特許第5962539号(P5962539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962539
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】操作ユニット、および自動機
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/00 20060101AFI20160721BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B41J29/00 T
   G03G15/00 550
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-41396(P2013-41396)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-170338(P2014-170338A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 岳史
(72)【発明者】
【氏名】志水 孝行
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一樹
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−256570(JP,A)
【文献】 特開2010−174963(JP,A)
【文献】 特開2007−245414(JP,A)
【文献】 特開2010−149414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00
F16C 11/00
G03G 15/00
G06F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作画面が表示される表示器を有する操作パネルと、
前記表示器の画面上における押下の有無を検出するとともに、押下を検出したときに前記表示器の画面上の押下位置を検出する入力操作検出部と、
前記操作パネルを取り付けるパネル取付シャフトと、
前記パネル取付シャフトを回転させる駆動力を発生するモータを駆動するモータ駆動部と、
前記パネル取付シャフトと、前記モータの回転軸と、の間に配置した双方向クラッチと、
前記操作パネルとともに前記パネル取付シャフトに取り付け、前記操作パネルの正面を撮像する撮像部と、を備え、
前記モータ駆動部は、前記撮像部が撮像した撮像画像上における、操作者の顔の位置に応じて前記モータの回転量を制御する傾斜角自動調整を実行しているときに、前記入力操作検出部が前記表示器の画面上における押下を検出すると、その押下位置に関係なく、前記モータの駆動を停止する、操作ユニット。
【請求項2】
前記パネル取付シャフトにギアを介して連結したリンクシャフトを備え、
前記双方向クラッチは、前記リンクシャフトと、前記モータの回転軸との間に配置している、請求項1に記載の操作ユニット。
【請求項3】
前記モータ駆動部は、前記モータの回転量を制御し、前記撮像部が撮像した撮像画像上における操作者の顔の高さを、この撮像画像上に設定している高さに合わせる、請求項1、または2に記載の操作ユニット。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の操作ユニットを備えた自動機であって、
前記操作ユニットの前記操作パネルにおける入力操作に応じた処理を行う処理部を備えた自動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作者が操作パネル上で入力操作を行う操作ユニット、および、この操作ユニットを備える自動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作者であるユーザに合わせて、操作パネルの傾斜角を変化させるものがあった(特許文献1等参照)。この特許文献1では、操作パネルに取り付けた撮像装置でユーザの顔を撮像し、撮像画像上におけるユーザの顔の位置に応じて、操作パネルの傾斜角を自動的に調節している。
【0003】
なお、操作パネルの傾斜角をユーザが手動で調節する構成のものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−149414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、操作者であるユーザは、操作パネルの操作面に設けられたキーや、操作パネルの操作面に設けられた表示器(操作画面を表示する表示器)の画面上に貼付されたタッチパネル等を押下することで、入力操作を行う。このため、操作パネルは、ユーザの入力操作にともなう押圧力が作用し、操作パネルの傾斜角が押圧された方向に変化することがあった。
