(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中空成形体の内面を形成する前記樹脂層表面が、マトリックス樹脂と該マトリックス樹脂よりも臨界表面張力の小さい物質とを含む混成表面を形成している請求項1に記載の中空成形体。
請求項1に記載の中空成形体の使用方法であって、内面となる前記樹脂層表面に前記液滴が分布している状態で、該内面となる樹脂層表面に水性液状体を接触させる中空成形体の使用方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<中空成形体の内面状態>
本発明の中空成形体の内面の状態を示す
図1において、この中空成形体は、プラスチック製の内面1を有しており(即ち、内面1が樹脂層により形成されている)、この内面1には、油性液体の液滴3が分布している。即ち、このように分布している液滴3により、この内面1は、粘稠な難流動性の水性液状体に対して著しく優れた滑り性を示し、この内面1に付着させることなく、該液状体を速やかに通過させることができる。即ち、上記で説明したように、難流動性の水性液状体が内面1を通過するとき、この液滴3がおそらく押し広げられ、水性液状体は、常に油性液体の液滴3の拡がりにより形成された油性液体層と接触しながら、内面1上を通過するため、この水性液状体に対しての滑り性が飛躍的に向上するというものである。
【0018】
本発明において、内面1上に分布している液滴3の大きさは、円相当径(直径)が25〜500μm、特に50〜400μmの大きさを有していることが望ましい。即ち、液滴3が大きすぎると、その重量が増大することに伴い液滴が重力の影響を受けやすくなるため、内面1が直立したような状態での液滴3の落下が生じ易くなり、この結果、液滴3を形成する油性液体による滑り性が経時的に低下し易くなり、本発明の利点を十分に発揮できなくなるおそれがある。また、液滴3が小さ過ぎると、液滴3の落下等を抑制する上では有利であるが、反面、水性液状体に対する滑り性が低下する傾向にある。おそらく、水性液状体が内面1上を通過する際、液滴3が広がり難くなっているためと思われる。
従って、本発明においては、液滴3の円相当径(円相当直径)は、上記範囲に調整されていることが好適となる。
【0019】
また、水性液状体が内面1上を通過するときの油性液体による滑り性を最大限に発揮させると同時に、液滴3の落下等による脱落を有効に回避するという点で、液滴3は、100〜1000個/cm
2、特に200〜600個/cm
2の密度で分布していることが好ましい。即ち、液滴3の密度が、大きすぎると、液滴3同士の合一化が生じ易くなり、この結果、液滴3の落下等による脱落を生じ易くなってしまう。また、液滴3の密度が小さ過ぎると、当然のことながら、油性液体による滑り性を十分に発揮させることが困難となる傾向にある。
【0020】
このように、本発明においては、適度な大きさを有する油性液体の液滴3を、適度な密度で内面1上に分布させることが、本発明の目的を達成する上で有利であるが、このような液滴3の大きさや密度の調整は、液滴3を形成する油性液体を内面1を形成する樹脂にブレンドしておき、この内面1を形成する樹脂層からブリーディングにより、液滴3を形成することにより実現することができる。即ち、スプレー噴霧等の外添により、上述した液滴3を形成することはできない。液滴3の密度が高くなり過ぎてしまうことで、液滴3が合一し、大きくなり過ぎてしまうからである。
尚、上記のような大きさや密度を満足する液滴3が分布した内面1を形成するための手段については後述する。
【0021】
<水性液状体>
本発明において、内面1を通過させる水性液状体は、水や水を含む親水性物質であるが、この中空成形体の用途に応じて適宜のものが使用されるが、一般に、その粘度(25℃)が100mPa・s以上の粘稠な液状体が好適に使用される。即ち、本発明では、特に粘度の高い粘稠な液状体を内面1上を通過させるときに、最大限の滑り性を発揮させることができる。おそらく、高粘性の液状体を内面1上を通過させるときに、液滴3が十分に押し広げられることにより、内面1上に液層が形成されるため、油性液体による滑り性が十分に発揮されるものと考えられる。低粘性の液状体では、液滴3の押し広げが十分に行われず、この結果、高い滑り性を発揮させることが困難となるおそれがある。
【0022】
上記のような高粘性の水性液状体の具体例としては、これに限定されるものではないが、その一例を挙げると、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マヨネーズ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンス、コンディショナーなどを例示することができる。
【0023】
<油性液体>
さらに、液滴3の形成に使用される油性液体は、当然、大気圧下での蒸気圧が小さい不揮発性の液体、例えば沸点が200℃以上の高沸点液体でなければならない。揮発性液体を用いた場合には、容易に揮散して経時と共に消失し、液滴3を形成することが困難となってしまうからである。
【0024】
