特許第5962745号(P5962745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962745
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20160721BHJP
【FI】
   A63B53/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-249652(P2014-249652)
(22)【出願日】2014年12月10日
(65)【公開番号】特開2016-106975(P2016-106975A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年1月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】中原 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亘男
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−246027(JP,A)
【文献】 特開平4−82574(JP,A)
【文献】 特開平11−114102(JP,A)
【文献】 特開2004−305522(JP,A)
【文献】 特開2002−301174(JP,A)
【文献】 特開2015−29576(JP,A)
【文献】 特開2012−120685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の高さを有して左右に延在するフェース部と、前記フェース部の上部から後方に延在するクラウン部と、前記フェース部の下部から後方に延在するソール部と、前記クラウン部と前記ソール部の間で前記フェース部のトウ側縁とヒール側縁との間をフェースバックを通って延在するサイド部とを含むヘッド本体を備え、それらフェース部とクラウン部とソール部とサイド部とで囲まれた内部が中空部であるゴルフクラブヘッドであって、
前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面を第1の基準断面とし、
前記第1の基準断面において、前記フェース面の中心点から前記クラウン部に向かって1mm間隔で3つの測定点を規定し前記3つの測定点を通る円弧の曲率を測定するとともに、この曲率の測定を前記3つの測定点を1mmずつ前記クラウン部に近づく方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで前記曲率を順次測定し、
測定された前記曲率をその直前に測定された前記曲率で除した値が2倍を超えたときに、前記3つの測定点のうちの中間の測定点を第1の境界点とし、
前記第1の基準断面において、前記フェース面の中心点からソール面に向かって1mm間隔で3つの測定点を規定し前記3つの測定点を通る円弧の曲率を測定するとともに、この曲率の測定を前記3つの測定点を1mmずつ前記ソール面に近づく方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで前記曲率を順次測定し、
測定された前記曲率をその直前に測定された前記曲率で除した値が2倍を超えたときに、前記3つの測定点のうちの中間の測定点を第2の境界点とし、
前記第1の基準断面において、前記第1の境界点と、前記水平面からのクラウン面の高さが最大となるクラウン面最大高さ点とを結ぶ直線が、前記水平面に対してなす角度を前記クラウン部の前記フェース部に対する接続角度としたとき、前記接続角度が15°以上35°以下であり、
前記第1の基準断面において、前記第1の境界点を通る前記フェース面の法線と、前記第2の境界点を通る前記フェース面の法線との間に位置する前記フェース部の断面の面積Sを、前記第1の境界点と前記第2の境界点と間の寸法Dで除した値をフェース部の加重平均肉厚tとしたとき、以下の式(1)を満たし
0.0571D+0.2857<t<0.0571D+0.7143 (1)
前記基準状態において、前記フェース面の中心点を通りかつ前記水平面と平行する平面で前記ヘッド本体を破断した断面を第2の基準断面とし、
前記第2の基準断面において、前記フェース面の中心点からトウ方向に向かって1mm間隔で3つの測定点を規定し前記3つの測定点を通る円弧の曲率を測定するとともに、この曲率の測定を前記3つの測定点を1mmずつ前記トウ方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで前記曲率を順次測定し、
測定された前記曲率をその直前に測定された前記曲率で除した値が2倍を超えたときに、前記3つの測定点のうちの中間の測定点を第3の境界点とし、
前記第2の基準断面において、前記フェース面の中心点からヒール方向に向かって1mm間隔で3つの測定点を規定し前記3つの測定点を通る円弧の曲率を測定するとともに、この曲率の測定を前記3つの測定点を1mmずつ前記ヒール方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで前記曲率を順次測定し、
測定された前記曲率をその直前に測定された前記曲率で除した値が2倍を超えたときに、前記3つの測定点のうちの中間の測定点を第4の境界点としたとき、
前記第3の境界点と前記第4の境界点との間の寸法Lが前記寸法Dの1.6倍以上3.0倍以下である
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記寸法Dが25mm以上65mm以下である、
ことを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記ヘッド本体の体積が400cc以上470cc以下である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドでボールを打球した際のボールの初速を向上させ、飛距離を改善するためにフェース部のたわみ量を確保することが有効である。
特許文献1には、フェース部寄りのクラウン部の部分をたわみやすい形状とすることでフェース部のたわみ量を確保することが開示されている。
