(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セメント、水、骨材、および複分解法で製造される金属石鹸を含有し、前記金属石鹸が、亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびバリウム塩から選ばれる一種または二種以上の塩とステアリン酸との反応物からなり、前記金属石鹸のかさ比重が0.10〜0.30であり、前記金属石鹸の平均粒径が2μm以上、30μm以下であり、前記金属石鹸が平均粒径の0.5〜2.0倍の範囲内の粒径の割合が50%以上である粒度分布を有しており、前記セメント100質量部に対する前記金属石鹸の比率が0.1〜5.0質量部であることを特徴とする、防水性プレミックスセメント組成物。
下記一般式〔1〕で示される水溶性のポリオキシアルキレン誘導体を、前記セメント100質量部に対して0.1〜10質量部含有することを特徴とする、請求項1記載の組成物。
R1O(AO)nR2
(1)
(式(1)において、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、AOを構成する前記オキシアルキレン基の80モル%以上がオキシエチレン基からなり、R1、R2は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、nは、20〜1000を表わす。)
【背景技術】
【0002】
屋上、ベランダ、および外壁等の多量の風雨にさらされる箇所や内壁、地下室、および浴室等、大気中の湿分によって多量の水分が表面に付着する箇所は、防水処理を行うことで、長期間の使用を可能にする必要がある。このため、防水性を期待して、上記のような箇所を、プレミックスセメント製品によりモルタル施工する場合がある。プレミックスセメントモルタルは、それ自体でも高い防水性能を有しているが、多量の水分に常時さらされる箇所においては、その防水性能には問題がある。
【0003】
上記問題に対して、プレミックスセメントモルタル硬化体表面に防水剤等を塗布して処理を行うといった工程が行われているが、これら作業は非常に煩雑な作業である。そこで、セメントモルタル中に防水効果を向上できる添加剤を添加する方法が行われている(例えば特許文献1〜3)。
【0004】
特許文献1では、高級脂肪酸金属塩と高級脂肪酸多価アルコールエステルアルキレンオキサイド付加物又は/及び高級脂肪酸ポリアルキレングリコールエステル、及びアルキルナフタレン及び/又はナフタレンのスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物から成る防水剤が記載されている。
【0005】
特許文献2では、脂肪酸アルカリ土類金属塩、および脂肪酸アルカリ金属塩またはアミン塩を含有してなる水硬性物質の撥水剤が記載されている。
【0006】
また、特許文献3では、白土含有脂肪酸カルシウムによる撥水剤が提案されている。
【0007】
特許文献1〜3には、脂肪酸金属塩、特にその中でもステアリン酸カルシウムが極めて優れた防水性を有していることが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(セメント)
本発明のプレミックスセメント組成物は、セメントを含有する。セメントの具体例としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカヒュームセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等が挙げられる。セメントは、組成物から水を除いた全固形分量中に、30〜80質量%の比率で用いられることが好ましく、30〜60質量%の比率で用いられることが更に好ましい。
【0018】
(骨材)
本発明のプレミックスセメント組成物は、骨材を使用する。骨材としては細骨材が好ましく、細骨材は珪砂、山砂、陸砂、川砂、砕砂、軽量骨材等があり、特に好ましくは珪砂である。骨材は、組成物から水を除いた全固形分量中に、20〜70質量%の比率で用いられることが好ましく、40〜70質量%の比率で用いられることが更に好ましい。
【0019】
(水)
本発明のプレミックスセメント組成物に使用される水は、組成物から水を除いた全固形分の質量を100質量部としたとき、10〜50質量部の比率で用いられることが好ましい。
【0020】
(金属石鹸)
本発明のプレミックスセメント組成物に添加される金属石鹸は、ステアリン酸アルカリ化合物塩と、2価の金属塩および3価の金属塩からなる群より選ばれた一種以上の金属塩とを反応させる、複分解法で調製される。具体的には、ステアリン酸1モルに対して1価のアルカリ化合物を0.99〜1.05モルの割合で反応させてステアリン酸アルカリ化合物塩を得、このステアリン酸アルカリ化合物塩を、2価の金属塩および3価の金属塩からなる群より選ばれた一種以上の金属塩と水溶液中で反応させて得られる。
【0021】
ステアリン酸アルカリ化合物塩の原料となる1価のアルカリ化合物としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物、およびアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類などが挙げられる。ステアリン酸アルカリ化合物塩としたときに水に対する溶解度が高い点から、好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物である。