【0006】
操作パネルの傾斜角を段階的に変化させる構成であれば、傾斜角の段階毎に操作パネルを保持する係止部材を追加的に設けることで、ユーザの入力操作にともなう操作パネルの傾斜角の変化をある程度防止できるのであるが、傾斜角を連続的に変化させる構成である場合、このような係止部材を設けることができない。上述の係止部材は、操作パネルの傾斜角を段階的に係止するものであるので、操作パネルの傾斜角を連続的に係止することができない。
【0007】
この発明の目的は、操作パネルの傾斜角を連続的に変化させることができ、且つ、操作者の入力操作にともなう操作パネルの傾斜角の変化を簡単な構成で十分に防止できる操作ユニット、およびこの操作ユニットを具備する自動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の操作ユニットは、上記目的を達するために、以下のように構成している。
【0009】
操作パネルは、操作画面が表示される表示器を有し、パネル取付シャフトに取り付けている。操作パネルは、例えば、操作画面が表示される表示器の画面上にタッチパネルを貼付したものである。入力操作検出部は、表示器の画面上における押下の有無を検出するとともに、押下を検出したときに表示器の画面上の押下位置を検出する。
【0010】
モータが、パネル取付シャフトを回転させる駆動力を発生する。このモータは、DCモータであってもよいし、パルスモータであってもよい。モータ駆動部が、モータの駆動を制御する。モータが、パネル取付シャフトを回転させることで、このパネル取付シャフトに取り付けた操作パネルが回転し、操作パネルの傾斜角が変化する。操作パネルは、モータの回転軸の回転量に応じて傾斜角が変化するので、その傾斜角を連続的に変化させることができる。
【0011】
また、パネル取付シャフトと、モータの回転軸との間には、双方向クラッチを配置している。双方向クラッチは、例えば特開2012−13236号公報等で開示されているように、入力軸に与えられた動力(モータの回転軸の回転力)を出力軸(パネル取付シャフト側)に伝達し、反対に出力軸に与えられた動力(パネル取付シャフトの回転力)を遮断し、入力軸に伝達しない動力伝達機構部品である。したがって、操作者が、操作パネルの操作面を押下したときに、その押圧力に応じてパネル取付シャフトに作用した回転力は双方向クラッチにより遮断され、モータの回転軸に伝達されない。このため、操作者が、操作パネルの操作面を押下したときに、モータの回転軸が回転するのを十分に防止できる。このように、操作者の入力操作にともなう操作パネルの傾斜角の変化を、パネル取付シャフトと、モータの回転軸との間に双方向クラッチを配置するという簡単な構成で十分に防止できる。
さらに、操作パネルの正面を撮像する撮像部が、操作パネルとともにパネル取付シャフトに取り付けられている。そして、モータ駆動部は、撮像部が撮像した撮像画像上における、操作者の顔の位置に応じてモータの回転量を制御する傾斜角自動調整を実行しているときに、入力操作検出部が表示器の画面上における押下を検出すると、その押下位置に関係なく、モータの駆動を停止する。したがって、操作者は、操作パネルの傾斜角が自動的に変化させられているとき、自分にあった傾斜角に達すると、表示器の画面上のどこかを押下するだけで、モータの駆動(すなわち、操作パネルの傾斜角の変化)を停止させることができる。
【0012】
また、操作パネルの操作面が押下されたことにより、双方向クラッチの出力軸に作用する回転力(逆入力)を抑え、双方向クラッチが破損するのを防止するために、以下に示すリンクシャフトを備える構成とするのが好ましい。
【0013】
このリンクシャフトは、パネル取付シャフトにギアを介して連結する。また、双方向クラッチは、リンクシャフトと、モータの回転軸との間に配置する。
【0015】
この場合、モータ駆動部は、例えば、モータの回転量を制御し、撮像部が撮像した撮像画像上における操作者の顔の高さを、この撮像画像上に設定している高さに合わせる構成にすればよい。
【0016】
これにより、操作者の顔の位置に応じて、操作パネルの傾斜角を自動的に調整することができる。また、この場合、撮像部が備える撮像素子の撮像面は、その傾斜角が操作パネルの操作面の傾斜角と略同じになるように取り付けるのがよい。
【0017】