また、特許文献2には、フェース部寄りのクラウン部の一部に突起部を設け、突起部の部分をたわみやすくすることでフェース部のたわみ量を確保することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4567136号
【特許文献2】特開2012−120685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、フェース部の中心点を上下に通るフェースセンターラインを中心とした狭い範囲でのたわみ量が確保されるに過ぎず、飛距離を確保できる打点の分布領域が狭く、スイートエリアが限られている。
ここでスイートエリアとは、フェース面のスイートスポットから外れた打点でゴルフボールを打撃しても、スイートスポットで打撃した場合とほぼ同等の飛距離(例えば、ボールの最大初速の98%程度)を得ることができる領域をいう。
そのため、初心者のように打点のばらつきが大きなユーザーでは、平均的な飛距離を確保する上で不利がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スイートエリアの拡大を図りつつ打球の飛距離を向上する上で有利なゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、上下の高さを有して左右に延在するフェース部と、前記フェース部の上部から後方に延在するクラウン部と、前記フェース部の下部から後方に延在するソール部と、前記クラウン部と前記ソール部の間で前記フェース部のトウ側縁とヒール側縁との間をフェースバックを通って延在するサイド部とを含むヘッド本体を備え、それらフェース部とクラウン部とソール部とサイド部とで囲まれた内部が中空部であるゴルフクラブヘッドであって、前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面を第1の基準断面とし、前記第1の基準断面において、前記フェース面の中心点から前記クラウン部に向かって1mm間隔で3つの測定点を規定し前記3つの測定点を通る円弧の曲率を測定するとともに、この曲率の測定を前記3つの測定点を1mmずつ前記クラウン部に近づく方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで前記曲率を順次測定し、測定された前記曲率をその直前に測定された前記曲率で除した値が2倍を超えたときに、前記3つの測定点のうちの中間の測定点を第1の境界点とし、前記第1の基準断面において、前記フェース面の中心点からソール面に向かって1mm間隔で3つの測定点を規定し前記3つの測定点を通る円弧の曲率を測定するとともに、この曲率の測定を前記3つの測定点を1mmずつ前記ソール面に近づく方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで前記曲率を順次測定し、測定された前記曲率をその直前に測定された前記曲率で除した値が2倍を超えたときに、前記3つの測定点のうちの中間の測定点を第2の境界点とし、前記第1の基準断面において、前記第1の境界点と、前記水平面からのクラウン面の高さが最大となるクラウン面最大高さ点とを結ぶ直線が、前記水平面に対してなす角度を前記クラウン部の前記フェース部に対する接続角度としたとき、前記接続角度が15°以上35°以下であり、前記第1の基準断面において、前記第1の境界点を通る前記フェース面の法線と、前記第2の境界点を通る前記フェース面の法線との間に位置する前記フェース部の断面の面積Sを、前記第1の境界点と前記第2の境界点と間の寸法Dで除した値をフェース部の加重平均肉厚tとしたとき、以下の式(1)を満たし
0.0571D+0.2857<t<0.0571D+0.7143 (1)
前記基準状態において、前記フェース面の中心点を通りかつ前記水平面と平行する平面で前記ヘッド本体を破断した断面を第2の基準断面とし、前記第2の基準断面において、前記フェース面の中心点からトウ方向に向かって1mm間隔で3つの測定点を規定し前記3つの測定点を通る円弧の曲率を測定するとともに、この曲率の測定を前記3つの測定点を1mmずつ前記トウ方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで前記曲率を順次測定し、測定された前記曲率をその直前に測定された前記曲率で除した値が2倍を超えたときに、前記3つの測定点のうちの中間の測定点を第3の境界点とし、前記第2の基準断面において、前記フェース面の中心点からヒール方向に向かって1mm間隔で3つの測定点を規定し前記3つの測定点を通る円弧の曲率を測定するとともに、この曲率の測定を前記3つの測定点を1mmずつ前記ヒール方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで前記曲率を順次測定し、測定された前記曲率をその直前に測定された前記曲率で除した値が2倍を超えたときに、前記3つの測定点のうちの中間の測定点を第4の境界点としたとき、前記第3の境界点と前記第4の境界点との間の寸法Lが前記寸法Dの1.6倍以上3.0倍以下であることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記寸法Dが25mm以上65mm以下であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記ヘッド本体の体積が400cc以上470cc以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、クラウン部のフェース部に対する接続角度θを15°以上35°以下とし、フェース部の加重平均肉厚tが式(1)を満たすようにした。したがって、クラウン部のたわみ量を確保すると共にフェース部の反発係数を適切な範囲に設定できるため、スイートエリアの拡大を図りつつ打球の飛距離を向上する上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、寸法Dを25mm以上65mm以下の範囲内としたので、反発係数の向上を図りつつスイートエリアを確保でき、平均的な飛距離の向上を図る上でより有利となる。
