(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高強度鋼板からなるブランクに予加工を行うことにより中間成形体とし、該中間成形体に本加工を行うことにより、天板部と該天板部につながる2つの縦壁と該2つの縦壁にそれぞれつながる2つのフランジ部とにより構成されるハット断面を有するとともに長手方向の内部に側面視で山形に湾曲した形状の湾曲部を有する最終成形体であるプレス成形品を製造する方法であって、
前記中間成形体は、前記天板部に形成される中間天板部と、該中間天板部につながる2つの中間縦壁と、該2つの中間縦壁にそれぞれつながる2つの中間フランジ部とにより構成されるハット断面を有するとともに、前記2つの中間縦壁の高さは、前記湾曲部に成形される領域では前記最終成形体の前記2つの縦壁の高さより低く、かつ、前記長手方向について前記湾曲部に成形される領域を除く残余の2つの領域では、前記湾曲部に成形される領域から離れるに伴って徐々に低くなるとともに前記湾曲部に成形される領域から最も離れた位置では略零となること、および、
前記本加工は、下型パンチ及びブランクホルダーと、該下型パンチ及びブランクホルダーに対向して配置された上型ダイとの間であって前記下型パンチの上に、前記中間成形体を配置する第1ステップと、前記中間フランジ部と接するように前記ブランクホルダーを配置する第2ステップと、前記上型ダイを前記下型パンチおよび前記ブランクホルダーが配置されている方向へ動かすことにより前記中間成形体をブランクホルダーに達するまで成形して前記縦壁の一部を成形する第3ステップと、前記中間成形体を前記ブランクホルダーで前記上型ダイに押し付けて挟持する状態を維持しながら、前記上型ダイおよび前記ブランクホルダーを前記中間成形体に対して前記ブランクホルダーが配置された方向へ動かすことにより前記中間成形体の縦壁部分と縦壁につながるフランジ部分を成形する第4ステップとを経て、行われること
を特徴とするプレス成形品の製造方法。
前記第1ステップでは、さらに、前記最終成形体の天板部分の形状を有するとともに前記下型パンチ及び前記ブランクホルダーに対向して配置されるパッドを用いるとともに、前記第2ステップ、前記第3ステップおよび前記第4のステップでは、該パッドにより前記中間成形体の天板部を前記下型パンチに押し付けて挟持する請求項1に記載されたプレス成形品の製造方法。
前記下型パンチは、前記天板部および該天板部につながる2つの縦壁それぞれの形状を有し、前記ブランクホルダーは、前記フランジ部の形状を含む形状を有するとともに、前記上型ダイは、前記天板部、該天板部につながる2つの縦壁および該2つの縦壁それぞれにつながる2つのフランジ部それぞれの形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたプレス成形品の製造方法。
前記中間成形体に対して前記本加工を行う前に、前記湾曲部に成形される領域を除く残余の2つの領域のうちで前記最終成形体を構成しない範囲をトリミングすることを特徴とする請求1から請求項4までのいずれか1項に記載されたプレス成形品の製造方法。
前記湾曲部に成形される領域における前記中間縦壁の高さは、前記湾曲部における前記縦壁の高さの3〜97%であることを請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載されたプレス成形品の製造方法。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体(ボディシェル)の骨格構造は、金属板(以降の説明では鋼板を例にとる)をプレス成形して得られる骨格部材を多数組み合わせることにより、構成される。例えばサイドシル,クロスメンバー,フロントサイドメンバーリア等の骨格部材の多くは、天板部と、天板部の両側につながる2つの縦壁と、2つの縦壁それぞれにつながる2つのフランジ部とからなるハット断面を、長手方向の一部または全部に有する。これらの骨格部品は、自動車の衝突安全を確保するために重要な部品である。車体の軽量化のための高強度化が、衝突安全性能の向上とともに、これらの骨格部材に強く望まれる。
【0003】
図14は、ハット断面を有し長手方向への湾曲部を有するプレス部品であるフロントサイドメンバーリア4の説明図であり、
図14(a)は斜視図、
