特許第5962790号(P5962790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5962790
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】細胞培養における複数容器間の送液方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20160721BHJP
   C12M 3/02 20060101ALI20160721BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C12M1/00 C
   C12M3/02
   C12N5/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-17826(P2015-17826)
(22)【出願日】2015年1月30日
【審査請求日】2016年4月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100142099
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 真一
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【弁理士】
【氏名又は名称】生富 成一
(72)【発明者】
【氏名】幡多 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】村井 正広
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−188392(JP,A)
【文献】 特開2005−198626(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/114845(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/136581(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/141032(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C12N 5/00−5/28
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートを一つ備えた培地供給容器と、前記培地供給容器から培地が供給される内容物移送用のポートを各々一つ備えた複数の培養容器とを用いる細胞培養における複数容器間の送液方法であって、
前記複数の培養容器における第一の培養容器と三方活栓と前記培地供給容器をチューブにより接続し、前記三方活栓と前記培地供給容器の間に1つのポンプを配置すると共に、
前記複数の培養容器における培養容器の個数が2個である場合、
前記三方活栓と前記複数の培養容器における第二の培養容器をチューブにより接続し、
前記複数の培養容器における培養容器の個数が3個以上である場合、
直前に接続された培養容器及び三方活栓の間のチューブに新たに三方活栓を備え、当該新たな三方活栓と次の培養容器をチューブにより接続することを繰り返して、全ての培養容器を三方活栓に接続し、
前記培地供給容器から三方活栓を介して、ポンプにより前記複数の培養容器における各培養容器に培地を移送する
ことを特徴とする細胞培養における複数容器間の送液方法。
【請求項2】
前記複数の培養容器が第一の培養容器と第二の培養容器からなり、
前記第一の培養容器と三方活栓と前記培地供給容器をチューブにより接続し、前記三方活栓と前記培地供給容器の間に1つのポンプを配置すると共に、
前記三方活栓と前記第二の培養容器をチューブにより接続し、
前記培地供給容器から三方活栓を介して、ポンプにより前記第一の培養容器と前記第二の培養容器に培地を移送する
ことを特徴とする請求項1記載の細胞培養における複数容器間の送液方法。
【請求項3】
前記複数の培養容器が第一の培養容器と第二の培養容器と第三の培養容器からなり、
前記第一の培養容器と三方活栓と前記培地供給容器をチューブにより接続し、前記三方活栓と前記培地供給容器の間に1つのポンプを配置すると共に、
前記三方活栓と他の三方活栓をチューブにより接続し、かつ前記第二の培養容器と前記他の三方活栓と前記第三の培養容器をチューブにより接続し、
前記培地供給容器から三方活栓を介して、ポンプにより前記第一の培養容器と前記第二の培養容器と前記第三の培養容器に培地を移送する
ことを特徴とする請求項1記載の細胞培養における複数容器間の送液方法。
【請求項4】
前記複数の培養容器における各培養容器を、先に接続された培養容器の水平位置が後に接続された培養容器の水平位置よりも高くなるように配置し、
先に接続された培養容器から後に接続された培養容器への送液を、水平位置の落差にもとづく自然送液により行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細胞培養における複数容器間の送液方法。
【請求項5】
最後に接続された培養容器から三方活栓を介して、ポンプにより前記培地供給容器に培養液の上澄み液又は培養液を移送する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の細胞培養における複数容器間の送液方法。
