(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
曲面は、隅部である取付座の底壁面と側壁面との間に、例えば、ボールエンドミルなどを用いて形成される。その場合、取付座の隅部の曲面を加工するためのボールエンドミルとしては、所望の曲面の断面の曲率半径の2倍より小さな工具径のものが必要とされる。しかしながら、ボールエンドミルの工具径が小さいほど、切削条件における制約が多くなる。すなわち、工具径が相対的に小さなボールエンドミルは、その切れ刃が相対的に短いので切り込み量を多く取れない。このため、加工に時間がかかり、加工効率がよくない。また、工具径が相対的に小さなボールエンドミルは、工具径が相対的に大きなボールエンドミルに比べて、折れやすく、送りを大きくできないため、加工効率がよくない。結果として、取付座の加工コストがかかり、切削工具の価格が高くなってしまうという問題があった。
【0007】
一方、加工コストを抑えるべく、相対的に大きな工具径のボールエンドミルでそのような曲面を加工するということも考えられる。しかしながら、工具径の大きなボールエンドミルでは、加工できる曲面の曲率半径も大きくなる。曲面の曲率半径が大きくなると、取付座の隅部の応力集中を緩和する上で必要とされる以上に曲面が広くなり、曲面にスペースを取られた分だけ、逆に取付座の底壁面や側壁面が狭くなる。切削インサートは、取付座の底壁面と側壁面とによる支持によって、切削工具に固定される。したがって、底壁面および側壁面が狭くなるほど、それだけ切削インサートと接触する取付座の支持面積が少なくなり、切削インサートの固定性能が低下する。特に、曲面が広くなると、曲面につながる側壁面の面積が狭くなり、切削インサートの側面に対する取付座の側壁面の支持面積が少なくなる。そうすると、取付座による切削インサートの支持性能が弱まり、切削時の負荷による切削インサートの回動を抑制する能力が低下する。
【0008】
本発明の目的は、取付座の隅部の応力集中を緩和するために、その隅部に所望の大きさの曲面を設けるとともに、取付座における切削インサートを支持するための壁面を広く確保し、切削インサートのホールド性能を高めることができる工具ボデー、および切削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る切削ボデーは、切削インサートを装着するための取付座を有する切削工具の工具ボデーであって、前記取付座は、該工具ボデーの外面につながるように延在する底壁面と、該外面に開くように延在する第1側壁面であって、該第1側壁面は、該外面側に位置する外側端部と該外側端部に対して反対側の内側端部とを有し、該底壁面から屹立するように延在する、第1側壁面と、該底壁面と該第1側壁面との間に位置し、両者を接続するように延在するとともに、前記第1側壁面に沿って延びる第1の面部分と、前記第1側壁面の前記内側端部側に配置されて前記第1側壁面に交差するように延在する第2の面部分とを備え、前記第1の面部分は、前記底壁面と前記第1側壁面との少なくとも一方から凹む方向に湾曲する第1の曲面を有し、前記第1の面部分における前記第1側壁面の前記外側端部に沿う開放端を、前記第1側壁面に略平行にかつ前記底壁面に略平行に該工具ボデーの外方からみたとき、前記第1の
曲面の少なくとも一部は第1曲率半径を有し、前記第2の面部分は
、凹曲面状の第2の曲面を有し、該第2の曲面の少なくとも一部は前記底壁面に略平行な断面において第2曲率半径を有し、該第2曲率半径は、前記第1曲率半径R1よりも小さいものである。
【0010】
本発明は、本発明の上記工具ボデーを有する切削工具にも存する。
【0011】
本発明の一態様に係る工具ボデーおよび切削工具では、取付座の底壁面と側壁面との間の第1の面部分の曲率半径よりも、第2の面部分の第2の面部分の曲率半径は小さくされる。したがって、相対的に大きな力が作用する第1の面部分においてその第1曲率半径を適切な大きさに確保し、その部分での応力集中を好適に緩和できると共に、第2の面部分においてはその曲率半径を相対的に小さくして取付座の壁面、特に側壁面の広さを広く確保できる。したがって、本発明の一態様によれば、工具ボデーの取付座におけるクラックなどの不具合の発生をよりしっかりと抑制できると共に、その取付座での切削インサートのホールド性能を十分に高めることができる。
【0012】
好ましくは、第2の面部分は、つなぎ壁面を介して第1側壁面と接続する主壁面を有する。第2の曲面は、つなぎ壁面と主壁面との接続部分に延在するとよい。さらに、取付座は、第2側壁面をさらに有するとよい。第2側壁面は工具ボデーの外面側に位置する外側端部と該外側端部に対して反対側の内側端部とを有し、該外側端部から該内側端部にわたって該底壁面から屹立するように延在し、第2の面部分を間に介して第1側壁面と隣り合うとよい。そして、第2の面部分は、主壁面と第2側壁面とを接続する第2つなぎ面をさらに有することができる。この場合、第2の面部分と主壁面との接続部分に第3の曲面が延在するとよい。第3の曲面の少なくとも一部は底壁面に略平行な断面において第3曲率半径を有し、第3曲率半径は、第1曲率半径よりも小さいとよい。好ましくは、第2曲率半径と第3曲率半径は略等しい。例えば、第1曲率半径は0.30mm以上である。また、例えば、第2曲率半径は、0.30mm未満である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を適用した切削工具の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における切削工具の工具ボデーの斜視図である。
