(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような糸製造装置においては、例えばカーボンナノチューブ形成基板の品質等に起因して、カーボンナノチューブ形成基板からカーボンナノチューブ繊維群を引き出す際の引き出し性能に変動が生じることがある。引き出し性能が低下した場合には、所定の量のカーボンナノチューブ繊維群を得ることができず、所望の太さの糸を製造することができない。このような糸製造装置の分野においては、所望の太さのカーボンナノチューブ糸を安定して製造することが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、所望の太さのカーボンナノチューブ糸を安定して製造することが可能な糸製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る糸製造装置は、カーボンナノチューブ繊維群を凝集させてカーボンナノチューブ糸を製造する装置であって、基板支持部と、連続引き出し部と、糸製造部と、状態監視部と、供給状態変更機構と、を備える。基板支持部は、カーボンナノチューブ形成基板を支持する。連続引き出し部は、カーボンナノチューブ繊維群をカーボンナノチューブ形成基板から連続的に引き出す。糸製造部は、連続引き出し部によって引き出されたカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる。状態監視部は、カーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群、又はカーボンナノチューブ糸の状態を監視する。供給状態変更機構は、状態監視部による監視結果に基づいて、カーボンナノチューブ形成基板から引き出されて糸製造部に供給されるカーボンナノチューブ繊維群の供給状態を変更する。
【0007】
この糸製造装置によれば、状態監視部による監視結果に基づいて、糸製造部に供給されるカーボンナノチューブ繊維群の供給状態が変更される。このように、カーボンナノチューブ繊維群、又はカーボンナノチューブ糸の状態に基づいてカーボンナノチューブ繊維群の供給状態を変更することで、カーボンナノチューブ繊維群を用いて製造されるカーボンナノチューブ糸の太さを一定に保つことができる。これにより、所望の太さのカーボンナノチューブ糸を安定して製造することができる。
【0008】
基板支持部は複数設けられ、供給状態変更機構は、カーボンナノチューブ繊維群を引き出すカーボンナノチューブ形成基板の数を変更することにより、カーボンナノチューブ繊維群の供給状態を変更してもよい。このように、カーボンナノチューブ繊維群を引き出すカーボンナノチューブ形成基板の数を変更することで、カーボンナノチューブ繊維群の供給状態を容易に変更することができる。
【0009】
供給状態変更機構は、初期引き出し部と、制御部とを備えていてもよい。この場合、初期引き出し部は、カーボンナノチューブ形成基板からカーボンナノチューブ繊維群を引き出し、引き出したカーボンナノチューブ繊維群を他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群に接触させてもよい。制御部は、カーボンナノチューブ繊維群を引き出すカーボンナノチューブ形成基板を追加する場合に、カーボンナノチューブ形成基板からカーボンナノチューブ繊維群を引き出し、引き出したカーボンナノチューブ繊維群を他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群に接触させるように初期引き出し部を制御してもよい。このように、初期引き出し部によって引き出されたカーボンナノチューブ繊維群を、他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群に接触させることで、両者を結合させることができる。これにより、初期引き出し部によって引き出したカーボンナノチューブ繊維群を、他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群と共に糸製造部に容易に供給することができる。
【0010】
初期引き出し部は、吸引力により、カーボンナノチューブ形成基板からカーボンナノチューブ繊維群を引き出してもよい。この場合には、吸引力を用いて簡素な構成で、カーボンナノチューブ繊維群を引き出すことができる。
【0011】
