特許第5962693号(P5962693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962693
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   A63F7/02 304D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-40170(P2014-40170)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-164485(P2015-164485A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2014年3月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 忠
【審査官】 渡辺 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−217723(JP,A)
【文献】 特開2004−167059(JP,A)
【文献】 特開2011−062431(JP,A)
【文献】 特開平2−224705(JP,A)
【文献】 特開2001−52406(JP,A)
【文献】 特開2013−50017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲を移動する移動体、および前記移動体を移動させるための移動手段を備えた遊技機において、
前記移動手段は、
変位可能に設けられた変位部材と、
前記変位部材に係合し、当該変位部材の変位に伴い移動するとともに、前記移動体に連結された可撓性を有する線形状の係合部材と、
前記係合部材の移動を誘導する誘導部材と、
を備え、
前記誘導部材は一部が曲線状となる屈曲部、および当該屈曲部と繋がる部分であって前記係合部材が嵌まり込む前記係合部材の幅と略同じ幅の溝が形成された直線状の直線部を有し、
前記変位部材の変位によって前記係合部材の一部が前記屈曲部を移動するとき、当該屈曲部によって撓んだ状態で当該屈曲部に沿って移動し、
前記係合部材の一部が前記屈曲部から前記直線部に移動するとき、前記屈曲部による撓みが前記直線部によって直線状に戻されるように構成されており、
前記誘導部材は、前記移動体の移動方向と平行または略平行な第一誘導部、および当該第一誘導部とは異なる方向に延びる第二誘導部を有し、
前記屈曲部が前記第一誘導部と前記第二誘導部との間に介在され、
前記移動体は、複数の移動体を含み、
前記複数の移動体のそれぞれに連結された前記係合部材を誘導する前記誘導部材の前記第一誘導部が、前記移動体の移動方向とは異なる方向において互いに重なるように設けられていることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記係合部材の全長は、前記移動体の移動範囲よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記移動体がいずれの位置に位置する場合でも、前記係合部材の一部が前記屈曲部に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記移動体は第一位置と第二位置との間を移動するものであり、
前記移動体が前記第一位置に位置するとき、または前記第二位置に位置するときの少なくともいずれか一方の状態において、前記係合部材の端部側が前記屈曲部に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遊技機。
【請求項5】
前記誘導部材が設けられたケース体を備え、
前記屈曲部によって前記係合部材を屈曲させることにより、前記移動体の移動方向における前記係合部材の大きさが、当該方向における前記ケース体の大きさを超えないように設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の遊技機。
【請求項6】
前記変位部材は、回転自在に設けられた回転部材であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定範囲を移動する移動体を備えた遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、歯車およびそれに噛み合うラック(歯竿)を用いて部材(扉部材24a、24b)を移動させる遊技機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような構造を備える遊技機では、ラックを配置するスペースが確保できず、移動させる部材(移動体)の移動範囲が制限されてしまうことがある。