このような油性液体の具体例としては、上記のような高沸点液体であることを条件として、種々のものを挙げることができるが、特に表面張力が、滑り性の対象となる水性液状体と大きく異なるものほど、潤滑効果が高く、水性液状体と非混和性のものが本発明には好適である。即ち、水性液状体が水や水を含む親水性物質であることを考慮して、表面張力(23℃)が10乃至40mN/m、特に16乃至35mN/mの範囲にある液体を用いるのが良く、フッ素系液体、フッ素系界面活性剤、シリコーンオイル、脂肪酸トリグリセライド、グリセリン脂肪酸エステル、各種の植物油などが代表的である。植物油としては、大豆油、菜種油、オリーブオイル、米油、コーン油、べに花油、ごま油、パーム油、ひまし油、アボガド油、ココナッツ油、アーモンド油、クルミ油、はしばみ油、サラダ油などが好適に使用できる。特に中鎖脂肪酸トリグリセライドが好適に使用できる。
本発明においては、中空成形体の用途や内面1を通過させる水性液状体の種類等に応じて、上記の中から適当なものを選択して、液滴3を形成するための油性液体として使用すればよい。
【0025】
<内面1を形成する内面樹脂層>
本発明においては、上記内面1を形成する内面樹脂層は、成形可能な樹脂、例えば熱可塑性樹脂を用い、中空成形体の形態に応じた手段で成形される。このような熱可塑性樹脂としては、これに限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム乃至ブロック共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキサイド;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;酸化澱粉、エーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉;及びこれらの混合物からなる樹脂;などを挙げることができる。
【0026】
ところで、先にも述べたとおり、この樹脂層には、液滴3を形成する油性液体がブレンドされていることが必要であり、内面樹脂層にブレンドされている油性液体のブリーディングにより、液滴3が形成される。
このような油性液体の配合量は、一般に、内面1を形成する上記の熱可塑性樹脂100質量部当り、2〜15質量部、特に3〜10質量部程度であり、用いる油性液体の種類や熱可塑性樹脂の種類に応じて、かかる範囲から成形性が損なわれない程度に、適宜の量を設定すればよい。
【0027】
また、本発明においては、上述した熱可塑性樹脂の中でも、油性液体のブリーディングに適しており、且つ中空成形体に要求される強度等の物理的特性を満足する熱可塑性樹脂が選択されるが、本発明では、特に、2種類の熱可塑性樹脂を選択し、マトリックス樹脂と、マトリックス樹脂よりも臨界表面張力の小さい分散樹脂とのブレンド物を内面1形成用の樹脂として使用し、これに、前述した油性液体を配合した樹脂組成物により、内面1を形成するのがよい。ここで、マトリックス樹脂中にマトリックス樹脂よりも臨界表面張力の低い樹脂を分散させるため、これらの樹脂は非相溶であることが必要である。これは、これらの樹脂の相溶性が高い場合、マトリックス樹脂中に臨界表面張力の低い樹脂が均一に溶け込んでしまい、均質な相となってしまうため、後述する分散樹脂5の偏在化が起こらなくなってしまうためである。
【0028】
即ち、上記のような樹脂組成物を用いて内面1を形成すると、
図2に示されているように(
図2では液滴3が省略されている)、内面1には、臨界表面張力の低い分散樹脂5が分布するが、このような分散樹脂5は偏在することとなる。即ち、このような分散樹脂5の偏在により、内面1上での局所的な表面張力が一様ではない混成表面となる。この混成表面上において油性液体1はブリーディングすることとなるが、この混成表面上では、臨界表面張力の小さい分散樹脂の偏在により表面張力が局所的に異なっているため、全体に均一な厚みの液層を形成するにはエネルギー的に不安定な状況であるため、油性液体が液滴状に存在することでエネルギー的に安定化された形態を形成していると考えられる。この結果、油性液体が液滴状にブリーディングし、液滴3が内面1上に形成され易くなるわけである。
さらに、マトリックス樹脂の臨界表面張力が油性液体の表面張力よりも大きいものを選択し、かつ、マトリックス樹脂の臨界表面張力よりも臨界表面張力が小さい分散樹脂5を選択して使用すれば、形成された混成表面上のマトリックス樹脂が露出している部分においては、油性液体1は極めて薄い液膜4を形成しながら、分散樹脂5が比較的多く露出している部分に油性液体1を液滴状に形成することが可能となると考えられる。
【0029】
これを利用して、液滴3の大きさや密度を調整することができ、例えば、油性液体のブリーディング性が良好であることなどを考慮し、さらに、マトリックス樹脂と分散樹脂との臨界表面張力差が大きくなるように、これらの樹脂を選択することが望ましく、特に、分散樹脂の臨界表面張力が用いる油性液体のそれに近いか、油性液体よりも小さいものを選択することが、液体3の大きさや密度を調整する上で好適である。また、マトリックス樹脂の臨界表面張力は、油性液体の表面張力よりも大きいものを選択しておくことが好適である。これは、水性液状体と接触した際、このようなマトリックス樹脂表面は油性液体の薄い液膜4が形成されていると考えられるため、内面1上に形成されている液滴3を押し広げる際、液層状への変形を容易にさせるためである。
