(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二種以上の樹脂を含有する光学フィルムが偏光子に光硬化性接着剤で貼り合された偏光板であって、当該光学フィルムの二つの面が共に海島構造を有し、かつ当該二つの面の算術平均粗さRaが0.03〜1.5μmの範囲内にあり、
前記二種以上の樹脂が、少なくともアクリル樹脂とセルロースアシレート樹脂とを含有し、当該アクリル樹脂とセルロースアシレート樹脂の含有質量比が、51:49〜90:10の範囲内であり、かつ、
前記セルロースアシレート樹脂が、アシル基の平均総炭素原子数が、グルコース単位当たり、6.0未満であるセルロースアシレート樹脂と6.0以上であるセルロースアシレート樹脂との少なくとも二種のセルロースアシレート樹脂を含有していることを特徴とする偏光板。
前記セルロースアシレート樹脂が、前記アシル基として、少なくともアセチル基又はプロピオニル基を有しており、かつアシル基の平均総炭素原子数がグルコース単位当たり6.0未満である当該セルロースアシレート樹脂の前記プロピオニル基置換度が、1.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の偏光板は、二種以上の樹脂を含有する光学フィルムが偏光子に光硬化性接着剤で貼り合された偏光板であって、当該光学フィルムの二つの面が共に海島構造を有し、かつ当該二つの面の算術平均粗さRaが0.03〜1.5μmの範囲内にあ
り、前記二種以上の樹脂が、少なくともアクリル樹脂とセルロースアシレート樹脂とを含有し、当該アクリル樹脂とセルロースアシレート樹脂の含有質量比が、51:49〜90:10の範囲内であり、かつ、前記セルロースアシレート樹脂が、アシル基の平均総炭素原子数が、グルコース単位当たり、6.0未満であるセルロースアシレート樹脂と6.0以上であるセルロースアシレート樹脂との少なくとも二種のセルロースアシレート樹脂を含有していることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項
5までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0022】
さらに、本発明においては、前記セルロースアシレート樹脂が、前記アシル基として、少なくともアセチル基又はプロピオニル基を有しおり、かつアシル基の平均総炭素原子数が、グルコース単位当たり、6.0未満である当該セルロースアシレート樹脂の前記プロピオニル基置換度が、1.0以下であることが好ましい。これにより、海島構造(相分離)が形成される効果が得られる。また、前記光硬化性接着剤が、エポキシ化合物及びカチオン重合開始剤を含有する光硬化性接着剤であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る光学フィルムの像鮮明度は、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.8〜5.0%の範囲内であることが好ましい。
【0024】
本発明の偏光板は、液晶表示装置に好適に具備され得る。
【0025】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0026】
(本発明の偏光板の概要)
本発明の偏光板は、二種以上の樹脂を含有する光学フィルムが偏光子に光硬化性接着剤で貼り合された偏光板であって、当該光学フィルムの二つの面が共に海島構造を有することを特徴とする。
【0027】
なお、本願において、「海島構造」とは、相互に非相溶性の複数(例えば二種)の樹脂成分を混合した場合、混合物の高次構造として、樹脂成分の片方が連続する相の中に、もう一方が島状あるいは粒子状に分散している構造をいう。すなわち、一方の樹脂が海に相当する連続相(マトリクス)となり、他方が島に相当する分散相となることで形成される構造をいう。また、「光学フィルムの二つの面」とは、光学フィルムの表裏の二つの表面をいう。
【0028】
本発明に係る光学フィルムに用いることができる樹脂としては、後述するように、従来の光学フィルムにおいて用いられているセルロースエステル樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の各種樹脂を用いることができる。
【0029】
本発明の効果発現の観点から、本発明に係る光学フィルムが、二種以上の樹脂として、少なくともアクリル樹脂とセルロースアシレート樹脂とを含有し、かつ当該アクリル樹脂とセルロースアシレート樹脂の含有質量比が、51:49〜90:10の範囲内であ
る。
【0030】
また、前記セルロースアシレート樹脂は、アシル基の平均総炭素原子数が、グルコース単位当たり、6.0未満であるセルロースアシレート樹脂と6.0以上であるセルロースアシレート樹脂との少なくとも二種のセルロースアシレート樹脂を含有していること
によって、海島構造形成の効果が得られ
る。
【0031】
さらに、本発明においては、前記セルロースアシレート樹脂が、アシル基として少なくともアセチル基又はプロピオニル基を有しおり、かつ前記アシル基の平均総炭素原子数が、グルコース単位当たり6.0未満である当該セルロースアシレート樹脂の前記プロピオニル基置換度が、1.0以下であることが好ましい。
【0032】
これら二種のセルロースアシレート樹脂のうち、主に平均総炭素原子数6.0未満のアシル基を有するセルロースアシレートは、島に相当する分散相を構成する主成分となる樹脂である。一方、平均総炭素原子数6.0以上のアシル基を有するセルロースアシレートは、アクリル樹脂との相容性が、平均総炭素原子数6.0未満のアシル基を有するセルロースアシレートより、相対的に幾らか良いことから、連続相と分散相との境界領域の不連続性を幾らか緩和し、界面での剥離を防止するために加えられている。
【0033】
なお、本願において、セルロースアシレートの有するアシル基の平均総炭素原子数とは、プロピオニル基置換度、ブチリル基置換度等のアシル基置換度に、それぞれの置換基の炭素原子数(例えばアセチル基の炭素原子数は2、プロピオニル基の炭素原子数は3、ブチリル基は4)を乗じて得た炭素原子数の総和をいう。
【0034】
本発明に係る光学フィルムの二つの面の算術平均粗さRaは、0.03〜1.5μmの範囲内にあることを要する。好ましい範囲は、0.4〜1.4μmである。本願で「二つの面の算術平均粗さRaが0.03〜1.5μmの範囲内にある」とは、光学フィルムの表裏二つの表面の総合的評価において、算術平均粗さが当該範囲内にあることをいう。すなわち、当該二つの表面の粗さを考慮した算術平均値が当該範囲内にあることをいう。
なお、本発明に係る光学フィルムは、二つの面のそれぞれの算術平均粗さRaが相違することが好ましく、少なくとも一方の面におけるJIS B0601−2001に基づく算術平均粗さRaが、0.05〜2.0μmの範囲内であることが好ましい。当該Raの値が、0.05μm以上であると十分な散乱光かを得ることができ、モアレ縞を解消できる。当該Raの値が2.0μm以下であれば、表示装置化したときに正面輝度が低下するのを効果的に抑制することができる。
また、二つの面のそれぞれの算術平均粗さRaが相違する場合、当該算術平均粗さRaが小さい方の面に偏光子を密着させることが好ましい。
【0035】
当該算術平均粗さRaを所定の範囲内に制御する手段としては、海を構成する樹脂と島を構成する樹脂の選択、樹脂を含有するウェブの延伸倍率、延伸温度等の延伸条件による調整が挙げられる。
【0036】
本発明においては、光学フィルムの像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.8〜5.0%の範囲内であり、かつ全光線透過率が91.0%以上であることが好ましい。さらに、当該像鮮明度は、0.9〜2.5%の範囲内であることが好ましい。
【0037】
なお、本願において、光学フィルムの像鮮明度(「写像性」ともいう。)は、JIS K7374:2007に準拠した透過法により測定して得た値である。また、全光線透過率は、450〜650nmの光波長領域内の光線透過率の平均値を全光線透過率とした。
【0038】
像鮮明度を所定の範囲内に制御する手段としては、海を構成する樹脂と島を構成する樹脂の選択、樹脂を含有するウェブの延伸倍率、延伸温度等の延伸条件による調整が挙げられる。また、全光線透過率を所定の値以上に制御する手段としては、樹脂の屈折率差が0.08以下である樹脂の選択等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、前記海島構造の分散相(島)を構成する主成分となる樹脂(例えばセルロースアシレート樹脂)のガラス転移温度と、前記連続相(海)を構成する主成分となる樹脂(例えばアクリル樹脂)のガラス転移温度との差が10℃超であり、当該海を構成する樹脂(例えばアクリル樹脂)と当該島を構成する樹脂(例えば、セルロースアシレート樹脂)の屈折率の差が、0.08以下であることが好ましい。
【0040】
〈アクリル樹脂〉
本発明に係る光学フィル
ムは、少なくともアクリル樹脂とセルロースアシレート樹脂とを含有する態様である。この場合、当該アクリル樹脂とセルロースアシレート樹脂の含有質量比が、51:49〜90:10の範囲内であ
る。
【0041】
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
【0042】
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素原子数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素原子数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上の単量体を併用した共重合体として用いることができる。
【0043】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0044】
本発明に係る光学フィルムに用いられるアクリル樹脂は、特に光学フィルムとしての脆性の改善及びセルロースアシレート樹脂と併用した際の透明性の改善の観点で、重量平均分子量(Mw)が80000以上であることが好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が80000を下回ると、十分な脆性の改善が得られず、セルロースアシレート樹脂との相溶性が劣化する。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、80000〜1000000の範囲内であることが更に好ましく、100000〜600000の範囲内であることが特に好ましく、150000〜400000の範囲であることが最も好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限値は特に限定されるものではないが、製造上の観点から1000000以下とされることが好ましい形態である。
【0045】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0046】
GPCの測定条件は、以下のとおりである。
【0047】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0048】
本発明に係る光学フィルムに用いられるアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は二種以上を併用することもできる。
【0049】
〈セルロースアシレート樹脂〉
本発明に係るセルロースアシレート樹脂は、多数のβ−グルコース分子がβ−1,4−グリコシド結合により直鎖状に重合した樹脂である。当該β−1,4−グリコシド結合でセルロースを構成しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離のヒドロキシ基(水酸基)を有している。したがって、本発明に係るセルロースアシレート樹脂は、これらのヒドロキシ基(水酸基)の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(樹脂)である。
【0050】
本発明に係るセルロースアシレート樹脂は、アシル基の平均総炭素原子数が、グルコース単位当たり、6.0未満であるセルロースアシレート樹脂と6.0以上であるセルロースアシレート樹脂との少なくとも二種のセルロースアシレート樹脂を含有してい
る。
【0051】
これら二種のセルロースアシレート樹脂のうち、主に平均総炭素原子数6.0未満のアシル基を有するセルロースアシレート樹脂は、島に相当する分散相を構成する主成分となる樹脂である。
【0052】
本発明においては、アクリル樹脂との相容性を低減し、分散相を形成する観点から、アシル基の平均総炭素原子数が、グルコース単位当たり6.0未満である前記セルロースアシレート樹脂のプロピオニル基置換度が、1.0以下であることが好ましい。アセチル基置換度は、1.5〜3.0の範囲内であることが好ましい。
【0053】
一方、平均総炭素原子数6.0以上のアシル基を有するセルロースアシレート樹脂は、アクリル樹脂との相容性が、平均総炭素原子数6.0未満のアシル基を有するセルロースアシレート樹脂より、相対的に幾らか良いことから、連続相と分散相との境界領域の不連続性を幾らか緩和し、界面での剥離を防止するために加えられている。
【0054】
なお、平均総炭素原子数6.0以上のアシル基を有するセルロースアシレート樹脂の、プロピオニル基置換度は、1.0〜2.7の範囲内であることが好ましい。また、アセチル基置換度は、0.1〜2.0の範囲内であることが好ましい。
【0055】
なお、本願において、セルロースアシレート樹脂の有するアシル基の平均総炭素原子数とは、前述のとおりプロピオニル基置換度、ブチリル基置換度等のアセチル基置換度に、それぞれの置換基の炭素原子数(例えばアセチル基の炭素原子数は2、プロピオニル基の炭素原子数は3、ブチリル基は4)を乗じて得た炭素原子数の総和をいう。
【0056】
例えば、アシル基の平均総炭素原子数をA、アセチル基置換度をX、プロピオニル基置換度をY及びブチリル基置換度をZとしたとき、平均総炭素原子数Aは下記式で表される。
【0057】
A=2×X+3×Y+4×Z
また、「アシル基置換度」とは、繰り返し単位のグルコースの2位、3位及び6位について、ヒドロキシ基(水酸基)がエステル化されている割合の合計を表す。具体的には、セルロースの2位、3位及び6位のそれぞれのヒドロキシ基(水酸基)が100%エステル化した場合をそれぞれ置換度1とする。したがって、セルロースの2位、3位及び6位の全てが100%エステル化した場合、置換度は最大の3となる。
【0058】
本願において、「アシル基置換度」とは、セルロースアシレートを構成する複数のグルコース単位のアシル基置換度を、一単位当たりの平均値として表現したアシル基置換度をいう。なお、本願においては、特定のアシル基、例えば、アセチル基、プロピオニル基等の置換度の平均値をそれぞれ、「アセチル基置換度」、「プロピオニル基置換度」等のように、「平均」を略して表現することとする。
