(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
略矩形の電解質膜の両面にアノードおよびカソードの略矩形の電極層を備える膜電極接合体と略矩形のセパレータとを積層して形成されるセル積層体であって、内部に、アノード流路、カソード流路、および冷却流体流路を備えるセル積層体と、
前記セル積層体の外部に設けられ、前記セル積層体に対してアノードガス、カソードガスおよび冷却流体のそれぞれの流体を供給または排出する外部マニホールドと、を有し、
前記セル積層体は、少なくとも前記アノード流路および前記カソード流路が複数の線状リブから構成され、アノード流路の方向とカソード流路の方向とが同じであり、前記アノード流路または前記カソード流路の方向に沿う前記電極層の長さ(L)と、前記アノード流路または前記カソード流路の方向に対して直交する幅方向の前記電極層の幅(W)との比であるアスペクト比R(L/W)が1未満であり、かつ、前記アノード流路および前記カソード流路における両端の流路開口部がそれぞれ2個以上設けられ、前記流路開口部が積層されて流体供給用の内部マニホールドと流体排出用の内部マニホールドとをアノードガスおよびカソードガスごとに2以上構成し、
アノードガス用の前記外部マニホールドおよびカソードガス用の前記外部マニホールドは、前記流体供給用の内部マニホールドに供給側連通部を介して接続する流体供給用の外部マニホールドと、前記流体排出用の内部マニホールドに排出側連通部を介して接続する流体排出用の外部マニホールドとを有し、
前記流体供給用および前記流体排出用の外部マニホールドのそれぞれが、前記セル積層体の幅方向に伸びて略平行に配置され、
アノードガスおよびカソードガスの少なくとも1つの流体に関して、前記供給側連通部および前記排出側連通部は、前記内部マニホールドに接続される第1の補助マニホールドと、前記外部マニホールドの中心線および前記第1の補助マニホールドの中心線のそれぞれに対して交差する中心線を備えかつ前記外部マニホールドに接続される第2の補助マニホールドとを有している、燃料電池。
アノードガスおよびカソードガスの少なくとも1つの流体に関して、前記流体供給用の外部マニホールドの端部に開口した供給口、および前記流体排出用の外部マニホールドの端部に開口した排出口は、前記セル積層体における積層方向の一方の端部側に位置し、かつ、同じ方向に開口している、請求項1に記載の燃料電池。
カソードの前記外部マニホールドと、アノードの前記外部マニホールドとが重なり合って配置され、かつ、カソードの前記外部マニホールドがアノードの前記外部マニホールドよりも前記セル積層体に近い位置に配置されている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の燃料電池。
カソードの前記外部マニホールドと、アノードの前記外部マニホールドとが重なり合って配置され、かつ、カソードの前記外部マニホールドがアノードの前記外部マニホールドよりも前記セル積層体に遠い位置に配置されている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の燃料電池。
少なくともカソードにおいて、前記内部マニホールドが鉛直方向に設けられ、かつ、当該内部マニホールドに接続する前記外部マニホールドが前記セル積層体の下方位置に配置されている、請求項1または2に記載の燃料電池。
少なくともカソードにおいて、前記内部マニホールドが水平方向に設けられ、かつ、当該内部マニホールドに接続する前記外部マニホールドが、前記内部マニホールドよりも下方位置に配置されている、請求項1または2に記載の燃料電池。
アノードガスおよびカソードガスの2つの流体に関して、流体供給用の前記外部マニホールド、前記供給側連通部における前記第1と第2の補助マニホールド、前記排出側連通部における前記第1と第2の補助マニホールド、および流体排出用の前記外部マニホールドがエンドプレート内に設けられている、請求項1に記載の燃料電池。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
(第1の実施形態)
図1〜
図3に示すように、第1の実施形態の燃料電池1は、スタック型燃料電池であり、一組のシート状のセパレータ2と、シート状の膜電極接合体3とを積層した燃料電池の一単位である単セル4が、複数積層されたセル積層体20を有している。単セル4の積層数は、特に限定されず、単一の単セル4のみであっても、単セル4を複数積層したものであっても、本発明に係る燃料電池に含まれる。セル積層体20は、単セル積層方向の両端に集電板(図示せず)が配置されている。集電板は、セル積層体20において生じた起電力を取り出す出力端子を備えている。セル積層体20の両端は、集電板の外側に配置した一対のエンドプレート31、32によって挟み込まれる。これによって燃料電池スタックが構成される。セル積層体20の好ましくは外部下方に配流装置100が接続されている。
【0023】
図1、
図8〜
図11に示すように、配流装置100には、燃料電池1に必要な各種流体をセル積層体20に対して供給または排出する外部マニホールド42、43、44が設けられている。第1の実施形態にあっては、エンドプレート31、32のうち一方のエンドプレート32の内部に、すべての流体の外部マニホールド42、43、44を設けている。なお、外部マニホールド42、43、44を総称して、「外部マニホールド41」ともいう。以下、第1の実施形態の燃料電池1について詳述する。
【0024】
[膜電極接合体]
膜電極接合体3は、
図4に示すように、順次奥から手前に向かって、ガス拡散層5a−触媒層6a−電解質膜7−触媒層6b−ガス拡散層5bの5層からなる接合体である。膜電極接合体3は、平面視略矩形状とされている。膜電極接合体3は、同じく略矩形状のセパレータ2と組み合わせ、酸素(酸化ガス)および水素(燃料ガス)を供給もしくは排出することによって、燃料電池を構成する機能を有している。
【0025】
膜電極接合体3において、水素側の触媒層6aを備える面をアノード、酸素側の触媒層6bを備える面をカソードと呼ぶ。膜電極接合体3は、MEA(membrane electrode assembly)、ガス拡散層5は、GDL(gas diffusion lyaer)と呼ぶことがある。
【0026】
また、触媒層6a−電解質膜7−触媒層6bの3層を、CCM(catalyst coated membrane)、触媒層6(6a、6bを総じて6と称する場合がある。)−ガス拡散層5(5a、5bを総じて5と称する場合がある。)の2層を、ガス拡散電極もしくはGDE(gas diffusion electrode)と呼ぶことがある。また、触媒層6およびガス拡散層5からなる層を電極層と呼ぶことがあり、ガス拡散電極を単に電極と呼ぶことがある。
【0027】
なお、上記膜電極接合体3およびセパレータ2は完全な矩形状でなくても良く、後述する流路長Lおよび流路幅Wが特定できるならば、略矩形状であっても良い。つまり、これらは、矩形の角部が面取りされていても良く、さらに楕円形状であっても良い。
【0028】
[ガス拡散層]
ガス拡散層5a、5bは、燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化ガスを触媒層6a、6bへ供給する機能、および触媒層6a、6bとセパレータ2との間で電子を授受する機能を有する。ガス拡散層5a、5bは、本発明の目的を損なわない範囲で、表層もしくは内部もしくはその両方に他の部材(層)をさらに含んでもよい。例えば、ガス拡散層5a、5bの触媒層6a、6b側に、カーボン粒子を含むカーボン粒子層を設けてもよい。
【0029】
ガス拡散層5a、5bは、導電性を有する材料から構成された多孔質体であることが好ましく、紙、不織布、織布、編布もしくは網を含む、繊維材料であることがより好ましい。導電性を有する材料としては、例えば炭素材料や金属材料が挙げられる。
【0030】
ガス拡散層5が繊維材料によって構成される場合は、表面における平均繊維間距離の半値rは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましく、15μm以下がより更に好ましく、10μm以下が特に好ましく、5μm以下が最も好ましい。ここで定義する平均繊維間距離の半値rとは、平均繊維間距離の半分の距離をいう。つまり、ガス拡散層が縦線と横線からなる平織の繊維材料からなる場合、隣接する2本の縦線又は横線の間の距離の半分を指す。
【0031】
なお、
図4では、上記ガス拡散層5a、5bおよび触媒層6a、6bは、別個の層となっている。しかし、ガス拡散層と触媒層とは一体化され、単一の層となっていてもよい。
【0032】
[アスペクト比]
燃料電池1は、上述したように、略矩形の電解質膜7の両面にアノードおよびカソードの略矩形の電極層(触媒層6およびガス拡散層5)を備える膜電極接合体3と略矩形のセパレータ2とを積層して形成されるセル積層体20を有している。
【0033】
セル積層体20の内部には、アノード流路、カソード流路、および冷却流体流路を備えている。これら3つの流路のうち、少なくともアノード流路およびカソード流路は複数の線状リブから構成されている。それぞれの流路は、対向する二辺の間に形成され、その一方から燃料ガス(アノードガス)、酸化ガス(カソードガス)、および冷却流体等を導入し、他の一辺から排出する構造を有する。