また、この発明にかかる自動機は、上述の操作ユニットを備え、操作パネルにおける入力操作に応じた処理を行う。この自動機は、例えば無線通信機能を有する非接触媒体に対して価値を付与するチャージ処理を行うチャージ機や、チケットを発券する発券機や、金融機関に開設されている口座に対する入出金取引等を処理する現金自動預け払い機(ATM)である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、操作パネルの傾斜角を連続的に変化させることができ、且つ、操作者の入力操作にともなう操作パネルの傾斜角の変化を簡単な構成で十分に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】チャージ機の外観を示す図である。
図2】チャージ機の外観を示す図である。
図3】チャージ機の外観を示す図である。
図4】チャージ機の主要部の構成を示すブロック図である。
図5】操作ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
図6】チャージ機に対する操作パネルの取り付けを示す斜視図である。
図7】モータ、駆動シャフト、双方向クラッチ、第1の連結シャフトの分解斜視図である。
図8】モータの回転力の伝達を説明する概略平面図である。
図9】チャージ処理を示すフローチャートである。
図10】傾斜角調整処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について説明する。ここでは、この発明の実施形態にかかる操作ユニットを具備するチャージ機(この発明で言う自動機に相当する。)を例にして説明する。
【0021】
図1図2、および図3は、チャージ機の外観を示す図である。図1図2、および図3では、操作パネルの傾斜角が異なっている。図4は、チャージ機の主要部の構成を示すブロック図である。この例にかかるチャージ機1は、主制御ユニット2と、操作ユニット3と、媒体処理ユニット4と、紙幣処理ユニット5と、通信ユニット7と、を備えている。
【0022】
チャージ機1は、近接型の無線通信機能を有する非接触ICカードや、携帯端末等(以下、総称してチャージ媒体と言う。)に対して、価値を付与するチャージ処理を行う。チャージ媒体には、乗車券として使用できるものや、店舗における取引金額の精算に使用できるものなどがある。
【0023】
主制御ユニット2は、チャージ機1が備える各ユニットの動作を制御する。
【0024】
操作ユニット3は、操作者による入力操作を受け付ける操作パネル30を有する。この操作パネル30は、操作者に対して操作画面を表示する表示器30aの画面上にタッチパネル30bを貼付している。この操作ユニット3の詳細については後述するが、図1図3に示すように、操作パネル30の傾斜角を連続的に変化させることができる。図2は、操作パネル30を背面側に倒した状態であり、比較的背が高い(顔の位置が高い)操作者が操作しやすい傾斜角である。また、図3は、操作パネル30を正面側に倒した状態であり、比較的背が低い(顔の位置が低い)操作者が操作しやすい傾斜角である。図1は、操作パネル30の傾斜角が図2図3との中間である状態を示している。
【0025】
なお、操作パネル30は、操作面に複数のキーを設けた構成であってもよい。
【0026】
媒体処理ユニット4は、チャージ機1本体の正面に設けたチャージ媒体載置台41に載置されたチャージ媒体との無線通信により、このチャージ媒体が記憶する媒体情報の読み取りや、このチャージ媒体に対する媒体情報の書き換えを行う。媒体処理ユニット4の無線通信エリアは、チャージ媒体載置台41の数cm(2〜3cm)周辺であり、チャージ媒体載置台41に載置されたチャージ媒体と無線通信が行える構成である。媒体処理ユニット4は、チャージ媒体との無線通信エリアを制限しているので、チャージ機1本体周辺を通行している人が所持しているチャージ媒体と無線通信を行うことはない。
【0027】
紙幣処理ユニット5は、本体正面に設けた紙幣投入口51に投入された紙幣(入金紙幣)を受け付けるとともに、本体正面に設けた紙幣放出口52に釣銭等にかかる紙幣(出金紙幣)を放出する。紙幣処理ユニット5は、入金紙幣や、出金紙幣について、その金種や真偽を識別する紙幣識別部(不図示)を有する。また、紙幣処理ユニット5は、金種別に紙幣を収納する紙幣カートリッジ(不図示)を有する。紙幣投入口51、紙幣放出口52、紙幣識別部、紙幣カートリッジは、紙幣を搬送する紙幣搬送路で結ばれている。
【0028】
明細票発行ユニット6は、チャージ媒体に対して行ったチャージ処理にかかる内容を印字した明細票等を発行する。明細票発行ユニット6は、明細票をチャージ機1本体の正面に設けた明細票放出口61に放出する。
【0029】
通信ユニット7は、図示していない上位装置との間における通信を行う。チャージ機1は、上位装置に対して、実行したチャージ処理の処理内容だけでなく、必要に応じて、チャージ処理を行うチャージ媒体の有効/無効にかかる問い合わせや、本体における障害の発生通知等も行う。
【0030】