初期引き出し部は、吸引管と、駆動部とを備えていてもよい。この場合、吸引管には、カーボンナノチューブ繊維群を吸引する吸引口が設けられていてもよい。駆動部は、吸引管によって吸引されたカーボンナノチューブ繊維群が他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群と交差するように、カーボンナノチューブ繊維群の引き出し対象となるカーボンナノチューブ形成基板に対して吸引管を進退させてもよい。これにより、吸引管をカーボンナノチューブ形成基板から離れる方向に移動させると、吸引管の吸引力によってカーボンナノチューブ繊維群が引き出される。引き出されたカーボンナノチューブ繊維群は、他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群と交差して両者が結合する。従って、吸引管を進退させることで、初期引き出し部によって引き出したカーボンナノチューブ繊維群を、他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群と共に糸製造部に容易に供給することができる。
【0012】
吸引管は円弧形状を有し、駆動部は、他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群の周りを囲むように吸引管を進退させてもよい。この場合、吸引管によってカーボンナノチューブ繊維群が引き出された状態で吸引管をカーボンナノチューブ形成基板から離れる方向に後退させると、吸引管によって引き出されたカーボンナノチューブ繊維群がカーボンナノチューブ形成基板からの引き出し位置を支点として揺動する。更に、他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群の周りを囲むように吸引管を後退させることで、吸引管によって引き出されたカーボンナノチューブ繊維群が、他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群に接触する。これにより、吸引管によって引き出されたカーボンナノチューブ繊維群を、他のカーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群に容易に接触させることができる。
【0013】
駆動部は、吸引管を挟み込む、駆動ローラ及び従動ローラを備え、駆動ローラを駆動することで吸引管を進退させてもよい。この場合には、駆動ローラを駆動することで、吸引管を容易に進退させることができる。
【0014】
吸引管における駆動ローラと対向する面には、吸引管の延在方向に沿って延在するガイドが設けられ、駆動ローラには、ガイドに係合する凹部が設けられていてもよい。或いは、吸引管における従動ローラと対向する面には、吸引管の延在方向に沿って延在するガイドが設けられ、従動ローラには、ガイドに係合する凹部が設けられていてもよい。これらの場合には、吸引管が回転することなく、予め定められた向きで吸引管を進退させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所望の太さのカーボンナノチューブ糸を安定して製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1から
図4に示すように、糸製造装置1は、カーボンナノチューブ繊維群(以下、「CNT繊維群」という)Fを走行させつつCNT繊維群Fからカーボンナノチューブ糸(以下、「CNT糸」という)Yを製造する装置である。糸製造装置1は、繊維供給部2、糸製造部4、ニップローラ部5、状態監視部6、及び、巻取部(連続引き出し部)7を含んで構成される。繊維供給部2、糸製造部4、ニップローラ部5、状態監視部6、及び、巻取部7は、この順序で所定線L上に配置されており、CNT繊維群F及びCNT糸Yは、繊維供給部2から巻取部7に向かって走行させられる。なお、CNT繊維群Fは、カーボンナノチューブからなる繊維が複数集合したものである。CNT糸Yは、糸製造部4によってCNT繊維群Fが糸状に凝集したものである。
【0019】
繊維供給部2は、CNT繊維群Fが引き出されるカーボンナノチューブ形成基板(以下、「CNT形成基板」という)Sを保持する。CNT形成基板Sは、カーボンナノチューブフォレスト(carbon nanotube forest)、或いは、カーボンナノチューブの垂直配向構造体等と称されるものであり、化学気相成長法等によって基板上に高密度且つ高配向にカーボンナノチューブ(例えば、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等)が形成されたものである。基板としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、金属基板等が用いられる。
【0020】