このような観点から、本発明では、マトリックス樹脂及び分散樹脂をオレフィン系樹脂の中から選択し、特にマトリックス樹脂として、ポリエチレンやエチレンを主体とする共重合体に代表されるエチレン系樹脂を選択し、分散樹脂として、ポリプロピレンやプロピレンを主体とする共重合体に代表されるプロピレン系樹脂を選択することが望ましい。
【0030】
さらに、上記のマトリックス樹脂と分散樹脂とは、分散樹脂5を内面1の近傍に偏在させるために、
マトリックス樹脂:分散樹脂=100:3〜100:100
特に、100:5〜100:50
さらには、100:10〜100:30
の質量比で使用することが最適である。
【0031】
前述の混成表面の形成方法として、マトリックス樹脂とマトリックス樹脂よりも臨界表面張力の小さいブリード性有機系添加剤を内面1形成用の樹脂として使用し、これに前述した油性液体を配合した樹脂組成物により内面1を形成することもできる。ここで、ブリード性有機系添加剤は油性液体に不溶あるいは難溶であることが必要である。この性質を有するブリード性有機系添加剤としては、常温で固体性状を示す脂肪酸金属塩が挙げられる。
【0032】
このような脂肪酸金属塩としては、C4〜C22の脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、亜鉛などの金属と、からなる脂肪酸金属塩が代表的であり、油性液体に不溶あるいは難溶であり、かつ、マトリックス樹脂よりも臨界表面張力が小さくなるように適宜調整したものを使用することができる。
【0033】
このような樹脂組成物を用い内面1を形成すると、内面1には臨界表面張力の小さいブリード性添加剤が分布・偏在することとなり、局所的な表面張力が一様でない混成表面が形成される。このような混成表面上に油性液体がブリードするため、前述の分散樹脂と同様に、マトリックス樹脂とマトリックス樹脂よりも臨界表面張力の小さいブリード性有機系添加剤を用いた場合でも、油性液体1を液滴上に形成することが可能となると考えられる。
【0034】
さらに、上記のマトリックス樹脂とマトリックス樹脂よりも臨界表面張力の小さいブリード性添加剤とは、ブリード性添加剤を内面1の近傍に偏在させるために、
マトリックス樹脂:ブリード性添加剤
=100:0.03〜100:2
特に、 =100:0.05〜100:1
さらには、=100:0.01〜100:0.5
の質量比で使用することが最適である。
【0035】
このようにして、液滴3を前述した大きさ及び密度で、効果的に内面1上に分布させることができる。
【0036】
また、内面1上に形成された液滴3が水性液状体と接触した際、液滴3は押し広げられて中空成形体の面の一部または全域に油性液体の層が形成されることと推察されるが、水性液状体との接触後も安定的に油性液体の層を保持するために、内面1の表面特性として、水中での油の接触角を40度以下に設定しておくことが好ましい。この水中での油の接触角が大きい場合(例えば90度以上)、水性液状体中での油性液体の層は不安定化されるため、液層がはがれてしまい、性能が消失してしまう可能性が高い。こういった理由から、内面1を構成する樹脂として、水中での油の接触角を40度以下にするようなマトリックス樹脂と分散樹脂の組み合わせを選択することが望ましい。この組み合わせとしては、上述のエチレン系樹脂とプロピレン系樹脂が好適に使用できる。
【0037】
尚、本発明においては、上述した油性液体を含む内面形成用の樹脂組成物には、微細な粒子を粗面化用添加剤として配合することもできる。即ち、このような微細粒子を適度な量で配合しておくことにより、内面1が適度な粗面となり、液滴3の落下防止に効果的である。
このような粗面化用添加剤として使用される微細粒子としては、例えばレーザー回折散乱法で測定した体積基準での平均粒径が20μm以下の粒子であり、酸化チタン、アルミナ、シリカ等の金属酸化物粒子、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、カーボンブラックなどの炭素系微粒子、ポリメチル(メタ)アクリレートや、ポリエチレン、ポリオルガノシルセスキオキサンに代表されるシリコーン粒子などから成る有機微粒子が代表的であり、これらは、シランカップリング剤やシリコーンオイル等により疎水化処理されていてもよい。このような粗面化用添加剤として使用される微細粒子は、通常、内面形成用の熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂と分散樹脂との合計量)100質量部当り1〜20質量部程度の量で使用される。
【0038】
<中空成形体の層構造>
本発明の中空成形体は、前述した液滴3が分布した内面1が形成されている限り、該内面を形成するための油性液体がブレンドされている樹脂組成物により形成された単層構造を有するものであってもよいし、該内面1を形成する内面樹脂層の下側に他の層が積層された多層構造を有していてもよい。
【0039】
特に本発明においては、内面1を形成する内面樹脂層に液滴3を形成する油性液体がブレンドされていることから、この油性液体の内面1上へのブリーディング量を適度なものとし、前述した大きさ及び密度で液滴3を安定に形成するというために、この油性液体の浸透拡散を防止するための液拡散防止層を、内表面層の下側に設けた多層構造とすることが望ましい。
【0040】
