特許第5962773号(P5962773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5962773プラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962773
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】プラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   H05H1/46 L
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-554679(P2014-554679)
(86)(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公表番号】特表2015-512117(P2015-512117A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】KR2013012200
(87)【国際公開番号】WO2014104753
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2014年7月2日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0156816
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0163632
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508143672
【氏名又は名称】ニュー パワー プラズマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, サン−ドン
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−516805(JP,A)
【文献】 特開2004−342612(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0010568(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00 − 1/54
C23C 14/00 −16/56
C23F 1/00 − 4/04
H01J 37/32
H01L 21/203 −21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/363 −21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスフォーマの1次巻線を有するマグネチックコアと、
前記マグネチックコアに巻きつけられたトランスフォーマの1次巻線に交流電力を供給するための交流電源供給源と、
前記マグネチックコアが取り付けられ、前記マグネチックコアを介して電圧が直接誘起されて誘導起電力が誘導される複数のプラズマチャンバー本体と、
前記プラズマチャンバー本体と絶縁領域を介して連結され、前記プラズマチャンバー本体から間接的に誘導起電力が伝達される複数のフローティングチャンバーと、
を含んで、
前記プラズマチャンバー本体内部と前記フローティングチャンバー内部の放電経路は互いに連結され、ループ状の放電経路を形成し、
前記フローティングチャンバーをグラウンドからもプラズマチャンバー本体からもフローティング状態にすることによって、前記交流電源供給源から供給される交流電力の位相変化に応じて、フローティング状態でない場合より大きな電圧差が前記プラズマチャンバー本体と前記フローティングチャンバーの間に発生し、プラズマ点火が容易になること、および
プラズマを工程チャンバーに供給することを特徴とするプラズマ反応器。
【請求項2】
前記プラズマ反応器は、ループ状の放電経路上に対称的構造をなすように4個以上のマグネチックコアが取り付けられる複数のプラズマチャンバー本体を有することを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項3】
前記プラズマチャンバー本体及びフローティングチャンバーは同一材質で構成されたことを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項4】
前記同一材質は、アルミニウムであることを特徴とする、請求項3に記載のプラズマ反応器。
【請求項5】
前記絶縁領域は誘電体で形成され、前記絶縁領域は、真空絶縁のためのゴムを含むことを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項6】
前記誘電体は、セラミックであることを特徴とする、請求項5に記載のプラズマ反応器。
【請求項7】
前記絶縁領域の幅は、前記交流電源供給源から供給される交流電力の電圧レベルによって決定されることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項8】
前記フローティングチャンバーは、
工程チャンバーにプラズマを供給するプラズマ工程後に、帯電された電荷を放電させるための抵抗と、
プラズマ工程後に、前記抵抗と前記フローティングチャンバーとを接続させるためのスイッチング回路と、を備えることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項9】
前記絶縁領域を両端に備える前記フローティングチャンバーが、プラズマ反応器のガス注入口とガス排出口を含んでそれぞれさらに設けられることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項10】
前記絶縁領域を両端に備える前記フローティングチャンバーが、前記マグネチックコアの取り付けられる前記プラズマチャンバー本体と交差する位置に設けられることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項11】
前記絶縁領域を両端に備える前記フローティングチャンバーが、プラズマ反応器のガス注入口を含んでさらに設けられることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項12】