【請求項6】
前記培地供給容器とポンプの間のチューブに三方活栓を備え、
前記培地供給容器に、一つのポートを備えた一又は二以上の他の培地供給容器をそれぞれ三方活栓を介してチューブにより接続し、
これらの培地供給容器から三方活栓を介して、ポンプにより前記複数の培養容器における各培養容器に培地を移送する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の細胞培養における複数容器間の送液方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養技術に関し、特に複数の培養容器と培地供給容器を用いる場合における容器間の送液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品の生産や、遺伝子治療、再生医療、免疫療法等の分野において、細胞や組織、微生物などを人工的な環境下で効率良く大量に培養することが求められている。このような細胞培養にあっては、複数の容器をチューブで接続して閉鎖系の環境を構成し、これら複数の容器間で送液を行う方法が採られる場合がある。
具体的には、例えば複数の培養バッグと培地供給バッグをチューブで接続し、培地供給バッグから培養バッグに培地を移送して、培養バッグにおいて細胞を培養し、培養した細胞及び培地を含む培養液(以下、細胞と培地を含むものを培養液と言う)を培養面積のより大きい培養バッグに移送して、さらに細胞を増殖させることなどが行われている。
【0003】
このとき、複数のバッグ間で内容物を移送するために、バッグ間ごとにポンプを設ければ、内容物の移送を効率的に行うことが可能である。しかしながら、この方法には、コストが高くなると共に、複雑な制御機構と多くの機器が必要になるという問題があった。
一方、チューブを分岐させることによって、ポンプの台数を減らすことは可能である。しかしながら、この場合には、分岐したチューブの流路を制御するためにピンチバルブなどが必要となり、やはり複雑な制御機構と多くの機器が必要になるという問題があった。
【0004】
ここで、特許文献1には、自動細胞培養装置で使用するための細胞培養用の容器キットが開示されている。この細胞培養用キットによれば、細胞培養における細胞の注入、培地追加、サンプリング、回収までを閉鎖系を維持しながら行うことが可能である。
【0005】
【特許文献1】国際公開2013/114845号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この細胞培養用キットは、細胞培養における流路の制御機構を簡易化するために工夫されたものではなかった。このため、複数の容器間の流路を制御するにあたり、1つ又は複数のポンプを用いると共に、多数のクリップを用いる必要があり、流路の制御機構がやや複雑になるという課題があった。
そこで、本発明者らは鋭意研究し、複数の容器を三方活栓を用いて接続すると共に、培養容器を送液の順番に落差をつけて配置することで、1台のポンプのみを用いて、流路を簡易に制御することに成功し、本発明を完成させた。
【0007】
このような本発明によれば、培地供給容器から培養容器への培地の移送はポンプにより行い、複数の培養容器間の培養液の移送は自然送液により行うことができる。また、ピンチバルブやクリップ等を不要とすることができ、制御機構を大きく簡易化することが可能である。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、複数の容器を用いて細胞培養を行う場合における容器間の流路制御を簡易化可能な、細胞培養における複数容器間の送液方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る細胞培養における複数容器間の送液方法は、ポートを一つ備えた培地供給容器と、前記培地供給容器から培地が供給される内容物移送用のポートを各々一つ備えた複数の培養容器とを用いる細胞培養における複数容器間の送液方法であって、前記複数の培養容器における第一の培養容器と三方活栓と前記培地供給容器をチューブにより接続し、前記三方活栓と前記培地供給容器の間に1つのポンプを配置すると共に、前記複数の培養容器における培養容器の個数が2個である場合、前記三方活栓と前記複数の培養容器における第二の培養容器をチューブにより接続し、前記複数の培養容器における培養容器の個数が3個以上である場合、直前に接続された培養容器及び三方活栓の間のチューブに新たに三方活栓を備え、当該新たな三方活栓と次の培養容器をチューブにより接続することを繰り返して、全ての培養容器を三方活栓に接続し、前記培地供給容器から三方活栓を介して、ポンプにより前記複数の培養容器における各培養容器に培地を移送する方法としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の容器を用いて細胞培養を行う場合における容器間の流路制御を簡易化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法で用いられる容器の接続関係を示す正面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法で用いられる容器の接続関係を示す平面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法で用いられる容器の接続関係を示す正面図である。
