特許第5962504号(P5962504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリヂストンスポーツ株式会社の特許一覧

特許5962504テニスラケットの選択システム及び選択方法
<>
  • 特許5962504-テニスラケットの選択システム及び選択方法 図000006
  • 特許5962504-テニスラケットの選択システム及び選択方法 図000007
  • 特許5962504-テニスラケットの選択システム及び選択方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962504
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】テニスラケットの選択システム及び選択方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/38 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   A63B69/38 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-288267(P2012-288267)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-128444(P2014-128444A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】野竹 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】松岡 豊武
(72)【発明者】
【氏名】下坂 浩貴
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−126147(JP,A)
【文献】 特開2002−090380(JP,A)
【文献】 特開2006−263340(JP,A)
【文献】 特開2012−055522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 49/00−51/16
A63B 55/00−60/64
A63B 69/00−71/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレーヤーによって試打されたボールの挙動及び/又は該試打したテニスラケットの挙動に基づいてプレーヤーの分類を特定する特定手段と、
前記プレーヤーの分類に対応付けて該プレーヤーに推奨するための推奨テニスラケットが記録されているデータベースと、
該データベースから、前記特定手段で特定された分類に対応する推奨テニスラケットを読み出して出力する出力手段と
を有し、
前記プレーヤーの希望を示す希望改善情報に対応して前記テニスラケットをカスタマイズするための付加情報を記憶し、
前記希望改善情報に基づき、前記対応する付加情報を出力するテニスラケットの選択システム。
【請求項2】
請求項1において、前記テニスラケットの挙動は、テニスラケットの移動軌跡とスイングスピードであることを特徴とするテニスラケットの選択システム。
【請求項3】
請求項1又は2のテニスラケットの選択システムを用いてテニスラケットを選択するテニスラケットの選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスラケットの購入等に際してプレーヤーにとって適切なテニスラケットを選択するためのシステムと、このシステムを用いたテニスラケットの選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テニスラケットには多数の種類(メーカー、品番)のものがあり、需要者が購入するに際して多数のテニスラケットのうちのいずれのものが自己に適するものであるか選択することは容易でない。特許文献1〜3には、テニスのスイングを分析する方法、装置が記載されているが、分析結果に応じてプレーヤーに適するテニスラケットを選択する点についての開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−126147
【特許文献2】特開2012−130414