前記絶縁領域を両端に備える前記フローティングチャンバーが、プラズマ反応器のガス排出口を含んでさらに設けられることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項13】
前記複数のフローティングチャンバーのいずれか一つは接地されていることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ反応器。
【請求項14】
前記ガス注入口を含んで設けられる前記フローティングチャンバーはグラウンドからもプラズマチャンバー本体からもフローティング状態であり、前記ガス排出口を含んで設けられる前記フローティングチャンバーは接地されていることを特徴とする、請求項9に記載のプラズマ反応器。
【請求項15】
ガス注入口を通してガスが供給され、マグネチックコアに巻きつけられた1次巻線に交流電源供給源から交流電力が供給される段階と、
前記マグネチックコアの取り付けられた複数のプラズマチャンバー本体に誘導起電力が直接誘導される段階と、
前記プラズマチャンバー本体で誘導された誘導起電力が、前記プラズマチャンバー本体と絶縁領域を介して連結された複数のフローティングチャンバーに伝達されて、反応器本体内でプラズマ放電が誘導される段階と、
放電されたプラズマがガス排出口を通して工程チャンバーに供給される段階と、
前記フローティングチャンバーが、プラズマ放電が誘導された後に、帯電された電荷を放電するために高抵抗に接続される段階と、を含み
前記プラズマチャンバー本体内部と前記フローティングチャンバー内部の放電経路は互いに連結され、ループ状の放電経路を形成し、
前記フローティングチャンバーをグラウンドからもプラズマチャンバー本体からもフローティング状態にすることによって、前記交流電源供給源から供給される交流電力の位相変化に応じて、フローティング状態でない場合より大きな電圧差が前記プラズマチャンバー本体と前記フローティングチャンバー間に発生し、プラズマ点火が容易になることを特徴とする、プラズマ反応器を用いたプラズマ点火方法。
【請求項16】
前記高抵抗に接続される段階において、前記フローティングチャンバーはスイッチング回路を介して高抵抗に接続されることを特徴とする、請求項15に記載のプラズマ反応器を用いたプラズマ点火方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、プラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法に関し、特に、TCP、ICP結合プラズマソース方式(誘導結合プラズマソース)において、既存に比べて相対的に低電圧を供給する場合にもプラズマ放電が可能となるようにし、既存と同一の電圧を供給する場合には既存方法に比べてプラズマ放電条件が緩和されるようにするとともに、プラズマ放電開始以降のプラズマ維持又は持続にも有利なプラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法に関する。
【背景技術】
【0002】

プラズマとは、超高温で負電荷を帯びた電子と正電荷を帯びたイオンとに分離された気体状態を指す。この状態では、電荷分離度がごく高いとともに、全体的に負と正の電荷数が同一であるため、中性を帯びることとなる。
【0003】
一般に、物質の状態は、固体・液体・気体の3種類に分類される。プラズマは通常、第4の物質状態と呼ばれる。固体にエネルギーを加えると液体、気体となり、気体状態に高いエネルギーを再び加えて数万℃になると、気体は電子と原子核とに分離されてプラズマ状態となるからである。
【0004】
プラズマ放電は、イオン、自由ラジカル、原子、分子を含む活性ガスを発生するためのガス励起に用いられている。活性ガスは、多様な分野で広く使用されており、代表的には、半導体製造工程、例えば、エッチング、蒸着、洗浄、アッシングなどに多様に使用されている。
【0005】
近年、半導体装置の製造のためのウエハーやLCDガラス基板は大型化しつつあり、それに伴って、プラズマイオンエネルギーの制御能力が高いとともに、大面積の処理能力を持つ拡張性の高いプラズマソースが要求されている。
【0006】
プラズマを用いた半導体製造工程において遠隔プラズマの使用は非常に有用であると知られている。例えば、工程チャンバーの洗浄やフォトレジストストリップのためのアッシング工程に有用である。
【0007】
遠隔プラズマ反応器(又は、遠隔プラズマ発生器と称する。)は、変圧器結合プラズマソース(transformer coupled plasma source:TCPS)を使用したものと、誘導結合プラズマソース(inductively coupled plasma source:ICPS)を使用したものがある。変圧器結合プラズマソース(TCPS)を使用した遠隔プラズマ反応器は、トロイダル構造の反応器本体に、1次巻線コイルを有するマグネチックコアが取り付けられた構造を有する。
【0008】
以下、添付の図面を参照して、従来技術に係る変圧器結合プラズマソース遠隔プラズマ反応器について説明する。
【0009】
図1は、プラズマ処理処置の構成を示す図である。
【0010】
図1を参照すると、プラズマ処理処置は、遠隔プラズマ反応器と工程チャンバー5とで構成されている。遠隔プラズマ反応器は、トロイダル状のプラズマチャンバー4と、プラズマチャンバー4に取り付けられたマグネチックコア3と、マグネチックコア3に巻きつけられた1次巻線2に交流電力を供給するための交流電源供給源1とで構成されている。遠隔プラズマ反応器は、プラズマチャンバー4の内部にガスが流入し、電源供給源1から供給された交流電力がトランスフォーマの1次巻線2に供給されて1次巻線が駆動すると、プラズマチャンバー4の内部に誘導起電力が伝達され、プラズマチャンバー4の内部にプラズマ放電のための反応器放電ループ6が誘導され、これでプラズマが発生する。プラズマチャンバー4はアダプター9を介して工程チャンバー5に連結され、プラズマチャンバー4に発生したプラズマは工程チャンバー5に供給され、工程チャンバー5内では被処理基板が処理される。
【0011】
図2及び図3は、従来の遠隔プラズマ反応器を示す図である。
【0012】