次に、この発明の実施形態にかかる操作ユニットについて説明する。図5は、操作ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【0031】
操作ユニット3は、制御部31と、操作パネル30と、表示部32と、入力操作検出部33と、画像処理部34と、モータ駆動部35と、を備えている。操作パネル30は、上述したように、表示器30a、およびタッチパネル30bを有する。
【0032】
制御部31は、操作ユニット3が備える各部の動作を制御するとともに、主制御ユニット2との間における入出力を行うためのインタフェースを有する。
【0033】
表示部32は、操作パネル30の表示器30aにおける画面表示を制御する。
【0034】
入力操作検出部33は、操作パネル30のタッチパネル30bが押下された位置を検出し、検出した位置に基づいて、操作者の入力操作を判断する。
【0035】
画像処理部34は、カメラ34aを有し、このカメラ34aが撮像した画像を処理する。カメラ34aは、操作パネル30の枠体に取り付けており、操作パネル30の傾斜角の変化に応じて、撮像面(撮像素子の受光面)の傾斜角が変化するように構成している。カメラ34aの撮像面(撮像素子の受光面)は、操作パネル30の操作面(表示器30aの画面)に対して略平行である。カメラ34aは、操作パネル30の正面を撮像する向きに取り付けている。また、ここでは(図1図3では)、カメラ34aを表示器30aの画面下側の略中央に取り付けた例を示しているが、表示器30aの画面上側の略中央に取り付けてもよいし、表示器30aの画面の左側や右側に取り付けてもよい。
【0036】
モータ駆動部35は、モータ35aを有し、このモータ35aの回転を制御する。モータ35aは、DCモータであってもよいし、パルスモータであってもよい。モータ35aは、操作パネル30の傾斜角を変化させる駆動源である。モータ駆動部35は、モータ35aの回転方向(操作パネル30をチャージ機1本体正面側に傾斜させる正回転、または操作パネル30をチャージ機1本体背面側に傾斜させる逆回転)の切り換えが行える。
【0037】
図6は、チャージ機に対する操作パネルの取り付けを示す斜視図である。図6は、操作パネルの背面側を示している。
【0038】
操作パネル30は、パネル取付シャフト100に取り付けている。操作パネル30は、このパネル取付シャフト100の回転にともなって回動し、操作面の傾斜角が変化する。
【0039】
図7は、モータ、駆動シャフト、双方向クラッチ、第1の連結シャフトの分解斜視図である。モータ35aの回転軸には、駆動シャフト110が取り付けられている。駆動シャフト110は、モータ35aの回転軸とともに回転する。この駆動シャフト110は、チャージ機1本体に取り付けたアングル200に形成した開口部に挿入している。駆動シャフト110の先端(モータ35aの回転軸と反対側)は、双方向クラッチ120の入力軸に接続している。
【0040】
双方向クラッチ120は、アングル200に固定している。また、双方向クラッチ120は、第1の連結シャフト130を出力軸に接続している。
【0041】
また、第1の連結シャフト130の回転を、パネル取付シャフト100に伝達するために第2の連結シャフト140を設けている。
【0042】
図8は、モータの回転力の伝達を説明する概略平面図である。第1の連結シャフト130と、第2の連結シャフト140とは、ギア131、141で連結している。また、第2の連結シャフト140と、パネル取付シャフト100は、ギア142、101で連結している。
【0043】
モータ35aは、上述したように、回転軸に取り付けた駆動シャフト110を双方向クラッチ120の入力軸に接続しているので、モータ35aの回転軸の回転にともなって、双方向クラッチ120の入力軸が回転する。双方向クラッチ120は、特開2012−13236号公報等で開示されているように、入力軸に入力された回転力(モータ35aの回転軸の回転力)を出力軸に伝達する。したがって、モータ35aの回転軸の回転力によって、双方向クラッチ120の出力軸に接続されている第1の連結シャフト130が回転する。
【0044】
第1の連結シャフト130の回転力は、ギア131、141により第2の連結シャフト140に伝達され、この第2の連結シャフト140が回転する。さらに、第2の連結シャフト140の回転力は、ギア142、101によりパネル取付シャフト100に伝達され、このパネル取付シャフト100が回転する。そして、パネル取付シャフト100の回転にともなって、操作パネル30が回動し、操作面の傾斜角が変化する。
【0045】
したがって、モータ35aの回転軸の回転を制御することにより、操作パネル30の操作面の傾斜角を連続的に変化させることができる。また、モータ35aの回転軸の回転方向を切り換えることで、操作パネル30をチャージ機1本体正面側に傾斜させることもできれば、チャージ機1本体背面側に傾斜させることもできる。