繊維供給部2は、基板支持部10、供給状態変更機構20、及び、基板交換機構30を備える。本実施形態において基板支持部10は、繊維供給部2に5つ設けられる。基板支持部10は、CNT繊維群Fが引き出されるCNT形成基板Sを着脱可能に支持する。供給状態変更機構20は、CNT形成基板Sから引き出されて糸製造部4に供給されるCNT繊維群Fの供給状態を変更する。基板交換機構30は、基板支持部10によって支持されたCNT形成基板Sを他のCNT形成基板Sに交換する。基板支持部10、供給状態変更機構20、及び、基板交換機構30の詳細については後述する。
【0021】
糸製造部4は、後述のニップローラ部5によって引き出されたCNT繊維群Fに、仮撚りを施す。糸製造部4は、供給された空気をCNT繊維群Fの周囲に吹き付けて、気流によってCNT繊維群Fに仮撚りを施し、CNT糸Yを生成する。
【0022】
ニップローラ部5は、CNT繊維群Fを引き出す一対のローラを備える。ニップローラ部5に設けられたローラは、糸製造部4によって撚りが施されたCNT糸Yを挟み込み、ローラの回転に伴ってCNT糸Yを巻取部7側に送る。糸製造部4から送り出された直後のCNT糸Yにはばたつきが生じているが、ニップローラ部5に設けられたローラによってCNT糸Yを挟み込むことでばたつきが抑制される。
【0023】
状態監視部6は、CNT糸Yの状態を監視するものであり、ここではCNT糸Yの太さを検知する。状態監視部6として、例えば、光学式、接触式、或は、静電容量式のセンサ等、CNT糸Yの太さを検知できるものであれば、各種のセンサ等を用いることができる。状態監視部6による検知結果は、供給制御部250に出力される。
【0024】
巻取部7は、巻取管7aを備える。巻取管7aには、CNT糸Yが巻き付けられる。巻取管7aがCNT糸Yを巻き取ることによって、CNT形成基板SからCNT繊維群Fが連続的に引き出される。
【0025】
次に、基板支持部10の詳細について説明する。基板支持部10は、
図1及び
図2等に示すように、繊維供給部2のベースプレート2aに対して垂直に起立するようにCNT形成基板Sを支持する。なお、CNT形成基板Sをベースプレート2aに対して垂直に起立するように支持することに限定されず、ベースプレート2aの面に対して基板面が平行となるようにCNT形成基板Sを支持してもよい。ここで、複数のCNT形成基板Sからそれぞれ引き出されたCNT繊維群Fは、所定線L上において、糸製造部4により付与される仮撚りによって生じる撚りの伝播点Gで互いに合わせられる。複数のCNT繊維群Fは、糸製造部4によって行われる撚りの力、及び、CNT繊維群F間のファンデルワールス力等によって、互いに凝集する。複数の基板支持部10は、CNT繊維群Fが引き出される側の端面が、複数のCNT繊維群Fが凝集される所定線L上の伝播点Gを向くように、ベースプレート2a上に並べて設置される。
【0026】
基板支持部10は、
図7に示すように、背面支持部11、及び、端部支持部12を備える。端部支持部12は、CNT形成基板Sにおけるベースプレート2a側の端部を支持する。なお、本実施形態において、ベースプレート2aは、基板支持部10が取り付けられる面が水平に設置されているものとし、ベースプレート2aに対して基板支持部10等が設けられる側を「上」、ベースプレート2aに対して基板支持部10等が設けられていない側を「下」として、方向を説明する。
【0027】
背面支持部11は、端部支持部12から起立し、CNT形成基板Sの背面に当接される。ここで、CNT形成基板Sの背面とは、CNT形成基板Sの基板面のうちカーボンナノチューブが形成されていない面をいう。背面支持部11は、支持対象となるCNT形成基板Sの下側の縁部近傍に対向する。背面支持部11には、上縁から下方に向かって切り欠かれた切欠き部11bが設けられる。背面支持部11におけるCNT形成基板Sの背面に対向する部位には、吸引口11aが設けられる。吸引口11aからの吸引力によって、CNT形成基板Sが背面支持部11に吸着され、CNT形成基板Sが背面支持部11及び端部支持部12に支持される。
【0028】
次に、供給状態変更機構20の詳細について説明する。供給状態変更機構20は、
図1から
図4に示すように、初期引き出し部200、及び、供給制御部250を備える。初期引き出し部200は、CNT形成基板SからCNT繊維群Fを吸引力によって引き出す。具体的には、初期引き出し部200は、ベースプレート201、ローラ支持部202、駆動ローラ203、第1従動ローラ204、第2従動ローラ205、駆動モータ(駆動部)206、及び、吸引管210を含んで構成される。
【0029】
ベースプレート201は、繊維供給部2のベースプレート2aに揺動可能に取り付けられる。本実施形態では、
図3に示すように、ベースプレート201における基板支持部10側の端部近傍に位置する軸Pを中心として揺動する。初期引き出し部200は、軸Pを中心として揺動してCNT形成基板S側に向けて吸引管210を進出させることによって、繊維供給部2に設置された5枚のCNT形成基板Sのいずれにも、吸引管210の先端(吸引口213)を近接させることができる。ベースプレート201は、ベースプレート201を駆動する駆動源によって揺動させられる。