図4】本発明の第三実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法で用いられる容器の接続関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の細胞培養における複数容器間の送液方法の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
最初に、本発明の実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法の特徴について概説する。
本発明の実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法は、ポートを一つ備えた培地供給容器と、培地供給容器から培地が供給される内容物移送用のポートを各々一つ備えた複数の培養容器とを用いる細胞培養における複数容器間の送液方法であって、複数の培養容器における第一の培養容器と三方活栓と培地供給容器をチューブにより接続し、三方活栓と培地供給容器の間に1つのポンプを配置すると共に、複数の培養容器における培養容器の個数が2個である場合、三方活栓と複数の培養容器における第二の培養容器をチューブにより接続し、複数の培養容器における培養容器の個数が3個以上である場合、直前に接続された培養容器及び三方活栓の間のチューブに新たに三方活栓を備え、当該新たな三方活栓と次の培養容器をチューブにより接続することを繰り返して、全ての培養容器を三方活栓に接続し、培地供給容器から三方活栓を介して、ポンプにより複数の培養容器における各培養容器に培地を移送することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法を、複数の培養容器における各培養容器を、先に接続された培養容器の水平位置が後に接続された培養容器の水平位置よりも高くなるように配置し、先に接続された培養容器から後に接続された培養容器への送液を、水平位置の落差にもとづく自然送液により行う方法とすることが好ましい。
さらに、本発明の実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法を、最後に接続された培養容器から三方活栓を介して、ポンプにより培地供給容器に培養液の上澄み液又は培養液を移送する方法とすることも好ましい。
【0013】
また、本発明の実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法を、培地供給容器とポンプの間のチューブに三方活栓を備え、培地供給容器に、一つのポートを備えた一又は二以上の他の培地供給容器をそれぞれ三方活栓を介してチューブにより接続し、これらの培地供給容器から三方活栓を介して、ポンプにより複数の培養容器における各培養容器に培地を移送する方法とすることも好ましい。
【0014】
このような本発明の実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法によれば、閉鎖系の細胞培養システムにおいてポンプを1台のみ用いることで、流路を適切に制御することが可能となる。
すなわち、この方法では、複数の容器を三方活栓と1つのポンプを用いて接続すると共に、培養容器を送液の順番に落差をつけて配置している。
このため、培地供給容器から培養容器への培地の移送はポンプにより行うことができると共に、複数の培養容器間における培養液の移送は、培養容器の水平位置の落差にもとづく自然送液により行うことが可能となっている。また、この方法によれば、ピンチバルブやクリップなどを用いる必要がないため、従来は煩雑であった流路の制御機構を大きく簡易化することが可能となっている。
【0015】
(第一実施形態)
次に、本発明の第一実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態の細胞培養における複数容器間の送液方法で用いられる容器の接続関係を示す正面図であり、図2は同平面図である。
本実施形態で用いられる細胞培養システムには、培養容器が2個備えられている。
【0016】
すなわち、図1及び図2に示されるように、本実施形態で用いられる細胞培養システムは、培養容器1、培養容器1a、培地供給容器2、三方活栓3、ポンプ4、及びこれらを接続するチューブ5を備えている。
培養容器1と培養容器1aと培地供給容器2は、三方活栓3を介してチューブ5により接続されている。各容器には、他の容器との内容物の移送を行うためのポートが一つ備えられており、このポートにチューブ5が接続されている。
【0017】
また、三方活栓3と培地供給容器2の間のチューブ5にはポンプ4が取り付けられている。
さらに、最初に培養を行うための(先に接続された)培養容器1の水平位置が、次に培養を行うための(後に接続された)培養容器1aの水平位置よりも高くなるように配置される。
【0018】
このような細胞培養システムを用いるにあたっては、無菌環境下で培養容器1に細胞及び培地を含む培養液を注入し、培養容器1と培養容器1aと培地供給容器2と三方活栓3を、チューブ5を用いて接続して閉鎖系を構成する。
また、培地供給容器2と三方活栓3の間にポンプ4を取り付けて配置する。さらに、培養容器1の水平位置が、培養容器1aの水平位置よりも高くなるように配置する。そして、培地供給容器2から三方活栓3を介して、ポンプ4によって培養容器1に培地を移送し、培養容器1において細胞の培養を行う。