このような液拡散防止層の材質は、液の浸透拡散を防止し得るものであり且つ中空成形体の成形に適したものであれば、特に制限されず、例えば金属箔、金属蒸着膜或いはガラスやセラミックス類などの無機材料から形成されていてもよいし、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)蒸着膜、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの有機材料から形成されていてもよい。但し、無機材料を用いての液拡散防止層の形成は、中空成形体への成形が難しいことから、一般的には、有機材料、特に熱可塑性樹脂により形成されていることが好ましい。
【0041】
上記のような液拡散防止層を形成するための熱可塑性樹脂としては、密度が1.00g/cm
3以上であり且つガラス転移点(Tg)が35℃以上のものあるいは、結晶化度が0.5以上のものが使用される。即ち、このような熱可塑性樹脂は緻密であり、樹脂中での液体の移動拡散が非常に制限されると考えられるため、油性液体の浸透拡散を有効に抑制することができる。例えば、密度及びガラス転移点(Tg)が上記範囲を下回る樹脂では、液拡散防止層がルーズな層となり、液体の移動拡散の制限が弱まってしまい、液の浸透拡散を効果的に防止することが困難となる。また、結晶化度が0.5未満の樹脂では、樹脂中での液体の移動拡散を制限する結晶成分が少なく、制限が弱まってしまうため、液の浸透拡散を効果的に防止することが困難となる。
【0042】
このような有機材料から形成される液拡散防止層の厚みは、例えば2μm以上、特に5〜80μm程度とすることが好ましい。即ち、この厚みが薄すぎると液拡散防止能が不満足となってしまうおそれがあり、また過度に厚くしても、中空成形体が不必要に厚肉となってしまい、コスト的にもメリットが無いからである。
【0043】
本発明において、上記のような密度及びガラス転移点(Tg)を有する熱可塑性樹脂は特に制限されないが、一般的には、エチレン・ビニルアルコール共重合体(エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物)、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド及び環状ポリオレフィンなどのガスバリア性樹脂や、ポリエチレンテレフタレートや液晶ポリマーのようなポリエステル、ポリカーボネート等が好ましい。例えば、このようなガスバリア性樹脂により液拡散防止層を形成した場合には、液拡散防止層に酸素などのガスの透過を防止するガス遮断性をも付与することができ、特に中空成形体を容器のような形態とする場合には、内容物の酸化劣化を防止することができ、極めて有利となる。中でもエチレン・ビニルアルコール共重合体は、特に優れた酸素バリア性を示すため、最も好適である。
【0044】
上記のようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、一般に、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適であり、これらの中から、密度且つガラス転移点(Tg)が前述した範囲にあるものが選択的に使用するのがよい。
【0045】
尚、前述したガスバリア性樹脂は、それぞれ単独で使用することもできるし、また、密度やガラス転移点(Tg)が前記範囲内にある限り、ポリエチレン等のポリオレフィンとガスバリア性樹脂とをブレンドして液拡散防止層を形成することもできる。
【0046】
ところで、上記のようなガスバリア性樹脂を液拡散防止層として用いる場合には、前述した内面1を有する内面樹脂層との接着性を高め、デラミネーションを防止するために、液拡散防止層に隣接して接着剤樹脂層を設けることが好ましい。これにより、液拡散防止層をしっかりと内面樹脂に接着固定することができる。このような接着樹脂層の形成に用いる接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。このような接着剤樹脂層の厚みは、適宜の接着力が得られる程度でよく、一般的には、0.5乃至20μm、好適には1乃至8μm程度の厚みでよい。
【0047】
尚、このような接着剤樹脂も、通常、前述した範囲の密度とガラス転移点、結晶化度を有しており、従って、液拡散防止層としての機能を有している。
【0048】
また、上記のような液拡散防止層が内面樹脂層の下側に設けられた多層構造においては、この液拡散防止層にさらに、他の層が形成されていてもよい。例えば、前述した内面1の形成に用いる熱可塑性樹脂を用いて形成された外面層を、適宜上記の接着剤樹脂層を介して積層することもできるし、さらに、この中空成形体を成形する際に生じるバリなどのスクラップ樹脂を含むリプロ層を、外表面側に形成することもできる。
【0049】
<中空成形体の形態>
本発明の中空成形体は、前述した内面1を形成するための内面形成用樹脂組成物を用い、それ自体公知の成形手段によって形成される。このような中空成形体は、種々の形態を有していてよいが、特に、液滴3が長期にわたって安定に保持され、粘稠な水性液状体に対して優れた滑り性を長期にわたって示すはという観点から、このような水性液状体を収容する容器や該水性液状体を通すための長尺パイプとして極めて有用であり、容器として最も好適に使用される。これらの形態に限られなく、キャップ、スパウト、パイプを所定の大きさにカットしたものであってもよい。
【0050】
このような容器は、上記の内面形成用樹脂組成物を用いることを除けば、従来公知の方法と同様にして製造される。