【0034】
本実施形態の燃料電池にあっては、流路の方向に沿う電極層の長さ(L)と、流路の方向に対して直交する幅方向の電極層の幅(W)との比であるアスペクト比R(L/W)が1未満である。
【0035】
具体的には、略矩形をなしている膜電極接合体3の電極層において、
図5(B)に示すように、酸化ガスの流れる方向(矢印M1で示す方向)を短辺、酸化ガスの流れる方向に対して直交する方向(矢印M2で示す方向)を長辺としたとき、アスペクト比Rは、R=短辺/長辺=L/Wで定義される。膜電極接合体3のアスペクト比Rは、厳密にいうと、発電が起こるアクティブエリアに設けられた触媒層6a、6bの幅(W)に対する長さ(L)の比(L/W)である。なお、この実施形態では、膜電極接合体3は触媒層6a、6bを含む概念であるため、便宜上、以下、膜電極接合体3のアスペクト比Rと表現する。
【0036】
なお、上述では、酸化ガスの流れる方向を短辺、酸化ガスの流れる方向に対して直交する方向を長辺とし、膜電極接合体3のアスペクト比Rを、R=短辺/長辺=L/Wと定義した。しかしながら、アノード側における燃料ガスの流れる方向もしくは冷却層における冷却流体の流れる方向を短辺、燃料ガスの流れる方向に対して直交する方向もしくは冷却層における冷却流体の流れる方向に対して直交する方向を長辺とし、膜電極接合体3のアスペクト比Rを定義してもよい。
【0037】
膜電極接合体3のアスペクト比Rは0.01以上1未満である。アスペクト比の下限値は、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上が更に好ましい。一方、アスペクト比の上限値は、0.9未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.7未満が更に好ましく、0.6未満が最も好ましい。アスペクト比Rが0.01未満の場合、燃料電池の外形が細長くなりすぎるため、車載等を考慮する際に支障が生じる可能性がある。
【0038】
より詳細に説明すると、
図3に示すように、膜電極接合体3のアスペクト比Rが0.01以上1未満の矩形状の場合、セパレータ2の形状も膜電極接合体3に合わせるように矩形状にする。そして、例えば、
図7(A)に示すように、セパレータ2Aが高アスペクト比(Rが1以上)である場合、流路長も長くなるため、圧力損失が増大する。これに対し、
図7(B)に示すように、セパレータ2Bが低アスペクト比(Rが0.01以上1未満)である場合、流路長が短くなるため、セパレータ2Aに比べて、圧力損失が減少する。つまり、セパレータ2Aと面積が同じで、かつ、流路への流量が同じ場合でも、セパレータ2Bのようにアスペクト比Rを下げることによって、圧力損失を小さくすることができる。そのため、
図7(C)のように、アスペクト比Rを小さくし、かつ、流路の高さを低くした場合でも、セパレータ2Aと同等の圧力損失を維持することができるとともに、セパレータ2自体の高さを低くすることができる。
【0039】
また、流路の断面積は、セパレータ2Bの流路よりもセパレータ2Cの流路の方が小さくなるため、反応ガスの流速は、セパレータ2Bの流路よりもセパレータ2Cの流路の方が早くなる。その結果、流路内に存在する生成水を、反応ガスにより吹き飛ばすことができるため、フラッディングを抑制することができる。特に、セパレータ2Cのような構成は、生成水が滞留しやすいカソード側に適用することが好ましいが、アノード側に適用した場合、もしくは冷却流体に適用した場合でも、燃料電池の小型化に寄与することができる。
【0040】
ここで、本実施形態の燃料電池においては、燃料ガスの流れる方向が酸化ガスの流れる方向と平行であることが好ましい。しかし、燃料ガスの流れる方向が酸化ガスの流れる方向と垂直(クロスフロー)にすることも可能である。平行である場合、燃料ガスの流れる方向と酸化ガスの流れる方向が同方向(コフロー)、逆方向(カウンターフロー)のいずれも可能であるが、カウンターフローが好ましい。
【0041】
また、本実施形態においては、冷却流体の流れる方向が酸化ガスの流れる方向と平行であることが好ましいが、垂直(クロスフロー)とすることも可能である。平行である場合、冷却流体の流れる方向と酸化ガスの流れる方向が同方向(コフロー)、逆方向(カウンターフロー)のいずれも可能であるが、コフローの好ましい。
【0042】
[流路開口部]
本実施形態において、それぞれの流路(アノード流路、カソード流路、および冷却流体流路)における両端のそれぞれに流路開口部が2個以上設けられている。2個以上の流路開口部を設けることによって、幅方向に広い本実施形態の燃料電池においても、ガスおよび冷却流体を幅方向に均等に供給することが容易となる。
【0043】
図5(B)に示すように、膜電極接合体3の対向する二辺(長辺)の外周部に、流路開口部として、複数の燃料ガス流路開口部9、冷却水流路開口部10、および酸化ガス流路開口部11が設けられている。燃料ガス流路開口部9と酸化ガス流路開口部11との間に、冷却水流路開口部10を挟んで設けられている。必要に応じて、冷却水流路開口部10は、膜電極接合体3の外周部短辺に配置されていてもかまわない。
図5(C)の符号「8」は拡幅部を表し、符号「12」はシール材を表している。
【0044】
図4、および
図5(A)に示すように、電解質膜7の対向する二辺(長辺)の外周部にも、流路開口部として、複数の燃料ガス流路開口部9、冷却水流路開口部10、および酸化ガス流路開口部11が設けられている。しかし、流路開口部は必ずしも電解質膜7に設ける必要はない。例えば、触媒層と同じ平面形状を有する電解質膜の外縁に沿って、流路開口部が設けられた樹脂製のキャリアシートを配置する。そして、電解質膜の外縁とキャリアシートの内縁を気密的に密着させる。これによって、
図4の膜電極接合体3と同じ機能を発現させることが可能となる。
【0045】
また、
図5(B)、および
図5(C)に示すように、膜電極接合体3のカソード側およびアノード側となる面の外周縁には、シール材12がそれぞれ設けられている。具体的には、電解質膜7のカソード側となる面の外周縁には、全外周を取り囲むと共に燃料ガス流路開口部9と冷却水流路開口部10の回りを取り囲むようにしてシール材12が設けられている。但し、酸化ガス流路開口部11の回りにはシール材12は設けられていない。一方、電解質膜7のアノード側となる面の外周縁には、図示は省略するが、全外周を取り囲むとともに酸化ガス流路開口部11と冷却水流路開口部10の回りを取り囲むようにしてシール材12が設けられている。但し、燃料ガス流路開口部9の回りにはシール材12は設けられていない。
【0046】
シール材12は、どの流体(燃料ガス、酸化ガス、冷却流体)を膜電極接合体3に流通させるかを選択するスイッチング機能を有する。例えば、
図5(B)では、酸化ガス流路開口部11の前面においてシール材12が開いていることから、膜電極接合体3のカソード側を示していることが分かる。
【0047】
図5(A)に示すように、酸化ガス流路開口部11の断面積の和AOxが、カソード触媒層6bの触媒面積Acatの5%以上20%以下であることが好ましい。AOxが5%未満の場合は、膜電極接合体3の幅方向M2および積層方向への酸化ガス配流性が低下するとともに、酸化ガス流路開口部11内の通気圧力損失が増加する可能性がある。逆に、AOxが20%を超える場合は、燃料電池の容積が大きくなるため好ましくない。
【0048】
燃料ガス流路開口部9の断面積の和AReが、アノード触媒層6aの触媒面積Acatの5%以上20%以下であることが好ましい。AReが5%未満の場合は、膜電極接合体3の幅方向M2への燃料ガス配流性が低下するとともに、燃料ガス流路開口部9内の通気圧力損失が増加する可能性がある。逆に、AReが20%を超える場合は、燃料電池の容積が大きくなるため好ましくない。
【0049】
酸化ガス流路開口部11の数が1つのアクティブエリア(触媒層6a、6bが存在する領域)に対して複数に分割されていることが好ましい。この酸化ガスの流路開口部分割数NOxの下限は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、15以上がより更に好ましい。NOxを2以上とすることによって、酸化ガスを膜電極接合体3により一層容易かつ均一に導入することができる。NOxの上限は、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、30以下が更に好ましく、20以下がより更に好ましい。NOxが100を超える場合、燃料電池が非常に大型である場合には支障は少ないが、酸化ガス流路開口部11毎に必要なシール材の面積が大きくなる。そのため、本願の目的である小型化を達成することが難しい可能性がある。
図5(A)(B)では、膜電極接合体3の長辺(幅W)の一方において、酸化ガス流路開口部11が4つに分割されている。
【0050】
