(54)【発明の名称】光熱変換再生デシカントシート、並びに該シートを用いたデシカント素子およびデシカントローター、並びに該素子または該ローターを用いた空調システム
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸放湿性材料と光熱変換材料とが、少なくともその一部において直接接している、あるいは樹脂を介して近接していることを特徴とする請求項1に記載の光熱変換再生デシカントシート。
吸放湿性材料が、20℃×95%RHにおいて50重量%以上の飽和吸湿率を有するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光熱変換再生デシカントシート。
吸放湿性材料が、下記に示す方法で算出される吸湿性能維持率として80%以上を有するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光熱変換再生デシカントシート。
(吸湿性能維持率の算出方法)
20℃×50%RHでの24時間の放湿と40℃×90%RHでの24時間の吸湿を15サイクル繰り返した時の15サイクル目の40℃×90%RHにおける飽和吸湿率を、かかる吸湿・放湿の繰り返し前の40℃×90%RHにおける飽和吸湿率で除し、100を乗じて算出する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の光熱変換再生デシカントシートは、吸湿性および放湿性を有する吸放湿性材料と、電磁波を熱に変換する光熱変換材料とを必須成分として含有する。吸放湿性材料と光熱変換材料を共存させることにより、自然エネルギーである太陽光などを効率的に熱エネルギーに変換し、吸放湿性材料の再生に有効に利用することができる。
【0018】
本発明に用いる吸放湿性材料としては、放湿が低温で起こる特性、すなわち低温再生の能力が高いものが好ましい。光熱変換に用いられる光エネルギーとしては、自然エネルギーである太陽光がその主なものとなる。このため、後述する光熱変換材料によって光から熱に変換される熱エネルギーはそれほど大きなものではなく、集光等の特別な操作を行わない場合に得られる温度としては40℃〜70℃にすぎない。これは従来用いられてきた再生熱源の温度に比べて低いものであるため、高い除湿・加湿性能を得るには吸放湿性材料の低温再生能力が優れていることが望ましい。
【0019】
具体的には、本発明に用いる吸放湿性材料は、後述の実施例項において示す方法で算出した再生率が好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上であるものが望ましい。
【0020】
かかる再生率の算出方法から理解されるように、本発明に定義する再生率は、低温熱源を用いた場合に、吸湿した湿分のうち、どの程度の湿分を放湿できるかという低温再生能力の指標となるものである。この再生率が高いほど、光熱変換材料によって光から変換される熱のような低温熱源を再生熱源として有効に利用できる吸放湿性材料であると言える。逆に再生率が70%に満たない吸放湿性材料は低温熱源ではあまり放湿ができないということであり、光熱変換材料を併用しても光熱変換による熱を再生熱源として利用できず、太陽光などの自然エネルギーを利用できるデシカントシートが得られない場合がある。
【0021】
また、吸放湿性材料としては、20℃×95%RHの飽和吸湿率が50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上であることが望ましい。ここで、「RH」とは相対湿度を意味しており、例えば「20℃×95%RH」とは、雰囲気が温度20℃かつ相対湿度95%である状態を示す。
【0022】
かかる飽和吸湿率が低くなると吸放湿性材料の吸湿量が少なくなるため、空調システムを構築したときに十分な除湿・加湿性能を得るには、デシカントシート中の吸放湿性材料の割合を高める必要が出てくる。しかし、デシカントシート中の吸放湿性材料の割合を高めると吸放湿性材料の脱落や吸放湿に伴う変形などの問題が顕在化してくる場合がある。かかる飽和吸湿率が50重量%以上であれば、吸放湿性材料の脱落や吸放湿に伴う変形が問題となるほど、デシカントシート中の吸放湿性材料の割合を高めなくても十分な除湿・加湿性能を得ることができる。
【0023】
一方、該飽和吸湿率が高くなりすぎると、吸放湿性材料の使用量を抑制しても上記の脱落や変形の問題が顕在化する場合がある。このため、20℃×95%RHの飽和吸湿率は140重量%以下、好ましくは120重量%以下であることが望ましい。
【0024】
さらに、吸放湿性材料としては、20℃×45%RHと20℃×95%RHとの飽和吸湿率の差が20パーセントポイント以上、好ましくは40パーセントポイント以上であるものが望ましい。20℃×45%RHと20℃×95%RHとの飽和吸湿率の差は低湿度状態と高湿度状態との飽和吸湿率の差の指標である。吸放湿性材料を繰り返し吸湿、放湿させるデシカント空調システムにおいて、この差は除湿性能、加湿性能に大きく影響し、20パーセントポイント未満である場合はデシカントシート中の吸放湿性材料の割合を高める必要が出てきて、吸放湿性材料の脱落や吸放湿に伴う変形などの問題が顕在化してくる場合がある。一方、40パーセントポイント以上の場合、光熱変換によって発生する程度の比較的低い温度の熱による再生でも大きな除湿量、加湿量が得られるため、より実用的なデシカント空調システムを構築することが可能となる。
【0025】
本発明に用いることができる吸放湿性材料としては、吸放湿性物質が代表的な例である。かかる吸放湿性物質としては、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナなどの無機系多孔質材料、塩化リチウム、塩化カルシウムなどの無機塩類、あるいは、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリスルホン酸およびその塩、ポリリン酸およびその塩、ポリグルタミン酸およびその塩、ポリアクリルアミド等の親水性官能基を有する有機系高分子化合物を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用しても構わない。また、これらの吸放湿性物質を含有させた合成繊維や天然繊維、あるいは、樹脂フィルムやゴムなども本発明の吸放湿性材料として採用しうる。
【0026】
上記吸放湿性材料の中でも、分子中に親水性極性基を有する有機高分子主鎖を架橋構造により三次元構造化した有機系高分子化合物が好適である。かかる有機系高分子化合物は収着現象に基づき水蒸気を多量に収着するものであり、本発明ではかかる材料を有機高分子系収着剤と呼ぶこととする。ここで、収着現象とは、気体と固体が接している系において両者の界面で固相中の気体濃度が気相中よりも高くなる現象は吸着と呼ばれ、一方、吸着した気体分子が固体表面層を通り固体内部へ入り込んでいく現象は吸収と呼ばれるが、この吸着と吸収とが同時に起こる現象である。即ち、気体状水分子である水蒸気が有機高分子系収着剤に作用した場合、該収着剤の有する高い親水性極性基により水分子は吸着され、さらに収着剤に入り込んで吸収されてゆく。
【0027】
かかる有機高分子系収着剤においては、架橋構造により三次元化した構造に適度の柔軟さがあるため、吸湿時には水分子が吸収されるに従い膨らんで多量の水分子を収着剤の中に取り込むことができ、また放湿時には水分子が放出されるに従い収縮し元の構造に戻ることができる。すなわち、有機高分子系収着剤は高吸湿率と吸放湿の繰り返しに対する優れた耐久性を両立するものであり、デシカント空調システムに適した吸放湿性材料なのである。
【0028】
かかる有機高分子系収着剤の中でも、架橋構造を有するポリアクリル酸の塩は、上述した飽和吸湿率、飽和吸湿率の差や低温再生特性について望ましい特性を得られやすい点から本発明のデシカント素子や該素子を用いるデシカント空調システムに特に好適に採用できるものである。なお、本発明においては、かかる架橋構造を有するポリアクリル酸の塩のことを架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物とも言う。
【0029】
架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物においては、親水性極性基であるカルボキシル基とカチオンが塩を構成している。かかる塩を構成するカチオンとしては、特に限定はなく、例えばLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Ni等のその他の金属、NH
4、アミン等の有機のカチオン等を挙げることかでき、これらのカチオンを2種以上同時に用いてもよい。中でも、カチオンとしてKを選択すれば吸放湿速度の向上に特に効果があるのでより好ましい。
【0030】
また、架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物において、カチオンと塩を構成しているカルボキシル基、すなわち塩型カルボキシル基は、吸湿性を発現させるために好適な親水性の高い極性基であり、高い吸放湿性能を得ようとする場合、できるだけ多くの塩型カルボキシル基を含有することが好ましい。しかし、吸湿量と同時に、耐久性あるいは吸湿速度の速いものとするためには、架橋構造との割合において適当なバランスをとることが必要である。
【0031】