例えば、溶融樹脂(成形用樹脂の溶融物)の押出(押出成形)或いは射出(射出成形)により容器用のプリフォームを成形し、次いで所定のブロー成形温度に維持された該プリフォーム内にブロー用流体を供給して容器の形態に賦形することにより行われる。
【0051】
プリフォームの形態は、目的とする容器の形態によって異なり、例えば、2軸延伸ブロー容器では、試験管の形態を有しており、上部に容器の口部となる未延伸部分(キャップ締結するために螺子やサポートリングが形成されている部分)が形成され、このような形態のプリフォームは、通常、射出成形により成形される。
一方、ダイレクトブロー容器でのプリフォームは、パイプ形状を有しており、例えばボトル形状の容器の場合、容器の底部となる部分はピンチオフされて閉じられている。このようなプリフォームは、押出成形により成形される。
【0052】
図3には、特に粘稠な水性液状体の収容に好適に使用される食品用ダイレクトブロー容器の成形直後の空容器の状態が示されている。
全体として10で示すこの空容器は、上部に螺子等を備えた口部13を有しており、口部13に連なるブロー部分(即ち、胴部及び胴部を閉じるように形成されている底部を備えた延伸部分)の内面には、上記の油性液体の液滴3が形成されている。
また、口部13の上部には、これを閉じている閉塞部17が形成されている。この閉塞部17には、ブロー成形に当ってブロー用流体を供給するための供給管が挿入される小孔17aが供給されている。この小孔17aは、空容器10の内部に通じている。
【0053】
即ち、この空容器10の内面には、前述した液滴3が分布しており、このままユーザーに供給され、そこで、閉塞部17を切り取り、この状態で内容物を充填し、次いで、キャップを口部に締結して容器を密封して販売に供されることとなる。
内容物充填前の空容器10をこのような形態とするのは、先にも述べたように、容器10の内部を殺菌することが難しいため、滅菌状態を維持し且つ異物の侵入を防止するためである。また、ブロー成形に無菌エアーを用いることで、大気中に含まれる雑菌をボトル内に侵入させず、さらに、加熱されたプリフォームに液体が接触することで加熱殺菌することもできる。
【0054】
上記の説明から理解されるように、このダイレクトブロー空容器10は、成形後から内容物(水性液状体)を充填するまで、かなりの時間を経過する場合がある。従来の液層形成容器では、この時間が長いと液膜が落下してしまい、内容物を充填するときには、液相が底部(或いは口部)に落下してしまい、その優れた滑り性が消失あるいは低下してしまっている場合がある。
しかるに、本発明では、粘稠な液状体に対して滑り性を示す油性液体が液滴として分布しているため、成形から充填までに長時間が経過した場合にも、液滴の落下は有効に抑制され、優れた滑り性を発揮することができるのである。
【0055】
また、本発明では、内面を形成する樹脂組成物中に油性液体がブレンドされているため、上記のように上部が閉塞された空容器10であっても、その内面に液滴3を形成することができる。例えば、液体をスプレー噴霧する方法では、上記のような空容器10に液滴3を形成することはできない。
【0056】
本発明に従って形成される上記のようなダイレクトブロー容器は、前述した粘稠な水性液状体を収容する容器として極めて好適であり、粘稠な水性液状体であっても、容器を傾倒或いは倒立させることにより、容器の内面に付着残存させることなく、速やかに排出することができるし、また、胴部をスクイズすることにより内容物を速やかに絞り出すことができる。
【実施例】
【0057】
本発明を次の実施例にて説明する。
尚、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び中空成形体(容器)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
【0058】
1.成形体表面の顕微鏡観察および液滴の分布状態評価
後述の方法で作製した容量500gの中空成形体である多層容器の胴部から20mm×40mmの試験片を切り出し、試験片の内面側の表面状態をデジタルマイクロスコープ(VHX−1000、(株)キーエンス製)にて観察し、画像を撮影した。
画像解析ソフトとして、Image−Pro Plus(Ver.5.0.2.9、Media Cybernetics,Inc.製)を用いて、得られた画像から液滴の分布状態を解析した。解析項目としては、表面に形成された各々の液滴に対し、円相当径(円相当直径)をもとめ、1cm
2あたりの分布状態(サイズ、密度)を評価した。
【0059】
2.白色干渉計による成形体表面における油性液体の形状観察
後述の方法で作製した容量500gの中空成形体である多層容器の胴部から20mm×20mmの試験片を切り出し、非接触表面形状測定機(NewView7300,zygo社製)を用いて、成形体表面の形状測定を行った。測定ならびに画像解析には、アプリケーションとして、MetroPro(Ver.9.1.4 64−bit)を用いた。
1.40mmx1.05mmの範囲を測定し、液体の3次元像を観察した。
【0060】
3.底溜まり性の評価
後述の方法で作製した容量500gの中空成形体である多層容器を22℃60%RHの環境下において、正立状態で所定の期間保管した。所定期間保管した後、容器底部を注意深く目視にて観察し、油性液体の溜まり(液溜まり)があるかを評価した。評価基準は、次のとおりである。
