(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の製造方法は、フッ素樹脂を成形して成形品を得る工程により得られた成形品に50〜200℃で100kGy未満の放射線を照射する工程を含むことを特徴とする。
【0028】
放射線の照射温度は、50〜200℃である。好ましくは、80℃以上であり、より好ましくは、100℃以上であり、更に好ましくは140℃以上であり、好ましくは、180℃以下である。照射温度が高すぎると、改質成形品にシワが発生したり、破断強度が損なわれたりする。照射温度が低すぎると、低透過性及び耐摩耗性に優れた改質成形品が製造できない。
【0029】
上記照射温度は、上記数値範囲内であって、かつ、フッ素樹脂の融点未満であることが好ましい。
【0030】
上記照射温度の調整は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。具体的には、上記フッ素樹脂を所定の温度に維持した加熱炉内で保持する方法や、ホットプレート上に載せて、ホットプレートに内蔵した加熱ヒータに通電するか、外部の加熱手段によってホットプレートを加熱する等の方法が挙げられる。
【0031】
放射線の照射線量は、100kGy未満である。好ましくは、95kGy以下であり、より好ましくは、80kGy以下であり、好ましくは、20kGy以上であり、より好ましくは、40kGy以上であり、更に好ましくは、60kGy以上である。照射線量が大きすぎても、小さすぎても、外観が良好であり、高い破断強度及び優れた耐摩耗性を有し、窒素ガス及び塩酸に対して低透過性に優れた改質成形品が製造できない。
【0032】
放射線としては、電子線、紫外線、ガンマ線、X線、中性子線、あるいは高エネルギーイオン等が挙げられる。なかでも、透過力が優れており、線量率が高く、工業的生産に好適である点で電子線が好ましい。
【0033】
放射線を照射する方法としては、特に限定されず、従来公知の放射線照射装置を用いて行う方法等が挙げられる。
【0034】
放射線の照射環境としては、特に制限されないが、酸素濃度が1000ppm以下であることが好ましく、酸素不存在下であることがより好ましく、真空中、又は、窒素、ヘリウム若しくはアルゴン等の不活性ガス雰囲気中であることが更に好ましい。
【0035】
従来の方法は、フッ素樹脂の成形品に放射線を照射することにより、フッ素樹脂の架橋反応を進行させて、成形品を改質する方法であった。本発明の製造方法は、架橋がほとんど進行しない条件を採用している点に特徴がある。本発明の製造方法により、外観及び破断強度を損なうことなく、窒素ガス及び塩酸に対して優れた低透過性を有する改質成形品が製造できる理由は、明確ではないが、成形品の結晶性が向上しているからであると推測される。本発明の製造方法により得られた改質成形品は、放射線を照射する前の成形品よりも、比重が大きいことが、上記推測の理由の一つである。
【0036】
本発明の製造方法は、フッ素樹脂を成形して成形品を得る工程を含む。
【0037】
上記フッ素樹脂を成形する方法としては、特に限定されず、押出成形、射出成形、トランスファー成形、インフレーション成形、圧縮成形等の公知の方法が挙げられる。これらの成形方法は、得られる成形品の形状に応じて適宜選択すればよい。
【0038】
上記フッ素樹脂を成形する方法としては、押出成形、圧縮成形又は射出成形であることが好ましく、押出成形であることがより好ましい。これらの成形方法を使用すると、チューブ、フィルム、ボトル等の成形品を容易に製造することができる。厚みが小さいチューブ、フィルム、ボトル等の成形品を製造することも容易である。これらの成形方法は、フッ素樹脂を加熱することにより流動させて成形する方法である。従って、フッ素樹脂を構成する各ポリマー鎖が流動方向に配向している成形品が得られるため、成形品を加熱すると流動方向に収縮しやすく、収縮しすぎると外観が損なわれる。特に押出成形を使用して得られた成形品には、収縮が顕著に観察される。本発明の製造方法は、成形品の収縮を抑制することができ、良好な外観を有する改質成形品を得ることができる。
【0039】
上記成形品は、厚みが0.01〜3.0mmであることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることが更に好ましく、1.0mm以上であることが特に好ましく、2.0mm以下であることがより好ましい。厚みが小さい成形品は、窒素ガス及び塩酸を透過させやすいことから、窒素ガス及び塩酸に対する透過係数を低下させることが望まれる。また、厚みが小さい成形品は、もともとの破断強度が大きくないことから、放射線を照射することによる破断強度の損失の回避が特に望まれる。しかし、厚みが小さい成形品に対して従来の方法により放射線を照射すると、破断強度が損なわれたり、成形品が収縮してしまい、表面にシワが発生して、良好な外観を有する成形品を製造できなかったりする。本発明の製造方法は、厚みが上記範囲内にあっても、外観が良好であり、高い破断強度を有し、窒素ガス及び塩酸に対して優れた低透過性を有する改質成形品を製造することができる。
【0040】
上記成形品の形状は、特に限定されず、例えば、ペレット、フィルム、シート、板、ロッド、ブロック、円筒、容器、電線、チューブ等が挙げられる。また、炊飯器の内釜、ホットプレート、フライパンなどの調理具の被覆層や電子写真方式または静電記録方式の複写機、レーザープリンタなどの画像形成装置用の定着ローラのトップコート層などを形成するフッ素樹脂製塗膜であってもかまわない。フッ素樹脂製塗膜は、フッ素樹脂塗料を基材に塗布することにより形成できる。
【0041】
上記成形品は、チューブ、フィルム又はボトルであることが好ましい。チューブ、フィルム及びボトルは、押出成形、圧縮成形又は射出成形で製造されることが通常であり、なかでも、押出成形により製造されることが多い。従って、チューブ、フィルム及びボトルでは、フッ素樹脂を構成する各ポリマー鎖が流動方向に配向しており、これら成形品を加熱すると流動方向に収縮しやすく、収縮しすぎると外観が損なわれる。本発明の製造方法は、成形品がチューブ、フィルム又はボトルであっても、成形品の収縮を抑制することができ、良好な外観を有する改質成形品を得ることができる。
【0042】
本発明の製造方法は、フッ素樹脂を押出成形、圧縮成形又は射出成形して、上述の厚みを有するチューブ、フィルム又はボトルを得る工程、及び、チューブ、フィルム又はボトルに上述の照射温度で、上述の照射線量の放射線を照射する工程を含むものであってもよい。この製造方法によれば、厚みが3.0mm以下、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.0mm以下のチューブ、フィルム又はボトルを製造でき、しかも、外観が良好であり、窒素ガス及び塩酸に対して優れた低透過性を有する改質成形品を製造することができる。
【0043】