【0046】
また、操作者が入力操作のために操作パネル30の操作面を押下すると、操作パネル30をチャージ機1本体背面側に傾斜させる向きの外力(回転力)が、パネル取付シャフト100に作用する。この外力は、ギア101、142によりパネル取付シャフト100から第2の連結シャフト140に伝達され、さらに、ギア141、131により第2の連結シャフト140から第1の連結シャフト130に伝達される。しかしながら、第1の連結シャフト130に伝達された外力は、双方向クラッチ120の出力軸に作用する。双方向クラッチ120は、出力軸に与えられた動力を遮断し、入力軸に伝達しない。したがって、操作者が入力操作のために操作パネル30の操作面を押下したことにより生じた外力は、駆動シャフト110や、モータ35aの回転軸に伝達されない。このため、操作者が入力操作のために操作パネル30の操作面をある程度の力で押下しても、パネル取付シャフト100が回転し、操作パネル30の操作面がチャージ機1本体背面側に回動し、操作パネル30の傾斜角が変化するのを十分に防止できる。
【0047】
また、操作者が入力操作のために操作パネル30の操作面を押下したことにより生じた外力にともなって双方向クラッチ120の出力軸に作用する力は、第1の連結シャフト130と第2の連結シャフト140との連結に用いているギア131、141、および第2の連結シャフト140とパネル取付シャフト100との連結に用いているギア142、101のギア比を調整することで、抑えられる。したがって、出力軸に過大な力が作用し、双方向クラッチ120が破損するのを防止できる。
【0048】
なお、上記の例における駆動シャフト110を無くし、モータ35aの回転軸を双方向クラッチ120の入力軸に直接接続してもよい。また、第2の連結シャフト140を無くし、第1の連結シャフト130と、パネル取付シャフト100と、をギアで連結してもよいし、パネル取付シャフト100を双方向クラッチ120の出力軸に直接接続してもよい。
【0049】
次に、このチャージ機1におけるチャージ処理にかかる動作について説明する。図9は、チャージ処理を示すフローチャートである。
【0050】
チャージ機1は、チャージ媒体載置台41に載置されたチャージ媒体を検出するか、紙幣投入口51における紙幣の投入を検知するのを待っている(s1、s2)。媒体処理ユニット4は、一定時間毎にポーリングを行っており、このポーリングに対する応答の受信により、チャージ媒体載置台41に載置されたチャージ媒体を検出する。また、紙幣処理ユニット5は、紙幣投入口51に設けたセンサにより、投入紙幣の有無を検知している。
【0051】
チャージ機1は、チャージ媒体載置台41に載置されたチャージ媒体の検出、または、紙幣投入口51における紙幣の投入検知により、取引(チャージ取引)を開始する(s3)。チャージ機1は、この時点でチャージ媒体載置台41にチャージ媒体が未載置であれば、これ以降に載置されるチャージ媒体の検出や、紙幣投入口51における紙幣の投入を受け付けながら、操作パネル30の傾斜角調整処理を実行する(s4)。また、チャージ機1は、s4にかかる処理に並行して、媒体処理ユニット4がチャージ媒体載置台41に載置されたチャージ媒体との無線通信により、このチャージ媒体が記憶している媒体情報の読み取り等にかかる処理も行う。
【0052】
s4にかかる操作パネル30の傾斜角調整処理について詳細に説明する。図10は、この傾斜角調整処理を示すフローチャートである。
【0053】
操作ユニット3は、表示部32が操作パネル30の表示器30aに傾斜角変更確認画面を表示する(s11)。この傾斜角変更確認画面は、操作者に対して、操作パネル30の傾斜角を変更するかどうか(現在の傾斜角のままでよいか、傾斜角を変更するか)にかかる入力操作を促す画面であり、例えば「変更要」、「変更不要」の2つのボタンを表示し、操作者にいずれかのボタンの押下を促す画面である。
【0054】
操作ユニット3は、操作パネル30の傾斜角を変更しない旨の入力操作を受け付けると(s12)、このs4にかかる処理を終了する。このs12にかかる操作者の入力操作は、入力操作検出部33においてが検出される。
【0055】
操作ユニット3は、操作パネル30の傾斜角を変更する旨の入力操作を受け付けると(s12)、画像処理部34がカメラ34aで撮像したチャージ機1本体正面の撮像画像を処理し、この撮像画像上における、撮像されている操作者の顔画像の位置を検出する(s13)。カメラ34aは、上述したように操作パネル30とともに回転し、撮像面の傾斜角が変化する。したがって、操作パネル30をチャージ機1本体の背面側に倒すにつれて、カメラ34aで撮像した操作者の顔画像は、撮像画像上の上方に移動し、反対に、操作パネル30をチャージ機1本体の正面側に倒すにつれて、カメラ34aで撮像した操作者の顔画像は、撮像画像上の下方に移動する。すなわち、カメラ34aで撮像した操作者の顔画像は、操作パネル30の傾斜角の変化にともなって、撮像画像上において上下方向に変化する。
