しやすい装着面を覆うように配されているため、液漏れが発生しても速やかに液体吸収部材にて吸収できる。また、液体吸収部材は容器内に収容されているため、液体吸収部材から液体が染み出して漏液するのを防止できる。また、容器は液体内蔵素子の装着面側から装着面を超える位置までシール状態で被せ付けられているため、液体が液体内蔵素子の装着面から側面にまで及んだとしても、液体内蔵素子の側面と容器側壁間のシール性は破られない為、漏液することはない。よって、液体内蔵素子の実装向きや使用環境に制限されることなく、液体内蔵素子の漏液を防止できる。
また、液体内蔵素子の装着面より突出した一対のリード線間に短絡防止壁が設けられているため、液体吸収部材により吸収された液体により、リード線間が漏電し、短絡することを防止できる。
【0009】
第2の発明によれば、第1の発明の漏液防止機能付き液体内蔵素子をハウジング内に搭載することで、コネクタにおいて液体内蔵素子の漏液によるハウジング内の汚染や短絡などの不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る吸収部材を収容した容器の断面図
【
図2】実施例1に係る漏液防止機能付きコンデンサの側断面図
【
図3】実施例1に係るコンデンサ付きコネクタの側断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明における好ましい実施の形態を説明する。
(1) 本発明の漏液防止機能付き液体内蔵素子は、
前記容器はゴム製の弾性体にて形成され、開口縁部が前記液体内蔵素子の側面全周に弾性的に密着していることが好ましい。
この構成によれば、ゴム製の弾性体の伸縮性を利用して、液体内蔵素子の側面全周に容器の開口縁部を密着させることで、容器を液体内蔵素子に対し、シール状態で簡単に取り付けることが可能になる。
【0013】
(2)本発明の漏液防止機能付き液体内蔵素子は、
前記短絡防止壁と前記容器とが一体に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、短絡防止壁と容器とを一体に形成できる為、液漏れ防止機能付き液体内蔵素子を構成する部品点数を削減することができる。
【0014】
第2の発明における好ましい実施の形態を説明する。
(3) 本発明のコネクタは、
前記漏液防止機能付き液体内蔵素子がコンデンサであることが好ましい。
この構成によれば、コネクタにノイズ除去機能を付与することができる。
次に、第1の発明の漏液防止機能付き液体内蔵素子と第2の発明のコネクタを具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<実施例1>
本実施例の漏液防止機能付きコンデンサ(漏液防止機能付き液体内蔵素子)10は、アルミ電解コンデンサ20(液体内蔵素子)と、アルミ電解コンデンサ20より漏れ出る電解液を吸収する吸収部材(液体吸収部材)31と、吸収部材31を内部に収容する容器32から構成される。
図1に吸収部材31を収容した容器32の平面図を、
図2に漏液防止機能付きコンデンサ10の側断面図を示す。なお、アルミ電解コンデンサ20を以下では単にコンデンサ20と称する。
【0016】
コンデンサ20は円柱形状をしたコンデンサ本体21とコンデンサ本体21の後端面23(装着面)より突出して設けられた一対のリード線22A、22B(電気的接続部)からなっている。各リード線22A、22Bの長さは異なっており、長い方が正極リード線22Aであり、短い方が負極リード線22Bである。また、リード線22A、22Bは円形断面の線材により形成されている。コンデンサ20において電解液の液漏れが多く発生する部分はコンデンサ本体21の後端面23におけるリード線22A、22Bとの付け根部分25である。
【0017】
容器32は上面のみが開口した有底の円筒形状を成しており、弾発性と耐薬液性を有するシリコンゴム(ゴム製の弾性体)により形成されている。容器32の内径はコンデンサ本体21の外径よりやや小さめに設定されている。そして、
図1に示すように、容器32内の下側半分を2分割するように、短絡防止壁33が容器32底面より一体に突出して形成されている。また、
図2に示すように短絡防止壁33の先端は全長に亘って厚み方向に張り出して支持面34が形成されている。そして、コンデンサ20に容器32を装着した際に、短絡防止壁33の支持面34はコンデンサ本体21の後端面23と当接して支持する。
図1に示すように、吸収部材31は短絡防止壁33により仕切られた容器32内に収容されている。収容される吸収部材31の高さは短絡防止壁33の高さと同じである。尚、吸収部材31は電解液を吸収しやすい高分子吸収材にて形成されている。
【0018】
次にコンデンサ20に吸収部材31を内部に収容した容器32を装着する手順を説明する。
【0019】