上記フッ素樹脂は、融点が190〜347℃であることが好ましい。上記融点としては、200℃以上がより好ましく、220℃以上が更に好ましく、280℃以上が特に好ましく、322℃以下がより好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0044】
上記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位とからなる共重合体、TFE単位とヘキサフルオロプロピレン単位とからなる共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。
【0045】
上記フッ素樹脂としては、溶融加工可能なフッ素樹脂が好ましく、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位(PAVE単位)とからなる共重合体(以下、TFE/PAVE共重合体(又は、PFA)という)、及び、TFE単位とヘキサフルオロプロピレン単位(HFP単位)とからなる共重合体(以下、TFE/HFP共重合体(又は、FEP)という)からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体がより好ましく、TFE/PAVE共重合体が更に好ましい。
【0046】
上記TFE/PAVE共重合体を構成するPAVEとしては、一般式(1):
CF
2=CFO(CF
2CFY
1O)
p−(CF
2CF
2CF
2O)
q−R
f (1)
(式中、Y
1はF又はCF
3を表し、R
fは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。pは0〜5の整数を表し、qは0〜5の整数を表す。)、及び、一般式(2):
CFX=CXOCF
2OR
1 (2)
(式中、Xは、同一又は異なり、H、F又はCF
3を表し、R
1は、直鎖又は分岐した、H、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が1〜6のフルオロアルキル基、若しくは、H、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が5又は6の環状フルオロアルキル基を表す。)
からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0047】
共重合体がPAVE単位を含むと、窒素ガス及び塩酸に対する低透過性を一層改善することができる。これは、アルコキシ基という多数の大きな側鎖が低温であっても大きく分子運動することから、放射線を照射することによる効果が低温であっても充分に得られるためであると推測される。
【0048】
なかでも、上記PAVEとしては、バルキーな側鎖を有するものが好ましく、具体的には、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が好ましい。
【0049】
上記TFE/PAVE共重合体は、PAVEに基づく重合単位を全重合単位に対して1.0〜10質量%含むことが好ましい。
上記PAVEに基づく重合単位の量は、全重合単位に対して、2.0質量%以上がより好ましく、3.5質量%以上が更に好ましく、4.0質量%以上が特に好ましく、5.0質量%以上が最も好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、7.0質量%以下が更に好ましく、6.5質量%以下が特に好ましく、6.0質量%以下が最も好ましい。
なお、上記PAVEに基づく重合単位の量は、
19F−NMR法により測定する。
【0050】
上記TFE/PAVE共重合体は、融点が280〜322℃であることが好ましい。
上記融点は、290℃以上であることがより好ましく、315℃以下であることがより好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0051】
上記TFE/PAVE共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が70〜110℃であることが好ましい。
上記ガラス転移温度は、80℃以上がより好ましく、100℃以下がより好ましい。
上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定により測定して得られる値である。
【0052】
上記TFE/PAVE共重合体は、例えば、その構成単位となるモノマーや、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、乳化重合、懸濁重合を行う等の従来公知の方法により製造することができる。
【0053】
上記TFE/HFP共重合体は、テトラフルオロエチレン(TFE)単位及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位を含む。
【0054】
上記TFE/HFP共重合体は、TFE単位とHFP単位との質量比(TFE/HFP)が70〜99/1〜30(質量%)であることが好ましい。上記質量比(TFE/HFP)は、85〜95/5〜15(質量%)がより好ましい。
【0055】
上記TFE/HFP共重合体は、更に、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)単位を含むことが好ましい。PAVE単位を更に含むことにより、より低透過性を改善することができる。
上記TFE/HFP共重合体に含まれるPAVE単位としては、上述したTFE/PAVE共重合体を構成するPAVE単位と同様のものを挙げることができる。
なかでも、低透過性の改善に優れている点で、PPVEがより好ましい。
上述したTFE/PAVE共重合体は、HFP単位を含まないので、その点で、TFE/HFP/PAVE共重合体とは異なる。
【0056】
上記TFE/HFP共重合体が、TFE単位、HFP単位、及び、PAVE単位を含む共重合体である場合(以下、「TFE/HFP/PAVE共重合体」ともいう)、質量比(TFE/HFP/PAVE)が70〜99.8/0.1〜25/0.1〜25(質量%)であることが好ましい。上記範囲内であると、耐熱性、耐薬品性に優れている。
上記質量比(TFE/HFP/PAVE)は、75〜98/1.0〜15/1.0〜10(質量%)であることがより好ましい。
上記TFE/HFP/PAVE共重合体は、HFP単位及びPAVE単位を合計で1質量%以上含む。
【0057】
上記TFE/HFP/PAVE共重合体は、HFP単位が全単量体単位の25質量%以下であることが好ましい。
HFP単位の含有量が上述の範囲内であると、耐熱性に優れた改質成形品を得ることができる。
HFP単位の含有量は、20質量%以下がより好ましく、18質量%以下が更に好ましい。特に好ましくは15質量%以下である。また、HFP単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。特に好ましくは、2質量%以上である。
なお、HFP単位の含有量は、
19F−NMR法により測定することができる。
【0058】
