特許第5962739号(P5962739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962739
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】免疫誘導剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20160721BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20160721BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20160721BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20160721BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   A61K39/00 HZNA
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K48/00
   A61K45/00
   A61K37/66
   A61K37/02
   A61K35/76
   A61P43/00 121
   A61P37/04
   C07K14/47
   !C12N15/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-225626(P2014-225626)
(22)【出願日】2014年11月5日
(62)【分割の表示】特願2009-546597(P2009-546597)の分割
【原出願日】2009年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-61847(P2015-61847A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2014年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2008-202065(P2008-202065)
(32)【優先日】2008年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(72)【発明者】
【氏名】岡野 文義
(72)【発明者】
【氏名】清水 まさき
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝則
【審査官】 小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/083070(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/088583(WO,A1)
【文献】 特表2008−500033(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0190640(US,A1)
【文献】 GenBank databases, NCBI. ACCESSION No.BC001731,2007年 9月11日,[online],[平成27年10月23日検索],インターネット,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucleotide/12804616
【文献】 Cancer Research,1999年,Vol.59,No.2,p431−435
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)、(b)及び(c)のポリペプチド類から選択されかつ免疫誘導活性を有する少なくとも1つのポリペプチド、又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み生体内で該ポリペプチドを発現可能な組換えベクター、を有効成分として含有することを特徴とする、動物の癌(大腸癌を除く)を治療及び/又は予防するための免疫誘導剤。
(a) 配列表の配列番号2〜30のうち偶数の配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 前記(a)のポリペプチドと95%以上の配列同一性を有するポリペプチド
(c) 前記(a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含むポリペプチド
【請求項2】
前記(b)のポリペプチドが、前記(a)のポリペプチドと99%以上の配列同一性を有するポリペプチドである、請求項1記載の免疫誘導剤。
【請求項3】
1又は複数の前記ポリペプチドを有効成分として含有する、請求項1又は2に記載の免疫誘導剤。
【請求項4】
前記癌が、乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、肺癌、又は食道癌である、請求項1〜のいずれか1項に記載の免疫誘導剤。
【請求項5】
前記動物がヒト、イヌ又はネコである、請求項1〜のいずれか1項に記載の免疫誘導剤。
【請求項6】
免疫増強剤をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の免疫誘導剤。
【請求項7】
前記免疫増強剤が、フロイントの不完全アジュバント、モンタニド、ポリICおよびその誘導体、CpGオリゴヌクレオチド、インターロイキン12、インターロイキン18、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンω、インターフェロンγ並びにFlt3リガンドから成る群より選ばれる少なくとも1つのアジュバント又はサイトカインである請求項記載の免疫誘導剤。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有する免疫誘導剤と抗原提示細胞をインビトロで接触させ、それによって、前記ポリペプチドの一部とHLA分子との複合体を含む抗原提示細胞を製造する工程を含む、前記複合体を含む抗原提示細胞を含む、癌(大腸癌を除く)の治療及び/又は予防剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有する免疫誘導剤と抗原提示細胞をインビトロで接触させ、それによって、前記ポリペプチドの一部とHLA分子との複合体を含む抗原提示細胞を得る工程、ならびに、前記工程により得られる抗原提示細胞を、T細胞とインビトロで接触させ、それによって、前記ポリペプチドに特異的なT細胞を製造する工程を含む、細胞障害性T細胞を含む、癌(大腸癌を除く)の治療及び/又は予防剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療及び/又は予防剤等として有用な新規な免疫誘導剤に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は全死亡原因の第一位を占める疾患であり、現在行われている治療は手術療法を主体に放射線療法と化学療法を組み合わせたものである。近年の新しい手術法の開発や新たな抗癌剤の発見にも関わらず、一部の癌を除いて、癌の治療成績はあまり向上していないのが現状である。近年、分子生物学や癌免疫学の進歩によって癌に反応する細胞障害性T細胞により認識される癌抗原類、癌抗原をコードする遺伝子類などが同定されており、抗原特異性免疫療法への期待が高まっている(非特許文献1)。
【0003】
免疫療法においては、副作用を軽減するため、その抗原として認識されるペプチド、ポリペプチド又はタンパクは、正常細胞にはほとんど存在せず、癌細胞に特異的に存在していることが必要とされる。1991年、ベルギー国Ludwig研究所のBoonらは自己癌細胞株と癌反応性T細胞を用いたcDNA発現クローニング法によりCD8陽性T細胞が認識するヒトメラノーマ抗原MAGE1を単離した(非特許文献2)。その後、癌患者の生体内で自己の癌に反応して産生される抗体が認識する腫瘍抗原を遺伝子の発現クローニングの手法を取り入れて同定する、SEREX(serological identifications of antigens by recombinant expression cloning)法が報告され(非特許文献3及び特許文献1)、この方法により、いくつかの癌抗原が単離されている(非特許文献4〜9)。さらに、その一部をターゲットにして癌免疫療法の臨床試験が開始されている。
【0004】
一方、ヒトと同様、イヌやネコにも乳腺癌、白血病、リンパ腫など多数の腫瘍が知られており、イヌやネコの疾病統計でも上位にランクされている。しかしながらイヌやネコの癌に対する有効な治療薬、予防薬および診断薬は現在のところ存在しない。大部分のイヌやネコの腫瘍は、進行して腫瘤が大きくなってから飼い主が気付くケースがほとんどで、来院して外科的手術により切除したり、人体薬(抗癌剤など)を投与しても、すでに手遅れで処置後まもなく死亡することが多い。このような現状の中で、イヌやネコに有効な癌の治療薬、予防薬および診断薬が入手可能になれば、イヌやネコの癌に対する用途が開かれると期待される。
【0005】
Cytoplasmic−and proliferation−associateed protein 1(CAPRIN−1)は、休止期の正常細胞が活性化や細胞分裂を起こす際に発現し、また細胞内でRNAと細胞内ストレス顆粒を形成してmRNAの輸送、翻訳の制御に関与することなどが知られている細胞内タンパク質である。一方で、CAPRIN−1には色々な別名が存在しており、その一例としてGPI−anchored membrane protein 1やMembrane component surface marker 1 protein (M11S1)などがあり、あたかも本タンパク質が細胞膜タンパク質であることが知られていたかのような名称がある。これらの別名は、元々、CAPRIN−1の遺伝子配列がGPI結合領域を有し、大腸由来細胞株に発現する膜タンパク質であるとする報告(非特許文献10)に由来するが、後にこの報告でのCAPRIN−1の遺伝子配列は誤りであり、現在GenBank等に登録されているCAPRIN−1の遺伝子配列が1塩基欠損することによりフレームシフトが起きることでC末端から80アミノ酸が欠損し、その結果生じるartifact(74アミノ酸)が前報告でのGPI結合部分であり、さらに5’側にも遺伝子配列のエラーがあり、N末端から53アミノ酸が欠損していることが証明されている(非特許文献11)。また、現在GenBank等に登録されているCAPRIN−1の遺伝子配列がコードするタンパク質は細胞膜タンパク質ではないことも報告されている(非特許文献11)。
【0006】
なお、CAPRIN−1が細胞膜タンパク質であるとする非特許文献10の報告に基づき、特許文献2及び3には、M11S1の名称で、CAPRIN−1が細胞膜タンパク質の1つとして癌治療などのターゲットとなりうることが記載されている(実施例には記載は一切ない)。しかし、非特許文献11の報告の通り、特許文献2の出願当時から現在まで、CAPRIN−1は細胞表面には発現していないものであることが通説になっており、CAPRIN−1が細胞膜タンパク質であるという誤った情報のみに基づく特許文献2及び3の内容は、当業者の技術常識として理解されるべきものではないことは明らかである。さらに、CAPRIN−1が乳癌などの癌細胞で、正常細胞に比べて高発現するという報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5698396号
【特許文献2】US2008/0075722
【特許文献3】WO2005/100998
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】秋吉毅,「癌と化学療法」、1997年、第24巻、p551−519(癌と化学療法社、日本)
【非特許文献2】Bruggen P. et al., Science, 254:1643−1647(1991)
【非特許文献3】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:11810−11813(1995)
【非特許文献4】Int.J.Cancer,72:965−971(1997)
【非特許文献5】Cancer Res., 58:1034−1041(1998)
【非特許文献6】Int.J.Cancer,29:652−658(1998)
【非特許文献7】Int.J.Oncol.,14:703−708(1999)
【非特許文献8】Cancer Res., 56:4766−4772(1996)
【非特許文献9】Hum. Mol. Genet6:33−39, 1997
【非特許文献10】J. Biol. Chem., 270:20717−20723, 1995
【非特許文献11】J. Immunol., 172:2389−2400, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、癌の治療及び/又は予防剤等として有用な新規なポリペプチドを見出し、該ポリペプチドの免疫誘導剤としての用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、イヌの精巣組織由来cDNAライブラリーと乳癌患犬の血清を用いたSEREX法により、担癌生体由来の血清中に存在する抗体と結合するタンパク質をコードするcDNAを取得し、そのcDNAを基にして配列番号6、8、10、12、14で示されるアミノ酸配列を有するイヌCAPRIN−1ポリペプチドを作製した。また、取得した遺伝子のヒト相同性遺伝子を基にして、配列番号2及び4で示されるアミノ酸配列を有するヒトCAPRIN−1ポリペプチドを作製した。さらに、これらCAPRIN−1ポリペプチドが乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、肺癌、食道癌又は大腸癌に特異的に発現していることを見出した。さらにまた、これらCAPRIN−1ポリペプチドを生体に投与することによって、生体内にCAPRIN−1ポリペプチドに対する免疫細胞を誘導することができること、およびCAPRIN−1遺伝子を発現する生体内の腫瘍を退縮させることができることを見出した。また、それらCAPRIN−1ポリペプチドに対する抗体が、CAPRIN−1遺伝子を発現する癌細胞を障害し生体内で抗腫瘍効果を誘導することを見出した。以上のことにより、本発明を完成させるに至った。
【0011】
したがって、本発明は、以下の特徴を有する。
【0012】
(1) 以下の(a)、(b)及び(c)のポリペプチド類から選択されかつ免疫誘導活性を有する少なくとも1つのポリペプチド、又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み生体内で該ポリペプチドを発現可能な組換えベクター、を有効成分として含有する免疫誘導剤。