【0019】
培養容器1における細胞培養が終了すると、次いで培養容器1から培養容器1aに培養液を自然送液により移送し、培地供給容器2から三方活栓3を介して、ポンプ4によって培養容器1aに培地を移送し、培養容器1aにおいて細胞の培養を行う。
このとき、自然送液に先立って、培養容器内における培養液を攪拌することが好ましい。また、自然送液を行うにあたっては、培養容器を載置した架台を、培養容器におけるポートが下になるように傾斜させることが好ましい。このようにすれば、培養容器間の自然送液を効率的に行うことが可能となる。このような自然送液に関する手法は、以下の実施形態においても同様に行うことができる。
さらに、この場合、培地を加温するため、培地供給容器2から三方活栓3を介して、ポンプ4によって培養容器1にまず培地を移送し、培養容器1にて培地が十分加温された後、培地を培養容器1aに自然送液により移送することもできる。このような培地の加温も以下の実施形態におけるそれぞれの培養容器について同様に行うことができる。
【0020】
培養容器1aにおける細胞培養が終了すると、培養容器1aからチューブ5と三方活栓3を介して、ポンプ4によって、空になっている培地供給容器2に培養液の上澄み液を移送し、培養容器1aにおける培養液を濃縮することができる。また、同様にして、培養容器1aから培地供給容器2に培養液を移送することもできる。
【0021】
培養容器の容量及び培養面積は、後に接続される培養容器ほど多くの細胞を培養可能なように、後に接続されるものほど大きくすることが好ましい。
【0022】
培養容器1及び培養容器1aは、軟包材を材料として袋状(バッグ型)に形成することが好ましく、内容物を確認できるように、一部又は全部が透明性を有することが好ましい。
また、これらの培養容器は、細胞の培養に必要なガス透過性(酸素及び二酸化炭素透過性)を有していることが必要であり、37℃、5%二酸化炭素濃度の培養環境下で使用することが好ましい。さらに、これらの培養容器は、高い細胞増殖効率を実現するために、低細胞毒性、低溶出性、及び放射線滅菌適性を有することが好ましい。
【0023】
このような条件を満たす培養容器の材料としては、ポリエチレン系樹脂が好ましい。このポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸やメタクリル酸共重合体と金属イオンを用いたアイオノマー等が挙げられる。また、ポリオレフィン、スチレン系エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂等を用いることもできる。
【0024】
培養容器の四辺はヒートシールにより密封されたものとすることができる。培養容器2の収容部の形状は、長方形状としてもよく、また図2に示すように、ポートに向かって次第に狭くなるように構成することも好ましい。なお、培養容器は、ブロー成形による一体成型バッグでもよい。
【0025】
培地供給容器2は、格納している培地のpHが培養期間中に大きく変化しないように、酸素及び二酸化炭素に対するガスバリア性を有することが好ましい。これは、培地中に含まれている高濃度の炭酸ガスが空気中に抜け、培地中の炭酸ガス濃度が低下し、結果としてpHが上昇することを回避するために、培地供給容器2の内部から二酸化炭素が外部に漏れ出るのをできるだけ少なくすることが望ましいからである。また培地の酸化を防ぐことが望ましいからである。
【0026】
三方活栓3の種類は特に限定されないが、細胞培養システムにおける閉鎖系を実現しやすいことから、閉鎖式三方活栓を好適に用いることができる。
また、ポンプ4の種類も特に限定されないが、同様の観点から、ペリスタポンプ(R)などのチューブローラポンプを好適に用いることができる。
【0027】
チューブ5の材料は、使用環境に合わせて適宜選択すれば良いが、COインキュベータ内で使用する場合は、特に、酸素及び二酸化炭素に対するガス透過性に優れるものが望ましい。COインキュベータ外で使用する場合はガスバリア性に優れるものが望ましい。例えば、シリコーンゴム、軟質塩化ビニル樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマー等を用いることができる。また、スチレン系エラストマーとしては、例えば、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン)、SIS(スチレン・イソプレン・スチレン)、SEBS(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン)、SEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)等を用いることができる。
特に、チューブ5におけるポンプを取り付ける部分にはシリコーンチューブを好適に用いることができ、その他の部分には軟質塩化ビニル樹脂チューブを好適に用いることができる。
【0028】
本実施形態における培養細胞の種類は特に限定されず、例えばリンパ球などの浮遊系細胞や、皮膚細胞、角膜細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞等の接着系細胞を好適に培養することが可能である。
【0029】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態の細胞培養における複数容器間の送液方法で用いられる容器の接続関係を示す正面図である。