〇:液溜まりが確認されなかった。
×:液溜まりが確認された。
【0061】
4.内容物残存量試験
後述の方法で作製した容量500gの中空成形体である多層容器にソース(オタフクお好みソース、オタフクソース(株)製)を室温で500g充填した。充填後、容器口部にキャップを装着して室温下にて400gの内容物を絞り出した後、該ボトルを倒立させて室温下で30分放置した。
放置後、容器を倒立した状態にして、絞り出す操作を2分毎に繰り返し、10分後の重量(残存内容物重量+容器重量)を測定した。測定後、容器内部に残存した内容物を水洗浄し、洗浄後の容器重量を測定し、得られた重量の差分を求め、残存量とした。残存量が少ない程、容器内面での滑り性に優れており、5g以下が良好である。
【0062】
<液滴形成用油性液体>
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
表面張力:29mN/m(23℃)
粘度:33.8mPa・s(23℃)
沸点:210℃以上
引火点:242℃(参考値)
尚、表面張力は、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。また、表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA−130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。
さらに、粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。
【0063】
<最内層用樹脂およびブリード性添加剤>
低密度ポリエチレン(LDPE)
密度:0.922g/cm
3
臨界表面張力:31mN/m
ポリプロピレン(PP)
密度:0.900g/cm
3
臨界表面張力:29mN/m
環状オレフィン系共重合体
臨界表面張力:31mN/m以上
ステアリン酸カルシウム(和光純薬工業(株)製)
臨界表面張力:28mN/m
【0064】
<液拡散防止層形成用樹脂>
エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)
密度:1.20g/cm
3
Tg:60℃
【0065】
<接着層形成用樹脂>
無水マレイン酸変性ポリエチレン
【0066】
<基材>
ポリプロピレン(PP)
密度:0.900g/cm
3【0067】
<外層形成用樹脂>
ポリプロピレン(PP)
密度:0.900g/cm
3
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
密度:0.905g/cm
3【0068】
<実施例1>
最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)とポリプロピレン(PP)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物での各成分の質量比は、
LDPE/PP/MCT=100/10.3/4.6
である。
また、接着層形成用樹脂として無水マレイン酸変性ポリエチレンを用意し、液拡散防止層形成用樹脂としてはエチレン・ビニルアルコール共重合体を用意した。
さらに基材層形成用樹脂としてポリプロピレン(PP)を用意し、外層形成用樹脂としてポリプロピレン(PP)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とからなる樹脂組成物(PP/LLDPE=100/17.6(質量比))を用意した。
40mm押出機に上記の最内層形成樹脂、30mm押出機Aに上記の接着層形成用樹脂、30mm押出機Bに上記の液拡散防止層形成用樹脂としてエチレン・ビニルアルコール共重合体を、30mm押出機Cに外層形成用樹
脂、50mm押出機に上記の基材層形成用樹脂、及び30mm押出機Cに上記の外層用形成樹脂を、それぞれ供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、金型温度24℃にてダイレクトブロー成形を行い、内容量500g、重量24gの中空成形体である多層容器を作製した。
なお、多層容器の底部から60mmの位置で樹脂層の構成は下記の通りである。
内層(130)/接着層(30)/液拡散抑制層(40)/接着層(20)/
基材層(320)/外層(60)
ここで、括弧内の値は各層の厚みを示す(単位:μm 以下同様)。
作製した容器を用い、成形体表面の顕微鏡観察および液滴の分布状態評価、底溜まり性の評価、および内容物残存量試験を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0069】
<実施例2>
最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)とポリプロピレン(PP)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物での各成分の質量比は、
LDPE/PP/MCT=100/14.5/6.0
である。
上記の最内層形成用樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に中空成形体である多層容器を作製した。