(a) 配列表の配列番号2〜30のうち偶数の配列番号に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸からなるポリペプチド
(b) 上記(a)のポリペプチドと90%以上の配列同一性を有し、かつ7個以上のアミノ酸からなるポリペプチド
(c) 上記(a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含むポリペプチド
【0013】
(2) 上記(b)のポリペプチドが、前記(a)のポリペプチドと95%以上の配列同一性を有するポリペプチドである、上記(1)の免疫誘導剤。
【0014】
(3) 上記免疫誘導活性を有するポリペプチドが、配列表の配列番号2〜30のうち偶数の配列番号に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸からなるポリペプチド、又は該ポリペプチドを部分配列として含むポリペプチドである、上記(1)の免疫誘導剤。
【0015】
(4) 上記免疫誘導活性を有するポリペプチドが、配列表の配列番号2〜30のうち偶数の配列番号に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである、上記(3)の免疫誘導剤。
【0016】
(5) 上記免疫誘導活性を有するポリペプチドが、配列表の配列番号2〜30のうち配列番号6および配列番号18を除く偶数の配列番号に示されるアミノ酸配列中のアミノ酸残基番号(aa)41−400又はアミノ酸残基番号(aa)503−564の領域内の連続する7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド又は該ポリペプチドを部分配列として含むポリペプチドである上記(3)の免疫誘導剤。
【0017】
(6) 上記免疫誘導活性を有するポリペプチドが、配列表の配列番号43〜76のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいは配列表の配列番号43〜76のいずれかに示されるアミノ酸配列を部分配列として含み、アミノ酸残基数が8〜12であるポリペプチドである、上記(5)の免疫誘導剤。
【0018】
(7) 1又は複数の上記ポリペプチドを有効成分として含有する、上記(1)〜(6)のいずれかの免疫誘導剤。
【0019】
(8) 上記ポリペプチドが抗原提示細胞の処理剤である、上記(7)の免疫誘導剤。
【0020】
(9) 動物の癌の治療用及び/又は予防用である、上記(1)〜(7)のいずれかの免疫誘導剤。
【0021】
(10) 上記癌が、乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、肺癌、食道癌又は大腸癌である、上記(9)の免疫誘導剤。
【0022】
(11) 上記動物がヒト、イヌ又はネコである、上記(9)の免疫誘導剤。
【0023】
(12) 免疫増強剤をさらに含む、上記(1)〜(11)のいずれかの免疫誘導剤。
【0024】
(13) 上記免疫増強剤が、フロイントの不完全アジュバント、モンタニド、ポリICおよびその誘導体、CpGオリゴヌクレオチド、インターロイキン12、インターロイキン18、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンω、インターフェロンγ並びにFlt3リガンドから成る群より選ばれる少なくとも1つのアジュバントまたはサイトカインである、上記(12)の免疫誘導剤。
【0025】
(14) 上記免疫誘導活性を有するポリペプチドとHLA分子の複合体を含む、単離抗原提示細胞。
【0026】
(15) 上記免疫誘導活性を有するポリペプチドとHLA分子の複合体を選択的に結合する、単離T細胞。
【0027】
(16) 以下の(a)ないし(c)のポリペプチド類から選択されかつ免疫誘導活性を有する少なくとも1つのポリペプチド、又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み生体内で該ポリペプチドを発現可能な組換えベクターを個体に投与することを含む、免疫誘導方法。
(a)配列表の配列番号2〜30のうち偶数の配列番号に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸からなるポリペプチド
(b)前記(a)のポリペプチドと90%以上の配列同一性を有し、かつ7個以上のアミノ酸からなるポリペプチド
(c)前記(a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含むポリペプチド
【発明の効果】
【0028】
本発明により、癌の治療及び/又は予防等に有用な新規な免疫誘導剤が提供される。後述の実施例において具体的に示されるように、本発明で用いられるポリペプチドを担癌動物に投与すると、該担癌動物の体内において免疫細胞を誘導することができ、さらに、既に生じている癌を縮小もしくは退縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】CAPRIN−1ポリペプチドをコードする遺伝子の、正常組織および腫瘍細胞株での発現パターンを示す図である。参照番号1;CAPRIN−1タンパクをコードする遺伝子の発現パターン、参照番号2;GAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
図2図2中、横軸の参照番号3〜31は、それぞれ配列番号43〜71のペプチドをパルスしたT2細胞からの刺激によるHLA−A0201陽性CD8陽性T細胞のIFN−γ産生能を示す。参照番号32は、配列番号77の陰性コントロールのペプチド(本発明の範囲外の配列であるペプチド)についての結果を示す。
図3図3中、横軸の参照番号33〜37は、それぞれ配列番号72〜76のペプチドをパルスしたJTK−LCL細胞からの刺激によるHLA−A24陽性CD8陽性T細胞のIFN−γ産生能を示す。参照番号38は、配列番号77の陰性コントロールについての結果を示す。
図4図4中、横軸の参照番号39〜67は、それぞれ配列番号43〜71のペプチドを用いて刺激したHLA−A0201陽性のCD8陽性T細胞のU−87MG細胞に対する細胞障害活性を示す。参照番号68は陰性コントロールのペプチド(配列番号77)を用いて誘導したCD8陽性T細胞の細胞障害活性を示す。
図5図5中、横軸の参照番号69〜73は、それぞれ配列番号72〜76のペプチドを用いて刺激したHLA−A24陽性のCD8陽性T細胞のJTK−LCL細胞に対する細胞障害活性を示す。参照番号74は陰性コントロールのペプチド(配列番号77)を用いて誘導したCD8陽性T細胞の細胞障害活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<ポリペプチド>
本発明の免疫誘導剤に有効成分として含まれるポリペプチドとしては、以下の(a)、(b)及び(c)のポリペプチド類から選択される1もしくは複数のポリペプチドが挙げられる。
【0031】
(a) 配列表の配列番号2〜30のうち偶数の配列番号に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド中の連続する7個以上のアミノ酸からなり、かつ免疫誘導活性を有するポリペプチド
(b) 上記(a)のポリペプチドと90%以上の配列同一性を有する、かつ7個以上のアミノ酸からなる、かつ免疫誘導活性を有するポリペプチド
(c) 上記(a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含む、かつ免疫誘導活性を有するポリペプチド
本明細書において使用される「ポリペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合することによって形成される分子をいい、構成するアミノ酸数が多いポリペプチド分子のみならず、アミノ酸数が少ない低分子量の分子(オリゴペプチド)や、全長タンパク質も包含され、本発明では配列番号2〜30のうち偶数の配列番号の全長からなるタンパク質も包含される。
【0032】
なお、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号(すなわち、配列番号2,4,6・・28,30)のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列はそれぞれ、配列番号1〜29のうち奇数の配列番号(すなわち、配列番号1,3,5・・27,29)に示されている。
【0033】
本明細書において使用される「アミノ酸配列を有する」とは、アミノ酸残基が特定の順序で配列しているという意味である。従って、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド」とは、配列番号2に示されるMet Pro Ser Ala Thr ・・(中略)・・ Gln Gln Val Asnのアミノ酸配列を持つ、709アミノ酸残基のサイズのポリペプチドを意味する。また、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド」を「配列番号2のポリペプチド」と略記することがある。「塩基配列を有する」という表現についても同様である。この場合、「有する」という用語は、「からなる」という表現で置き換えてもよい。
【0034】
本明細書で使用される「免疫誘導活性」とは、生体内でインターフェロン、インターロイキン等のサイトカインを分泌する免疫細胞を誘導する能力を意味する。
【0035】
上記ポリペプチドが免疫誘導活性を有するか否かは、例えば公知のエリスポット(ELISPOT)アッセイ等を用いて確認することができる。具体的には、例えば下記実施例に記載されるように、免疫誘導活性を評価すべきポリペプチドを投与した生体から末梢血単核球等の細胞を得て、該細胞を該ポリペプチドと共存培養し、該細胞からのIFN−γ、インターロイキン(IL)などのサイトカイン及び/又はケモカインの産生量を、特異抗体を用いて測定することにより、該細胞中の免疫細胞数を測定することができるので、これにより免疫誘導活性を評価することができる。
【0036】
あるいは、後述の実施例に記載されるように、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のアミノ酸配列を基に作製した組換えポリペプチドを担癌動物に投与すると、その免疫誘導活性により腫瘍を退縮させることもできる。よって、上記免疫誘導活性は、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のポリペプチドを発現する癌細胞の増殖を抑制する又は癌組織(腫瘍)を縮小若しくは消滅させる能力(以下、「抗腫瘍活性」という)として評価することもできる。ポリペプチドの抗腫瘍活性は、例えば下記実施例に具体的に記載されるように、実際に該ポリペプチドを担癌生体に投与して腫瘍が縮小等されるか否かを調べることよって確認することができる。
【0037】
あるいは、該ポリペプチドで刺激したT細胞(すなわち、該ポリペプチドを提示する抗原提示細胞と接触させたT細胞)が、生体外で腫瘍細胞に対して細胞障害活性を示すか否かを調べることによって、ポリペプチドの抗腫瘍活性を評価することもできる。T細胞と抗原提示細胞との接触は、後述するように、両者を液体培地中で共存培養することにより行なうことができる。細胞障害活性の測定は、例えばInt.J.Cancer,58:p317,1994に記載された51Crリリースアッセイと呼ばれる公知の方法により行なうことができる。ポリペプチドを癌の治療及び/又は予防用途に用いる場合には、特に限定されないが、抗腫瘍活性を指標として免疫誘導活性を評価することが好ましい。
【0038】
本発明が開示する配列表の配列番号2〜30のうち偶数の配列番号にそれぞれ示されるアミノ酸配列は、イヌの正常精巣組織由来cDNAライブラリーとイヌの乳癌患犬の血清を用いたSEREX法により、担癌犬由来の血清中に特異的に存在する抗体と結合するポリペプチド、および該ポリペプチドのヒト、ウシ、ウマ、マウス、ニワトリ相同因子(ホモログ)として単離された、CAPRIN−1ポリペプチドのアミノ酸配列である(後述の実施例1参照)。
【0039】
上記(a)のポリペプチドは、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド中の連続する7個以上、好ましくは連続する8、9又は10個以上のアミノ酸からなる、かつ免疫誘導活性を有するポリペプチドである。特に好ましくは、該ポリペプチドは、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で示されるアミノ酸配列を有する。なお、この分野で公知の通り、約7アミノ酸残基以上のポリペプチドであれば抗原性を発揮できる。従って、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のアミノ酸配列中の連続する7アミノ酸残基以上のポリペプチドであれば、抗原性及び免疫原性を発揮できる。従って、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のアミノ酸配列中の連続する7アミノ酸残基以上のポリペプチドであれば、免疫誘導活性を有し得るので、本発明の免疫誘導剤の調製に用いることができる。ただし、生体中で抗原物質に対して生産される抗体がポリクローナル抗体であることに鑑みれば、アミノ酸残基の数が多い方が、抗原物質上の種々の部位を認識する、より多くの種類の抗体を誘導できるので、ひいては免疫誘導活性を高めることができると考えられる。従って、免疫誘導活性を高めるために、アミノ酸残基の数を好ましくは30以上、もしくは50以上、さらに好ましくは100以上、もしくは150以上、さらに好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上としてもよい。
【0040】
また、癌抗原ポリペプチドを投与することによる免疫誘導の原理として、ポリペプチドが抗原提示細胞に取り込まれ、その後該細胞内でペプチダーゼによる分解を受けてより小さな断片(以下、エピトープともいう)となり、該細胞の表面上に提示され、それを細胞障害性T細胞等が認識し、その抗原を提示している細胞を選択的に殺していくということが知られている。抗原提示細胞の表面上に提示されるポリペプチドのサイズは比較的小さく、アミノ酸数で7〜30程度である。従って、抗原提示細胞上に提示させるという観点からは、上記(a)のポリペプチドとしては、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で示されるアミノ酸配列中の連続する7〜30程度、好ましくは8〜30もしくは9〜30程度のアミノ酸からなるものであれば十分である。これら比較的小さなサイズのポリペプチドは、抗原提示細胞内に取り込まれることなく、直接抗原提示細胞上の細胞表面に提示される場合もある。
