特許第5962910号(P5962910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962910
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/44 20060101AFI20160721BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B60N2/44
   B60N2/68
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-166178(P2012-166178)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-24451(P2014-24451A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097386
【弁理士】
【氏名又は名称】室之園 和人
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐一
(72)【発明者】
【氏名】松下 優穂
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−188668(JP,U)
【文献】 実開平2−2260(JP,U)
【文献】 特開2005−212615(JP,A)
【文献】 特開2004−306811(JP,A)
【文献】 特開2008−260327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの骨格を形成するシートクッションフレームの下部空間にハーネスが配索されている車両用シートであって、
前記シートクッションフレームは、左右一対のサイドフレームと、前記左右一対のサイドフレームの前端部同士を連結する連結パイプとを備え、
前記連結パイプの長手方向に沿い、かつ、前記連結パイプの外周面に間隔を空けて対向する嵌合片を備えたブラケットが前記連結パイプに設けられ、
前記ハーネスのカプラに設けられた被嵌合部が前記ブラケットの嵌合片に前記連結パイプの長手方向で嵌合している車両用シート。
【請求項2】
前記カプラを前記連結パイプの外周面に当接させ、前記連結パイプの長手方向に沿って前記嵌合片側に移動させると、前記カプラが前記連結パイプの外周面を前記連結パイプの長手方向に摺動しながら前記カプラの被嵌合部が前記嵌合片に嵌合するよう構成されている請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記連結パイプの外周面に対向する前記嵌合片の対向面の先端部が、前記嵌合片の先端側ほど前記連結パイプの外周面から離れる傾斜面に形成されている請求項1又は2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記嵌合片の根元に連なるブラケット部分が前記嵌合片よりも広幅に形成され、
前記嵌合片よりも幅方向外側のブラケット部分に前記カプラの被嵌合部が前記連結パイプの長手方向において当接する請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両用シート。
【請求項5】
前記連結パイプの長手方向で前記嵌合片とは反対側の前記ブラケットの端部が前記サイドフレームに近接している請求項1〜4のいずれか一つに記載の車両用シート。
【請求項6】
前記連結パイプの長手方向で前記嵌合片とは反対側の前記ブラケットの端部が前記サイドフレームに当接又は溶接固着されている請求項1〜4のいずれか一つに記載の車両用シート。
【請求項7】
前記ブラケットは断面U字状のブラケット本体を備え、
前記ブラケット本体の両側壁が前記連結パイプに下側から外嵌して溶接固着され、
前記嵌合片は、前記ブラケット本体の底壁の端面から前記連結パイプの長手方向に沿う方向に突出して、前記連結パイプの外周面に下側から対向している請求項1〜6のいずれか一つに記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
シートクッションの骨格を形成するシートクッションフレームの下部空間にハーネスが配索されている車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