図2は、
図1に示す本発明の実施形態における切削工具の工具ボデーの取付座を含む工具ボデーの先端部の斜視図である。
図3は、
図2の取付座に切削インサートを装着するところを模式的に表した斜視図である。
図4は、本発明の実施形態における、工具ボデーに切削インサートが装着された状態の切削工具の斜視図である。
図5は、
図1の取付座を別方向からみた斜視図である。
図6Aは、切削工具の工具ボデーの別方向での斜視図である。
図6Bは、
図6AにおけるVIB−VIB線での工具ボデーの断面図で、切削インサートが装着された状態を二点鎖線で模式的に表す図である。
図7は、
図1の取付座を底壁面および第1側壁面に平行な方向からみた斜視図である。
図8Aは、切削工具の工具ボデーの別方向での斜視図である。
図8Bは、
図8Aの取付座を底壁面に略平行に切断した断面の拡大図である。
図9Aは、切削工具の別方向での斜視図である。
図9Bは、
図9Aの切削インサートが装着された取付座を底壁面に略平行に切断した断面の拡大図である。
【0016】
なお、ここでは、本実施形態を述べる上で、「上方」、「下方」、「時計まわり方向」などの向きを示す用語を便宜的に用いるが、これら用語は空間内の絶対的な位置関係を限定することを企図しないものである。
【0017】
図に示すように、この実施形態の切削工具1は、肩削り加工のできるエンドミルである。切削工具1の工具径は、約40mmであるが、これに限定されない。切削工具1は、切削インサート2が着脱自在に装着される工具ボデー3を備える。工具ボデー3は、
図1に示す軸線A方向を長手方向とし、軸線Aに沿って先端部3aから後端部3bに延びる。工具ボデー3は、軸線Aを中心として、その先端部3aの周囲に、切削インサート2の取付座4を均等に3箇所配置している。切削インサート2が、3箇所の取付座4のそれぞれに装着されて、切削工具1は使用される。本実施形態における切削工具1は、3枚刃のエンドミルであるが、本発明はこれに限らず、1枚刃のもの、もしくは2枚刃などの複数の切れ刃を備えるものにも適用することができる。工具ボデー3の後端部3b側のシャンクは、アーバなどの保持具(ホルダ)を介して工作機械(不図示)に取り付けられる。軸線Aは、切削工具1の回転中心軸になることができるが、切削工具1が被加工物に対して回転しても、あるいは被加工物が切削工具1に対して回転してもよい。
【0018】
以下、便宜上、軸線Aに沿って、工具ボデー3の先端部側を下方と称するが、切削工具1の使用形態は、工具ボデー3の先端部を下方にして使用するものに限定されない。すなわち、本発明における切削工具は、工具ボデー3の先端部側が上方となるものなど、他のいかなる向きでの使用も想定されるものである。
【0019】
図3および
図4に示すように、工具ボデー3に装着される切削インサート2は、各々が略三角形状の2つの対向する端面である上面および下面と、それらの間に延在する周側面とを有し、板状の外形を持つポジティブタイプのものである。ただし、2つの端面のうちいずれが上面であってもよく、便宜上、
図3に表されている一方を上面とする。そして、詳細は後述するが、切削インサート21は、上面の略三角形の1つの頂点部分のコーナ切れ刃201と、コーナ切れ刃201の両側のそれぞれにつながる主切れ刃202、さらい刃203が1つの切れ刃部分として使用可能なように構成されている。したがって、
図4に示すように、切削インサート2は、工具ボデー3装着時に、使用する切れ刃部分が工具ボデー3の先端および外周から突き出るように、工具ボデー3に固定される。なお、本発明に装着される切削インサート2は、ポジティブタイプに限らず、他の種々の形状(例えばネガティブタイプ、ネガティブタイプとポジティブタイプの組み合わせ)を有してもよい。
【0020】
一方、
図2および
図5に示すように、工具ボデー3に設けられた、切削インサート2を受け入れる各取付座4は、底壁面5と、底壁面5に対して交差する方向に延びる3つの側壁面6とを有する。さらに、各取付座4は、第1の面部分8と、第2の面部分9とを有する。
【0021】
図1から