すなわち、架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物の塩型カルボキシル基量が10.0mmol/gを超える場合、導入できる架橋構造の割合が少なくなりすぎ、いわゆる高吸水性樹脂に近いものとなってしまい、吸湿性能が低くなる、形態安定性が劣ったものとなり十分な耐久性が得られない、粘着性を帯びてくるといった問題が生じる場合がある。以上のような観点からより好ましい結果を与える塩型カルボキシル基量は、9.5mmol/g以下である。
【0032】
一方、塩型カルボキシル基量が少ない場合、吸湿性能は低下してゆき、特に1.0mmol/gより低い場合では、上述した20℃×65%RHの飽和吸湿率あるいは20℃×45%RHと20℃×95%RHとの飽和吸湿率の差が得られないことがある。塩型カルボキシル基量が3.0mmol/g以上の場合、現存する他の吸湿性の素材に比べてその吸湿性能の優位性が顕著となり、より好ましい結果を与える。
【0033】
かかる架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物における塩型カルボキシル基の場合の導入の方法としては、特に限定は無く、例えば、塩型カルボキシル基を有する単量体を単独重合又は共重合可能な他の単量体と共重合することによって重合体を得る方法(第1法)、カルボキシル基を有する重合体を得た後に塩型に変える方法(第2法)、カルボキシル基に誘導することが可能である官能基を有した単量体を重合し、得られた重合体の該官能基を化学変性によりカルボキシル基に変換しさらに塩型に変える方法(第3法)、あるいはグラフト重合により前記3法を実施する方法等が挙げられる。
【0034】
上記第1法の塩型カルボキシル基を有する単量体を重合する方法としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボキシル基を含有する単量体の対応する塩型単量体を単独で、又はこれらの単量体の2種以上を、あるいは同一種であるがカルボン酸型と対応する塩型との混合物を重合する、さらにはこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とを共重合する等の方法が挙げられる。
【0035】
また、第2法に言うカルボキシル基を有する重合体を得た後に塩型に変える方法とは、例えば、先に述べたようなカルボキシル基を含有する酸型単量体の単独重合体、あるいは該単量体の2種以上からなる共重合体、または、共重合可能な他の単量体との共重合体を重合により得た後、塩型に変える方法である。カルボキシル基を塩型に変換する方法としては特に限定はなく、得られた前記酸型重合体にLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属イオン、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属イオン、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Ni等の他の金属イオン、NH
4、アミン化合物等の有機の陽イオンを含む溶液を作用させてイオン交換を行う等の方法により変換することができる。
【0036】
第3法の化学変性法によりカルボキシル基を導入する方法としては、例えば化学変性処理によりカルボキシル基に変性可能な官能基を有する単量体の単独重合体、あるいは2種以上からなる共重合体、または、共重合可能な他の単量体との共重合体を重合し、得られた重合体を加水分解によってカルボキシル基に変性する方法があり、得られた状態が塩型でない場合は、変性されたカルボキシル基に上記の塩型にする方法が適用される。このような方法をとることのできる単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボン酸基を有する単量体の無水物やエステル誘導体、アミド誘導体、架橋性を有するエステル誘導体等を上げることができる。
【0037】
カルボン酸基を有する単量体の無水物としては、無水マレイン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、N−フェニルマレイミド、N−シクロマレイミド等をあげることができる。
【0038】
カルボン酸基を有する単量体のエステル誘導体としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ラウリル、ペンタデシル、セチル、ステアリル、ベヘニル、2−エチルヘキシル、イソデシル、イソアミル等のアルキルエステル誘導体;メトキシエチレングリコール、エトキシエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、メトキシプロピレングリコール、プロピレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリテトラエチレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールーポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールーポリテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールーポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールーポリテトラエチレングリコール、ブトキシエチル等のアルキルエーテルエステル誘導体;シクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、ベンジル、フェノキシエチル、フェノキシポリエチレングリコール、イソボニル、ネオペンチルグリコールペンゾエート等の環状化合物エステル誘導体;ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシフェノキシプロピル、ヒドロキシプロピルフタロイルエチル、クロローヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキルエステル誘導体;ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、トリメチルアミノエチル等のアミノアルキルエステル誘導体;(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸アルキルエステル誘導体;(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホフフェート等のリン酸基またはリン酸エステル基を含むアルキルエステル誘導体;
【0039】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシー3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリル、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の架橋性アルキルエステル類;トリフロロエチル、テトラフロロプロピル、ヘキサフロロブチル、パーフロロオクチルエチル等のフッ化アルキルエステル誘導体をあげることができる。
【0040】
カルボン酸基を有する単量体のアミド誘導体としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、モノエチル(メタ)アクリルアミド、ノルマルーt一ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物等が例示できる。化学変性によりカルボキシル基を導入する他の方法として、アルケン、ハロゲン化アルキル、アルコール、アルデヒド等の酸化等も挙げることができる。
【0041】
上記第3法における重合体の加水分解反応により塩型カルボキシル基を導入する方法についても特に限定はなく、既知の加水分解条件を利用することができる。例えば、上記単量体を重合し架橋された重合体にアルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムやアンモニア等の塩基性水溶液を用い塩型カルボキシル基を導入する方法、或いは硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸または、蟻酸、酢酸等の有機酸と反応させ、カルボン酸基とした後、アルカリ金属塩類と混合することにより、イオン交換により塩型カルボキシル基を導入する方法が挙げられる。なかでも吸湿速度に優れるカリウム塩型カルボキシル基が簡単に得られる水酸化カリウムによる加水分解法が好ましい。なお、1.0〜10.0mmol/gとなる条件については、反応の温度、濃度、時間等の反応因子と導入される塩型カルボキシル基量の関係を実験で明らかにすることにより、決定することができる。
【0042】
本発明における有機高分子系収着剤の架橋構造は、本発明の目的とする吸放湿性能および該性能を生かした製品の性能に影響を及ぼさない限りにおいては特に限定はなく、共有結合による架橋、イオン架橋、ポリマー分子間相互作用または結晶構造による架橋等いずれの構造のものでもよい。また、架橋を導入する方法においても特に限定はなく、使用する単量体の重合段階において架橋性単量体を共重合させることによる架橋導入方法、あるいは単量体をまず重合し、その後、化学的反応あるいは物理的なエネルギーによる架橋構造の導入といった後架橋法等を挙げることができる。中でも、単量体の重合段階で架橋性単量体を用いる方法、あるいは重合体を得たあとの化学的な後架橋による方法では、共有結合による強固な架橋を導入することが可能であり、吸湿、放湿に伴う物理的、化学的変性を受け難いという点で好ましい。
