特許第5962749号(P5962749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962749
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】流量可変バルブ機構及び車両用過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20160721BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20160721BHJP
   F02B 37/16 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F02B37/18 D
   F02B37/18 E
   F02B39/00 T
   F02B39/00 U
   F02B39/00 F
   F02B37/16 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-503542(P2014-503542)
(86)(22)【出願日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2013056284
(87)【国際公開番号】WO2013133376
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2014年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-53308(P2012-53308)
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 健一
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−226591(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010038908(DE,A1)
【文献】 特開平01−108349(JP,A)
【文献】 特開2000−160395(JP,A)
【文献】 実開昭56−097530(JP,U)
【文献】 特開昭60−178930(JP,A)
【文献】 実開昭61−033923(JP,U)
【文献】 実開昭61−152734(JP,U)
【文献】 実開平03−054245(JP,U)
【文献】 特開平04−272430(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/135104(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102006021185(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102011075201(DE,A1)
【文献】 特表2013−519813(JP,A)
【文献】 特表2012−527575(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011075450(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00−41/10
F01D 17/00−21/20
F02C 1/00−9/58
F23R 3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンハウジングの内部又は前記タービンハウジングに連通した状態で接続した接続体の内部に、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流路が形成された過給機に用いられ、前記ガス流路の開口部を開閉する流量可変バルブ機構であって、
前記タービンハウジング又は前記接続体の外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され、基端部が前記タービンハウジング又は前記接続体の外側へ突出したステムと、
前記ステムの基端部に一体的に設けられ、アクチュエータの駆動により前記ステムの軸心周りに正逆方向へ揺動するリンク部材と、
前記ステムに一体的に設けられ、取付穴が貫通形成された取付部材と、
前記取付部材の前記取付穴に嵌合して設けられ、前記取付部材に対するガタが許容され、ガス流路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能なバルブ本体、及び前記バルブ本体の中央に一体形成されかつ前記取付部材の前記取付穴に嵌合したバルブ軸を備えたバルブと、
前記バルブ軸の先端部に一体的に設けられ、前記バルブを前記取付部材に対して離脱不能にするための止め金と、
前記バルブ軸の軸方向における前記止め金と前記取付部材との間、及び前記バルブ軸の前記軸方向における前記取付部材と前記バルブ本体との間のうち少なくともいずれかの間に設けられたスペーサと、を具備し、