図14(b)は上面視図、
図14(c)は側面視図および
図14(d)は
図14(c)におけるSec−Aにおける断面図である。
【0004】
図14(a)〜
図14(d)に示すように、フロントサイドメンバーリア4は、天板部2と2つの側壁3,3と2つのフランジ部1,1とにより構成されるハット断面を有するとともに長手方向の内部の一部が側面視で湾曲した形状の湾曲部、すなわち、ハット断面形状を有するとともに、天板部を上側に配置して成形品を側面側から見たときに長手方向の内部に上下方向へ山形に湾曲した形状の湾曲部を有する。
【0005】
フロントサイドメンバーリア4を成形するには、特許文献1に開示されるように、素材鋼板(ブランク)に対して深絞りを行なうのが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、ハイテンと呼ばれる高強度鋼板は、低強度鋼板に比べて伸び性が低く、成形性が悪い。このため、ハイテンからなるブランクに絞り成形を行うと、割れが成形品の天板部2および縦壁部3に発生する。また、ハイテンからなるブランクに絞り成形を行うと、材料が不規則に伸縮して素材流入が起こる。しかも、成形時の素材流入量が僅かな油付着量等の差異等によって変動する。このため、成形品の位置精度が安定しない。なお、単純に曲げ成形を行えば成形品の割れを防止できるが、しわがフランジ部1に発生する。このため、曲げ成形を採用することもできない。
【0008】
そこで、絞り成形を行った後にトリミングを行うことにより成形品を所望の寸法とすることが考えられる。しかし、
図14(a)〜
図14(d)に示すフロントサイドメンバーリア4のようなプレス成形品は、上述のように複雑な形状であるというだけではなく、フランジ部1も湾曲している。このため、成形後にトリミングを行うことも困難である。もちろん、ハイテンからなる平板のブランクはトリミング可能であるが、上述のように、絞り工程中に材料が不規則に伸縮して素材流入が起こるため、トリミングを省略した場合には、成形品のエッジ位置精度が安定せず、成形品のフランジ長さを安定して得ることができない。
【0009】
このため、
図14(a)〜
図14(d)に示すプレス成形品4を、ハイテンを素材鋼板として位置精度よく成形することは難しく、比較的低強度で伸び性に優れた鋼板を、板厚を増加して用いる必要があり、車体軽量化の要請に応えることができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に列記の通りである。
(1)高強度鋼板からなるブランクに予加工を行うことにより中間成形体とし、該中間成形体に本加工を行うことにより、天板部と該天板部につながる2つの縦壁と該2つの縦壁にそれぞれつながる2つのフランジ部とにより構成されるハット断面を有するとともに長手方向の内部に側面視で山形に湾曲した形状の湾曲部を有する最終成形体であるプレス成形品を製造する方法であって、
前記中間成形体は、前記天板部に形成される中間天板部と、該中間天板部につながる2つの中間縦壁と、該2つの中間縦壁にそれぞれつながる2つの中間フランジ部とにより構成されるハット断面を有するとともに、前記2つの中間縦壁の高さは、前記湾曲部に成形される領域では前記最終成形体の前記2つの縦壁の高さより低く、かつ、前記長手方向について前記湾曲部に成形される領域を除く残余の2つの領域では、前記湾曲部に成形される領域から離れるに伴って徐々に低くなるとともに前記湾曲部に成形される領域から最も離れた位置では略零となること、および、
前記本加工は、下型パンチ及びブランクホルダーと、該下型パンチ及びブランクホルダーに対向して配置された上型ダイとの間であって前記下型パンチの上に、前記中間成形体を配置する第1ステップと、前記中間フランジ部と接するように前記ブランクホルダーを配置する第2ステップと、前記上型ダイを前記下型パンチおよび前記ブランクホルダーが配置されている方向へ動かすことにより前記中間成形体をブランクホルダーに達するまで成形して前記縦壁の一部を成形する第3ステップと、前記中間成形体を前記ブランクホルダーで前記上型ダイに押し付けて挟持する状態を維持しながら、前記上型ダイおよび前記ブランクホルダーを前記中間成形体に対して前記ブランクホルダーが配置された方向へ動かすことにより前記中間成形体の縦壁部分と縦壁につながるフランジ部分を成形する第4ステップとを経て、行われること