【0043】
単量体の重合段階で架橋性単量体を用いる方法では、特に上述した架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物の場合、既述のカルボキシル基を有する、あるいはカルボキシル基に変性できる単量体と共重合することのできる架橋性単量体を用い、共重合を行なうことにより共有結合に基づく架橋構造を有する架橋重合体を得ることができる。しかし、この場合、単量体であるアクリル酸などが示す酸性条件、あるいは重合体でのカルボキシル基への変性を行う際の化学的な影響(例えば加水分解など)を受けない、あるいは受けにくい架橋性単量体である必要がある。
【0044】
単量体の重合段階で架橋性単量体を用いる方法に使用できる架橋性単量体としては特に限定はなく、例えばグリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ビニル化合物を挙げることができ、なかでもトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミドによる架橋構造は、それらを含有してなる架橋重合体に施すカルボキシル基を導入するための加水分解等の際にも化学的に安定であるので望ましい。
【0045】
また、後架橋による方法としても特に限定はなく、例えば、ニトリル基を有するビニルモノマーの含有量が50重量%以上よりなるニトリル系重合体の含有するニトリル基と、ヒドラジン系化合物またはホルムアルデヒドを反応させる後架橋法を挙げることができる。なかでもヒドラジン系化合物により導入された架橋構造は、酸、アルカリに対しても安定で、しかも形成される架橋構造自体が親水性であるので吸湿性の向上に寄与でき、また、重合体に付与した多孔質等の形態を保持することができる強固な架橋を導入できるといった点で極めて優れている。なお、該反応により得られる架橋構造に関しては、その詳細は同定されていないが、トリアゾール環あるいはテトラゾール環構造に基づくものと推定されている。
【0046】
ここでいうニトリル基を有するビニルモノマーとしては、ニトリル基を有する限りにおいては特に限定はなく、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。なかでも、コスト的に有利であり、また、単位重量あたりのニトリル基量が多いアクリロニトリルが最も好ましい。
【0047】
ヒドラジン系化合物との反応により架橋を導入する方法としては、目的とする架橋構造が得られる限りにおいては特に制限はなく、反応時のニトリル系重合体とヒドラジン系化合物の濃度、使用する溶媒、反応時間、反応温度など必要に応じて適宜選定することができる。このうち反応温度については、あまり低温である場合は反応速度が遅くなり反応時間が長くなりすぎること、また、あまり高温である場合はニトリル系重合体の可塑化などが起り、重合体に付与されていた形態が破壊されるという問題が生じる場合がある。従って、好ましい反応温度としては、50〜150℃、さらに好ましくは80℃〜120℃である。また、ヒドラジン系化合物と反応させるニトリル系重合体の部分についても特に限定はなく、その用途、該重合体の形態に応じて適宜選択することができる。具体的には、該重合体の表面のみに反応させる、または、全体にわたり芯部まで反応させる、特定の部分を限定して反応させる等適宜選択できる。なお、ここに使用するヒドラジン系化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硝酸ヒドラジン、臭化水素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネート等のヒドラジンの塩類、およびエチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン等のヒドラジン誘導体である。
【0048】
本発明に採用する吸放湿性材料としては、上述した低温再生特性および飽和吸湿率差のほかに、下記特性を有するものが好ましい結果を与える。
【0049】
1つには、本発明の光熱変換再生デシカントシートの主な使用形態であるデシカント素子やデシカントローターなどにおいては、長期間にわたって吸放湿が繰り返されることになるので、吸放湿性材料としては吸放湿が繰り返されても、安定した吸湿性能を維持できるものであることが望ましい。後述する評価法による高湿度雰囲気下および低湿度雰囲気下での吸湿性能維持率が好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であれば、デシカント素子やデシカントローターに用いた場合に、長期にわたって安定した性能を維持しやすくなる。なお、吸湿性能維持率が100%を超えることもありえ、110%を超えるような場合には、吸放湿性材料の変質が大きく、デシカントシートとして吸放湿を繰り返した場合に、粘着性を帯びたり、脱落しやすくなったりする恐れがあるので注意が必要である。
【0050】
2つめとしては、吸放湿に伴う形態変化が小さいことが望ましい。具体的には、粉末化が起きにくく、絶乾状態の体積に比べ、吸水時の体積増加率が2倍以下であることが好ましい。吸湿、放湿を長期にわたって繰り返す場合、吸放湿性材料が粉末化が起こしやすいものであると、吸放湿性材料が脱落してデシカントシートとしての吸放湿性能が低下するという問題が発生する。シリカゲルなどの無機系材料の場合にかかる問題が発生しやすい。また、吸放湿性材料が、吸水時の体積増加率の大きすぎるものである場合、吸湿時においても体積増加率が大きく、デシカント素子自体の形態の変形を生じ、吸放湿性材料が剥がれたり、脱落したりするという問題が発生する。さらに、結露により多量の水を吸って体積が大きく変化し、デシカント空調システム自体への問題が生じる恐れもある。
【0051】
3つめとしては、水蒸気以外の臭い成分の蓄積が起きにくい材料が望ましい。臭い成分を蓄積する材料の場合、吸湿放湿サイクルを繰り返すうち、臭いを有する物質が吸放湿性材料に蓄積し、再起動時、あるいは急な温度、湿度の変化時等に蓄積した物質が一度に放出され臭いが発生するという問題を生じる。シリカゲル、ゼオライト、活性炭等の多孔質物質は直径2nm未満のミクロ細孔を有しておりこのミクロ細孔に臭い物質が蓄積するためこのような問題が発生する場合が多い。
【0052】
上記3つの望ましい特性を有するものとしては、前記の架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物が挙げられる。架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物は、室温から70℃程度の温度であっても、容易に再生できる低温再生能力と高い飽和吸湿率、大きな飽和吸湿率差を有しており、加えて、吸湿放湿に伴う体積変化や水浸漬時の膨潤度が低く、またミクロ細孔を有していないため、吸放湿を繰り返しても低温再生能力が低下しにくく、臭い成分の蓄積がないといった特徴があり、本発明の目的を達成するためには最も好ましい吸放湿性材料である。
【0053】
本発明に用いられる吸放湿性材料の形態としては、微粒子状、繊維状、フィルム状のものなどが挙げられ、使用される用途に応じたものを適宜選定することができるが、微粒子状のものであるとき特に好ましい結果を得ることができる。特に微粒子状の吸放湿性材料は、微粒子であるためその比表面積が大きく吸湿・放湿の速度を向上することができる。また微粒子の積層した吸湿層においては、粒子積層部位にわずかなすき間が発生するが、吸湿・放湿に伴う収着剤の膨潤・収縮という体積変化をそのすき間で吸収することができるため、耐久性の向上に寄与する。また、このすき間があることにより、水蒸気の移動が起こり易くなり、吸湿・放湿速度を向上することができるとともに、水蒸気を吸湿層の深い部分まで到達させることができ、吸湿層をムダなく使用することができるといったメリットがある。なお、かかるすき間は上記のミクロ細孔よりもはるかに大きく、直径50nm以上のマクロ細孔レベルの孔であって、臭い物質の蓄積には関与しない。
【0054】
微粒子状の吸放湿性材料の場合の粒子径については、デシカントシートとして加工することが可能で、目的とする性能が得られる限りにおいては、特に限定が無い。ただ、吸湿・放湿の速度を高くすることや吸湿層としての耐久性を高めるといった観点から該微粒子の平均1次粒子径は5μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは比表面積が極めて大きくなり、吸湿・放湿速度が著しく向上する0.2μm以下の場合である。ここで言う平均1次粒子径とは、微粒子が、会合または凝集が起こっていない状態、すなわち1次粒子での粒子径を平均したものを言う。該微粒子が水等の溶媒中に微分散、あるいはエマルジョン状で存在する場合は、水等の溶媒中に完全に分散させその平均粒子径として測定した値を用いる。また、1次粒子が凝集したものである場合、電子顕微鏡等で拡大観察し、塊となっている個々の1次粒子の大きさを測定し、平均した値である。
【0055】
この粒子径が、5μmより大きい場合、(1)比表面積が小さくなり、最も吸湿速度の向上に寄与する表面吸着量が低下する、(2)半径が大きくなるため、粒子の中心部までの水分子の移動時間が長くなる。このため極短時間では、水分子が粒子の中心部まで移動することができず、中心部は吸湿速度には寄与せず、本来持っている吸湿能力が十分発現できない場合がある。