PAVE単位の含有量は、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。特に好ましくは3質量%以下である。また、PAVE単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。なお、PAVE単位の含有量は、
19F−NMR法により測定することができる。
【0059】
上記TFE/HFP共重合体は、更に、他のエチレン性単量体(α)単位を含んでいてもよい。
他のエチレン性単量体(α)単位としては、TFE単位、HFP単位及びPAVE単位と共重合可能な単量体単位であれば特に限定されず、例えば、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VdF)、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、エチレン(ETFE)等の含フッ素エチレン性単量体や、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化エチレン性単量体等が挙げられる。
【0060】
上記共重合体がTFE/HFP/PAVE/他のエチレン性単量体(α)共重合体である場合、質量比(TFE/HFP/PAVE/他のエチレン性単量体(α))は、70〜98/0.1〜25/0.1〜25/0.1〜25(質量%)であることが好ましい。
上記TFE/HFP共重合体は、TFE単位以外の重合単位を合計で1質量%以上含む。
【0061】
上記TFE/HFP共重合体は、融点が200〜322℃であることが好ましい。融点が200℃未満であると、放射線を照射することによる効果が十分に現れないおそれがある。322℃を超えると、主鎖切断による低分子化が起こり、機械強度が大きく低下するおそれがある。上記融点は、200℃超であることがより好ましく、220℃以上であることが更に好ましく、300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることが更に好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0062】
上記TFE/HFP共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が60〜110℃であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましく、100℃以下であることがより好ましい。上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定により測定して得られる値である。
【0063】
上記TFE/HFP共重合体は、例えば、その構成単位となるモノマーや、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、乳化重合、溶液重合や懸濁重合を行う等の従来公知の方法により製造することができる。
【0064】
上記フッ素樹脂は、上記TFE/PAVE共重合体及び上記TFE/HFP共重合体であることも好ましい。すなわち、上記TFE/PAVE共重合体と上記TFE/HFP共重合体とを混合して使用することも可能である。上記TFE/PAVE共重合体と上記TFE/HFP共重合体との質量比((A)/(B))は、1/9〜7/3であることが好ましい。上記質量比は、5/5〜2/8がより好ましい。
【0065】
上記混合物は、融点の異なる上記フッ素樹脂を2種以上混合して溶融混合(溶融混練)したり、乳化重合後の樹脂分散液を混合し、硝酸などの酸で凝析して樹脂を回収する等の公知の方法により調製するとよい。溶融混合は、融点が相違する2種以上のフッ素樹脂のうち、融点が最も高いフッ素樹脂の融点以上の温度で行うことができる。
【0066】
上記フッ素樹脂としては、外観が良好であり、窒素ガス及び塩酸に対して、特に優れた低透過性を有する改質成形品を得られることから、TFE/PAVE共重合体が好ましく、TFE単位及びPAVE単位のみからなる共重合体がより好ましい。上記TFE/PAVE共重合体は、PAVE単位を全重合単位に対して1.0〜10質量%含むことが好ましい。上記PAVE単位の量は、全重合単位に対して、2.0質量%以上がより好ましく、3.5質量%以上が更に好ましく、4.0質量%以上が特に好ましく、5.0質量%以上が最も好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、7.0質量%以下が更に好ましく、6.5質量%以下が特に好ましく、6.0質量%以下が最も好ましい。
【0067】
上記フッ素樹脂は、372℃におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分であることが好ましい。MFRが上述の範囲であると、放射線を照射することによる効果が顕著である。上記MFRは、0.5g/10分以上がより好ましく、80g/10分以下がより好ましく、40g/10分以下が更に好ましい。上記MFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサー((株)安田精機製作所製)を用いて、372℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0068】
一般に、TFE単位が多く、低いMFRを有するフッ素樹脂を使用すると、窒素ガス及び塩酸に対して優れた低透過性を有する成形品を製造できるが、溶融流動性が低く、成形が難しい。本発明の製造方法は、高いMFRを有する成形性に優れたフッ素樹脂を使用する場合であっても、窒素ガス及び塩酸に対して優れた低透過性を有する成形品を製造できる。
【0069】
上記ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、フィブリル化性を有することが好ましいが、フィブリル化性を有さなくても構わない。また、上記PTFEは、非溶融加工性を有することが好ましい。上記非溶融加工性とは、ASTM D−1238及びD−2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質を意味する。上記PTFEは、高い比重及び低透過性を有しており、放射線を照射することにより、比重及び低透過性を更に向上させることができる。
【0070】
上記PTFEの融点は325〜347℃であることが好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0071】
上記PTFEは、テトラフルオロエチレン〔TFE〕のみからなるTFEホモポリマーであってもよいし、TFEと変性モノマーとからなる変性PTFEであってもよい。上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、HFP等のパーフルオロオレフィン;CTFE等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、VDF等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン;エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0072】