を特徴とするプレス成形品の製造方法。
【0011】
素材鋼板に絞り成形等の予加工を行って中間形状を有する中間成形体とし、この中間成形体に単純に曲げ成形を行うと、最終成形体のフランジ部にしわが発生する。これに対し、(1)の本発明によれば、中間天板部、2つの中間縦壁および2つの中間フランジ部により構成されるハット断面を有する中間成形体における2つの中間縦壁の高さを、最終成形体の湾曲部に成形される領域では最終成形体の縦壁の高さより低くし、かつ、長手方向について湾曲部に成形される領域を除く残余の2つの領域では、湾曲部に成形される領域から離れるに伴って徐々に低くするとともに湾曲部に成形される領域から最も離れた位置では略零としておき、この中間成形体に対して、第3ステップでの曲げ成形と、第4ステップでの絞り成形とを連続して順番に行う。
【0012】
このため、(1)項の本発明によれば、通常の絞り成形や曲げ成形では強加工部となる湾曲部の割れや、フランジ部のしわの発生を防止できる。
(2)前記第1ステップでは、さらに、前記最終成形体の天板部の形状を有するとともに前記下型パンチ及び前記ブランクホルダーに対向して配置されるパッドを用いるとともに、前記第2ステップ、前記第3ステップおよび前記第4のステップでは、該パッドにより前記中間成形体の天板部を前記下型パンチに押し付けて挟持する(1)項に記載されたプレス成形品の製造方法。
【0013】
(2)項の本発明によれば、中間成形体における中間天板部を拘束するパッドを用いて、第3ステップ(第3〜4ステップでの曲げ絞り連続成形)の初期段階で中間天板部の動きを抑制することができるため、位置精度が悪化することを防止することができる。
(3)前記下型パンチは、前記天板部および該天板部につながる2つの縦壁それぞれの形状を有し、前記ブランクホルダーは、前記フランジ部の形状を含む形状を有するとともに、前記上型ダイは、前記天板部、該天板部につながる2つの縦壁および該2つの縦壁それぞれにつながる2つのフランジ部それぞれの形状を有することを特徴とする(1)項または(2)項に記載されたプレス成形品の製造方法。
(4)前記パッドは、前記天板部の形状を有する(2)項または(3)項に記載されたプレス成形品の製造方法。
(5)前記中間成形体に対して前記本加工を行う前に、前記湾曲部に成形される領域を除く残余の2つの領域のうちで前記最終成形体を構成しない範囲をトリミングすることを特徴とする(1)項から(4)項までのいずれか1項に記載されたプレス成形品の製造方法。
【0014】
(5)項の本発明によれば、中間成形体にトリミングを行って外形状を整えるため、絞り成形などによる材料の不規則な伸縮による不均一な素材流入を吸収することができる。
(6)前記湾曲部に成形される領域における前記中間縦壁の高さは、前記湾曲部における前記縦壁の高さの3〜97%であることを(1)項から(5)項までのいずれか1項に記載されたプレス成形品の製造方法。
(7)前記高強度鋼板の引張強度は590〜1800MPaであることを特徴とする(1)項から(6)項までのいずれか1項に記載されたプレス成形品の製造方法。
(8)前記プレス成形品は、自動車の車体の骨格部材である(1)項から(7)項までのいずれか1項に記載されたプレス成形品の製造方法。
【0015】
(1)〜(8)項の本発明によれば、引張強度が590〜1800MPaであるハイテン材と呼ばれる高強度鋼板を素材鋼板とした場合であっても、ハット断面形状を有するとともに長手方向の一部が側面視で湾曲した形状を有するプレス成形品を、しわや割れを発生させずに成形品のエッジ位置精度がよく、プレス成形でき、例えばサイドシル、クロスメンバー、フロントサイドメンバーリアといった自動車の車体の骨格部材の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るプレス成形品の製造方法によれば、引張強度が590MPa以上、780MPa以上、あるいは980MPa以上のハイテンを素材鋼板とした場合にも、ハット断面形状を有するとともに長手方向の一部が側面視で湾曲した形状を有するプレス成形品を、しわや割れを発生させずに成形品のエッジ位置精度がよく、プレス成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)〜