【0059】
アシル基置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0060】
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。
【0061】
これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)であり、より特に好ましくはアセチル基である。
【0062】
なお、脂肪族アシル基の場合、炭素原子数は、セルロース合成の生産性、コストの観点から、2〜6が好ましく、2〜4が更に好ましい。また、アシル基で置換されていない部分は通常ヒドロキシ基(水酸基)として存在していることが好ましい。
【0063】
セルロースアシレートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースアシレートはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
【0064】
本発明に係るセルロースアシレート樹脂は、公知の方法により製造することができる。
【0065】
一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の三個のヒドロキシ基(水酸基)は、有機酸のアシル酸で置換されている。同時に二種類の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースアシレート樹脂、例えばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル基置換度を有するセルロースアシレート樹脂を合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースアシレート樹脂が出来上がる。
【0066】
具体的には特開平10−45804号公報、特開2009−161701号公報などに記載の方法を参考にして合成することができる。
【0067】
本発明に係る光学フィルムに用いられるセルロースアシレートとしては、前記の条件を満たす限りにおいて、特に限定されないが、エステル基は炭素原子数2〜22程度の直鎖又は分岐のカルボン酸エステルであることが好ましく、これらのカルボン酸は環を形成してもよく、芳香族カルボン酸のエステルでもよい。なお、これらのカルボン酸は置換基を有してもよい。セルロースアシレートとしては、特に炭素原子数が6以下の低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0068】
好ましいセルロースアシレート樹脂として、具体的には、セルロースアセテートの他に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルを挙げることができる。この中で特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。
【0069】
本発明に係る光学フィルムに用いられる平均総炭素原子数6.0以上のアシル基を有するセルロースアシレート樹脂は、特に脆性の改善やアクリル樹脂と相溶させたときに透明性の観点から、アシル基の総置換度(T)が2.0〜3.0、炭素原子数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であり、炭素原子数3〜7のアシル基の置換度は、2.0〜3.0であることが好ましい。すなわち、本発明に係るセルロースアシレート樹脂は炭素原子数が3〜7のアシル基により置換されたセルロースアシレート樹脂であり、具体的には、プロピオニル、ブチリル等が好ましく用いられるが、特にプロピオニル基が好ましく用いられる。
【0070】
セルロースアシレート樹脂のアシル基の総置換度が2.0〜3.0の範囲内である場合、すなわちセルロースアシレート分子の2,3,6位のヒドロキシ基の残度が1.0を下回る場合には、セルロースアシレート樹脂とアクリル樹脂との相溶性が高まり、光学フィルムとして用いた場合には透明性が高くなる。
【0071】
また、アシル基の総置換度が2.0を下回る場合でも、炭素原子数が3〜7のアシル基の置換度が1.2を上回る場合は、相溶性は向上し、脆性も高くなるので好ましい。例えば、アシル基の総置換度が2.0を下回る場合であっても、炭素原子数2のアシル基、すなわちアセチル基の置換度が低く、炭素原子数3〜7のアシル基の置換度が1.2を上回る場合は、相溶性が高くなり透明性が向上する。
【0072】
本発明において前記アシル基は、脂肪族アシル基であっても、芳香族アシル基であってもよい。脂肪族アシル基の場合は、直鎖であっても分岐していても良く、さらに置換基を有してもよい。本発明におけるアシル基の炭素原子数は、アシル基の置換基を包含するものである。
【0073】
上記セルロースアシレート樹脂が、芳香族アシル基を置換基として有する場合、芳香族環に置換する置換基Xの数は0〜5個であることが好ましい。この場合も、置換基を含めた炭素原子数が3〜7であるアシル基の置換度が1.2〜3.0であることが好ましい。
【0074】
更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
【0075】
上記のようなセルロースアシレート樹脂においては、炭素原子数3〜7の脂肪族アシル基の少なくとも一種を有する構造を有することが、本発明に係るセルロースアシレート樹脂に用いる構造として用いられる。
【0076】
本発明に係る光学フィルムに用いられるセルロースアシレート樹脂としては、特にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、即ち、炭素原子数3又は4のアシル基を置換基として有するものが好ましい。
【0077】
これらの中で特に好ましいセルロースアシレート樹脂は、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネートである。
【0078】
本発明に係る光学フィルムに用いられるセルロースアシレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル樹脂との相溶性、脆性の改善の観点から75000以上であり、75000〜300000の範囲であることが好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースアシレート樹脂の重量平均分子量(Mw)が75000を下回る場合は、耐熱性や脆性の改善効果が十分ではなく、本発明の効果が得られない。セルロースアシレートの重量平均分子量Mwは、前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0079】
(可塑剤)
本発明においては、組成物の流動性や柔軟性を向上するために可塑剤を併用することも可能である。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
【0080】
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
【0081】
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0082】
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
【0083】
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸及びグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
【0084】
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が、可塑化効果が大きい。
【0085】
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000MPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
【0086】
可塑剤は本発明に係る光学フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。
【0087】
(紫外線吸収剤)
本発明に係る光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0088】
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0089】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0090】
(その他添加剤)
さらに、本発明に係る光学フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、光学フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
【0091】
本発明に係る光学フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
【0092】
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる一種、あるいは二種以上の混合物を挙げることができる。
【0093】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0094】
(光学フィルムの製造方法の概要)
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する光学フィルムの製造方法であって、当該島を構成する主成分となる樹脂B、例えばセルロースアシレート樹脂のガラス転移温度Tg(B)と、当該海を構成する主成分となる樹脂A、例えばアクリル樹脂のガラス転移温度Tg(A)の差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であり、当該樹脂Aと当該樹脂Bの屈折率の差が0.08以下であり、かつ下記工程(a)〜(d)を有する態様の製造方法であることが好ましい。
工程(a):前記樹脂Aと樹脂Bを含有するドープを形成する工程
工程(b):前記ドープを流延用支持体上に流延してウェブを形成する工程
工程(c):前記ウェブから前記有機溶媒を蒸発させる乾燥工程
工程(d):延伸温度TがTg(A)<T<Tg(B)となる温度で、1.03〜1.20倍の範囲内の倍率で前記ウェブを延伸する延伸工程
具体的には、島を構成する主成分となる樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)が、海を構成する主成分となる樹脂Aのガラス転移温度より高く、両者の差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であることが好ましい。また、樹脂Aと樹脂Bの屈折率差が0.08以下である光学フィルムの製造方法であることが好ましい。さらに、前記工程(a)〜(d)を有する製造方法であることが好ましい。
【0095】
本発明に係る製造方法によれば、従来の樹脂ブレンドによる散乱フィルムで問題となっていた脆性の問題を克服した光拡散能の付与された光学フィルムを提供でき、当該光学フィルムを、液晶表示装置の特にバックライト側偏光板の保護フィルムとして用いた際、正面輝度を低下させずにモアレ縞の解消された、優れた画質の画像表示装置を提供できる。
【0096】
<樹脂A及び樹脂Bのガラス転移温度と延伸工程における延伸温度>
本発明において、島を構成する主成分となる樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)と、海を構成する主成分となる樹脂Aのガラス転移温度Tg(A)の差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であることが好ましい。さらに、延伸工程における温度Tが、Tg(A)<T<Tg(B)を満たすように延伸することが好ましい。
【0097】
これにより、島構造の粒状が楕円でなく真円形のまま海を構成する樹脂を延伸することで、島構造の突出状態をコントロールすることができ、透過率の低下を招くことなく、十分なモアレ解消能を付与することができる。
【0098】
海構造と島構造の界面で剥離等の故障防止、透過率や正面輝度の低下防止の観点から、より好ましい範囲は、樹脂B及び樹脂Aのガラス転移温度の差(Tg(B)−Tg(A))が15℃以上、すなわち、(Tg(B)−Tg(A))≧15(℃)である。
【0099】
なお、本願において、ガラス転移温度とは、樹脂が溶媒を含む場合の見かけのTgをも含む意味である。また樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定して求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)を用いることができる。
【0100】
また、本発明に係る製造方法で作られたフィルムは樹脂の相分離による海島構造を有しており、海島構造由来の凹凸形状を有することを特徴とする。島部の形状を観察するには、オリンパス(株)製3Dレーザー顕微鏡LEXT OLS4000等を用いることができる。
【0101】
<樹脂A及び樹脂Bの屈折率差>
本発明においては、海を構成する主成分となる樹脂Aの屈折率(A)と、島を構成する主成分となる樹脂Bの屈折率(B)との差は、0.08以下であること、すなわち、|屈折率(A)−屈折率(B)|≦0.08 であることが好ましい。
【0102】
より好ましくは、|屈折率(A)−屈折率(B)|≦0.03 である。両者の屈折率をこの範囲とすることで、光学フィルムの内部ヘイズが増加することを抑制でき、表示装置にしたときに正面輝度が低下するのを抑制することができる。
【0103】
なお、本発明における屈折率は、平均屈折率を意味し、樹脂Aの屈折率及び樹脂Bの屈折率は、各々の樹脂からなるフィルムを作製し、アッベの屈折率計などを用いて測定することができる。
【0104】
<延伸工程における延伸倍率>
本発明においては、延伸工程における延伸倍率は、延伸温度TがTg(A)<T<Tg(B)となる温度で、1.03倍〜1.20倍の範囲であることが好ましい。
【0105】
延伸倍率が1.03倍以上であれば、本発明の効果が発現する。1.20倍以下であれば、ヘイズ値が上昇して表示装置にしたときに正面輝度が低下するのを抑制することができる。
【0106】
(光学フィルムの製造方法)