上記ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)としては、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単独重合体、及び、クロロトリフルオロエチレン単位(「CTFE単位」)とCTFEと重合可能な単量体(β)重合単位の共重合体が挙げられる。
【0073】
上記PCTFEは、融点が190〜216℃であることが好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0074】
上記PCTFEは、フロー値が1×10
−4〜5×10
−1(cc/sec)であることが好ましい。上記フロー値は、高下式フローテスターCFT−500D((株)島津製作所製)にて230℃で溶融し、荷重100kgで、ノズル径1mmφから1秒間あたりに押し出された樹脂の体積である。
【0075】
上記PCTFEは、CTFE単位が90〜100モル%であることが好ましい。低透過性がより優れる点で、CTFE単位が98〜100モル%であることがより好ましく、CTFE単位が99〜100モル%であることが更に好ましい。
【0076】
上記単量体(β)としては、CTFEと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、例えば、TFE、エチレン、VdF、PAVE、HFP等が挙げられる。
【0077】
上記フッ素樹脂は、官能基を有するものであってもよい。上記官能基は、共重合体の主鎖末端又は側鎖末端に存在する官能基、及び、主鎖中又は側鎖中に存在する官能基である。
上記主鎖中に存在する官能基は、主鎖炭素に直接結合している官能基である。上記側鎖中に存在する官能基は、側鎖末端でない側鎖中に存在する官能基である。上記官能基は、共重合体の主鎖末端又は側鎖末端に存在する官能基であることが好ましい。
【0078】
上記官能基は、−CF=CF
2、−CF
2H、−COF、−COOH、−COOCH
3、−CONH
2及び−CH
2OHからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、−CH
2CF
2H、−CH
2COF、−CH
2COOH、−CH
2COOCH
3、−CH
2CONH
2及び−CH
2OHからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、−CF
2H、−COF、−COOH及び−CH
2OHからなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、−CH
2OHであることが特に好ましい。
【0079】
上記官能基は、−CH
2−、−CH
3、−CH
2CH
3、−CN、−OCH
3及び−SO
3Hからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0080】
上記官能基をフッ素樹脂に導入する方法は公知である。例えば、単量体を重合する際に連鎖移動剤を使用する方法や、重合を開始させるために重合開始剤を使用する方法が挙げられる。連鎖移動剤としてメタンやエタンを使用すればフッ素樹脂共重合体の主鎖末端に−CH
3、−CH
2CH
3 を導入することができ、アルコールを使用すれば、共重合体の主鎖末端に−CH
2OHを導入することができる。また、重合開始剤として−CH
2OHの構造を有する過酸化物を使用することによっても、共重合体の主鎖末端に−CH
2OHを導入することができる。また、重合開始剤として過硫酸塩を使用すると、主鎖末端に−COOHが導入された共重合体を得ることができ、この共重合体をアンモニアと接触させることで、−COOHを−CONH
2に変換することができる。
【0081】
また、官能基を有する単量体を重合することによっても、上記官能基をフッ素樹脂共重合体の側鎖末端に導入することができる。官能基を有する単量体としては、−CF=CF
2、−CF
2H、−COF、−COOH、−COOCH
3、−CONH
2及び−CH
2OHからなる群より選択される少なくとも1種を有する単量体が好ましく、−CH
2CF
2H、−CH
2COF、−CH
2COOH、−CH
2COOCH
3、−CH
2CONH
2及び−CH
2OHからなる群より選択される少なくとも1種を有する単量体がより好ましく、−CH
2OHを有する単量体が更に好ましい。
また、官能基を有する単量体としては、−CH
2−、−CH
3、−CH
2CH
3、−CN、−OCH
3及び−SO
3Hからなる群より選択される少なくとも1種を有する単量体であってもよい。
【0082】
上記官能基を有する単量体としては、下記式:
CX
12=CX
2−R
f−T
(X
1及びX
2は同じか又は異なり、水素原子又はフッ素原子であり、R
fは炭素数1〜40の2価のアルキレン基、炭素数1〜40の含フッ素オキシアルキレン基、炭素数2〜40のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基又は炭素数2〜40のエーテル結合を含む含フッ素オキシアルキレン基を表わし、Tは上記の官能基を表す。)で示される単量体(x)が好ましい。
【0083】
Tとしては、−CF=CF
2、−CF
2H、−COF、−COOH、−COOCH
3、−CONH
2及び−CH
2OHからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、−CH
2CF
2H、−CH
2COF、−CH
2COOH、−CH
2COOCH
3、−CH
2CONH
2及び−CH
2OHからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、−CH
2OHであることが更に好ましい。
また、Tとしては、−CH
3、−CH
2CH
3、−CN、−OCH
3及び−SO
3Hからなる群より選択される少なくとも1種であっても良い。
【0084】
上記フッ素樹脂は、単量体(x)に基づく重合単位を、単量体(x)以外の単量体に基づく重合単位の合計に対して、0.01〜4質量%有するものであってもよい。
【0085】
上記フッ素樹脂は、官能基が主鎖炭素数10
6個当たり500個以下であることが好ましい。より好ましくは、400個以下であり、更に好ましくは、350個以下であり、下限は特に限定されないが、0個であってよい。官能基が多すぎると、放射線を照射することにより架橋反応が進行しやすく、優れた低透過性を有する改質成形品を製造できないおそれがある。
【0086】
高い比重を有する上記改質成形品を得るためには、架橋を促進する官能基の数が少ない方が好ましい。一方、優れた耐摩耗性を有する上記改質成形品を得るためには、架橋を促進する官能基の数は多い方が好ましい。上記官能基の数は、放射線の照射温度及び照射線量を考慮して選択できる。