前記ハーネスの一端部は、例えばシートの機能部品であるヒータユニットに接続されている。また、ハーネスの他端部にはカプラが接続され、このカプラがシートクッションフレームに固定されている。そして、前記ハーネスを介して制御装置からヒータユニットに電気信号が入力される。
従来、前記カプラをシートクッションフレームに固定する手段として、シートクッションフレームに係合孔を形成し、カプラに係合突起を形成して、前記係合突起を前記係合孔に挿入係合する手段があった(特許文献1の第2図参照)。
また、図6に示すように、係合爪50Tを備えた樹脂部品50をカプラ22に取り付け、図5(a),図5(b)に示すように、シートクッションフレーム1のサイドフレーム2に、シート幅方向内側に張り出すブラケット45を設け、ブラケット45の側壁45Sに形成した係合孔45Hに前記係合爪50Tを挿入係合する構造もあった。図5(a)の符号3はスライドレール、8はフロントパネル、7はスライドレールのスライド移動のロックを解除するハンドルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−16234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された上記従来の手段によれば、前記カプラの係合突起をシートクッションフレームの係合孔に挿入係合させる作業を、作業者がシートクッションフレームの下部空間に手を入れて行わなければならず、係合突起と係合孔が作業者側から見えにくいために作業に手間と時間がかかっていた。さらに、前記シートクッションフレームに係合孔を形成するために、シートクッションフレームの強度が低下するという問題もあった。
また、図5(a),図5(b)に示すように、前記係合爪50Tを前記係合孔45Hに挿入係合する場合も、同様に係合爪50Tと係合孔45Hが作業者側から見えにくかった。その上、作業者はブラケット45の端縁に手が触れないように注意して作業する必要があり、作業に手間と時間がかかっていた。また、大型のブラケット45により、シート下のスペースが占有されていた。
本発明の目的は、シートクッションフレームにハーネスのカプラを固定する作業の作業性を、シートクッションフレームの強度低下を招くことなく向上させることができる車両用シートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
シートクッションの骨格を形成するシートクッションフレームの下部空間にハーネスが配索されている車両用シートであって、
前記シートクッションフレームは、左右一対のサイドフレームと、前記左右一対のサイドフレームの前端部同士を連結する連結パイプとを備え、
前記連結パイプの長手方向に沿い、かつ、前記連結パイプの外周面に間隔を空けて対向する嵌合片を備えたブラケットが前記連結パイプに設けられ、
前記ハーネスのカプラに設けられた被嵌合部が前記ブラケットの嵌合片に前記連結パイプの長手方向で嵌合している点にある。この構成によれば、次の作用を奏することができる。(請求項1)
【0006】
作業者がハーネスのカプラをシートクッションフレームに固定する場合、シートクッションフレームの下部空間に手を入れて、カプラをシートクッションフレームの連結パイプの外周面に当接させる。そして、カプラを連結パイプの外周面に対し連結パイプの長手方向に摺動させながら嵌合片側に移動させて、カプラの被嵌合部を嵌合片に嵌合させる。
前記連結パイプは左右一対のサイドフレームの前端部同士を連結しているから、作業者の手が連結パイプに届きやすい。
また、連結パイプの外周面は滑らかであるから、連結パイプの外周面に対するカプラの摺動を円滑に行うことができる。
そして、連結パイプがガイドの役割を果たし、カプラを嵌合片側にガイドするから、カプラの被嵌合部とブラケットの嵌合片とが作業者に見えなくても、カプラの被嵌合部をブラケットの嵌合片に容易に嵌合させることができる。
さらに、前記嵌合片に対するカプラの被嵌合部の嵌合方向は連結パイプの長手方向であり、カプラを連結パイプの長手方向に移動させてカプラの被嵌合部をブラケットの嵌合片に嵌合させることで、前記被嵌合部を前記嵌合片に斜めに嵌合させることがなくなる。その結果、前記被嵌合部を前記嵌合片に円滑に嵌合させることができる。
以上により、前記被嵌合部を前記嵌合片に嵌合させる作業の作業性を向上させることができる。