【0005】
本発明は、移動体の移動範囲が制限されてしまうのを抑制することが可能な遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明にかかる遊技機は、所定範囲を移動する移動体、および前記移動体を移動させるための移動手段を備えた遊技機において、前記移動手段は、変位可能に設けられた変位部材と、前記変位部材に係合し、当該変位部材の変位に伴い移動するとともに、前記移動体に連結された可撓性を有する線形状の係合部材と、前記係合部材の移動を誘導する誘導部材と、を備え、前記誘導部材は一部が曲線状となる屈曲部、および当該屈曲部と繋がる部分であって前記係合部材が嵌まり込む前記係合部材の幅と略同じ幅の溝が形成された直線状の直線部を有し、前記変位部材の変位によって前記係合部材の一部が前記屈曲部を移動するとき、当該屈曲部によって撓んだ状態で当該屈曲部に沿って移動し、前記係合部材の一部が前記屈曲部から前記直線部に移動するとき、前記屈曲部による撓みが前記直線部によって直線状に戻されるように構成されており、前記誘導部材は、前記移動体の移動方向と平行または略平行な第一誘導部、および当該第一誘導部とは異なる方向に延びる第二誘導部を有し、前記屈曲部が前記第一誘導部と前記第二誘導部との間に介在され、前記移動体は、複数の移動体を含み、前記複数の移動体のそれぞれに連結された前記係合部材を誘導する前記誘導部材の前記第一誘導部が、前記移動体の移動方向とは異なる方向において互いに重なるように設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の遊技機において、前記係合部材の全長は、前記移動体の移動範囲よりも長いことを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1または請求項に記載の遊技機において、前記移動体がいずれの位置に位置する場合でも、前記係合部材の一部が前記屈曲部に位置することを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項1または請求項に記載の遊技機において、前記移動体が前記第一位置に位置するとき、または前記第二位置に位置するときの少なくともいずれか一方の状態において、前記係合部材の端部側が前記屈曲部に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の遊技機において、前記誘導部材が設けられたケース体を備え、前記屈曲部によって前記係合部材を屈曲させることにより、前記移動体の移動方向における前記係合部材の大きさが、当該方向における前記ケース体の大きさを超えないように設定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の遊技機において、前記変位部材は、回転自在に設けられた回転部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明にかかる遊技機では、係合部材の一部が誘導部材の屈曲部によって屈曲させられる構造であるため、係合部材の全体が、ある特定の方向にのみ沿うように配置する必要がない。よって、従来に比して、係合部材の全長や、配置が制限されてしまうのを抑制することが可能となる。つまり、移動体の移動範囲が制限されてしまうのを抑制することが可能となる。
また、係合部材を変形させつつ(直線状となる状態と屈曲した状態の一方から他方へ変形させつつ)誘導する部材として誘導部材を機能させることが可能である。
また、誘導部材には屈曲部が設けられるから、誘導部材を、移動体の移動方向に延びる第一誘導部と、それとは別の方向に延びる第二誘導部とを有する構成とすることが可能である。
また、複数の移動体を備える場合には、移動体の移動方向とは異なる方向において第一誘導部が互いに重なる構成とすることが可能である。つまり、限られたスペースを利用して、各移動体の移動範囲を大きくすることが可能である。
【0017】
係合部材の一部を屈曲させることができるため、請求項に記載の発明のように、係合部材の全長を移動体の移動範囲よりも長くすることが可能である。
【0018】