酸化ガス流路開口部11の場合と同様に、燃料ガスの流路開口部分割数NReの下限は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、15以上がより更に好ましい。NReの上限は、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、30以下が更に好ましく、20以下がより更に好ましい。
図5(A)(B)では、膜電極接合体3の長辺(幅W)の一方において、燃料ガス流路開口部9が4つに分割されている。
【0051】
[拡幅部]
拡幅部8は、隣接する異種流体用の流路開口部の前面に配置される触媒層に酸化ガスもしくは燃料ガスを供給するために設けられる流路である。例えば、
図5(B)(C)に示すように、各流路開口部9、10、11と触媒層6a、6bとの間に一定の隙間(距離)L’を設けることによって、この隙間を拡幅部とすることができる。より具体的には、例えば、酸化ガスにおける拡幅部8は、燃料ガス流路開口部9および冷却水流路開口部10の周囲を取り囲むシール材12と触媒層6a、6b(実際には、触媒層6a、6b上に設けられたガス拡散層5a、5b)との間の部位に相当する。
【0052】
このような拡幅部8を設けることによって、
図5(C)に示すように、酸化ガス流路開口部11から流出した酸化ガスが拡幅部8を通じて膜電極接合体3の幅方向M2に拡散する。その後、拡散した酸化ガスがガス拡散層5bおよび触媒層6bに均等に供給される。そのため、MEAアクティブエリア全体で効率的に発電を行うことが可能となる。
【0053】
拡幅部8の長さL’は、触媒層6a、6b(ガス拡散層5a、5bも含む)のガス流れ方向M1における流路長Lの5%以上20%以下であることが好ましい。拡幅部8の長さL’が流路長の5%以下の場合は隣接する異種流路開口部前面に酸化ガスもしくは燃料ガスを供給するための圧力損失が大となるため好ましくない。また、流路長の20%を超える場合は、燃料電池の小型化が困難になるため好ましくない。
【0054】
本実施形態においては、拡幅部8は流路開口部9、10、11の分割数に応じて分割されるようにしても良い。例えば、
図5(C)において、拡幅部8は、シール材12の一部をガス拡散層5a、5bに向けて突出させた拡幅部分割部14によって、膜電極接合体3の流路方向M1と平行に分割されている。この拡幅部8の分割数は、流路開口部分割数NOxと合わせることが好ましい。そして、
図5では、拡幅部の分割数を、酸化ガスの流路開口部分割数と合わせ、4としている。このような拡幅部8の分割によって、個々の流路開口部からの流体の供給を特定の流路幅に制限することが可能となる。その結果、流体の供給に予想以上の変動があった場合でも、膜電極接合体3の幅方向M2に対して均等に流体を供給することができる。
【0055】
[セパレータ]
単セル4におけるセパレータ2は、アノード側の触媒層6aからガス拡散層5aへ取り出された電子を集電して外部負荷回路へ送り出す機能、もしくは、外部負荷回路から戻ってきた電子をガス拡散層5bへ配電してカソード側の触媒層6bへ伝える機能を有する。更に、単セル4におけるセパレータ2は、ガス拡散層5の触媒層6側と反対側面にガス遮断機能がない場合に、ガス拡散層5と密着することによって、ガス遮断機能を担う。さらに、セパレータ2は、必要に応じて冷却層(冷却流体流路)を構成することによって、燃料電池の温度調整機能(冷却機能)を担う。
【0056】
セパレータ2は、セパレータ2の表裏の間に導電性を有する非多孔質体が好ましく、アルミ箔、金箔、ニッケル箔、銅箔、およびステンレス箔などの金属箔、もしくは天然黒鉛等の炭素材料から構成されるカーボンホイルがより好ましい。貴金属以外の金属材料から構成される場合は表面に酸化皮膜が形成されて電気抵抗が増大することがある。これを避けるために、金属材料の表面に当業者に公知の技術によって金・白金・パラジウム等の貴金属、導電性炭素材料、導電性セラミックス、導電性プラスチックのいずれかからなる表面層を備えることが好ましい。たとえば、貴金属の表面層はめっきやスパッタ等の公知の手段によって形成することが可能である。また、炭素材料の表面層はDLC(Diamond Like Carbon)と呼称される公知技術のうち、特にSP2リッチでグラファイト構造に近く導電性の高いものが広く用いられている。さらに、これらの表面層を安定化する等の目的でクロム等による下地層を設けることが知られている。
【0057】
図3において、セパレータ2の対向する二辺の外周部には複数の流路開口部が設けられているが、流路開口部は必ずしもセパレータに設ける必要はない。例えば、触媒層6と同じ平面形状を有するセパレータの外縁に沿って、流路開口部が設けられた樹脂製のキャリアシートを配置する。そして、セパレータの外縁とキャリアシートの内縁を気密的に密着する。これによって、
図3のセパレータと同じ機能を発現させることが可能である。なお、セパレータ2の流路開口部の機能は、膜電極接合体3の流路開口部の機能と等価である。
【0058】
[流路]
セパレータ2には、
図6(A)に示すように、その表面に酸化ガスまたは燃料ガスを流通させるための流路13を形成することができる。また、セパレータ2には、必要に応じて、その内部に冷却媒体を流通させるための流路(図示せず)を形成することができる。
【0059】
セパレータ2に設けられた流路の断面形状は、リブと呼ばれる凸部と、チャネルと呼ばれる凹部とからなる。このうち、リブがガス拡散層と接触することによって、触媒層において発生した電子を集電する。
図6(B)において、符号「a」「b」および「c」は、それぞれ、流路13の流路高(リブの高さ)、流路13のチャネル幅、および流路13のリブ幅を示している。
【0060】
セル積層体20の内部に備えられる流路において、リブ幅cは、リブ上端の幅およびリブ下端の幅の算術平均で定義される。リブ幅cの下限は、10μ以上が好ましく、50μ以上がより好ましく、100μ以上が更に好ましく、200μ以上がより更に好ましい。リブ幅cの上限は、1000μ以下が好ましく、500μ以下がより好ましく、400μ以下が更に好ましく、300μ以下がより更に好ましい。リブ幅cが10μより狭くても本発明の目的を達成するために大きな支障は生じないが加工手段が限定されることがある。リブ幅cが1000μを超える場合は、触媒層表面のうちガス拡散層を介してリブと接触する部分に十分な酸化ガスもしくは燃料ガスを供給しにくいことがある。リブの高さaの下限は、10μ以上が好ましく、50μ以上がより好ましく、100μ以上が更に好ましく、125μ以上がより更に好ましく、150μ以上が特に好ましい。リブの高さaの上限は、1000μ以下が好ましく、500μ以下がより好ましく、300μ以下が更に好ましく、200μ以下がより更に好ましく、180μ以下が特に好ましい。リブの高さaが10μより低いと流路断面積が小さくなって圧力損失が増大しすぎる場合がある。リブの高さaが1000μより高いと、流路断面積が大きくなって圧力損失が減少しすぎる場合がある。運転に伴い反応水が生成する燃料電池においては、流路内に所定の圧力損失を付与することで流路中に生成水が滞留しないよう酸化ガスや燃料ガスで常時排出する操作が一般に行われている。
【0061】
セル積層体20の内部に備えられる流路において、チャネルとは、リブとリブとに挟まれた空間をいう。チャネル幅bは、チャネル上端の幅およびチャネル下端の幅の算術平均で定義される。チャネル幅bの下限は、10μ以上が好ましく、50μ以上がより好ましく、100μ以上が更に好ましく、200μ以上がより更に好ましい。チャネル幅bの上限は、1000μ以下が好ましく、500μ以下がより好ましく、400μ以下が更に好ましく、300μ以下がより更に好ましい。ガス流量およびリブとチャネルとの幅の比率が同じであっても、チャネル幅bが10μより狭いとリブの表面摩擦の影響が大きくなるため圧力損失が増大しすぎる場合がある。チャネル幅bが1000μより大きいと、膜電極接合体3の両面に圧力差が生じた場合に流路面積が拡大もしくは縮小しすぎる場合がある。
【0062】
流路13の水平形状は、概略矩形の触媒層の対向する二辺を最短距離で結ぶ直線形状に形成することが好ましい。この場合、例えば、
図5(B)に示すように、上方側に設けられた酸化ガス流路開口部11から酸化ガスが供給された場合、上方側の拡幅部8を通じて幅方向M2へ酸化ガスが拡散し、その後ガス流れ方向M1と平行である流路13を通じて下方側に流れる。そして、下方側の拡幅部8を通じて、下方側に設けられた酸化ガス流路開口部11から排出される。そのため、酸化ガスを効率良くガス拡散層5bおよびカソード触媒層6bに分散させることができる。
【0063】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、流路13を最短距離以上の直線または曲線とすることもできる。この場合、ガス拡散層を介して触媒層の全面に燃料電池反応に必要な燃料ガスと酸化ガスを均等に分配するため、触媒層全面をカバーすることができる。
【0064】
流路13の製造方法としては、プレス加工や切削加工などの公知の手段を用いることができる。
【0065】