また、上記のように、前記被嵌合部を嵌合片に斜めに嵌合させることがなくなるから、嵌合片やカプラの破損を防止することができる。
そして、シートクッションフレームの連結パイプはシートクッションの前端部に隠されているので、連結パイプに設けられたブラケットの嵌合片に前記カプラを固定しても外観を損ねることがない。
また、カプラを係合させるための係合孔をシートクッションフレームに形成しなくても済むから、シートクッションフレームの強度が低下することを防止することができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記カプラを前記連結パイプの外周面に当接させ、前記連結パイプの長手方向に沿って前記嵌合片側に移動させると、前記カプラが前記連結パイプの外周面を前記連結パイプの長手方向に摺動しながら前記カプラの被嵌合部が前記嵌合片に嵌合するよう構成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記被嵌合部を前記嵌合片に嵌合させる作業の作業性をより向上させることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記連結パイプの外周面に対向する前記嵌合片の対向面の先端部が、前記嵌合片の先端側ほど前記連結パイプの外周面から離れる傾斜面に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
カプラの被嵌合部をブラケットの嵌合片に嵌合させる際に嵌合片の対向面の先端部が被嵌合部をガイドする。従って、前記被嵌合部を前記嵌合片に円滑に嵌合させることができ、被嵌合部を嵌合片に嵌合させる作業の作業性をより向上させることができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記嵌合片の根元に連なるブラケット部分が前記嵌合片よりも広幅に形成され、
前記嵌合片よりも幅方向外側のブラケット部分に前記カプラの被嵌合部が前記連結パイプの長手方向において当接すると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
前記カプラの被嵌合部が前記嵌合片よりも幅方向外側のブラケット部分に前記連結パイプの長手方向において当接するから、嵌合片に対する被嵌合部の嵌合深さが深くなり過ぎることを回避できる。従って、前記嵌合深さが深すぎることに起因するカプラの破損を防止することができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記連結パイプの長手方向で前記嵌合片とは反対側の前記ブラケットの端部が前記サイドフレームに近接していると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
車両用シートに荷重が加わって連結パイプが曲がった場合、ブラケットの端部がサイドフレームに当接することにより、連結パイプの変形が大きくなることを抑制することができる。これにより、連結パイプの径を大きくしなくても済み、重量の増加を最小限に抑えることができる。(請求項5)
【0015】
本発明において、
前記連結パイプの長手方向で前記嵌合片とは反対側の前記ブラケットの端部が前記サイドフレームに当接又は溶接固着されていると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0016】
前記連結パイプの長手方向で前記嵌合片とは反対側の前記ブラケットの端部が前記サイドフレームに当接している構成では、車両用シートに荷重が加わって連結パイプが曲がった場合、連結パイプの変形が大きくなることを抑制することができる。これにより、連結パイプの径を大きくしなくても済み、重量の増加を最小限に抑えることができる。
また、連結パイプの長手方向で前記嵌合片とは反対側の前記ブラケットの端部が前記サイドフレームに溶接固着されている構成では、上記の作用に加え、次の作用を奏することができる。
つまり、連結パイプの端部とサイドフレームとの固着部の強度をブラケットにより向上させることができ、ブラケットと連結パイプの双方の強度を向上させることができる。これにより、連結パイプの径を大きくしなくても済み、重量の増加を最小限に抑えることができる。(請求項6)
【0017】
本発明において、
前記ブラケットは断面U字状のブラケット本体を備え、
前記ブラケット本体の両側壁が前記連結パイプに下側から外嵌して溶接固着され、