請求項に記載の発明のように、移動体がいずれの位置に位置する場合でも、係合部材の一部が屈曲部に位置するようにすれば、係合部材が移動するときにおける、屈曲部による係合部材の変形を円滑にすることが可能である。
【0019】
請求項に記載の発明のように、移動体が第一位置に位置するとき、または第二位置に位置するときの少なくともいずれか一方の状態において、係合部材の端部側が屈曲部に位置するようにすれば、移動体の移動範囲を大きくすることが可能である。
【0020】
請求項に記載の発明のように、移動体の移動方向におけるケース体の大きさに限界がある場合でも、係合部材の一部を屈曲させることによって当該方向における係合部材の大きさをケース体の大きさよりも小さくすることで、ケース体に係合部材を配置すること(ケース体に誘導部材を設けること)が可能となる。
【0021】
請求項に記載の発明のように、変位部材を回転部材とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態にかかる遊技機の正面図である(発射装置等の公知の部材は省略)。
図2】第一移動体および第二移動体が第一位置に位置する状態における、移動手段を構成する各部材の位置を模式的に示した図である。
図3】第一移動体が第二位置に位置し、第二移動体が第一位置に位置する状態における、移動手段を構成する各部材の位置を模式的に示した図である。
図4】第一移動体および第二移動体が第一位置と第二位置の所定位置に位置する状態における、移動手段を構成する各部材の位置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明における平面方向とは遊技盤90の平面方向に沿う(平行な)方向を、前後方向とは遊技盤90の平面方向に直交する方向(遊技者側を前、その反対側を後とする)を、左右・上下方向とは、遊技盤90を正面から見たときにおける方向をいうものとする。
【0026】
まず、図1を参照して遊技機1の全体構成について簡単に説明する。遊技機1は遊技盤90を備える。遊技盤90は、ほぼ正方形の合板により成形されており、発射装置の操作によって発射された遊技球をg902に案内する金属製の薄板からなる帯状のガイドレール903が略円弧形状となるように設けられている。
【0027】
遊技領域902には、表示装置91、第一始動入賞口904、第二始動入賞口905、大入賞口906、アウト口907などが設けられている。表示装置91は、例えば液晶表示装置が用いられ、表示装置91の表示画面(表示部)において特別図柄や普通図柄等が表示される。かかる表示装置91の表示画面は、遊技盤90に形成された開口901を通じて視認可能である。
【0028】
遊技盤90は、その後方に設けられるケース体30(図2図4参照)に支持されている。ケース体30には、移動体10や移動手段20等、種々の部材が配置される。移動体10や移動手段20の構成およびその作用については後述する。なお、本実施形態における遊技盤90は一部が透明または半透明であり、移動体10の一部が遊技盤90に重なったとしても、遊技盤90の透明または半透明な部分を通じて移動体10を視認することが可能である。
【0029】
また、遊技領域902には、流下する遊技球が衝突することにより遊技球の流下態様に変化を与える障害物としての遊技釘が複数設けられている。遊技領域902を流下する遊技球は、遊技釘に衝突したときの条件に応じて様々な態様に変化する。
【0030】
このような遊技機1では、発射装置を操作することにより遊技領域902に向けて遊技球を発射する。遊技領域902を流下する遊技球が、904、905や大入賞口906等の入賞口に入賞すると、所定の数の賞球が払出装置により払い出される。その他、大当たりの抽選方法や演出等は、公知の遊技機と同様のものが適用できるため、説明は省略する。
【0031】
以下、図2図4を参照して移動体10およびこの移動体10を移動させるための移動手段20の構成について説明する。移動体10は、所定範囲を移動する演出効果を発現する部材である。本実施形態にかかる遊技機1は、二つの移動体10(第一移動体11および第二移動体12)を備える。第一移動体11は、幅方向右側の第一位置(原位置)と幅方向左側の第二位置(終端位置)との間を往復動可能である。第二移動体12は、幅方向左側の第一位置(原位置)と幅方向右側の第二位置(終端位置)との間を往復動可能である。両移動体10は、上下方向における少なくともいずれか一方が、幅方向に延びるレール101に支持されている。両移動体10は、このレール101に誘導されて往復動する。本実施形態では、第一移動体11と第二移動体12は前後方向位置が同じであり、両移動体を支持するレール101は共通である。各移動体を支持するレールを別々に設置してもよい。