【0056】
粒子の形状についても特に限定はなく、球状、不定形、平板状、サイコロ状、紡錘型、円柱状等いずれの形のものでも使用することができる。また、その形態についても特に限定はなく、表面が平滑なもの、表面に凹凸があるもの、多孔質のもの、1次粒子の凝集体状のもの等を適宜選定して使用することができる。
【0057】
また、吸放湿性材料の形態が繊維状である場合には、紙、不織布、織物、編み物等のシート状に加工が容易であるため、様々な用途へ応用が可能となる。また紙等のシートの場合、直接コルゲート、ハニカム等の加工に供することができフィルターなどの用途に有用である。
【0058】
本発明の光熱変換再生デシカントシートにおけるもう1つの必須構成要素は光熱変換材料である。本発明に採用する光熱変換材料としては、太陽光、紫外線、可視光線、赤外線、白色光線等の電磁波を吸収して熱に変換しうる材料である限り特に限定されず、例えば、無機系物質、顔料、染料、赤外線吸収剤などの光熱変換物質が挙げられる。
【0059】
かかる光熱変換物質のうち、無機系物質としては炭化物、酸化物、硫化物、炭素同素体などが挙げられる。炭化物としては、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタルなどが挙げられ、酸化物としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化銅、酸化銀、酸化クロム、酸化鉛などが挙げられる。また、硫化物としては、硫化チタン、硫化ケイ素、硫化クロム、硫化ジルコニウム、硫化鉄、硫化銅、硫化銀、硫化クロム、硫化鉛などが挙げられ、炭素同素体としては、黒鉛、カーボングラファイト、カーボンナノチューブ、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。この他に、雲母、方解石、黒化銀、鉄粉なども無機系物質として挙げられる。
【0060】
また、顔料としては、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料やアゾ系顔料、多環式系顔料などの有機顔料などが挙げられる。このうち、無機顔料としては、カーボンブラックやチタンブラックなどが挙げられる。また、アゾ系顔料としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などが挙げられ、多環式系顔料としては、フタロシアニン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料などが挙げられる。この他に、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料なども顔料として挙げられる。
【0061】
また、染料としては、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、ナフタロシアニン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、インドレニン染料、シアニン染料、ナフトキノン染料などを挙げることができる。赤外線吸収剤としては、ピリリウム系化合物、アリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩系化合物、トリメチンチアピリリウム塩、ペンタメチンチオピリリウム塩、シアニン色素、スクワリリウム色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系顔料、ジチオールニッケル錯体、金属チオレート錯体、ニッケルチオレートなどを挙げることができる。
【0062】
さらに、上述の光熱変換物質を含有させた合成繊維や天然繊維、あるいは、樹脂フィルムやゴムなども本発明の光熱変換材料として採用しうる。
【0063】
以上に説明した光熱変換材料のなかでも、可視光線から近赤外線の領域(波長380〜2500nm)の光に対する分光反射率の平均値が、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下であるものが望ましく、とりわけ、太陽光の全波長にわたって高い吸収率を有する黒色系材料であり、かつ耐光性に優れた炭素同素体または無機化合物が好ましく用いられる。具体的には、黒化銀、黒鉛、カーボンブラック、カーボングラファイト、カーボンナノチューブ、ファーネスブラック、アセチレンブラック、酸化鉄などが好ましい光熱変換材料として挙げられる。また、本発明に用いられる光熱変換材料の形態としては、前述の吸放湿性物質と同様に、微粒子状、繊維状、フィルム状のものなどが挙げられ、使用される用途に応じたものを適宜選定することができる。
【0064】
また、光熱変換材料の大きさとしては、より小さいほうが接触界面が増えて熱エネルギー伝導が向上し好ましいが、あまりに小さいと電磁波を吸収しにくくなり発熱量が小さくなる。微粒子状の光熱変換材料の場合であれば、粒子径として、好ましくは0.01μm〜20μm、より好ましくは0.05〜5μmであることが望ましい。
【0065】
次に、本発明の光熱変換再生デシカントシートについて説明する。本発明の光熱変換再生デシカントシートは上述した吸放湿性材料と光熱変換材料を必須成分として含有するシートであって、吸放湿性材料と光熱変換材料のみよりなるものであってもよいし、これら以外の構成成分を含むものであってもよい。
【0066】
例えば、吸放湿性材料と光熱変換材料の両方が繊維状あるいはフィルム状である場合には、これらの材料のみあるいは他の成分を加えて紙、不織布、フィルム等のシート状物を形成し、本発明のデシカントシートとして用いることができる。また、吸放湿性材料と光熱変換材料の一方が繊維状あるいはフィルム状である場合には、該材料のみあるいは他の成分を加えて紙、不織布、フィルム等のシート状物を形成し、かかるシート状物に他方の材料を担持させたり、含浸させたりすることによって本発明のデシカントシートを得ることができる。また、吸放湿性材料と光熱変換材料を添加した樹脂から繊維やフィルムに成型し、本発明のデシカントシートを得ることもできる。この場合、繊維やフィルムを多孔質構造としたり、透湿性や透明性の高い樹脂を用いたりすることで、繊維やフィルム内層部の吸放湿性材料や光熱変換材料を効率よく利用できるようになり、除湿・加湿性能や低温再生能力の向上を図ることができる。
【0067】
また、シート状基材を用い、これに吸放湿性材料と光熱変換材料を固定する態様は、強度、耐久性、寸法安定性、成型加工性などの点から応用展開しやすい態様である。採用できるシート状基材としては、特に限定はなく、プラスチックシート、金属シート、ガラスシート、樹脂コート紙、紙、不織布及び各種複合体等のようなシート状の基材が挙げられる。プラスチックシートの例としては、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリカーボネートシート、ポリエチレンシート、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニリデンシート、ポリスチレンシート、スチレン−アクリロニトリルシート、ポリエステルシート等を挙げることができる。紙としては、ガラス繊維等よりなる無機繊維紙、パルプを主体とする一般紙、合成繊維が含まれる合成繊維紙、あるいはこれらの複合化された紙等を挙げることができる。中でも、耐光性、耐久性、寸法安定性、等の点よりガラス繊維等の無機繊維を主体とする無機繊維紙が好ましく、特に無機繊維と有機繊維からなる複合無機繊維紙の場合、柔軟性の特性が加わるため、巻き取り、切断、折り曲げなどの後加工も容易となる。
【0068】
また、シート状基材を用いる態様においては、必須成分である吸放湿性材料と光熱変換材料をシート基材に固定するために必要であればバインダーを用いてもよい。該バインダーとしては該必須成分が要求される機能を発現できる限りにおいて何ら限定はない。
【0069】
具体的には、有機系ではポリメタクリル酸メチル等のアクリル酸系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アラミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、尿素/メラミン樹脂等が、無機系ではコロイダルシリカ、水ガラス、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0070】
また、吸放湿性材料は親水性が高いため、水溶性有機バインダーを用いる場合に良好な結果を与えることが多い。かかる水溶性有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレンオキサイド、ゼラチン、カゼイン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸等が挙げられる。さらに、これらと架橋性化合物を併用するとより良い耐久性、耐水性を得ることができ好ましい。
【0071】