請求項3記載の発明によれば、寸法Lを寸法Dの1.6倍以上3.0倍以下の範囲内としたので、反発係数の向上を図りつつスイートエリアを確保でき、平均的な飛距離の向上を図る上でより有利となる。
請求項4記載の発明によれば、結果的に寸法Dが適切な範囲内となり、反発係数の向上を図りつつスイートエリアを確保でき、平均的な飛距離の向上を図る上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係るゴルフクラブヘッドをフェース面の前方から見た正面図である。
図2図1のA矢視図である。
図3図2のB矢視図である。
図4】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第1の説明図である。
図5】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第2の説明図である。
図6】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第3の説明図である。
図7】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第4の説明図である。
図8】ゴルフクラブヘッドの重心点G0とフェース面上重心点FGとの関係を示すゴルフクラブヘッドの断面図である。
図9】フェース面の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
図10】フェース面の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッドの断面図である。
図11】フェース面の中心点Pcの定義を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
図12図1の平面Xで破断した断面図であり、フェース部寄りのみを描いている。
図13図1の平面Yで破断した断面図であり、フェース部寄りのみを描いている。
図14】フェース面の曲率Rの測定方法の説明図である。
図15】第1の境界点K1および接続角度θの説明図である。
図16】第2の境界点K2の説明図である。
図17】第1の境界点K1および接続角度θの説明図である。
図18】第3の境界点K3の説明図である。
図19】第4の境界点K2の説明図である。
図20】寸法Dとフェース部の加重平均肉厚tとの関係を示す図である。
図21】寸法Dと寸法Lの説明図である。
図22】フェース面上に設定された打点の説明図である。
図23】実験例1〜10の評価結果を示す図である。
図24】実験例13〜23の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態について説明する。
図1図3図12図13に示すように、本実施の形態において、ゴルフクラブヘッド10は、中空のウッド型ゴルフクラブヘッドであり、ヘッド本体12を含んで構成されている。
ヘッド本体12は、主に金属材料により構成される。
前記金属材料としては、例えばステンレス鋼、マルエージング鋼、純チタン、チタン合金又はアルミニウム合金等の1種又は2種以上が用いられる。
ヘッド本体12は、フェース部14と、クラウン部16と、ソール部18と、サイド部20とを備えている。
フェース部14は、上下の高さを有して左右に延在している。
クラウン部16は、フェース部14の上部から後方に延在している。
ソール部18は、フェース部14の下部から後方に延在している。
サイド部20は、クラウン部16とソール部18の間でフェース部14のトウ22側縁とヒール24側縁との間をフェースバック26を通って延在している。
ヘッド本体12は、それらフェース部14とクラウン部16とソール部18とサイド部20とで囲まれた内部が中空部28とされた中空構造を呈している。
フェース部14の外側に露出する表面がボールを打撃するフェース面14Aであり、フェース部14の中空部28に面した裏面がフェース裏面14Bとなっている。
クラウン部16の外側に露出する表面がクラウン面16Aである。
クラウン部16には、フェース面14A側でかつヒール24寄りの位置にシャフトSに接続するホーゼル30が設けられている。
ソール部18の外側に露出する表面がソール面18Aであり、ソール部18の中空部28に面した裏面がソール裏面18Bとなっている。
【0009】
次に、フェース面14Aの中心点Pcの規定方法について説明する。
フェース面14Aの中心点Pcは、フェース面14Aの幾何学的中心であり、中心点Pcの規定方法としては以下に例示する第1の規定方法、第2の規定方法を含め従来公知のさまざまな方法が採用可能である。
【0010】
[A]フェース面14Aの中心点Pcの第1の規定方法:
フェース面14Aと他のゴルフクラブヘッド10の部分との境目が明確である場合、言い換えると、フェース面14Aの周縁が稜線によって特定される場合における中心点Pcの規定方法である。この場合はフェース面14Aが明瞭に定義されることになる。
図4図7はフェース面14Aの中心点Pcの規定方法を示す説明図である。
【0011】
(1)まず、図4に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平面HP上にゴルフクラブヘッド10を載置する。このときのゴルフクラブヘッド10の状態を基準状態とする。なお、ライ角およびフェース角の設定値は、例えば製品カタログに記載された値である。
【0012】
(2)次にクラウン部16及びソール部18を結ぶ方向における仮中心点c0を求める。
すなわち、図4に示すように、トウ22およびヒール24を結ぶ水平面HPと平行な線(以下水平線という)の概略中心点と交差する垂線f0を引く。
この垂線f0とフェース面14Aの上縁とが交差するa0点と、垂線f0とフェース面14Aの下縁とが交差するb0点の中点を仮中心点c0とする。
【0013】
(3)次に図5に示すように仮中心点c0を通る水平線g0を引く。
(4)次に図6に示すように水平線g0とフェース面14Aのトウ22側の縁とが交差するd0点と、水平線g0とフェース面14Aのヒール24側の縁とが交差するe0点の中点を仮中心点c1とする。