図2及び図3を参照すると、遠隔プラズマ反応器は、マグネチックコア3に巻きつけられた1次巻線2に、交流電源供給源1から交流電力が供給される。この時、プラズマチャンバー4は、内部に形成される反応器放電ループ6によってプラズマチャンバー4内のガスが放電されてプラズマ状態となる。プラズマチャンバー4は接地8に接続することができる。プラズマチャンバー4は環状構造になっているため、プラズマチャンバー4で交流電流が全部消費されることがあり、これを防止するために絶縁体7が設けられている。絶縁体7は、セラミックなどの誘電体物質で構成される。交流電源供給源1は、設定された周波数(Hz)に応じて反転された位相の交流電流を供給する。
【0013】
このような従来の遠隔プラズマ反応器は、高電圧の交流電力を印加してプラズマを点火した。しかしながら、例えば、プラズマチャンバー4の内部が8Torrである低気圧において500Vの高電圧を印加した場合、約1000回あたりに2〜3回の点火失敗率を示した。点火失敗が発生すると、再点火のための作業が必要となり、工程進行が遅れることはもとより、再点火のために高い費用がかかる。また、アーク放電によってプラズマチャンバー4の内部が損傷することもあった。しかも、プラズマ反応器の絶縁体7がプラズマチャンバー4の内部で発生するプラズマによって容易く損傷又は破損してしまい、プラズマが発生しないこともあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】

本発明の目的は、変圧器結合プラズマソース方式や誘導結合プラズマソース方式において従来に比べて相対的に低電圧を供給する場合にもプラズマ放電が可能であるプラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、従来と同一の電圧を供給する場合、従来に比べてプラズマ放電を容易に発生させ、且つ発生したプラズマを容易に維持することができるプラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、従来に比べて相対的に低電圧を供給してプラズマを発生させる場合にもプラズマ放電が可能となるため、安価の製品を供給でき、且つアーク放電によるプラズマ反応器の損傷を最小化できるプラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、従来と同一の電圧を供給する場合、ガス流量が少なく、圧力が低い状態でも、プラズマ放電のための点火を容易にさせることができるプラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法を提供することにある。
【0018】
本発明の更に他の目的は、従来と同一の電圧を供給する場合、低温においも、プラズマ放電のための点火を容易にさせることができるプラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】

上記の技術的課題を達成するための本発明の一面は、プラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法に関する。本発明のプラズマ反応器は、1次巻線を有する複数個のマグネチックコアと、前記1次巻線に交流電力を供給するための交流電源供給源と、前記マグネチックコアが取り付けられ、電圧が直接誘導されて誘導起電力が誘導される複数個のプラズマチャンバー本体と、前記プラズマチャンバー本体と絶縁領域を介して連結され、前記プラズマチャンバー本体から間接的に誘導起電力が伝達される複数個のフローティングチャンバーと、を備え、前記プラズマチャンバー本体と前記フローティングチャンバーは、内部にプラズマ放電のための一つの放電経路を有し、前記交流電源供給源から供給される交流電力の位相変化に応じて前記プラズマチャンバー本体と前記フローティングチャンバー間に発生する電圧差によってプラズマ点火がなされる。
【0020】
そして、前記プラズマチャンバー本体と前記フローティングチャンバーは一字状になっており、内部に一つの放電経路を有する。
【0021】
また、前記プラズマ反応器は、前記マグネチックコアがそれぞれ取り付けられる複数個のプラズマチャンバー本体を有する。
【0022】
そして、前記プラズマチャンバー本体とフローティングチャンバーはループ状になっており、内部にループ状の放電経路を有する。
【0023】
また、前記プラズマ反応器は、ループ状の放電経路上に対称的構造をなすように4個以上のマグネチックコアが取り付けられる複数個のプラズマチャンバー本体を有する。
【0024】
そして、前記プラズマチャンバー本体及びフローティングチャンバーは同一材質で構成される。
【0025】
また、前記同一材質はアルミニウムである。
【0026】
そして、前記同一材質は導体又は誘電体のいずれか一つである。
【0027】
また、前記誘電体はセラミックである。
【0028】
そして、前記プラズマチャンバー本体及び前記フローティングチャンバーは誘電体で形成され、前記プラズマチャンバー本体又は前記フローティングチャンバーの外周面に導体層が形成される。
【0029】
また、前記絶縁領域は誘電体で形成され、前記絶縁領域は真空絶縁のためのゴムを含む。
【0030】
そして、前記誘電体はセラミックである。
【0031】
また、前記絶縁領域の幅は、前記交流電源供給源から供給される交流電力の電圧レベルによって決定される。
【0032】
そして、前記フローティングチャンバーは、工程チャンバーにプラズマを供給するプラズマ工程後に、帯電された電荷を放電させるための抵抗と、プラズマ工程後に、前記抵抗と前記フローティングチャンバーとを接続させるためのスイッチング回路と、を備える。
【0033】
本発明のプラズマ反応器は、トランスフォーマの1次巻線を有するマグネチックコアと、前記マグネチックコアに巻きつけられたトランスフォーマの1次巻線に交流電力を供給するための交流電源供給源と、前記マグネチックコアが取り付けられ、前記マグネチックコアを介して直接電圧が誘起されて誘導起電力が誘導されるプラズマチャンバー本体と、前記プラズマチャンバー本体と絶縁領域を介して連結され、前記プラズマチャンバー本体から間接的に誘導起電力が伝達される複数個のフローティングチャンバーと、を備え、前記複数個のフローティングチャンバーは絶縁領域を介して連結され、前記交流電源供給源から供給される交流電力の位相変化に応じて前記プラズマチャンバー本体と前記フローティングチャンバー間に発生する電圧差によってプラズマ点火が発生し、プラズマを工程チャンバーに供給する。
【0034】
そして、前記プラズマチャンバー本体と前記フローティングチャンバーは一字状になっており、内部に一つの放電経路を有する。