【0032】
移動手段20は、上記移動体10を移動させるための駆動機構である。なお、第一移動体11を移動させる移動手段20と、第二移動体12を移動させる移動手段20は、左右対称に配置されるだけであってその構造は同じである。以下の説明は、第一移動体11と第二移動体12を区別して言及する場合を除き、第一移動体11を移動させる移動手段20についてのものである(第二移動体12の移動手段20を構成する各部材の位置や形状等は左右反対になる)。
【0033】
本実施形態における移動手段20は、駆動歯車21(本発明における変位部材、回転部材に相当する)、ラック22(本発明における係合部材に相当する)、誘導部材23を備える。駆動歯車21は、駆動源であるモータ(図示せず)によって回転する。モータと駆動歯車21の間には、一または複数の歯車(歯車輪列)等が介在されていてもよい。本実施形態における駆動歯車21は、ケース体30の左上に取り付けられている。この駆動歯車21にラック22が噛み合っている。かかるラック22は、可撓性を有する(撓み変形可能な)いわゆるフレキシブルラックである。本実施形態では、ラック22と移動体10は連結部材24を介して接続されている。なお、一方の移動体10に接続される連結部材24は、他方の移動体10に接続される連結部材24や誘導部材23に干渉しないような構造となっている。移動体10は、ラック22の右側端部(当該移動体10に接続された側の端部を接続端部221と、反対側の端部を反対端部222と称する)に連結部材24を介して接続されている。ラック22と移動体10の連結構造はかかる構造に限定されない。ラック22に対し移動体10が直接接続されていてもよい。ラック22の全長は、移動体10の移動範囲よりも長い。
【0034】
誘導部材23は、ラック22を誘導する部材である。本実施形態における誘導部材23は、ケース体30に固定されている。ケース体30と一体に成形された部材であってもよい。誘導部材23は、ラック22が嵌まり込むことが可能な細長い溝が形成された部材である。誘導部材23(に形成された溝)は、第一誘導部231、第二誘導部232および屈曲部233に区分けされる。
【0035】
第一誘導部231は、移動体10の移動方向と平行または略平行(幅方向)に延びる直線状の部分である。本実施形態では、第一誘導部231はケース体30の上側縁に沿って設けられ、その端部(誘導部材23の端部でもある)は、幅方向中央よりも右側に位置する。第二誘導部232は、第一誘導部231とは異なる方向に延びる直線状の部分である。本実施形態における第二誘導部232は、ケース体30の左側縁に沿って上下方向に延びる。屈曲部233は、第一誘導部231と第二誘導部232の間に介在された部分であって、所定の曲率で湾曲した部分である。屈曲部233は、ケース体30の左上に位置する。
【0036】
かかる誘導部材23の誘導部となる溝に、ラック22がその長手方向に移動(スライド)可能となるように嵌め込まれている。上記屈曲部233の曲率は、屈曲部233内に位置することによって撓む(弾性変形する)ラック22が塑性変形しないような値であればよい。ラック22の全長は、第一誘導部231の長さよりも長い。また、ラック22の全長は、第二誘導部232の長さよりも長い。そのため、ラック22がどの位置に位置する場合であっても、当該ラック22の一部は屈曲部233内に位置する。つまり、ラック22の一部は常に屈曲部233によって撓んでいる。また、ラック22の全長は、ケース体30の幅よりも大きい。したがって、ラック22が撓むことのできない構造であれば、ラック22の全部を収容する誘導部材23をケース体30に構築することができないところ、本実施形態では、ラック22の一部が屈曲部233によって撓むため、ラック22の全体が誘導部材23内に収容される。
【0037】
また、両移動体10の移動範囲を大きくするために、第一移動体11を移動させるためのラック22を誘導する誘導部材23の第一誘導部231と、第二移動体12を移動させるためのラック22を誘導する誘導部材23の第一誘導部231とは、一部が上下方向において互いに重なっている。
【0038】