【0041】
また、抗原提示細胞に取り込まれたポリペプチドは、該細胞内のペプチダーゼによりランダムな位置で切断を受けて、種々のポリペプチド断片が生じ、これらのポリペプチド断片が抗原提示細胞表面上に提示されるので、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号の全長領域のように大きなサイズのポリペプチドを投与すれば、抗原提示細胞内での分解によって、抗原提示細胞を介する免疫誘導に有効なポリペプチド断片が必然的に生じる。従って、抗原提示細胞を介する免疫誘導にとっても、サイズの大きなポリペプチドを好ましく用いることができ、アミノ酸数を30以上、さらに好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上としてもよい。
【0042】
さらに、本発明のポリペプチドは、HLAの各型の結合モチーフを有するエピトープとなるペプチドを検索しうる照合媒体、例えばBioinformatics & Molecular Analysis Selection (BIMAS)のHLA Peptide Binding Predictions (http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/index.html)によって照合し、エピトープとなりうるペプチドをスクリーニングすることができる。具体的には、配列番号2〜30のうち配列番号6および配列番号18を除く偶数の配列番号に示されるアミノ酸配列中のアミノ酸残基番号(aa)41−400又はアミノ酸残基番号(aa)503−564の領域内の連続する7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド又は該ポリペプチドを部分配列として含むポリペプチドが好ましく、さらに配列番号2のポリペプチドにおいては、配列番号43〜76で示されるポリペプチドがより好ましい。
【0043】
上記(b)のポリペプチドは、上記(a)のポリペプチドのうちの少数の(好ましくは、1個もしくは数個の)アミノ酸残基が置換し、欠失し、付加し、及び/又は挿入されたポリペプチドであって、元の配列と80%以上、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、99%以上、又は99.5%以上の配列同一性を有し、かつ、免疫誘導活性を有するポリペプチドである。一般に、タンパク質抗原において、該タンパク質のアミノ酸配列のうち少数の(好ましくは、1個もしくは数個の)アミノ酸残基が置換、欠失、付加又は挿入された場合であっても、元のタンパク質とほぼ同じ抗原性又は免疫原性を有している場合があることは当業者において広く知られている。従って、上記(b)のポリペプチドも免疫誘導活性を発揮し得るので、本発明の免疫誘導剤の調製に用いることができる。また、上記(b)のポリペプチドは、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で示されるアミノ酸配列のうち、1個もしくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたポリペプチドであることも好ましい。本明細書中の「数個」とは、2〜10の整数、好ましくは2〜6の整数、さらに好ましくは2〜4の整数を表す。
【0044】
本明細書中、アミノ酸配列又は塩基配列に関する「配列同一性」とは、比較すべき2つのアミノ酸配列(又は塩基配列)のアミノ酸残基(又は塩基)ができるだけ多く一致するように両アミノ酸配列(又は塩基配列)を整列させ、一致したアミノ酸残基数(又は一致した塩基数)を全アミノ酸残基数(又は全塩基数)で除したものを百分率(%)で表したものである。上記整列の際には、必要に応じ、比較する2つの配列の一方又は双方に適宜ギャップを挿入する。このような配列の整列化は、例えばBLAST、FASTA、CLUSTAL W等の周知のプログラムを用いて行なうことができる(Karlin及びAltschul, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87:2264−2268, 1993; Altschulら, Nucleic Acids Res., 25:3389−3402, 1997)。ギャップが挿入される場合、上記全アミノ酸残基数(又は全塩基数)は、1つのギャップを1つのアミノ酸残基(又は塩基)として数えた残基数(又は塩基数)となる。このようにして数えた全アミノ酸残基数(又は全塩基数)が、比較する2つの配列間で異なる場合には、同一性(%)は、長い方の配列の全アミノ酸残基数(又は全塩基数)で、一致したアミノ酸残基数(又は塩基数)を除して算出される。
【0045】
アミノ酸残基の置換において、好ましい置換は保存的アミノ酸置換である。天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、低極性側鎖を有する中性アミノ酸(Gly, Ile, Val, Leu, Ala, Met, Pro)、親水性側鎖を有する中性アミノ酸(Asn, Gln, Thr, Ser, Tyr Cys)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, Lys, His)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp, His)のように類似の性質を有するものにグループ分けでき、これらの間での置換、すなわち保存的置換、であればポリペプチドの性質が変化しないことが多いことが知られている。従って、本発明の上記(a)のポリペプチド中のアミノ酸残基を置換する場合には、これらの各グループの間で置換することにより、免疫誘導活性を維持できる可能性が高くなる。しかしながら、本発明では、上記改変体は、未改変体と同等もしはほとんど同等の免疫誘導活性を付与する限り、非保存的置換を有していてもよい。
【0046】
上記(c)のポリペプチドは、上記(a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含み、免疫誘導活性を有するポリペプチドである。すなわち、上記(a)又は(b)のポリペプチドの一端又は両端に他のアミノ酸又はポリペプチドが付加されたものであって、免疫誘導活性を有するポリペプチドである。このようなポリペプチドも、本発明の免疫誘導剤の調製に用いることができる。
【0047】
上記のポリペプチドは、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t―ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って合成することができる(日本生化学会編、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、化学修飾とペプチド合成、東京化学同人(日本)、1981年)。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。また、公知の遺伝子工学的手法(Sambrookら, Molecular Cloning, 第2版, Current Protocols in Molecular Biology (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、Ausubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sonsなど)を用いて、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを調製し、該ポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込んで宿主細胞に導入し、該宿主細胞中でポリペプチドを生産させることにより、目的とするポリペプチドを得ることができる。
【0048】
上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、公知の遺伝子工学的手法や市販の核酸合成機を用いた常法により、容易に調製することができる。例えば、配列番号1の塩基配列を有するDNAは、ヒト染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1に記載した塩基配列を増幅できるように設計した一対のプライマーを用いてPCRを行うことにより調製することができる。配列番号5の塩基配列を有するDNAであれば、上記鋳型としてイヌ染色体DNA又はcDNAライブラリーを使用することで同様に調製できる。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ(例えばTaq ポリメラーゼなど)及びMg2+含有PCRバッファーを用いて94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応行程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができるが、これに限定されない。PCRの手法、条件等については、例えばAusubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sons(特に第15章)に記載されている。また、本明細書中の配列表の配列番号1〜30に示される塩基配列及びアミノ酸配列の情報に基づいて、適当なプローブやプライマーを調製し、それを用いてヒト、イヌ、ウシなどのcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、所望のDNAを単離することができる。cDNAライブラリーは、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のタンパク質を発現している細胞、器官又は組織から作製することが好ましい。上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、ならびに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning, 第2版, Current Protocols in Molecular Biology (1989)、Ausubelら(上記)等に記載された方法に準じて行うことができる。このようにして得られたDNAから、上記(a)のポリペプチドをコードするDNAを得ることができる。また、各アミノ酸をコードするコドンは公知であるから、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの塩基配列は容易に特定することができる。従って、上記の(b)のポリペプチドや(c)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列も容易に特定することができるので、そのようなポリヌクレオチドも、市販の核酸合成機を用いて常法により容易に合成することができる。
【0049】
上記宿主細胞としては、上記ポリペプチドを発現可能な細胞であればいかなるものであってもよく、原核細胞の例としては大腸菌など、真核細胞の例としてはサル腎臓細胞COS 1、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO、ヒト胎児腎臓細胞株HEK293、マウス胎仔皮膚細胞株NIH3T3、等の哺乳動物培養細胞、出芽酵母、分裂酵母、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
宿主細胞として原核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、原核細胞中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、マルチクローニングサイト、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性相補遺伝子、等を有する発現ベクターを用いる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescriptII、pET発現システム、pGEX発現システムなどが例示できる。上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで原核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを原核宿主細胞中で発現させることができる。この際、該ポリペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることもできる。
【0051】
宿主細胞として真核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターを用いる。そのような発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK−CMV、pBK−RSV、EBVベクター、pRS、pcDNA3、pYES2等が例示できる。上記と同様に、上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで真核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを真核宿主細胞中で発現させることができる。発現ベクターとしてpIND/V5−His、pFLAG−CMV−2、pEGFP−N1、pEGFP−C1等を用いた場合には、Hisタグ(例えば(His)〜(His)10)、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、GFPなど各種タグを付加した融合タンパク質として、上記ポリペプチドを発現させることができる。
【0052】
発現ベクターの宿主細胞への導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション、ウイルス感染、リポフェクション、細胞膜透過性ペプチドとの結合、等の周知の方法を用いることができる。
【0053】
宿主細胞から目的のポリペプチドを単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒分別沈殿法、透析、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過、SDS−PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