前記嵌合片は、前記ブラケット本体の底壁の端面から前記連結パイプの長手方向に沿う方向に突出して、前記連結パイプの外周面に下側から対向していると、次の作用を奏することができる。(請求項7)
【0018】
ブラケットは断面U字状のブラケット本体と、ブラケット本体の底壁の端面から連結パイプの長手方向に沿う方向に突出する嵌合片とから成るので、ブラケットの構造を簡素化することができる。
また、ブラケット本体の両側壁が前記連結パイプに下側から外嵌して溶接固着されるから、ブラケットを連結パイプに簡単に固着することができる。
さらに、前記嵌合片は連結パイプの外周面に下側から対向しているから、連結パイプの下側の広い空間を作業空間とすることができて、作業性を向上させることができる。(請求項7)
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
シートクッションフレームにハーネスのカプラを固定する作業の作業性を、シートクッションフレームの強度低下を招くことなく向上させることができる車両用シートを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は、シートクッションフレームとスライドレールの斜視図、(b)は、ブラケットと連結パイプの結合構造の拡大斜視図
図2】ハーネスのカプラの被嵌合部がブラケットの嵌合片に嵌合した状態のシートクッションフレームとスライドレールの斜視図
図3】ヒータユニットとハーネスを示す斜視図
図4】(a)は図2のA−A断面に対応する模式図(b)は別実施形態を示す模式図であり、図2のA−A断面に対応する図
図5】(a)は従来のシートクッションフレームとスライドレールの斜視図、(b)は図5(a)のブラケットの拡大図
図6】従来のカプラと樹脂部品の結合構造を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1(a),図1(b),図2に、車両用シートのシートクッションの骨格を形成するシートクッションフレーム1を示してある。符号Frはシート前方側(車両前方側)、Rrはシート後方側(車両後方側)を示す。このシートクッションフレーム1と、シートクッションフレーム1に支持されるシートクッションパッドと、シートクッションパッドを覆う表皮材とで前記シートクッションが構成される。シートクッションは乗員の臀部及び大腿部を支持し、このシートクッションと、乗員の上半身を支持するシートバックとで前記車両用シートが構成される。シートクッションフレーム1の下部空間には、ハーネス21が配索されてシート前後方向に延びている(図2参照)。
【0022】
図3に示すように、前記ハーネス21の一端部21Aは、シートの機能部品であるヒータユニット20に接続されている。また、ハーネス21の他端部21Bにはカプラ22が接続され、このカプラ22がシートクッションフレーム1に固定されている。そして、前記ハーネス21を介して制御装置からヒータユニット20に電気信号が入力される。
【0023】
[シートクッションフレーム1の構造]
図1(a),図2に示すように、シートクッションフレーム1は、左右一対の板状のサイドフレーム2と、左右一対のサイドフレーム2の下側の前端部同士を連結する第1連結パイプ4と、左右一対のサイドフレーム2の上側前半部同士を連結する第2連結パイプ6と、左右一対のサイドフレーム2の上側後半部同士を連結する第3連結パイプ5とを備えている。第1連結パイプ4は第2連結パイプ6と第3連結パイプ5よりも小径に設定されている。
【0024】
前記左右一対のサイドフレーム2の上側の前端部には、シートクッションフレーム1の前面部を形成するフロントパネル8が架け渡されている。そして、第3連結パイプ5に設けられた板状の連結部材30とフロントパネル8の下端部との間に平面視で波形の複数のスプリングSが架け渡されている。
【0025】
左側のサイドフレーム2は左側のスライドレール3にシート前後方向にスライド移動自在に支持され、右側のサイドフレーム2は右側のスライドレール3にシート前後方向にスライド移動自在に支持されている。また、スライドレール3のスライド移動をロックするロック機構が左右一対のスライドレール3に設けられ、ロック機構によるロックを解除するパイプ状のハンドル7が左右一対のスライドレール3に架け渡されている。
【0026】