【0014】
(5)次に図7に示すように仮中心点c1を通る垂線f1を引き、この垂線f1とフェース面14Aの上縁とが交差するa1点と、垂線f1とフェース面14Aの下縁とが交差するb1点の中点を仮中心点c2とする。
ここで、仮中心点c1とc2とが合致したならばその点をフェース面14Aの中心点Pcとして規定する。
仮中心点c1とc2が合致しなければ、(2)乃至(5)の手順を繰り返す。
なお、フェース面14Aは曲面を呈しているため、水平線g0の中点、垂線f0、f1の中点を求める場合の水平線g0の長さ、垂線f0、f1の長さはフェース面14Aの曲面に沿った長さを用いるものとする。
そして、フェースセンターラインCLは、中心点Pcを通りかつトウ22−ヒール24方向と直交する方向に延在する直線で定義される。
【0015】
[B]フェース面14Aの中心点Pcの第2の規定方法:
次に、フェース面14Aの周縁と他のゴルフクラブヘッド10の部分との間が曲面で接続されておりフェース面14Aが明瞭に定義できない場合の中心点Pcの定義を説明する。
【0016】
図8に示すように、ゴルフクラブヘッド10は中空であり、符号G0はゴルフクラブヘッド10の重心点を示し、符号Lpは重心点G0とフェース面上重心点FGとを結ぶ直線であり、言い換えると、直線Lpは重心点G0を通るフェース面14Aの垂線である。
すなわち、ゴルフクラブヘッド10の重心点G0をフェース面14Aに投影した点がフェース面上重心点FGである。
ここで、図9に示すように、重心点G0とフェース面上重心点FGとを結ぶ直線Lpを含む多数の平面H1、H2、H3、…、Hnを考える。
【0017】
ゴルフクラブヘッド10を各平面H1、H2、H3、…、Hnに沿って破断したときの断面において、図10に示されるように、ゴルフクラブヘッド10の外面の曲率半径r0を測定する。
曲率半径r0の測定に際して、フェース面14A上のフェースライン、パンチマーク等が無いものとして扱う。
曲率半径r0は、フェース面14Aの中心点Pcから外方向(図10における上方向、下方向)に向かって連続的に測定される。
そして、測定において曲率半径r0が最初に所定の値以下となる部分をフェース面14Aの周縁を表わす輪郭線Iとして定義する。
所定の値は例えば200mmである。
多数の平面H1、H2、H3、…、Hnに基づいて決定された輪郭線Iによって囲まれた領域が、図9図10に示すように、フェース面14Aとして定義される。
【0018】
次に、図11に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平な地面上(水平面HP)にゴルフクラブヘッド10を載置する。
直線LTは、フェース面14Aのトウ22側点PTを通過して鉛直方向に延在する。
直線LHは、フェース面14Aのヒール24側点PHを通過して鉛直方向に延在する。
直線LCは、直線LTおよび直線LHと平行である。直線LCと直線LTとの距離は、直線LCと直線LHとの距離と等しい。
符号Puは、フェース面14Aの上側点を示し、符号Pdはフェース面14Aの下側点である。上側点Puおよび下側点Pdは、いずれも直線LCと輪郭線Iとの交点である。
中心点Pcは、上側点Puと下側点Pdとを結ぶ線分の中点で定義される。
【0019】
次に、ゴルフクラブヘッド10の各部の規定について詳細に説明する。
図1図2に示すように、ゴルフクラブヘッド10を水平面HPに対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態とする。
図1図12に示すように、基準状態において、フェース面14Aの中心点Pcを通る法線を含みかつ水平面HPと直交する平面Xでヘッド本体12を破断した断面を第1の基準断面32とする。言い換えると、第1の基準断面32は、基準状態において、フェースセンターラインCLを含みかつ水平面HPと直交する平面Xでヘッド本体12を破断した断面である。
【0020】
第1の基準断面32において、以下に説明する手順に基づいて第1の境界点K1および第2の境界点K2を規定する。
すなわち、図14図15図17に示すように、フェース面14Aの中心点Pcからクラウン部16に向かって1mm間隔で3つの測定点pを規定し3つの測定点pを通る円弧の曲率Rを測定するとともに、この曲率の測定を3つの測定点pを1mmずつクラウン部16に近づく方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで曲率R(R=R1、R2、R3、……Rn−1、Rn、Rn+1、……)を順次測定する。
測定された曲率Rnをその直前に測定された曲率Rn−1で除した値が2倍を超えたときに、3つの測定点pのうちの中間の測定点pを第1の境界点K1とする。
【0021】
図16に示すように、第1の基準断面32において、フェース面14Aの中心点Pcからソール面18Aに向かって1mm間隔で3つの測定点pを規定し3つの測定点pを通る円弧の曲率Rを測定するとともに、この曲率Rの測定を3つの測定点pを1mmずつソール面18Aに近づく方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで曲率R(R=R1、R2、R3、……Rn−1、Rn、Rn+1、……)を順次測定する。この手順は、図14に示したものと同様である。
測定された曲率Rnをその直前に測定された曲率Rn−1で除した値が2倍を超えたときに、3つの測定点pのうちの中間の測定点pを第2の境界点K2とする。
【0022】
また、前記の基準状態において、図1図13に示すように、フェース面14Aの中心点Pcを通りかつ水平面HPと平行する平面Yでヘッド本体12を破断した断面を第2の基準断面34とする。
【0023】
第2の基準断面34において、以下に説明する手順に基づいて第3の境界点K3および第4の境界点K4を規定する。
図18に示すように、第2の基準断面34において、フェース面14Aの中心点Pcからトウ22方向に向かって1mm間隔で3つの測定点pを規定し3つの測定点pを通る円弧の曲率Rを測定するとともに、この曲率Rの測定を3つの測定点pを1mmずつトウ22方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで曲率R(R=R1、R2、R3、……Rn−1、Rn、Rn+1、……)を順次測定する。この手順は、図14に示したものと同様である。