【0087】
上記官能基の同定及び個数は、赤外分光分析法により測定することができる。
官能基数については、具体的には、以下の方法で測定する。
まず、上記フッ素樹脂を330〜340℃にて30分間溶融し、圧縮成形して、厚さ0.25〜0.3mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析により分析して、上記フッ素樹脂の赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って、上記含フッ素樹脂における炭素原子1×10
6個あたりの官能基数Nを算出する。
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0088】
参考までに、本明細書における官能基について、吸収周波数、モル吸光係数及び補正係数を表1に示す。また、モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT−IR測定データから決定したものである。
【0090】
なお、−CH
2CF
2H、−CH
2COF、−CH
2COOH、−CH
2COOCH
3、−CH
2CONH
2の吸収周波数は、それぞれ表中に示す、−CF
2H、−COF、−COOH freeと−COOH bonded、−COOCH
3、−CONH
2の吸収周波数から数十カイザー(cm
−1)低くなる。
従って、例えば、−COFの官能基数とは、−CF
2COFに起因する吸収周波数1883cm
−1の吸収ピークから求めた官能基数と、−CH
2COFに起因する吸収周波数1840cm
−1の吸収ピークから求めた官能基数との合計である。
【0091】
上記フッ素樹脂は、TFE/PAVE共重合体及び/又は上記TFE/HFP共重合体とポリテトラフルオロエチレンとの混合物であってもよい。上記混合物は、上記TFE/PAVE共重合体、上記TFE/HFP共重合体又はそれらの混合物に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を添加することにより、調製できる。混合する方法は、特に限定されないが、樹脂を乳化分散した液での混合、樹脂を溶液分散した液での混合、樹脂の溶融状態での混合、パウダーでの混合等がある。
【0092】
この場合のPTFEの含有量は、フッ素樹脂混合物中好ましくは0.01〜60質量%であり、より好ましくは0.05〜55質量%であり、更に好ましくは0.1〜50質量%である。
PTFEの含有量は、フッ素樹脂混合物中20質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
添加されるPTFEは、TFEのホモポリマーであるか、又は、99質量%超のTFEと1質量%未満の変性モノマーとを含む変性PTFEである。上記変性モノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フルオロアルキルエチレン、及び、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)が挙げられる。上記変性モノマーは、1種であっても2種以上であってもよい。
上記PTFEは、315〜350℃の融点を有することが好ましい。
【0093】
上記成形品及び上記改質成形品は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、架橋剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、発泡剤、発泡核剤、酸化防止剤、界面活性剤、光重合開始剤、摩耗防止剤、表面改質剤等の添加剤等を挙げることができる。
【0094】
上記成形品及び上記改質成形品が、PTFE等の他の成分を含む場合は、上記フッ素樹脂と他の成分との混合物を公知の方法により混合して調製するとよい。そして、得られた混合物を成形した後、成形された混合物に放射線を照射するとよい。成形方法としては、上述した方法と同様の方法が挙げられ、上記混合物に放射線を照射する方法としては、上述した方法と同様の方法が挙げられる。
【0095】
本発明の製造方法は、放射線を照射する工程において得られた改質成形品を熱処理する工程を含むものであってもよい。この工程を含むことにより、窒素ガス及び塩酸に対する低透過性をより一層向上させることができる。熱処理の温度は230〜270℃であることが好ましく、熱処理の時間は5〜24時間であることが好ましい。
【0096】
上述の製造方法により、改質成形品を得ることができる。本発明は、上述の製造方法から得られる改質成形品でもある。
【0097】
上記改質成形品は、比重が2.14〜2.30であることに特徴がある。上記改質成形品は、比重が上記範囲内にあることにより、窒素ガス及び塩酸に対して優れた低透過性を有する。上記比重は、2.15以上であることが好ましく、2.18以下であってよい。
【0098】
本発明は、また、溶融加工可能なフッ素樹脂(但し、PTFE及びPCTFEを除く)からなり、無機物又はPTFEを含まず、比重が2.170以上であり、破断強度が13MPa以上であることを特徴とする成形品でもある(本明細書において、この成形品を成形品(A)ということがある)。
【0099】
特開2006−159524号公報及び特開2007−320267号公報には、溶融加工可能なフッ素樹脂であるPFAに、PTFEを30重量%以上添加することにより比重を上げることが記載されているが、フッ素樹脂として溶融加工可能なフッ素樹脂(但し、PTFE及びPCTFEを除く)のみを含む成形品であって、2.170以上の比重を有するものは知られていない。
【0100】
成形品(A)は、比重が2.170以上であることから、高い破断強度及び優れた耐摩耗性を有し、かつ、窒素ガス及び塩酸に対して優れた低透過性を有する。上記比重は、2.300以下であってよく、2.180以下であってよい。
【0101】
成形品(A)は、融点が190〜330℃であることが好ましい。上記融点としては、200℃以上がより好ましく、220℃以上が更に好ましく、280℃以上が特に好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0102】
成形品(A)は、破断強度が13MPa以上である。上記破断強度としては、15MPa以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが30MPaであってよい。
【0103】
成形品(A)を構成する溶融加工可能なフッ素樹脂としては、上述したPFA、及び、上述したFEPからなる群より選択される少なくとも1種の共重合体がより好ましく、上述したPFAが更に好ましい。
【0104】
成形品(A)は、無機物及び非溶融加工性を有するPTFEのいずれも含まないことを特徴とする。
上記無機物としては、電気伝導性のあるシリコンやアルミニウム、鉄、銅、銀、コバルト等の金属、これら金属の化合物、これら金属のうち2種以上からなる合金類等の金属材料等が挙げられる。