【0035】
また、前記プラズマ反応器は、前記マグネチックコアがそれぞれ取り付けられる複数個のプラズマチャンバー本体を有する。
【0036】
そして、前記プラズマチャンバー本体とフローティングチャンバーはループ状になっており、内部にループ状の放電経路を有する。
【0037】
また、前記プラズマ反応器は、ループ状の放電経路上に対称的構造をなすように4個以上のマグネチックコアが取り付けられる複数個のプラズマチャンバー本体を有する。
【0038】
そして、前記プラズマチャンバー本体及びフローティングチャンバーは同一材質で構成される。
【0039】
また、前記同一材質はアルミニウムである。
【0040】
そして、前記同一材質は導体又は誘電体のいずれか一つである。
【0041】
また、前記誘電体はセラミックである。
【0042】
そして、前記プラズマチャンバー本体及び前記フローティングチャンバーは誘電体で形成され、前記プラズマチャンバー本体又は前記フローティングチャンバーの外周面に導体層が形成される。
【0043】
また、前記絶縁領域は誘電体で形成され、前記絶縁領域は真空絶縁のためのゴムを含む。
【0044】
そして、前記誘電体はセラミックである。
【0045】
また、前記絶縁領域の幅は、前記交流電源供給源から供給される交流電力の電圧レベルによって決定される。
【0046】
そして、前記フローティングチャンバーは、工程チャンバーにプラズマを供給するプラズマ工程後に、帯電された電荷を放電させるための抵抗と、プラズマ工程後に、前記抵抗と前記フローティングチャンバーとを接続するためのスイッチング回路と、を備える。
【0047】
また、前記絶縁領域は、プラズマ反応器のガス注入口とガス排出口にそれぞれさらに設けられる。
【0048】
そして、前記絶縁領域は、前記マグネチックコアの取り付けられる前記プラズマチャンバー本体と交差する位置に設けられる。
【0049】
また、前記絶縁領域は、プラズマ反応器のガス注入口にさらに設けられる。
【0050】
そして、前記絶縁領域は、プラズマ反応器のガス排出口にさらに設けられる。
【0051】
また、前記複数個のフローティングチャンバーのいずれか一つは接地に接続される。
【0052】
そして、前記プラズマ反応器は、ガス注入口が設けられているフローティングチャンバーはフローティング状態であり、ガス排出口が設けられているフローティングチャンバーは接地に接続される。
【0053】
本発明のプラズマ反応器を用いたプラズマ点火方法は、ガス注入口を通してガスが供給され、マグネチックコアに巻きつけられた1次巻線に交流電源供給源から交流電力が供給される段階と、前記マグネチックコアの取り付けられたプラズマチャンバー本体に誘導起電力が直接誘導される段階と、前記プラズマチャンバー本体で誘導された誘導起電力が複数個のフローティングチャンバーに伝達されて、反応器本体内でプラズマ放電が誘導される段階と、放電されたプラズマがガス排出口を通して工程チャンバーに供給される段階と、前記フローティングチャンバーが、プラズマ放電が誘導された後に、帯電された電荷を放電するために高抵抗に接続される段階と、を含む。
【0054】
そして、前記高抵抗に接続される段階において、前記フローティングチャンバーはスイッチング回路を介して高抵抗に接続される。
【発明の効果】
【0055】

本発明のプラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法は、下記の効果を有する。
【0056】
第一、従来に比べて相対的に低電圧を供給してプラズマを発生させる場合にもプラズマ放電が可能となるため、安価の製品を供給し、且つ、アーク放電によるプラズマ反応器の損傷を最小化する。
【0057】
第二、従来と同一の電圧を供給する場合、ガスフロー流量圧力が低い状態でもプラズマ放電のための点火を容易にさせる。
【0058】
第三、従来と同一の電圧を供給する場合、低温でもプラズマ放電のための点火を容易にさせる。
【図面の簡単な説明】
【0059】

図1】従来技術に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図2】従来技術に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器の点火を説明するための図である。
図3】従来技術に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器の点火を説明するための図である。
図4】本発明の第1実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図5】本発明の第2実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図6】本発明の第3実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図7】本発明の第4実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図8】本発明の第5実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図9】本発明の第6実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図10】本発明の第7実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図11】本発明の第8実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図12】本発明の第9実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図13】本発明の第10実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図14】本発明の第11実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図15】本発明の第12実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図16】本発明の第13実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図17】本発明の第14実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図18】本発明の第15実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図19】本発明の第16実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図20】本発明の第17実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