測定された曲率Rnをその直前に測定された曲率Rn−1で除した値が2倍を超えたときに、3つの測定点pのうちの中間の測定点pを第3の境界点K3とする。
【0024】
図19に示すように、第2の基準断面34において、フェース面14Aの中心点Pcからヒール24方向に向かって1mm間隔で3つの測定点pを規定し3つの測定点pを通る円弧の曲率Rを測定するとともに、この曲率Rの測定を3つの測定点pを1mmずつヒール24方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで曲率R(R=R1、R2、R3、……Rn−1、Rn、Rn+1、……)を順次測定する。この手順は、図14に示したものと同様である。
測定された曲率Rnをその直前に測定された曲率Rn−1で除した値が2倍を超えたときに、3つの測定点pのうちの中間の測定点pを第4の境界点K4とする。
【0025】
本実施の形態では、図15図17に示すように、第1の基準断面32において、第1の境界点K1と、水平面HPからのクラウン面16Aの高さが最大となるクラウン面最大高さ点Phとを結ぶ直線Lkが、水平面HP′に対してなす角度をクラウン部16のフェース部14に対する接続角度θとしたとき、接続角度θが15°以上35°以下であるものとする。なお、図15は接続角度θが20°、図17は接続角度θが30°の場合を例示している。
接続角度θが15°以上35°以下の範囲内であると、打球時にクラウン部16のたわみ量を確保でき、したがって、フェース部14のたわみ量が増加するため、反発係数を高くでき、飛距離の向上を図る上で有利となる。
接続角度θが15°以上35°以下の範囲を下回ると、打球時にクラウン部16のたわみ量を確保する上で不利となり、したがって、フェース部14のたわみ量が低下するため、反発係数が低下し、飛距離の向上を図る上で不利となる。
接続角度θが15°以上35°以下の範囲を上回ると、打球時にクラウン部16のたわみ量を確保でき、したがって、フェース部14のたわみ量が増加するもののたわみ量が大きすぎるため、反発係数が高くなり過ぎ、また、スイートエリアが狭くなることから平均的な飛距離の向上を図る上で不利となる。また、ゴルフクラブヘッド10の外観形状に対する違和感が生じ、スイングしにくくなる不利がある。
【0026】
また、本実施の形態では、図12図21に示すように、第1の基準断面32において、第1の境界点K1を通るフェース面14Aの法線Ln1と、第2の境界点K2を通るフェース面14Aの法線Ln2との間に位置するフェース部14の断面の面積Sを、第1の境界点K1と第2の境界点K2と間の寸法Dで除した値をフェース部14の加重平均肉厚tとしたとき、以下の式(1)を満たすようにした。言い換えると、フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)の範囲内となるようにした。
0.0571D+0.2857<t<0.0571D+0.7143 (1)
【0027】
図20は寸法Dとフェース部14の加重平均肉厚tとの関係を示す図である。
直線L1は、t=0.0571D+0.2857を示す。
直線L2は、t=0.0571D+0.7143を示す。
図中、記号◇が式(1)を満たすゴルフクラブヘッド10を示し、記号×が式(1)を満たさないゴルフクラブヘッド10を示している。
フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)で規定された範囲内であると、反発係数の向上を図ると共にスイートエリアの確保を図る上で有利となり、平均的な飛距離の向上を図る上で有利となる。
フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)で規定された範囲を下回ると、反発係数が高くなりすぎると共にスイートエリアが狭くなるため、平均的な飛距離の向上を図る上で不利となる。
フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)で規定された範囲を上回ると、スイートエリアを確保できるものの反発係数が低下するため、平均的な飛距離の向上を図る上で不利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、寸法Dを25mm以上65mm以下の範囲内とした。
寸法Dが25mm以上65mm以下の範囲内であると、反発係数の向上を図りつつスイートエリアを確保でき、平均的な飛距離の向上を図る上で有利となる。
寸法Dが25mm以上65mm以下の範囲を下回ると、反発係数が低下するため、平均的な飛距離の向上を図る効果が低下する。
寸法Dが25mm以上65mm以下の範囲を上回ると、反発係数が高くなりすぎと共にスイートエリアが狭くなるため、平均的な飛距離の向上を図る効果が低下する。
【0029】
また、本実施の形態では、図21に示すように、第3の境界点K3と第4の境界点K4との間の寸法を寸法Lとし、寸法Lを寸法Dの1.6倍以上3.0倍以下の範囲内とした。
寸法Lが寸法Dの1.6倍以上3.0倍以下の範囲内であると、反発係数の向上を図りつつスイートエリアを確保でき、平均的な飛距離の向上を図る上で有利となる。
寸法Lが寸法Dの1.6倍以上3.0倍以下の範囲を下回ると、寸法Lが寸法Dよりも小さすぎるため、フェース部14の加重平均肉厚tが規定範囲内であってもその効果が減少し、反発係数の向上およびスイートエリアの拡大を図る効果が低下し、平均的な飛距離の向上を図る効果が低下する。
寸法Lが寸法Dの1.6倍以上3.0倍以下の範囲を上回ると、寸法Lが寸法Dよりも大きすぎるため、フェース部14の加重平均肉厚tが規定範囲内であっても、反発係数の向上およびスイートエリアの拡大を図る効果が低下し、平均的な飛距離の向上を図る効果が低下する。
【0030】
また、本実施の形態では、ヘッド本体12の体積を400cc以上470cc以下の範囲内とした。