前記止め金において前記取付部材に対向する表面、前記取付部材において前記止め金に対向する表面前記取付部材において前記バルブ本体に対向する表面及び前記バルブ本体において前記取付部材に対向する表面のうち少なくともいずれかの表面にガード壁が前記スペーサを囲むように形成されていることを特徴とする流量可変バルブ機構。
【請求項2】
前記スペーサがグラファイト系材料により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流量可変バルブ機構。
【請求項3】
前記スペーサの個数は複数であって、複数の前記スペーサが重なり合っていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流量可変バルブ機構。
【請求項4】
前記ガス流路は、排気ガスの一部を前記タービンインペラをバイパスさせるためのバイパス通路であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載の流量可変バルブ機構。
【請求項5】
エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する車両用過給機において、
請求項1から請求項4のうちの何れか一項に記載の流量可変バルブ機構を具備したことを特徴とする車両用過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用過給機におけるタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流路の開口部を開閉する流量可変バルブ機構等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用過給機による過給圧の過度の上昇を防止する対策として、通常、車両用過給機におけるタービンハウジングの内部にはバイパス通路(ガス流路の1つ)が形成されている。バイパス通路は、排気ガスの一部をタービンインペラをバイパスさせる。換言すれば、バイパス通路は、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とする。ガス流路また、タービンハウジングの適宜位置には、ウェイストゲートバルブ(流量可変バルブ機構の1つ)が設けられている。ウェイストゲートバルブは、バイパス通路の開口部を開閉する。そして、ウェイストゲートバルブの一般的な構成等は、次の通りである。
【0003】
タービンハウジングの外壁に貫通形成した支持穴には、ステムが回転可能に支持されており、このステムの基端部(一端部)は、タービンハウジングの外側へ突出してある。また、ステムの基端部には、リンク部材が一体的に設けられており、このリンク部材は、アクチュエータの駆動によりステムの軸心周りに正逆方向へ揺動するものである。
【0004】
ステムの先端部(他端部)には、取付部材が一体的に設けられており、この取付部材には、取付穴が貫通形成されている。そして、取付部材の取付穴には、バルブが嵌合して設けられており、このバルブは、取付部材に対するガタ(移動及び揺動)が許容されている。また、バルブは、バイパス通路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能なバルブ本体、及びバルブ本体の中央に一体形成されかつ取付部材の取付穴に嵌合したバルブ軸を備えている。ここで、車両用過給機におけるコンプレッサインペラの出口側の圧力が設定圧に達するまでは、バルブ本体はバイパス通路の開口部側のバルブシートに当接した状態にあって、取付部材に対するバルブのガタが許容されることによって、バイパス通路の開口部側のバルブシートに対するバルブ本体の追従性(密着性)が確保されている。更に、バルブ軸の先端部には、バルブを取付部材に対して離脱不能にするための止め金としての座金が一体的に設けられている。
【0005】
従って、車両用過給機の運転中に、コンプレッサインペラの出口側の圧力が設定圧に達すると、アクチュエータの駆動によりリンク部材を正方向(一方向)へ揺動させて、ステムを正方向へ回転させることにより、バルブを正方向へ揺動させて、バルブ本体をバイパス通路の開口部側のバルブシートから離隔させる。これにより、ウェイストゲートバルブによってバイパス通路の開口部を開いて、排気ガスの一部をタービンインペラをバイパスさせて、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を減少させることができる。
【0006】
また、コンプレッサインペラの出口側の圧力が設定圧未満になると、アクチュエータの駆動によりリンク部材を逆方向(他方向)へ揺動させて、ステムを逆方向へ回転させることにより、バルブを逆方向へ揺動させて、バルブ本体をバイパス通路の開口部側のバルブシートに当接させる。これにより、ウェイストゲートバルブによってバイパス通路の開口部を閉じて、ウェイストゲートバルブを元の状態に復帰させることができる。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1及び特許文献2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−236088号公報