【0030】
ベースプレート201には、貫通孔201aが設けられる。貫通孔201aには、吸引管210が通される。これにより、吸引管210をCNT形成基板S側に対して進退させたときに、ベースプレート201に吸引管210が干渉することがない。
【0031】
ローラ支持部202は、ベースプレート201の上面に固定される。ローラ支持部202の一面には、駆動ローラ203、第1従動ローラ204、及び、第2従動ローラ205が回転可能に取り付けられる。駆動ローラ203は、第1従動ローラ204及び第2従動ローラ205よりも基板支持部10側に配置される。吸引管210は、第1従動ローラ204と、第1従動ローラ204及び第2従動ローラ205との間に挟み込まれて支持される。駆動ローラ203は、駆動モータ206によって回転駆動される。吸引管210は、駆動ローラ203の回転によってCNT形成基板S側に対して進退する。第1従動ローラ204及び第2従動ローラ205は、吸引管210の進退に伴って従動回転する。
【0032】
駆動ローラ203の周面には、周方向に延在する凹部203aが設けられる。凹部203aは、吸引管210に設けられたガイド212の側面を挟み込む。凹部203aの底部は、吸引管210のガイド212の端部に当接し、駆動ローラ203の回転に伴って吸引管210をCNT形成基板Sに対して進退させる。駆動ローラ203の凹部203aが、吸引管210のガイド212を挟み込むことで、吸引管210の回転が規制される。
【0033】
第1従動ローラ204の周面及び第2従動ローラ205の周面には、それぞれ、周方向に延在する凹部204a及び凹部205aが設けられる。凹部204a及び205aは、それぞれ、吸引管210の管部211の外形に沿うように断面が円弧形状を有している。
【0034】
第1従動ローラ204に設けられた凹部204a及び第2従動ローラ205に設けられた凹部205aが吸引管210の管部211に係合し、駆動ローラ203に設けられた凹部203aが吸引管210のガイド212に係合することで、駆動ローラ203、第1従動ローラ204及び第2従動ローラ205から吸引管210が脱落することが防止される。
【0035】
吸引管210は、管部211、及び、ガイド212を備える。管部211は、円弧形状を有する管状部材である。管部211の一端には、吸引口213が設けられる。吸引口213は、スリット状に形成された開口であり、開口が円弧形状を有する管部211の外周側方向を向いている。管部211の他端は、吸引装置に接続される。管部211は、円弧形状の外周側の面が第1従動ローラ204及び第2従動ローラ205に対向し、円弧形状の内周側の面が駆動ローラ203に対向する。
【0036】
ガイド212は、管部211における駆動ローラ203と対向する面に設けられる。ガイド212は、薄板形状を有し、管部211の延在方向に沿って延在する。ガイド212は、駆動ローラ203の周面に設けられた凹部203aに挟み込まれる。これにより、吸引管210における円弧形状内周側が、基板支持部10側を向く。
【0037】
次に、初期引き出し部200が、CNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出す構成について説明する。初期引き出し部200によるCNT繊維群Fの引き出しは、新しいCNT形成基板Sが基板支持部10に設置されてCNT繊維群Fの引き出しを新たに開始する場合等に行われる。
【0038】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、初期引き出し部200は、CNT繊維群Fの引き出し対象となるCNT形成基板Sに向けて、吸引管210を進出させる。このとき、初期引き出し部200は、他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fと吸引管210とが交差するように(上方からCNT繊維群F及び吸引管210を見て両者が交差するように)、ベースプレート201の揺動角度を調節し、吸引管210を進出させる。なお、
図5(a)及び
図5(b)では、図中手前側のCNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出す様子を示している。
【0039】
ここで、吸引管210は円弧形状を有している。このため、
図5(a)に示すように吸引管210がベースプレート2aの下面側に引き込まれた状態から、
図5(b)に示すようにCNT繊維群Fの引き出し対象となるCNT形成基板Sに向けて吸引管210を進出させると、吸引口213は、吸引管210の進出に伴ってCNT繊維群Fよりも上に移動した後、再び、下方側に向かって移動する。即ち、