ここで架橋性化合物としては特に限定はなく、例えばジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等のグリコール化合物;グリシジルアルコール、トリメチロールプロパン、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール等の水酸基含有化合物;エタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチロールメラミン、ポリエチレンイミン、尿素、オキサゾリン系反応性ポリマー、ブロック化ポリイソシアネート化合物、ポリアジリジン化合物、ポリオキサゾリン基含有化合物、チタンキレート化合物、ジルコニア化合物などを挙げることができる。中でも、ポリエポキシ化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、ポリアジリジン化合物、ポリオキサゾリン基含有化合物、チタンキレート化合物、ジルコニア化合物よりなる群のいずれかの架橋性化合物を用いることで、耐久性に優れた固着が可能となることからこれらを使用することが好ましい。
【0072】
また、バインダー以外の添加剤を含有することも本発明を何ら逸脱するものでなく、例えば、抗菌剤、抗カビ剤、レベリング剤、各種熱重合抑制剤、レベリング剤、増粘剤、減粘剤、チキソトロピー付与剤、ハレーション防止剤、艶消し剤、希釈剤、フィラ−、強化剤、熱可塑性樹脂等を適宜選択し使用することができる。また、バインダー中に伝熱性に優れるアルミニウム、銅などの金属粉あるいは金属繊維等を添加すれば、熱伝導がより効率的となり本発明の効果を高める上で有効となる場合がある。
【0073】
次に、本発明の光熱変換再生デシカントシートの構成の状態について述べる。本発明の光熱変換再生デシカントシートにおいては、光熱変換材料により光エネルギーが熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーを吸放湿性材料を再生すなわち放湿させるためのエネルギーとして利用する。従って、シート内において光熱変換材料から生じる熱エネルギーを吸放湿性材料に効率よく伝導できるようにすることが、シートの除湿・加湿特性や低温再生特性の面から望ましい。
【0074】
このためには、吸放湿性材料と光熱変換材料との距離が小さく、かつ空気層などの熱伝導率の低いものが介在しない状態、すなわち、これらの材料が少なくともその一部において直接接している状態あるいは樹脂を介して近接している状態にあることが好ましい。ここで、吸放湿性材料と光熱変換材料との距離について、これを直接測定することは容易でないが、吸放湿性材料と光熱変換材料の合計重量に対する樹脂の重量の割合が指標にできる。すなわち、かかる割合が小さいほど樹脂量が少なく、吸放湿性材料と光熱変換材料との間の距離が近いことになる。樹脂を介して近接している状態としては、吸放湿性材料と光熱変換材料の合計重量を100重量部とした場合、樹脂が好ましくは100重量部以下、より好ましくは60重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、最も好ましくは10重量部以下である状態である。
【0075】
直接接している状態の具体的な例としては、吸放湿性材料そのものを連続相として光熱変換材料が分散している状態、吸放湿性材料そのものによる連続相上に光熱変換材料が分散あるいは被覆している状態、光熱変換材料そのものを連続相として吸放湿性材料が分散している状態、光熱変換材料そのものによる連続相上に吸放湿性材料が分散あるいは被覆している状態などを挙げることができる。
【0076】
また、繊維状の光熱変換材料やフィルム状の光熱変換材料などからなる基材に吸放湿性材料を含浸あるいは被覆させた状態、あるいは、これら2種類の状態について、吸放湿性材料と光熱変換材料を入れ換えた状態なども直接接している状態の例として挙げることができる。
【0077】
一方、樹脂を介して近接している状態における樹脂としては、特に限定はないが、天然ゴムなどの天然樹脂や熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が挙げられ、より具体的には上述したバインダーが挙げられる。近接している状態の具体的な例としては、(1)バインダーを連続相として吸放湿性材料と光熱変換材料が分散している状態、(2)バインダーを連続相として吸放湿性材料が分散している層とバインダーを連続相として光熱変換材料が分散している層とが積層している状態、(3)バインダーを連続相として吸放湿性材料が分散しており、該連続相上に光熱変換材料が分散あるいは被覆している状態、あるいは、(2)、(3)の状態について、吸放湿性材料と光熱変換材料を入れ換えた状態などを挙げることができる。
【0078】
上記(2)あるいは(3)の状態においては、上側層あるいは被覆の厚みが厚すぎる場合、下側層あるいは被覆される側の材料の機能を阻害する、あるいは脱落し易くなる等の問題が発生する場合がある。具体的には上側層あるいは被覆の厚みとしては0.3mm以下である場合が良好な結果を得られる場合が多い。
【0079】
また、直接接している状態と樹脂を介して近接している状態が混在する状態も好ましい。具体的な例としては、吸放湿性材料とバインダーがともに連続相となっており、これらの連続相中に光熱変換材料が分散している状態が挙げられる。この例では、吸放湿性材料の連続相とバインダーの連続相が三次元的な広がりの中で絡んでいるような状態となっており、光熱変換材料はいずれの連続相中にも分散している。なお、かかる状態とするには、吸放湿性材料として水分散体状の架橋ポリアクリル酸系高分子化合物を用いる例が挙げられる。この場合、該化合物、光熱変換材料、バインダー、およびその他の添加剤の合計重量を100重量部として、該化合物を70重量部以上用いると吸放湿性材料が連続相となりやすい。
【0080】
なお、本発明のデシカントシートにおいては、シート状基材を用いる場合、シート状基材の全体に上述した状態を形成させたものに限らず、かかる状態をシート状基材の一部に形成させたものも採用できる。後者の例としては、シート状基材に上述した状態を島状に形成させたものや、一旦シート状基材の全体に上述した状態を形成させた後、一部を取り除いたものなどが挙げられる。
【0081】
次に、本発明のデシカントシートを構成する各成分の含有割合について述べる。吸放湿性材料と光熱変換材料の含有割合については、必要とされる用途に応じ要求される機能が発現される限りにおいては特に限定はない。ただ、光熱変換材料の変換した熱エネルギーを吸放湿性材料の再生に有効に利用しつつ、吸湿量が少なくなりすぎないようにする観点から、それぞれの材料の好ましい含有量としては、吸放湿性材料と光熱変換材料の合計重量を100重量部とした場合、吸放湿性材料が50〜99.5重量部、一方の光熱変換材料が0.5〜50重量部であり、より好ましくは、吸放湿性材料が70〜99.5重量部、一方の光熱変換材料が0.5〜30重量部であり、さらに好ましくは吸放湿性材料が90〜99.5重量部、一方の光熱変換材料が0.5〜10重量部である。
【0082】
また、バインダーを用いる場合におけるバインダー量としては、吸放湿性材料がバインダーに覆われて除湿・加湿性能が低下することを避ける観点や吸放湿性材料と光熱変換材料とを近接させた状態とする観点からバインダー量を少なくすることが望ましく、上述のように吸放湿性材料と光熱変換材料の合計重量を100重量部とした場合、バインダーが好ましくは100重量部以下、より好ましくは60重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、最も好ましくは10重量部以下とすることが望ましい。しかし、バインダー量が少なすぎると吸放湿性材料あるいは光熱変換材料を基材に十分に固定できず、これらの材料が脱落する等の問題が生じる。このため、バインダーを用いる場合におけるバインダー量の下限としては、吸放湿性材料と光熱変換材料の合計重量100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上となるようにするのが望ましい。
【0083】
また、バインダー以外の上述のような添加剤を用いる場合、かかる添加剤の含有割合は、目的とする除湿・加湿性能や低温再生能力を勘案して適宜設定すればよい。一般的には、吸放湿性材料と光熱変換材料の合計重量100重量部に対して、バインダーも含めた添加剤の総量を好ましくは0〜400重量部、より好ましくは0〜100重量部となるように設定すれば良好な結果が得られることが多い。
【0084】
また、シート状基材を用いるパターンでは、デシカントシート全体に占める吸放湿性材料および光熱変換材料の割合があまりに少ないと十分な除湿・加湿性能が得られなくなる。一方、強度、耐久性などの特性を十分に発現できるようにする観点からシート状基材の割合があまり少ない場合も好ましくない。このようなことから、シート状基材を用いるパターンでは、吸放湿性材料、光熱変換材料およびバインダーを含む添加剤の合計重量100重量部に対して、シート状基材を好ましくは10〜100重量部、より好ましくは20〜70重量部とするのが望ましい。
【0085】
本発明の光熱変換再生デシカントシートの厚みについても、目的とされる特性が得られる限りにおいては特に限定はない。ただあまり厚みが厚すぎると光の透過が阻害されて光熱変換効果が低下したり、あるいは後述するデシカント素子への加工が難しくなったりするといった問題が生じるため、2mm以下、好ましくは0.5mm以下とすることが望ましい。またあまり薄すぎる場合は強度、耐久性の問題が生じるため、10μm以上、好ましくは50μm以上とすることが望ましい。
【0086】