【特許文献2】特開2008−101589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述のように、取付部材に対するバルブのガタが許容されているため、コンプレッサインペラの出口側の圧力が設定圧に達するまで、バイパス通路の開口部側のバルブシートに対するバルブ本体の追従性が確保されるものの、コンプレッサインペラの出口側の圧力が設定圧に達して、ウェイストゲートバルブによってバイパス通路の開口部を開くと、エンジンからの排気ガスの脈動圧力、エンジンの振動等によってバルブが振動する。そのため、バルブ及び座金が取付部材に衝突して、所謂チャタリング音が発生して、走行中における車両の静音性を高いレベルまで確保するが困難であるという問題がある。
【0010】
なお、バルブの振動による問題は、タービンハウジングに設けられたウェイストゲートバルブだけでなく、過給機に用いられる他の流量可変バルブ機構においても同様に生じるものである。
【0011】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の流量可変バルブ機構等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、タービンハウジングの内部又は前記タービンハウジングに連通した状態で接続した接続体の内部に、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流路が形成された過給機に用いられ、前記ガス流路の開口部を開閉する流量可変バルブ機構であって、前記タービンハウジング又は前記接続体の外壁に貫通形成した支持穴に回転可能に支持され、基端部(一端部)が前記タービンハウジング又は前記接続体の外側へ突出したステムと、前記ステムの基端部に一体的に設けられ、アクチュエータの駆動により前記ステムの軸心周りに正逆方向へ揺動するリンク部材と、前記ステムに一体的に設けられ、取付穴が貫通形成された取付部材と、前記取付部材の前記取付穴に嵌合して設けられ、前記取付部材に対するガタ(移動及び揺動)が許容され、前記ガス流路の開口部側のバルブシートに当接離隔可能なバルブ本体、及び前記バルブ本体の中央に一体形成されかつ前記取付部材の前記取付穴に嵌合したバルブ軸を備えたバルブと、前記バルブ軸の先端部に一体的に設けられ、前記バルブを前記取付部材に対して離脱不能にするための止め金と、前記バルブ軸の軸方向における前記止め金と前記取付部材との間、及び前記バルブ軸の前記軸方向における前記取付部材と前記バルブ本体との間のうち少なくともいずれかの間に設けられたスペーサと、を具備し、前記止め金において前記取付部材に対向する表面、前記取付部材において前記止め金に対向する表面前記取付部材において前記バルブ本体に対向する表面、及び前記バルブ本体において前記取付部材に対向する表面のうち少なくともいずれかの表面にガード壁(保護壁又はフランジ)が前記スペーサを囲むように形成されていることを要旨とする。
【0013】
ここで、本願の明細書及び請求の範囲において、「ガス流路」とは、排気ガスの一部をタービンインペラをバイパスさせるためのバイパス通路を含む意であって、「流量可変バルブ機構」とは、バイパス通路の開口部を開閉するウェイストゲートバルブを含む意である。また、「タービンハウジングに連通した状態で接続した接続体」とは、タービンハウジングのガス導入口又はガス排出口に連通した状態で接続した配管、マニホールド、ケーシング等を含む意である。
【0014】
本発明の第2の態様は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する車両用過給機において、第1の態様に係る流量可変バルブ機構を具備したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記ガス流路の開口部が開いた状態での前記バルブの振動を十分に低減できるため、チャタリング音を発生させないか若しくは極力小さくして、走行中における車両の静音性を高いレベルまで確保することができる。
【0016】
また、前記車両用過給機の運転中に前記スペーサの一部が破損しても、前記スペーサの破片等が前記ガード壁の外側に流出することを抑えることができるため、前記車両用過給機よりも下流側(排気ガスの流れ方向から見て下流側)に配設される触媒等の排気系の損傷を十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、本発明の実施形態に係るウェイストゲートバルブの平面図、図1(b)は、図1(a)におけるIB-IB線に沿った断面図である。
図2図2は、図3におけるII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る車両用過給機の一部の正面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る車両用過給機の正断面図である。
図5図5(a)は、本発明の実施形態の変形例1に係るウェイストゲートバルブの断面図、図5(b)は、本発明の実施形態の変形例2に係るウェイストゲートバルブの断面図である。