ヘッド本体12の体積が400cc以上470cc以下の範囲内であると、結果的に寸法Dが適切な範囲内となり、反発係数の向上を図りつつスイートエリアを確保でき、平均的な飛距離の向上を図る上で有利となる。
ヘッド本体12の体積が400cc以上470cc以下の範囲を下回ると、結果的に寸法Dが適切な範囲を下回るため、反発係数が低下し平均的な飛距離の向上を図る効果が低下する。
ヘッド本体12の体積が400cc以上470cc以下の範囲を上回ると、結果的に寸法Dが適切な範囲を上回るため、反発係数が高すぎて平均的な飛距離の向上を図る効果が低下する。
【0031】
以上説明したように本実施の形態のゴルフクラブヘッド10によれば、クラウン部16のフェース部14に対する接続角度θを15°以上35°以下とし、フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)を満たすようにした。
したがって、クラウン部16のたわみ量を確保すると共にフェース部14の反発係数を適切な範囲に設定できるため、スイートエリアの拡大を図りつつ打球の飛距離を向上する上で有利となる。
【0032】
以下、本発明の実験例について説明する。
なお、以下の実験例の説明では、上記の実施の形態と同一の箇所、部材に同一の符号を付しその説明を省略する。
図23図24は、本発明に係るゴルフクラブヘッド10の実験結果を示す図である。
試料となるゴルフクラブヘッド10を各実験例毎に作成し、後述する4つの評価項目を測定し指数(評価点)を求めると共に、4つの指数の合計点を求めた。
【0033】
(1)初速
スイングロボットを用いて以下の条件で実打試験を行い9打点における初速の平均値を指数で評価した。実験例1の指数を100とし指数が大きいほど初速が速く、評価が良いことを示す。
ヘッドスピード:40m/s
打点位置は、以下の合計9打点とし、各打点で5回ずつボールを打撃した。
フェース面14Aの中心点Pcと、中心点Pcを通りフェースセンターラインCLと直交する直線上で中心点Pcからトウ方向に7mm離間した点と、ヒール方向に7mm離間した点の3打点。
フェースセンターラインCL上で中心点Pcからクラウン部16方向に5mm離間した点と、この点を通りフェースセンターラインCLと直交する上5mmライン上で、上記点からトウ方向に7mm離間した点と、ヒール方向に7mm離間した点の3打点。
フェースセンターラインCL上で中心点Pcからソール部18方向に5mm離間した点と、この点を通りフェースセンターラインCLと直交する下5mmライン上で、上記点からトウ方向に7mm離間した点と、ヒール方向に7mm離間した点の3打点。
【0034】
(2)スイートエリア
図22に示すように、フェース面14Aの中心点Pcを中心に、トウヒール方向およびクラウンソール方向に等間隔をおいた45箇所を打点Piとして設定した。
専用のスイングロボットを用いて45の打点Piでゴルフクラブをスイングし、計測器によってゴルフボールの初速を計測した。ヘッドスピードは40m/sとした。
45打点の初速のデータを補間し、ゴルフボールの最大初速の98%以上となるフェース面14Aの高初速エリアの面積を指数化した。なお、中心点Pcより上打点(クラウン部16側)でのデータと、下打点(ソール部18側)でのデータは、ゴルファーの実使用打点位置に合わせて、上打点(クラウン部16側)でのデータの重み付けを重くした。
高初速エリアのデータは、実験例1のゴルフクラブヘッド10の測定結果を100とした指数で示した。指数が大きいほど評価が良いことを示す。
【0035】
(3)飛距離
実打試験で得られた、初速と、打ち出し角と、バックスピンの3つの測定値を元に、飛距離シミュレーションを行って飛距離を得た。
実験例1の指数を100とし指数が大きいほど飛距離が長く、評価が良いことを示す。
【0036】
(4)耐久性
シャフトに固定したゴルフクラブヘッド10のフェース面14Aにエアキャノンにてゴルフボールを繰り返して当て、フェース部14の変形や破損が生じるまでに要した打撃回数を計測し、打撃回数を指数化した。ボールスピードは50m/sとした。
この場合、実験例1のゴルフクラブヘッド10の測定結果を100とした指数で示した。指数が大きいほど評価が良いことを示す。
【0037】
(5)合計点
上述した初速、スイートエリア、飛距離、耐久性の4つの指数を合計したものを合計点とした。
実験例1の合計点を400とし合計点が大きいほど評価が良いことを示す。
【0038】
次に図23図24を参照しつつ実験例1〜23について説明する。
実験例1は、比較例に相当するものであり、本発明の請求項1の規定を満たさない。
実験例4、5は、本発明の請求項1の規定のうち、フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)の範囲内であるものの、クラウン部16のフェース部14に対する接続角度θが規定を満たさない。
実験例8、9は、本発明の請求項1の規定のうち、クラウン部16のフェース部14に対する接続角度θが規定を満たすものの、フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)の範囲外である。
【0039】
実験例2、3、6、7、10、11、14、15、18、19、22、23は、本発明の範囲内であり、請求項1から4の規定の全てを満たす。
実験例12、13は、本発明の範囲内であるが、請求項2の規定を満たさない。
実験例16、17は、本発明の範囲内であるが、請求項3の規定を満たさない。
実験例20、21は、本発明の範囲内であるが、請求項4の規定を満たさない。
【0040】
実験例2は、請求項1から請求項4の規定の全てを満たしている。
したがって、初速132、スイートエリア145、飛距離139、耐久性120、合計点536となっており、実験例1に比較して全ての評価が高く、合計点が最高となっている。
【0041】
実験例3は、請求項1から請求項4の規定の全てを満たしている。
したがって、初速130、スイートエリア143、飛距離137、耐久性126、合計点536となっており、実験例1に比較して全ての評価が高く、合計点が最高となっている。
【0042】