上記PTFE及びPCTFEについては、上記フッ素樹脂として例示した上記PTFE及びPCTFEに関する説明のとおりである。
【0105】
成形品(A)は、上述したフッ素樹脂の改質成形品の製造方法により好適に製造することができる。特に、上述した製造方法において、照射温度を140℃以上とし、照射線量を60kGy以上とすることにより、成形品(A)を容易に得ることができる。また、放射線照射前のフッ素樹脂が有する官能基数及びMFRも比重に影響を与えるので、官能基数は少ない方が好ましく、MFRは高い方が好ましい。
【0106】
上記改質成形品又は成形品(A)は、厚みが0.01〜3.0mmであることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることが更に好ましく、2.0mm以下であることがより好ましい。厚みが小さい成形品は、外観が良好で、高い破断強度を有することが望まれると同時に、窒素ガス及び塩酸を透過させやすいことから、窒素ガス及び塩酸に対する透過係数が小さいことが望まれる。上記改質成形品又は成形品(A)は、厚みが上記範囲内にあっても、外観が良好であり、窒素ガス及び塩酸に対して優れた低透過性を有する。
【0107】
上記改質成形品又は成形品(A)の形状は、特に限定されず、例えば、ペレット、フィルム、シート、板、ロッド、ブロック、円筒、容器、電線、チューブ等が挙げられる。また、炊飯器の内釜、ホットプレート、フライパンなどの調理具の被覆層や電子写真方式または静電記録方式の複写機、レーザープリンタなどの画像形成装置用の定着ローラのトップコート層などを形成するフッ素樹脂製塗膜であってもかまわない。
【0108】
上記改質成形品又は成形品(A)は、チューブ、フィルム又はボトルであることが好ましい。チューブ、フィルム及びボトルは、押出成形、圧縮成形又は射出成形で製造されることが通常であり、なかでも、押出成形により製造されることが多い。従って、チューブ、フィルム及びボトルでは、フッ素樹脂を構成する各ポリマー鎖が流動方向に配向しており、これら成形品を加熱すると流動方向に収縮しやすい。上記改質成形品又は成形品(A)は、形状がチューブ、フィルム又はボトルであっても、良好な外観を有する。
【0109】
上記改質成形品又は成形品(A)は、窒素ガス透過係数が6.5×10
−11cm
3(STP)・cm/cm
2/sec/cmHg以下であることが好ましい。
【0110】
上記改質成形品又は成形品(A)は、塩酸透過係数が5.0×10
−13g・cm/cm
2/sec以下であることが好ましい。
【0111】
上記改質成形品又は成形品(A)は、破断強度が15MPa以上であることが好ましい。
【0112】
上記改質成形品又は成形品(A)は、特に限定されないが、例えば、以下の用途に適用することができる:
ダイヤフラムポンプの隔膜部、ベローズ成形品、電線被覆品、半導体用部品、パッキン・シール、コピーロール用薄肉チューブ、モノフィラメント、ベルト、ガスケット、光学レンズ部品、石油発掘用チューブ、地熱発電用チューブ、石油発掘用電線、サテライト用電線、原子力発電用電線、航空機用電線、太陽電池パネルフィルム、二次電池や電気二重層コンデンサーなどのガスケット、OAロール等。
【0113】
上記改質成形品又は成形品(A)は、ガスや薬品を流通させるためのチューブ、薬品を保管するためのボトル、ガスバック、薬液バッグ、薬液容器、冷凍保存用バック等として特に好適に利用できる。
【0114】
上記改質成形品又は成形品(A)は、特に、使用時に摩擦による摩耗粉等のパーティクルの発生が懸念される開閉バルブのボディーや部品類、継手とチューブを接続する際に使用されるスリーブ類、薬液ボトルや容器のスクリューキャップ類、またギィヤー類、ネジ類、フライパン、鍋、炊飯ジャー、金属など基盤上にフッ素樹脂を被覆された製品類、離形フィルム等に好適に利用できる。
【実施例】
【0115】
つぎに本発明を参考例をあげて説明するが、本発明はかかる参考例のみに限定されるものではない。
【0116】
参考例の各数値は以下の方法により測定した。
【0117】
(単量体単位の含有量)
各単量体単位の含有量は、
19F−NMR法により測定した。
【0118】
(MFR)
ASTM D1238に従って、メルトインデクサー((株)安田精機製作所製)を用いて、372℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)を求めた。
【0119】
(フロー値)
高下式フローテスターCFT−500D((株)島津製作所製)にて、230℃で溶融し荷重100kgで、ノズル径1mmφから1秒間あたりに押し出された樹脂の体積を測定した。
【0120】
(官能基数)
試料を330〜340℃にて30分間溶融し、圧縮成形して、厚さ0.25〜0.3mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析装置〔FT−IR(商品名:1760X型、パーキンエルマー社製)により40回スキャンし、分析して赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って試料における炭素原子1×10
6個あたりの官能基数Nを算出する。
【0121】
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0122】
参考までに、本明細書における官能基について、吸収周波数、モル吸光係数及び補正係数を表2に示す。また、モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT−IR測定データから決定したものである。
【0123】
【表2】
【0124】
(比重)
水中置換法にて測定した。
【0125】
(MIT値及びMIT保持率)
ASTM D2176に準じて測定した。具体的には、幅12.5mm、長さ130mmの電子線未照射又は照射後の試験片を、MIT試験機(型番12176、(株)安田精機製作所製)に装着し、荷重1.25kg、左右の折り曲げ角度各135度、折り曲げ回数175回/分の条件下で試験片を屈曲させ、試験片が切断するまでの回数(MIT値)を測定した。
MIT保持率は次式で求めた。
MIT保持率(%)=(電子線照射後のMIT値/電子線未照射のMIT値)×100
【0126】
(破断強度及び強度保持率)
参考例又は比較例において得られた試験片を、ASTM V型ダンベルを用いて得られたダンベル状試験片を用いて、オートグラフ((株)島津製作所製 AGS−J 5kN)を使用して、ASTM D638に準じて、50mm/分の条件下で、25℃で破断強度を測定した。
参考例又は比較例において得られたチューブを縦割りにカットして、ASTM V型ダンベルを用いてダンベル状試験片を切り抜き、オートグラフ((株)島津製作所製 AGS−J 5kN)を使用して、ASTM D638に準じて、50mm/分の条件下で、25℃で破断強度を測定した。
強度保持率は次式で求めた。