【0056】
操作ユニット3は、s13で検出した撮像画像上における操作者の顔画像の位置に応じて、モータ35aの回転方向(操作パネル30の傾斜角の変更方向)を決定する(s14)。具体的には、予め撮像画像上における操作者の顔画像の基準位置を決めており、s13で検出した操作者の顔画像の位置がこの基準位置よりも下方であれば、操作パネル30をチャージ機1本体の背面側に倒す方向をモータ35aの回転方向に決定する。反対に、s13で検出した操作者の顔画像の位置がこの基準位置よりも上方であれば、操作パネル30をチャージ機1本体の正面側に倒す方向をモータ35aの回転方向に決定する。
【0057】
操作ユニット3は、モータ駆動部35がモータ35aの回転を開始する(s15)。s15では、s14で決定した方向にモータ35aを回転させる。
【0058】
操作ユニット3は、入力操作検出部33が操作パネル30における操作者の入力操作を検出するか(s16)、操作パネル30の傾斜角が上限、または下限に達するか(s17)、撮像画像上における操作者の顔画像の位置が基準位置に達するか(s18)、のいずれかの状態を検出するのを待つ。
【0059】
操作者は、操作パネル30の傾斜角の変化を停止したいときに、操作パネル30を操作する。s16では、表示器30aにおける指定した一部の画面領域に対する操作を検出しているのではなく、表示器30aの画面全体を1つのボタンとみなし、操作者の操作を検出する。したがって、操作者は、操作パネル30の傾斜角の変化を停止させる入力操作が簡単に行える。
【0060】
また、操作ユニット3は、特に図示していないが、操作パネル30が、チャージ機1本体の正面側に倒せる傾斜角のリミット(上述の上限)に達したことを検知する上限センサ、および、チャージ機1本体の背面側に倒せる傾斜角のリミット(上述の下限)に達したことを検知する下限センサを備えている。s17では、この上限センサ、および下限センサの検出出力を監視することで、操作パネル30の傾斜角が上限、または下限に達したかどうかを判定している。
【0061】
また、カメラ34aは、1秒間に数十フレーム(10〜30フレーム)の撮像画像を画像処理部34に入力する。s18では、画像処理部34がカメラ34aで撮像したチャージ機1本体正面の撮像画像をフレーム毎に順次処理し、この撮像画像上における、撮像されている操作者の顔画像の位置が基準位置に達したかどうかを判定している。
【0062】
操作ユニット3は、s18で撮像画像上における操作者の顔画像の位置が基準位置に達したと判定すると、モータ駆動部35によるモータ35aの回転を停止し(s19)、本処理を終了する。
【0063】
一方、操作ユニット3は、s16で操作パネル30における操作者の入力操作を検出した場合、または、s17で操作パネル30の傾斜角が上限、または下限に達したことを検出した場合、モータ駆動部35によるモータ35aの回転を停止する(s20)。操作ユニット3は、表示部32が操作パネル30の表示器30aに傾斜角確認画面を表示する(s21)。s21では、操作パネル30の表示器30aに傾斜角を手動で調整するかどうか(現在の傾斜角のままでよいか、傾斜角を手動で変更するか)にかかる入力操作を促す画面であり、例えば「手動調整要」、「手動調整不要」の2つのボタンを表示し、操作者にいずれかのボタンの押下を促す画面(傾斜角確認画面)を表示する。
【0064】
操作ユニット3は、操作パネル30の傾斜角の手動調整不要にかかる入力操作を受け付けると(s22)、このs4にかかる処理を終了する。このs22にかかる操作者の入力操作は、入力操作検出部33において検出される。
【0065】
一方、操作ユニット3は、操作パネル30の傾斜角の手動調整要にかかる入力操作を受け付けると(s22)、表示部32が操作パネル30の表示器30aに手動調整画面を表示し(s23)、手動調整処理を開始する(s24)
s23では、操作パネル30をチャージ機1本体の背面側に傾斜させるときに操作する「△」、操作パネル30をチャージ機1本体の正面側に傾斜させるときに操作する「▽」、および手動調整完了を入力するときに操作する「完了」の3つのボタンを表示し、操作者にいずれかのボタンの押下を促す画面(手動調整画面)を表示する。
【0066】