図6図6(a)は、本発明の実施形態の変形例3に係るウェイストゲートバルブの断面図、図6(b)は、本発明の実施形態の変形例4に係るウェイストゲートバルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図1から図4を参照して説明する。なお、図面に示す通り、「L」は左方向を、「R」は右方向を示す。
【0019】
図4に示すように、本実施形態に係る車両用過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、車両用過給機1の具体的な構成等は、以下の通りである。
【0020】
車両用過給機1は、ベアリングハウジング3を具備しており、ベアリングハウジング3内には、一対のラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられている。また、複数のベアリング5,7には、左右方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0021】
ベアリングハウジング3の右側には、コンプレッサハウジング11が設けられている。また、コンプレッサハウジング11内には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラ13が回転可能に設けられており、このコンプレッサインペラ13は、ロータ軸9の右端部(一端部)に同心上に一体的に連結されている。
【0022】
コンプレッサハウジング11におけるコンプレッサインペラ13の入口側(コンプレッサハウジング11の右側)には、空気を導入するための空気導入口(空気導入通路)15が形成されており、この空気導入口15は、空気を浄化するエアクリーナー(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング11との間におけるコンプレッサインペラ13の出口側には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路17が形成されている。更に、コンプレッサハウジング11の内部には、渦巻き状のコンプレッサスクロール流路19がコンプレッサインペラ13を囲むように形成されており、このコンプレッサスクロール流路19は、ディフューザ流路17に連通してある。そして、コンプレッサハウジング11の外壁の適宜位置には、圧縮された空気を排出するための空気排出口(空気排出通路)21が形成されており、この空気排出口21は、コンプレッサスクロール流路19に連通してあって、エンジンの給気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0023】
ベアリングハウジング3の左側には、タービンハウジング23が設けられている。また、タービンハウジング23内には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラ25が回転可能に設けられており、このタービンインペラ25は、ロータ軸9の左端部(他端部)に同心上に一体的に連結されている。
【0024】
図2から図4に示すように、タービンハウジング23の外壁の適宜位置には、排気ガスを導入するためのガス導入口(ガス導入通路)27が形成されており、このガス導入口27は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング23の内部におけるタービンインペラ25の入口側には、渦巻き状のタービンスクロール流路29が形成されており、このタービンスクロール流路29は、ガス導入口27に連通してある。そして、タービンハウジング23におけるタービンインペラ25の出口側(タービンハウジング23の左側)には、排気ガスを排出するためのガス排出口(ガス排出通路)31が形成されており、このガス排出口31は、タービンスクロール流路29に連通してある。更に、タービンハウジング23におけるガス排出口31の径方向外側には、排気ガスを排出するためのガス排出口(ガス排出通路)33が形成されており、ガス排出口31及びガス排出口33は、排気ガスを浄化する触媒(図示省略)に接続管(図示省略)を介して接続可能である。なお、ガス排出口31及びガス排出口33は、タービンハウジング23の出口に相当する。
【0025】
タービンハウジング23の内部には、排気ガスの一部をタービンインペラ25をバイパスさせてガス排出口33側へ導出するため、換言すれば、タービンインペラ25側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのバイパス通路(ガス流路の1つ)35が形成されている。また、タービンハウジング23の適宜位置には、バイパス通路35の開口部を開閉するウェイストゲートバルブ(流量可変バルブ機構の1つ)37が設けられている。そして、本実施形態の要部であるウェイストゲートバルブ37の具体的な構成は、次の通りである。
【0026】