【0022】
ステアリン酸アルカリ化合物塩は、ステアリン酸と上記1価のアルカリ化合物とを、ステアリン酸1モルに対して、1価のアルカリ化合物を0.99〜1.05モル、好ましくは1.00〜1.04モルの割合で反応させて得られるものであればよい。
【0023】
1価のアルカリ化合物とステアリン酸とを反応させる際の温度は、一般に、ステアリン酸の融点以上であり、該ステアリン酸が分解しない程度の温度、好ましくは100℃以下、より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは80〜95℃である。
【0024】
次いで、得られたステアリン酸アルカリ化合物塩を、2価の金属塩および3価の金属塩からなる群より選ばれた一種以上の金属塩と水溶液中で反応させることによって、金属石鹸が得られる。この反応は、具体的には、2価または3価の金属塩含有水溶液およびステアリン酸アルカリ化合物塩含有水溶液を別々に調製しておき、これらを混合することにより行われる。例えば、ステアリン酸アルカリ化合物塩含有水溶液中に2価または3価の金属塩含有水溶液を滴下する、2価または3価の金属塩含有水溶液中にステアリン酸アルカリ化合物塩含有水溶液を滴下する、あるいは反応槽に同時に滴下することによって行われる。
【0025】
本反応時のステアリン酸アルカリ化合物塩の濃度は、金属石鹸の生産性の点およびステアリン酸アルカリ化合物塩含有水溶液または得られる金属石鹸スラリーのハンドリング性の点から、通常、1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%である。ステアリン酸アルカリ化合物塩濃度が1質量%未満の場合は、金属石鹸の生産性が低く、実用上好ましくない。20質量%を超える場合は、ステアリン酸アルカリ化合物塩含有水溶液または得られる金属石鹸スラリーの粘度が上昇するため、均一な反応を行うことが困難となる。
【0026】
本反応時の2価または3価の金属塩含有液中の2価または3価の金属塩の濃度は、金属石鹸の生産性の点およびステアリン酸アルカリ化合物塩含有水溶液または得られる金属石鹸スラリーのハンドリング性の点から、通常、1〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。
【0027】
上記ステアリン酸アルカリ化合物塩と2価または3価の金属塩との反応は、ステアリン酸アルカリ化合物塩を得るために使用した1価のアルカリ化合物1モルに対して、2価の金属塩を0.45〜0.7モルの割合で行うことが好ましく、3価の金属塩を0.25〜1.0モルの割合で行うことが好ましい。より好ましい2価の金属塩の割合は0.49〜0.6モルであり、さらに好ましい2価の金属塩の割合は0.52〜0.58モルである。
【0028】
ステアリン酸アルカリ化合物塩と2価または3価の金属塩との反応は、ステアリン酸アルカリ化合物塩の溶解度を考慮して、当業者が通常行う温度条件下で行われる。好ましくは50〜100℃、より好ましくは70〜95℃である。上記方法によって金属石鹸スラリーが得られる。
【0029】
この金属石鹸スラリーはそのまま、あるいは遠心脱水機、フィルタープレス、真空回転ろ過機などにより溶媒を分離し、必要に応じて、洗浄を行い、副生する無機塩を除去した後に、回転乾燥装置、気流乾燥装置、通気式乾燥装置、噴霧式乾燥装置、流動層型乾燥装置などにより乾燥される。乾燥方法は、連続式または回分式、あるいは常圧または真空下のいずれでもよい。このようにして本発明の金属石鹸を得ることができる。
【0030】
本金属石鹸の金属種は、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛、アルミニウム、マグネシウムであり、さらに好ましくは、亜鉛、アルミニウムである。
【0031】
(金属石鹸の特性)
本発明のプレミックスセメント組成物に添加される金属石鹸のかさ比重は0.10〜0.30である。かさ比重が0.10よりも小さいと取り扱いが困難になる。この観点からは、本かさ比重は0.15以上が更に好ましい。また本かさ比重が0.30よりも大きいと、本発明の防水効果が得られなくなる。防水性の観点からは、本かさ比重は、0.25以下が更に好ましい。
【0032】
金属石鹸のかさ比重は、JIS K 6720−2「プラスチック−塩化ビニルホモポリマー及びコポリマー(PVC)−第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方 付属書(規定)塩化ビニル樹脂試験方法」に記載の方法に準拠して測定するものである。
【0033】
本発明のプレミックスセメント組成物に添加される金属石鹸の平均粒径は、2〜30μmであり、平均粒径が30μmを超えると、プレミックスセメント組成物への分散性が低下し、防水性が低下する。この観点からは、金属石鹸の平均粒径は28μm以下が好ましく、25μm以下が更に好ましく、20μm以下が一層好ましい。また、この平均粒径が2μm未満であると、プレミックスセメント組成物に乾式混合する際に、粉塵となって取り扱いが困難になる。この観点からは、この平均粒径は、5μm以上が好ましく、10μm以上が更に好ましく、15μm以上が一層好ましい。