図21】本発明の第18実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】

本発明の充分な理解を助けるために、本発明の好適な実施例を、添付図面を参照して説明する。本発明の実施例は様々な形態に変形することもでき、本発明の範囲を、以下に詳述される実施例に限定されるものと解釈してはならない。これらの実施例は、当該分野における平均的な知識を有する者にとって本発明がより完全に理解できるように提供する。したがって、図面中の要素の形状などは、より明確な説明を強調するために誇張して表現することもある。各図において同一の構成は同一の参照符号で表される場合があることに留意されたい。本発明の要旨を曖昧にさせると判断される公知機能及び構成についての詳細な記述は省略する。
【0061】
図4は、本発明の好適な第1実施例に係るプラズマ反応器を示す図である。
【0062】
図4を参照すると、プラズマ反応器10は、プラズマチャンバー本体14a、第1及び第2フローティングチャンバー14b,14c、マグネチックコア13、及び交流電源11で構成されている。本発明では、プラズマ反応器14を、変圧器結合プラズマ(transformer coupled plasma)発生方式の遠隔プラズマ発生器とする。
【0063】
プラズマ反応器10は、内部にプラズマ放電のための放電空間を有している。プラズマ反応器10はガス注入口16aとガス排出口16bを有している。ガス注入口16aはプラズマ放電のための工程ガスを供給するガス供給源に連結され、ガス供給源から供給された工程ガスは、ガス注入口16bを通して反応器本体14内に流入する。ガス排出口16bは工程チャンバー(図示せず)に連結され、プラズマ反応器10内で発生したプラズマは、ガス排出口16bから工程チャンバー(図示せず)に供給される。
【0064】
プラズマ反応器10は、ループ状の放電経路が形成され、プラズマチャンバー本体14a、第1及び第2フローティングチャンバー14b,14c、及び絶縁領域19で構成されている。プラズマチャンバー本体14aにはマグネチックコア13が取り付けられて電圧が直接誘起され、これによって誘導起電力が誘導される。第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cは、プラズマチャンバー本体14aを中心に絶縁領域19を介して連結されている。第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cは、プラズマチャンバー本体14aで誘導された誘導起電力が間接的に伝達されるようにフローティングされている。絶縁領域19は、プラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cとの間に挟持されており、プラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cとをそれぞれ絶縁させる。絶縁領域19の幅は、交流電源供給源11から供給される交流電力の電圧レベルに応じて調節することができる。交流電力の電圧が高電圧の場合は、低電圧の場合に比べて絶縁領域19の幅をより広くすればよい。言い換えると、絶縁領域9を用いてプラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cとの間隔を調節することができる。例えば、交流電源供給源11から供給される交流電力の電圧が高電圧である場合、低電圧が供給される場合に比べてプラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cとの間隔がより広くなるように絶縁領域19を形成すればよい。
【0065】
プラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cは、アルミニウムのような導体又はセラミックのような誘電体で形成することができる。プラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cをアルミニウムのような導体で形成する場合、絶縁領域19は誘電体で形成することができ、特に、誘電体の中でもセラミックで形成すればよい。絶縁領域19は、プラズマ反応器10の真空絶縁のためのゴムを含むことができる。プラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cを誘電体で作る場合、外周面に導体層を形成することができる。プラズマ反応器10はトロイダル状又は線形に形成する。
【0066】
マグネチックコア13は、フェライト物質で作られ、プラズマ反応器10のプラズマチャンバー本体14aに取り付けられる。マグネチックコア13には、トランスフォーマの1次巻線である1次巻線12が巻きつけられる。交流電源供給源11は、マグネチックコア13に巻きつけられた1次巻線12に交流電力を供給する。交流電源供給源11は、設定された周波数Hzに応じて反転された位相の交流電力を、1次巻線12に供給する。交流電源供給源11は、インピーダンス整合のための調節回路を備えていてもよく、別個のインピーダンス整合器を介して電力を1次巻線12に供給してもよい。マグネチックコア13は、1次巻線12がそれぞれ巻きつけられて、別々の交流電源供給源11から交流電力が供給されてもよく、一つの1次巻線12が巻きつけられて、一つの交流電源供給源11から交流電力が供給されてもよい。
【0067】