s24では、入力操作検出部33が「△」ボタンの操作を検出している間、モータ駆動部35が操作パネル30をチャージ機1本体の背面側に倒す方向にモータ35aを回転させる。また、入力操作検出部33が「▽」ボタンの操作を検出している間、モータ駆動部35が操作パネル30をチャージ機1本体の正面側に倒す方向にモータ35aを回転させる。ただし、入力操作検出部33が「△」ボタンの操作を検出していても、操作パネル30の傾斜角が上限に達していれば、モータ駆動部35はモータ35aを回転させない。また、入力操作検出部33が「▽」ボタンの操作を検出していても、操作パネル30の傾斜角が下限に達していれば、モータ駆動部35はモータ35aを回転させない。
【0067】
操作ユニット3は、入力操作検出部33において、手動調整完了にかかる「完了」ボタンの入力操作が検出されると、手動調整完了と判断し(s25)、本処理を終了する。
【0068】
このように、このチャージ機1は、操作者の顔の位置に応じて操作パネル30の傾斜角を自動的に調整できる。また、操作者は、操作パネル30の傾斜角を手動で調整することもできる。
【0069】
図9に戻って、チャージ機1は、s4にかかる操作パネル傾斜角調整処理を完了すると、チャージ処理にかかる入力操作の受け付けを開始する(s5)。s5では、入力操作検出部33が、紙幣投入口51において投入された紙幣の合計金額以内で、チャージ媒体載置台41に載置されているチャージ媒体に付与する価値(金額)の入力操作を受け付ける。また、今回のチャージ処理にかかる取引内容を印字した明細票の発行有無にかかる入力操作を受け付ける。
【0070】
なお、ここでは、操作者が、チャージ媒体載置台41に対するチャージ媒体の載置、および紙幣投入口51における紙幣の投入にかかる操作をすでに完了しているものとして説明しているが、これらのいずれかの操作が完了していなければ、チャージ機1は完了していない操作も受け付ける。
【0071】
上述したように、操作パネル30は、双方向クラッチ120をモータ35aとパネル取付シャフト100との間に配置しているので、操作パネル30における操作者の入力操作による、操作パネル30の傾斜角が変化するのを防止できる。したがって、操作者は、操作パネル30の傾斜角が、自分にあった傾斜角に保持されつづけるので、操作性が低下することがない。
【0072】
チャージ機1は、s5で受け付けた操作者の入力操作に応じてチャージ処理を行う(s6)。s6では、媒体処理ユニット4が、チャージ媒体載置台41に載置されているチャージ媒体との無線通信により、このチャージ媒体が記憶する価値の残高を、今回チャージする金額を加算した価値に書き換える。
【0073】
チャージ機1は、必要に応じて紙幣処理ユニット5による釣銭の放出や、明細票発行ユニット6による明細票の発行にかかる処理を行い(s7)、本処理を終了する。
【0074】
また、チャージ機1は、チャージ処理の完了後、s1でチャージ媒体載置台41に載置されたチャージ媒体を検出することなく、且つs2で紙幣投入口51における紙幣の投入を検知することがない状態が、予め定めた時間(例えば、5〜10秒)経過すると、操作パネル30の傾斜角をデフォルトに設定するデフォルト処理を行う。操作パネル30の傾斜角のデフォルトは、例えば図1に示す傾斜角である。このデフォルト処理は、操作パネル30の傾斜角を上限、または下限まで回転させ、その後、モータ駆動部35がモータ35aを予め設定している回転量だけ回転させる処理である。
【0075】
このように、チャージ処理を行う毎に、操作パネル30の傾斜角をデフォルト位置に戻さない構成としているので、利用者が多いときにおける、利用者の待ち時間を効率的に短縮できる。
【0076】
なお、図10に示した傾斜角調整処理は、s19でモータの回転を停止した後に、s21以降の処理を実行する処理としてもよい。また、s12で操作パネル30の傾斜角を変更する旨の入力操作を受け付けたときに、自動調整とするか、手動調整とするかについての入力操作を受け付ける処理としてもよい。この場合、手動調整にかかる入力操作を受け付けた場合、s22以降の処理を実行すればよい(自動調整にかかる入力操作を受け付けた場合は、s13以降の処理を実行すればよい。)。
【0077】
また、この発明にかかる操作ユニットは、上述したチャージ機1に限らず、金融機関の店舗に設置されている現金自動預け払い機(ATM)や、駅構内に設置されている精算機、オフィスで利用されている複写機やファックス等の事務機器等、様々な種類の自動機で利用できる。
【符号の説明】
【0078】
1…チャージ機
3…操作ユニット
30…操作パネル
30a…表示器
30b…タッチパネル
31…制御部
32…表示部
33…入力操作検出部
34…画像処理部
34a…カメラ
35…モータ駆動部
35a…モータ
100…パネル取付シャフト
110…駆動シャフト
120…双方向クラッチ
130…第1の連結シャフト
140…第2の連結シャフト
101、131、141、142…ギア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10