【0034】
金属石鹸の平均粒径は以下のように測定する。
金属石鹸サンプル0.5gをエタノール媒体中に投入し、レーザー回折散乱粒度分布測定機(マイクロトラックMT3000、日機装(株)製)を用いて測定する。
【0035】
本発明のプレミックスセメント組成物に添加される金属石鹸の粒度分布は、平均粒径の0.5〜2.0倍の範囲内の割合が50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。平均粒径の0.5〜2.0倍の範囲内の割合が50%より少ないと、プレミックスセメント組成物に均一に分散することができなくなり、防水性が低下するため好ましくない。
【0036】
金属石鹸の粒度分布は以下のように測定する。
金属石鹸サンプル0.5gをエタノール媒体中に投入し、レーザー回折散乱粒度分布測定機(マイクロトラックMT3000、日機装(株)製)を用いて測定する。
【0037】
本発明のプレミックスセメント組成物に添加される金属石鹸は、超音波処理を行った後に得られる平均粒径が、超音波処理前の平均粒径の1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることが更に好ましく、30%以下があることが一層好ましい。これによって、プレミックスセメント組成物への均一分散がいっそう促進される。また、セメント組成物への添加前の平均粒径が相対的に大きいことにより、乾式混合時の粉塵を防止できるとともに、混練し、水を添加した後に平均粒径が小さくなることで、セメント組成物中への分散性を高めることができる。
【0038】
ただし、超音波処理の条件は以下のとおりである。
分散媒: イオン交換水
分散液の質量: 40g
分散液の濃度: 0.005質量%
分散剤の種類: 非イオン系界面活性剤(ポリ(n=10)オキシエチレンノニルフェニルエーテル)
分散剤の添加量: 30mg
超音波の周波数、出力:20kHz、300W
超音波処理の時間: 5分
金属石鹸と分散剤をスパチュラで馴染ませ、そこにイオン交換水を入れ、液中に超音波分散機を入れて超音波分散を行う。
【0039】
本発明のプレミックスセメント組成物に添加される金属石鹸の添加量は、セメント100質量部に対して、0.1〜5質量部とする。これを5質量部以下とすることによって、モルタルの粘性が低くなり、作業性が高く、またセメントの硬化阻害作用を抑制できる。この観点からは、金属石鹸の量は、4質量部以下が好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。また、金属石鹸の添加量を0.1質量部以上とすることによって、本発明の効果が顕著となる。この観点からは、金属石鹸の量は、0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。
【0040】
(式(1)のポリオキシアルキレン誘導体)
本発明のプレミックスセメント組成物は、一般式(1)で示される水溶性のポリオキシアルキレン誘導体を含有することができる。
一般式(1)において、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基があり、ブロック状に付加していてもよく、ランダム状に付加していてもよい。AOが、炭素数5以上のオキシアルキレン基であると、製造時の反応性が低下するため好ましくない。
【0041】
一般式(1)において、AOを構成するオキシアルキレン基のうち80モル%以上がオキシエチレン基である。AOの80モル%未満がオキシエチレン基であると、水溶性が低下するため好ましくない。オキシエチレン基の比率は90モル%以上がさらに好ましく、100%であってもよい。
【0042】
一般式(1)において、R
1、R
2は水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。
【0043】
一般式(1)において、nは20〜1000である。nが20より小さいとセメント硬化物のひび割れを抑制する効果が低くなる。この観点から、nは、40以上が好ましく、60以上がさらに好ましい。また、nが1000より大きいと、得られる化合物の粘度が高くなり、作業性が低下する。この観点からは、nは、600以下が好ましく、200以下がさらに好ましい。
【0044】
一般式(1)で示されるポリオキシアルキレン誘導体は1種または2種以上を混合して使用しても良い。
【0045】
一般式〔1〕で示される水溶性のポリオキシアルキレン誘導体の添加量は、セメント100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。ポリオキシアルキレン誘導体の量を0.1質量部以上とすることによって、前記配合効果が顕著となる。この観点からは、ポリオキシアルキレン誘導体の量は、0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、ポリオキシアルキレン誘導体の量を10質量部以下とすることによって、モルタルの硬化阻害作用を抑制できる。この観点からは、ポリオキシアルキレン誘導体の量は、6質量部以下が好ましく、4質量部以下がさらに好ましい。
【0046】