コンデンサ20の後端面23側から容器32を被せ付ける。この際には、一対のリード線22A、22B間に短絡防止壁33が位置するようにして被せ付けを行う。そして、正極リード線22A、負極リード線22Bの順に容器32内に配された吸収部材31を貫通していき、更に、容器32の底面を液密状に貫通する。そして、コンデンサ本体21の後端面23を短絡防止壁33の支持面34に当接させる。こうして、容器32はコンデンサ本体21の後端面23を超えて被せ付けられる。また、この時には、コンデンサ本体21の後端面23、つまり、各リード線22A、22Bの付け根部25に対して吸収部材31が隣接した状態で配される。更に、コンデンサ本体21の側面全周には、容器32の開口縁部35がシール状態で密着している。
【0020】
次に、本実施例の漏液防止機能付きコンデンサ10の作用効果について説明する。
【0021】
本実施例の漏液防止機能付きコンデンサ10は、各リード線22A、22Bの付け根部分25から電解液の液漏れが発生しても隣接した吸収部材31によって電解液は速やかに吸収される。
【0022】
また、耐薬液性の高いシリコンゴム製の容器32内に吸収部材31は収容されているため、吸収した電解液が容器32外へと染み出して漏液することはない。
【0023】
また、容器32は伸縮性を有するため、コンデンサ本体21の側面全周に容器32の開口縁部35を密着させることで、容器32をコンデンサ本体21に簡単に取り付けることができるという効果もある。
【0024】
また、容器32は、コンデンサ本体21の後端面23を超えて被せ付けられており、その開口縁部35はコンデンサ本体21の側面全周にシール状態で密着する。よって、コンデンサ本体21から漏れ出た電解液がコンデンサ本体21の後端面23に沿って外周縁側へ伝って行ったとしても、コンデンサ本体21の開口縁部35と容器32間のシール性は破られないため、電解液が容器32から漏液することを防ぐことができる。
【0025】
また、リード線22A、22B間には短絡防止壁33が設けられているため、吸収した電解液により漏電し、リード線22A、22B間が短絡することを防止することができる。
【0026】
本実施例のコンデンサ付きコネクタ40(以下、コネクタ40と称する。)は
図3に示すように、一対の端子金具41と、ノイズ除去用の漏液防止機能付きコンデンサ10(以下では、単にコンデンサ10と称する)とプラスチック製のコネクタハウジング(ハウジング)42とを備えて構成されている。尚、以下の説明において、前後方向については
図3の左方を前方、右方を後方とする。
【0027】
端子金具41は銅合金製であり、タブ状を成し、先端が尖って形成されている。
【0028】
コネクタハウジング42は相手方コネクタ(図示しない)と嵌合可能なフード部43と、コンデンサ10を収容可能なコンデンサ収容室44と、フード部43とコンデンサ収容室44とを仕切る仕切り壁45により構成されている。
【0029】
フード部43はコネクタハウジング42の後端側に角筒状に形成され、その後端面は全面に亘って開口されている。仕切り壁45には、端子金具41が貫通可能なように端子挿入口46が高さ方向に並んで2つ開口している。コンデンサ収容室44はコネクタハウジング42の前端側に角筒状に形成され、その前端面は全面に亘って開口されている。
【0030】
次にコンデンサ10及び端子金具41をコネクタハウジング42に収容する手順を説明する。
【0031】
コンデンサ10の各リード線22A、22Bと端子金具41とを半田付けにて接続し、予めこれらを一体化させておく。その後、コンデンサ収容室44の開口部分より、コンデンサ10と端子金具41を収容し、仕切り壁45に設けられた端子挿入口46に端子金具41を圧入することによりコネクタハウジング42内に端子金具41を固定する。
【0032】
その後、
図3に示すように、コンデンサ収容室44内にエポキシ樹脂47(以下では単に樹脂47と称する。)を注入して、コンデンサ10をコンデンサ収容室44内に固定し、開口部分を閉止する。この時、コンデンサ収容室44への樹脂47の完全充填は行わず、充填された樹脂47がコンデンサ10の開口縁部35にまで及ばないようにする。
【0033】
以上のように、漏液防止機能付きコンデンサ10をコネクタハウジング42内に組み込んだコネクタ40は、漏液によるコネクタハウジング42の汚染や短絡といった不具合を防止することができる。
【0034】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、容器にシリコンゴムを用いたが、これに限らず、他の薬液耐性の高いゴム材であっても良い。
(2)上記実施例では、液体内蔵素子にアルミ電解コンデンサを用いたが、これに限らず、他の液体内蔵コンデンサや液体内蔵電池等であっても良い。
(3)上記実施例では、短絡防止壁を設けたが、これに限らず、短絡防止壁を設けずに液体吸収部材を2分割するだけでも良い。
(4)上記実施例では、電気的接続部をコンデンサのリード線としたが、それ以外の電極でも良い。
【符号の説明】
【0035】
10…漏液防止機能付きコンデンサ(漏液防止機能付き液体内蔵素子)
20…アルミ電解コンデンサ(液体内蔵素子)
22A、22B…正極、負極リード線(リード線)
23…後端面(装着面)
31…吸収部材(液体吸収部材)
32…容器
33…短絡防止壁
35…開口縁部
40…コンデンサ付きコネクタ(コネクタ)
42…コネクタハウジング(ハウジング)