また、本発明の光熱変換再生デシカントシートは、デシカント素子やデシカントローターに用いる場合、低湿度雰囲気下と高湿度雰囲気下での吸湿量の差が大きいことが望ましい。デシカント空調システムにおいては、低湿度雰囲気下での再生と高湿度雰囲気下での吸湿を繰り返し行うため、デシカントシートの低湿度雰囲気下と高湿度雰囲気下での吸湿量の差が大きいことは、大きな除湿量あるいは加湿量を得るうえで有利となる。かかる観点から、後述する評価方法による飽和吸湿量差として5g/m
2以上、好ましくは20g/m
2以上、より好ましくは25g/m
2以上とすることが望ましい。
【0087】
さらに、本発明の光熱変換再生デシカントシートの20℃×65%における飽和吸湿量としては1m
2あたり5g以上、好ましくは15g以上、より好ましくは25g以上であることが、デシカント空調システムの部材として利用する上で望ましい。
【0088】
上述してきた本発明の光熱変換再生デシカントシートは、電磁波、特に、太陽光を自然エネルギー源として効率的にデシカントの再生を行うことができる。かかる本発明のデシカントシートはそのままの形状でも使用できるが、これを立体的に成型してデシカント素子となし、かかるデシカント素子を用いてデシカント空調システムを構成すれば、自然エネルギーを活用し、かつ省エネルギーである空調システムを実現することができる。
【0089】
本発明の光熱変換再生デシカント素子は、上述した本発明の光熱変換再生デシカントシートからなり、気体貫通路を有する立体構造体である。立体構造としては、シート上の吸放湿性材料および光熱変換材料を効率よく利用するために、通過する空気および照射される電磁波に対して、これらに接するシートの面積をできるだけ広くできる構造とすることが望ましい。具体例として、ハニカム構造と呼ばれるものがあり、例えば六角型、OX型、フレックス型、バイセクト型、フェザー型(以下コルゲート型という)等を挙げることができる。中でも、加工が容易で、加工速度が早く、コスト的にも有利なコルゲート型のものが好ましい。また、気体貫通路の大きさや長さ等の特性については、圧力損失(空気抵抗)などの求められる性能に応じて適宜選定することができる。デシカント素子の外観形状としても、用途に合わせて自由に設定できる。
【0090】
本発明の光熱変換再生デシカントローターは上述した光熱変換再生デシカント素子をローターとして構成したものであり、回転することにより、吸放湿性材料による水分の吸着と、光熱変換により発生する熱による吸放湿性材料の再生を連続的に繰り返し行うことができるようにしたものである。ローターの直径、厚み等については特に規定はなく、求められる性能に応じて適宜選定することができる。また、かかるローターは光熱変換再生デシカント素子そのものよりなるものであっても、また補強のために金属枠、プラスチック枠等で囲む等の加工が施されているものでも構わない。
【0091】
なお、上述した本発明の光熱変換再生デシカント素子や光熱変換再生デシカントローターの作成にあたっては、最終的に本発明の光熱変換再生デシカントシートからなり、気体貫通路を有する立体構造体が含まれるようになる限り、その作成方法に特に限定はない。例えば、予め作成した本発明の光熱変換再生デシカントシートを用いてデシカント素子やデシカントローターを作成する方法や、シート状基材を用いて素子やローターを作成した後に、吸放湿性材料や光熱変換材料を含有させて、本発明の光熱変換再生デシカントシートを用いてデシカント素子やデシカントローターとする方法などが挙げられる。
【0092】
本発明の光熱変換再生デシカント空調システムは、吸放湿性材料による空気中の水分の吸着と空気中への水分の脱着を繰り返すことにより空調を行うデシカント空調システムにおいて、上述した本発明の光熱変換再生デシカント素子、あるいは、本発明の光熱変換再生デシカント素子よりなるローターを用い、かつ、該素子あるいは該ローターに対して、水分の吸着時には電磁波遮断を行い、水分の脱着時には電磁波照射を行うようにすることを基本的な構成とする空調システムである。
【0093】
すなわち、かかるシステムは、吸湿したデシカント素子あるいはデシカントローターに対して相対湿度の低い空気を通過させるとともに、太陽光などの電磁波を照射して光熱変換材料の光熱変換作用により熱エネルギー発生させて、デシカント素子あるいはデシカントローター上の吸放湿性材料を再生させるプロセスと、再生されたデシカント素子あるいはデシカントローターに対して、電磁波を遮断して光熱変換材料の光熱変換作用による熱エネルギーを発生させないようにして、相対湿度の高い空気を通過させて吸湿するプロセスを交互に繰り返すものである。
【0094】
かかる本発明の光熱変換再生デシカント空調システムにおいては、空気の除湿または加湿を行うことができるほか、吸湿により得られた乾燥空気を用いて水分の気化を行い、この際生じる気化熱を用いて冷却または冷房を行ったり、光熱変換再生の際に発生した熱を用いて加熱または暖房を行ったりするなどの機能を持たせることが可能である。以下に具体例を挙げて説明する。
【0095】
図1は本発明の光熱変換再生デシカントローターを利用して加湿を行えるようにした光熱変換再生デシカント空調システムを示す図である。空調空間202からの排出空気302aは顕熱交換装置102を通過することにより、戻り空気301bと顕熱交換する。顕熱交換された空気302bは、本発明の光熱変換再生デシカントローター101を通過する。この際、空気通過面は遮光板103により遮光されており、受光側に比較し温度が低いため、空気302bは除湿され、湿分はデシカントローター101に吸着される。湿分を吸着した部分はデシカントローター101の回転により受光側に移り、電磁波照射を受けることにより光熱変換材料が発熱してローターが加熱される。この作用によりローターに吸着していた湿分は脱着される。この際、ローターを通過している導入空気301aが脱着した湿分によって加湿される。その後上記の通り顕熱交換装置102で顕熱交換され、戻り空気301bとなって空調空間202に戻される。この一連の流れで、空調空間202の顕熱は顕熱交換により再び空調空間202へ戻り、また空調空間202の湿分、すなわち潜熱もデシカントローター101への吸着と脱着という潜熱交換により空調空間202へ戻るというサイクルとなっている。加えて導入空気301aが本来持っている湿分すなわち潜熱も同時に空調空間202へ導かれるため結果として空調空間202の加湿が行われる。
【0096】
図2は本発明の光熱変換再生デシカントローターを利用して除湿を行えるようにした光熱変換再生デシカント空調システムを示す図である。導入空気303aは、光熱変換再生デシカントローター101を通過する。この際、空気通過面は遮光板103により遮光されており、受光側に比較し温度が低いため、導入空気303a中の湿分を吸着除去すなわち除湿され、同時に吸着熱により温度が上昇する。次いで、顕熱交換装置102を通過することにより空調空間202から排出される空気304aと顕熱交換して空調空間202の温度に近い温度まで冷却され、低湿度空気303bとして空調空間202に導入される。一方、空調空間202からの排出空気304aは顕熱交換装置102により冷たい顕熱を低湿度空気303bに戻される。顕熱交換により加熱された空気304bは、デシカントローター101の受光側を通過する。この受光側にはローターの回転により導入空気303a中の湿分を吸着した部分が移動してきている。ここで電磁波照射を受けることにより光熱変換材料が発熱してローターが加熱され、この熱と加熱されて温度上昇し相対湿度の低下した空気304bにより、ローターに吸着されている湿分が脱着されて空気304bに移動し排出される。この一連の流れで、湿分の除去された空気が導入されるとともに空調空間202にあった湿分が排出され、結果として空調空間202が除湿される。
【0097】
図3は本発明の光熱変換再生デシカントローターを利用して除湿冷却または冷房を行えるようにした光熱変換再生デシカント空調システムを示す図である。導入空気303aは、光熱変換再生デシカントローター101を通過する。この際、空気通過面は遮光板101により遮光されており、受光側に比較し温度が低いため、導入空気303a中の湿分が吸着除去すなわち除湿され、同時に吸着熱により温度が上昇する。次いで、顕熱交換装置102を通過することにより空調空間202から排出される空気304aと顕熱交換して空調空間202の温度に近い温度まで冷却され、低湿度空気303bとなる。この後、低湿度空気303bは、気化冷却装置105を通ることにより、乾燥空気による気化冷却効果の結果、空調空間202の温度より低温の空気にまで冷却され空調空間202に導入される。一方、空調空間202からの排出空気304aは顕熱交換装置102により冷たい顕熱を低湿度空気303bに戻され、加熱された空気304bとなる。次に空気304bは、デシカントローター101の受光側を通過する。この受光側にはローターの回転により導入空気303a中の湿分を吸着した部分が移動してきている。ここで電磁波照射を受けることにより光熱変換材料が発熱してローターが加熱され、この熱と加熱されて温度上昇し相対湿度の低下した空気304bによりローターに吸着された湿分が脱着されて空気304bに移動し排出される。この一連の流れで、湿分を除去され、冷却された空気が導入されるとともに空調空間202にあった湿分と熱が排出され、結果として空調空間202が除湿冷却される。
【0098】