図1(b)に示すように、前記第1連結パイプ4の長手方向に沿い、かつ、第1連結パイプ4の外周面4Gに間隔を空けて対向する嵌合片12を備えたブラケット10が第1連結パイプ4に溶接接合されている。嵌合片12は第1連結パイプ4の長手方向に長い長方形の平板状に形成され、第1連結パイプ4の外周面4Gに下側から対向している。嵌合片12にはカプラ22の被嵌合部23が嵌合する。符号12Hは、カプラ22の被嵌合部23の係合爪に係合する四角形の係合孔である。
【0027】
前記ブラケット10は断面U字状のブラケット本体11を備え、ブラケット本体11の両側壁11Sが第1連結パイプ4に下側から外嵌して溶接固着されている。前記嵌合片12は、ブラケット本体11の底壁11Tの端面から連結パイプの長手方向に沿う方向(シート幅方向)に突出している。
【0028】
図4(a)に示すように、前記第1連結パイプ4の長手方向で嵌合片12とは反対側のブラケット10の端部10Bは、サイドフレーム2(左側のサイドフレーム2)に近接して対向している。符号Kは第1連結パイプ4とサイドフレーム2との固着部である。
【0029】
前記底壁11T(嵌合片12の根元に連なるブラケット部分に相当)は嵌合片12よりも広幅に形成されている。また、第1連結パイプ4の長手方向における底壁11Tの長さが、第1連結パイプ4の長手方向における嵌合片12の長さよりも長く設定されている。符号11T1は、嵌合片12よりも幅方向外側の底壁部分(嵌合片よりも幅方向外側のブラケット部分に相当)である。
【0030】
底壁11Tには位置決め用の貫通孔11Hが形成されている。図1(b)の拡大図に示すように、第1連結パイプ4の外周面4Gに対向する嵌合片12の対向面12Mの先端部は、嵌合片12の先端側ほど第1連結パイプ4の外周面4Gから離れる傾斜面に形成されている。
【0031】
また、組み付け作業者がカプラ22を第1連結パイプ4の外周面4Gに当接させ、第1連結パイプ4の長手方向に沿って嵌合片12側に移動させると、前記カプラ22が、第1連結パイプ4の外周面4Gを第1連結パイプ4の長手方向に摺動しながらカプラ22の被嵌合部23が嵌合片12に嵌合するよう構成されている。
【0032】
すなわち、前記カプラ22が、前記外周面4Gを第1連結パイプ4の長手方向に摺動しながら前記被嵌合部23が嵌合片12に嵌合するように、嵌合片12と第1連結パイプ4の外周面4Gとの間隔が設定されている。図2の符号Aは第1連結パイプ4の外周面4Gに対するハーネス21のカプラ22の摺動方向(第1連結パイプ4の長手方向)を示している。これにより、前記カプラ22の被嵌合部23を前記第1連結パイプ4の嵌合片12に嵌合させる作業の作業性をより向上させることができる。
【0033】
そして、図2図3に示すように、前記ハーネス21のカプラ22に設けられた被嵌合部23が、ブラケット10の嵌合片12に前記第1連結パイプ4の長手方向で嵌合している。さらに、前記被嵌合部23が、前記嵌合片12よりも幅方向外側のブラケット本体11の底壁部分11T1に第1連結パイプ4の長手方向において当接している。
【0034】
上記の構成によれば、
(1) 作業者がハーネス21のカプラ22をシートクッションフレーム1に固定する場合、シートクッションフレーム1の下部空間に手を入れて、カプラ22を第1連結パイプ4の外周面4Gに当接させる。そして、カプラ22を第1連結パイプ4の外周面4Gに対し第1連結パイプ4の長手方向に摺動させながら嵌合片12側に移動させて、カプラ22の被嵌合部23を嵌合片12に嵌合させる。
第1連結パイプ4は左右一対のサイドフレーム2の前端部同士を連結しているから、作業者の手が第1連結パイプ4に届きやすい。
また、第1連結パイプ4の外周面4Gは滑らかであるから、第1連結パイプ4の外周面4Gに対するカプラ22の摺動を円滑に行うことができる。
そして、第1連結パイプ4がガイドの役割を果たし、カプラ22を嵌合片12側にガイドするから、カプラ22の被嵌合部23とブラケット10の嵌合片12とが作業者に見えなくても、カプラ22の被嵌合部23をブラケット10の嵌合片12に容易に嵌合させることができる。
さらに、前記嵌合片12に対するカプラ22の被嵌合部23の嵌合方向は第1連結パイプ4の長手方向であり、カプラ22を第1連結パイプ4の長手方向に摺動させてカプラ22の被嵌合部23を嵌合片12に嵌合させることで、被嵌合部23を嵌合片12に斜めに嵌合させることがなくなる。その結果、前記被嵌合部23を前記嵌合片12に円滑に嵌合させることができる。