図1(a)(b)及び図2に示すように、タービンハウジング23に貫通して形成した支持穴39には、ステム(回転軸)41がブッシュ43を介して回転可能に支持されおり、このステム41の基端部は、タービンハウジング23の外側へ突出してある。また、ステム41の基端部には、リンク部材(リンク板)45が溶接等によって一体的に設けられており、このリンク部材45は、アクチュエータ47の駆動によりステム41の軸心周りに正逆方向へ揺動するようになっている。ここで、アクチュエータ47は、例えば特開平10−103069号公報、特開2008−25442号公報等に示すように、ダイヤフラム(図示省略)を内蔵した公知の構成からなるものであって、コンプレッサインペラ13の出口側の圧力が設定圧に達するとリンク部材45を正方向(一方向)へ揺動させると共に、コンプレッサインペラ13の出口側の圧力が設定圧未満になるとリンク部材45を逆方向(他方向)へ揺動させるようになっている。
【0027】
ステム41には、取付部材(取付板)49が溶接等によって一体的に設けられており、この取付部材49は、タービンハウジング23内に位置してある。また、取付部材49は、ステム41に一体的に取付られた取付スリーブ51、及び取付スリーブ51に一体的に設けられた取付タング53を備えており、取付タング53には、取付穴55が貫通形成されている。
【0028】
取付タング53(取付部材49)の取付穴55には、バルブ57が嵌合して設けられており、このバルブ57は、取付部材49に対するガタ(移動及び揺動)が許容されている。また、バルブ57は、バイパス通路35の開口部側のバルブシート59に当接離隔可能なバルブ本体61、及びバルブ本体61の中央に一体形成されかつ取付部材49の取付穴55に嵌合したバルブ軸63を備えている。ここで、コンプレッサインペラ13の出口側の圧力が設定圧に達するまでは、バルブ本体61はバイパス通路35の開口部側のバルブシート59に当接した状態にあって、取付部材49に対するバルブ57のガタが許容されることによって、バイパス通路35の開口部側のバルブシート59に対するバルブ本体61の追従性(密着性)が確保されている。更に、バルブ軸63の先端部には、バルブ57を取付部材49に対して離脱不能にするための環状の止め金としての座金65がかしめ又は溶接等によって一体的に設けられている。
【0029】
バルブ軸63の軸方向における座金65と取付タングとの間には、環状のスペーサ67が設けられている。バルブ軸63はスペーサ67を貫通している。スペーサ67は、グラファイト系材料により構成されている。また、座金65の裏面(図1(b)において下側面)には、環状のガード壁(保護壁又はフランジ)69がスペーサ67を囲むように形成されており、このガード壁69の端面は、取付タング53の表面(図1(b)において上側面)に対向している。ここで、ガード壁69の高さとスペーサ67の厚み(高さ)に関して、両者はスペーサ67が取付タング53あるいは座金65のいずれか一方に接触できるように(摩擦が得られるように)設定される。即ち、スペーサ67とガード壁69に対向する取付タング53の面が平面である場合、スペーサ67の厚みはガード壁69の高さ以上である。また、取付タング53の面におけるガード壁69の先端部に対応する部分に、当該先端部を挿入可能にする凹部(段部、溝部等)(図示せず)を形成してもよい。或いは、取付タング53の表面及び座金65の裏面の少なくとも1つの面において、スペーサ67に対応する部分に、スペーサ67に向けて突出する凸部(段部)(図示せず)を形成してもよい。これらの場合(その組み合わせも含む)、スペーサ67が取付タング53に接触できる厚さを有する限り、その値は任意である。なお、スペーサ67はグラファイト系材料以外の材料により構成されても構わない。
【0030】
続いて、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
ガス導入口27から導入した排気ガスがタービンスクロール流路29を経由してタービンインペラ25の入口側から出口側へ流通することにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ13をタービンインペラ25と一体的に回転させることができる。これにより、空気導入口15から導入した空気を圧縮して、ディフューザ流路17及びコンプレッサスクロール流路19を経由して空気排出口21から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給することができる。
【0032】
車両用過給機1の運転中に、コンプレッサインペラ13の出口側の圧力が設定圧に達すると、アクチュエータ47の駆動によりリンク部材45を正方向(一方向)へ揺動させて、ステム41を正方向へ回転させることにより、バルブ57を正方向へ揺動させて、バルブ本体61をバイパス通路35の開口部側のバルブシート59から離隔させる。これにより、ウェイストゲートバルブ37によってバイパス通路35の開口部を開いて、ガス導入口27から導入した排気ガスの一部をタービンインペラ25をバイパスさせて、タービンインペラ25側へ供給される排気ガスの流量を減少させることができる。
【0033】