この容器の樹脂層の構成は下記の通りである。
内層(130)/接着層(30)/液拡散抑制層(40)/接着層(20)/
基材層(320)/外層(60)
作製した容器を用い、成形体表面の顕微鏡観察および液滴の分布状態評価、底溜まり性の評価、および内容物残存量試験を行った。結果をまとめて表1に示す。また、成形体表面の顕微鏡観察像を
図4(a)に示す。
【0070】
<実施例3>
最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)とポリプロピレン(PP)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物での各成分の質量比は、
LDPE/PP/MCT=100/17.5/7.5
である。
上記の最内層形成用樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に中空成形体である多層容器を作製した。
この容器の樹脂層の構成は下記の通りである。
内層(130)/接着層(30)/液拡散抑制層(40)/接着層(20)/
基材層(320)/外層(60)
作製した容器を用い、成形体表面の顕微鏡観察および液滴の分布状態評価、白色干渉計による成形体表面における油性液体の形状観察、底溜まり性の評価、および内容物残存量試験を行った。結果をまとめて表1に示す。また、白色干渉計による成形体表面における油性液体の形状観察の結果を
図5(a)に示す。
【0071】
<実施例4>
最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)とステアリン酸カルシウム(StCa)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物での各成分の質量比は、
LDPE/StCa/MCT=100/0.03/4.1
である。
上記の最内層形成用樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に中空成形体である多層容器を作製した。
作製した多層容器を用いて、底溜まり性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
<実施例5>
最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)とステアリン酸カルシウム(StCa)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物での各成分の質量比は、
LDPE/StCa/MCT=100/0.18/4.1
である。
上記の最内層形成用樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に中空成形体である多層容器を作製した。
作製した多層容器を用いて、底溜まり性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
<実施例6>
最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)とステアリン酸カルシウム(StCa)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物での各成分の質量比は、
LDPE/StCa/MCT=100/0.20/4.1
である。
上記の最内層形成用樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に中空成形体である多層容器を作製した。
作製した多層容器を用いて、底溜まり性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
<比較例1>
最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物での各成分の質量比は、
LDPE/MCT=100/5.3
である。
上記の最内層形成用樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に中空成形体である多層容器を作製した。
この容器の樹脂層の構成は下記の通りである。
内層(130)/接着層(30)/液拡散抑制層(40)/接着層(20)/
基材層(320)/外層(60)
作製した容器を用い、成形体表面の顕微鏡観察および液滴の分布状態評価、底溜まり性の評価、および内容物残存量試験を行った。結果をまとめて表1に示す。成形体表面の顕微鏡観察では、表面に液滴は観察されなかった。
【0075】
<比較例2>
最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)と環状オレフィン共重合体(COC)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物での各成分の質量比は、
LDPE/COC/MCT=100/10.3/4.6
である。
上記の最内層形成用樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に中空成形体である多層容器を作製した。
この容器の樹脂層の構成は下記の通りである。
内層(100)/接着層(20)/液拡散抑制層(30)/接着層(20)/
基材層(410)/外層(60)