実験例4は、フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)の範囲内であるものの、クラウン部16のフェース部14に対する接続角度θが12.0°であり請求項1の15°以上35°以下の範囲を下回っている。
したがって、初速102、スイートエリア103、飛距離101、耐久性101、合計点407となっており、全ての評価が実験例1とほぼ同等に留まっている。
【0043】
実験例5は、フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)の範囲内であるものの、クラウン部16のフェース部14に対する接続角度θが37.0°であり請求項1の15°以上35°以下の範囲を上回っている。
したがって、初速129、スイートエリア89、飛距離88、耐久性101、合計点407となっており、初速は実験例1に比較して優れているものの、残りの評価が実験例1と同等以下である。
【0044】
実験例6は、クラウン部16のフェース部14に対する接続角度θが17.0°であり、請求項1の15°以上35°以下の範囲の下限値近傍の値となっている。
したがって、初速119、スイートエリア120、飛距離116、耐久性116、合計点471となっており、全ての評価が実験例1に比較して優れている。
【0045】
実験例7は、クラウン部16のフェース部14に対する接続角度θが33.0°であり、請求項1の15°以上35°以下の範囲の上限値近傍の値となっている。
したがって、初速130、スイートエリア115、飛距離114、耐久性115、合計点474となっており、全ての評価が実験例1に比較して優れている。
【0046】
実験例8は、フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)の範囲を下回っており、請求項1を満たしていない。
したがって、初速131、スイートエリア91、飛距離89、耐久性92、合計点403となっており、フェース部14のたわみ量を確保できるため、初速に優れているものの、残りの評価が実験例1よりも劣っている。
【0047】
実験例9は、フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)の範囲を上回っており、請求項1を満たしていない。
したがって、初速78、スイートエリア130、飛距離88、耐久性112、合計点408となっており、フェース部14の加重平均肉厚tが厚いため、スイートエリアに優れているものの、フェース部14のたわみ量が低下するため、初速、飛距離が実験例1よりも劣っている。
【0048】
実験例10は、フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)の範囲の下限値近傍であり、請求項1を満たしている。
したがって、初速131、スイートエリア115、飛距離115、耐久性115、合計点476となっており、特に初速が優れており、残りの評価も実験例1に比較して優れている。
【0049】
実験例11は、フェース部14の加重平均肉厚tが式(1)の範囲の上限値近傍であり、請求項1を満たしている。
したがって、初速117、スイートエリア127、飛距離116、耐久性116、合計点476となっており、特にスイートエリアが優れており、残りの評価も実験例1に比較して優れている。
【0050】
実験例12は、寸法Dが23.0mmであり、請求項2の25mm≦D≦65mmの範囲を下回っている。
したがって、初速94、スイートエリア131、飛距離95、耐久性101、合計点421となっており、スイートエリアに優れるものの、初速、飛距離の評価が実験例1と同等以下である。
【0051】
実験例13は、寸法Dが67.0mmであり、請求項2の25mm≦D≦65mmの範囲を上回っている。
したがって、初速132、スイートエリア94、飛距離95、耐久性101、合計点422となっており、初速に優れるものの、スイートエリア、飛距離の評価が実験例1と同等以下である。
【0052】
実験例14は、寸法Dが27.0mmであり、請求項2の25mm≦D≦65mmの範囲のほぼ下限値である。
したがって、初速120、スイートエリア140、飛距離115、耐久性120、合計点495となっており、全ての評価が実験例1に比較して優れている。
【0053】
実験例15は、寸法Dが63.0mmであり、請求項2の25mm≦D≦65mmの範囲のほぼ上限値である。
したがって、初速137、スイートエリア115、飛距離123、耐久性118、合計点493となっており、全ての評価が実験例1に比較して優れている。
【0054】
実験例16は、寸法Lと寸法Dとの比率L/Dが1.5であり、請求項3の1.6≦L/D≦3.0の範囲を下回っている。
したがって、初速98、スイートエリア137、飛距離103、耐久性103、合計点441となっており、スイートエリアに優れるものの、初速、飛距離の評価が実験例1とほぼ同等に留まっている。
【0055】
実験例17は、寸法Lと寸法Dとの比率L/Dが3.1であり、請求項3の1.6≦L/D≦3.0の範囲を上回っている。
したがって、初速132、スイートエリア99、飛距離106、耐久性103、合計点440となっており、初速と飛距離に優れるものの、スイートエリアの評価が実験例1とほぼ同等に留まっている。
【0056】
実験例18は、寸法Lと寸法Dとの比率L/Dが1.7であり、請求項3の1.6≦L/D≦3.0の範囲のほぼ下限値である。
したがって、初速123、スイートエリア135、飛距離135、耐久性121、合計点514となっており、全ての評価が実験例1に比較して優れている。
【0057】
実験例19は、寸法Lと寸法Dとの比率L/Dが2.9であり、請求項3の1.6≦L/D≦3.0の範囲のほぼ上限値である。
したがって、初速134、スイートエリア120、飛距離136、耐久性120、合計点510となっており、全ての評価が実験例1に比較して優れている。
【0058】
実験例20は、ヘッド本体12の体積Vが380ccであり、請求項4の400cc≦V≦470ccの範囲を下回っている。
したがって、初速102、スイートエリア135、飛距離103、耐久性110、合計点450となっており、スイートエリアに優れるものの、初速、飛距離の評価が実験例1とほぼ同等に留まっている。