以上の方法によって得られるポリペプチドには、上述した通り、他の任意のタンパク質との融合タンパク質の形態にあるものも含まれる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)やHisタグとの融合タンパク質などが例示できる。このような融合タンパク質の形態のポリペプチドも、上記の(c)のポリペプチドとして本発明の範囲に含まれる。さらに、形質転換細胞で発現されたポリペプチドは、翻訳された後、細胞内で各種修飾を受ける場合がある。このような翻訳後修飾されたポリペプチドも、免疫誘導活性を有する限り、本発明の範囲に含まれる。この様な翻訳修飾としては、N末端メチオニンの脱離、N末端アセチル化、糖鎖付加、細胞内プロテアーゼによる限定分解、ミリストイル化、イソプレニル化、リン酸化などが例示できる。
【0055】
<免疫誘導剤>
後述の実施例に具体的に記載される通り、上記した免疫誘導活性を有するポリペプチドを担癌生体に投与すると、既に生じている腫瘍を退縮させることができる。従って、本発明の免疫誘導剤は、癌の治療及び/又は予防剤として用いることができる。
【0056】
本明細書で使用される「腫瘍」及び「癌」という用語は、悪性新生物を意味し、互換的に使用される。
【0057】
この場合、対象となる癌としては、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のアミノ酸配列又は7以上の連続アミノ酸からなるその部分配列を含むポリペプチドをコードする遺伝子を発現している癌であり、好ましくは、乳癌、脳腫瘍、白血病、肺癌、リンパ腫、肥満細胞腫、食道癌及び大腸癌である。これらの特定の癌には、例えば、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、慢性型リンパ球性白血病、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫などが包含されるが、これらに限定されない。
【0058】
また、対象となる動物は、哺乳動物であり、例えば霊長類、ペット動物、家畜類、競技用動物などを含む哺乳動物であり、特にヒト、イヌおよびネコが好ましい。
【0059】
本発明の免疫誘導剤の生体への投与経路は、経口投与でも非経口投与でもよいが、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与が好ましい。癌の治療目的で該免疫誘導剤を用いる場合には、抗癌作用を高めるため、後述の実施例に記載するように、治療対象となる腫瘍の近傍の所属リンパ節に投与することもできる。投与量は、免疫誘導するのに有効な量であればよく、例えば癌の治療及び/又は予防に用いるのであれば、癌の治療及び/又は予防に有効な量であればよいし、また、動物の体重、性別(雄又は雌)、症状などに応じて変化させうる。癌の治療及び/又は予防に有効な量は、腫瘍の大きさや症状等に応じて適宜選択されるが、通常、対象動物に対し1日当りの有効量として0.0001μg〜1000μg、好ましくは0.001μg〜1000μgであり、1回又は数回に分けて投与することができる。好ましくは、数回に分け、数日ないし数月おきに投与する。下記実施例に具体的に示されるとおり、本発明の免疫誘導剤は、既に形成されている腫瘍を退縮させることができる。従って、発生初期の少数の癌細胞にも抗癌作用を発揮し得るので、癌の発症前や癌の治療後に用いれば、癌の発症や再発を防止することができる。すなわち、本発明の免疫誘導剤は、癌の治療と予防の双方に有用である。
【0060】
本発明の免疫誘導剤は、ポリペプチドのみから成っていてもよいし、各投与形態に適した、薬理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤等の添加剤を適宜混合させて製剤することもできる。製剤方法及び使用可能な添加剤は、医薬製剤の分野において周知であり、いずれの方法及び添加剤をも用いることができる。添加剤の具体例としては、生理緩衝液のような希釈剤;砂糖、乳糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン等のような賦形剤;シロップ、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、ポリビニルクロリド、トラガント等のような結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、タルク、シリカ等の滑沢剤等が挙げられるが、これらに限定されない。製剤形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などの経口剤、吸入剤、注射剤、座剤、液剤などの非経口剤などを挙げることができる。これらの製剤は一般的に知られている製法によって作ることができる。
【0061】
本発明の免疫誘導剤は、生体内での免疫学的応答を強化することができる免疫増強剤と組み合わせて用いることができる。免疫増強剤は、本発明の免疫誘導剤に含まれていてもよいし、別個の組成物として本発明の免疫誘導剤と併用して患者に投与してもよい。
【0062】
ここで、患者は、動物、特に哺乳動物であり、好ましくはヒト、イヌ及びネコである。
【0063】
上記免疫増強剤としては、例えばアジュバントを挙げることができる。アジュバントは、抗原の貯蔵所(細胞外またはマクロファージ内)を提供し、マクロファージを活性化し、かつ特定組のリンパ球を刺激することにより、免疫学的応答を強化し得るので、抗癌作用を高めることができる。従って、特に、本発明の免疫誘導剤を癌の治療及び/又は予防に用いる場合、免疫誘導剤は、有効成分たる上記ポリペプチドに加えてさらにアジュバントを含むことが好ましい。多数の種類のアジュバントが当業界で周知であり、いずれのアジュバントでも用いることができる。アジュバントの具体例としては、MPL(SmithKline Beecham)、サルモネラ属のSalmonella minnesota Re 595リポ多糖類の精製および酸加水分解後に得られる同類物;QS21(SmithKline Beecham)、Quillja saponaria抽出物から精製される純QA−21サポニン;PCT出願WO96/33739(SmithKline Beecham)に記載されたDQS21;QS−7、QS−17、QS−18およびQS−L1(Soら, Molecules and Cells, 1997, 7:178−186);フロイントの不完全アジュバント;フロイントの完全アジュバント;ビタミンE;モンタニド;アルム(alum);CpGオリゴヌクレオチド(例えば、Kreigら, Nature, 1995, 374:546−549);ポリIC及びその誘導体(ポリICLC等)ならびにスクアレンおよび/またはトコフェロールのような生分解性油から調製される種々の油中水エマルションが挙げられる。なかでも、フロイントの不完全アジュバント、モンタニド、ポリIC及びその誘導体並びにCpGオリゴヌクレオチドが好ましい。上記アジュバントとポリペプチドの混合比は、典型的には約1:10〜10:1,好ましくは約1:5〜5:1、さらに好ましくは約1:1である。ただし、アジュバントは上記例示に限定されず、当業界で公知の上記以外のアジュバントも本発明の免疫誘導剤を投与する際に用いられ得る(例えば、Goding著, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、第2版、1986年)。ポリペプチドおよびアジュバントの混合物またはエマルションの調製方法は、予防接種の当業者には周知である。
【0064】
また、上記免疫増強剤としては、上記アジュバント以外にも、対象の免疫応答を刺激する因子を用いることもできる。例えば、リンパ球や抗原提示細胞を刺激する特性を有する各種サイトカインを免疫増強剤として本発明の免疫誘導剤と組み合わせて用いることができる。そのような免疫学的応答を増強可能な多数のサイトカインが当業者に公知であり、その例としては、ワクチンの防御作用を強化することが示されているインターロイキン−12(IL−12)、GM−CSF、IL−18、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンω、インターフェロンγおよびFlt3リガンドが挙げられるが、これらに限定されない。このような因子も上記免疫増強剤として用いることができ、本発明の免疫誘導剤に含ませて又は別個の組成物として本発明の免疫誘導剤と併用して患者に投与することができる。
【0065】
<抗原提示細胞>
さらにまた、上記ポリペプチドと抗原提示細胞とをインビトロで接触させることにより、該ポリペプチドを抗原提示細胞に提示させることができる。すなわち、上記した(a)ないし(c)のポリペプチドは、抗原提示細胞の処理剤として利用し得る。ここで、抗原提示細胞としては、樹状細胞、B細胞及びマクロファージが例示され、MHCクラスI分子を保有する樹状細胞又はB細胞を好ましく用いることができる。種々のMHCクラスI分子が同定されており、周知である。ヒトにおけるMHC分子はHLAと呼ぶ。HLAクラスI分子としては、HLA−A、HLA−B、HLA−Cを挙げることができ、より具体的には、HLA−A1, HLA−A0201, HLA−A0204, HLA−A0205, HLA−A0206, HLA−A0207, HLA−A11, HLA−A24, HLA−A31, HLA−A6801, HLA−B7, HLA−B8, HLA−B2705, HLA−B37, HLA−Cw0401, HLA−Cw0602などを挙げることができる。
【0066】
MHCクラスI分子を保有する樹状細胞又はB細胞は、周知の方法により末梢血から調製することができる。例えば、骨髄、臍帯血あるいは患者末梢血から、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)とIL−3(あるいはIL−4)を用いて樹状細胞を誘導し、その培養系に腫瘍関連ペプチドを加えることにより、腫瘍特異的な樹状細胞を誘導することができる。
【0067】
この樹状細胞を有効量投与することで、癌の治療に望ましい応答を誘導できる。用いる細胞は、健康人から提供された骨髄や臍帯血、患者本人の骨髄や末梢血等を用いることができるが、患者本来の自家細胞を使う場合は、安全性が高く、重篤な副作用を回避することも期待できる。末梢血または骨髄は新鮮試料、低温保存試料及び凍結保存試料のいずれでもよい。末梢血は、全血を培養してもよいし、白血球成分だけを分離して培養してもよいが、後者の方が効率的で好ましい。さらに白血球成分の中でも単核球を分離してもよい。また、骨髄や臍帯血を起源とする場合には、骨髄を構成する細胞全体を培養してもよいし、これから単核球を分離して培養してもよい。末梢血やその白血球成分、骨髄細胞には、樹状細胞の起源となる単核球、造血幹細胞又は未成熟樹状細胞やCD4陽性細胞等が含まれている。用いられるサイトカインは、安全性と生理活性が確認された特性のものであれば、天然型、あるいは遺伝子組み換え型等、その生産手法については問わないが、好ましくは医療用に用いられる品質が確保された標品が必要最低量で用いられる。添加するサイトカインの濃度は、樹状細胞が誘導される濃度であれば特に限定されず、通常サイトカインの合計濃度で10〜1000ng/mL程度が好ましく、さらに好ましくは20〜500ng/mL程度である。培養は、白血球の培養に通常用いられている周知の培地を用いて行うことができる。培養温度は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、ヒトの体温である37℃程度が最も好ましい。また、培養中の気体環境は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、5% COを通気することが好ましい。さらに培養期間は、必要数の細胞が誘導される期間であれば特に限定されないが、通常3日〜2週間の間で行われる。細胞の分離や培養に供される機器は、適宜適当なものを用いることができるが、医療用に安全性が確認され、かつ操作が安定して簡便であることが好ましい。特に細胞培養装置については、シャーレ、フラスコ、ボトル等の一般的容器に拘わらず、積層型容器や多段式容器、ローラーボトル、スピナー式ボトル、バッグ式培養器、中空糸カラム等も用いることができる。
【0068】
上記ポリペプチドと抗原提示細胞とをインビトロで接触させる方法自体は、周知の方法により行なうことができる。例えば、抗原提示細胞を、上記ポリペプチドを含む培養液中で培養することにより行なうことができる。培地中のペプチド濃度は、特に限定されないが、通常、1μg/mlないし100μg/ml程度、好ましくは5μg/mlないし20μg/ml程度である。培養時の細胞密度は特に限定されないが、通常、10細胞/mlから10細胞/ml程度、好ましくは5×10細胞/mlから5×10細胞/ml程度である。培養は、常法に従い、37℃、5% CO雰囲気中で行なうことが好ましい。なお、抗原提示細胞が表面上に提示できるペプチドの長さは、通常、最大で30アミノ酸残基程度である。従って、特に限定されないが、抗原提示細胞とポリペプチドをインビトロで接触させる場合、該ポリペプチドをおよそ30アミノ酸残基以下の長さに調製してもよい。
【0069】
上記したポリペプチドの共存下において抗原提示細胞を培養することにより、ペプチドが抗原提示細胞のMHC分子に取り込まれ、抗原提示細胞の表面に提示される。従って、上記ポリペプチドを用いて、該ポリペプチドとMHC分子の複合体を含む、単離抗原提示細胞を調製することができる。このような抗原提示細胞は、生体内又はインビトロにおいて、T細胞に対して該ポリペプチドを提示し、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができる。
【0070】
上記のようにして調製される、上記ポリペプチドとMHC分子の複合体とを含む抗原提示細胞を、T細胞とインビトロで接触させることにより、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができる。これは、上記抗原提示細胞とT細胞とを液体培地中で共存培養することにより行なうことができる。例えば、抗原提示細胞を液体培地に懸濁して、マイクロプレートのウェル等の容器に入れ、これにT細胞を添加して培養することにより行なうことができる。共存培養時の抗原提示細胞とT細胞の混合比率は、特に限定されないが、通常、細胞数の比率で1:1〜1:100程度、好ましくは1:5〜1:20程度である。また、液体培地中に懸濁する抗原提示細胞の密度は、特に限定されないが、通常、100〜1000万細胞/ml程度、好ましくは10000〜100万細胞/ml程度である。共存培養は、常法に従い、37℃、5% CO雰囲気中で行なうことが好ましい。培養時間は、特に限定されないが、通常、2日〜3週間、好ましくは4日〜2週間程度である。また、共存培養は、IL−2、IL−6、IL−7及びIL−12のようなインターロイキンの1種又は複数の存在下で行なうことが好ましい。この場合、IL−2及びIL−7の濃度は、通常、5U/mlから20U/ml程度、IL−6の濃度は通常、500U/mlから2000U/ml程度、IL−12の濃度は通常、5ng/mlから20ng/ml程度であるが、これらに限定されるものではない。ここで、「U」は活性単位を表す。上記の共存培養は、新鮮な抗原提示細胞を追加して1回ないし数回繰り返してもよい。例えば、共存培養後の培養上清を捨て、新鮮な抗原提示細胞の懸濁液を添加してさらに共存培養を行なうという操作を、1回ないし数回繰り返してもよい。各共存培養の条件は、上記と同様でよい。