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する光学フィルムの製造方法であって、当該島を構成する主成分となる樹脂B(セルロースアシレート樹脂)のガラス転移温度Tg(B)と、当該海を構成する主成分となる樹脂A(アクリル樹脂)のガラス転移温度Tg(A)の差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であり、当該樹脂Aと当該樹脂Bの屈折率の差が0.08以下であり、かつ上記工程(a)〜(d)を有する態様の製造方法であることが好ましい。
【0107】
本発明においては、下記式(I)で求められる前記延伸工程における延伸速度が、20〜300%/分の範囲内にあることが好ましい。
【0108】
式(I):延伸速度(%/分)={(延伸後幅手寸法/延伸前幅手寸法)−1}×100(%)/延伸にかかる時間(分)
上記方法で製造することにより、本発明に係る光学フィルムを、微粒子脱落による工程汚染なく、容易なプロセスで作製することができる。
【0109】
以下、本発明に係る光学フィルムの製膜方法について更に詳細な説明をするが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0110】
本発明に係る光学フィルムの製膜方法としては、下記のような流延法による溶液製膜が好ましい。
【0111】
図1は、本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図である。
【0112】
(1)溶解工程
使用する樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で島を構成する樹脂B、海を構成する樹脂A、及びその他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程である。
【0113】
樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0114】
(有機溶媒)
本発明に係る光学フィルムの製造方法において、溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、使用する複数の樹脂及びその他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
【0115】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0116】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系での樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0117】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、海を構成する樹脂A及び島を構成する樹脂Bを、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0118】
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0119】
樹脂及び添加剤を溶解させた後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。濾過は捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
【0120】
その後主ドープ液は主濾過器3にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液が16よりインライン添加される。
【0121】
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材とは、光学フィルムを細かく粉砕した物で、光学フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトした光学フィルム原反が使用される。
【0122】
また、あらかじめ海を構成する樹脂Aと島を構成する樹脂Bを混練してペレット化したものも、好ましく用いることができる。
【0123】
(2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属ベルト31、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0124】
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
【0125】
(3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜を「ウェブ」と呼ぶ。)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0126】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。
【0127】
後の剥離工程での残留溶媒量を調整するためには、この溶媒蒸発工程での支持体裏面に接触させる液体温度、支持体との接触時間等を適宜調整すればよい。
【0128】
(4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
【0129】
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。
【0130】
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により、5〜120質量%の範囲で剥離することが好ましい。
【0131】
本発明で用いる残留溶媒量は下記の式で表せる。
【0132】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0133】
(5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したローラに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
【0134】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥はおおむね40〜250℃で行われる。
【0135】
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
【0136】
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0137】
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
【0138】
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
【0139】
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
【0140】
同時二軸延伸の好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに×1.01〜×1.5倍の範囲でとることができる。
【0141】
テンター延伸を行う場合の乾燥温度は、30〜200℃以内が好ましく、100〜200℃以内が更に好ましい。
【0142】
本発明に係る光学フィルムの製造方法においては、このときの延伸温度Tが、Tg(A)<T<Tg(B)を満たすように延伸することが好ましい。この範囲の温度で延伸することにより、島構造の粒状が楕円でなく真円形のまま海を構成する樹脂を延伸することができ、島構造の突出状態をコントロールすることができるため、透過率の低下を招くことなく、十分なモアレ解消能を付与することができる。
【0143】
また、本発明においては、下記式(I)であらわされる延伸速度が、20〜300%/分以内であることが好ましい。
式(I):延伸速度(%/分)={(延伸後幅手寸法/延伸前幅手寸法)−1}×100(%)/延伸にかかる時間(分)
延伸速度が生産性や品質の観点から設定することができるが、20%/分以上であれば、生産性に支障がなく、300%/分以下であれば、延伸時にクラック等の故障が発生しにくくなるので好ましい。
【0144】
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
【0145】
(6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。特に0.00〜0.10質量%で巻き取ることが好ましい。
【0146】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0147】
本発明に係る光学フィルムの製造方法で製造されたフィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜3mであることがより好ましい。
【0148】
また、本発明に係る光学フィルムの製造方法で製造されたフィルムは、厚さが20μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上である。厚さの上限は限定されるものではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合には、塗布性、発泡、溶媒乾燥等の観点から、上限は250μm程度である。好ましくは125μm以下、より好ましくは60μm以下である。
【0149】
本発明に係る光学フィルムの製造方法で製造された光学フィルムは、二つの面の算術平均粗さRaは、0.03〜1.5μmの範囲内にあることを要するが、二つの面のそれぞれの算術平均粗さRaが相違することが好ましく、少なくとも一方の面におけるJIS B0601−2001に基づく算術平均粗さRaが、0.05〜2.0μmの範囲内であることが好ましい。Raの値が、0.05μm以上であると十分な散乱効果を得ることができ、モアレ縞を解消できる。Raが2.0μm以下であれば、表示装置化したときに正面輝度が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0150】
算術平均粗さRaは、JIS B0601−2001に準じた測定器、例えば、オリンパス(株)製、3Dレーザー顕微鏡LEXT OLS4000や、小坂研究所(株)製、サーフコーダー MODEL SE−3500などを用いて測定することができる。
【0151】
本発明に係る方法で製造された光学フィルムは、フィルム1枚の全ヘイズ値が20〜80%の範囲内にあり、かつ、(全ヘイズ値)−(表面ヘイズ値)で求められる内部ヘイズ値が0.15〜30%の範囲内にあることが好ましい。
【0152】
全ヘイズ値が20%以上であるとモアレ縞を解消することができ、80%以下であると正面輝度が低下するのを抑制できる点で好ましい。全ヘイズ値のより好ましい範囲は、35〜50%以内である。内部ヘイズ値は、モアレ縞の抑制、正面輝度の低下防止の観点から、0.15〜30%の範囲内にあることが好ましい。内部ヘイズ値のより好ましい範囲は、0.5〜20%である。
【0153】
これらのヘイズ値は、23℃55%RHの雰囲気下、日本電色工業株式会社製ヘーズメーターNDH2000を用いて、JIS K7136に準じて測定した値を用いることができる。
【0154】
なお、全ヘイズ値とは、本発明に係るフィルム1枚のヘイズ値であり、内部ヘイズ値とは、全ヘイズ値から外部ヘイズ値を差し引いた値である。内部ヘイズ値は、フィルムの両表面を屈折率1.47のグリセリンで覆い、2枚のガラス板でこれを挟持して全ヘイズと同じように測定した際の測定値を用いることができる。このようにすることで、表面の凹凸形状によるヘイズ値(すなわち外部ヘイズ値)の影響を無視し、フィルム内部のヘイズ値のみを測定することができる。
【0155】
(光硬化性接着剤)
偏光子と光学フィルムとを貼合するための光硬化性接着剤の好ましい例には、以下の(α)〜(δ)の各成分を含有する光硬化性接着剤組成物が含まれる。
【0156】
(α)カチオン重合性化合物、
(β)光カチオン重合開始剤、
(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤
(δ)ナフタレン系光増感助剤
(カチオン重合性化合物(α))
光硬化性接着剤組成物の主成分であり、重合硬化により接着力を与える成分となるカチオン重合性化合物(α)は、カチオン重合により硬化する化合物であればよいが、特に分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。エポキシ化合物には、分子内に芳香環を有する芳香族エポキシ化合物、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個が脂環式環に結合している脂環式エポキシ化合物、分子内に芳香環を有さず、エポキシ基とそれが結合する2個の炭素原子を含む環(通常はオキシラン環)の一方の炭素原子が別の脂肪族炭素原子に結合している脂肪族エポキシ化合物等がある。本発明に用いる光硬化性接着剤組成物は、カチオン重合性化合物(α)として、特に芳香環を含まないエポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物を主成分とするものが好ましい。脂環式エポキシ化合物を主成分とするカチオン重合性化合物を用いれば、貯蔵弾性率の高い硬化物を与え、その硬化物(接着剤層)を介して光学フィルムと偏光子が接着された偏光板において、偏光子が割れにくくなる。
【0157】
脂環式エポキシ化合物は上述のように、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個が脂環式環に結合しているものである。ここで、脂環式環に結合しているエポキシ基とは、次式(ep)に示すように、エポキシ基(−O−)の2本の結合手が脂環式環を構成する2個の炭素原子(通常は隣り合う炭素原子)にそれぞれ直接結合していることを意味する。下記一般式(ep)において、mは2〜5の整数を表す。
【0158】
【化1】
式(ep)における(CH
2)m中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が、他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物となりうる。脂環式環を構成する水素は、メチル基やエチル基のように、直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。なかでも、エポキシシクロペンタン環(上記式(ep)においてm=3のもの)や、エポキシシクロヘキサン環(上記式(ep)においてm=4のもの)を有する化合物が好ましい。
【0159】
脂環式エポキシ化合物のなかでも、入手が容易で硬化物の貯蔵弾性率を高める効果が大きいことから、下記式(ep−1)〜(ep−11)のいずれかがさらに好ましい。
【0160】
【化2】
上記式中、R
3〜R