【特許文献3】特開2012−130415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、プレーヤーに適するテニスラケットを容易に選択することができるテニスラケットの選択システム及び選択方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のテニスラケットの選択システムは、プレーヤーによって試打されたボールの挙動及び/又は該試打したテニスラケットの挙動に基づいてプレーヤーの分類を特定する特定手段と、前記プレーヤーの分類に対応付けて該プレーヤーに推奨するための推奨テニスラケットが記録されているデータベースと、該データベースから、該特定手段で特定された分類に対応する推奨テニスラケットを読み出して出力する出力手段とを有し、前記プレーヤーの希望を示す希望改善情報に対応して前記テニスラケットをカスタマイズするための付加情報を記憶し、前記希望改善情報に基づき、前記対応する付加情報を出力するものである。
【0007】
前記テニスラケットの挙動は、テニスラケットの移動軌跡とスイングスピードであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のテニスラケットの選択システムによると、プレーヤーによって試打されたボールの挙動及び/又は該試打したテニスラケットの挙動に基づいてプレーヤーの分類がなされ、この分類に属するプレーヤーにとって好適な推奨テニスラケットがデータベースから読み出され出力される。このため、多数種類のテニスラケットの中からプレーヤーに適したテニスラケットを迅速に選択することができる。
【0009】
本発明では、プレーヤーの改善希望に応じた付加情報を提供することもできるので、プレーヤーにより一層適したテニスラケットを容易に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るテニスラケットの選択システムのブロック図である。
図2】実施の形態に係るテニスラケットの選択システムの動作を示すフローチャートである。
図3】スイングタイプを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0012】
図3は、テニスプレーヤーのスイングタイプの典型的な3例を示すものである。(a)のプレーヤーPはテニスラケットTを比較的フラットに握るタイプであり、インパクトゾーンにおいてラケットTは、その軌跡が前方(ボール打ち出し方向)に向って若干の上昇勾配となるように握られている。この場合の打球は、スピン量が比較的小さい傾向にある。
【0013】
(b)のプレーヤーPはミッドドライブタイプであり、(a)よりもボールを擦り上げるようにスイングしている。インパクトゾーンにおけるラケットTの軌跡は、(a)よりも上昇勾配が大きいが、次の(c)の場合よりも上昇勾配が小さい。この場合のスピン量は(a)よりも多いが、(c)よりも少ない傾向にある。
【0014】
(c)のプレーヤーPはハイドライブタイプであり、インパクトゾーンにおいてボールをより強く擦り上げるように、かつフェース面を返すように強くリストターンしながらスイングしている。この場合のスピン量は非常に多い傾向にある。
【0015】
プレーヤーのスイングがこれらのいずれのスイングタイプに属するかは、スイングを実際に撮影し、撮像した映像や画像に基づき、テニスラケットTの移動軌跡を求めて特定してもよいが、テニスラケットTに加速度センサを取り付け、当該加速度センサにて計測したデータに基づきテニスラケットの移動軌跡を求めて特定するのが好ましい。また、試打したボールのスピン量やボールの初速度等のボール挙動を測定し、この測定結果によってスイングタイプを特定してもよい。
【0016】
この実施の形態では、テニスラケットに加速度センサを取り付け、計測したデータに基づき、プレーヤーをこの3種のスイングタイプと、ヘッドスピードの大、中、小の3段階で細分化した合計9タイプのいずれに該当するか特定する。そして、この特定された分類に属するプレーヤーに推奨される市販のテニスラケット(複数)をデータベースから読み出して表示する。
【0017】
市販のテニスラケットが上記の各分類のいずれに属するかについて、多種多様なプレーヤーに各テニスラケットを試打してもらい、そのプレーヤーの分類と、当該プレーヤーが好ましいとして選んだテニスラケットとの関係に基づいて実験的に定め、データベースに登録することにより、データベースが構築される。
【0018】
上記のスイングタイプやヘッドスピードを測定する際のスイングは、規定高さから規定方向に規定速度で打ち出されたボールを打った場合のスイングを解析する。スイング解析を行うための加速度センサとしては、例えば3軸や9軸の加速度センサやジャイロセンサなどを用いるのが好ましい。この加速度センサによると、テニスラケットの移動軌跡だけではなくヘッドスピードも計測可能である。また、プレーヤーが試打したボールの挙動を測定するレーダー式弾道解析装置をさらに用いてもよい。このレーダー式解析装置によると、打ち出されたボールの速度及びスピン量、並びに方向のほか、飛行距離、落下角度などが計測(算出)される。