【0071】
上記の共存培養により、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞が誘導され、増殖される。従って、上記ポリペプチドを用いて、該ポリペプチドとMHC分子の複合体を選択的に結合する、単離T細胞を調製することができる。
【0072】
下記実施例に記載される通り、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のポリペプチドをコードする遺伝子は、乳癌細胞、白血病細胞およびリンパ腫細胞に特異的に発現している。従って、これらの癌種においては、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のポリペプチドが正常細胞よりも有意に多く存在していると考えられる。癌細胞内に存在するポリペプチドの一部が癌細胞表面上のMHC分子に提示され、上記のようにして調製した細胞障害性T細胞が生体内に投与されると、これを目印として細胞障害性T細胞が癌細胞を障害することができる。また、上記ポリペプチドを提示する抗原提示細胞は、生体内においても該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができるので、該抗原提示細胞を生体内に投与することによっても、癌細胞を障害することができる。すなわち、上記ポリペプチドを用いて調製された上記細胞障害性T細胞や上記抗原提示細胞もまた、本発明の免疫誘導剤と同様に、癌の治療及び/又は予防剤として有用である。
【0073】
上記した単離抗原提示細胞や単離T細胞を生体に投与する場合には、これらの細胞を異物として攻撃する生体内での免疫応答を回避するために、治療を受ける患者から採取した抗原提示細胞又はT細胞を、上記のように上記(a)ないし(c)のポリペプチドを用いて調製したものであることが好ましい。
【0074】
抗原提示細胞又は単離T細胞を有効成分として含む癌の治療及び/又は予防剤の投与経路は、静脈内投与や動脈内投与のような非経口投与が好ましい。また、投与量は、症状や投与目的等に応じて適宜選択されるが、通常1個〜10兆個、好ましくは100万個〜10億個であり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。製剤は、例えば、細胞を生理緩衝食塩水に懸濁したもの等であってよく、他の抗癌剤やサイトカイン等と併用することもできる。また、製剤分野において周知の1又は2以上の添加剤を添加することもできる。
【0075】
<遺伝子ワクチン>
また、上記(a)ないし(c)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象動物の体内で発現させることによっても、該生体内で抗体生産や細胞障害性T細胞を誘導することができ、ポリペプチドを投与するのと同等の効果が得られる。すなわち、本発明の免疫誘導剤は、上記した(a)ないし(c)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、生体内で該ポリペプチドを発現可能な組換えベクターを有効成分として含むものであってもよい。このような、抗原ポリペプチドを発現可能な組換えベクターは、遺伝子ワクチンとも呼ばれる。
【0076】
遺伝子ワクチンを製造するために用いるベクターは、対象動物細胞内(好ましくは哺乳動物細胞内)で発現可能なベクターであれば特に限定されず、プラスミドベクターでもウイルスベクターでもよく、遺伝子ワクチンの分野で公知のいかなるベクターを用いてもよい。なお、上記ポリペプチドをコードするDNAやRNA等のポリヌクレオチドは、上述した通り、常法により容易に調製することができる。また、ベクターへの該ポリヌクレオチドの組み込みは、当業者に周知の方法を用いて行なうことができる。
【0077】
遺伝子ワクチンの投与経路は、好ましくは筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与経路であり、投与量は、抗原の種類等に応じて適宜選択することができるが、通常、体重1kg当たり、遺伝子ワクチンの重量で0.1μg〜100mg程度、好ましくは1μg〜10mg程度である。
【0078】
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス等のRNAウイルスまたはDNAウイルスに、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組み込み、これを対象動物に感染させる方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
【0079】
その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
【0080】
本発明で用いられる上記ポリペプチドをコードする遺伝子を実際に医薬として作用させるには、遺伝子を直接体内に導入するin vivo方法、および対象動物からある種の細胞を採取し体外で遺伝子を該細胞に導入しその細胞を体内に戻すex vivo方法がある(日経サイエンス,1994年4月,p20−45(日本)、月刊薬事,1994年,第36巻,第1号,p.23−48(日本)、実験医学増刊,1994年,第12巻,第15号(日本)、およびこれらの引用文献等)。in vivo方法がより好ましい。
【0081】
in vivo方法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することができる。in vivo方法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には、有効成分である本発明の上記ペプチドをコードするDNAを含有する注射剤等とされ、必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。また、該DNAを含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
【0082】
なお、本発明において、「配列番号1に示される塩基配列」と言った場合には、配列番号1に実際に示されている塩基配列の他、これと相補的な配列も包含する。従って、「配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチド」と言った場合には、配列番号1に実際に示されている塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、その相補的な塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、及びこれらから成る二本鎖ポリヌクレオチドが包含される。本発明で用いられるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを調製する場合には、適宜いずれかの塩基配列を選択することとなるが、当業者であれば容易にその選択をすることができる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の具体例に制限されないものとする。
実施例1:SEREX法による新規癌抗原タンパクの取得
(1)cDNAライブラリーの作製
健常な犬の精巣組織から酸グアニジウム−フェノール−クロロホルム法(Acid guanidium−Phenol−Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex−dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。
【0084】
この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリーを合成した。cDNAファージライブラリーの作製にはcDNA Synthesis Kit, ZAP−cDNA Synthesis Kit, ZAP−cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリーを作製した。作製したcDNAファージライブラリーのサイズは7.73×10pfu/mlであった。
【0085】
(2)血清によるcDNAライブラリーのスクリーニング
上記作製したイヌ精巣cDNAファージライブラリーを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2210クローンとなるように宿主大腸菌(XL1−Blue MRF’)に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌斑(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthecare Bio−Science社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導および発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris−HCl,150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを500倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。
【0086】
上記患犬血清としては、乳癌の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Expressファージを宿主大腸菌(XL1−BLue MRF’)に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCO pH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS−カラム(GE Healthecare Bio−Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク固定化カラムに患犬血清を通液、反応させ、大腸菌およびファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて500倍希釈し、これをイムノスクリーニング材料とした。
【0087】
かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBS−T(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて5000倍希釈を行ったヤギ抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG−h+I HRP conjugated:BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO、50mM Tris−HCl、0.01% ゼラチン pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する30940個のファージクローンをスクリーニングして、5個の陽性クローンを単離した。
【0088】
(3)単離抗原遺伝子の相同性検索
上記方法により単離した5個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1−Blue MRF’)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液250μlさらにExAssist helper phage(STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を3ml添加し37℃で2.5〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、1000×g、15分間遠心を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液10μlを混合した後37℃で15分間反応させ、50μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、QIAGEN plasmid Miniprep Kit(キアゲン社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。
【0089】