反応ガスが流通する流路13は、上述のように、セパレータ2の表面に設けられたリブとチャネルにより形成することができる。しかし、これに限らず、膜電極接合体3のガス拡散層5a、5bに、流路13と同等の機能を付与することが可能である。例えば、ガス拡散層5a、5bに、流路13と同等の機能を発揮する溝を形成することができる。この場合、セパレータ2の表面に上記リブとチャネルからなる流路13を形成する必要は無いため、セパレータを平滑にすることができる。ガス拡散層5a、5bとセパレータ2との両方に上記流路を設けても良い。
【0066】
[電解質膜]
電解質膜7は、プロトンを輸送し、電子を絶縁する機能を有する一種の選択透過膜である。電解質膜7は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系電解質膜と炭化水素系電解質膜とに大別される。これらのうち、フッ素系電解質膜は、C−F結合を有しているために耐熱性や化学的安定性に優れる。例えば、電解質膜7には、Nafion(登録商標、デュポン社製)の商品名で知られるパーフルオロスルホン酸膜が広く使用されている。
【0067】
[触媒層]
カソード触媒層6bは、触媒成分が担持されてなる電極触媒、およびアイオノマを含む層である。電極触媒は、プロトンと電子と酸素とから水を生成する反応(酸素還元反応)を促進する機能を有する。電極触媒は、例えば、カーボンなどからなる導電性担体の表面に、白金などの触媒成分が担持されてなる構造を有する。
【0068】
アノード触媒層6aは、触媒成分が担持されてなる電極触媒、およびアイオノマを含む層である。電極触媒は、水素をプロトンおよび電子に解離する反応(水素酸化反応)を促進する機能を有する。電極触媒は、例えば、カーボンなどからなる導電性担体の表面に、白金などの触媒成分が担持されてなる構造を有する。
【0069】
[内部マニホールド]
膜電極接合体3またはセパレータ2の外周部長辺に設けられた燃料ガス流路開口部9、冷却水流路開口部10、酸化ガス流路開口部11は、単セル4の積層にともなって、隣接する単セル4に含まれる流路開口部9、10、11と相互に連結される。これにより、
図2に示すように、流体ごとに、セル積層体20と同じ長さの複数の内部マニホールド21(22、23、24の総称)を構成する。符号「22」は、燃料ガス流路開口部9が積層されて形成される燃料ガス用の内部マニホールドを示し、符号「23」は、冷却水流路開口部10が積層されて形成される冷却水用の内部マニホールドを示し、符号「24」は、酸化ガス流路開口部11が積層されて形成される酸化ガス用の内部マニホールドを示している。内部マニホールド22、23、24のそれぞれには、流体供給用の内部マニホールド21と、流体排出用の内部マニホールド21とが含まれる。
【0070】
内部マニホールド21に関して、流体供給用と流体排出用とを区別して説明するときには、流体供給用については符号に添え字「a」を付して、流体供給用の内部マニホールド22a、23a、24aという。また、流体排出用については符号に添え字「b」を付して、流体排出用の内部マニホールド22b、23b、24bという。
【0071】
燃料ガス流路開口部9は燃料ガスの流路における両端のそれぞれに2個以上設けられ、酸化ガス流路開口部11は酸化ガスの流路における両端のそれぞれに2個以上設けられる。冷却水流路開口部10も冷却流体流路における両端のそれぞれに2個以上設けられる。このため、セル積層体20には、流体供給用の内部マニホールド21および流体排出用の内部マニホールド21が、それぞれの流体ごとに2以上構成される。
【0072】
流路開口部9、10、11および内部マニホールド22、23、24の数は、アスペクト比Rに応じて増やすことができる。つまり、流体供給用の内部マニホールド21と流体排出用の内部マニホールド21とを、それぞれの流体ごとに、3以上設けてもよい。アスペクト比Rに応じて数を増やすことによって配流性を向上させることができるからである。
【0073】
[外部マニホールド]
図1に示したように、セル積層体20の外部には、セル積層体20に対してそれぞれの流体を供給または排出する外部マニホールド41(42、43、44の総称)が設けられている。符号「42」は、燃料ガス用の外部マニホールドを示し、符号「43」は、冷却水用の外部マニホールドを示し、符号「44」は、酸化ガス用の外部マニホールドを示している。
図9〜
図11に示すように、外部マニホールド42、43、44は、それぞれの流体ごとに、流体供給用の内部マニホールド21に供給側連通部50aを介して接続する流体供給用の外部マニホールド41と、流体排出用の内部マニホールド21に排出側連通部50bを介して接続する流体排出用の外部マニホールド41とが含まれる。
【0074】
外部マニホールド41に関して、流体供給用と流体排出用とを区別して説明するときには、流体供給用については符号に添え字「a」を付して、流体供給用の外部マニホールド42a、43a、44aという。また、流体排出用については符号に添え字「b」を付して、流体排出用の外部マニホールド42b、43b、44bという。
【0075】
内部マニホールド21に接続して燃料電池に必要な流体を供給もしくは排出するため、セル積層体20の外部に、流体ごとに、外部マニホールド41が設けられる。外部マニホールド41は、複数の内部マニホールド21と接続するための複数の供給側連通部50a、排出側連通部50bを備えている。外部マニホールド41はさらに、燃料電池スタックの外部の流体装置と接続して流体を供給および排出するための供給口および排出口を備えている。
【0076】
図10に模式的に示すように、流体供給用の外部マニホールド42a(43a、44a)、および流体排出用の外部マニホールド42b(43b、44b)のそれぞれは、セル積層体20の幅方向に伸びて略平行に配置している。流体供給用および流体排出用の外部マニホールド41(42、43、44)において、供給口および排出口を同一面に開口することが好ましい。「平行」には、中心線同士が完全に平行である場合のほか、本発明の目的である配流性の向上を達成し得る限度において、平行状態から傾斜して中心線の延長線が交わるような場合も含まれる、と解釈されなければならない。
【0077】
図9〜
図11に示すように、供給側連通部50aは、流体供給用の内部マニホールド22a、23a、24aに接続される第1の補助マニホールド51aと、流体供給用の外部マニホールド42a、43a、44aの中心線および第1の補助マニホールド51aの中心線のそれぞれに対して交差する中心線を備えかつ流体供給用の外部マニホールド42a、43a、44aに接続される第2の補助マニホールド52aとを少なくとも有している。同様に、排出側連通部50bは、流体排出用の内部マニホールド22b、23b、24bに接続される第1の補助マニホールド51bと、流体排出用の外部マニホールド42b、43b、44bの中心線および第1の補助マニホールド51bの中心線のそれぞれに対して交差する中心線を備えかつ流体排出用の外部マニホールド42b、43b、44bに接続される第2の補助マニホールド52bとを少なくとも有している。なお、供給側連通部50aおよび排出側連通部50bを総称して、「連通部50」ともいい、第1の補助マニホールド51a、51bを総称して、「第1の補助マニホールド51」ともいい、第2の補助マニホールド52a、52bを総称して、「第2の補助マニホールド52」ともいう。
【0078】
図10に示したように、連通部50の第2の補助マニホールド52は、その中心線が、外部マニホールド41の中心線に対して交差し、かつ、内部マニホールド21に接続される第1の補助マニホールド51の中心線に対して交差する。「交差」には、中心線同士が直交する場合のほか、本発明の目的である配流性の向上を達成し得る限度において、直交状態から傾斜して交わる場合も含まれる、と解釈されなければならない。
【0079】
上記の構成は、外部マニホールド41と内部マニホールド21との間の連通部50において、各流体を実質的に2回以上交差させて流すことを特徴とするものである。ここにおいて、「実質的に2回以上交差する」とは、外部マニホールド41と内部マニホールド21という2本の管において、連通部50を介して互いの管と管との間を流体が流通するに際し、実質に2度にわたって中心流線の交差が直接または間接に観測されることを意味する。ここで、「直接または間接に観測される」とは、流体の流れを実験によって確認してもよいし、流体の流れをシミュレーションによって確認してもよいことを意味する。
【0080】
但し、たとえば、次のような接続形態については、「実質的に2回以上交差する」とはみなされない。つまり、2本の管を直交するように接触させ、一方の中心線が他方の管内に含まれるようになるまで接触部を切除して、互いに深く噛み合う形で流通部としての貫通口を設けた場合である。この接続形態にあっては、中心流線は実質的に2度にわたって屈曲するものの、斜行しているのみであり、配流性の向上を達成し得ないことから交差しているとはみなされない。
【0081】
低アスペクト構造を有し、流体供給用の内部マニホールド21と流体排出用の内部マニホールド21とをそれぞれの流体ごとに2以上有する燃料電池において、外部マニホールド41と内部マニホールド21との間において各流体を実質的に2回以上交差させて流す配流機構を設けることによって、燃料電池に必要な各種流体を、偏流を抑えて、単セル4の幅方向および積層方向に均等に供給もしくは排出することができる。この結果、効率的に発電を行うことが可能となり、小型高出力の燃料電池を提供することが可能となる。