図1(c)は、予成形として絞り成形された中間成形体の、それぞれ斜視図、上面視図、側面視図である。
【
図2】
図2は、中間成形体に予成形するための絞り成形工程で用いる金型の構成を示す説明図である。
【
図3】
図3(a)〜
図3(d)は、トリミングされたトリム後中間成形体を示す、それぞれ斜視図、上面視図、側面視図及びSec−Bにおける断面図である。
【
図4】
図4(a)〜
図4(d)は、曲げ成形と絞り成形を連続して順番に行って成形された最終成形体を示す、それぞれ斜視図、上面視図、側面視図及びSec−Cにおける断面図である。
【
図5】
図5は、第2の工程での曲げ絞り連続成形に用いられる金型の構成を示す説明図である。
【
図6-1】
図6−1は、第2の工程での曲げ絞り連続成形に用いられるトリム後中間成形体の側面図である。
【
図6-2】
図6−2は、第2の工程での曲げ絞り連続成形を行う金型セット時における
図6−1のSec−D断面図である。
【
図6-3】
図6−3は、第2の工程での曲げ絞り連続成形を行う金型セット時における
図6−1のSec−E断面図である。
【
図7-1】
図7−1は、曲げ絞り連続成形工程のSec−D断面図である。
【
図7-2】
図7−2は、曲げ絞り連続成形工程のSec−D断面図である。
【
図7-3】
図7−3は、曲げ絞り連続成形工程のSec−D断面図である。
【
図8】
図8(a)は、第2の工程で曲げ絞り連続成形を開始する時点における中間成形体の中間フランジ部と最終成形体のフランジ部との、高さ方向の距離(すなわち、中間成形体における中間縦壁の高さと、最終成形品における縦壁の高さとの差)を示す説明図であり、
図8(b)は、
図8(a)におけるSec−F断面図である。
【
図9】
図9(a)、
図9(b)は、それぞれ、実施例に示す最終成形体の側面視図、Sec−G断面図である。
【
図10】
図10は、実施例におけるX,Y方向の変位評価位置を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例1で使用した絞り成形金型の構成を示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施例1〜7で使用した素材鋼板を示す説明図である。
【
図13】
図13は、実施例2で使用した曲げ成形金型の構成を示す説明図である。
【
図14】
図14は、ハット断面を有し長手方向への湾曲部を有するプレス部品であるフロントサイドメンバーリア4の説明図であり、
図14(a)は斜視図、
図14(b)は上面視図、
図14(c)は側面視図および
図14(d)は
図14(c)におけるSec−Aにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を、添付図面を参照しながら説明する。
1.本発明により製造されるプレス成形品
本発明により製造されるプレス成形品の形状は、
図14(a)〜
図14(d)により示すプレス成形品4と同じである。
【0019】
プレス成形品4は、天板部2と、天板部につながる2つの縦壁3,3と、2つの縦壁3,3にそれぞれつながる2つのフランジ部1,1とにより構成されるハット断面を有する。また、プレス成形品4は、長手方向の内部に側面視で山形状に湾曲した形状の湾曲部0を有する。さらに、
図14(b)に示すように、プレス成形品4は、天板部2の側から長手方向を見下ろしたときに、緩やかに湾曲した形状を有するが、この湾曲が存在しなくともよい。
【0020】
本発明に係る製造方法では、プレス成形品は最終成形体である。
本発明により製造されるプレス成形品(以下、単に「プレス成形品」という)は、例えばサイドシル,クロスメンバー,フロントサイドメンバーリアといった自動車の車体の骨格部材として、用いられる。
【0021】
プレス成形品は、引張強度が590MPa以上、780MPa以上、あるいは980MPa以上であって1800MPa以下の高強度鋼板からなる。自動車の車体の骨格部材で一般的に用いられる鋼板の引張強度は、440MPa級であるが、衝突安全性能の向上のために部品材質の高強度化が望まれており、590MPa以上の高強度鋼板を用いることが望ましい。また、燃費向上の観点からさらなる軽量化が望まれており、高強度化により板厚の低減を図るため、780MPa以上、さらには980MPa以上の高強度鋼板を用いることがいっそう望ましい。