24は、各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R
3〜R
24がアルキル基の場合、脂環式環に結合する位置は1位〜6位の任意の数である。炭素原子数1〜6のアルキル基は、直鎖でもよく、分岐を有していてもよく、脂環式環を有していてもよい。Y
8は、酸素原子又は炭素原子数1〜20のアルカンジイル基を表す。Y
1〜Y
7は、各々独立に直鎖でもよく、分岐を有していてもよく、脂環式環を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルカンジイル基を表す。n、p、q及びrは、各々独立に0〜20の数を表す。
【0161】
上記式(ep−1)〜(ep−11)で表される化合物のうち、式(ep−2)で示される脂環式ジエポキシ化合物が、入手が容易なので好ましい。式(ep−2)の脂環式ジエポキシ化合物は、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール(そのシクロヘキサン環に炭素数1〜6のアルキル基が結合していてもよい)と、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸(そのシクロヘキサン環に炭素数1〜6のアルキル基が結合していてもよい)とのエステル化合物である。そのようなエステル化合物の具体例として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(式(ep−2)において、R5=R6=H、n=0である化合物)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート(式(ep−2)において、R5=6−メチル、R6=6−メチル、n=0である化合物)等が挙げられる。
【0162】
また、脂環式エポキシ化合物に、脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用することが有効である。脂環式エポキシ化合物を主成分とし、これに脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用したものを、カチオン重合性化合物とすれば、硬化物の高い貯蔵弾性率を保持しながら、偏光子と光学フィルムとの密着性を一層高めることができる。ここでいう脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂とは、分子内にエポキシ基とそれが結合する2個の炭素原子を含む環(通常はオキシラン環)の一方の炭素原子が別の脂肪族炭素原子に結合している化合物である。その例として、多価アルコール(フェノール)のポリグリシジルエーテルを挙げることができる。なかでも、入手が容易で偏光子と光学フィルムとの密着性を高める効果が大きいことから、下記一般式(ge)で示されるジグリシジルエーテル化合物が好ましい。
【0163】
【化3】
〔一般式(ge)中、Xは直接結合、メチレン基、炭素原子数1〜4のアルキリデン基、脂環式炭化水素基、O、S、SO
2、SS、SO、CO、OCO又は下記式(ge−1)〜(ge−3)で表される三種の置換基からなる群から選ばれる置換基を表し、アルキリデン基はハロゲン原子で置換されていてもよい。〕
【化4】
式(ge−1)において、R
25及びR
26は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルキル基又はアルコキシ基により置換されてもよいフェニル基あるいは炭素原子数1〜10のアルキル基又はアルコキシ基により置換されてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基を表し、R
25及びR
26は互いに連結して環を形成してもよい。
【0164】
式(ge−2)において、A及びDは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基又はハロゲン原子を表し、当該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基中のメチレン基は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよい。aは0〜4の数を表し、dは0〜4の数を表す。
【0165】
一般式(ge)のジグリシジルエーテル化合物としては、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ樹脂;脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;アルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられ、なかでも、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテルが、入手が容易なので好ましい。
【0166】
上記の脂肪族多価アルコールとしては、例えば炭素数2〜20の範囲内のものを例示できる。より具体的には、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のポリオールが挙げられる。
【0167】
脂環式エポキシ化合物と脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用する場合、両者の配合割合は、カチオン重合性化合物全体の量を基準に、脂環式エポキシ化合物を50〜95質量%、そして脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を5質量%以上とするのが好ましい。脂環式エポキシ化合物をカチオン重合性化合物全体中で50質量%以上配合することにより、硬化物の80℃における貯蔵弾性率が1,000MPa以上になり、このような硬化物(接着剤層)を介して偏光子と光学フィルムとが接着された偏光板において、偏光子が割れにくくなる。また、脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を、カチオン重合性化合物全体に対して5質量%以上配合することにより、偏光子と光学フィルムとの密着性が向上する。脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂の量は、カチオン重合性化合物が脂環式エポキシ化合物との二成分系である場合には、カチオン重合性化合物全体の量を基準に50質量%まで許容されるが、その量が余り多くなると、硬化物の貯蔵弾性率が低下し、偏光子が割れやすくなるので、カチオン重合性化合物全体の量を基準に45質量%以下とするのが好ましい。
【0168】
光硬化性接着剤組成物を構成するカチオン重合性化合物(α)として、以上説明したような脂環式エポキシ化合物及び脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用する場合、それぞれが上述した量となる範囲において、これらに加えて、他のカチオン重合性化合物を含んでいてもよい。他のカチオン重合性化合物としては、式(ep−1)〜(ep−11)及び一般式(ge)以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
【0169】
式(ep−1)〜(ep−11)及び式(ge)以外のエポキシ化合物には、式(ep−1)〜(ep−11)以外の分子内に少なくとも1個の脂環式環に結合するエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物、式(ge)以外の脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有する脂肪族エポキシ化合物、分子内に芳香環とエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物における芳香環が水素化されている水素化エポキシ化合物等がある。
【0170】
式(ep−1)〜(ep−11)以外の分子内に少なくとも1個の脂環式環に結合するエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物の例として、4−ビニルシクロヘキセンジエポキシドや1,2:8,9−ジエポキシリモネンの如きビニルシクロヘキセン類のジエポキシド等がある。
【0171】
一般式(ge)以外の脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有する脂肪族エポキシ化合物の例として、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル等がある。
【0172】
分子内に芳香環とエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個のフェノール性ヒドロキシ基(水酸基)を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物のグリシジルエーテルであることができ、その具体例として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル等がある。
【0173】
芳香族エポキシ化合物における芳香環が水素化されている水素化エポキシ化合物は、上記の芳香族エポキシ化合物の原料である分子内に少なくとも2個のフェノール性ヒドロキシ基(水酸基)を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物を、触媒の存在下、加圧下で選択的に水素化反応を行って、得られた水素化ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化して得ることができる。具体例として、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0174】
これら式(ep−1)〜(ep−11)及び一般式(ge)以外のエポキシ化合物のうち、脂環式環に結合するエポキシ基を有し、先に定義した脂環式エポキシ化合物に分類される化合物を配合する場合は、式(ep−1)〜(ep−11)で示される脂環式エポキシ化合物との和が、カチオン重合性化合物の合計量を基準に95質量%を超えない範囲で用いられる。
【0175】
また、任意のカチオン重合性化合物となりうるオキセタン化合物は、分子内に4員環エーテル(オキセタニル基)を有する化合物である。その具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート等が挙げられる。
【0176】
カチオン重合性化合物全体の量を基準に、オキセタン化合物を30質量%以下の割合で配合することにより、エポキシ化合物だけをカチオン重合性化合物として用いた場合に比べ、硬化性が向上するといった効果が期待できることがある。
(光カチオン重合開始剤(β))
本発明では、以上のようなカチオン重合性化合物を、活性エネルギー線の照射によってカチオン重合させて硬化させ、接着剤層を形成することから、光硬化性接着剤組成物には、光カチオン重合開始剤(β)を配合することが好ましい。
【0177】
光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線のような活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生させ、カチオン重合性化合物(α)の重合反応を開始するものである。光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、カチオン重合性化合物(α)に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレン錯体等を挙げることができる。
【0178】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボレート等が挙げられる。
【0179】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0180】
芳香族スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4′−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0181】
鉄−アレン錯体としては、例えばキシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド等が挙げられる。
【0182】
これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができ、好ましく用いられる。
【0183】
光カチオン重合開始剤(β)の配合量は、カチオン重合性化合物(α)全体100質量部に対して1〜10質量部とする。カチオン重合性化合物(α)100質量部あたり光カチオン重合開始剤を1質量部以上配合することにより、カチオン重合性化合物(α)を十分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械強度と接着強度を与える。一方、その量が多くなると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、偏光板の耐久性能を低下させる可能性があるため、光カチオン重合開始剤(β)の量は、カチオン重合性化合物(α)100質量部あたり10質量部以下とする。
【0184】
光カチオン重合開始剤(β)の配合量は、カチオン重合性化合物(α)100質量部あたり2質量部以上とするのが好ましく、また6質量部以下とするのが好ましい。
(光増感剤(γ))
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物は、以上のようなエポキシ化合物を含むカチオン重合性化合物(α)及び光カチオン重合開始剤(β)に加えて、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(γ)を含有する。上記光カチオン重合開始剤(β)は、300nm付近又はそれより短い波長に極大吸収を示し、その付近の波長の光に感応して、カチオン種又はルイス酸を発生させ、カチオン重合性化合物(α)のカチオン重合を開始させるが、それよりも長い波長の光にも感応するように、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(γ)が配合される。
【0185】
このような光増感剤(γ)としては、下記一般式(at)で示されるアントラセン系化合物が有利に用いられる。
【0186】
【化5】
〔式中、R
5及びR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を表す。R7は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。〕