【0019】
図1はこのレーダー式弾道解析装置及び加速度センサ7を用いた場合のテニスラケットの選択システムのブロック図である。プレーヤーが、加速度センサ7を取り付けたテニスラケットを使用して上記の通りボールを試打する。試打されたボールを追尾したレーダー1からの信号及び加速度センサ7からの信号が解析装置2に入力され、データ処理され、少なくともスピン量及びインパクト時のヘッドスピード、テニスラケットの移動軌跡が算出され、この解析装置2からのデータが選択・出力装置3に入力される。選択・出力装置3は、パソコンや携帯型通信機能付き端末により構成されており、キーボード、タッチパネル等の入力手段4からデータ又は操作信号が入力され、液晶等の表示画面5に情報を表示可能としている。選択・出力装置3(パソコン等)のメモリには、市販の多数のテニスラケットのスペック(少なくともフェースサイズ、質量、背幅)と共に、前述の9タイプのプレーヤーに好適なテニスラケットの商品名、型式が各タイプ別に記憶され、データベースが構成されている。選択・出力装置3の演算部では、解析装置からの計測データに基づいてプレーヤーのスイングタイプを特定し、この特定されたスイングタイプに対応するテニスラケットの商品名及び型式をデータベースから読み出し、表示画面に表示する。
【0020】
具体的には、選択・出力装置3においては、スピン量及びヘッドスピード、テニスラケットの移動軌跡が表示され、選択・出力装置3の操作者は、表示されたテニスラケットの移動軌跡に基づき、上述したフラットドライブタイプ、ミッドドライブタイプ、及びハイドライブタイプの3タイプのいずれに該当するか見極める。そして、該操作者は、入力手段4によって、当該プレーヤーは3つのスイングタイプのうちいずれのタイプであるかを入力する。
【0021】
次に、選択・出力装置3は、解析装置2から入力されたスイングスピードが大、中、小のいずれに該当するかを特定する。具体的には、予め第一の閾値と第二の閾値を記憶させておき、第一の閾値以下であればスイングスピード小、第一の閾値から第二の閾値の間であれば、スイングスピード中、第二の閾値以上であればスイングスピード大と判断する。選択・出力装置3は、前記3種のスイングとこのスイングスピードの3段階とに基づいてプレーヤーを分類する。
【0022】
選択・出力装置3の演算部では、特定されたスイングタイプ及びスイングスピードに基づき、上述した9タイプのうちいずれのタイプであるか特定する。そして、特定したタイプに対応付けてデータベースに記憶されている好適なテニスラケットの商品名や型式を推奨テニスラケットとして表示画面5に表示する。そして、推奨テニスラケットを用いて改めてプレーヤーに試打してもらう。このように本システムは、テニスラケットの挙動(移動軌跡とスイングスピード)に基づいて多数種類のテニスラケットの中からプレーヤーに適したテニスラケットを迅速に提供することができる。
【0023】
上記説明では、スイングタイプを3タイプに分類し、ヘッドスピードを3段階に分類しているので、合計9分類(3×3=9)が生じることになるが、ハイドライブタイプ(図3(c))は、ヘッドスピードが大又は中のプレーヤーに限られ、ハイドライブタイプのプレーヤーにはヘッドスピードの小さいプレーヤーは殆ど存在しないので、実用的には8分類とする。
【0024】
ところで、一般に、スイングスピードの早いプレーヤーは、テニスラケットのフェースサイズが100平方インチ以下で、テニスラケットの背幅が26mm以下のテニスラケットを好み(テニスラケットが扱いやすい)、スイングスピードの遅いプレーヤーは、それよりも大きなフェースサイズで、背幅が26mm以上のラケットを好む(軽い振りでもボールが飛ぶ)傾向にある。
【0025】
このようなことから、本発明では、推奨テニスラケットによる試打の結果や、プレーヤーの好みないしフィーリング、レーダー式弾道解析装置の計測結果、スイングの改善希望などに応じて推奨テニスラケットカスタマイズするための付加情報をさらに提供するようにしてもよい。スイング改善希望としては、スピン量をより多くしたいとの希望、ヘッドスピードをより大きくしたいとの希望などが例示される。上述したデータベースは、スイング改善希望に対応付けて付加情報を記憶しており、推奨テニスラケットの試打の後に、プレーヤーからの改善希望を聞いた操作者は、それを選択・出力装置3に入力することにより付加情報(カスタマイズ情報)を読み出し、表示画面に表示する。また、付加情報は上述したデータベースに記憶されてなくてもよく、上記データベースとは別のメモリーに記憶されていてもよい。
【0026】