【0022】
2.本発明に係る製造方法
上述したように、複雑な形状を有するプレス成形品を、しわを生成することなく製造するために、通常は絞り成形を行う。しかし、素材鋼板が、加工性が不十分な引張強度590MPa以上のハイテンである場合に絞り成形を行うと、成形品に割れが発生するとともに、材料が不規則に伸縮して素材流入が起こるために位置精度が低下する。また、曲げ成形を行うとフランジ部に多くのしわが発生する。
【0023】
そこで、本発明に係る製造方法では、高強度鋼板からなるブランクに予加工を行うことにより中間成形体とする第1の工程と、この中間成形体に本加工を行う第2の工程とを経て、プレス成形品を製造する。以下、第1,2の工程を順次説明する。
(1)第1の工程
図1(a)〜
図1(c)は、予成形として絞り成形された中間成形体11の、それぞれ斜視図、上面視図、側面視図である。
図2は、中間成形体11に予成形するための絞り成形工程で用いる金型の構成を示す説明図である。
【0024】
図1(a)〜
図1(c)および
図2に示すように、第1の工程では、素材金属板35を中間成形体形状11まで
図2に示す金型を用いて予加工を行う。
図2における符号5は予加工用上型ダイを示し、符号6は予加工用下型パンチを示し、符号7は予加工用ブランクホルダーを示す。
【0025】
図14(a)〜
図14(d)により示すプレス成形品4では、天板部2が最も高くなった断面1(Sec−A)の部分、すなわちプレス成形品4における湾曲部0が、最も成形し難い部分である。また、素材金属板35の外周縁部12gの形状をできるだけ平板に近い形状に維持したまま、湾曲部0に成形される部分が最も高く、その両側に向ってなだらかに傾斜した山形の突起12を絞り成形により形成して、中間成形体11とする。
【0026】
すなわち、中間成形体11は、天板部0に形成される中間天板部12aと、中間天板部12aにつながる2つの中間縦壁12b,12bと、2つの中間縦壁12b,12bにそれぞれつながる2つの中間フランジ部12c、12cとにより構成されるハット断面を有する。
【0027】
また、2つの中間縦壁12b,12bの高さは、(A)湾曲部0に成形される領域12dでは最終成形体であるプレス成形品4の縦壁3,3の高さより若干低く、(B)長手方向について湾曲部0に成形される領域12dを除く残余の2つの領域12e,12fでは、湾曲部0に成形される領域12dから離れるに伴って徐々に低くなるとともに、(C)湾曲部0に成形される領域から最も離れた位置では略零となる。
【0028】
図3(a)〜
図3(d)は、トリミングされたトリム後中間成形体13を示す、それぞれ斜視図、上面視図、側面視図及びSec−Bにおける断面図である。
【0029】
第1の工程では、必要に応じて、絞り成形に伴って中間成形体11に発生した材料の伸縮による不均一な素材流入の影響を解消するため、中間成形体11にトリミングを行ってトリム後中間成形体13としてもよい。
【0030】
すなわち、後述する第2の工程による本加工を中間成形体11に行う前に、湾曲部0に成形される領域12dを除く残余の2つの領域12e,12fのうちで最終成形体4を構成しない範囲である中間成形体11の外周縁部12gをトリミングする。
【0031】
このトリミングは、中間成形体11における突起12といった素材の突出部が存在しない、中間成形体11の外周縁部12gに対して行う。このため、例えばレーザ切断といった特別な切断手段ではなく、プレス工程にてトリム可能な切断方法で、かつカム切断などの複雑な切断方法を用いず、プレス方向に垂直な方向に切断することができ、製造コストの上昇を抑制できる。
【0032】
最終成形品4の形状になるように突起12の端部12h,12iに向って次第に幅が広がった形状にトリミングする。
【0033】
このトリミングを行うことにより、中間成形体11の外形状を整えることができ、絞り成形などによる材料の不規則な伸縮による不均一な素材流入を吸収することができる。
(2)第2の工程
図4(a)〜
図4(d)は、曲げ成形および絞り成形を連続して順番に行って成形された最終成形体であるプレス部品21を示す、それぞれ斜視図、上面視図、側面視図及びSec−Cにおける断面図である。なお、以降の説明では、第2の工程での成形を「曲げ絞り連続成形」ともいう。
【0034】