図4は本発明の光熱変換再生デシカントローターを利用して加熱または暖房と加湿を行えるようにした光熱変換再生デシカント空調システムを示す図である。空調空間202からの排出空気305aは光熱変換再生デシカントローター101を通過する。この際、空気通過面は遮光板103により遮光されており、受光側に比較し温度が低いため、排出空気305a中の湿分が吸着されるとともに吸着熱により温度が上昇する。この乾燥し温度の高くなった空気は顕熱交換装置102を通過し、導入空気306aと顕熱交換を行う。導入空気306aは顕熱交換により加熱され、ローター101の受光側を通過する。この受光側にはローターの回転により導入空気305a中の湿分を吸着した部分が移動してきている。ここで電磁波照射を受けることにより光熱変換材料が発熱してローターが加熱され、吸着されていた湿分が脱着する。この結果、導入空気306aは加熱加湿された空気306bとなって、空調空間202に導入される。この一連の流れで、空調空間202の潜熱すなわち湿分は、光熱変換再生デシカントローター101により潜熱交換されて再び空調空間202に戻るとともに、導入空気306aが元々持っていた湿分も空調空間202に導入される。さらに、顕熱については、空調空間202の顕熱に加えて、光熱変換再生デシカントローターへの湿分吸着の際に発生する吸着熱および光熱変換材料の発生する熱が、顕熱交換装置により導入空気に移される。これらの結果、空調空間202が加湿暖房される。
【0099】
図5および
図6は本発明の光熱変換再生デシカント素子を静置型として利用した除湿システムの図である。まずは
図5において導入空気307aは光熱変換再生デシカント素子106aを通過する。この際、デシカント素子106aは遮光板により遮光されており、受光側のデシカント素子106bに比較して温度が低いため、導入空気307aから湿分を吸着するとともに吸着熱を発生して、除湿加温された空気307bを生成する。この空気307bは顕熱交換装置102を通り、空調空間202からの排出空気308aと顕熱交換を行うことにより、室温に近い温度の乾燥した空気307cとして空調空間202に導入される。一方、排出空気308aは顕熱交換により加熱された空気308bとなってデシカント素子106bを通過する。この際デシカント素子106bは光を受け光熱変換により発熱しており、この熱と加熱された空気308bの熱によりデシカント素子106bから湿分が放出されて、デシカント素子106bは再生される。同時に、空気308bは放出された湿分とともに空気308cとして排気される。
【0100】
図6は、
図5において遮光板103をデシカント素子106a側からデシカント素子106b側に移動させ、かつ空気の流れを逆向きとした運転状態である。
図6の運転状態においても、
図5の運転状態の場合と同様に、導入空気がデシカント素子によって除湿されて空調空間202に導かれ、空調空間202からの排出空気がデシカント素子を再生して排気される。ただし、
図5で吸湿していたデシカント素子106aは
図6では再生され、
図5で再生されたデシカント素子106bは
図6では吸湿するというように吸湿と再生が入れ替わる。すなわち、
図5、6の除湿システムは、
図5の運転と
図6の運転を交互に繰り返すことによりバッチ方式で、除湿空気を空調空間に送り込むことができる除湿システムである。
【0101】
また、かかる静置型の光熱変換再生デシカント素子を用いたバッチ方式においても、前述の光熱変換再生デシカントローターを用いた方式と同様に加湿、加湿暖房、除湿冷却などの空調システムを構築することが可能である。
【0102】
上述した本発明の光熱変換再生デシカント空調システムにおいて光熱変換に用いられる電磁波としては、光熱変換材料が光熱変換機能を発揮することができる電磁波であれば利用することができる。かかる電磁波が太陽光あるいは太陽光由来のものである場合、自然エネルギー源であり環境にやさしく、また省エネルギーのシステムとなるため特に好ましい。
【実施例】
【0103】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基準で示す。まず、各特性の評価方法および評価結果の表記方法について説明する。
【0104】
(1)飽和吸湿率および飽和吸湿率差
吸放湿性材料試料約1.0gを熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥し重量を測定する(W1[g])。次にかかる試料を20℃×95%RHまたは20℃×45%RHに調整された恒温恒湿器に24時間放置し重量を測定する(W2[g])。これらの測定値から、各雰囲気下における飽和吸湿率を次式により算出する。
飽和吸湿率[%]={(W2−W1)/W1}×100
算出された数値から20℃×45%RHと20℃×95%RHとの飽和吸湿率差[パーセントポイント]を求める。
【0105】
(2)再生率
吸放湿性材料試料を20℃×95%RHに調整された恒温恒湿器に24時間放置した後、10mg前後の量を測り採り(W3[mg])、熱重量測定装置(株式会社島津製作所製DTG−60)にセットする。室温から昇温速度1℃/分として熱重量測定を行い、60℃時点での重量減少量を求める(W4[mg])。これらの値と上述の20℃×95%RHにおける飽和吸湿率[%]とから下記式により再生率を算出する。
再生率[%]=W4/[W3×{ 飽和吸湿率 /(100+ 飽和吸湿率 )]×100
【0106】
(3)吸湿性能維持率
上記(1)の飽和吸湿率の測定と同様にして吸放湿性材料の40℃×90%RHにおける飽和吸湿率を求める。次に、該吸放湿性材料に対して、20℃×50%RH下での24時間の放湿と40℃×90%RH下での24時間の吸湿を15サイクル繰り返した後、15サイクル目の40℃×90%RHにおける飽和吸湿率を求める。かかる繰り返し吸放湿後の飽和吸湿率を、繰り返し吸放湿前の飽和吸湿率で除して、100を乗じたものを高湿度雰囲気下での吸湿性能維持率とする。また、上記吸放湿サイクルにおいて、15サイクル目の20℃×50%RHにおける飽和吸湿率を1サイクル目の20℃×50%RHにおける飽和吸湿率で除して、100を乗じたものを低湿度雰囲気下での吸湿性能維持率とする。
【0107】
(4)塩型カルボキシル基量
十分乾燥した試料約1gを精秤し(W5[g])、これに200mLの水を加えた後、50℃に加温しながら1mol/Lの塩酸水溶液を添加してpH2とすることで、試料に含まれるカルボキシル基を全てH型カルボキシル基とする。次いで0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で常法に従って滴定曲線を求める。該滴定曲線からH型カルボキシル基に消費された水酸化ナトリウム水溶液消費量(V1[mL])を求め、次式によって試料中に含まれる全カルボキシル基量を算出する。
全カルボキシル基量[mmol/g]=0.1×V1/W5
別途、上述の全カルボキシル基量測定操作中の1mol/Lの塩酸水溶液添加によるpH2への調整をすることなく同様に滴定曲線を求め、試料中に含まれるH型カルボキシル基量を求める。これらの結果から次式により塩型カルボキシル基量を算出する。
塩型カルボキシル基量[mmol/g]= 全カルボキシル基量 − H型カルボキシル基量
【0108】
(5)吸放湿性材料A、B、Cの平均粒子径
レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製SALD−2000)を使用し、水を分散媒として測定した結果を体積基準で表し、そのメディアン径をもって平均粒子径とする。
【0109】
(6)デシカントシートの再生における光熱変換材料の効果
光熱変換材料を含有するシートと光熱変換材料を含有しないこと以外は該シートと同様のシートを20℃×90%RHに調整された恒温恒湿器に24時間放置した後、それぞれのシートについて重量を測定する(W6[g])。これらのシートを直ちに太陽光下(30℃×43%RH)に置き10分経過後、重量を測定する(W7[g])。これらの測定値から、次式により各シートの重量減少率を算出する。
重量減少率=(W6−W7)/W6
次に、算出された光熱変換材料を含有するシートの重量減少率を、光熱変換材料を含有しないシートの重量減少率で除して比率を算出する。かかる比率が大きいほどデシカントシートの再生における光熱変換材料の効果が大きく、少なくとも1よりも大きくなければ本発明の光熱変換再生デシカントシートとは言えない。また、デシカント素子やデシカントローターに加工した場合、立体形状により電磁波を受けにくくなる部分があることから、かかる比率が1.3以上、より好ましくは1.5以上であることが実用上望ましい。逆にかかる比率が1以下となる場合には光熱変換材料の効果がほとんど得られていないと言える。なお、光熱変換材料を含有しないシートは当該光熱変換材料を含有するシートの作成方法に対して、光熱変換材料については添加せず、吸放湿性材料やバインダーについては単位面積当たりの量が同じになるように付着量を調整して作成したものである。
【0110】
(7)デシカントシートの飽和吸湿量差
10cm×10cmのデシカントシート試料を熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥し重量を測定する(W1[g])。次にかかる試料を20℃×45%RHまたは20℃×95%RHに調整された恒温恒湿器に24時間放置し重量を測定する(W2[g])。これらの測定値から、各雰囲気下における飽和吸湿量を次式により算出する。
飽和吸湿量[g/m
2]=(W2−W1)/0.01
算出された数値から20℃×45%RHと20℃×95%RHとの飽和吸湿量差を求める。
【0111】
[吸放湿性材料の製造例1]