このような構成を備える移動手段20により、移動体10は次のように動作する。移動体10が第一位置(原位置)に位置するとき、ラック22の接続端部221は誘導部材23の第一誘導部231の右端に位置する。つまり、ラック22は、最大限幅方向右側に寄った状態にある。この移動体10が第一位置に位置する状態(ラック22が最大限幅方向右側に寄った状態)にあるときでも、ラック22の反対端部222は屈曲部233内に位置する。
【0039】
移動体10を第一位置から第二位置に向かって移動させる際には、駆動源であるモータを一方に回転(正転)させる。そうすると、その動力が駆動歯車21を介してラック22に伝達され、当該ラック22が誘導部材23に誘導されて当該誘導部材23内を移動する。具体的には、接続端部221が第一誘導部231内を幅方向左に向かって変位する方向にラック22が移動する。ラック22が移動していくと、屈曲部233によって変形する部分はだんだんと接続側端部側に変化していく。屈曲部233によって変形していた箇所は、第二誘導部232によって直線状に戻されていく。ラック22の反対端部222は、屈曲部233から第二誘導部232内に進入し、当該第二誘導部232内を下に向かって移動していく。モータを一方に回転させようとする時点で、ラック22の反対端部222は屈曲部233内に位置しているため、ラック22の反対端部222は、スムーズに第二誘導部232内に進入する。また、ラック22の一部はスムーズに屈曲部233内に進入する。仮に、移動体10が第一位置に位置するとき、ラック22の全体が第一誘導部231内に位置する構成であるとすると、ラック22の反対端部222が屈曲部233内に進入する際、ラック22が屈曲部233の入口で詰まるように変形するおそれがあるところ、本実施形態では、移動体10が第一位置に位置する時点で、ラック22の反対端部222が屈曲部233内に位置しているから、このような事象が発生してしまうおそれが低減される。
【0040】
このラック22の移動に伴い、連結部材24を介してラック22に接続された移動体10は、幅方向左、すなわち第二位置に向かって移動する。上述したように、このように一方の移動体10が移動したとしても、他方の移動体10に干渉することはない。
【0041】
所定量駆動源であるモータを一方に回転させると、移動体10が第二位置に到達する。つまり、移動体10は幅方向左側に位置した状態となる。なお、本実施形態では、第一移動体11と第二移動体12の前後方向位置が同じであるため、第二移動体12を第一位置に位置させた状態にある場合にのみ、第一移動体11を第二位置に位置させることができる(第二移動体12の場合も同様である)。両移動体10の前後方向位置を異ならせた構造(両移動体10が互いに干渉せずに移動することができる構造)としてもよい。例えば、前後方向位置が異なるレールに各移動体10を支持させることで、両者が互いに干渉せずに移動することが可能となる。かかる場合は、一方の移動体10を、他方の移動体10の位置に拘わらず、第一位置と第二位置の間を自在に往復動させることができる。
【0042】
第二位置に位置する移動体10を第一位置に移動させる場合には、モータを他方に回転(逆転)させる。そうすると、ラック22は屈曲部233によって変形する箇所および第一誘導部231によって直線状に戻る箇所を変化させつつ、誘導部材23内を逆方向に移動する。つまり、移動体10が幅方向右側に向かって移動する。移動体10が第二位置に位置する時点で、ラック22の一部(接続端部221側の一部)は屈曲部233内に位置するから、ラック22の移動はスムーズである(ラック22が屈曲部233の入口で詰まるように変形するおそれが低減される)。
【0043】
このように移動手段20によって移動される移動体10(第一移動体11と第二移動体12)は、それぞれの位置を制御することによって、次のような態様(演出態様)に変化する。両移動体10が第一位置に位置するときには、互いに最も離れた状態にある(図2参照)。一方の移動体10を第一位置に位置させたまま、他方の移動体10を第二位置に位置させると、幅方向一方側で両移動体10が接触または近接した状態となる(図3参照)。両移動体10が第一位置と第二位置との間の所定位置に位置するときには、幅方向中央で両移動体10が接触または近接した状態となる(図4参照)。例えば、移動体10が画像表示機能を備える装置である場合、両移動体10を接触または近接した状態とすることで、両者を合わせた画像を表示することが可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施形態にかかる遊技機1では、ラック22の一部が誘導部材23の屈曲部233によって屈曲させられる構造であるため、ラック22の全体が、ある特定の方向にのみ沿うように配置する必要がない。よって、従来に比して、ラック22の全長や、配置が制限されてしまうのを抑制することが可能となる。つまり、移動体10の移動範囲が制限されてしまうのを抑制することが可能となる。