強度保持率(%)=(電子線照射後の破断強度/電子線未照射の破断強度)×100
【0127】
(窒素ガス透過係数)
窒素ガス透過係数における透過量の測定は、加圧式ガス透過測定機(日本分光(株)製のGasperm−100)を用いて行なった。測定は窒素の単一ガスを用い、加圧側に0.5MPa・Gの圧力をかけ、透過側は大気圧で行なった。この装置では、測定器が透過したガスの量を連続的に観測することにより、時間当りの気体の透過量が得られる。また、測定は、参考例又は比較例において得られた試験片を直径5cmの円形にカットしたサンプルフィルムにより行った。得られた時間あたりの気体透過量、圧力差{(加圧側の圧力)−(大気圧)}、試料の透過面積はシールリング内径3.9mmから計算した。
下記式より窒素ガスの透過係数(cm
3(STP)・cm/cm
2/sec/cmHg)を算出した。
透過係数={気体透過量(cm
3)×シート厚さ(cm)}/{圧力差(cmHg)×シートの透過面積(cm
2)×透過時間(sec)}
【0128】
(塩酸透過係数)
参考例又は比較例において得られた試験片又はチューブを特許第4569568号明細書記載の塩酸透過係数の測定方法で35質量%の塩酸を用いて測定した。
透過した純水中に含まれる塩素イオン濃度Y(ppm)は、イオンクロマトグラフ(商品名:IC7000−E、横河電気社製)を用いて定量した。
塩酸透過係数X(g・cm/cm
2/sec)は、次の式を用いて計算した。
X=(β×膜厚)/断面積
β:Tに対し、αをプロットしたとき、αがTに対して直線的に変化している期間(T
β)の傾き
α:透過総量(単位:g)=Y×W×10
−6(単位:g/sec)
W:純水量(単位:ml)
T:透過開始からサンプリングまでの経過時間(単位:sec)
膜厚:試験片の厚み又はチューブの肉厚(単位:cm)
断面積:透過試験機において、試験片又はチューブと純水が接している部分の面積(単位:cm
2)
【0129】
(摩耗試験)
学振型摩耗試験機((株)安田精機製作所製)を使用して、摩耗試験を実施し、試験前後の重量を測定した。
試験片:長さ220mm、幅30mm
摩擦紙:コピー紙(20mm×20mm)
荷重:1.96N、
摩擦距離:120mm
摩擦速度:30往復/min
【0130】
(参考例1)
PFAペレット(MFR=22.0(g/10min)、組成比TFE/HFP/PPVE=94.1/0.0/5.9(質量%))をヒートプレス成形機で直径120mmの円盤状、1.5mm厚のシート状に成形し試験片を得た。
得られた試験片を、電子線照射装置(NHVコーポレーション社製)の電子線照射容器に収容し、その後窒素ガスを加えて容器内を窒素雰囲気にした。容器内の温度を180℃まで昇温し温度が安定した後、電子線加速電圧が3000kV、照射線量の強度が20kGy/5minの条件で、試験片に60kGyの電子線を照射した。電子線照射前後での試験片の寸法変化は1%以下でシワの発生は無かった。
電子線照射後の試験片について、比重、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表3に示す。
また、参考例1で用いた共重合体(未照射)の官能基数は、321(個/炭素原子10
6個)(内訳はCH
2OHが150個、COFが17個、COOHが154個)であった。
【0131】
(比較例1)
電子線照射を行わなかった点以外は、参考例1と同様にして、試験片を得て、比重、MIT値、MIT保持率、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表3に示す。
【0132】
(参考例2、3及び比較例2)
表3に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は、参考例1と同様にして、電子線照射後の試験片について、比重、MIT値、MIT保持率、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表3に示す。参考例2、3において、電子線照射前後での試験片の寸法変化は何れも1%以下でシワの発生は無かった。比較例2において、電子線照射前後での試験片の寸法変化(収縮)は1.5%以上であった。
【0133】
(参考例4〜8及び比較例4、5)
PFAペレット(MFR=26.0(g/10min)、組成比TFE/HFP/PPVE=94.4/0.0/5.6(質量%))を用い、表4に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は参考例1と同様にして、電子線照射後の試験片について、比重、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表4に示す。参考例4〜8において、電子線照射前後での試験片の寸法変化は何れも1%以下でシワの発生は無かった。
また、参考例4〜8及び比較例4、5で用いた共重合体(未照射)の官能基数は、69(個/炭素原子10
6個)(内訳はCH
2OHが0個、COFが17個、COOHが52個)であった。
【0134】
(比較例3)
電子線照射を行わなかった点以外は、参考例4と同様にして、試験片を得て、比重、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表4に示す。
【0135】
(参考例9)
PFAペレット(MFR=2.2(g/10min)、組成比 TFE/HFP/PPVE=96.9/0.0/3.1(質量%))をチューブ押出成形機で成形し外径12mm、1.0mm厚のチューブを得た。
得られたチューブを40cm長さにカットして、電子線照射装置(NHVコーポレーション社製)の電子線照射容器に収容し、その後窒素ガスを加えて容器内を窒素雰囲気にした。容器内の温度を83℃まで昇温し温度が安定した後、電子線加速電圧が3000kV、照射線量の強度が20kGy/5minの条件で、チューブに60kGの電子線を照射した。電子線照射前後でのチューブの寸法変化は1%以下でシワの発生は無かった。
電子線照射後のチューブについて、比重、破断強度、強度保持率、塩酸透過係数を測定した。結果を表5に示す。
また、参考例9で用いた共重合体(未照射)の官能基数は、8(個/炭素原子10
6個)(内訳はCH
2OHが0個、COFが2個、COOHが6個)であった。
【0136】
(比較例6)
電子線照射を行わなかった点以外は、参考例9と同様にして、チューブを得て、比重、破断強度、強度保持率、塩酸透過係数を測定した。結果を表5に示す。
【0137】
(参考例10、11及び比較例7)
表5に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は、参考例9と同様にして、電子線照射後のチューブについて、比重、破断強度、強度保持率、塩酸透過係数を測定した。結果を表5に示す。参考例10、11において、電子線照射前後でのチューブの寸法変化は何れも1%以下でシワの発生は無かった。
【0138】
(参考例12〜14)