例えば、スピン量を多くすることを希望するプレーヤーには、テニスラケット全質量に占めるグリップ質量の比率を相対的に大きくするために、グリップ部に対してグリップ被覆体を着脱可能としておき、グリップ被覆体として、形状は同一であるが質量が異なる複数種類のものを用意しておき、質量の異なるグリップ被覆体と交換して質量調整することなどにより対応することができる。
【0027】
ヘッドスピードを大きくすることを希望する場合には、通常のグロメットよりも質量の大きいグロメットを推奨したり、ストリング(ガット)に取り外し可能な質量部材(ウェイト材)を推奨したりする。
【0028】
図2は、上記の一連のテニスラケット選択作動を示すフローチャートである。パソコン(このパソコンは、例えばテニスショップに設置されている。)を立ち上げてこの選択プログラムをスタートさせると共に、プレーヤーに試打してもらって解析データを取り込む。次いで、このプレーヤーのスピン量及びヘッドスピードの各データに基づきプレーヤーを分類し、このプレーヤーに好適なテニスラケットをデータベースから読み出す。その後、プレーヤー個有の希望スペック(好みや改善ポイント)の入力があれば、それに基づいてさらに絞り込みを行い、結果を画面に表示する。
【0029】
表1,2,3はデータベースに登録されている分類毎のテニスラケットを示すデータ構造を模式的に表わしている。表1はスピン量1000rpm前後(例えば1500rpm未満程度)のフラットドライブタイプのプレーヤーに好適なテニスラケットの商品名、型式、フェースサイズ、質量及び背幅をヘッドスピード別に表わしている。表2はスピン量1800rpm前後(例えば1500〜2000rpm)のミッドドライブタイプのプレーヤーに好適なテニスラケットの商品名、型式、フェースサイズ、質量及び背幅をヘッドスピード別に表わしている。表3はスピン量2000rpm超のハイドライブタイプのプレーヤーに好適なテニスラケットの商品名、型式、フェースサイズ、質量及び背幅をヘッドスピード別に表わしている。表1〜3のフェースサイズの単位は平方インチである。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
本発明では、テニスラケットのヘッドの挙動に基づいて推奨テニスラケットを選択した後、テニスラケットに質量調整やバランス調整を施してテニスラケットのフェース質量比やグリップ質量比を調整してもよい。フェース質量を調整するには、フェースに装着するグロメットを質量の異なるものにしたり、ストリング(ガット)に質量付加材(ウェイト)を取り付けたり取り外したりする手段を採用することができる。
【0034】
上記説明ではプレーヤーのスイングタイプやテニスラケットの各特性を3段階に分類しているが、いずれも2段階又は4段階以上としてもよい。ただし、3〜4段階程度が好ましい。
【0035】
上記説明では、推奨テニスラケットを試打した後にスイング改善希望をプレーヤーから聞き、選択・出力装置3に入力することにより付加情報を出力するようにしているが、それに限定されることはなく、試打する前に予めプレーヤーのスイング改善希望を聞き、選択・出力装置3に入力することにより、推奨テニスラケットと付加情報を同時に出力するようにしてもよい。つまり、推奨テニスラケットと付加情報の2つを出力すればよく、付加情報を出力するタイミングは限定されない。
【0036】
上記説明では、選択・出力装置3を操作する操作者がスイングタイプを見極めて、入力手段を介してスイングタイプを特定するようにしていたが、それに限定されることはなく、操作者を介さずに選択・出力装置3がスイングタイプを特定するようにしてもよい。例えば、加速度センサのデータからテニスラケットの移動軌跡中におけるボールのインパクト点を算出し、テニスラケットの移動軌跡における該インパクト点の接線と水平線とのなす角度をθとする。また、テニスラケットの移動軌跡中における最小曲率半径(ボールの飛び出し方向における)を示す最小曲率半径点を算出し、その曲率半径をrとする。このθとrとに基づき、表4に従ってスイングタイプを特定してもよい。
【0037】
【表4】
【0038】
上記実施の形態では、テニスラケットの挙動に基づきプレーヤーを分類しているが、それに限定されることはなく、前述のようにレーダー式弾道解析装置のデータに基づくボール挙動のみに基づいてプレーヤーを分類してもよい。さらに、レーダー式弾道解析装置及び加速度センサの両方のデータに基づいてプレーヤーを分類してもよい。具体的には、上述したデータベースに記憶されているヘッドスピードに代えて、ボールのスピン量や初速を記憶し、それらに対応付けて推奨テニスラケットを記憶するようにし、推奨テニスラケットを出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 レーダー
2 解析装置
3 選択・出力装置
7 加速度センサ
図1
図2
図3