4.4mmol/gのスルホン酸基および架橋構造を有する有機高分子よりなるイオン交換樹脂(オルガノ株式会社製アンバーライトIR120B)を乾燥し、次に気流粉砕機により粉砕することにより吸放湿性材料Aを得た。吸放湿性材料Aの特性を評価した結果を表1に示す。
【0112】
[吸放湿性材料の製造例2]
反応槽にラウリル硫酸ナトリウム1部、過硫酸アンモニウム3部および水350部を仕込む。次にこの反応槽を温度70℃まで昇温し、70℃に保ち攪拌しながら反応槽内にメチルアクリレート35部、ブチルアクリレート45部、ジビニルベンゼン15部、p−スチレンスルホン酸ナトリウム8部および水50部を滴下して重合を開始する。これら単量体類の滴下は30分間で終了する様に滴下速度を調整する。滴下終了後2時間同一条件に保って重合を行う。かくして得られた重合体エマルジョンは、固形分21%、平均粒子径は0.03μmであった。得られた重合体エマルジョン480部に、水酸化カリウム45部を水475部に溶解した溶液を添加し、95℃で48時間さらにリフラックス条件で8時間加水分解反応を行った。加水分解後の混合溶液は、セルロース半透膜を用いて流水中で透析・脱塩することにより、水分散体状の吸放湿性材料Bを得た。得られた水分散体の固形分は12%であった。吸放湿性材料Bの特性を評価した結果を表1に示す。
【0113】
[吸放湿性材料の製造例3]
アクリロニトリル490部、p−スチレンスルホン酸ソーダ16部及び水1181部を2L容量のオートクレイブ内に仕込み、更に重合開始剤としてジ−tert−ブチルパーオキサイドを単量体全量に対して0.5%添加した後、密閉し、撹拌しながら150℃で23分間重合反応させた。反応終了後、撹拌を継続しながら約90℃まで冷却し、平均粒子径0.2μmの微粒子の水分散体を得た。かかる水分散体に、浴中濃度が35%となるようにヒドラジンを加え、102℃で2.5時間架橋処理を行った。続いて浴中濃度が10%となるように水酸化ナトリウムを加え、102℃で5時間加水分解処理を行った後、セルロース半透膜を用いて流水中で透析・脱塩することにより、水分散体状の吸放湿性材料Cを得た。得られた水分散体の固形分は15%であった。吸放湿性材料Cの特性を評価した結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物である吸放湿性材料BおよびCは飽和吸湿率、飽和吸湿率差、再生率、吸放湿繰り返し後の再生率のいずれも優れており、本発明の吸放湿性材料として特に適したものである。これに対して、カルボキシル基ではなくスルホン酸基を有する有機高分子である吸放湿性材料AとA型シリカゲルは、飽和吸湿率、飽和吸湿率差が比較的小さいものである。また、B型シリカゲルは、吸湿性能維持率が低いものである。
【0116】
[実施例1]
80部の吸放湿性材料A、20部のカーボンブラック(三菱化学株式会社製 三菱カーボンブラック#20、平均一次粒子径50nm)およびバインダーとして47.5部のアクリル系樹脂エマルジョン(固形分40%)を混合する。得られた混合物を30g/m
2のガラス繊維紙(ガラス繊維70%、ビニロン20%、アクリルバインダー10%を抄紙したもの)に、該混合物の固形分の付着量が50g/m
2となるように塗布し、乾燥させる。得られるシートはバインダーを連続相として吸放湿性材料Bとカーボンブラックが分散している構造を有するものである。該シートの評価結果を表2に示す。
【0117】
[実施例2]
667部の水分散体状の吸放湿性材料B(固形分12%)、20部のカーボンブラック(三菱化学株式会社製 三菱カーボンブラック#20)およびバインダーとして13.3部のアクリル系樹脂エマルジョン(固形分40%)を混合する。得られる混合物を30g/m
2のガラス繊維紙(ガラス繊維70%、ビニロン20%、アクリルバインダー10%を抄紙したもの)に、該混合物の固形分の付着量が50g/m
2となるように含浸させ、乾燥させる。得られるシートは吸放湿性材料Bとバインダーを連続相としてカーボンブラックが分散している構造を有するものである。該シートの特性を表2に示す。
【0118】
[実施例3]
実施例2における水分散体状の吸放湿性材料Bの代わりに、水分散体状の吸放湿性材料C(固形分15%)を533部用いること以外は、実施例2と同様にしてシートを作成する。得られるシートは吸放湿性材料Cとバインダーを連続相としてカーボンブラックが分散している構造を有するものである。該シートの特性を表2に示す。
【0119】
[実施例4]
実施例1における吸放湿性材料Aの代わりに、表1に示すA型シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製サイリシア730、平均粒子径3μm)を用いること以外は、実施例1と同様にしてシートを作成する。得られるシートはバインダーを連続相としてA型シリカゲルとカーボンブラックが分散している構造を有するものである。該シートの特性を表2に示す。
【0120】
[実施例5]
実施例1における吸放湿性材料Aの代わりに、表1に示すB型シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製サイリシア430、平均粒子径2.5μm)を用いること以外は、実施例1と同様にしてシートを作成する。得られるシートはバインダーを連続相としてB型シリカゲルとカーボンブラックが分散している構造を有するものである。該シートの特性を表2に示す。
【0121】
[実施例6]
実施例2におけるカーボンブラックの代わりに黒色酸化鉄粒子(チタン工業株式会社製BL−100、平均粒子径0.4μm)を用いること以外は、実施例2と同様にしてシートを作成する。得られるシートは吸放湿性材料Bとバインダーを連続相として黒色酸化鉄粒子が分散している構造を有するものである。該シートの特性を表2に示す。
【0122】
[実施例7]
実施例2において、水分散体状の吸放湿性材料Bを750部、カーボンブラックを10部用いること以外は、実施例2と同様にしてシートを作成する。得られるシートは吸放湿性材料Bとバインダーを連続相としてカーボンブラックが分散している構造を有するものである。該シートの特性を表2に示す。
【0123】
[実施例8]
実施例2において、水分散体状の吸放湿性材料Bを825部、カーボンブラックを1部用いること以外は、実施例2と同様にしてシートを作成したする。得られるシートは吸放湿性材料Bとバインダーを連続相としてカーボンブラックが分散している構造を有するものである。得られた該シートの評価結果特性を表2に示す。
【0124】
[実施例9]
実施例2において、水分散体状の吸放湿性材料Bを433部、カーボンブラックを48部用いること以外は、実施例2と同様にしてシートを作成する。得られたシートはバインダーを連続相として吸放湿性材料Bとカーボンブラックが分散している構造を有するものである。該シートの特性を表2に示す。
【0125】
[実施例10]
667部の水分散体状の吸放湿性材料B(固形分12%)およびバインダーとして10部のアクリル系樹脂エマルジョン(固形分40%)を混合する。得られる混合物を30g/m
2のガラス繊維紙(ガラス繊維70%、ビニロン20%、アクリルバインダー10%を抄紙したもの)に、該混合物の固形分の付着量が40g/m
2となるように含浸させ、乾燥させる。次に、20部のカーボンブラック(三菱化学株式会社製 三菱カーボンブラック#20)およびバインダーとして3.3部のアクリル系樹脂エマルジョン(固形分40%)を混合し、これを上記した吸放湿性物質Bを含浸させたガラス繊維紙上に10g/m
2となるように塗布し、乾燥させる。得られるシートは、バインダーを連続相として吸放湿性材料が分散している層上にバインダーを連続相として光熱変換材料が分散している層が積層している構造を有するものである。該シートの特性を表2に示す。
【0126】
[比較例1]
実施例2におけるカーボンブラックの代わりに、ガラスビーズ(ユニチカ株式会社製UB−02NH、粒径0〜45μm)を用いること以外は実施例2と同様にしてシートを作成する。得られるシートはバインダーを連続相として吸放湿性材料Bとガラスビーズが分散した構造を有するものである。得られたシートの評価結果を表2に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
実施例1〜10のデシカントシートはいずれも太陽光による再生において光熱変換材料の効果が得られるものであった。中でも、再生率の高い吸放湿性材料BあるいはCを用いたデシカントシートにおいては、重量減少率の比率が高く、光熱変換材料により変換された熱エネルギーを再生熱源としてより効率よく利用できている。一方、無機系の吸放湿性材料であるシリカゲルAを用いた実施例4のデシカントシートでは、有機高分子系収着剤を用いたデシカントシートほどには光熱変換材料の効果が得られなかった。これは、A型シリカゲルの再生温度が有機高分子系収着剤よりも高いことによると考えられる。B型シリカゲルを用いた実施例5では吸放湿性材料BやCと同様に光熱変換材料により変換された熱エネルギーを再生熱源としてより効率よく利用できているが、上述のようにB型シリカゲルの吸湿性能維持率は低いため、デシカントローター用途などには吸放湿性材料BやCのほうが適すると考えられる。実施例9では、光熱変換材料の使用割合が多いため重量減少率の比率が大きいが、その分吸放湿性材料が少なく飽和吸湿量差が小さくなっている。また、比較例1においては光熱変換材料の代わりに添加したガラスビーズが光を反射するため、無添加のシートよりも重量減少率の比率が小さくなったものと考えられる。