PFAペレット(MFR=2.1(g/10min)、組成比TFE/HFP/PPVE=94.5/0.0/5.5(質量%))を用い、表6に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は参考例9と同様にして、電子線照射後のチューブについて、比重、破断強度、強度保持率を測定した。結果を表6に示す。参考例12〜14において、電子線照射前後でのチューブの寸法変化は何れも1%以下でシワの発生は無かった。
また、参考例12〜14で用いた共重合体(未照射)の官能基数は、6(個/炭素原子10
6個)(内訳はCH
2OHが0個、COFが2個、COOHが4個)であった。
【0139】
(比較例8)
電子線照射を行わなかった点以外は、参考例12と同様にして、チューブを得て、比重、破断強度、強度保持率を測定した。結果を表6に示す。
【0140】
(参考例15〜18)
PFAペレット(MFR=2.2(g/10min)、組成比TFE/HFP/PPVE=96.9/0.0/3.1(質量%))を用い、表7に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は参考例1と同様にして、電子線照射後の試験片について、比重、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数、塩酸透過係数を測定した。結果を表7に示す。参考例15〜18において、電子線照射前後での試験片の寸法変化は何れも1%以下でシワの発生は無かった。
また、参考例15〜18で用いた共重合体(未照射)の官能基数は、8(個/炭素原子10
6個)(内訳はCH
2OHが0個、COFが2個、COOHが6個)であった。
【0141】
(比較例9)
電子線照射を行わなかった点以外は、参考例15と同様にして、試験片を得て、比重、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数、塩酸透過係数を測定した。結果を表7に示す。
【0142】
(参考例19〜21)
PFAペレット(MFR=2.2(g/10min)、組成比TFE/HFP/PPVE=96.6/0.0/3.4(質量%))を用い、表8に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は参考例1と同様にして、電子線照射後の試験片について、比重、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表8に示す。参考例19〜21において、電子線照射前後での試験片の寸法変化は何れも1%以下でシワの発生は無かった。
また、参考例19〜21で用いた共重合体(未照射)の官能基数は、60(個/炭素原子10
6個)(内訳はCH
2OHが13個、COFが28個、COOHが19個)であった。
【0143】
(比較例10)
電子線照射を行わなかった点以外は、参考例19と同様にして、試験片を得て、比重、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表8に示す。
【0144】
(参考例22〜25)
PTFEペレット(MFR=<0.1(g/10min)、組成比TFE/HFP/PPVE=100/0.0/0.0(質量%))を用い、表9に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は参考例1と同様にして、電子線照射後の試験片について、比重、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表9に示す。参考例22〜25において、電子線照射前後での試験片の寸法変化は何れも1%以下でシワの発生は無かった。
また、参考例22〜25で用いた共重合体(未照射)の官能基数は、0(個/炭素原子10
6個)(内訳はCH
2OHが0個、COFが0個、COOHが0個)であった。
【0145】
(比較例11)
電子線照射を行わなかった点以外は、参考例22と同様にして、試験片を得て、比重、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表9に示す。
【0146】
(参考例26〜29)
PCTFEペレット(フロー値=1.0×10
−3(cc/sec)、組成比CTFE=100(質量%))を用い、表10に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は参考例1と同様にして、電子線照射後の試験片について、比重、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表10に示す。参考例26〜29において、電子線照射前後での試験片の寸法変化は何れも1%以下でシワの発生は無かった。
また、参考例26〜29で用いた共重合体(未照射)の官能基数は、0(個/炭素原子10
6個)(内訳はCH
2OHが0個、COFが0個、COOHが0個)であった。
【0147】
(比較例12)
電子線照射を行わなかった点以外は、参考例26と同様にして、試験片を得て、比重、破断強度、強度保持率、窒素ガス透過係数を測定した。結果を表10に示す。
【0148】
(参考例30〜33)
FEPペレット(MFR=3.0(g/10min)、組成比TFE/HFP/PPVE=89.0/11.0/0.0(質量%))を用い、表11に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は参考例9と同様にして、電子線照射後のチューブについて、比重、破断強度、強度保持率、塩酸透過係数を測定した。結果を表11に示す。参考例30〜33において、電子線照射前後でのチューブの寸法変化は何れも1%以下でシワの発生は無かった。
また、参考例30〜33で用いた共重合体(未照射)の官能基数は、18(個/炭素原子10
6個)(内訳はCH
2OHが0個、COFが0個、COOHが18個)であった。
【0149】
(比較例13)
電子線照射を行わなかった点以外は、参考例30と同様にして、チューブを得て、比重、破断強度、強度保持率、塩酸透過係数を測定した。結果を表11に示す。
【0150】
(参考例34〜35、比較例14〜15)
参考例15と同じPFAペレットを用い、表12に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は参考例1と同様にして、電子線照射後の試験片を得た。この試験片について耐摩耗性試験を実施した。結果を表12に示す。
(参考例36、比較例16〜19)
参考例19と同じPFAペレットを用い、表13に記載の照射温度と照射線量で電子線照射を行った点以外は参考例1と同様にして、電子線照射後の試験片を得た。この試験片について耐摩耗性試験を実施した。結果を表13に示す。
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】
【表5】
【0154】
【表6】
【0155】
【表7】
【0156】
【表8】
【0157】
【表9】
【0158】
【表10】
【0159】
【表11】
【0160】
【表12】
【0161】
【表13】