特許第5962841号(P5962841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962841
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】車両室内構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/02 20060101AFI20160721BHJP
   B60R 21/12 20060101ALI20160721BHJP
   B62D 25/08 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   B60R21/02 M
   B60R21/12
   !B62D25/08 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-501298(P2015-501298)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2013084217
(87)【国際公開番号】WO2014129075
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2015年7月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-29929(P2013-29929)
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】望月 悠
(72)【発明者】
【氏名】二戸 史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 渉
(72)【発明者】
【氏名】向山 高志
(72)【発明者】
【氏名】井出 博之
【審査官】 柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第3397005(US,A)
【文献】 米国特許第3632155(US,A)
【文献】 米国特許第5536057(US,A)
【文献】 特開2008−202362(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3181446(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/02
B60R 21/12
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に配置された運転者用座席と、
車室内における前記運転者用座席の車両後方側に配置された乗員用座席と、
前記運転者用座席と前記乗員用座席との間に車幅方向に沿って延在する隔壁部材と、
前記乗員用座席側のドアの開操作用のインサイドハンドルと、
を備え、
前記インサイドハンドルは、前記隔壁部材の車幅方向における車外側端部よりも後側で前記車外側端部に近接した位置に設定され、
前記隔壁部材は、前記車外側端部から車両中央に近づくに従って車両前方側へ行くように傾斜する傾斜面部を有することを特徴とする車両室内構造。
【請求項2】
前記隔壁部材は、前記傾斜面部と該傾斜面部の車幅方向における車両中央側の端縁で折れ曲がって車幅方向に沿って延在する一般面部とを有し、これらの傾斜面部と一般面部との境界は稜線を形成し、
前記傾斜面部に、前記稜線まで延在する補強パネルを重ねて取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の車両室内構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両室内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タクシー等の車両において、防犯を目的として運転者用座席と該運転者用座席の後側の乗員用座席との間に、車幅方向に沿って仕切り板を設ける技術が知られている(特許文献1参照)。この隔壁部材は、車体の左右両側のピラー部材同士を橋渡すように配設するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−46104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、後側の乗員用座席へ乗り降りするためのドアのインサイドハンドルがドアの前部、つまり、前記隔壁部材の車幅方向における車外側端部に近接して配置されている場合、車両の側面に側突荷重が入力され、前記隔壁部材が車両後方に向けて膨出変形した際に、隔壁部材の前記車外側端部が前記ドアのインサイドハンドルに接触し、ドアが開くおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、車両の側面に側突荷重が入力された場合に、隔壁部材によってドアが開くことを抑制する車両室内構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、前側の運転者用座席と後側の乗員用座席との間に隔壁部材を車幅方向に延在させ、前記乗員用座席側のドアの開操作用のインサイドハンドルを、前記隔壁部材の車幅方向における車外側端部よりも後側で前記車外側端部に近接した位置に配置した車両室内構造である。前記隔壁部材には、車幅方向における車外側端部から車両中央に近づくに従って車両前方側へ行くように傾斜する傾斜面部を設けている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態による仕切り手段を車両後方から見た斜視図である。