本実施形態で用いられる細胞培養システムには、培養容器が3個備えられている。
【0030】
すなわち、図3に示されるように、本実施形態で用いられる細胞培養システムは、培養容器1、培養容器1a、培養容器1b、培地供給容器2、三方活栓3、三方活栓3a、ポンプ4、及びこれらを接続するチューブ5を備えている。
培養容器1と培養容器1aと培地供給容器2は、第一実施形態と同様に、三方活栓3を介してチューブ5により接続されている。また、三方活栓3と三方活栓3aが、チューブ5により接続され、培養容器1aと三方活栓3aと培養容器1bが、チューブ5により接続されている。各容器には、他の容器との内容物の移送を行うためのポートが一つ備えられており、このポートにチューブ5が接続されている。
【0031】
また、三方活栓3と培地供給容器2の間のチューブ5にはポンプ4が取り付けられている。
さらに、最初に培養を行うための(先に接続された)培養容器1の水平位置が、次に培養を行うための(後に接続された)培養容器1aの水平位置よりも高くなるように配置され、培養容器1aの水平位置が、次に培養を行うための(さらに後に接続された)培養容器1bの水平位置よりも高くなるように配置される。
【0032】
なお、本実施形態において、培養容器を4個以上設けて、培養容器1a、培養容器1bと同様に、三方活栓を介して培養容器1及び培地供給容器2にチューブ5により接続する構成としても良い。この場合も、培養容器1a、培養容器1bと同様に、先に接続された培養容器の水平位置が、後に接続された培養容器の水平位置よりも高くなるように配置して、先に接続された培養容器から後に接続された培養容器に細胞懸濁液を自然送液可能にすることが好ましい。
また、最後に培養が行われる培養容器に、サンプリング用の別個のポートを備え、このポートにサンプリングチューブを接続することも好ましい。
【0033】
このような細胞培養システムを用いるにあたっては、無菌環境下で培養容器1に細胞及び培地を含む培養液を注入し、培養容器1と培養容器1aと培養容器1bと培地供給容器2と三方活栓3と三方活栓3aを、チューブ5を用いて接続して閉鎖系を構成する。
また、培地供給容器2と三方活栓3の間にポンプ4を取り付けて配置する。さらに、培養容器1の水平位置が、培養容器1aの水平位置よりも高くなるように配置し、培養容器1aの水平位置が、培養容器1bの水平位置よりも高くなるように配置する。そして、培地供給容器2から三方活栓3を介して、ポンプ4によって培養容器1に培地を移送し、培養容器1において細胞の培養を行う。
【0034】
培養容器1における細胞培養が終了すると、次いで培養容器1から培養容器1aに培養液を自然送液により移送し、培地供給容器2から三方活栓3、3aを介して、ポンプ4によって培養容器1aに培地を移送し、培養容器1aにおいて細胞の培養を行う。
また、培養容器1aにおける細胞培養が終了すると、次いで培養容器1aから培養容器1bに培養液を自然送液により移送し、培地供給容器2から三方活栓3、3aを介して、ポンプ4によって培養容器1bに培地を移送し、培養容器1bにおいて細胞の培養を行う。
【0035】
培養容器1bにおける細胞培養が終了すると、培養容器1bから三方活栓3a及び三方活栓3を介して、ポンプ4によって、空になっている培地供給容器2に培養液の上澄み液を移送し、培養容器1bにおける培養液を濃縮することができる。また、同様にして、培養容器1bから培地供給容器2に培養液を移送することもできる。
【0036】
なお、本実施形態において、培養容器が4個以上設けられている場合も、上記と同様にして、先に接続された培養容器から後に接続された培養容器に培養液を自然送液により移送し、後に接続された培養容器において細胞の培養を行う。そして、最後に接続された培養容器における細胞培養が終了すると、当該培養容器から複数の三方活栓を介して、ポンプ4によって、空になっている培地供給容器2に培養液の上澄み液を移送し、当該培養容器における培養液を濃縮することができる。また、同様にして、当該培養容器から培地供給容器2に培養液を移送することもできる。
【0037】
本実施形態における培養細胞の種類は特に限定されず、例えばリンパ球などの浮遊系細胞を好適に培養することが可能である。
この場合、培養容器1を、ダメージを受けた細胞の機能を回復させるための養生培養及び拡大培養を行うための容器として好適に用いることができる。すなわち、患者から採取した細胞や、凍結保存後に解凍された細胞のような、ダメージを受けて機能が衰えた細胞は、そのままの状態では活性化させようとしても十分に行うことができず、細胞の大量培養に用いることができない。そこで、このような細胞を増殖させるため、細胞本来の機能が回復するように、細胞培養の初期の段階において当該細胞を養生しつつ培養する培養工程(養生培養工程)が行われる。そして、細胞本来の機能が回復し、細胞の増殖がある程度進んでから培養面積を拡大して、所定の細胞密度となるまで細胞の培養を継続する培養工程(拡大培養工程)が行われる。したがって、この場合、培養容器1は、培養面積を拡大可能に備えることが好ましく、その方法は特に限定されない。
【0038】
また、この場合、培養容器1aは、細胞を活性化させるための培養工程(活性化培養工程)に用いる活性化培養容器として用いることが好ましい。このような培養容器1a内の底面上には、抗CD3抗体などの、細胞を活性化させる物質が固相化され、培養容器1aに収容された細胞は、当該物質に結合して活性化される。抗CD3抗体は、リンパ球を活性化させるために好適に用いられる。