トリム後中間成形体13は、第2の工程により、
図4(a)〜
図4(d)に示す最終成形体であるプレス成形品21まで成形される。
図4(a)〜
図4(d)における符号22,23,24は、プレス成形品21の天板部、縦壁、フランジをそれぞれ示す。
【0035】
図5は、第2の工程での曲げ絞り連続成形に用いられる金型の構成を示す説明図である。
図6−1は、第2の工程での曲げ絞り連続成形に用いられるトリム後中間成形体13の側面図である。
図5において、符号25は上型ダイを示し、符号26は下型パンチを示し、符号27はパッドを示し、符号28はブランクホルダーを示す。
【0036】
下型パンチ26は、天板部22、および天板部22につながる2つの縦壁23,23それぞれの形状を有する。ブランクホルダー28は、2つのフランジ部24,24それぞれの形状を含む形状を有する。上型ダイ25は、天板部22、天板部22につながる2つの縦壁23,23、および2つの縦壁23,23それぞれにつながる2つのフランジ部24,24それぞれの形状を有する。
【0037】
さらに、必要に応じて、パッド27を用いてもよい。パッド27は、最終成形体21の天板部22の形状を有する。パッド27は、上型ダイ25とともに、下型パンチ26及びブランクホルダー28に対向して配置される。パッド27は、後述する第2ステップ、第3ステップおよび第4のステップでは、トリム後中間成形体13の天板22に成形される中間天板部12aを下型パンチ26に押し付けて挟持するため、第3ステップ(第3〜4ステップでの曲げ絞り連続成形)の初期段階でこの中間天板部12aの動きを抑制することができ、成形品のエッジ位置精度が悪化することを防止できる。
【0038】
図6−2は、第2の工程での曲げ絞り連続成形を行う金型セット時における
図6−1のSec−D断面図であり、
図6−3は、第2の工程での曲げ絞り連続成形を行う金型セット時における
図6−1のSec−E断面図であり、
図7−1は、曲げ絞り連続成形工程のSec−D断面図であり、
図7−2は、曲げ絞り連続成形工程のSec−D断面図であり、さらに、
図7−3は、曲げ絞り連続成形工程のSec−D断面図である。
【0039】
図6−2に示すように、第2の工程での曲げ絞り連続成形の開始時には、ブランクホルダー28は下型パンチ26の表面よりもやや高い位置にある。まず、トリム後中間成形体13は下型パンチ26及びブランクホルダー28と、パッド27及び上型ダイ25との間に配置される。
【0040】
次に、
図7−1に示すように、トリム後中間成形体13の中間天板部12aをパッド27により下型パンチ26に押し付けて加圧、挟持する。このとき、トリム後中間成形体13の中間フランジ部12cと接するようにブランクホルダー28を配置する。ただし、こののとき、
図6−1のSec−Eの断面である
図6−3に示すように、トリム後中間成形体13の中間フランジ部12cとブランクホルダー28とは接していなくてよい。
【0041】
なお、パッド27は、位置精度に影響がない場合は用いなくてもよい。
そして、
図7−2に示すように、上型ダイ25を下型パンチ26およびブランクホルダー28が配置されている方向へ動かして、トリム後中間成形体13をブランクホルダー28に達するまで成形することにより、最終成形体21の縦壁23の一部を成形する。
【0042】
その後、
図7−3に示すように、トリム後中間成形体13をブランクホルダー28で上型ダイ25に押し付けて加圧、挟持する状態を維持しながら、上型ダイ25とブランクホルダー28をトリム後中間成形体13に対してブランクホルダー28が配置されている方向へさらに動かして、トリム後中間成形体13を加工して最終成形体21の縦壁23と縦壁23につながるフランジ部24を成形する。
【0043】
位置精度に影響がない場合は、トリム後中間成形体13に替えて、トリムを行わない中間成形体11を用いてもよいことは言うまでもない。
【0044】
このように、第2の工程では、中間成形体11またはトリム後中間成形体13に対して、曲げ成形および絞り成形を一連の動作で連続して行うこと(曲げ絞り連続成形)によって、プレス成形品21を、割れやしわを発生させることなく、製造することが可能となる。
【0045】