図2図2は、図1の仕切り手段の車両左側端部の近傍を斜め後方から見た斜視図である。
図3図3は、図1のIII−III線による断面図である。
図4図4は、隔壁部材を構成する前側パネルを斜め前方から見た斜視図である。
図5図5は、図1を車両後方から見た背面図である。
図6図6は、図5におけるVI−VI線による断面図である。
図7図7は、図5におけるVII−VII線による拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。なお、図面において、FRは前方側、RRは後方側、UPRは上方側、LWRは下方側、RHは車両右側、LHは車両左側を示すものとする。
【0009】
図1に示すように、車室内の前部には、右側に運転者用座席1が配設され、該運転者用座席1の左側には助手席3が配設されている。運転者用座席1および助手席3の車両後方側には、乗員用座席4(図3参照)が配設されている。運転者用座席1と乗員用座席4との間には、隔壁部材5と仕切り板7とからなる仕切り手段9が車幅方向に沿って配設されている。仕切り手段9で運転者用座席1および助手席3と後部の乗員用座席4とが分離されることによって、タクシー等の車両における防犯機能が発揮される。
【0010】
具体的に説明すると、車両における車幅方向の左右側端部には、左右一対のセンターピラー11がそれぞれ上下方向に沿って延在しており、これらのセンターピラー同士11,11を連結するように隔壁部材5が車幅方向に沿って延在している。即ち、隔壁部材5の左右両端には、車幅方向外側に突出するフランジ部13が形成されており、該フランジ部13の上部が留め部15を介してセンターピラー11に結合されている。なお、隔壁部材5の右端部の後側(乗員用座席4側)には、料金受け部17が設けられ、該料金受け部17を介して運転者と乗員との間で料金やお釣りの受け渡しが行われる。また、隔壁部材5の上側には、透明なポリカーボネイト製の仕切り板7が車幅方向に沿って配設されている。
【0011】
図2に示すように、センターピラー11の後側には、車体側面を構成するスライドドア19(ドア)が配置されている。このスライドドア19の上部には開口窓21が設けられ、該開口窓21の枠体23における前方下部の角部には、インサイドハンドル25が車室内側に配設されている。即ち、インサイドハンドル25は、スライドドア19の前端部の上部における車室内側に配置されている。このインサイドハンドル25は、前後方向に揺動可能に支持され、インサイドハンドル25を揺動させると、スライドドア19のロックが解除されてスライドドア19の開成が可能になる。従って、インサイドハンドル25を揺動させてスライドドア19のロックを解除させたのち、スライドドア19を車両後方にスライドさせることによって、スライドドア19を開けることができる。なお、隔壁部材5のフランジ部13に設けられた留め部15は、インサイドハンドル25と同等の高さに配置され、インサイドハンドル25に近接して配置されている。即ち、インサイドハンドル25は、隔壁部材5の車幅方向における車外側端部に設けられた留め部15よりも後側で留め部15に近接した位置に配置されている。
【0012】
図3に示すように、仕切り板7は、下端部7aが隔壁部材5の上端に結合されており、上端部7bが天井材27に結合されている。また、仕切り板7の車幅方向における車両中央の下部には、正面視が略矩形状の開閉扉29が設けられている。開閉扉29を開くことで、開口部31を介して運転者と乗員との間で地図等の小物の受け渡しを行うことができる。なお、隔壁部材5の下側には、フロアパネル33が配設されている。
【0013】
また、図3に示すように、隔壁部材5は、車両前側に配置された金属製の前面パネル35と該前面パネル35の後側に配設された樹脂製の内装材37とを有する。前面パネル35の剛性は内装材37の剛性よりも大きいため、隔壁部材5の全体の剛性は、前面パネル35の剛性によってほぼ決まる。前面パネル35は、高さ方向の上側の上部パネル39と、該上部パネル39の下側に配置された下部パネル41と、が接合されて構成される。また、前面パネル35は、側面視において全体的に前方に向けて膨出するJ字状に形成されている。具体的には、前面パネル35の上部パネル39は、下方に行くに従って前方に行くように膨出し、下部パネル41はほぼ上下方向に沿って延在している。なお、図3,6,7では、前面パネル35の前側を被覆する被覆材を省略している。
【0014】
図4,5に示すように、隔壁部材5の前面パネル35は、正面視または背面視において矩形状に形成されている。前面パネル35の裏面(後面)における上下方向中央部には、車幅方向に沿って横長の補強ブラケット43が結合されており、下部には複数の開口45が形成されている。前面パネル35の上縁部には、仕切り板7の下端部7aが車幅方向に沿った4カ所の締結部47を介して締結されており、内装材37を前面パネル35に固定するための支持ブラケット49が取り付けられている。そして、前面パネル35の裏面における左端部には、図4図7に示すように、上下方向に延在する縦長で矩形状の補強パネル51が裏面に当接(即ち、面接触)して接合されている。
【0015】
また、図4,5に示すように、前面パネル35の左端の上端角部は、センターピラー11に前面パネル35を結合するピラー結合部53に設定されている。具体的には、ピラー結合部53には、上側に左右一対のボルト挿通孔h1が形成され、下側に左右一対のボルト挿通孔h2が形成されている。そして、図7に示すように、センターピラー11には、センターピラー11の後端部に接合されて車幅方向内側に延在すると共にボルト挿通孔が形成された取付ブラケット55が設けられている。前面パネル35のピラー結合部53とセンターピラー11側の取付ブラケット55とを互いの挿通孔を重ね合わせた状態で当接させたのち、ボルト57とナットで両者を結合している。このように、前面パネル35のピラー結合部53とセンターピラー11側の取付ブラケット55との結合部が前述した留め部15である。なお、図7に示すように、内装材37には、ボルト57に対応する位置に円形の孔が形成され、樹脂キャップ59で前記孔を塞いでいる。