プラズマ反応器10のガス注入口16aからガスが流入し、交流電源供給源11から交流電力が供給されて1次巻線12が駆動すると、プラズマ反応器10内に誘導される反応器放電ループ15によってプラズマ放電空間でプラズマが発生する。プラズマ反応器10で発生したプラズマは、基板を処理するための工程チャンバー(図示せず)に供給される。この時、マグネチックコア13の取り付けられているプラズマチャンバー本体14aには誘導起電力が直接誘導される。第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cは、絶縁領域19によってプラズマチャンバー本体14aと絶縁されており、絶縁領域19を介して、プラズマチャンバー本体14aで直接誘導された誘導起電力が間接的に伝達される。1次巻線12に交流電力が供給されると、プラズマチャンバー本体14aの一側には+が帯電し、他側は−が帯電する現象が、交流電力の周波数に応じて交互に発生する。絶縁領域19は、マグネチックコア13と隣接して構成されることによって、プラズマチャンバー本体14aと第1及び2フローティングチャンバー14b,14cの間に、大きな電圧差が発生する。この時、第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cは、図5に示すように、絶縁領域19の存在により、プラズマチャンバー本体14で誘起された電圧に直接反応せず、以前の+又は−状態を維持しようとする。
【0068】
ここで、交流電源供給源11は、設定された周波数に応じて反転された位相の交流電力を供給するため、プラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cとの間に電圧差が発生する。したがって、プラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cとの間で発生した電圧差を極大化することによって、低電圧においてもプラズマ放電を行うことが可能になる。
【0069】
例えば、プラズマチャンバー本体14aに500V高電圧を印加する場合、独立した第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cは互いに逆位相を有するようになる。したがって、供給電圧を1/2に抑える場合、プラズマ点火時に同一又は類似の効果が得られる一方、アーク放電によってプラズマチャンバー本体14aや第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cに生じうる損傷は低減させることができる。また、供給電圧を500Vに維持する場合、約950Vの電圧を印加したのと同じ効果を奏するため、プラズマ放電が約2倍も円滑になるという効果が得られる。
【0070】
第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cの全体又は一部に、フローティングされた領域を形成することができる。また、第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cをスイッチング回路22を介して高抵抗20に接続させることができる。マグネチックコア13に巻きつけられた1次巻線12が交流電源供給源11から交流電力を受けて駆動すると、マグネチックコア13の取り付けられているプラズマチャンバー本体14aに誘導起電力が直接誘導される。プラズマチャンバー本体14aに誘導された誘導起電力は第1及び第2プラズマチャンバー14b,14cに伝達され、これによってプラズマ反応器10内でプラズマ放電がなされる。発生したプラズマは工程チャンバーに供給される。ここで、第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cは、プラズマを工程チャンバーに供給するプラズマ工程(process)の後、帯電された電荷を放電させるためにスイッチング回路22を介して高抵抗20に接続する。本発明の実施例に含まれたフローティングチャンバーはいずれも、スイッチング回路22を介して高抵抗20に接続することができ、以下の実施例ではその詳細な説明を省略する。
【0071】
図5は、本発明の第2実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0072】
図5を参照すると、プラズマ反応器10aは、マグネチックコア13が取り付けられるプラズマチャンバー本体14aと、複数個のフローティングチャンバー14b,14c,14d,14e,14f,14gと、で構成される。複数個のフローティングチャンバー14b,14c,14d,14e,14f,14gは、絶縁領域19を介してプラズマチャンバー本体14a及びフローティングチャンバーと絶縁される。マグネチックコア13によってプラズマチャンバー本体14aに直接誘起された電圧は、第3乃至第6フローティングチャンバー14d,14e,14f,14gに間接的に伝達され、伝達された電圧は再び第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cに伝達される。第1乃至第6フローティングチャンバー14b,14c,14d,14e,14f,14gはそれぞれスイッチング回路22によって高抵抗20に接続する。
【0073】
図6は、本発明の第3実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図であり、図7は、本発明の第4実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図であり、図8は、本発明の第5実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0074】
図6を参照すると、プラズマ反応器10bはループ状に構成されるが、プラズマ反応器10bのガス注入口16aに絶縁体19aが設けられている。言い換えると、複数個の絶縁領域19はプラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cとの間に設けられており、ガス注入口16aには絶縁体19aが設けられてガス注入口16aを絶縁させている。
【0075】
図7を参照すると、プラズマ反応器10cは、ガス排出口16bに絶縁体19aが設けられている。言い換えると、複数個の絶縁領域19はプラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cとの間に設けられており、ガス排出口16bには絶縁体19aが設けられてガス排出口16bを絶縁させている。
【0076】