図6に示すように、CNT繊維群Fの走行方向に沿って吸引口213を見た場合に、吸引口213は他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fの周りを囲むように移動する。
【0040】
図5(b)に示すように、吸引管210を進出させて吸引管210の吸引口213をCNT形成基板Sの端部に近づけることにより、吸引口213からの吸引力によって、CNT形成基板SからCNT繊維群Fが引き出される。吸引口213は管部211の外周面側を向いている。このため、吸引管210をCNT形成基板Sに向けて進出させた時に、吸引口213がCNT形成基板Sの端面に対向する。これにより、吸引口213からの吸引力によって、CNT形成基板SからCNT繊維群Fを確実に引き出すことができる。
【0041】
吸引口213からの吸引力によってCNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出している状態で、初期引き出し部200は、吸引管210を後退させる。このとき、
図6に示すように、吸引口213は他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fの周りを囲むように移動する。他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fの周りを囲むように吸引口213が移動することで、吸引口213によって吸い出されたCNT繊維群Fは、撚りの伝播点Gの下流で他のCNT繊維群Fに接触して付着し、他のCNT繊維群Fに撚り込まれて糸製造部4に送られる。
【0042】
このように、初期引き出し部200が吸引管210を進出させてCNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出した後、吸引管210を後退させることで、新たに引き出したCNT繊維群Fを他のCNT繊維群Fに凝着させて、他のCNT繊維群Fと共に糸製造部4に送ることができる。
【0043】
次に、供給制御部250が行う初期引き出し部200の制御について説明する。供給制御部250は、状態監視部6による検出結果に基づいて、初期引き出し部200を制御してCNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出す。ここで、
図5(a)に示すように、繊維供給部2に設置された5つのCNT形成基板Sのうち、一番手前側のCNT形成基板Sを予備のCNT形成基板Sとする。ここでは、一番手前側に配置されるCNT形成基板Sを予備の基板としたが、一番手前側に限定されずに他のCNT形成基板Sでもよく、或は、複数のCNT形成基板Sを予備の基板としてもよい。
【0044】
供給制御部250は、予備(一番手前側)のCNT形成基板S以外のCNT形成基板Sのカーボンナノチューブが無くなった(全て引き出された)場合、或は、引出不良等によって、予備のCNT形成基板S以外のCNT形成基板SからのCNT繊維群Fの引き出し量が低下した場合に、予備のCNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出して他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fと共に糸製造部4に送る。
【0045】
より詳細には、供給制御部250は、初期引き出し部200のベースプレート201を揺動させる駆動源、及び、吸引口213を進退させる駆動モータ206の駆動を制御し、初期引き出し部200によって予備のCNT形成基板SからCNT糸Yの引き出しを行わせる。例えば、状態監視部6によってCNT糸Yの太さが所定範囲の下限値よりも細くなったことが検知された場合、供給制御部250は、上述したように、予備のCNT形成基板Sに向けて吸引管210を進出させてCNT繊維群Fを引き出すように初期引き出し部200を制御する。そして、供給制御部250は、吸引管210を後退させ、引き出したCNT繊維群Fが他のCNT繊維群Fに凝着するように初期引き出し部200を制御する。
【0046】
逆に状態監視部6によってCNT糸Yの太さが所定範囲の下限値よりも太くなったことが検知された場合、供給制御部250は、引き出されるCNT繊維群Fを減少させるように制御する。引き出されるCNT繊維群Fを減少させる機構としては、CNT形成基板Sと撚りの伝播点Gとの間にカッターなどの切断機構を設け、引き出されるCNT繊維群Fを切断する構造が採用される。また、CNT繊維群Fが引き出されているCNT形成基板Sの近くで、CNT繊維群Fの走行経路を横切るように棒部材を移動させることにより、CNT形成基板Sから引き出されるCNT繊維群Fを切断することが出来る。これにより、CNT繊維群Fが引き出されているCNT形成基板Sの枚数が削減されるので、CNT糸Yの太さを細くすることができる。