一般式(at)で示されるアントラセン系化合物の具体例としては、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジイソプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジペンチルオキシアントラセン、9,10−ジヘキシルオキシアントラセン、9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−エトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ブトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジイソプロポキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジブトキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジペンチルオキシアントラセン、2−メチル又は2−エチル−9,10−ジヘキシルオキシアントラセン等が挙げられる。
【0187】
光硬化性接着剤組成物に上記のような光増感剤(γ)を配合することにより、それを配合しない場合に比べて、光硬化性接着剤組成物の硬化性が向上する。光硬化性接着剤組成物を構成するカチオン重合性化合物(α)の100質量部に対する光増感剤(γ)の配合量を、0.1質量部以上とすることにより、硬化性が向上する効果が発現する。一方、光増感剤(γ)の配合量が多くなると、低温保管時に析出する等の問題が生じることから、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対して2質量部以下の配合量とする。偏光板のニュートラルグレーを維持する観点から、偏光子と光学フィルムとの接着性が適度に保たれる範囲で、光増感剤(γ)の配合量を少なくするほうが有利である。例えば、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対し、光増感剤(γ)の量を0.1〜0.5質量部、さらには0.1〜0.3質量部の範囲とするのが好ましい。
(光増感助剤(δ))
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物は、上述したエポキシ化合物を含むカチオン重合性化合物(α)、光カチオン重合開始剤(β)及び光増感剤(γ)に加えて、下記一般式(nf)で示されるナフタレン系光増感助剤(δ)を含有する。
【0188】
【化6】
〔式中、R
1及びR
2はそれぞれ、炭素数1〜6のアルキル基である。〕
ナフタレン系光増感助剤(δ)の具体例としては、1,4−ジメトキシナフタレン、1−エトキシ−4−メトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジプロポキシナフタレン、1,4−ジブトキシナフタレン等が挙げられる。
【0189】
光硬化性接着剤組成物にナフタレン系光増感助剤(δ)を配合することにより、それを配合しない場合に比べて、光硬化性接着剤組成物の硬化性が向上する。光硬化性接着剤組成物を構成するカチオン重合性化合物(α)の100質量部に対するナフタレン系光増感助剤(δ)の配合量を0.1質量部以上とすることにより、硬化性が向上する効果が発現する。一方、ナフタレン系光増感助剤(δ)の配合量が多くなると、低温保管時に析出する等の問題を生じることから、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対して10質量部以下の配合量とする。好ましくは、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対して5質量部以下の配合量である。
【0190】
さらに、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない限り、任意成分である他の成分として、添加剤成分を含有させることができる。添加剤成分としては、前述の光カチオン重合開始剤及び光増感剤(γ)の他、光増感剤(γ)以外の光増感剤、熱カチオン重合開始剤、ポリオール類、イオントラップ剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、色素、有機溶剤等を配合することができる。
【0191】
添加剤成分を含有させる場合、添加剤成分の使用量は、前述のカチオン重合性化合物(α)の100質量部に対して1000質量部以下であることが好ましい。使用量が1000質量部以下である場合、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物の必須成分であるカチオン重合性化合物(α)、光カチオン重合開始剤(β)、光増感剤(γ)及び光増感助剤(δ)の組合せによる、保存安定性の向上、変色防止、硬化速度の向上、良好な接着性の確保という効果を良好に発揮させることができる。
【0192】
偏光子と光学フィルムとを貼合するための接着剤の好ましい他の例には、以下の(α1)、(α2)及び(β1)の3成分を必須に含有する光硬化性接着剤組成物が含まれる。
【0193】
(α1)分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物
(α2)分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有するオキセタン化合物
(β1)光カチオン重合開始剤
以下、上記(α1)のエポキシ化合物、上記(α2)のオキセタン化合物、上記(β1)の光カチオン重合開始剤を、それぞれ単に、エポキシ化合物(α1)、オキセタン化合物(α2)、光カチオン重合開始剤(β1)という。
【0194】
エポキシ化合物(α1)とオキセタン化合物(α2)の質量比(エポキシ化合物(α1):オキセタン化合物(α2))は、90:10〜10:90程度となるようにすることが好ましい。また、光カチオン重合開始剤(β1)は、組成物中に約0.5〜20質量%の割合で配合することが好ましい。
【0195】
この光硬化性接着剤は任意に、(ε)成分として分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物を含有することができる。このような不飽和化合物(ε)を含有する場合は、(ζ)成分として光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。さらにこの光硬化性接着剤は、(η)成分として重合性を有しない他の成分を含有することもできる。
【0196】
上記(ε)成分の不飽和化合物、(ζ)成分としての光ラジカル重合開始剤、(η)成分としての重合性を有しない他の成分を、それぞれ単に、不飽和化合物(ε)、光ラジカル重合開始剤(ζ)、重合性を有しない他の成分(η)という。
(エポキシ化合物(α1))
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物において、エポキシ化合物(α1)は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物(α1)として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物(以下、芳香族系エポキシ化合物という)や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物(以下、脂環式エポキシ化合物という)等が例として挙げられる。
【0197】
芳香族系エポキシ化合物としては、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなノボラック型エポキシ樹脂;その他、ビフェニル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、スチレン−ブタジエン共重合体のエポキシ化物、スチレン−イソプレン共重合体のエポキシ化物、末端カルボン酸ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物等が例として挙げられる。
【0198】
ここで、エポキシ樹脂とは、分子中に平均2個以上のエポキシ基を有し、反応により硬化する化合物又はポリマーをいう。この分野での慣例に従い、硬化性のエポキシ基を分子内に2個以上有するものであれば、モノマーであってもエポキシ樹脂ということがある。
【0199】
脂環式エポキシ化合物としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、ジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートのようなエポキシ化シクロヘキシル基を少なくとも一つ有する化合物等が例として挙げられる。
【0200】
上記以外にも、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルのような脂肪族系エポキシ化合物;水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのような芳香環が水素化されているエポキシ化合物;両末端ヒドロキシ基(水酸基)のポリブタジエンの両末端がグリシジルエーテル化された化合物、ポリブタジエンの内部エポキシ化物、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合が一部エポキシ化された化合物(例えば、ダイセル化学工業(株)製のエポフレンド)、エチレン−ブチレン共重合体とポリイソプレンのブロックコポリマーのイソプレン単位が一部エポキシ化された化合物(例えば、KRATON社製のL−207)のようなポリマー系のエポキシ化合物等も、エポキシ化合物(α1)となり得る。
【0201】
これらのなかでも、芳香族系エポキシ化合物が、偏光板に用いられたときの耐久性等に優れ、特に偏光子及び光学フィルムに対する接着性に優れることから好ましい。さらに、この芳香族系エポキシ化合物としては、芳香族化合物のグリシジルエーテル又は芳香族化合物のグリシジルエステル等が好ましい例として挙げられる。芳香族化合物のグリシジルエーテルの具体例として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ヒドロキノンジグリシジルエーテル;レゾルシンジグリシジルエーテル等が好ましく挙げられる。また芳香族化合物のグリシジルエステルの具体例としては、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等が好ましく挙げられる。
【0202】
なかでも、芳香族化合物のグリシジルエーテルが、偏光子と光学フィルム間の密着性や、偏光板に用いたときの耐久性においてより優れるため、特に好ましい。芳香族化合物のグリシジルエーテルのなかでも、とりわけ好ましい化合物として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0203】
エポキシ化合物(α1)は、一種類を単独で用いることもできるし、二種類以上を混合して用いることもできる。例えば、芳香族系エポキシ化合物を二種類以上混合して用いることもできるし、芳香族系エポキシ化合物を主体とし、脂環式エポキシ化合物を混合することもできる。
(オキセタン化合物(α2))
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤において、オキセタン化合物(α2)は、分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有するものであれば特に限定されず、やはりオキセタニル基を有する種々の化合物を用いることができる。オキセタン化合物(α2)として、分子内に1個のオキセタニル基を有する化合物(以下、単官能オキセタンという)、分子内に2個以上のオキセタニル基を有する化合物(以下、多官能オキセタンという)が好ましい例として挙げられる。
【0204】
単官能オキセタンとしては、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンのようなアルコキシアルキル基含有単官能オキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタンのような芳香族基含有単官能オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのようなヒドロキシ基(水酸基)含有単官能オキセタン等が好ましい例として挙げられる。
【0205】
多官能オキセタンとしては、例えば3−エチル−3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕オキセタン、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、4,4′−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、2,2′−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、2,7−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ナフタレン、ビス〔4−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕メタン、ビス〔2−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕プロパン、ノボラック型フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の3−クロロメチル−3−エチルオキセタンによるエーテル化変性物、3(4),8(9)−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ノルボルナン、1,1,1−トリス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕プロパン、1−ブトキシ−2,2−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ブタン、1,2−ビス〔{2−(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}エチルチオ〕エタン、ビス〔{4−(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルチオ}フェニル〕スルフィド、1,6−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシランの加水分解縮合物、テトラキス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル〕シリケートの縮合物等が挙げられる。