図8を参照すると、プラズマ反応器10dは、ガス注入口16a及びガス排出口16bに絶縁体19aが設けられている。言い換えると、複数個の絶縁領域19はプラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cとの間に設けられており、ガス注入口16a及びガス排出口16bにはそれぞれ絶縁体19aが設けられてガス注入口16aとガス排出口16bを絶縁させている。
【0077】
図9は、本発明の第6実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0078】
図9を参照すると、プラズマ反応器10eは、複数個の絶縁領域19が反応器本体14において対称的に設けられて、プラズマチャンバー本体14aと複数個のフローティングチャンバーを分離する。マグネチックコア13の取り付けられたプラズマチャンバー本体14aと第1及び第2フローティングチャンバー14b,14cとが、及びプラズマチャンバー本体14aと第3及び第5フローティングチャンバー14d,14fとが、絶縁領域19を介して連結されている。また、プラズマチャンバー本体14aと交差する位置に設けられた第6フローティングチャンバー14gは、絶縁領域19を介して第2及び第5フローティングチャンバー14c,14fと連結されており、第4フローティングチャンバー14eは、絶縁領域19を介して第1及び第3フローティングチャンバー14b,14dと連結されている。したがって、第1乃至第6フローティングチャンバー14b,14c,14d,14e,14f,14gは絶縁領域19によって絶縁される。
【0079】
図10は、本発明の第7実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0080】
図10を参照すると、プラズマ反応器10fは、プラズマチャンバー本体14aと第1乃至第6フローティングチャンバー14b,14c,14d,14e,14f,14gが誘電体で構成されてもよい。プラズマチャンバー本体14aと第1乃至第6フローティングチャンバー14b,14c,14d,14e,14f,14gには導体層16を設けることができる。ここでは、プラズマチャンバー本体14aの外周面に導体層16が設けられた例を示している。導体層16を備えるプラズマ反応器は、上述した如何なる実施例にも同様に適用することができる。
【0081】
図11は、本発明の第8実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図であり、図12は、本発明の第9実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0082】
図11を参照すると、プラズマ反応器30は、ガス注入口36a及びガス排出口36bを有しており、プラズマチャンバー本体34aと第1及び第2フローティングチャンバー34b,34cは一字状(線形)に設けられている。プラズマチャンバー本体34aを中心に第1及び第2フローティングチャンバー34b,34cは絶縁領域19を介してプラズマチャンバー本体34aと絶縁される。マグネチックコア13の取り付けられたプラズマチャンバー本体34aは、電圧が直接誘導され、第1及び第2フローティングチャンバー34b,34cは、絶縁領域19を介して間接的に電圧が伝達される。
【0083】
図12を参照すると、プラズマ反応器30aは、複数の絶縁領域19を介してプラズマチャンバー本体34aと第1乃至第4フローティングチャンバー34b,34c,34d,34eが絶縁されている。
【0084】
図13は、本発明の第10実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図であり、図14は、本発明の第11実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図であり、図15は、本発明の第12実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0085】
図13乃至図15では、プラズマ反応器40,40a,40bにそれぞれ複数個が取り付けられるマグネチックコア13に巻きつけられる1次巻線12が、直列、並列、及び直・並列混合の形態でそれぞれ接続されている。
【0086】
図13を参照すると、プラズマ反応器40は、ガス注入口46a及びガス排出口46bを有する線形の反応器本体44を備えている。プラズマ反応器40は、線形に形成され、内部に一つの放電経路を有する。プラズマ反応器40には複数個のマグネチックコア13が設けられている。プラズマ反応器40は、マグネチックコア13が取り付けられるプラズマチャンバー本体44aと、複数個のフローティングチャンバー44b,44cと、を備えている。プラズマチャンバー本体44aは複数個のフローティングチャンバー44b,44cと絶縁領域19を介して連結される。プラズマチャンバー本体44aと第1及び第2フローティングチャンバー44b,44cは交互に配列されてプラズマ反応器40を構成する。ここで、複数個のマグネチックコア13には一つの1次巻線12がそれぞれ巻きついて連結され、1次巻線12には一つの交流電源供給源11から交流電力が供給されるようになっている。
【0087】
図14を参照すると、プラズマ反応器40aは、図13のプラズマ反応器40と同じ構成を有しており、ただし、複数個のマグネチックコア13にそれぞれ1次巻線12が巻線され、それぞれの1次巻線12は別々の交流電源供給源11から交流電力が供給されるようになっている点が異なる。各交流電源供給源11は、同一の周波数の交流電力を供給してもよく、互いに異なる周波数の交流電力を供給してもよい。
【0088】
図15を参照すると、プラズマ反応器40bは、図13のプラズマ反応器40と同じ構成を有しており、ただし、複数個のマグネチックコア13は一つの1次巻線12が一度に巻きつけられ、1次巻線12は一つの交流電源供給源11から交流電力が供給されるようになっている点が異なる。その他、様々な方式で複数個のマグネチックコア13に1次巻線12を巻きつけてもよい。
【0089】
図16は、本発明の第13実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0090】