【0059】
実験例21は、ヘッド本体12の体積Vが490ccであり、請求項4の400cc≦V≦470ccの範囲を上回っている。
したがって、初速136、スイートエリア103、飛距離103、耐久性108、合計点450となっており、初速に優れるものの、スイートエリア、飛距離の評価が実験例1とほぼ同等に留まっている。
【0060】
実験例22は、ヘッド本体12の体積Vが410ccであり、請求項4の400cc≦V≦470ccの範囲のほぼ下限値である。
したがって、初速126、スイートエリア145、飛距離125、耐久性125、合計点521となっており、全ての評価が実験例1に比較して優れている。
【0061】
実験例23は、ヘッド本体12の体積Vが460ccであり、請求項4の400cc≦V≦470ccの範囲のほぼ上限値である。
したがって、初速139、スイートエリア125、飛距離132、耐久性124、合計点520となっており、全ての評価が実験例1に比較して優れている。
【0062】
以下、各評価項目について検討する。
(1)初速
本発明の範囲内であり、請求項1から4の規定の全てを満たす実験例2、3、6、7、10、11、14、15、18、19、22、23は、初速が117〜139であり初速が最も優れている。
本発明の範囲内であるが、請求項2の規定を満たさない実験例12、13は、初速が94、132である。
本発明の範囲内であるが、請求項3の規定を満たさない実験例16、17は、初速が98、132である。
本発明の範囲内であるが、請求項4の規定を満たさない実験例20、21は、初速が102、136である。
本発明の範囲外である実験例1、4、5、8、9は、初速が78〜131であり、初速の評価が低い。
したがって、本発明の範囲内で請求項1〜4の規定の全てを満たすものは、本発明の範囲外のものに対して初速の向上を図る効果が優れている。
【0063】
(2)スイートエリア
本発明の範囲内であり、請求項1から4の規定の全てを満たす実験例2、3、6、7、10、11、14、15、18、19、22、23は、スイートエリアが115〜145でありスイートエリアが最も優れている。
本発明の範囲内であるが、請求項2の規定を満たさない実験例12、13は、スイートエリアが94、131である。
本発明の範囲内であるが、請求項3の規定を満たさない実験例16、17は、スイートエリアが99、137である。
本発明の範囲内であるが、請求項4の規定を満たさない実験例20、21は、スイートエリアが103、135である。
本発明の範囲外である実験例1、4、5、8、9は、スイートエリアが89〜130であり、スイートエリアの評価が低い。
したがって、本発明の範囲内で請求項1〜4の規定の全てを満たすものは、本発明の範囲外のものに対してスイートエリアの向上を図る効果が優れている。
【0064】
(3)飛距離
本発明の範囲内であり、請求項1から4の規定の全てを満たす実験例2、3、6、7、10、11、14、15、18、19、22、23は、飛距離が115〜139であり飛距離が最も優れている。
本発明の範囲内であるが、請求項2の規定を満たさない実験例12、13は、飛距離が95である。
本発明の範囲内であるが、請求項3の規定を満たさない実験例16、17は、飛距離が103、106である。
本発明の範囲内であるが、請求項4の規定を満たさない実験例20、21は、飛距離が103である。
本発明の範囲外である実験例1、4、5、8、9は、飛距離が88〜101であり、飛距離の評価が低い。
したがって、本発明の範囲内で請求項1〜4の規定の全てを満たすものは、本発明の範囲外のものに対して飛距離の向上を図る効果が優れている。
【0065】
(4)耐久性
本発明の範囲内であり、請求項1から4の規定の全てを満たす実験例2、3、6、7、10、11、14、15、18、19、22、23は、耐久性が115〜126であり耐久性が最も優れている。
本発明の範囲内であるが、請求項2の規定を満たさない実験例12、13は、耐久性が101である。
本発明の範囲内であるが、請求項3の規定を満たさない実験例16、17は、耐久性が103である。
本発明の範囲内であるが、請求項4の規定を満たさない実験例20、21は、耐久性が108、110である。
本発明の範囲外である実験例1、4、5、8、9は、耐久性が92〜112であり、耐久性の評価が低い。
したがって、本発明の範囲内で請求項1〜4の規定の全てを満たすものは、本発明の範囲外のものに対して耐久性の向上を図る効果が優れている。
【0066】
(5)合計点
本発明の範囲内であり、請求項1から4の規定の全てを満たす実験例2、3、6、7、10、11、14、15、18、19、22、23は、合計点が471〜536であり合計点が最も優れている。
本発明の範囲内であるが、請求項2の規定を満たさない実験例12、13は、合計点が421、422である。
本発明の範囲内であるが、請求項3の規定を満たさない実験例16、17は、合計点が440、441である。
本発明の範囲内であるが、請求項4の規定を満たさない実験例20、21は、合計点が450である。
本発明の範囲外である実験例1、4、5、8、9は、合計点が400〜408であり、合計点の評価が低い。
したがって、本発明の範囲内で請求項1〜4の規定の全てを満たすものは、本発明の範囲外のものに対して合計点の向上を図る効果が優れている。
【符号の説明】
【0067】
10 ゴルフクラブヘッド
12 ヘッド本体
14 フェース部
14A フェース面
16 クラウン部
16A クラウン面
18 ソール部
18A ソール面
22 トウ
24 ヒール
28 中空部
32 第1の基準断面
34 第2の基準断面
Pc 中心点
X 平面
Y 平面
HP 水平面
Lk 直線
K1 第1の境界点
K2 第2の境界点
K3 第3の境界点
K4 第4の境界点
Ln1 法線
Ln2 法線
θ クラウン部16のフェース部14に対する接続角度
D 第1の境界点K1と第2の境界点K2と間の寸法
L 第3の境界点K3と第4の境界点K4との間の寸法
S フェース部14の断面の面積
t フェース部14の加重平均肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24