【0047】
このように、供給制御部250は、状態監視部6の検出結果に基づいて初期引き出し部200を制御し、CNT繊維群Fを引き出すCNT形成基板Sを追加する、或は、枚数を変更することによって、糸製造部4に供給するCNT繊維群Fの量を制御(CNT繊維群Fの供給状態を制御)することができる。1つのCNT形成基板Sから引き出すCNT繊維群Fの引き出し分量を変更することによって、糸製造部4に供給するCNT繊維群Fの量を制御してもよい。
【0048】
次に、基板交換機構30の詳細について説明する。基板交換機構30は、基板支持部10に支持されたCNT形成基板Sを他のCNT形成基板Sに交換する。本実施形態において、基板交換機構30は、繊維供給部2の近傍に設置された基板収容部Wに収容されたCNT形成基板Sと、基板支持部10に支持されたCNT形成基板Sとの交換を行う。但し、基板交換機構30は、一の基板支持部10に支持されたCNT形成基板Sを、他の基板支持部10に移動させることもできる。
【0049】
基板交換機構30は、
図1に示すように、基板交換部300、交換制御部350、及び、残量監視部370を含んで構成される。基板交換部300は、
図1から
図3に示すように、アーム(移動機構部)301、アーム駆動部(移動機構部)302、本体部(移動機構部)303、保持部304、及び、レール305を備える。レール305は、ベースプレート2aに固定される。レール305は、複数の基板支持部10の並び方向に沿って延在する。なお、レール305の一端は、基板収容部Wに向かって延びている。本体部303は、レール305に係合し、レール305に沿って移動する。これにより、アーム301等は、各基板支持部10によって支持されたCNT形成基板Sの並び方向に沿って移動する。
【0050】
アーム駆動部302は、本体部303の上面に取り付けられ、上下方向に沿った直線を軸として本体部303に対して回転する。アーム駆動部302の側面には、アーム301の基端が連結される。アーム駆動部302は、アーム301の先端(保持部304が設けられている側)がベースプレート2aに近づく方向及び離間する方向に移動するように、アーム301との連結部分を軸としてアーム301を揺動させる。また、アーム駆動部302は、アーム301との接続部分を上下方向に移動させることができる。即ち、アーム駆動部302は、アーム301の全体を上下方向に移動させることができる。
【0051】
保持部304は、アーム301の先端(アーム駆動部302に接続される側の端部に対して反対側の端部)に設けられる。保持部304は、CNT形成基板Sの背面に当接される。保持部304は、
図7に示すように、基板支持部10に当接する部位において基板支持部10側に張り出す張出部304bを有する。保持部304におけるCNT形成基板Sの背面に対向する部位には、吸引口304aが設けられる。また、張出部304bにも、吸引口304aが設けられる。吸引口304aからの吸引力によって、CNT形成基板Sが保持部304に吸着され、CNT形成基板Sが保持部304に保持される。
【0052】
張出部304bにも吸引口304aが設けられていることで、CNT形成基板Sの偏った部分を吸引口304aで吸引することなく、CNT形成基板Sの全体に亘って吸引口304aによって吸引することができる。これにより、保持部304によって安定して確実にCNT形成基板Sを保持することができる。
【0053】
基板支持部10からCNT形成基板Sを受け取る際、或は、基板支持部10にCNT形成基板Sを受け渡す際に、基板交換部300は、対象となる基板支持部10の背面支持部11におけるCNT形成基板Sに当接する面と保持部304におけるCNT形成基板Sに当接する面とが一致するように保持部304を移動させ、張出部304bを切欠き部11b内に落とし込む。なお、基板支持部10からCNT形成基板Sを受け取る際、或は、基板支持部10にCNT形成基板Sを受け渡す際における保持部304の位置を、「保持位置」という。この保持位置は、各基板支持部10についてそれぞれ設定される。基板交換部300は、各基板支持部10に設定された保持位置に、保持部304を移動させることができる。
【0054】
基板交換部300は、保持位置と基板収容部Wとの間、或は、保持位置と他の保持位置との間で保持部304を移動させる。具体的には、基板交換部300は、本体部303をレール305に沿って移動させること、アーム駆動部302を本体部303に対して回転させること、アーム301全体を上下させること、及び、アーム301を揺動させることにより、保持位置と基板収容部Wとの間等で保持部304を移動させ、基板支持部10に支持されたCNT形成基板Sの交換を行う。