また、バイパス通路35の開口部を開いた後に、コンプレッサインペラ13の出口側の圧力が設定圧未満になると、アクチュエータ47の駆動によりリンク部材45を逆方向(他方向)へ揺動させて、ステム41を逆方向へ回転させることにより、バルブ57を逆方向へ揺動させて、バルブ本体61をバイパス通路35の開口部側のバルブシート59に当接させる。これにより、ウェイストゲートバルブ37によってバイパス通路35の開口部を閉じて、ウェイストゲートバルブ37を元の状態に復帰させることができる。
【0034】
環状のスペーサ67は、バルブ軸63をスペーサ67に貫通させた状態で、バルブ軸63の軸方向における座金65と取付タング53との間に設けられている。そのため、座金65と取付タング53との間の接触面積(摩擦面積)が増加して、座金65と取付タング53との間の摩擦の頻度或いは摩擦力が高まる。その結果、バイパス通路35の開口部が開いた状態において、バルブ57の振動を十分に低減することができる。特に、スペーサ67がグラファイト系材料により構成されているため、スペーサ67自体の内部減衰作用も発揮させて、バイパス通路35の開口部が開いた状態でのバルブ57の振動をより十分に低減することができる
【0035】
また、座金65の裏面に環状のガード壁69がスペーサ67を囲むように形成され、このガード壁69の端面が取付タング53の表面に対向しているため、車両用過給機1の運転中にスペーサ67の一部が破損しても、スペーサ67の破片等がガード壁69の外側に流出することを抑えることができる。
【0036】
従って、本実施形態によれば、バイパス通路35の開口部を開いた状態におけるバルブ57の振動をより十分に低減できるため、チャタリング音を発生させないか若しくは極力小さくして、走行中における車両の静音性を高いレベルまで確保することができる。
【0037】
また、車両用過給機1の運転中にスペーサ67の一部が破損しても、スペーサ67の破片等がガード壁69の外側に流出することを抑えることができるため、触媒等の排気系の損傷を十分に防止することができる。
【0038】
本実施形態の変形例について図5(a)(b)及び図6(a)(b)を参照して説明する。
【0039】
図5(a)に示すように、本実施形態の変形例1に係るウェイストゲートバルブ37Aにあっては、スペーサ67の個数が複数であり、複数のスペーサ67が重なり合っている。これにより、座金65と取付タング53との間の接触面積をより増加して、座金65と取付タング53との間の摩擦の頻度或いは摩擦力をより高めることができる。
【0040】
図5(b)に示すように、本実施形態の変形例2に係るウェイストゲートバルブ37Bにあっては、座金65の裏面(図5(b)において下側面)に環状のガード壁69(図1(b)参照)が形成される代わりに、取付タング53の表面(図5(b)において上側面)に環状のガード壁71が座繰り加工によってスペーサ67を囲むように形成されている。なお、変形例2において、ガード壁71の高さとスペーサ67の厚み(高さ)は、スペーサ67が取付タング53あるいは座金65のいずれか一方に接触できるように(摩擦が得られるように)設定される。即ち、座金65の裏面においてスペーサ67及びガード壁71と対向する部分が単一の平面である場合、スペーサ67の厚みはガード壁71の高さ以上である。また、座金65の裏面におけるガード壁71の先端部に対向する部分に、当該先端部を挿入可能にする凹部(段部、溝部等)(図示せず)を形成してもよい。或いは、取付タング53の表面及び座金65の裏面のうちの少なくとも1つの面において、スペーサ67に対応する部分に、スペーサ67に向けて突出する凸部(段部)(図示せず)を形成してもよい。これらの場合(その組み合わせも含む)スペーサ67が座金65に接触できる厚さを有する限り、その値は任意である。
【0041】
図6(a)(b)に示すように、本実施形態の変形例3、4に係るウェイストゲートバルブ37C、37Dにあっては、バルブ軸63の軸方向における座金65と取付タング53との間に環状のスペーサ67(図1(b)参照)が設けられる代わりに、バルブ軸63の軸方向における取付タング53とバルブ本体61との間に環状のスペーサ73が設けられている。スペーサ67と同じく、スペーサ73にはバルブ軸63が貫通している。また、このスペーサ73はグラファイト系材料により構成されている。これにより、取付タング53とバルブ本体61との間の接触面積(摩擦面積)が増加して、取付タング53とバルブ本体61との間の摩擦の頻度或いは摩擦力が高まる。その結果、バイパス通路35の開口部が開いた状態でのバルブ57の振動を十分に低減することができる。
【0042】