作製した容器を用い、成形体表面の顕微鏡観察および液滴の分布状態評価、底溜まり性の評価、および内容物残存量試験を行った。結果をまとめて表1に示す。成形体表面の顕微鏡観察では、表面に液滴は観察されなかった。
【0076】
<比較例3>
最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)と環状オレフィン共重合体(COC)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物での各成分の質量比は、
LDPE/COC/MCT=100/14.5/6.0
である。
上記の最内層形成用樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に中空成形体である多層容器を作製した。
この容器の樹脂層の構成は下記の通りである。
内層(100)/接着層(20)/液拡散抑制層(30)/接着層(20)/
基材層(410)/外層(60)
作製した容器を用い、成形体表面の顕微鏡観察および液滴の分布状態評価、白色干渉計による成形体表面における油性液体の形状観察、底溜まり性の評価、および内容物残存量試験を行った。結果をまとめて表1に示す。成形体表面の顕微鏡観察像を
図4(b)に示す。ここで、表面に液滴は観察されなかった。また、白色干渉計による成形体表面における油性液体の形状観察の結果を
図5(b)に示す。
【0077】
<比較例4>
最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)とポリプロピレン(PP)とからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物での各成分の質量比は、
LDPE/PP=100/11.1
である。
上記の最内層形成用樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に中空成形体である多層容器を作製した。
この多層容器では、内層材として、油性液体は使用していないので、内面に液体は存在していない。
この容器の樹脂層の構成は下記の通りである。
内層(100)/接着層(20)/液拡散抑制層(20)/接着層(20)/
基材層(370)/外層(80)
作製した容器を用い、内容物残存量試験を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1より、内層材として、マトリックス樹脂にLDPE、分散樹脂にPP、油性液体としてMCTを用いた実施例1〜3、および、内層材として、マトリックス樹脂にLDPE、ブリード性有機系添加剤としてStCa、油性液体としてMCTを用いた実施例4〜6においては、中空成形体(多層容器)内面での油性液体の存在形態が滴状(液滴状)であることが分かる。
一方、内層材として、LDPEと油性液体としてMCTを用いた比較例1、および、内層材として、マトリックス樹脂にLDPE、分散樹脂にCOC、油性液体としてMCTを用いた比較例2と3、においては、中空成形体内面での油性液体の存在形態は層状(液層状)であることが分かり、油性液体の存在形態が異なっていることが理解できる。
表面張力がマトリックス樹脂(LDPE)よりも大きい環状オレフィン系共重合体(COC)を分散樹脂として使用した場合、液滴は形成されなかった。
一方、分散樹脂としてマトリックス樹脂(LDPE)よりも表面張力が小さいポリプロピレン(PP)およびブリード性有機系添加剤としてステアリン酸カルシウム(StCa)を用いた場合に液滴が形成された。このことから、マトリックス樹脂中にマトリクス樹脂よりも小さい表面張力を有する成分を分散させることが液滴形成に必要であることが分かる。
【0080】
表1における底溜まり性評価の結果から、油性液体が液滴状に存在している実施例1〜6においては、49日後も底溜まりが発生していないのに対し、油性液体が液層状に存在している比較例1〜3では、20日において、いずれも底溜まりが発生しており、油性液体の存在形態を液滴状とすることで、底溜まりが有効に防止できていることが理解できる。
実施例1〜3および比較例1〜4での内容物残存量試験の結果から次のことが判る。
内面に油性液体が存在していない比較例4では残存量が12.8gであるのに対し、内面に油性液体が存在している実施例1〜3および比較例1〜3では残存量が5g以下となっており、水性液状体であるソースの滑り性が飛躍的に向上されており、油性液体が滴状に存在している実施例1〜3においても、残存量を低減できることが分かる。
また、実施例1〜3の液滴の分布状態評価の結果から、液滴の密度が高いほど、残存量が低減される傾向があることが分かり、液滴の密度を調整することが残存量低減に有効であることが示唆される。
【0081】
顕微鏡観察、および白色干渉計による油性液体の形状観察の結果から、本発明においては、
図4(a)と
図5(a)で示されるように、明らかに成形体内面に液滴状の油性液体が存在することが観測されており、比較例における
図4(b)と
図5(b)で示される液層状の油性液体の存在形態とは明瞭に異なることが明らかである。
本発明の中空成形容器は、内面に樹脂層を備えており、該樹脂層表面には、油性液体の液滴が分布していることを特徴とする。かかる中空成形容器では、難流動性の液状体に対する滑り性が飛躍的に高められると共に、このような滑り性が長期にわたって発揮される。