(他の添加剤)
本発明のプレミックスセメント組成物には、付着性を高める目的でポリマーを混合することができる。ポリマーとしては、水に分散して乳化し得る粉末状のポリマーであっても良く、予め水に分散して乳化したポリマーでも良い。ポリマーは、乾燥することによってポリマー皮膜を形成し得るものであれば、アニオン性、カチオン性、およびノニオン性のどのようなイオン性でも良い。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・ベオバ・アクリル共重合体、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルの共重合体、スチレンとアクリル酸アルキルエステルの共重合体等が挙げられる。
【0047】
ポリマーの添加量は、セメント100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、1〜10質量部が更に好ましい。ポリマーの添加量が20質量部を超えるとモルタルの粘性が高くなり、作業性が低下し、またセメントの硬化阻害作用が生じるため好ましくなく、1質量部未満であると有機ポリマーの配合効果が得られなくなるため好ましくない。
【0048】
また、本発明の対象とするプレミックスセメント組成物には公知の添加剤(材)や無機フィラーを使用することができる。一例を挙げれば、AE剤、流動化剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、保水剤、増粘剤、防水剤、撥水剤、分離抵抗抑制剤、減水剤、高性能減水剤、消泡剤、収縮低減剤や膨張材、珪石粉末、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石膏等が挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明する。
(実施例1)
JIS R5201(セメントの強さ試験方法)記載のモルタルミキサに、セメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)600g、細骨材として6号ケイ砂(山形県産)1,200g、および複分解法で製造される金属石鹸として、表1に示したジンクステアレート12gを秤取った。以下は各比率を示す。
セメント: 水を除く固形物の33質量%
骨材: 水を除く固形物の66質量%
ジンクステアレート:セメント100質量部に対して2質量部
【0050】
ジンクステアレートは複分解法で製造したものである。具体的には、以下のようにして得られたものである。
5Lガラス製セパラブルフラスコに、混合脂肪酸(ミリスチン酸を2.5質量%、パルミチン酸を30.0質量%、ステアリン酸を66.4質量%、アラキン酸を0.8質量%、およびベヘン酸を0.3質量%含有)250g(0.90モル)および水2500gを仕込み、90℃まで昇温した。次いで、48%
水酸化ナトリウム水溶液77g(0.92モル)を加え、同温度(90℃)にて1時間攪拌した。その後、90℃に保持したまま、25%硫酸亜鉛水溶液355g(0.55モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに90℃
にて1時間攪拌した。得られた混合脂肪酸亜鉛スラリーを吸引ろ過器でろ過し、1000gの水で3回水洗し、送風乾燥機を用いて80℃にて30時間乾燥して金属石鹸を得た。
このジンクステアレートの特性は表1に示す。また、ジンクステアレートをイオン交換水中で超音波処理した後に得られた平均粒径は、3.7μmであり、超音波前の平均粒径の21%であった。
【0051】
この混合物を、JIS A1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)記載の混練方法に従い、空練りを行った後、水道水312gを加え、混練し、セメント組成物を調整した。温度は20±2℃であることを確認した。
【0052】
セメント組成物の評価は、JIS A1404(建築用セメント防水剤の試験方法)記載の吸水率測定と金属石鹸のプレミックスセメント組成物中での分散性について行った。金属石鹸のプレミックスセメント組成物中での分散性は、上記手順で調整したセメント組成物をさじで練り返した時の外観より、以下に示す評価基準で評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例2)
複分解法で製造される金属石鹸として、表1に示したアルミニウムステアレート12gを使用した以外は実施例1と同様にしてセメント組成物を調整し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
アルミニウムテアレートは複分解法で製造したものである。具体的には、以下のようにして得られたものである。
5Lガラス製セパラブルフラスコに、実施例1で使用した混合脂肪酸250g(0.90モル)および水2500gを仕込み、90℃まで昇温した。次いで、48%水酸化ナトリウム水溶液77g(0.92モル)を加え、同温度(90℃)にて1時間攪拌した。その後、90℃に保持したまま、25%硫酸アルミニウム水溶液1260g(0.92モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに90℃にて1時間攪拌した。得られた混合脂肪酸アルミニウムスラリーを吸引ろ過器でろ過し、1000gの水で3回水洗し、送風乾燥機を用いて80℃にて30時間乾燥して金属石鹸を得た。