このように、本発明の第2の工程での曲げ絞り連続成形では、ブランクホルダー28を最終位置よりも高い位置に設定することにより、曲げ成形と絞り成形の比率を変更することができる。すなわち、ブランクホルダー28が高い位置にあれば絞り成形の比率が高くなり、ブランクホルダー28が低い位置にあれば曲げ成形の比率が高くなる。
【0046】
図8(a)は、第2の工程で曲げ絞り連続成形を開始する時点におけるトリム後中間成形体13の中間フランジ部12Cと最終成形体21のフランジ部24との高さ方向の距離(トリム後中間成形体13における中間縦壁の高さと、最終成形体21の縦壁の高さの比率)を示す説明図であり、
図8(b)は、
図8(a)におけるSec−F断面図である。
【0047】
湾曲部21aに成形される領域におけるトリム後中間成形体13の中間縦壁の高さは、最終成形体21の縦壁の高さの3〜97%であることが望ましい。3%未満では絞りの比率が高くなり、フランジ部24のしわ発生は防止できるものの、材料が不規則に伸縮して素材流入が起こるため、成形品のエッジ位置精度が低下する。また、97%を超えるとほとんど曲げ加工と変わらなくなり、前記したようにフランジ部24にしわが発生し易くなる。また、加工性が不十分なハイテンの場合、1工程目の割れも懸念される。同様の観点から、5%以上95%以下であることがより望ましい。このように、この比率は、第2の工程での曲げ絞り連続成形における絞り成形の比率を表わし、素材鋼板から中間成形体までへの成形比率とも関係する。
【実施例】
【0048】
図9(a)、
図9(b)は、それぞれ、実施例に示す最終成形体の側面視図、Sec−G断面図である。
【0049】
比較例1,2,3および本発明例1,2,3,4では、素材鋼板として、破断強度590MPaから980MPa、板厚1.6mmから2.0mmの鋼板を用い、従来技術である絞り成形法、曲げ成形法と、本発明に係る成形方法と、本発明に係る成形方法でかつ本発明条件外の成形法とにより、
図9(a)および
図9(b)に示す形状(単位はmm)の成形品31を製造した。
【0050】
図10は、比較例1〜3および本発明例1〜4におけるX,Y方向の変位評価位置を示す図であり、X,Y方向の変位量を測定する基準点32,33,34を示す。
【0051】
図11は、比較例1で使用した絞り成形金型の構成を示す説明図であり、
図12は、比較例1〜3および本発明例1〜4で使用した素材鋼板35を示す説明図であり、
図13は、比較例2で使用した曲げ成形金型の構成を示す説明図である。
図11の各符号は、
図2の各符号と同じである。
図13における符号40は上型ダイを示し、符号41は下型パンチを示し、符号42はパッドを示し、符号43は素材鋼板を示す。
【0052】
比較例1〜3および本発明例1〜4に対する効果を表1にまとめて示す。
【0053】
【表1】
【0054】
比較例1は、従来の絞り成形法によるプレス成形を行った例である。比較例1は、割れが発生し、また、X,Y方向の変位量が非常に大きく、成形品の位置精度を確保できない。
【0055】
比較例2は、従来の曲げ成形法によるプレス成形を行った例である。比較例2は、X,Y方向の変位量は抑制されるものの、フランジにしわが発生する。
【0056】
本発明例1〜7は、湾曲部における中間成形体の中間縦壁の高さを、湾曲部における最終成形体の縦壁の高さの5%,15%,25%,50%,75%,85%,95%とした例である。本発明例1〜7では、いずれも、プレス成形品にはしわの発生はなく、X,Y方向の変位量も抑制され、本発明の有効性を確認できた。
【0057】
比較例3は、湾曲部における中間成形体の中間縦壁の高さを、湾曲部における最終成形体の縦壁の高さの100%とした例である。比較例3は、1工程目の成形時に割れが発生し、2工程目の成形が不可能となる。
【0058】
本発明例8は、素材鋼板を590MPa級の高強度鋼板とするとともに、湾曲部における中間成形体の中間縦壁の高さを、湾曲部における最終成形体の縦壁の高さの85%とした例である。本発明例8では、プレス成形品にはしわの発生はなく、X,Y方向の変位量も抑制され、本発明の有効性を確認できた。
【0059】
さらに、本発明例9は、素材金属板を780MPa級の高強度鋼板とするとともに、湾曲部における中間成形体の中間縦壁の高さを、湾曲部における最終成形体の縦壁の高さの85%とした例である。本発明例9では、プレス成形品にはしわの発生はなく、X,Y方向の変位量も抑制され、本発明の有効性を確認できた。