【0206】
オキセタン化合物(α2)は、塗工性や、偏光板に用いたときの光学フィルムとの密着性の観点から、分子量500以下の室温で液状のものが好ましい。さらに、偏光板が優れた耐久性を持つ点で、単官能オキセタンであれば分子内に芳香環を有するもの又は多官能オキセタンが、より好ましい。このような好ましいオキセタン化合物の例として、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕オキセタン、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ベンゼン等が挙げられる。
【0207】
オキセタン化合物(α2)も、一種類を単独で用いることができる他、二種類以上を混合して用いることもできる。
【0208】
エポキシ化合物(α1)とオキセタン化合物(α2)の質量比(エポキシ化合物(α1):オキセタン化合物(α2))は、90:10〜10:90とする。この質量比に過不足があると、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物における重要な特性の一つである、短時間で硬化させるという効果が充分に発揮されない。好ましい質量比は、硬化前には低粘度で塗工性に優れ、硬化後に充分な密着性と可撓性を発現できることから、70:30〜20:80程度であり、より好ましくは60:40〜25:75程度である。
(光カチオン重合開始剤(β1))
本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物は、硬化成分として上述のエポキシ化合物(α1)及びオキセタン化合物(α2)を含有し、これらはいずれもカチオン重合により硬化するものであることから、そのカチオン重合を開始させるため、光カチオン重合開始剤(β1)が配合される。光カチオン重合開始剤(β1)は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生させ、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始させる。
【0209】
光カチオン重合開始剤(β1)を配合することにより、常温での硬化が可能となり、偏光子の耐熱性や膨張又は収縮による歪みを考慮する必要性が小さく、光学フィルムを良好に接着することができる。また、光カチオン重合開始剤(β1)は、活性エネルギー線の照射で触媒的に作用するため、エポキシ化合物(α1)及びオキセタン化合物(α2)に混合しても、保存安定性や作業性に優れる。
【0210】
このような活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じさせる光カチオン重合開始剤(β1)として、例えば芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄−アレン錯体等を挙げることができる。
【0211】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボレート等が挙げられる。
【0212】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0213】
芳香族スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル〔4−(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル〔4−(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0214】
鉄−アレン錯体としては、例えばキシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)−トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド等が挙げられる。
【0215】
これらの光カチオン重合開始剤(β1)は、それぞれ一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
【0216】
光カチオン重合開始剤(β1)は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、カヤラッドPCI−220、カヤラッドPCI−620(以上、日本化薬(株)製)、UVI−6992(ダウ・ケミカル社製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−170(以上、(株)ADEKA製)、CI−5102、CIT−1370、CIT−1682、CIP−1866S、CIP−2048S、CIP−2064S(以上、日本曹達(株)製)、DPI−101、DPI−102、DPI−103、DPI−105、MPI−103、MPI−105、BBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−105、TPS−101、TPS−102、TPS−103、TPS−105、MDS−103、MDS−105、DTS−102、DTS−103(以上、みどり化学(株)製)、PI−2074(ローディア社製)、イルガキュア250、イルガキュアPAG103、イルガキュアPAG108、イルガキュアPAG121、イルガキュアPAG203(以上、BASF社製)、CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S(以上、サンアプロ(株)製)等が挙げられる。なかでも、ジフェニル〔4−(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムをカチオン成分として含む、UVI−6992、CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210Sが好ましい。
【0217】
光カチオン重合開始剤(β1)の配合割合は、光硬化性接着剤全体を基準として、0.5〜20質量%の範囲とする。配合割合が0.5質量%を下回ると、光硬化性接着剤の硬化が不十分になり、機械強度や接着強度が低下する。一方、配合割合が20質量%を越えると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、耐久性が低下する可能性があるので、好ましくない。
(不飽和化合物(ε))
光硬化性接着剤は、必要に応じて、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物(ε)を含有することができる。
【0218】
このような不飽和化合物(ε)の典型的な例として、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物を挙げることができる。
【0219】
(メタ)アクリル系化合物としては、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアルデヒド等が挙げられる。
【0220】
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(以下、単官能(メタ)アクリレートという)としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートのような脂環式単官能(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートのような芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート類(ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等が挙げられる);2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートのようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートのような二価アルコールのモノ(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレートのようなポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートのようなテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート類;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0221】
また、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類としては、特に限定されないが、例えば、次のような化合物が挙げられる。
【0222】
トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメチロールジ(メタ)アクリレート、水素添加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートのような脂環式環を有するジ(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートを含むビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートのような芳香族環を有するジ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのようなアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;グリセリンのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンのジ又はトリ(メタ)アクリレートのようなグリセリン類のジ又はトリ(メタ)アクリレート類;グリセリン類のアルキレンオキサイド付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートのようなビスフェノールアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのようなポリオールポリ(メタ)アクリレート類;これらポリオールのアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート類;イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレート類;1,3,5−トリ(メタ)アクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン等が挙げられる。
【0223】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(3−N,N−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0224】
また、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートのようなオリゴマーも、(メタ)アクリル系化合物として使用できる。
【0225】
さらに、(メタ)アクリロイル基とともに、それ以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物も、(メタ)アクリル系化合物として使用できる。その具体例として、アリル(メタ)アクリレート、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0226】
不飽和化合物(ε)としては、特に限定されず、以上の(メタ)アクリル系化合物以外にも、N−ビニル−2−ピロリドン、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニルのようなビニル化合物;トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン、テトラアリルピロメリテート、N,N,N′,N′−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、テトラアリルアンモニウム塩、アリルアミンのようなアリル化合物;マレイン酸及びイタコン酸のような不飽和カルボン酸等も使用することもできる。
【0227】
これら不飽和化合物(ε)のなかでも、(メタ)アクリル系化合物が好ましい。さらに、それを含む接着剤を介して偏光子と光学フィルムとを接着し、偏光板を作製したとき、耐熱性等の耐久性を高める観点から、分子内に少なくとも1個の脂環式骨格又は芳香環骨格を有する(メタ)アクリル系化合物が、より好ましい。かかる分子内に少なくとも1個の脂環式骨格又は芳香環骨格を有する(メタ)アクリル系化合物の具体例としては、上述した脂環式単官能(メタ)アクリレート類、芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート類、脂環式環を有するジ(メタ)アクリレート類又は芳香族環を有するジ(メタ)アクリレート類が、好ましく挙げられる。これらのなかでもとりわけ、トリシクロデカン骨格を有するジ(メタ)アクリレートが好ましく、このような特に好ましい(メタ)アクリル系化合物の具体例としては、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0228】
不飽和化合物(ε)は、硬化速度や、偏光子と光学フィルム間の密着性、接着層の弾性率、接着物の耐久性等を調節するために、使用することができる。不飽和化合物(ε)は、一種類を単独で又は二種類以上を混合して用いることができる。
【0229】
不飽和化合物(ε)を配合する場合、その配合割合は、組成物全体を基準として35質量%以下とするのが好ましい。これにより、偏光子と光学フィルム間の密着性が優れたものとなる。不飽和化合物(ε)の量が35質量%を超えると、偏光子との充分な接着強度が得られにくくなる。そこで、不飽和化合物(ε)の配合割合は、30質量%以下とすることがより好ましく、5〜25質量%程度、とりわけ10〜20質量%程度とするのがさらに好ましい。
(光ラジカル重合開始剤(ζ))
光硬化性接着剤が不飽和化合物(ε)を含む場合、そのラジカル重合性を促進し、硬化速度を十分なものとするために、光ラジカル重合開始剤(ζ)を配合することが好ましい。
【0230】