さらに、この場合、培養容器1bは、細胞を大量に増殖させるための培養工程(増幅培養工程)に用いる増幅培養容器として用いることが好ましい。
【0039】
また、培養容器1aの容量は、培養容器1の容量よりも大きくすることが好ましく、例えば培養容器1の容量の2倍以上のものを好適に用いることができる。また、培養容器1bは、細胞を大量に増殖させるために用いるため、容量の特に大きなものを用いることが好ましく、例えば培養容器1aの容量の10倍程度のものを好適に用いることができる。
【0040】
また、本実施形態において、皮膚細胞、角膜細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞等の接着系細胞を培養することも可能である。この場合、例えば培地供給容器2とポンプ4の間のチューブ5に三方活栓を備え、この三方活栓介して、細胞を培養容器の内面から剥離するための酵素溶液が封入された酵素溶液供給容器と、該酵素の働きを阻害するための阻害剤溶液が封入された阻害剤溶液供給容器を接続する構成とすることが好ましい。さらに、洗浄液供給容器、廃液回収容器などのその他の容器を同様にして接続することも可能である。
この場合も、培養容器の容量及び培養面積は、継代培養などを効率的に行えるように、後に接続されるものほど大きくすることが好ましい。
【0041】
本実施形態において、培養容器の材料や性質、形態等については、第一実施形態と同様のものとすることができる。また、培地供給容器2の性質、三方活栓3とポンプ4の種類、チューブ5の材料についても第一実施形態と同様のものとすることができる。
【0042】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態に係る細胞培養における複数容器間の送液方法について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態の細胞培養における複数容器間の送液方法で用いられる容器の接続関係を示す正面図である。
本実施形態で用いられる細胞培養システムには、培養容器が3個備えられ、培地供給容器が2個備えられている。その他の点については、第二実施形態と同様のものとすることができる。
【0043】
すなわち、図4に示されるように、本実施形態で用いられる細胞培養システムは、第二実施形態における構成に加えて、さらに三方活栓6と培地供給容器2aを備えており、三方活栓3と三方活栓6がチューブ5により接続され、かつ培地供給容器2と三方活栓6と培地供給容器2aがチューブ5により接続されている。
【0044】
これらの培地供給容器の性質は、第一実施形態と同様のものとすることができる。また、培地供給容器2と培地供給容器2aには、同一の培地を封入しても、異なる培地を封入しても良い。
また、本実施形態において、培地供給容器を3個以上設けて、培地供給容器2aと同様に、三方活栓を介して培地供給容器2及び各培養容器にチューブ5により接続する構成としても良い。
【0045】
このような本実施形態は、複数の培養容器に異なる培地を供給する場合に特に好適に用いることができる。
例えば、培地供給容器2aから培養容器1と培養容器1aに培地を供給して、培養容器1において上述した養生培養工程及び拡大培養工程を行い、培養容器1aにおいて上述した活性化培養工程を行うことができる。また、次いで培地供給容器2から培養容器1bに培地を供給して、培養容器1bにおいて上述した増幅培養工程を行うことなどが可能である。
【0046】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、第一実施形態において、第三実施形態のように複数の培地供給容器を備えたり、さらにその他の容器を備える構成とするなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、複数の培養容器を用いて、閉鎖系で細胞を大量に培養する遺伝子治療、免疫療法、再生医療や抗体医薬生産などにおいて好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1,1a,1b 培養容器
2,2a 培地供給容器
3,3a,3b 三方活栓
4 ポンプ
5 チューブ
6 三方活栓
【要約】
【課題】複数の容器を用いて細胞培養を行う場合における容器間の流路制御を簡易化することを可能とする。
【解決手段】各々内容物移送用のポートを一つ備えた複数の培養容器における第一の培養容器と三方活栓とポートを一つ備えた培地供給容器をチューブにより接続し、三方活栓と培地供給容器の間に1つのポンプを配置すると共に、複数の培養容器における培養容器の個数が2個である場合、三方活栓と複数の培養容器における第二の培養容器をチューブにより接続し、複数の培養容器における培養容器の個数が3個以上である場合、直前に接続された培養容器及び三方活栓の間のチューブに新たに三方活栓を備え、当該新たな三方活栓と次の培養容器をチューブにより接続することを繰り返して、全ての培養容器を三方活栓に接続し、培地供給容器から三方活栓を介して、ポンプにより複数の培養容器における各培養容器に培地を移送する。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4