図6(a)に示すように、本実施形態の変形例3に係るウェイストゲートバルブ37Cにあっては、座金65の裏面(図6(a)において下側面)に環状のガード壁69(図1(b)参照)が形成される代わりに、バルブ本体61の表面(図6(a)において上側面)に環状のガード壁75が座繰り加工によってスペーサ73を囲むように形成されており、このガード壁75の端面は取付タング53の裏面に対向している。ここで、ガード壁75の高さとスペーサ73の厚み(高さ)に関して、両者はスペーサ73が取付タング53あるいはバルブ本体61のいずれか一方に接触できるように(摩擦が得られるように)設定される。即ち、スペーサ73とガード壁75に対向する取付タング53の面が単一の平面である場合、スペーサ73の厚みはガード壁75の高さ以上である。また、取付タング53の裏面におけるガード壁75の先端部に対向する部分に、当該先端部を挿入可能にする凹部(段部、溝部等)(図示せず)を形成してもよい。或いは、取付タング53の裏面及びバルブ本体61の表面のうちの少なくとも1つの面において、スペーサ73に対応する部分に、スペーサ73に向けて突出する凸部(段部)(図示せず)を形成してもよい。これらの場合(その組み合わせも含む)、スペーサ73が取付タング53に接触できる厚さを有する限り、その値は任意である。
【0043】
図6(b)に示すように、本実施形態の変形例4に係るウェイストゲートバルブ37Dにあっては、座金65の裏面(図6(a)において下側面)に環状のガード壁69(図1(b)参照)が形成される代わりに、取付タング53の裏面(図6(b)において下側面)に環状のガード壁77が座繰り加工によってスペーサ73を囲むように形成されており、このガード壁77の端面はバルブ本体61の表面(図6(b)において上側面)に対向している。ここで、ガード壁77の高さとスペーサ73の厚み(高さ)に関して、両者はスペーサ73が取付タング53あるいはバルブ本体61のいずれか一方に接触できるように(摩擦が得られるように)設定される。即ち、スペーサ73とガード壁77に対向するバルブ本体61の面が単一の平面である場合、スペーサ73の厚みはガード壁77の高さ以上である。また、バルブ本体61の表面におけるガード壁77の先端部に対応する部分に、当該先端部を挿入可能にする凹部(段部、溝部等)(図示せず)を形成してもよい。或いは、取付タング53の裏面及びバルブ本体61の表面のうちの少なくとも1つの面において、スペーサ73に対応する部分に、スペーサ73に向けて突出する凸部(段部)(図示せず)を形成してもよい。これらの場合(その組み合わせも含む)、スペーサ73がバルブ本体61に接触できる厚さを有する限り、その値は任意である。
【0044】
なお、本実施形態に係るウェイストゲートバルブ37に代えて、変形例1〜4に係るウェイストゲートバルブ37A〜37Dを用いた場合にも、前述と同様の作用及び効果を奏する。また、本実施形態に係るウェイストゲートバルブ37及びその変形例1、2に係るウェイストゲートバルブ37A、37Bに、変形例3に係るウェイストゲートバルブ37Cにおけるスペーサ73を追加したり、変形例3に係るウェイストゲートバルブ37Cにおけるガード壁75又は変形例4に係るウェイストゲートバルブ37Dにおけるガード壁77を追加したりしてもよい。
【0045】
本発明は、前述の実施形態及びその変形例の説明に限られるものではなく、例えば、タービンハウジング23の適宜位置にバイパス通路35を開閉するウェイストゲートバルブ37が設けられる代わりに、タービンハウジング23のガス導入口27に連通した状態で接続した排気マニホールド(図示省略)の適宜位置に、排気マニホールドに形成したバイパス通路(図示省略)の開口部を開閉するウェイストゲートバルブ(図示省略)が設けられる等、その他、適宜の変更を行うことにより、種々の態様で実施可能である。
【0046】
本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されない。即ち、本願の流量可変バルブ機構は、前述のウェイストゲートバルブ37等に限定されるものでなく、例えば、実開昭61ー33923号公報及び特開2001−263078号公報等に示すように、タービンハウジング(図示省略)内に形成された複数のタービンスクロール流路(図示省略)のうちのいずれかのタービンスクロール流路に対して排気ガスの供給状態と供給停止状態とを切り替える切替バルブ機構(図示省略)にも適用可能である。また、本願の流量可変バルブ機構は、例えば、特開2010−209688号公報、特開2011−106358号公報等に示すように、複数段のタービンハウジング(図示省略)のうちいずれかの段のタービンハウジングに対して排気ガスの供給状態と供給停止状態とを切り替える切替バルブ機構(図示省略)にも適用可能である。従って、本願の流量可変バルブ機構は、当該流量可変バルブ機構を用いる装置に応じて、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流量を増加させるために用いることも可能である。また、本願の流量可変バルブ機構のアクチュエータは、ダイヤフラムを用いた前述のアクチュエータ47に限定されず、モーターを用いた電動アクチュエータや油圧駆動のアクチュエータ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、ガス流路の開口部が開いた状態でのバルブの振動を十分に低減できるため、チャタリング音の発生の防止或いはチャタリング音の低減が可能である。従って、走行中の車両の静音性を高めることが可能な流量可変バルブ機構及び過給機を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6