【0082】
外部マニホールド41は、その中心線が内部マニホールド21の中心線よりも内側にオフセットされるように、配置するのが好ましい(
図8〜
図10を参照)。単セル4を積層する方向から見てセル積層体20の外側に外部マニホールド41を配置する場合に比べて、燃料電池が占める容積を小さくでき、車載レイアウトの自由度を高めることができるからである。
【0083】
酸化ガスの外部マニホールド44と、冷却水の外部マニホールド43と、燃料ガスの外部マニホールド42とが、セル積層体20における単セル4の積層方向に、重なり合って配置される場合には、冷却水の外部マニホールド43を酸化ガスの外部マニホールド44と燃料ガスの外部マニホールド42との間に配置すると、酸化ガスおよび燃料ガスの温調が容易になるため好ましい。一般的に、外部マニホールド41(42、43、44)がセル積層体20に近く配置されるほど、当該外部マニホールド41を流れる流体がセル積層体20に対して流入もしくは流出するまでの助走距離、すなわち連通部50の距離、特に第1の補助マニホールド51の距離を長く取ることができるために当該流体の流れが安定化し、内部マニホールド21(22、23、24)における流体の偏流を低減することができる。内部マニホールド21における流体の偏流が低減されると、各単セル4に各流体が均等に分配されるため燃料電池1の効率が向上するため好ましい。ここで、内部マニホールド21における偏流は助走距離と同時に流体の速度が遅いほど低減されるため、助走距離が短い場合においても第1の補助マニホールド51もしくは内部マニホールド21の断面積が大きい場合は偏流を低減することが可能である。当業者であれば、前記助走距離と前記断面積の関係から適切に外部マニホールド42、43、44の配置を決定することが可能である。
【0084】
外部マニホールド41は、燃料ガス、冷却水、酸化ガスのそれぞれに設けることが可能である。それぞれの流体において、外部マニホールド41(42、43、44)、および連通部50における第1と第2の補助マニホールド51、52を、エンドプレート32(または31)内に設けることが好ましい。外部マニホールド41および連通部50をエンドプレート32(または31)に一体化することによって、燃料電池の小型化を図ることができるからである。
【0085】
燃料ガス、冷却水、酸化ガスのすべての外部マニホールド41、およびすべての連通部50における第1と第2の補助マニホールド51、52を一方のエンドプレート32(または31)内に構成することによって、配流装置の容積を最小にすることも可能である。この場合、セル積層体20に最も近い層に酸化ガス用外部マニホールド44を、最も遠い層に燃料ガス用外部マニホールド42を、その中間に冷却水用外部マニホールド43を配置することが好ましい。3層の外部マニホールド42、43、44を備えたエンドプレート32(3段モノコックエンドプレート32)を構成した場合、冷却水が燃料ガスと酸化ガスの間に流通するため、各燃料電池用流体の温度が保持しやすくなり好ましいからである。
【0086】
外部マニホールド41の排出側の管の断面積と供給側の管の断面積との比率は、目的に応じて同じでも異なっていてもかまわない。但し、冷却水および空気を用いるカソードにおいて、外部マニホールド43、44の排出側の断面積は、供給側の断面積よりも大きいことが好ましい。燃料電池に供給される流体のうち、冷却水は、発電時において消費されない。また、酸化ガスとして空気を用いる場合は、酸素は消費されるものの、窒素は消費されないことから、アノードにおける燃料ガスに比べると、減少する量は少ない。このように流れの途中において流量が変化しない、もしくは減少量が少ない流体にあっては、排出側の断面積を、供給側の断面積よりも大きくすることによって、排出側における圧力損失を低減し、配流性を向上できるからである。
【0087】
なお、流れの途中において消費される燃料ガスにあっては、排出側と供給側との断面積の大小関係を設定することは一概にできないが、排出側と供給側における実際の流量変化に基づき当業者においては上記観点から適切に求めることが可能である。また、酸化ガスとして空気ではなく酸素を用いる場合にも、燃料ガスの場合と同様である。
【0088】
外部マニホールド42、43、44の各開口部は、各流体に対して同じ燃料電池スタック側面に開口していてもかまわないし、燃料電池スタックの反対側面に開口していてもかまわない。ただし、外部マニホールド42、43、44の各供給口および排出口は同一面に開口することが好ましい。本発明において、供給口および排出口を同一面に開口することをアルファベットの形状に似せてUフロー、供給口および排出口を反対側面に開口することをZフローと呼称する。本発明においてはUフローが好ましく、Zフローを用いる場合は、各内部マニホールドおよび各流路において、前記セル積層体の幅方向に流量むらが発生しやすい場合がある。第1の実施形態では、燃料ガス、冷却水、酸化ガスのすべての流体の外部マニホールド42、43、44および連通部50を同じエンドプレート32の中に設けてある。
図1に示すように、エンドプレート32の対向する側面のうち、第1の側面(図中左手前の側面)に、燃料ガス用外部マニホールド42の供給口および排出口を開口し、同じ第1の側面に、酸化ガス用外部マニホールド44の供給口および排出口を開口している。反対側の第2の側面に、冷却水用外部マニホールド43の供給口および排出口を開口している。外部マニホールド41は、エンドプレート32における第1の側面から第2の側面まで貫通する貫通孔から形成されている。燃料ガス用の外部マニホールド42および酸化ガス用の外部マニホールド44については、貫通孔を形成した後に、第2の側面の開口を塞ぎ板によって封止している。一方、冷却水用の外部マニホールド43については、貫通孔を形成した後に、第1の側面の開口を塞ぎ板33によって封止している。
【0089】
本実施形態の燃料電池1は、容積出力密度が高いことに加えて、燃料電池1に必要な流体を供給もしくは排出する出入口の配置に自由度が高いため、良好な車載性またはレイアウト性を提供することができる。
【0090】
[エンドプレート]
膜電極接合体3およびセパレータ2を交互に積層されて得られたセル積層体20は、積層方向の両端からエンドプレート31、32によって挟み込まれる。これによって燃料電池スタックが構成される。
図8、および
図9(A)に示すように、エンドプレート32におけるセル積層体20との接触面には複数の接続口34、35、36が形成されている。この接続口34、35、36を介して、エンドプレート32と内部マニホールド21との間において燃料電池1に必要な各種流体を供給もしくは排出する。符号「34」は、燃料ガス用の接続口を示し、符号「35」は、冷却水用の接続口を示し、符号「36」は、酸化ガス用の接続口を示している。
【0091】
[変位吸収機構]
電解質膜の含水乾燥による膨潤収縮等、セル積層体20の積層方向の寸法変化を吸収してセル積層体内部の圧力分布を均一にするため、燃料電池1の内部に変位吸収機構を設けることができる。変位吸収機構としては皿バネやゴムなどの弾性体から構成された当業者に公知の変異吸収機構を用いることができる。変位吸収機構は、エンドプレート31、32の少なくとも一方、かつ、エンドプレート31、32の内部か表面に備えられることが好ましい。
【0092】
前述したように、それぞれの流体において、外部マニホールド42、43、44、および連通部50における第1と第2の補助マニホールド51、52を、エンドプレート32(または31)内に設けることが好ましい。
【0093】
[配流装置]
図9(A)(B)に示すように、第1の実施形態の配流装置100は、それぞれの流体において、外部マニホールド41(42、43、44)と、連通部50(50a、50b)の第1と第2の補助マニホールド51(51a、51b)、52(52a、52b)とが形成されたブロック体60を有している。ブロック体60は、一方のエンドプレート32を構成している。
【0094】
ブロック体60においてセル積層体20が配置される側の面を一の面62とすると、矢印61によって示されるようにブロック体60の一の面62の側から見て、一の面62に近い側を流れる第1の流体用の外部マニホールド44と、一の面62から遠い側を流れる第2の流体用の外部マニホールド42と、第1と第2の流体の間を流れる第3の流体用の外部マニホールド43とが一部重なり合って配置されている。さらに、ブロック体60の一の面62の側から見て、第3流体用の外部マニホールド43が第1流体用の外部マニホールド44に重なり合わない延長部位63を含み、第2流体用の外部マニホールド42が第3流体用の外部マニホールド43に重なり合わない延長部位64を含んでいる。ブロック体60の一の面62がセル積層体20の端面に接続される。第1の実施形態の場合、上述したように、第1の流体は酸化ガス、第2の流体は燃料ガス、第3の流体は冷却水である。
【0095】
連通部50における第1と第2の補助マニホールド51、52は次のようにして形成される。
【0096】
