【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0056】
なお、実施例および比較例における生成物の含有量は、以下の条件で測定、分析し、算出した。
【0057】
装置:島津(株)製 LC−10システム
カラム:YMC-Pack ODS-A312(6.0φ×150mmL)
移動相:アセトニトリル/蒸留水=50/50
流 量:1.0ml/min.
検出器:UV 254nm
溶出時間:4,4’ -ジアリルオキシジフェニルスルホン=30分
ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン=9分
【0058】
ただし、実施例3については、以下のとおりに条件を変更した。
【0059】
移動相:アセトニトリル/蒸留水=80/20
検出器:UV 280nm(転位反応時)
溶出時間:2,2-ビス(4-アリルオキシフェニル)プロパン=14分
2,2’ -ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン=9分
【0060】
また、エチレングリコールモノブチルエーテルについては、以下の条件で測定、分析し、算出した。
【0061】
装置:島津(株)製 GC−2010
カラム:TC−WAX (0.25mmφ×30m 膜厚0.25μm)
キャリアガス:窒素 30ml/min
カラム温度:90℃〜250℃ 10℃/min
検出器:FID 250℃
溶出時間:エチレングリコールモノブチルエーテル=9分
【0062】
実施例1
攪拌機を備えたオートクレーブに、エチレングリコールモノブチルエーテル3800gおよび水500gを入れて混合し、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下、ビスフェノールS)1000g(4.0モル)、水酸化ナトリウム288g(7.2モル)および炭酸ナトリウム170g(1.6モル)を順次加えた。次いで、アリルクロライド670g(8.8モル)を加えて密閉状態とし、95〜100℃で5時間加熱攪拌して反応させた。
【0063】
反応終了後、圧抜きし、さらに反応液を加熱して、未反応のアリルクロライドなどを溜去した。当該溜出液は、上層と下層に分液した。上層(回収溶媒A)には、165gのエチレングリコールモノブチルエーテルが含まれていた。
【0064】
上記溜去後の釜残反応液を100℃まで冷却した後、水1300gを投入し、攪拌して副生無機塩を溶解させ、分液して下層(水層)を抜き出した。
【0065】
下層は1900gであり、主成分として無機塩類(塩化ナトリウム)を約30重量%含有し、エチレングリコールモノブチルエーテルを0.3重量%含有する水溶液であった。当該下層から、4,4’−ジアリルオキシジフェニルスルホン(以下、ビスフェノールSジアリルエーテル)は検出されなかった。
【0066】
上層(有機層)は、ビスフェノールSジアリルエーテルのエチレングリコールモノブチルエーテル溶液で、水分が約5%、Na含量が約1000ppmであった。また、HPLC組成比(面積百分率)は、ビスフェノールSジアリルエーテル97.1%、ビスフェノールS 0.2%、4−ヒドロキシフェニル−4’−アリルオキシフェニルスルホン(以下、ビスフェノールSモノアリルエーテル)0.7%であった。
【0067】
当該上層(有機層)に、35%塩酸19g(0.2mol)を加え、1時間攪拌した後、常圧下で蒸留し、393gの溜出液を除去した。この溜出液(回収溶媒B)は、45gのエチレングリコールモノブチルエーテルを含有していた。
【0068】
前記蒸留後の釜残反応液を熱濾過し、不溶分を除去した。熱濾過後の反応液(ろ液)中には、Na分が30ppm含まれており、ビスフェノールSジアリルエーテルの含有量から算出した収率は97%であった。
【0069】
前記熱濾過後の反応液(ろ液)と、N,N−ジメチルアニリン0.13g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.13gを、オートクレーブに仕込み、密閉状態(0.2MPaG)で205〜215℃にて7時間、加熱転位反応を行った。加熱転位反応後の反応液のHPLC組成比(面積百分率)は、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン92.0%、モノアリル体2.9%、モノ転位体0.9%、その他4.2%であった。
【0070】
この反応液における溶媒であるエチレングリコールモノブチルエーテルを、常圧および減圧下で溜去することにより冷却し、3420gを回収した。当該回収した溜出液(回収溶媒C)は、GC組成比(面積百分率)99.5%がエチレングリコールモノブチルエーテルであった。
【0071】
上記溜去後の釜残反応液が100℃程度になったところで、当該反応液に水3500gおよび13重量%水酸化ナトリウム水溶液1766gを添加して攪拌し、常圧下にて加熱蒸留して、残存するエチレングリコールモノブチルエーテルを水との共沸により取り除いた。共沸による溜出液は1300g(回収溶媒D)であり、170gのエチレングリコールモノブチルエーテルを含有していた。
【0072】
前記蒸留後の釜残反応液を四ツ口フラスコに移し、さらに水を添加した後、活性炭処理を行い、25重量%硫酸を用いて目的物を酸析した。得られた結晶を濾別し、水洗した後、乾燥して、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン精製品1114g(ビスフェノールSに対する収率:84.4%)を得た。得られたビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン精製品のHPLC組成比(面積百分率)は、97.3%、融点は154〜155℃であった。
【0073】
実施例2
実施例1における回収溶媒A〜Cの全量と、回収溶媒D182gとの混合物に、145gのエチレングリコールモノブチルエーテルを追加し、ビスフェノールS、水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを実施例1と同様に順次加え、同様に反応および後処理を行ったところ、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン精製品1117g(ビスフェノールSに対する収率:84.5%)を得た。得られたビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン精製品のHPLC組成比(面積百分率)は、97.1%、融点は154〜155℃であった。
【0074】
実施例3