【0055】
残量監視部370は、各基板支持部10に支持されたCNT形成基板SのCNT繊維群Fの残量を監視する。残量監視部370は、例えば、基板支持部10に支持されたCNT形成基板Sの重量を測定することにより、CNT形成基板Sに残存するCNT繊維群Fの量を把握することができる。或いは、残量監視部370は、カメラによってCNT形成基板Sを撮像し、撮像された画像を処理することによってCNT形成基板Sに残存するCNT繊維群Fの量を把握することができる。このCNT形成基板Sに残存するCNT繊維群Fの量の時間変化に基づいて、CNT繊維群Fの引出不良を認識することができる。
【0056】
また、残量監視部370は、CNT形成基板SからCNT繊維群Fが引き出されているか否かに基づいて、CNT形成基板Sに残存するCNT繊維群Fの量を把握することもできる。これは、例えば、CNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fが走行する領域をカメラで撮像し、撮像された画像に基づいて、CNT形成基板SからCNT繊維群Fが引き出されているか否かを把握することができる。例えば、CNT形成基板SからCNT繊維群Fが引き出されていない場合、CNT形成基板SにおけるCNT繊維群Fの残量が無いものとして判断することができる。残量監視部370は、上述した、CNT繊維群Fの残量の監視方法によらず、様々な方法によって、残量を監視することができる。
【0057】
次に、交換制御部350が行う基板交換部300の制御について説明する。交換制御部350は、残量監視部370によるCNT繊維群Fの残量の監視結果に基づいて、CNT繊維群Fの残量が無くなった又は引出不良となったCNT形成基板Sと、基板収容部Wに収容された新たなCNT形成基板Sとを交換するように基板交換部300を制御する。
【0058】
具体的には、残量監視部370によってCNT繊維群Fの残量が無いCNT形成基板Sが検出された場合、交換制御部350は、残量が無いCNT形成基板Sを基板支持部10から受け取るように基板交換部300を制御する。そして、交換制御部350は、受け取った残量が無いCNT形成基板Sを基板収容部Wに収容するように基板交換部300を制御する。次に、交換制御部350は、基板収容部Wから新しいCNT形成基板Sを受け取り、CNT形成基板Sを支持していない基板支持部10に対して新しいCNT形成基板Sを渡すように基板交換部300を制御する。このように、交換制御部350が残量監視部370の監視結果に基づいて基板交換部300を制御することでCNT形成基板Sが交換される。
【0059】
本実施形態は以上のように構成され、供給状態変更機構20は、状態監視部6による監視結果に基づいて、糸製造部4に供給されるCNT繊維群Fの供給状態を変更する。このように、CNT糸Yの状態に基づいてCNT繊維群Fの供給状態を変更することで、CNT繊維群Fを用いて製造されるCNT糸Yの太さを一定に保つことができる。これにより、所望の太さのCNT糸Yを安定して製造することができる。
【0060】
供給状態変更機構20は、CNT繊維群Fを引き出すCNT形成基板Sの数を変更することにより、CNT繊維群Fの供給状態を変更する。このように、CNT繊維群Fを引き出すCNT形成基板Sの数を変更することで、CNT繊維群Fの供給状態を容易に変更することができる。
【0061】
供給状態変更機構20は、CNT形成基板Sから引き出したCNT繊維群Fを他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fに接触させて、両者を結合させる。これにより、初期引き出し部200によって引き出されたCNT繊維群Fを、他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fと共に糸製造部4に容易に供給することができる。
【0062】
初期引き出し部200は、吸引力により、CNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出す。この場合には、吸引力を用いて簡素な構成でCNT繊維群Fを引き出すことができる。
【0063】
初期引き出し部200は、吸引管210を進退させることによってCNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出す。また、初期引き出し部200は、CNT形成基板Sから引き出したCNT繊維群Fが、他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fと交差するように、吸引管210を後退させる。これにより、引き出されたCNT繊維群Fは、他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fと交差して両者が結合する。従って、吸引管210を進退させることで、初期引き出し部200によって引き出したCNT繊維群Fを、他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fと共に糸製造部4に容易に供給することができる。