【0045】
また、移動体10を移動させる際にはラック22を変形させることになるが、誘導部材23によって、ラック22の変形と移動がスムーズになされる。つまり、誘導部材23を、ラック22の一部を変形させるとともに一部を直線状に戻しながら、当該ラック22全体を誘導する部材として誘導部材23を機能させることが可能である。
【0046】
また、ラック22の一部が屈曲した状態にあるから、ラック22の全長を移動体10の移動範囲よりも長くすることが可能である。
【0047】
また、移動体10がいずれの位置に位置する場合でも、ラック22の一部が屈曲部233に位置するから、ラック22が移動するときにおける、屈曲部233によるラック22の変形を円滑にすること(ラック22が屈曲部233の入口で詰まるように変形するおそれを低減すること)が可能である。特に、移動体10が第一位置に位置するとき、または第二位置に位置するときの少なくともいずれか一方の状態において(本実施形態では移動体10が第一位置に位置するときにおいて)、ラック22の端部(本実施形態では反対端部222)が屈曲部233に位置するように構成されているため、屈曲部233による円滑なラック22の変形作用を確保しつつ、移動体10の移動範囲を大きくすることが可能である。
【0048】
また、ラック22は一部が屈曲させられるものであるから、移動体10の移動方向(幅方向)におけるラック22の大きさ(移動体10が第一位置に位置するとき、当該方向におけるラック22の大きさが最大となる)は、当該方向におけるケース体30の大きさを超えることがない。つまり、ケース体30にラック22を配置することが可能となる。
【0049】
また、第一移動体11を移動させるためのラック22を誘導する誘導部材23の第一誘導部231の少なくとも一部と、第二移動体12を移動させるためのラック22を誘導する誘導部材23の第一誘導部231の少なくとも一部が上下方向(移動体の移動方向と交差する方向)において互いに重なっているため、限られたスペースを利用して、複数の移動体10それぞれの移動範囲を大きくすることが可能である。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0051】
上記実施形態では、各誘導部材23に屈曲部233が一箇所形成されていることを説明したが、複数個所形成された構成としてもよい。また、第一誘導部231や第二誘導部232は直線形状であればよく、その延びる方向は特定の方向に限定されない。誘導部材23が設けられるケース体30を最大限利用するのであれば、第一誘導部231や第二誘導部232はケース体30の側縁に沿う形状であることが好ましい。また、各誘導部材23に直線形状の誘導部が一箇所のみ形成された構成としてもよいし、三箇所以上形成された構成(屈曲部233が二箇所以上となる構成)としてもよい。このようにすれば、ケース体30内に収まる範囲で、ラック22を長くすることができる。
【0052】
上記実施形態では、二つの移動体10(第一移動体11および第二移動体12)が設けられることを説明したが、一つであってもよい。また、三つ以上の移動体10が設けられていてもよい。また、第一移動体11と第二移動体12はともに幅方向に移動するものであることを説明したが、各移動体10の移動方向は異なっていてもよい。
以下、上記実施形態から得られる具体的手段(遊技機)を列挙する。
手段1にかかる遊技機は、所定範囲を移動する移動体、および前記移動体を移動させるための移動手段を備えた遊技機において、前記移動手段は、変位可能に設けられた変位部材と、前記変位部材に係合し、当該変位部材の変位に伴い移動するとともに、前記移動体に連結された可撓性を有する線形状の係合部材と、前記係合部材の移動を誘導する誘導部材と、を備え、前記誘導部材は一部が曲線状となる屈曲部を有し、前記変位部材の変位によって前記係合部材の一部が前記屈曲部を移動するとき、当該屈曲部によって撓んだ状態で当該屈曲部に沿って移動するように構成されていることを特徴とする。
手段2にかかる遊技機は、手段1に記載の遊技機において、前記誘導部材は、前記屈曲部と繋がる直線状の直線部を有し、前記係合部材は、その一部が前記屈曲部から前記直線部に移動するときに、前記屈曲部による撓みが前記直線部によって直線状に戻されることを特徴とする。