攪拌機を備えたオートクレーブに、エチレングリコールモノブチルエーテル356gおよび水19gを入れて混合し、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールA)150g(0.657モル)、水酸化ナトリウム53g(1.325モル)および炭酸ナトリウム14g(0.132モル)を順次加えた。次いで、アリルクロライド121g(1.581モル)を加えて密閉状態とし、100〜105℃で8時間加熱攪拌して反応させた。
【0075】
反応終了後、実施例1と同様にアリルクロライドを溜去し、水分液を行い、中和後、熱濾過処理を行い、ビスフェノールAジアリルエーテルのエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を得た。この反応液はNa含量が約10ppmであった。また、HPLC組成比(面積百分率)は、2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)プロパン95.0%、ビスフェノールA 0.2%、4−ヒドロキシフェニル−4’−アリルオキシフェニルプロパン(以下、ビスフェノールAモノアリルエーテル)2.2%であった。ビスフェノールAジアリルエーテルの含有量から算出した収率は95%であった。
【0076】
前記熱濾過後の反応液(ろ液)をオートクレーブに仕込み、密閉状態(0.1MPaG)で195〜200℃にて7時間、加熱転位反応を行った。その後、エチレングリコールモノブチルエーテルを、150℃減圧下で溜去することにより、2,2’−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ジアリル−ビスフェノールA)を166g(ビスフェノールAに対する収率:82%)得た。得られたジアリル−ビスフェノールAのHPLC組成比(面積百分率)は、92.0%であった。
【0077】
比較例1
ビスフェノールSのアリル化を行い、得られた反応液(釜残)について、分液して下層(水層)を抜き出すところまでは、実施例1と同様に行った。
【0078】
上層(有機層)を熱濾過し、不溶分を除去した。熱濾過後の反応液(ろ液)中には、Na分が1000ppm含まれていた。この反応液(ろ液)を冷却、晶析して濾過・洗浄した後に乾燥し、ビスフェノールSジアリルエーテル1200gを粉体で得た。収率は90.9%であった。
【0079】
得られたビスフェノールSジアリルエーテル1200gと、ダイアナフレシアW-8(パラフィンオイル)800g、灯油800g、N,N−ジメチルアニリン0.13g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.13gおよび98%硫酸0.04gを、フラスコに仕込み、窒素気流下で205〜215℃にて常圧で7時間加熱転位反応を行った。加熱転位反応後の反応物のHPLC組成比(面積百分率)は、ジ転位体93.5%、モノアリル体0.8%、モノ転位体1.1%であった。
【0080】
この反応物を冷却して、13重量%水酸化ナトリウム水溶液1766gを添加して攪拌し、静置分離したのち、下層のアルカリ水溶液を四ツ口フラスコに仕込み、さらに水を添加した後、活性炭処理を行い、25重量%硫酸を用いて目的物を酸析した。得られた結晶を濾別し、水を用いて洗浄した後、乾燥して、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン精製品1045g(ビスフェノールSに対する収率:79.2%)を得た。得られたビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン精製品のHPLC組成比(面積百分率)は、97.5%であった。
【0081】
比較例2[特許文献2における実施例2の追試]
四つ口フラスコに、N,N−ジメチルホルムアミド4000g、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下、ビスフェノールS)1000g(4.0モル)、炭酸カリウム608g(4.4モル)を順次加え、混合した。次いで、p-トルエンスルホン酸アリルエステル1780g(8.4モル)を加えて、110〜120℃で8時間加熱攪拌して反応させた。
【0082】
この反応液のHPLC組成比(面積百分率)は、ビスフェノールSジアリルエーテル98.5%、ビスフェノールS 0.1%、4−ヒドロキシフェニル−4’−アリルオキシフェニルスルホン(ビスフェノールSモノアリルエーテル)0.5%であった。
【0083】
反応終了後、さらに反応液を加熱し、未反応のアリルクロライドや溶媒のN,N−ジメチルホルムアミドなどを溜去しながら、200℃まで昇温した。その後、200〜220℃で6時間加熱転位反応を行った。
【0084】
加熱転位反応後の反応液のHPLC組成比(面積百分率)は、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン35.3%、モノアリル体8.6%、モノ転位体3.5%、その他成分が52.6%であった。
【0085】
この反応液に1,2,4−トリクロロベンゼン2400gを加え、30℃まで冷却したが、反応液から目的物は結晶化せず粒状の固体が析出した。
【0086】
比較例3[比較例1の転位反応に用いた溶媒でのアリル化反応]
攪拌機を備えたオートクレーブに、ダイアナフレシアW-8(パラフィンオイル)1900g、白灯油1900g、水500g、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下、ビスフェノールS)1000g(4.0モル)、水酸化ナトリウム288g(7.2モル)および炭酸ナトリウム170g(1.6モル)を順次加え混合し、次いで、相間移動触媒としてテトラブチルアンモニウムクロライド50g(0.18モル)、アリルクロライド670g(8.8モル)を加えて密閉状態とし、95〜100℃で5時間加熱攪拌して反応させた。
【0087】
反応終了後、圧抜きし、さらに反応液を加熱して、未反応のアリルクロライドなどを溜去した。
【0088】
上記溜去後の反応液を100℃まで冷却した後、水1300gを投入し、攪拌して副生無機塩を溶解させたところ、目的物は粒状となり、分液下層(水層)に沈降していた。
【0089】
そのため、上記反応液を分液後、分液下層を濾過し、ビスフェノールSジアリルエーテル反応物を得た。該反応物のHPLC組成比(面積百分率)は、ビスフェノールSジアリルエーテル73.9%、ビスフェノールS 3.4%、4−ヒドロキシフェニル−4’−アリルオキシフェニルスルホン(ビスフェノールSモノアリルエーテル)10.2%、その他成分が12.4%と極めて低い純度であったため、後工程を中止した。