光ラジカル重合開始剤(ζ)の具体例としては、特に限定されないが、例えば4′−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン、4′−tert−ブチル−2,2−ジクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α,α−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンのようなアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルのようなベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンのようなチオキサントン系光重合開始剤;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドのようなアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオフェニル)〕−2−(O−ベンゾイルオキシム)のようなオキシム・エステル系光重合開始剤;カンファーキノン等が挙げられる。
【0231】
光ラジカル重合開始剤(ζ)は、一種類を単独で又は二種類以上を所望の性能に応じて配合し、用いることができる。光ラジカル重合開始剤(ζ)を配合する場合、その配合割合は、組成物全体を基準として、10質量%以下が好ましく、0.1〜3質量%程度がより好ましい。光ラジカル重合開始剤(ζ)の量が多くなりすぎると、十分な強度が得られないことがある。また、その量が不足すると、接着剤が十分に硬化しないことがある。
(他の成分(η))
さらに、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(α1)〜(ζ)成分とは異なる他の成分を、任意に配合することができる。
【0232】
このような他の成分に属する一つのタイプとして、エポキシ化合物(α1)やオキセタン化合物(α2)以外のカチオン重合性を有する化合物を挙げることができる。具体例としては、特に限定されないが、分子内に1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物等が挙げられる。また、他の成分に属する別のタイプとして、重合性を有しない他の成分(η)を挙げることができる。重合性を有しない他の成分(η)を配合する場合、その配合割合は、組成物全体を基準に10質量%以下程度とするのが好ましい。
【0233】
重合性を有しない他の成分(η)の例として、特に限定されないが、光増感剤を挙げられる。光増感剤を配合することにより、反応性が向上し、硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては、例えばカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられる。
【0234】
具体的な光増感剤としては、特に限定されず、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0235】
これらのなかには、上記光ラジカル重合開始剤(ζ)に該当する化合物もあるが、ここでいう光増感剤は、光カチオン重合開始剤(β1)に対する増感剤として機能するものであれば特に限定されない。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0236】
光増感剤は、本発明に用いられ得る光硬化性接着剤組成物中のカチオン重合性モノマー(上記エポキシ化合物(α1)とオキセタン化合物(α2)を含み、上述した他のカチオン重合性を有する化合物が配合されている場合はそれも含む)の総量を100質量部として、0.1〜20質量部の範囲で含有するのが好ましい。
【0237】
また、重合性を有しない他の成分(η)として、熱カチオン重合開始剤を使用することもできる。熱カチオン重合開始剤として、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド等を挙げることができる。これらの開始剤は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、いずれも商品名で示して、アデカオプトンCP77及びアデカオプトンCP66(以上、(株)ADEKA製)、CI−2639、CI−2624(以上、日本曹達(株)製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L(以上、三新化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0238】
ポリオール類はカチオン重合を促進する性質を有するので、やはり重合性を有しない他の成分(η)として使用することができる。ポリオール類としては、フェノール性ヒドロキシ基(水酸基)以外の酸性基が存在しないものが好ましく、例えばヒドロキシ基(水酸基)以外の官能基を有しないポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物、フェノール性ヒドロキシ基(水酸基)を有するポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物等を挙げることができる。
【0239】
さらに本発明の効果を損なわない限り、重合性を有しない他の成分(η)として、シランカップリング剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、増感剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、色素、有機溶剤等を配合することもできる。
【0240】
重合性を有しない他の成分(η)として、光学フィルムとの密着性をさらに向上させる目的で、熱可塑性樹脂を配合することも有効である。熱可塑性樹脂としては、偏光子の耐久性を高める観点から、ガラス転移温度が70℃以上であるものが好ましく、特に好ましい例としてはメチルメタクリレート系ポリマー等が挙げられる。
(偏光板)
偏光板は、偏光子の表側及び裏側の両面を保護する2枚の光学フィルムで主に構成される。本発明に係る光学フィルムは、偏光子を両面から挟む2枚の光学フィルムのうち少なくとも1枚に用いる。本発明に係る光学フィルムは、モアレ解消能だけでなく保護フィルム性も兼ね備えているので、偏光板の製造コストを低減できる。
【0241】
本発明に係る偏光板は、画像表示装置のバックライト光源側の偏光板としても、視認側の偏光板としても使用することができる。バックライトユニット側偏光板に用いる場合には、本発明に係る光学フィルムが最もバックライト光源側になるように配置するのが好ましい。
【0242】
<偏光板の製造方法>
以下、光硬化性接着剤を用いた偏光板の製造方法の一例を説明する。
【0243】
偏光板は、偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、下記の光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとを接着し、貼合せる貼合工程と、接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとが接着された状態で接着剤層を硬化させる硬化工程とを含む製造方法によって製造することができる。
【0244】
なお、光学フィルムの偏光子を接着する面を、コロナ(放電)処理、プラズマ処理等による易接着処理をする前処理工程を設けても良い。
(前処理工程)
前処理工程では、偏光子と接着する光学フィルムの表面が易接着処理される。偏光子の両面にそれぞれ光学フィルムが接着される場合は、それぞれの光学フィルムに対し易接着処理が行われる。次の接着剤塗布工程では、易接着処理された表面が偏光子との接着面として扱われる。
(接着剤塗布工程)
接着剤塗布工程では、偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記光硬化性接着剤が塗布される。偏光子又は光学フィルムの表面に直接光硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特別な限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子と光学フィルムの間に、光硬化性接着剤を流延させたのち、ローラ等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(貼合工程)
こうして光硬化性接着剤を塗布した後は、貼合工程に供される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合、そこに光学フィルムが重ね合わされる。先の塗布工程で光学フィルムの表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子と光学フィルムの間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と光学フィルムとが重ね合わされる。偏光子の両面に光学フィルムを接着する場合であって、両面とも光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介して光学フィルムが重ね合わされる。そして通常は、この状態で両面(偏光子の片面に光学フィルムを重ね合わせた場合は、偏光子側と光学フィルム側、また偏光子の両面に光学フィルムを重ね合わせた場合は、その両面の光学フィルム側)からローラ等で挟んで加圧することになる。ローラの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるローラは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(硬化工程)
硬化工程では、未硬化の光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、エポキシ化合物やオキセタン化合物を含む接着剤層を硬化させ、光硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子と光学フィルムとを接着させる。偏光子の片面に光学フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は光学フィルム側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面に光学フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介して光学フィルムを重ね合わせた状態で、いずれか一方の光学フィルム側から活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。ただし、いずれか一方の光学フィルムに紫外線吸収剤が配合されている場合であって、活性エネルギー線が紫外線である場合、通常、紫外線吸収剤が配合されていない他方の光学フィルム側から紫外線が照射される。
【0245】
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができるが、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般には紫外線が好ましく用いられる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ等を用いることができる。
【0246】
光硬化性接着剤への光照射強度は、目的とする組成物毎に決定されるものであって、やはり特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が、UV−B(280〜320nmの中波長域紫外線)として1〜3,000mW/cm
2の範囲となるように調整することが好ましい。照射強度が1mW/cm
2を下回ると、反応時間が長くなりすぎ、照射強度が3,000mW/cm
2を超えると、ランプから輻射される熱及び光硬化性接着剤の重合時の発熱によって、光硬化性接着剤の黄変や偏光子の劣化を生じる可能性がある。
【0247】
光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化する組成物毎に制御されるものであって、特に限定されないが、照射強度と照射時間の積で表される積算光量が10〜5000mJ/cm
2の範囲となるように設定されることが好ましい。積算光量が10mJ/cm
2を下回ると、重合開始剤に由来する活性種の発生が十分でなく、接着剤層の硬化が不十分となる可能性がある。一方、積算光量が5000mJ/cm
2を超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。
【0248】
活性エネルギー線を照射して光硬化性接着剤を硬化させるにあたっては、偏光子の偏光度、透過率、色相、光学フィルムの透明性といった、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化させることが好ましい。
【0249】
以上のようにして得られた偏光板において、接着剤層の厚さは、特に限定されないが、通常50μm以下であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0250】
(液晶表示装置)
本発明の偏光板は、種々の態様の液晶表示装置に用いることができる。
【0251】
液晶表示装置の構成の例としては、バックライト型(直下型)では、
図2Aに示すように、光源側から、〔光源1a/下拡散シート3a(拡散板)/集光シート4a(プリズムシートなど)/上拡散シート5a/液晶パネル12a(偏光子10a/保護フィルム(位相差フィルムなど)9a/基板8a/液晶セル7a/保護フィルム11a)〕となっており、主にテレビ等大型LCDに用いられている構成である。
【0252】
一方、サイドライト型の構成は、
図2Bに示すように、光源1aが発光光源2a及び導光板13aで構成されており、主にモニタ、モバイル用途などの小型LCDに用いられている。
【0253】
下拡散シートは主にバックライトユニット(BLU)6aの面内輝度ムラを低減するための光拡散性の強い光学シートであり、集光シートは拡散光を液晶表示装置の正面方向(表示装置平面の法線方向)に集光させるための光学シートであり、上拡散シートは集光シートであるプリズムシートや液晶セル中の画素など周期的構造により発生するモアレを低減するための、及び下拡散シートで除去しきれない面内輝度ムラをさらに低減するために用いられる光学シートである。
【0254】
本発明に係る液晶表示装置においては、
図2A及びBにおける面光源装置において、少なくとも上拡散シートを取り除き、
図3のA及びBに示すように、本発明の偏光板を用いることができる。
【0255】
なお、本発明に係る光学フィルムを用いた場合、バックライトユニット側の偏光板(下偏光板)の偏光板用保護フィルムを除去して、代わりに本発明に係る光学フィルムを偏光板に貼りつけてなる構成にしてもよい。このような構成としても、正面輝度を低下させることなくモアレ縞を抑制することができる。さらに、このように上偏光板用保護フィルムを除去した構成とすることで、液晶表示装置全体のコストダウンを実現できる。
【0256】