第1流体(酸化ガス)用の供給側連通部50aについては、
図11(C)に示すように、一の面62の側から、第1流体用の外部マニホールド44aにのみ連通する第1の孔部71を形成する。第1の孔部71によって、第1流体用の外部マニホールド44aを区画形成する側壁部の一部が切除され、第1流体用の第1と第2の補助マニホールド51a、52aが形成される。
【0097】
第1流体用の排出側連通部50bについては、
図11(A)に示すように、一の面62の側から、第1流体用の外部マニホールド44bにのみ連通する第1の孔部71を形成する。第1の孔部71によって、第1流体用の外部マニホールド44bを区画形成する側壁部の一部が切除され、第1流体用の第1と第2の補助マニホールド51b、52bが形成される。
【0098】
第2流体(燃料ガス)用の供給側連通部50aについては、
図11(C)に示すように、一の面62の側から、延長部位64(
図9(B)を参照)において第2流体用の外部マニホールド42aにのみ連通する第2の孔部72を形成する。第2の孔部72によって、第2流体用の外部マニホールド42aを区画形成する側壁部の一部が切除され、第2流体用の第1と第2の補助マニホールド51a、52aが形成される。
【0099】
第2流体用の排出側連通部50bについては、
図11(A)に示すように、一の面62の側から、第2流体用の外部マニホールド42bにのみ連通する第2の孔部72を形成する。第2の孔部72によって、第2流体用の外部マニホールド42bを区画形成する側壁部の一部が切除され、第2流体用の第1と第2の補助マニホールド51b、52bが形成される。
【0100】
第3流体(冷却水)用の供給側連通部50aについては、
図11(B)に示すように、一の面62の側から、延長部位63(
図9(B)を参照)において第3流体用の外部マニホールド43aにのみ連通する第3の孔部73を形成する。第3の孔部73によって、第3流体用の外部マニホールド43aを区画形成する側壁部の一部が切除され、第3流体用の第1と第2の補助マニホールド51a、52aが形成される。
【0101】
第3流体用の排出側連通部50bについては、
図11(B)に示すように、一の面62の側から、延長部位63において第3流体用の外部マニホールド43bにのみ連通する第3の孔部73を形成する。第3の孔部73によって、第3流体用の外部マニホールド43bを区画形成する側壁部の一部が切除され、第3流体用の第1と第2の補助マニホールド51b、52bが形成される。
【0102】
第2の孔部72、および第3の孔部73の上部には、一の面62から孔部72、73に向けて傾斜する傾斜面が形成されている。これによって、燃料ガス用の接続口34、および冷却水用の接続口35に関して、
図11において左右方向の大きさを、酸化ガス用の接続口36の大きさと同じになるようにしている。
【0103】
配流装置100は、外部マニホールド41および連通部50を、エンドプレート32を構成するブロック体60に形成しているため、燃料電池1の小型化を図ることができる。さらに、外部マニホールド41、および連通部50における第1と第2の補助マニホールド51、52を切削加工によって形成できることから、配流装置100の製造を簡素にでき、多数の部品を溶接接合して組み立てる場合などに比較して安価に製造することができる。
【0104】
[燃料電池のメカニズム]
燃料電池1のメカニズムは以下のとおりである。すなわち、アノード触媒層6aに供給された水素からプロトンと電子が生成される。アノードで生成されたプロトンは、電解質膜7内部を移動してカソード触媒層6bに達する。一方、アノードで生成された電子は、導線(導体)を伝って燃料電池から取り出される。そして、上記電子は、外部負荷回路で電気エネルギーを消費した後、導線(導体)を伝ってカソードに戻り、カソード触媒層6bに供給された酸素と反応して水を生成する。
【0105】
[燃料電池の作動]
燃料電池1の作動は、一方の電極(アノード)に水素を、他方の電極(カソード)に酸素または空気を供給することによって行われる。燃料電池の作動温度は高温であるほど触媒活性が上がるために好ましいが、通常は水分管理が容易な50℃〜100℃で作動させることが多い。
【0106】
[燃料電池を搭載した車両]
図12(A)(B)には、本実施形態の燃料電池を搭載した車両の一例を示す。
図12(A)に示す車両18は、駆動源としての本実施形態の燃料電池1をエンジンルームに搭載している。
図12(B)に示す車両18は、駆動源としての本実施形態の燃料電池1をフロア下に搭載している。本発明を適用した例えば固体高分子形燃料電池(PEFC)やスタック型燃料電池は、出力性能に非常に優れているため、高出力を要求される車両用途に適している。
【0107】
[セル積層体20および外部マニホールド41のレイアウト]
図13(A)、13(B)、13(C)は、セル積層体20および外部マニホールド41のレイアウトの例を模式的に示す図である。
【0108】
図13(A)に示される燃料電池は、少なくともカソードにおいて、内部マニホールド24が鉛直方向に設けられ、かつ、当該内部マニホールド24に接続する外部マニホールド44がセル積層体20の下方位置に配置されている。セル積層体20は、単セル4が水平方向に沿うように配置されている。このようなレイアウトによれば、生成水を重力によって確実に排水することができ、耐フラッディング性を維持した燃料電池を提供できる。
【0109】
図13(B)に示される燃料電池は、少なくともカソードにおいて、内部マニホールド24が水平方向に設けられ、かつ、当該内部マニホールド24に接続する外部マニホールド44が、内部マニホールド24よりも下方位置に配置されている。セル積層体20は、単セル4が鉛直方向に沿うように配置されている。このようなレイアウトによっても、生成水を重力によって確実に排水することができ、耐フラッディング性を維持した燃料電池を提供できる。
【0110】
図13(C)に示される燃料電池は、少なくともカソードにおいて、外部マニホールド44が鉛直方向に設けられ、かつ、当該外部マニホールド44に接続する内部マニホールド24が水平方向に設けられている。セル積層体20は、単セル4が鉛直方向に沿うように配置されている。
【0111】
燃料電池スタックにおいて、燃料電池反応に伴う生成水を流路を経由して燃料電池スタックの外に円滑に除去することは安定的な発電を維持するにあたって常に考慮すべき問題である。
図13において、(A)または(C)では流路方向が水平方向であるため酸化ガスと水素ガスとが互いに平行流であっても対向流であっても生成水を流路を経由して燃料電池スタックの外に円滑に排出することができる。一方、(B)では流路方向が垂直方向であるため酸化ガスと水素ガスが互いに対向流のときは必ずどちらか一方のガスの流れが鉛直方向に下から上に流れることになり、ガスの流速が遅いときには生成水を流路を経由して燃料電池スタックの外に円滑に排出できない場合がある。この場合は酸化ガスと水素ガスの双方を鉛直方向に上から下に流れる平行流とすることで生成水を円滑に排出することができる。一般に、燃料電池反応においては酸化ガスと水素ガスは互いに対向流であることが好ましいため、(B)より(A)または(C)が好ましい。
【0112】
次に、(A)と(C)を比較すると、(A)では内部マニホールド24が鉛直方向に設けられるのに対して(C)では内部マニホールド24が水平方向に設けられる。一般的に重力を利用できる鉛直方向に設けられた内部マニホールド24のほうが排水性に優れるため、(C)より(A)が好ましい。ただし、排水性は重力以外にもガスの流速や表面処理など様々な手段によって改善できるため、(A)(B)(C)のレイアウトについては排水性だけではなく総合的に判断して選択することが望ましい。たとえば、単セル4の幅方向(長手方向)よりも燃料電池スタックの積層方向が長い場合は(C)のレイアウトを採用することで車両に搭載した場合の燃料電池スタックの高さを低く抑えることができる。これは、多くの場合において車両デザイン上好ましい。また(A)のレイアウトを採用して単セル4の幅方向と車両の幅方向を同じ向きにレイアウトすると、車両における燃料電池スタックの前後方向を短縮できるため、衝突時のクラッシュゾーン容積を大きくとることができる。
【0113】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、第1の実施形態の燃料電池1は、低アスペクト構造を有し、燃料電池に必要な流体を輸送する際の圧力損失が、同じセルピッチを有する高アスペクト構造を有する燃料電池よりも物理的に低くなる。このため、一定圧力損失で輸送する際には、より小さなセルピッチを用いることによって燃料電池の小型化を実現することが可能である。本発明に係る燃料電池1は、流体供給用の内部マニホールド21と流体排出用の内部マニホールド21とをそれぞれの流体ごとに2以上有している。このため、燃料電池1に必要な各種流体を、単セル4の幅方向に均等に供給もしくは排出することが可能であり、その効果は前記内部マニホールド21の数に比例する。
【0114】