【0064】
吸引管210を円弧状に形成し、他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fの周りを囲むように吸引管210を進退させる。この場合、吸引管210によってCNT繊維群Fが引き出された状態で吸引管210をCNT形成基板Sから離れる方向に後退させると、吸引管210によって引き出されたCNT繊維群FがCNT形成基板Sからの引き出し位置を支点として揺動する。そして、他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fの周りを囲むように吸引管210を更に後退させることで、吸引管210によって引き出されたCNT繊維群Fが、他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fに接触する。これにより、吸引管210によって引き出されたCNT繊維群Fを、他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fに容易に接触させることができる。
【0065】
初期引き出し部200は、駆動ローラ203と、第1従動ローラ204及び第2従動ローラ205との間に吸引管210を挟み込み、駆動ローラ203を駆動することで吸引管210を進退させる。この場合には、駆動ローラ203を駆動することで、吸引管210を容易に進退させることができる。
【0066】
吸引管210に、駆動ローラ203の凹部203aと係合するガイド212を設ける。これにより、初期引き出し部200は、吸引管210が回転することなく、予め定められた向きで吸引管210を進退させることができる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、状態監視部6を用いてCNT糸Yの太さを検知するものとしたが、状態監視部6に代えて、CNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fをカメラによって撮像し、撮像された画像を処理することによってCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fの量、或は、引き出しの有無等を監視してもよい。この場合、供給制御部250は、撮像された画像に基づいて得られるCNT繊維群Fの量、或は、引き出しの有無等に基づいて、初期引き出し部200を制御することができる。
【0068】
CNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出す際に、吸引口213からの吸引力を用いるものとしたが、吸引力以外の方法によってCNT繊維群Fを引き出すこともできる。例えば、マイクロドリルと称される治具等によって、CNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出すことができる。或いは、粘着テープ又は鉤状部材等により、CNT繊維群Fを引き出してもよい。
【0069】
吸引管210にガイド212を設け、ガイド212を駆動ローラ203の凹部203aに係合させるものとしたが、吸引口213における第1従動ローラ204側にガイド212を設け、ガイド212を第1従動ローラ204或は第2従動ローラ205に係合させることもできる。或いは、ガイド212を、吸引管210における駆動ローラ203側及び第1従動ローラ204側の双方に設け、駆動ローラ203の凹部203a及び第1従動ローラ204の凹部204a等に係合させることもできる。ガイド212としてラックギアを用い、駆動ローラ203としてピニオンギアを用いることで、吸引管210をより確実に動作させることができる。
【0070】
CNT繊維群Fの供給源として、CNT形成基板Sに代えて、カーボンナノチューブを連続的に合成してCNT繊維群Fを供給する装置等を用いてもよい。気流によりCNT繊維群Fに撚りを施す糸製造部4を用いるものとしたが、気流を用いる以外の方法によってCNT繊維群Fに撚りを施す糸製造部を用いてもよい。糸製造部4及び巻取部7に代えて、CNT繊維群Fに撚り(実撚り)を掛けてCNT糸Yを製造しながらCNT糸Yを巻き取る装置等を用いてもよい。また、細管を用いて無撚りの凝集糸を製造してもよい。この場合には、撚りの伝播点Gが生じないので、伝播点Gの位置にCNT繊維群Fを集中させるローラ又はガイドを採用してもよい。