手段3にかかる遊技機は、手段1または手段2に記載の遊技機において、前記係合部材の全長は、前記移動体の移動範囲よりも長いことを特徴とする。
手段4にかかる遊技機は、手段1から手段3のいずれかに記載の遊技機において、前記移動体がいずれの位置に位置する場合でも、前記係合部材の一部が前記屈曲部に位置することを特徴とする。
手段5にかかる遊技機は、手段1から手段3のいずれかに記載の遊技機において、前記移動体が前記第一位置に位置するとき、または前記第二位置に位置するときの少なくともいずれか一方の状態において、前記係合部材の端部側が前記屈曲部に位置することを特徴とする。
手段6にかかる遊技機は、手段1から手段5のいずれかに記載の遊技機において、前記誘導部材が設けられたケース体を備え、前記屈曲部によって前記係合部材を屈曲させることにより、前記移動体の移動方向における前記係合部材の大きさが、当該方向における前記ケース体の大きさを超えないように設定されていることを特徴とする。
手段7にかかる遊技機は、手段1から手段6のいずれかに記載の遊技機において、前記変位部材は、回転自在に設けられた回転部材であることを特徴とする。
手段8にかかる遊技機は、手段1から手段7のいずれかに記載の遊技機において、前記誘導部材は、前記移動体の移動方向と平行または略平行な第一誘導部、および当該第一誘導部とは異なる方向に延びる第二誘導部を有し、前記屈曲部が前記第一誘導部と前記第二誘導部との間に介在されていることを特徴とする。
手段9にかかる遊技機は、手段8に記載の遊技機において、前記移動体は、複数の移動体を含み、前記複数の移動体のそれぞれに連結された前記係合部材を誘導する前記誘導部材の前記第一誘導部が、前記移動体の移動方向とは異なる方向において互いに重なるように設けられていることを特徴とする。
手段1にかかる遊技機では、係合部材の一部が誘導部材の屈曲部によって屈曲させられる構造であるため、係合部材の全体が、ある特定の方向にのみ沿うように配置する必要がない。よって、従来に比して、係合部材の全長や、配置が制限されてしまうのを抑制することが可能となる。つまり、移動体の移動範囲が制限されてしまうのを抑制することが可能となる。
手段2にかかる遊技機のように、係合部材を変形させつつ(直線状となる状態と屈曲した状態の一方から他方へ変形させつつ)誘導する部材として誘導部材を機能させることが可能である。
係合部材の一部を屈曲させることができるため、手段3にかかる遊技機のように、係合部材の全長を移動体の移動範囲よりも長くすることが可能である。
手段4にかかる遊技機のように、移動体がいずれの位置に位置する場合でも、係合部材の一部が屈曲部に位置するようにすれば、係合部材が移動するときにおける、屈曲部による係合部材の変形を円滑にすることが可能である。
手段5にかかる遊技機のように、移動体が第一位置に位置するとき、または第二位置に位置するときの少なくともいずれか一方の状態において、係合部材の端部側が屈曲部に位置するようにすれば、移動体の移動範囲を大きくすることが可能である。
手段6にかかる遊技機のように、移動体の移動方向におけるケース体の大きさに限界がある場合でも、係合部材の一部を屈曲させることによって当該方向における係合部材の大きさをケース体の大きさよりも小さくすることで、ケース体に係合部材を配置すること(ケース体に誘導部材を設けること)が可能となる。
手段7にかかる遊技機のように、変位部材を回転部材とすることが可能である。
手段8にかかる遊技機のように、誘導部材には屈曲部が設けられるから、誘導部材を、移動体の移動方向に延びる第一誘導部と、それとは別の方向に延びる第二誘導部とを有する構成とすることが可能である。
手段9にかかる遊技機のように、複数の移動体を備える場合には、移動体の移動方向とは異なる方向において第一誘導部が互いに重なる構成とすることが可能である。つまり、限られたスペースを利用して、各移動体の移動範囲を大きくすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 遊技機
10 移動体(11 第一移動体、12 第二移動体)
20 移動手段
21 駆動歯車(変位部材、回転部材)
22 ラック(係合部材)
221 接続端部
222 反対端部
23 誘導部材
231 第一誘導部
232 第二誘導部
233 屈曲部
30 ケース体
図1
図2
図3
図4