精製したプラスミドは、配列番号31に記載のT3プライマーと配列番号32に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により配列番号5,7,9,11,13に記載の遺伝子配列を取得した。この遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列(配列番号6,8,10,12,14)を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、得られた5個の遺伝子全てがCAPRIN−1をコードする遺伝子であることが判明した。5個の遺伝子間の配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において塩基配列100%、アミノ酸配列99%であった。この遺伝子のヒト相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列98%であった。ヒト相同因子の塩基配列を配列番号1,3に、アミノ酸配列を配列番号2,4に示す。また、取得したイヌ遺伝子のウシ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列97%であった。ウシ相同因子の塩基配列を配列番号15に、アミノ酸配列を配列番号16に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とウシ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列93〜97%であった。また、取得したイヌ遺伝子のウマ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列93%、アミノ酸配列97%であった。ウマ相同因子の塩基配列を配列番号17に、アミノ酸配列を配列番号18に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とウマ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列93%、アミノ酸配列96%であった。また、取得したイヌ遺伝子のマウス相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列87〜89%、アミノ酸配列95〜97%であった。マウス相同因子の塩基配列を配列番号19,21,23,25,27に、アミノ酸配列を配列番号20,22,24,26,28に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とマウス相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列89〜91%、アミノ酸配列95〜96%であった。また、取得したイヌ遺伝子のニワトリ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列82%、アミノ酸配列87%であった。ニワトリ相同因子の塩基配列を配列番号29に、アミノ酸配列を配列番号30に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とニワトリ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列81〜82%、アミノ酸配列86%であった。
【0090】
(4)各組織での遺伝子発現解析
上記方法により得られた遺伝子に対しイヌおよびヒトの正常組織および各種細胞株における発現をRT−PCR(Reverse Transcription−PCR)法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50〜100mgおよび各細胞株5〜10×10個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。PCR反応は、取得した遺伝子特異的なプライマー(配列番号33および34に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP、0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cycler(BIO RAD社製)を用いて、94℃/30秒、60℃/30秒、72℃/30秒のサイクルを30回繰り返して行った。なお、上記遺伝子特異的プライマーは、配列番号5の塩基配列(イヌCAPRIN−1遺伝子)中の206番〜632番および配列番号1の塩基配列(ヒトCAPRIN−1遺伝子)中の698番〜1124番塩基の領域を増幅するものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号35および36に記載)も同時に用いた。その結果、図1に示すように、健常なイヌ組織では精巣に強い発現が見られ、一方イヌ乳癌および腺癌組織で発現が見られた。さらに、取得した遺伝子のヒト相同因子の発現を併せて確認したところ、イヌCAPRIN−1遺伝子と同様、正常組織で発現が確認できたのは精巣のみだったが、癌細胞では乳癌、脳腫瘍、白血病、肺癌、食道癌細胞株など、多種類の癌細胞株で発現が検出され、特に多くの乳癌細胞株で発現が確認された。この結果から、CAPRIN−1は精巣以外の正常組織では発現が見られず、一方、多くの癌細胞で発現しており、特に乳癌細胞株に発現していることが確認された。
【0091】
なお、図1中、縦軸の参照番号1は、上記で同定した遺伝子の発現パターンを、参照番号2は、比較対照であるGAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
【0092】
(5)免疫組織化学染色
(5)−1 マウスおよびイヌ正常組織におけるCAPRIN−1の発現
マウス(Balb/c、雌)およびイヌ(ビーグル犬、雌)をエーテル麻酔下およびケタミン/イソフルラン麻酔下で放血させ、開腹後、各臓器(胃、肝臓、眼球、胸腺、筋肉、骨髄、子宮、小腸、食道、心臓、腎臓、唾液腺、大腸、乳腺、脳、肺、皮膚、副腎、卵巣、膵臓、脾臓、膀胱)をそれぞれPBSの入った10cmディッシュに移した。PBS中で各臓器を切り開き、4% paraformaldehyde(PFA)を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で一晩還流固定した。還流液を捨て、PBSで各臓器の組織表面をすすぎ、10%ショ糖を含むPBS溶液を50ml容の遠心チューブに入れ、その中に各組織を入れて4℃で2時間ローターを用いて振とうした。20%ショ糖を含むPBS溶液に入れ替え、4℃で組織が沈むまで静置後、30%ショ糖を含むPBS溶液に入れ替え、4℃で組織が沈むまで静置した。組織を取り出し、必要な部分を手術用メスで切りだした。次に、OCTコンパウンド(Tissue Tek社製)をかけて組織表面になじませた後、クライオモルドに組織を配置した。ドライアイスの上にクライオモルドをおいて急速凍結させた後、クライオスタット(LEICA社製)を用いて10〜20μmに薄切し、スライドガラスごとヘアードライアーで30分間風乾し、薄切組織がのったスライドガラス作製した。次にPBS−T(0.05% Tween20を含む生理食塩水)を満たした染色瓶に入れて5分ごとにPBS−Tを入れ替える操作を3回行った。切片周囲の余分な水分をキムワイプでふき取り、DAKOPEN(DAKO社製)で囲んだ後、ブロッキング液として、マウス組織はMOMマウスIgブロッキング試薬(VECTASTAIN社製)を、イヌ組織は10%牛胎児血清を含むPBS−T溶液をそれぞれのせ、モイストチャンバー上で室温で1時間静置した。次に参考例1で作製した癌細胞表面に反応する、配列番号78の重鎖可変領域と配列番号79の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体をブロッキング液で10μg/mlに調製した溶液をのせ、モイストチャンバー内で4℃で一晩静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、ブロッキング液で250倍に希釈したMOMビオチン標識抗IgG抗体(VECTASTAIN社製)をのせ、モイストチャンバー内で室温で1時間静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、アビジン−ビオチンABC試薬(VECTASTAIN社製)をのせ、モイストチャンバー内に室温で5分間静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、DAB発色液(DAB10mg+30%H10μl/0.05M Tris−HCl(pH7.6)50ml)をのせ、モイストチャンバー内に室温で30分間静置した。蒸留水でリンスし、ヘマトキシリン試薬(DAKO社製)を載せて室温で1分間静置後、蒸留水でリンスした。70%、80%、90%、95%、100%の各エタノール溶液に順番に1分間ずつ入れた後、キシレン中で一晩静置した。スライドガラスを取り出し、Glycergel Mounting Medium(DAKO社製)で封入後、観察を行った。その結果、CAPRIN−1は、唾液腺、腎臓、結腸、胃の各組織において細胞内で僅かに発現が認められたが、細胞表面での発現は認められず、また、その他の臓器由来の組織では全く発現が認められなかった。
【0093】
(5)−2 イヌ乳癌組織におけるCAPRIN−1の発現
病理診断で悪性乳癌と診断されたイヌの凍結された乳癌組織108検体を用いて、上述と同様の方法で凍結切片スライド作製および配列番号78の重鎖可変領域と配列番号79の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果、CAPRIN−1は108検体中100検体(92.5%)で発現が確認され、特に異型度の高い癌細胞表面に強く発現していた。
【0094】
(5)−3 ヒト乳癌組織におけるCAPRIN−1の発現
パラフィン包埋されたヒト乳癌組織アレイ(BIOMAX社製)の乳癌組織188検体を用いて、免疫組織化学染色を行った。ヒト乳癌組織アレイを60℃で3時間処理後、キシレンを満たした染色瓶に入れて5分ごとにキシレンを入れ替える操作を3回行った。次にキシレンの代わりにエタノールおよびPBS−Tで同様の操作を行った。0.05% Tween20を含む10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)を満たした染色瓶にヒト乳癌組織アレイを入れ、125℃で5分間処理後、室温で40分以上静置した。切片周囲の余分な水分をキムワイプでふき取り、DAKOPENで囲み、Peroxidase Block(DAKO社製)を適量滴下した。室温で5分間静置後、PBS−Tを満たした染色瓶に入れて5分ごとにPBS−Tを入れ替える操作を3回行った。ブロッキング液として、10% FBSを含むPBS−T溶液をのせ、モイストチャンバー内で室温で1時間静置した。次に参考例1で作製した癌細胞表面に反応する、配列番号78の重鎖可変領域と配列番号79の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体を、5% FBSを含むPBS−T溶液で10μg/mlに調製した溶液をのせ、モイストチャンバー内で4℃で一晩静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、Peroxidase Labelled Polymer Conjugated(DAKO社製)適量滴下し、モイストチャンバー内に室温で30分間静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、DAB発色液(DAKO社製)をのせ、室温で10分程度静置した後、発色液を捨て、PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、蒸留水でリンスし、70%、80%、90%、95%、100%の各エタノール溶液に順番に1分間ずつ入れた後、キシレン中で一晩静置した。スライドガラスを取り出し、Glycergel Mounting Medium(DAKO社製)で封入後、観察を行った。その結果、CAPRIN−1は全乳癌組織188検体の内、138検体(73%)で強い発現が認められた。
【0095】
(5)−4 ヒト悪性脳腫瘍におけるCAPRIN−1の発現
パラフィン包埋されたヒト悪性脳腫瘍組織アレイ(BIOMAX社製)の悪性脳腫瘍組織247検体を用いて、上述(5)−3と同様の方法で配列番号78の重鎖可変領域と配列番号79の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果、CAPRIN−1は全悪性脳腫瘍組織247検体の内、227検体(92%)で強い発現が認められた。
【0096】
(5)−5 ヒト乳癌転移リンパ節におけるCAPRIN−1の発現
パラフィン包埋されたヒト乳癌転移リンパ節組織アレイ(BIOMAX社製)の乳癌転移リンパ節組織150検体を用いて、上述(5)−3と同様の方法で配列番号78の重鎖可変領域と配列番号79の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果、CAPRIN−1は全乳癌転移リンパ節組織150検体の内、136検体(90%)で強い発現が認められた。すなわち、乳癌から転移した癌組織においてもCAPRIN−1は強く発現することが判った。
【0097】
参考例1:CAPRIN−1に対するモノクローナル抗体の作製
実施例2で調製した配列番号2に示される、抗原タンパク質(ヒトCAPRIN−1)100μgを等量のMPL+TDMアジュバント(シグマ社製)と混合し、これをマウス1匹当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を6週齢のBalb/cマウス(日本SLC社製)の腹腔内に投与後、1週間毎にさらに3回投与を行った。最後の免疫から3日後に摘出した脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とマウスミエローマ細胞SP2/0(ATCCより購入)とを10:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10% FBSを含むRPMI1640培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、ギブコ社製のHAT溶液を2%当量加えた15% FBSを含むRPMI1640培地(HAT選択培地)150mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート15枚に播種した。7日間、37℃、5% COの条件で培養することで、脾臓細胞とミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0098】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。実施例2で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(インビトロジェン社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15−30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0099】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。実施例2で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(インビトロジェン社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15−30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパクに反応性を示すモノクローナル抗体を産生する複数のハイブリドーマ株を得、ハイブリドーマの培養上清をプロテインG担体を用いて精製し、CAPRIN−1タンパクに結合するモノクローナル抗体150個を得た。
次にそれらモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1が発現する乳癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%牛胎児血清を含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(インビトロジェン社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに培地を添加したものをコントロールとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するモノクローナル抗体11個を選抜した。これらの内1つのモノクローナル抗体の重鎖可変領域の配列を配列番号:78に、軽鎖可変領域の配列を配列番号:79に示す。
【0100】
実施例2:イヌおよびヒト新規癌抗原タンパクの作製
(1)組換えタンパク質の作製
実施例1で取得した配列番号5の遺伝子を基に、以下の方法にて組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例1で得られたファージミド溶液より調製し配列解析に供したベクターを1μl、NdeIおよびKpnI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号37および38に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler(BIO RAD社製)を用いて、98℃/10秒、68℃/1.5分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーは、配列番号6のアミノ酸配列全長をコードする領域を増幅するものであった。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて約1.4kbpのDNA断片を精製した。
【0101】
精製したDNA断片をクローニングベクターpCR−Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをNdeIおよびKpnI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、NdeI、KpnI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30b(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0102】
また、配列番号7の遺伝子を基に、以下の方法にてイヌ相同遺伝子の組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例1で作製した各種組織もしくは細胞cDNAよりRT−PCR法による発現が確認できたcDNAを1μl、NdeIおよびKpnI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号39および40に記載)を各0.4μM, 0.2mM dNTP,1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃/10秒、68℃/2.5分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーは、配列番号8のアミノ酸配列全長をコードする領域を増幅するものであった。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約2.2kbpのDNA断片を精製した。
【0103】
精製したDNA断片をクローニングベクターpCR−Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをNdeIおよびKpnI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、NdeI、KpnI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30b(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0104】
また、配列番号1の遺伝子を基に、以下の方法にてヒト相同遺伝子の組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例1で作製した各種組織・細胞cDNAよりRT−PCR法による発現が確認できたcDNAを1μl、SacIおよびXhoI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号41および42に記載)を各0.4μM, 0.2mM dNTP,1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃/10秒、68℃/2.5分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーは、配列番号2のアミノ酸配列全長をコードする領域を増幅するものであった。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて約2.1kbpのDNA断片を精製した。
【0105】
精製したDNA断片をクローニングベクターpCR−Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをSacIおよびXhoI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、SacI、XhoI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30a(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
【0106】
(2)組換えタンパク質の精製
上記で得られた、配列番号1,5,7の遺伝子を発現するそれぞれの組換え大腸菌を30μg/mLカナマイシン含有LB培地にて600nmでの吸光度が0.7付近になるまで37℃で培養後、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド終濃度が1mMとなるよう添加し、37℃で4時間培養した。その後4800rpmで10分間遠心し集菌した。この菌体ペレットをリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、さらに4800rpmで10分間遠心し菌体の洗浄を行った。
【0107】
この菌体をリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、氷上にて超音波破砕を行った。大腸菌超音波破砕液を6000rpmで20分間遠心分離し、得られた上清を可溶性画分、沈殿物を不溶性画分とした。
【0108】
可溶性画分を、定法に従って調整したニッケルキレートカラム(担体:Chelateing Sepharose(商標) Fast Flow(GE Health Care社)、カラム容量5mL、平衡化緩衝液50mM塩酸緩衝液(pH8.0))に添加した。未吸着画分をカラム容量の10倍量の50mM塩酸緩衝液(pH8.0)と20mMイミダゾール含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)にて洗浄操作を行った後、直ちに、100mMイミダゾール含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)にて6ベッド溶出した。クマシー染色によって目的タンパク質の溶出を確認した100mMイミダゾール含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)溶出画分を強陰イオン交換カラム(担体:Q Sepharose(商標) Fast Flow(GE Health Care社)、カラム容量5mL、平衡化緩衝液としての20mMリン酸緩衝液(pH8.0))に添加した。未吸着画分をカラム容量の10倍量の20mMリン酸緩衝液(pH7.0)と200mM塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて洗浄操作を行った後、直ちに、400mM塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて5ベッド溶出を行い、配列番号2、6、8に示されるアミノ酸配列を有する各タンパク質の精製画分を得、以降これら精製画分を投与試験用の材料とした。
【0109】
上記方法によって得られた各精製標品のうち、200μlを1mlの反応用緩衝液(20mM Tris−HCl, 50mM NaCl, 2mM CaCl pH7.4)に分注を行った後、エンテロキナーゼ(Novagen社製)2μl添加した後、室温にて一晩静置・反応を行い、Hisタグを切断し、Enterokinase Cleavage Capture Kit(Novagen社製)を用いて添付プロトコールに従って精製を行った。次に、上記方法によって得られた精製標品1.2mlを、限外ろ過NANOSEP 10K OMEGA(PALL社製)を用いて、生理用リン酸緩衝液(日水製薬社製)置換した後、HTタフリンアクロディスク0.22μm(PALL社製)にて無菌ろ過を行い、これを以下の実験に用いた。
【0110】
実施例3:組換えタンパク質の担癌患犬に対する投与試験
(1)抗腫瘍評価
表皮に腫瘤を持つ担癌患犬(乳癌)に対して、上記で精製した組換えタンパクの抗腫瘍効果の評価を行った。
【0111】
上記の通り精製した配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチド100μg(0.5ml)に等量の不完全フロイントアジュバント(和光純薬社製)を混合して癌治療剤を調製した。これを初回投与、3日後および7日後に腫瘍近傍の所属リンパ節に計3回投与を行った。その結果、癌治療剤投与時点で、大きさが約86mmであった腫瘤が、癌治療剤初回投与から10日後には55mmに、20日後には30mmに、30日後には20mmまで縮小した。
【0112】
また、別の乳腺癌の患犬に対して、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチド(0.5ml)に、0.5mlの不完全フロイントアジュバントを混合したものを上記と同様にして計3回投与した。また同時にイヌインターロイキン12を100μgずつ皮下投与した。その結果、癌治療剤投与時点で、大きさが約123mmであった腫瘤が、癌治療剤初回投与から45日後には完全に退縮した。
【0113】
さらに、別の乳腺癌の患犬に対して、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチド(0.5ml)に、0.5mlの不完全フロイントアジュバントを混合したものを同様にして計3回投与した。また同時にイヌインターロイキン12を100μgずつ皮下投与した。その結果、癌治療剤投与時点で、大きさが約96mmであった腫瘤が、癌治療剤初回投与から27日後には完全に退縮した。
【0114】
(2)免疫誘導能評価
上記(1)での投与試験で配列番号6、配列番号2および配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する各組換えポリペプチドを投与した各患犬の血液を、投与前並びに初回投与から10日後及び30日後の各時点で採取し、常法に従って末梢血単核球を分離し、それを用いたIFNγのエリスポットアッセイ法により、投与した各組換えタンパクについて免疫誘導能の評価を行った。
【0115】
ミリポア社製の96穴プレート(MultiScreen−IP, MAIPS4510)に70%エタノールを100μl/穴ずつ添加し、5分間静置し吸引除去後、滅菌水で洗浄し、200mM Sodium Bicarbonate(pH8.2)を300μl/穴添加し5分間静置後、吸引除去しプレートを洗浄した。次に200mM Sodium Bicarbonateに添加した抗イヌインターフェロンγモノクローナル抗体(R&D社製、clone142529, MAB781)を0.5μg/穴ずつ添加し、37℃で一晩インキュベートし、一次抗体を固相化した。一次抗体を吸引除去後、ブロッキング溶液(1% BSA−5%スクロース−200mM Sodium Bicarbonate(pH8.2))を300μl/穴ずつ添加し4℃にて一晩インキュベートしてプレートをブロッキングした。ブロッキング溶液を吸引除去後、10% 牛胎児血清を含むRPMI培地(Invitrogen社製)を300μl/穴ずつ添加して5分間静置し培地を吸引除去した。その後、10%牛胎児血清を含むRPMI培地に懸濁した各々のイヌ末梢血単核球を5×10細胞/穴ずつプレートに添加し、これにそれぞれの投与に用いたイヌ由来ポリペプチドもしくはヒト由来ポリペプチドを10μl/穴ずつ添加し、37℃、5%COの条件下で24時間培養することにより、末梢血単核球中に存在し得る免疫細胞からインターフェロンγを産生させた。培養後、培地を除去し、洗浄液(0.1% Tween20−200mM Sodium Bicarbonate(pH8.2))を用いてウェルを6回洗浄した。上記ブロッキング溶液にて1000倍に希釈したラビット抗イヌポリクローナル抗体をそれぞれのウェルに100μlずつ添加し4℃にて一晩インキュベートした。上記洗浄液で3回ウェルを洗浄した後、上記ブロッキング溶液にて1000倍に希釈したHRP標識抗ラビット抗体をそれぞれのウェルに100μlずつ添加し、37℃で2時間反応させた。上記洗浄液で3回ウェルを洗浄した後、コニカイムノステイン(コニカ社製)にて発色させ、ウェルを水洗して反応を停止させた。反応停止後、メンブレンを乾燥させ、KSエリスポット(カールツァイツ社製)を用いて出現したスポット数をカウントした。その結果、ポリペプチド投与前の各患犬の末梢血単核球ではスポットが検出されなかった。一方、ポリペプチドを投与後には、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドを投与した患犬では、投与10日後および30日後の末梢血単核球でそれぞれ13個、82個のスポットが検出され、また、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドを投与した患犬では、投与10日後および30日後の末梢血単核球でそれぞれ53個、189個のスポットが検出され、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドを投与した患犬では、投与10日後および30日後の末梢血単核球でそれぞれ32個、117個のスポットが検出された。
【0116】
以上の結果から、投与患犬において、投与した組換えタンパクに特異的に反応してインターフェロンγを産生する免疫細胞が誘導されていることが確認され、これらの免疫細胞を中心とした免疫反応により、上記(1)に示す抗腫瘍効果が発揮されたことが示された。