図16を参照すると、プラズマ反応器50は、ガス注入口56a及びガス排出口56bを有しており、内部にループ状の放電経路を有する四角形の反応器本体54を備えている。プラズマ反応器50には複数個のマグネチックコア13が取り付けられており、複数個のマグネチックコア13は互いに、ループ状の放電経路上で向かい合って配置されている。マグネチックコア13が取り付けられるプラズマチャンバー本体54aは、誘導起電力が直接誘導される領域であり、プラズマチャンバー本体54aと絶縁領域19を介して連結される第1乃至第4フローティングチャンバー54b,54c,54d,54eは、プラズマチャンバー本体54aから間接的に誘導起電力が誘導される領域である。
【0091】
図17は、本発明の第14実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0092】
図17を参照すると、プラズマ反応器50aは、図16に示したプラズマ反応器50と同一に構成されており、内部にループ状の放電経路を有する四角形のプラズマ反応器50aを備えている。ただし、複数個のマグネチックコア13は、ループ状の放電経路上で対称的な位置に取り付けられている。例えば、4個のマグネチックコア13を、四角形のプラズマ反応器50aの各辺をなすプラズマ反応器50aの各部分に対称に取り付けることができる。ここで、プラズマ反応器50aの各辺にはそれぞれ一つ以上のマグネチックコア13を取り付けることができる。マグネチックコア13の取り付けられたプラズマチャンバー本体54aは、絶縁領域19を介して第1乃至第4フローティングチャンバー54b,54c,54d,54eと連結されている。
【0093】
図18は、本発明の第15実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0094】
図18を参照すると、プラズマ反応器60は、ガス注入口66a及びガス排出口66bを有しており、内部にループ状の放電経路を持つ円形のプラズマ反応器60を備えている。複数個のマグネチックコア13は、円形のプラズマ反応器60に沿って取り付けられている。マグネチックコア13の取り付けられたプラズマチャンバー本体64aは絶縁領域19を介して第1乃至第4フローティングチャンバー64b,64c,64d,64eと連結される。
【0095】
図17及び図18に示す反応器本体50a,60の形状は例示的なものであり、ループ状の放電経路を持つ様々な形状のプラズマ反応器に変形してもよい。
【0096】
図19は、本発明の第16実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0097】
図19を参照すると、プラズマ反応器70はループ状をしており、ガス注入口76a及びガス排出口76bは、一字状に第1及び第2フローティングチャンバー74b,74cの中央にそれぞれ配置されている。第1及び第2フローティングチャンバー74b,74cは絶縁領域19を介してプラズマチャンバー本体74aと連結される。ここで、複数個のマグネチックコア13は、図16及び図17に示したように、放電経路上で互いに向かい合ったり対称する位置にプラズマ反応器70に取り付けることができる。
【0098】
図20は、本発明の第17実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0099】
図20を参照すると、プラズマ反応器70aは、図19に図示されたプラズマ反応器70と同じ構成を有するが、たたじ、ガス注入口76a及びガス排出口76bにそれぞれ絶縁体19aが更に設けられている。絶縁体19aは、ガス注入口76aとガス排出口76bをそれぞれ電気的に絶縁させる。図示してはいないが、絶縁体19aは、ガス注入口76aにのみ設けられてもよく、ガス排出口76bにのみ設けられてもよい。
【0100】
図21は、本発明の第18実施例に係るTCP/ICP結合プラズマ反応器を説明するための図である。
【0101】
図21を参照すると、プラズマ反応器70bは、図19に示したプラズマ反応器70と同じ構成を有するが、ただし、ガス排出口76bを有する第2フローティングチャンバー74cが接地に接続されている。したがって、ガス注入口76aを有する第1フローティングチャンバー74b、第3及び第4フローティングチャンバー74d,74eは、プラズマ工程の後にスイッチング回路22を介して高抵抗20に接続する。本発明では、図示してはいないが、複数個のフローティングチャンバーのいずれか一つは接地に接続されてもよい。
【0102】
以上説明した本発明のプラズマ反応器及びこれを用いたプラズマ点火方法の実施例は例示的なものに過ぎず、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとっては、それらの実施例から様々な変形及び均等な他の実施例が可能であるということは明らかであろう。
【0103】
したがって、本発明は、上記の詳細な説明で言及した形態に限定されるものでないことが理解され、よって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される技術的思想によって定めなければならない。また、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及びその範囲内における変形物、均等物及び代替物をいずれも含むものとして理解しなけはればならない。
【符号の説明】
【0104】

1,11 交流電源供給源
2,12 1次巻線
3,13 マグネチックコア
4 プラズマチャンバー
5 工程チャンバー
6 反応器放電ループ
7 絶縁体
8 接地
10,10a,10b,10c,10d,10e,10f,30,30a,40,40a,40b,50,50a,60,70,70a,70b プラズマ反応器
14a,34a,44a,54a,64a,74a プラズマチャンバー本体
14b,34b,44b,54b,66b,76b 第1フローティングチャンバー
14c,34c,44c,54c,66c,76c 第2フローティングチャンバー
14d,34d,54d,66d,76d 第3フローティングチャンバー
14e,34e,54e,66e,76e 第4フローティングチャンバー
14f,14g 第5,第6フローティングチャンバー
15 反応器放電ループ
16a,36a,46a,56a,66a,76a ガス注入口
16b,36b,46b,56b,66b,76b ガス排出口
19 絶縁領域
19a 絶縁体
20 高抵抗
22 スイッチング回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21