アルミニウムステアレートの特性は表1に示す。また、アルミニウムステアレートをイオン交換水中で超音波処理した後に得られた平均粒径は、8.1μmであり、超音波前の平均粒径の29%であった。
【0055】
(比較例1)
表1に示したジンクステアレート12gを使用した以外は実施例1と同様にしてセメント組成物を調整し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
ジンクステアレートは直接法で製造したものである。具体的には、以下のようにして得られたものである。
1Lガラス製セパラブルフラスコに、実施例1で使用した混合脂肪酸250g(0.90モル)を仕込み、90℃
まで昇温した。次いで、酸化亜鉛38g(0.47モル)を加え、反応により生成する水を除去しながら内温を160℃まで昇温し、同温度で2時間攪拌を継続した。その後、ステンレスバットで放冷、固化した後に、ホソカワミクロン(株)製バンタムミルを使用して粉砕し金属石鹸を得た。
上記ジンクステアレートのイオン交換水中で超音波処理した後に得られた平均粒径は、77.4μmであり、超音波前の平均粒径の81%であった。
【0057】
(比較例2)
表1に示したカルシウムステアレート12gを使用した以外は実施例1と同様にしてセメント組成物を調整し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
カルシウムステアレートは直接法で製造したものである。具体的には、以下のようにして得られたものである。
1Lガラス製セパラブルフラスコに、実施例1で使用した混合脂肪酸250g(0.90モル)を仕込み、80℃まで昇温した。次いで、水酸化カルシウム35g(0.47モル)を加え、反応により生成する水を除去しながら内温を180℃
まで昇温し、同温度で1時間攪拌を継続した。その後、ステンレスバットで放冷、固化した後に、ホソカワミクロン(株)製バンタムミルを使用して粉砕し金属石鹸を得た。
なお、上記カルシウムステアレートをイオン交換水中で超音波処理した後に得られた平均粒径は、18.1μmであり、超音波前の平均粒径の81%であった。
【0059】
【表1】
【0060】
実施例1〜2と比較例1〜2の比較により、本発明のプレミックスセメント組成物は、金属石鹸の分散性が良く、24時間後吸水率も低いことから、高い防水性を有していることがわかる。比較例1は、金属石鹸が均等に分散しないため、24時間後吸水率が高く、防水性能が低いことがわかる。
【0061】
(実施例3)
JIS R5201(セメントの強さ試験方法)記載のモルタルミキサにセメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)社製)600g、細骨材として6号ケイ砂(山形県産)1,200g、複分解法で製造された金属石鹸として、表2に示したジンクステアレート12g、およびポリエチレングリコール(Mw約3,200)12gを秤取った。ジンクステアレートは、実施例1と同じものである。以下は各比率を示す。
セメント: 水を除く固形物の33質量%
骨材: 水を除く固形物の66質量%
ジンクステアレート:セメント100質量部に対して2質量部
【0062】
この混合物を、JIS A1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)記載の混練方法に従い、空練りを行った後、水道水312gを加え、混練し、セメント組成物を調整した。温度は20±2℃であることを確認した。
【0063】
セメント組成物の評価は、JIS A1404(建築用セメント防水剤の試験方法)記載の吸水率測定、金属石鹸のプレミックスセメント組成物中での分散性、およびひび割れ状態について行った。金属石鹸のプレミックスセメント組成物中での分散性は、上記手順で調整したセメント組成物をさじで練り返した時の外観より、以下に示す評価基準により評価を行った。また、ひび割れ状態については、300mm×300mmのベニヤ板上に上記で得られたセメント組成物を5mm厚で塗布し、温度20±2℃、湿度60±5%の恒温恒湿槽に12週間保存後のひび割れ度合いを確認し、以下に示す評価基準により評価を行った。結果を表2に示す。
【0064】
(比較例3)
表2に示したカルシウムステアレート12gを使用した以外は実施例3と同様にしてセメント組成物を調整し、評価を行った。結果を表2に示す。なお、上記カルシウムステアレートは、比較例2で使用したものと同じである。
【0065】
(比較例4)
表2に示したカルシウムステアレート12gを使用し、ポリエチレングリコール(Mw約3,200)を使用しない以外は実施例3と同様にしてセメント組成物を調整し、評価を行った。結果を表2に示す。なお、上記カルシウムステアレートは、比較例2で使用したものと同じである。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例3と比較例3〜4の比較により、本発明のプレミックスセメント組成物は、金属石鹸の分散性が良く、高い防水性を有しており、ひび割れも抑制することができていることがわかる。