【0117】
実施例4:DNAワクチンによる抗腫瘍効果
配列番号19の遺伝子を基に、以下の方法にて組換えプラスミドを作製した。PCRは、CAPRIN−1遺伝子が発現していることが確認されたマウス大腸癌細胞株CT26(ATCCより購入)から実施例1(4)と同様にして抽出したcDNAを1μl、2種類のプライマー(配列番号80および81に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼとなるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cyclerを用いて、98℃/10秒、55℃/15秒、72℃/4分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーは、配列番号20のアミノ酸配列全長をコードする領域を増幅するものであった。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kitを用いて約2100bpのDNA断片を精製した。
【0118】
精製したDNA断片をクローニングベクターpCR−Blunt(Invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収後シークエンス解析を行い、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致したプラスミド得た。それをEcoRI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、EcoRI制限酵素で処理した哺乳類発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen社製)に常法に従って挿入した。
【0119】
上記で作製したプラスミドDNA100μgに50μgの金粒子(Bio Rad社製)、100μlのスペルミジン(SIGMA社製)および100μlの1M CaClを添加し、ボルテックスによって攪拌し10分間室温で静置した(以後金−DNA粒子と記載する)。 3000rpmで1分遠心した後、上清を捨て100%エタノールで3回洗浄した。金−DNA粒子に100%エタノール6mlを加えボルテックスによって十分に攪拌した後、金− DNA粒子を、Tefzel Tubing(Bio Rad社製)に流し込み、壁面に沈殿させた。金−DNA粒子が付着したTefzel Tubing のエタノールを風乾し、遺伝子銃に適した長さにカットした。
【0120】
20匹のBalb/cマウス(日本SLC社製)の背部皮下に、1匹あたり、10個のCT26細胞を移植し、腫瘍が直径7mm程度の大きさになるまで成長させた。その後、上記で作製したチューブを遺伝子銃に固定し、純ヘリウムガスを用いて400psiの圧力で、剃毛したマウスの腹腔に経皮投与を行い(プラスミドDNA接種量は2μg/匹になる)、抗腫瘍効果を評価した。
【0121】
その結果、CAPRIN−1遺伝子が挿入されていない空のプラスミドを投与されたコントロールのマウス(10匹)は、いずれも腫瘍は大きく増大し、腫瘍移植後63日目には10匹すべてが死亡した。一方、CAPRIN−1遺伝子が挿入されたプラスミドを投与されたマウス(10匹)は、いずれも腫瘍移植後25日までに腫瘍が完全に退縮し、コントロールのマウスがすべて死亡した腫瘍移植後63日目には、すべてのマウスが生存していた。
【0122】
実施例5:ペプチドエピトープ反応性CD8陽性T細胞の誘導
(1)HLA−A0201とHLA−A24に結合するペプチドモチーフの予測
ヒトCAPRIN−1ポリペプチドのアミノ酸配列の情報をGenBankから得た。HLA−A0201とHLA−A24結合モチーフ予測のため、公知のBIMASソフト(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/で利用可能)を用いたコンピューター予測プログラムを用いてヒトCAPRIN−1ポリペプチドのアミノ酸配列を解析し、HLA−A0201分子に結合可能と予想される配列番号43から配列番号71に示すペプチド29種類と、HLA−A24分子に結合可能と予想される配列番号72から配列番号76に示す5種類を選択した。
【0123】
(2)ペプチドエピトープ反応性CD8陽性T細胞の誘導
HLA−A0201陽性の健常人から末梢血を分離し、Lymphocyte separation medium(OrganonpTeknika, Durham, NC)に重層して1,500rpmで室温で20分間遠心分離した。PBMCを含有する画分を回収し、冷リン酸塩緩衝液中で3回(またはそれ以上)洗浄し、末梢血単核球(PBMC)を得た。得られたPBMCをAIM−V培地(Life Technololgies社製)20mlに懸濁し、培養フラスコ(Falcon社製)中に37℃、5% COの条件下で2時間付着させた。非付着細胞はT細胞調製に用い、付着細胞は樹状細胞を調製するために用いた。
【0124】
付着細胞をAIM−V培地中でIL−4(1000U/ml)およびGM−CSF(1000U/ml)の存在下で培養した。6日後にIL−4(1000U/ml)、GM−CSF(1000U/ml)、IL−6(1000U/ml、Genzyme, Cambridge, MA)、IL−1β(10ng/ml, Genzyme, Cambridge, MA)およびTNF−α(10ng/ml、Genzyme, Cambridge, MA)を添加したAIM−V培地に交換してさらに2日間培養した後得られた非付着細胞集団を樹状細胞として用いた。
【0125】
調製した樹状細胞をAIM−V培地中に1×10細胞/mlの細胞密度で懸濁し、上記(1)にて選択したHLA−A0201分子に結合可能と予想される配列番号43から配列番号71に示すペプチドを10μg/mlの濃度で添加し、96穴プレートを用いて37℃、5%COの条件下で4時間培養した。培養後、X線照射(3000rad)し、AIM−V培地で洗浄し、10%ヒトAB血清(Nabi, Miami, FL)、IL−6(1000U/ml)およびIL−12(10ng/ml, Genzyme, Cambridge, MA)を含有するAIM−V培地で懸濁し、24穴プレート1穴当りにそれぞれ1×10細胞ずつ添加した。さらに調製したT細胞集団を1穴当りそれぞれ1×10細胞添加し、37℃、5% COの条件下で培養した。7日後、それぞれの培養上清を捨て、上記と同様にして得た各ペプチドで処理後X線照射した樹状細胞を10%ヒトAB血清(Nabi, Miami, FL)、IL−7(10U/ml, Genzyme, Cambridge, MA)およびIL−2(10U/ml, Genzyme, Cambridge, MA)を含有するAIM−V培地で懸濁し(細胞密度:1×10細胞/ml)、24穴プレート1穴当りにそれぞれ1×10細胞ずつ添加し、さらに培養した。同様の操作を7日間おきに4〜6回繰返した後刺激されたT細胞を回収し,フローサイトメトリーによりCD8陽性T細胞の誘導を確認した。
【0126】
HLA−A24分子に結合可能と予想される配列番号72から配列番号76に示すペプチドについても、HLA−A24陽性の健常人の末梢血から誘導した樹状細胞とT細胞集団を用いて上記と同様の方法にて、ペプチドエピトープ反応性CD8陽性T細胞の誘導を試みた。
【0127】
なお、陰性コントロールとして、本発明の範囲外の配列であるペプチド(配列番号77)を使用した。
【0128】
実施例6:細胞障害性T細胞抗原エピトープの決定
(1)IFN−γ産生能
実施例5(2)にて誘導したT細胞の内、増殖が見られたT細胞それぞれについて、ペプチドエピトープに対する特異性を調べるために、HLA−A0201分子に結合可能と予想される各ペプチドをパルスした、HLA−A0201分子を発現するT2細胞(Salter RD et al., Immunogenetics, 21:235−246(1985)、ATCCより購入)(10μg/mlの濃度でAIM−V培地中各ペプチドを添加し、37℃、5%COの条件下で4時間培養)5×10個に対して、5×10個のT細胞を添加し、10%ヒトAB血清を含むAIM−V培地中で96穴プレートにて24時間培養した。培養後の上清を取って、IFN−γの産生量をELISA法により測定した。その結果、ペプチドをパルスしていないT2細胞を用いた穴の培養上清に比べて、配列番号43から配列番号71のペプチドをパルスしたT2細胞を用いた穴の培養上清において、IFN−γ産生が確認された(図2)。この結果から、上記ペプチドは特異的にHLA−A0201陽性CD8陽性T細胞を増殖刺激させ、IFN−γ産生を誘導する能力を有するT細胞エピトープペプチドであることが判明した。
【0129】
上記と同様に、実施例5(2)にて配列番号72から配列番号76のペプチドを用いて誘導したペプチドエピトープ反応性CD8陽性T細胞について、ペプチドエピトープに対する特異性を調べるために、ペプチドをパルスした、HLA−A24分子を発現するJTK−LCL細胞(理化学研究所より購入)に対する、T細胞のIFN−γの産生量をELISA法により測定した。その結果、ペプチドをパルスしていないJTK−LCL細胞を用いた穴の培養上清に比べて、配列番号72から配列番号76のペプチドをパルスしたJTK−LCL細胞を用いた穴の培養上清において、IFN−γ産生が確認された(図3)。この結果から、配列番号72から配列番号76のペプチドは、特異的にHLA−A24陽性CD8陽性T細胞を増殖刺激させ、IFN−γ産生を誘導する能力を有するT細胞エピトープペプチドであることが判明した。
【0130】
(2)細胞障害性評価
次に、本発明で用いられる配列番号43から配列番号71のペプチドが、HLA−A0201陽性でヒトCAPRIN−1ポリペプチドを発現する腫瘍細胞上のHLA−A0201分子上に提示されるものであるか、また本ペプチドで刺激されたCD8陽性T細胞がHLA−A0201陽性でヒトCAPRIN−1ポリペプチドを発現する腫瘍細胞を障害することができるかを検討した。ヒトCAPRIN−1ポリペプチドの発現が確認されているヒトグリオーマ細胞株、U−87MG細胞(ATCCより購入)を10個50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%ウシ胎児血清(キブコ社製、以下FBSという)を含むRPMI培地(キブコ社製)で3回洗浄し、96穴V底プレート1穴あたり10個ずつ添加し、さらにこれに後10%のFBSを含むRPMI培地で懸濁された5×10個の各ペプチドで刺激されたHLA−A0201陽性のペプチドエピトープ反応性のCD8陽性T細胞をそれぞれ添加して、37℃、5%COの条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定することによって、各ペプチドで刺激されたCD8陽性T細胞の細胞障害活性を算出した。その結果、本ペプチドで刺激されたHLA−A0201陽性のCD8陽性T細胞がU−87MG細胞に対する細胞障害活性を有することが判明した(図4)。一方、陰性コントロールのペプチド(配列番号77)を用いて誘導したCD8陽性T細胞は、細胞障害活性を示さなかった。従って、本発明で用いられる各ペプチド(配列番号43から配列番号71)は、HLA−A0201陽性でヒトCAPRIN−1ポリペプチドを発現する腫瘍細胞上のHLA−A0201分子上に提示されるものであり、さらに本ペプチドは、このような腫瘍細胞を障害することができるCD8陽性細胞障害性T細胞を誘導する能力があることが明らかになった。
【0131】
次に、配列番号72から配列番号76のペプチドが、HLA−A24陽性でヒトCAPRIN−1ポリペプチドを発現する腫瘍細胞上のHLA−A24分子上に提示されるものであるか、また本ペプチドで刺激されたCD8陽性T細胞がHLA−A24陽性でヒトCAPRIN−1ポリペプチドを発現する腫瘍細胞を障害することができるかを上記と同様に検討した。HLA−A24陽性でヒトCAPRIN−1ポリペプチドを発現するJTK−LCL細胞にクロミウム51を取り込ませ、HLA−A24陽性のペプチドエピトープ反応性のCD8陽性T細胞をそれぞれ添加して培養したときの、障害を受けた細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定した結果、配列番号72から配列番号76のペプチドで刺激されたHLA−A24陽性のCD8陽性T細胞がJTK−LCL細胞に対する細胞障害活性を有することが判明した(図5)。従って、配列番号72から配列番号76は、HLA−A24陽性でヒトCAPRIN−1ポリペプチドを発現する細胞上のHLA−A24分子上に提示されるものであり、さらに本ペプチドは、このような細胞を障害することができるCD8陽性細胞障害性T細胞を誘導する能力があることが明らかになった。陰性コントロールのペプチド(配列番号77)を用いて誘導したCD8陽性T細胞は、細胞障害性を示さなかった。
【0132】
なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明で用いられる各ペプチドで刺激誘導されたCD8陽性T細胞5×10個とクロミウム51を取り込ませた10個のU−87MG細胞あるいはJTK−LCL細胞とを混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式により算出したCD8陽性T細胞のU−87MG細胞あるいはJTK−LCL細胞(標的細胞という)に対する細胞障害活性を示した結果である。
【0133】
式:細胞障害活性(%)=CD8陽性T細胞を加えた際のU−87MG細胞あるいはJTK−LCL細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた標的細胞からのクロミウム51遊離量×100。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、癌の治療および予防のために産業上有用である。
【0135】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2008−202065号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。また、本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【配列表フリーテキスト】
【0136】
配列番号31:T3プライマー
配列番号32:T7プライマー
配列番号33〜34:プライマー
配列番号35〜36:GAPDHプライマー
配列番号37〜42、80〜81:プライマー
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]