そして、流体供給用の内部マニホールド22a(23a、24a)に供給側連通部50aを介して接続する流体供給用の外部マニホールド42a(43a、44a)と、流体排出用の内部マニホールド22b(23b、24b)に排出側連通部50bを介して接続する流体排出用の外部マニホールド42b(43b、44b)とを、セル積層体20の外部にセル積層体20の幅方向に伸びて略平行に配置している。これによって、燃料電池1全体をコンパクトに構成することができる。この結果、小型高出力の燃料電池1を提供することが可能となる。
【0115】
流体供給用および流体排出用の外部マニホールド41(42、43、44)において、同方向の端部に開口部を有している。外部マニホールド41における供給口をなす開口部と、排出口をなす開口部とが同一面に開口する。供給口および排出口を反対側面に開口する場合に比べて、内部マニホールド21(22、23、24)および流路において、セル積層体20の幅方向に流量むらが発生することを抑えることができる。
【0116】
外部マニホールド41と内部マニホールド21との間において各流体を実質的に2回以上交差させて流す配流機構を設けている。このため、燃料電池1に必要な各種流体を、内部マニホールド内の積層方向の偏流を抑えて、単セル4の幅方向および積層方向に均等に供給もしくは排出することができる。この結果、効率的に発電を行うことが可能となり、この観点からも、小型高出力の燃料電池を提供することが可能となる。
【0117】
外部マニホールド41の中心線が、内部マニホールド21の中心線よりも内側にオフセットされている。このため、単セル4を積層する方向から見てセル積層体20の外側に外部マニホールド41を配置する場合に比べて、燃料電池が占める容積を小さくでき、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0118】
内部マニホールド22、23、24内の積層方向の偏流は、外部マニホールドから連通部50を経て内部マニホールドに接続した直後の配流装置100に近い部分で生じやすいが、この偏流は、第1と第2の補助マニホールド51、52、内部マニホールド21の断面積が小さいほど、かつ、流量が大きいほど顕著になる。カソードの外部マニホールド44とアノードの外部マニホールド42のいずれをセル積層体20に近い位置に配置するかは一概に定められないが、第1と第2の補助マニホールド51、52および内部マニホールド21の断面積、および、流量に基づき、当業者においては上記観点から適切に定めることが可能である。
【0119】
例えば、カソードの外部マニホールド44と、アノードの外部マニホールド42とが重なり合って配置され、かつ、カソードの外部マニホールド44がアノードの外部マニホールド42よりもセル積層体20に近い位置に配置することができる。この配置の場合には、外部マニホールド42、44と内部マニホールド22、24との間の距離に関して、燃料ガスが流れる距離を、酸化ガスが流れる距離に比べて大きく取ることができる。この結果、燃料ガスの助走距離を大きく取ることができ、内部マニホールド22、24内の積層方向の偏流を抑えることによって、単セル4の幅方向および積層方向により一層均等に供給もしくは排出することができる。
【0120】
図示した実施形態とは逆の配置、すなわち、カソードの外部マニホールドと、アノードの外部マニホールドとが重なり合って配置され、かつ、カソードの外部マニホールドがアノードの外部マニホールドよりもセル積層体20に遠い位置に配置することもできる。
【0121】
少なくともカソードにおいて、内部マニホールド24が鉛直方向に設けられ、かつ、当該内部マニホールド24に接続する外部マニホールド44がセル積層体20の下方位置に配置されている。あるいは、少なくともカソードにおいて、内部マニホールド24が水平方向に設けられ、かつ、当該内部マニホールド24に接続する外部マニホールド44が、内部マニホールド24よりも下方位置に配置されている。このようなレイアウトによれば、生成水を重力によって確実に排水することができ、耐フラッディング性を維持した燃料電池を提供できる。
【0122】
それぞれの流体において、外部マニホールド41、および連通部50における第1と第2の補助マニホールド51、52がエンドプレート32内に設けられている。外部マニホールド41および連通部50をエンドプレート32に一体化することによって、燃料電池1の小型化を図ることができる。
【0123】
冷却流体および空気を用いるカソードにおいて、外部マニホールド43、44の排出側の断面積を供給側の断面積よりも大きく設定してある。流れの途中において流量が変化しない、もしくは減少量が少ない流体にあっては、排出側の断面積を、供給側の断面積よりも大きくすることによって、排出側における圧力損失を低減し、良好な配流性を実現することができる。
【0124】
流体供給用の内部マニホールド21と流体排出用の内部マニホールド21とを、それぞれの流体ごとに、3以上設けてもよい。アスペクト比Rに応じて数を増やすことによって配流性を向上させることができる。
【0125】
第1の実施形態の燃料電池1の配流装置100によれば、流体供給用の外部マニホールド42a、43a、44aおよび流体排出用の外部マニホールド42b、43b、44bを、エンドプレート32を構成するブロック体60に形成しているため、燃料電池1の小型化を図ることができる。さらに、外部マニホールド42a、43a、44a、42b、43b、44bに隣接する連通部50a、50bの構成が単純であり切削加工等の手段によって容易に形成できることから、配流装置100の製造を簡素にでき、多数の部品を溶接接合して組み立てる場合などに比較して安価に製造することができる。
【0126】
本実施形態の車両18は、小型化された燃料電池を備えるため、車載性、生産性、およびコストに優れた車両となる。
【0127】
(第2の実施形態)
図14(A)(B)は、第2の実施形態に係る燃料電池80を示す斜視図、および正面図、
図15(A)は、第2の実施形態に係る配流装置101を組み込んだ下側エンドプレート82の要部を断面で示す斜視図、
図15(B)は、外部マニホールド41が設けられた下側エンドプレート82を示す断面図である。
図16(A)(B)は、下側エンドプレート82を構成するブロック体90に、それぞれの流体ごとに、供給側連通部50aにおける第1と第2の補助マニホールド51a、52a、および排出側連通部50bにおける第1と第2の補助マニホールド51b、52bが形成された様子を示す断面図である。なお、
図1〜13に示される部材と共通する部材には同一の符号を付して、その説明は一部省略する。
【0128】
第2の実施形態は、燃料ガス、冷却水、酸化ガスのうち、2つの流体の外部マニホールド42、43および連通部50を同じ下側エンドプレート82の中に設けている。この点において、3つのすべての流体の外部マニホールド42、43、44および連通部50を同じエンドプレート32の中に設けた第1の実施形態と相違している。
【0129】
第2の実施形態では、図中下側に示される下側エンドプレート82の中に、燃料ガスおよび冷却水の外部マニホールド42、43および連通部50を設け、図中上側に示される上側エンドプレート81の中に、酸化ガスの外部マニホールド44および連通部50を設けている。
図14に示すように、下側エンドプレート82の対向する側面のうち、第1の側面(図中左手前の側面)に、冷却水用外部マニホールド43の供給口および排出口を開口し、反対側の第2の側面に、燃料ガス用外部マニホールド42の供給口および排出口を開口している。上側エンドプレート81の第1の側面に、酸化ガス用外部マニホールド44の供給口および排出口を開口している。外部マニホールド41は、エンドプレート81、82における第1の側面から第2の側面まで貫通する貫通孔から形成されている。冷却水用の外部マニホールド43および酸化ガス用の外部マニホールド44については、貫通孔を形成した後に、第2の側面の開口を塞ぎ板によって封止している。一方、燃料ガス用の外部マニホールド42については、貫通孔を形成した後に、第1の側面の開口を塞ぎ板83によって封止している。
【0130】
下側エンドプレート82に関して、
図15、
図16に示すように、供給側連通部50aは、流体供給用の内部マニホールド22a、23aに接続される第1の補助マニホールド51aと、流体供給用の外部マニホールド42a、43aの中心線および第1の補助マニホールド51aの中心線のそれぞれに対して交差する中心線を備えかつ流体供給用の外部マニホールド42a、43aに接続される第2の補助マニホールド52aとを少なくとも有している。同様に、排出側連通部50bは、流体排出用の内部マニホールド22b、23bに接続される第1の補助マニホールド51bと、流体排出用の外部マニホールド42b、43bの中心線および第1の補助マニホールド51bの中心線のそれぞれに対して交差する中心線を備えかつ流体排出用の外部マニホールド42b、43bに接続される第2の補助マニホールド52bとを少なくとも有している。
【0131】
上側エンドプレート81に関しては、図示省略するが、連通部50の第2の補助マニホールド52は、その中心線が、外部マニホールド44の中心線に対して交差し、かつ、内部マニホールド24に接続される第1の補助マニホールド51の中心線に対して交差する。
【0132】