以上により、前記被嵌合部23を前記嵌合片12に嵌合させる組み付け作業の作業性を向上させることができる。
また、上記のように、前記被嵌合部23を嵌合片12に斜めに嵌合させることがなくなるから、嵌合片12やカプラ22の破損を防止することができる。
そして、シートクッションフレーム1の第1連結パイプ4はシートクッションの前端部に隠されているので、第1連結パイプ4に設けられたブラケット10の嵌合片12に前記カプラ22を固定しても外観を損ねることがない。
また、カプラ22を係合させるための係合孔をシートクッションフレーム1に形成しなくても済むから、シートクッションフレーム1の強度が低下することを防止することができる。
【0035】
(2) カプラ22の被嵌合部23をブラケット10の嵌合片12に嵌合させる際に嵌合片12の対向面12Mの先端部が被嵌合部23をガイドする。従って、前記被嵌合部23を前記嵌合片12に円滑に嵌合させることができ、被嵌合部23を嵌合片12に嵌合させる作業の作業性をより向上させることができる。
【0036】
(3) 前記カプラ22の被嵌合部23が前記嵌合片12よりも幅方向外側のブラケット本体11の底壁部分11T1に第1連結パイプ4の長手方向において当接するから、嵌合片12に対する被嵌合部23の嵌合深さが深くなり過ぎることを回避できる。従って、前記嵌合深さが深すぎることに起因するカプラ22の破損を防止することができる。
【0037】
(4) ブラケット10は断面U字状のブラケット本体11と、ブラケット本体11の底壁11Tの端面から第1連結パイプ4の長手方向に沿う方向に突出する嵌合片12とから成るので、ブラケット10の構造を簡素化することができる。
また、ブラケット本体11の両側壁11Sが第1連結パイプ4に下側から外嵌して溶接固着されるから、ブラケット10を第1連結パイプ4に簡単に固着することができる。
さらに、前記嵌合片12は第1連結パイプ4の外周面4Gに下側から対向しているから、第1連結パイプ4の下側の広い空間を作業空間とすることができて、作業性を向上させることができる。
【0038】
(5) 前記第1連結パイプ4の長手方向で嵌合片12とは反対側のブラケット10の端部10Bが、サイドフレーム2に近接して対向しているから、車両用シートに荷重が加わって第1連結パイプ4が曲がった場合、ブラケット10の端部10Bがサイドフレーム2に当接することにより、第1連結パイプ4の変形が大きくなることを抑制することができる。これにより、第1連結パイプ4の径を大きくしなくても済み、重量の増加を最小限に抑えることができる。
【0039】
[別実施形態]
(1) 図4(b)に示すように、前記第1連結パイプ4の長手方向で嵌合片12とは反対側のブラケット10の端部10Bがサイドフレーム2に当接していてもよい。
この構成によれば、車両用シートに荷重が加わって第1連結パイプ4が曲がった場合、第1連結パイプ4の変形が大きくなることを抑制することができる。これにより、第1連結パイプ4の径を大きくしなくても済み、重量の増加を最小限に抑えることができる。
【0040】
(2) 前記第1連結パイプ4の長手方向で嵌合片12とは反対側のブラケット10の端部10Bがサイドフレーム2に当接して溶接固着されていてもよい。この構成によれば、前記(1)の作用に加え、次の作用を奏することができる。つまり、第1連結パイプ4の端部とサイドフレーム2との固着部K(図4(b)参照)の強度をブラケット10により向上させることができ、ブラケット10と第1連結パイプ4の双方の強度を向上させることができる。これにより、第1連結パイプ4の径を大きくしなくても済み、重量の増加を最小限に抑えることができる。
【0041】
(3) 前記ハーネス21の一端部21Aはヒータユニット以外の電装部品に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 シートクッションフレーム
2 サイドフレーム
4 連結パイプ(第1連結パイプ)
4G 連結パイプの外周面
10 ブラケット
10B 嵌合片とは反対側のブラケットの端部
11 ブラケット本体
11S 側壁(ブラケット本体の側壁)
11T ブラケット部分(ブラケットの底壁)
11T1 嵌合片よりも幅方向外側のブラケット部分
12 嵌合片
12M 嵌合片の対向面
21 ハーネス
22 カプラ
23 被嵌合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6