【0016】
図6図7の二点鎖線とに示すように、前面パネル35の左側部には、傾斜面部61が形成されている。なお、図7における前面パネル35は、実線が図5のVII−VII線による断面、二点鎖線が図5のVI−VI線による断面を示している。この傾斜面部61は、前面パネル35の車幅方向における車外側端部63(左端部)から車両中央CLに向けて延在しており、平面視において、車外側端部63から車両中央CLに近づくに従って車両前方側に行くように傾斜している。
【0017】
また、傾斜面部61の車幅方向の内側(右側)に隣接する部位には、傾斜面部61の車幅方向における車両中央側の端縁65で折れ曲がって車幅方向に沿って延在する一般面部67が配置されている。これらの傾斜面部61と一般面部67との境界は、上下に延在する稜線69を形成している。補強パネル51は、図4〜7に示すように、傾斜面部61の裏面に当接して接合している。具体的には、補強パネル51の車幅方向における車外側端縁は前面パネル35の車外側端縁と一致して配置され、補強パネル51の上端縁は前面パネル35の上端縁と一致して配置され、補強パネル51の車幅方向における車内側端縁は前面パネル35の稜線69と一致するように配置されている。このように、傾斜面部61に、稜線69まで延在する補強パネル51を重ねて取り付けている。
【0018】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0019】
(1)本実施形態に係る車両室内構造では、車室内に配置された運転者用座席1と該運転者用座席1の車両後方側に配置された乗員用座席4との間に、車幅方向に沿って隔壁部材5を延在させている。乗員用座席4側のスライドドア19(ドア)の開操作用のインサイドハンドル25を、隔壁部材5の車幅方向における車外側端部63よりも後側で車外側端部63に近接した位置に設定している。隔壁部材5は、車幅方向における車外側端部63から車両中央CLに近づくに従って車両前方側へ行くように傾斜する傾斜面部61を有する。
【0020】
車両の側面に側突荷重が入力されて、隔壁部材5に対して車幅方向に圧縮する荷重が入力された場合、隔壁部材5の傾斜面部61は、車両前方に向けて膨出変形をする。ここで、スライドドア19のインサイドハンドル25が隔壁部材5の車幅方向における車外側端部63の後側に近接して配置されているが、隔壁部材5の傾斜面部61の変形によって、隔壁部材5の車外側端部63は、スライドドア19のインサイドハンドル25から離れる方向に移動する。従って、隔壁部材5がインサイドハンドル25に接触しないため、側突時にスライドドア19が開くことを抑制することができる。
【0021】
なお、図7に示すように、図5のVII−VII線による断面(図7の実線)においては、傾斜面部61が車両中央CLに近づくに従って車両後方側に行くように形成されている。この部位は、図4に示す前面パネル35における上端角部71であり、この上端角部71は傾斜面部61の全体に対して非常に面積が小さいため、傾斜面部61全体の変形に対しての影響は小さくなる。従って、傾斜面部61は、上端角部71以外の大きな面積の部位が車両前方側に変形し、隔壁部材5の車外側端部63は、スライドドア19のインサイドハンドル25から離れる方向に移動する。
【0022】
(2)隔壁部材5は、傾斜面部61と該傾斜面部61の車幅方向における車両中央側の端縁65で折れ曲がって車幅方向に沿って延在する一般面部67とを有する。これらの傾斜面部61と一般面部67との境界は稜線69を形成し、傾斜面部61に、稜線69まで延在する補強パネル51を重ねて取り付けている。
【0023】
補強パネル51によって傾斜面部61の剛性が向上するため、稜線69を境に折れ曲がりやすくなる。よって、車両の側面に側突荷重が入力された場合に、隔壁部材5における傾斜面部61は、稜線69を境に車両前方側に折れ曲がりやすくなり、隔壁部材5は車両前方に向けて更に膨出変形しやすくなる。従って、車両の側突時に、隔壁部材5の車幅方向における車外側端部63は、スライドドア19のインサイドハンドル25から更に離れる方向に移動するため、スライドドア19が開くことを更に抑制することができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【0025】
本出願は、2013年2月19日に出願された日本国特許願第2013−029929号に基づく優先権を主張しており、これらの出願の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明による車両室内構造によれば、車両の側面に側突荷重が入力された場合、隔壁部材の傾斜面部は、車両前方に向けて膨出変形をするため、隔壁部材の車外側端部は、ドアのインサイドハンドルから離れる方向に移動する。従って、隔壁部材がインサイドハンドルに接触しないため、側突時にドアが開くことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0027】
CL 車両中央
1 運転者用座席
4 乗員用座席
5 隔壁部材
19 スライドドア(ドア)
25 インサイドハンドル
51 補強パネル
61 傾斜面部
63 車外側端部
67 一般面部
69 稜線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7