液晶セルの表示方法としては、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0257】
光源に用いられる発光光源(発光体)としては、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp、冷陰極管)、HCFL(Hot Cathode Fluorescent Lamp、熱陰極管)、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)、OLED(Organic light−emitting diode、有機発光ダイオード[有機EL])、無機ELなどを好ましく用いることができる。
【実施例】
【0258】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0259】
〔光学フィルムの作製〕
〈光学フィルム1の作製〉
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル、糖エステル化合物を攪拌しながら投入した。これを撹拌しながら完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。
【0260】
(主ドープの組成)
樹脂A:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度:1.64、プロピオニル基置換度:1.12、重量平均分子量:19万、ガラス転移温度:150℃、屈折率:1.489) 20.2質量部
樹脂B:セルロースジアセテート(アセチル基置換度:2.14、重量平均分子量:18万、ガラス転移温度:196℃、屈折率:1.488)
6.7質量部
糖エステル化合物A(平均置換度:5.5) 2.5質量部
メチレンクロライド 103質量部
エタノール 19.7質量部
【化7】
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープを調製した。次いで、ベルト上で溶媒を蒸発させた後、ウェブをステンレスベルトから剥離し、160℃で搬送方向と垂直方向にテンターで1.15倍延伸し、120℃の乾燥ゾーンを多数のローラで搬送させながら乾燥を終了させて巻き取り、平均膜厚40μmの光学フィルム1を得た。
【0261】
〈光学フィルム2の作製〉
(ドープ組成2)
ポリメタクリル酸メチル(VB−7103、三菱レイヨン社製、重量平均分子量30万、ガラス転移温度105℃、屈折率1.490)55質量部
セルロースアシレート(セルロースアセテートプロピオネート アシル基総置換度2.46、アセチル基置換度1.58、プロピオニル基置換度0.88、重量平均分子量19万、ガラス転移温度170℃、屈折率1.489) 45質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
上記組成物を、加熱しながら十分に溶解し、ドープを作製した。
【0262】
上記作製したドープを、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力154N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
【0263】
剥離した樹脂のウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、135℃でテンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、前記乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10%であった。
【0264】
テンターで延伸後、130℃で緩和を行った後、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のローラで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径15.24cmコアに巻き取り、海島構造を有する樹脂フィルムである光学フィルム2を得た。
【0265】
ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.1倍であった。
【0266】
光学フィルム2の残留溶剤量は、0.1%であり、膜厚は60μm、巻長は4000mであった。
【0267】
〈光学フィルム3の作製〉
(ドープ組成3)
ポリメタクリル酸メチル(VB−7103、三菱レイヨン社製、重量平均分子量30万、ガラス転移温度105℃、屈折率1.490)
55質量部
セルロースアシレート(セルロースアセテートプロピオネート アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、重量平均分子量20万、ガラス転移温度140℃、屈折率1.487) 25質量部
セルロースアシレート(セルロースアセテートプロピオネート アシル基総置換度2.46、アセチル基置換度1.58、プロピオニル基置換度0.88、重量平均分子量19万、ガラス転移温度170℃、屈折率1.489) 20質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
上記組成物を、加熱しながら十分に溶解し、ドープを作製した。
【0268】
上記作製したドープを、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力154N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
【0269】
剥離した樹脂のウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、135℃でテンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、前記乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10%であった。
【0270】
テンターで延伸後、130℃で緩和を行った後、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のローラで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径15.24cmコアに巻き取り、海島構造を有する樹脂フィルムである光学フィルム3を得た。
【0271】
ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.1倍であった。
【0272】
光学フィルム3の残留溶剤量は、0.1%であり、膜厚は60μm、巻長は4000mであった。
(光学フィルム4〜11の作製)
表1に示す樹脂組成でドープを作製し、光学フィルム3と同様な方法で各種光学フィルム4〜11を作製した。
【0273】
【表1】
[光学フィルムの評価]
上記で作製した光学フィルム1〜11について下記の測定・評価を行った。
【0274】
〈全光線透過率の測定〉
紫外外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製 V−670)を用いてヘイズ計算モードで1nm毎に測定し、450〜650nmの範囲内の透過率の平均値を全光線透過率として算出した。
【0275】
〈表面形状観察と算術平均表面粗さRaの測定〉
上記で作製したフィルムを、Olympus(株)製3D測定レーザー顕微鏡LEXT OLS4000を用いて光学フィルムの表裏二面の観察及び解析をし、本発明に係る光学フィルム1〜8は海島構造による凹凸を形成しており、比較の光学フィルムは該凹凸を形成していないことを確認した。また、光学フィルム表裏二面のJIS B0601−2001に則った算術平均粗さRaを求めた。
【0276】
〈像鮮明度の測定〉
フィルムの像鮮明度は、JIS K7374:2007に準拠した透過法により、スガ試験機(株)製の写像性試験機ICM−1Tを用いて、測定角度0°で、透過鮮明度を光学くしで0.125〜2.0mmの範囲で測定した。
【0277】
上記測定・評価結果を表2に示す。
【0278】
【表2】
表2に示した全光線透過率及び像鮮明度の測定結果から明らかなように、本発明に係る光学フィルムは、高い光透過率を維持し、かつ光拡散性を有していることが分かる。
【0279】
<偏光板の作製>
(偏光子の作製)
厚さ70μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g及び水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらにヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5g及び水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
【0280】
(光硬化性接着剤の調製)
下記の各成分を混合した後、脱泡して、光硬化性接着剤液を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
【0281】
(光硬化性接着剤液の組成)
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂)
40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン 0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン 2.0質量部
(偏光板の作製)
上記で作製した光学フィルム1〜11をそれぞれ用いた偏光板を、下記のように作製した。
【0282】
まず、光学フィルムの表面にコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、光学フィルムのコロナ放電処理面に、上記調製した接着剤液を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して接着剤層を形成した。得られた接着剤層に、前述のようにして作製したポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光子を貼合した。
【0283】
同様にして、KC6UY(コニカミノルタオプト(株)製)フィルムを準備し、その表面にコロナ放電処理を施した。なお、コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、当該フィルムのコロナ放電処理面に、上記調製した接着剤液を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して接着剤層を形成した。この接着剤層に、偏光板保護フィルムが片面に貼合された偏光子の偏光子を貼合して、光学フィルム/偏光子/KC6UY(コニカミノルタオプト(株)製)フィルムの積層物を得た。この積層物の偏光板保護フィルムに、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを使用)を用いて、積算光量が750mJ/cm
2となるように紫外線を照射し、接着剤層を硬化させた。
【0284】
このようにして、光学フィルム1〜11のそれぞれを用いて、偏光子が2枚の光学フィルムで挟持された偏光板を作製した。
【0285】
<偏光板の評価>
光学フィルム1〜11を用いて作製された各偏光板について、以下の評価を行った。
【0286】
(偏光子密着性)
作製した偏光板を5cm×5cmの大きさの正方形に断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下に24時間放置し、その後、角の部分から偏光子とフィルムの界面で剥がした。この作業を一種類のサンプルについて100枚の偏光板で行い、偏光子とフィルムの間で剥がれが見られた偏光板の枚数を数え、下記のように評価した。
【0287】
◎:0〜2枚
○:3〜5枚
△:6〜20枚
×:21枚以上
偏光子密着性は○か◎の評価であることが好ましい。
【0288】
(偏光板カール)
偏光板を巾手方向35mm、長手方向1mmに切り取ってカール測定用サンプルを作製した。これを25℃、55%RH雰囲気下で3日間放置した後、カール度の測定を行った。カール度は曲率半径の逆数を表すが、具体的にはJIS−K7619−1988のA法に準じて測定した。カール度に対する評価は以下のとおりである。
【0289】
○:0〜5%
△:5〜30%
×:30%〜100%
(表示装置の作製)
市販の液晶モニタ(Samsung製、SyncMaster743BM)のリア側偏光板を剥がし、代わりに、上記で作製した偏光板を貼合した。ただし、液晶セルに貼合する際は、光学フィルムの面がバックライト側に向く配置になるように、かつ、あらかじめ貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように貼合した。バックライトユニットは、光源側から順に、導光板/下拡散シート/プリズムシート/プリズムシートの構成になっていた。
【0290】
上記方法に従って、上記の各種偏光板を備えた液晶表示装置1〜11を作製した。
【0291】
〈正面輝度〉
作製した液晶表示装置にビデオ信号ジェネレーター(VG−848;アストロデザイン(株)製)より信号を入力し、全面ベタ表示で256/256階調の白色表示とし、暗室下において液晶表示装置平面の法線(正面)方向から輝度計(CS−2000;コニカミノルタセンシング製)にて輝度を測定した。画面の中央の点から3cmの間隔で上下各1点、左右各1点の合計5点を測定し、平均値を算出した。
【0292】
バックライト側偏光板の表面に光拡散性を有さない基材(市販のセルロースエステルフィルム4UY(コニカミノルタオプト(株)製))を使用した場合を基準として、以下の3段階で評価した。
【0293】
○:ほとんど低下していない(基準値の98%以上100%以下)
△:やや低下している(基準値の95%以上98%未満)
×:低下している(基準値の95%未満)
〈モアレ〉
作製した液晶表示装置にビデオ信号ジェネレーター(VG−848;アストロデザイン(株)製)より信号を入力し、全面ベタ表示で128/256階調の灰色表示とし、暗室下で様々な方向から画面を目視観察し、モアレ発生の有無を評価した。
【0294】
○:モアレが観察されない
△:モアレが観察され、やや気になる
×:モアレが明瞭に観察される
評価は5人で行い、それぞれの液晶表示装置に対して平均値で評価を判定した。モアレのレベルとしては、実用的には○以上が必要である。
【0295】
上記評価結果を表3にまとめて示す。
【0296】
【表3】
表3に示した結果から明らかなように、本発明の偏光板は、偏光子密着性及び偏光板カールの評価において優れていることが分かる。また、本発明の偏光板を備えた液晶表示装置は、正面輝度及びモアレの評価において、優れていることが分かる。