第2の実施形態においても、低アスペクト構造を有し、流体供給用の内部マニホールド21と流体排出用の内部マニホールド21とをそれぞれの流体ごとに2以上有する燃料電池において、外部マニホールド41と内部マニホールド21との間において各流体を実質的に2回以上交差させて流す配流機構を設けることによって、燃料電池80に必要な各種流体を、単セル4の幅方向および積層方向に均等に供給もしくは排出することができる。この結果、効率的に発電を行うことが可能となり、小型高出力の燃料電池を提供することが可能となる。
【0133】
図15に示すように、第2の実施形態の配流装置101は、燃料ガスおよび冷却水において、外部マニホールド42、43と、連通部50(50a、50b)の第1と第2の補助マニホールド51(51a、51b)、52(52a、52b)が形成されたブロック体90を有している。ブロック体90は、下側エンドプレート82を構成している。
【0134】
ブロック体90においてセル積層体20が配置される側の面を一の面92とすると、矢印91によって示されるようにブロック体90の一の面92の側から見て、一の面92に近い側を流れる第1の流体用の外部マニホールド42と、一の面92から遠い側を流れる第2の流体用の外部マニホールド43とが一部重なり合って配置されている。さらに、ブロック体90の一の面92の側から見て、第2流体用の外部マニホールド43が第1流体用の外部マニホールド42に重なり合わない延長部位93を含んでいる。ブロック体90の一の面92がセル積層体20の下面に接続される。第2の実施形態の場合、第1の流体は燃料ガス、第2の流体は冷却水である。すなわち、酸化ガス外部マニホールド44は上側エンドプレート81に配置されるため、燃料電池の反応によって生成される液水が酸化ガス内部マニホールド24の下部に溜ることがある。この場合、内部マニホールド24の下部からブロック体90の外部に向けた排水孔を形成してもかまわない。
【0135】
一方、第2の実施形態の変形例として、ブロック体90の第1の流体を燃料ガス、第2の流体を酸化ガスとすることも可能である。この場合、冷却水の外部マニホールド44は上側エンドプレート81に配置されるが、全てのマニホールドと流路は冷却水で常に充填されているため、前記排水孔を形成する必要はない。ただし、燃料ガス外部マニホールドを冷却水外部マニホールドで直接温度調整することができないため、燃料ガスを温度調整するための装置を別途必要とする場合がある。
【0136】
各流体の連通部50における第1と第2の補助マニホールド51、52は次のようにして形成される。
【0137】
第1流体(燃料ガス)用の供給側連通部50aについては、
図16(A)に示すように、一の面92の側から、第1流体用の外部マニホールド42aにのみ連通する第1の孔部94を形成する。第1の孔部94によって、第1流体用の外部マニホールド42aを区画形成する側壁部の一部が切除され、第1流体用の第1と第2の補助マニホールド51a、52aが形成される。
【0138】
第1流体用の排出側連通部50bについては、
図16(A)に示すように、一の面92の側から、第1流体用の外部マニホールド42bにのみ連通する第1の孔部94を形成する。第1の孔部94によって、第1流体用の外部マニホールド42bを区画形成する側壁部の一部が切除され、第1流体用の第1と第2の補助マニホールド51b、52bが形成される。
【0139】
第2流体(冷却水)用の供給側連通部50aについては、
図16(B)に示すように、一の面92の側から、延長部位93(
図15(B)を参照)において第2流体用の外部マニホールド43aにのみ連通する第2の孔部95を形成する。第2の孔部95によって、第2流体用の外部マニホールド43aを区画形成する側壁部の一部が切除され、第2流体用の第1と第2の補助マニホールド51a、52aが形成される。
【0140】
第2流体用の排出側連通部50bについては、
図16(B)に示すように、一の面92の側から、延長部位93において第2流体用の外部マニホールド43bにのみ連通する第2の孔部95を形成する。第2の孔部95によって、第2流体用の外部マニホールド43bを区画形成する側壁部の一部が切除され、第2流体用の第1と第2の補助マニホールド51b、52bが形成される。
【0141】
第2の孔部95の上部には、一の面92から孔部95に向けて傾斜する傾斜面が形成されている。これによって、冷却水用の接続口35に関して、
図16において左右方向の大きさを、燃料ガス用の接続口34の大きさと同じになるようにしている。
【0142】
第2の実施形態の燃料電池80の配流装置101によれば、外部マニホールド44および連通部50を上側エンドプレート81を構成するブロック体に形成し、外部マニホールド42、43および連通部50を下側エンドプレート82を構成するブロック体90に形成しているため、燃料電池80の小型化を図ることができる。さらに、外部マニホールド41、および連通部50における第1と第2の補助マニホールド51、52を切削加工によって形成できることから、配流装置101の製造を簡素にでき、多数の部品を溶接接合して組み立てる場合などに比較して安価に製造することができる。
【0143】
前記ブロック体90に第3の流体用の第1と第2の補助マニホールドを形成する場合は、前記第1と第2の流体用の補助マニホールド構成に準じて適切に配置することが可能である。
【0144】
(他の変形例)
第1の実施形態にあっては、アノード流路における両端の流路開口部9をそれぞれ2個以上設け、一端側を供給流路、他端側を排出流路として形成し、カソード流路における両端の流路開口部11をそれぞれ2個以上設け、一端側を供給流路、他端側を排出流路として形成している。アノード流路における流路開口部9が積層されて、2個以上の流体供給用の内部マニホールド22aと、2個以上の流体排出用の内部マニホールド22bとを構成している。カソード流路における流路開口部11が積層されて、2個以上の流体供給用の内部マニホールド24aと、2個以上の流体排出用の内部マニホールド24bとを構成している。
【0145】
各種流体を単セル4の幅方向に均等に供給もしくは排出する構成は、それぞれの流路における両端の流路開口部9、10、11をそれぞれ2個以上設ける構成に限定されるものではない。
【0146】
すなわち、セル積層体20は、アスペクト比R(L/W)が1未満であり、かつ、アノード流路における両端の流路開口部9のうち少なくとも一方が2個以上設けられ、一端側が供給流路、他端側が排出流路として形成され、カソード流路における両端の流路開口部11のうち少なくとも一方が2個以上設けられ、一端側が供給流路、他端側が排出流路として形成されていてもよい。アノード流路における流路開口部9が積層されて流体供給用の内部マニホールド22aと流体排出用の内部マニホールド22bとを構成し、カソード流路における流路開口部11が積層されて流体供給用の内部マニホールド24aと流体排出用の内部マニホールド24bとを構成している。そして、内部マニホールド22a、22b、24a、24bと接続される外部マニホールド42a、42b、44a、44bは、内部マニホールド22a、22b、24a、24bと交差する方向に伸びている。
【0147】
このような構成の燃料電池においても、各種流体を単セル4の幅方向に均等に供給もしくは排出することができる。
【0148】
この場合において、流体供給用の内部マニホールド22a、24aと接続される流体供給用の外部マニホールド42a、44a、および流体排出用の内部マニホールド22b、24bと接続される流体排出用の外部マニホールド42b、44bのそれぞれを、セル積層体20の幅方向に伸びて配置するのがよい。これによって、燃料電池全体をコンパクトに構成することができる。この結果、小型高出力の燃料電池を提供することが可能となる。
【0149】
第1と第2の実施形態にあっては、エンドプレート32、82を構成するブロック体60、90に外部マニホールド41、および第1と第2の補助マニホールド51、52を形成したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。例えば、集電板をブロック体から構成し、このブロック体に、外部マニホールド41、および第1と第2の補助マニホールド51、52を形成してもよい。また、エンドプレートや集電板の他に、配流装置100、101を設けた専用のブロック体を用いることもできる。
【0150】
さらに、第1と第2の実施形態にあっては、ブロック体を切削加工することによって外部マニホールド41、および第1と第2の補助マニホールド51、52を形成したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。例えば、鋳造や3Dプリンタ等の公知の技術を用いて同様の構造を形成することができる。また、切削加工の場合にくらべると配流装置100、101の製造がやや煩雑になるものの、パイプ部材を連結することによって外部マニホールド、および第1と第2の補助マニホールドを形成してもよい。
【0151】
本出願は、2013年3月8日に出願された日本特許出願番号2013−046984号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。