図4に示すように、取付座4は、工具ボデー3の外周側から軸線A側に向かって部分的にくりぬかれた空間31内に設けられており、取付座4は、切削インサート2が収まる程度のくぼみとなっている。このくぼみは、切削インサート2の底壁面5に略平行な方向から見て底壁面5が最も低く、この底壁面5と、底壁面5から屹立するように延びてそれを部分的に取り囲む側壁面6とによって概ね形成されている。切削インサート2の上下面の各々が略三角形状であるので取付座4の底壁面5は略三角形状である。底壁面5の略三角形状の一頂点部501は工具ボデー3の外周側かつ先端部側で、切削時に被加工物に対向するように位置し、他の一頂点部502が取付座4のうちで軸線A側に位置する第2の面部分9に向かい、残りの一頂点部503が工具ボデー3の外周側かつ後端部側に位置する。そして、底壁面5を部分的に取り囲む側壁面6(61、62、63)は、略三角形状の底壁面5の対応する辺部に対して設けられている。2つの隣り合う頂点部502、501を結ぶ底壁面5の辺部に関して第1側壁面61が位置付けられ、2つの隣り合う頂点部503、502を結ぶ底壁面5の辺部に沿って、第2および第3側壁面62、63が設けられている。2つの頂点部501、503を結ぶ底壁面5の辺部は、工具ボデー3の外周面(第1外面)3cに直接的につながり、そこには側壁面はない。さらに、底壁面5の頂点部501に沿った部分は工具ボデー3の先端面(第2外面)3dに直接的につながり、そこには側壁面はない。したがって、取付座4に切削インサート2が取り付けられたとき、切削インサート2は工具ボデー3の外周側および先端側に露出するようになっている。以下、この2つの隣り合う頂点部501、503を結ぶ辺部から一つの頂点部501付近までを総称して、「開放側」と称する。また、第1側壁面61は工具ボデーの開放側である外周面側に開くように延在している。第1側壁面61は工具ボデーの外周面に交差するように延在する工具ボデーの先端面(第2外面)3d側に位置付けられていて、特に第2外面に実質的につながるように延在する。各側壁面6(61、62、63)は、底壁面5から直接延びるのではなく、第1の面部分8を間に介して、略一定の角度で角度付けられて配置されている。このように、取付座4は、底壁面5と側壁面6とによって概ね形成される凹部となっており、この凹部に切削インサート2が収まるように構成されている。各側壁面6(61、62、63)の底壁面5に対する角度は、できる限り切削インサート2と側壁面6との接触面積が多くなり、かつ、切削インサート2の着脱で支障とならない範囲に設定されている。ポジティブタイプの切削インサート2が装着される本実施形態の工具ボデー3では、切削インサート2の側面の傾斜角度に合わせた角度で、側壁面6が底壁面5に対して傾いて配置されている。なお、ここでは3つの側壁面6と説明したが、そのうちの2つの第2および第3側壁面62、63は1つの壁面とみなすこともでき、この場合その中間の凹みにより2つの部分に実質的に分けられているとみなすこともできる。このように中間の凹みにより2つの部分に分けると、側壁面の両端が確実に切削インサート2の周側面4と接触し、固定能力が安定的に向上する。
図3に示すように、工具ボデー3をその外周側、すなわち開放側から見た時、取付座4部分のもっとも奥(軸線Aに向かう方向におけるもっとも軸線A側)に位置する一頂点部502に接続する第2の面部分9に向かって、切削インサート2は、三角形の一つの頂点部(コーナ部)23が位置するように、設置される。そして、第2の面部分9をはさんで、2つの第1および第2側壁面61、62が取付座4に形成されている。
図3では、これら側壁面61、62は、切削インサート2の表側に位置する一方の端面である上面28の1つのコーナ部23を挟んで隣り合う2つの辺部に沿う側面25、26に対向するように、配置されている。側壁面6は、取付座4の開放側から見て、一方側(後端部側)に、第3および第2側壁面63、62が位置し、他方側(先端部側)に第1側壁面61が位置するように、構成されている。そして、第2側壁面62と第1側壁面61との間には、第2の面部分9が位置する。第3側壁面63と第2側壁面62との間には、凹部64が位置し、これらのうちで切削工具1の外側(開放側)に位置する側壁面63の端は、工具ボデー3の後端部3b側に外方向に広がる開放端部65となっている。この側壁面6の底壁面5からの高さは、装着される切削インサート2の厚みに応じて決定される。
【0022】
上述したように、取付座4の底壁面5は、装着される切削インサート2の形に応じた形となっている。本実施形態では、切削インサート2は略三角形の上面28および下面29、そして上面28と下面29とを結ぶ側面25、26、27を備える外形をしている。
【0023】
切削インサート2は、中央部に、その上面28から下面29を貫通するねじ固定用の貫通穴21が設けられている。一方、取付座4の底壁面5には、切削インサート2の装着時に、貫通穴21と対峙する位置にねじ固定用のねじ穴51が設けられている。したがって、切削インサート2は、取付座4の底壁面5に載せられ、締め付けねじが貫通穴21に挿通され、ねじの頭部が切削インサート2に当接するまでねじ穴51に締め込まれる。このねじ止めによって、切削インサート2は取付座4に固定される。ここで、側壁面61、62、63が、切削インサート2の側面25,26に対向して当接するので、切削インサート2が貫通穴21の軸線周りに回転することができず、結果として、切削インサート2は、ねじ固定だけでは固定が不十分な回転方向については、側壁面6によって支持されて固定されることとなる。
【0024】
本実施形態の切削インサート2は、上述したように略三角形の端面を有して板状である。したがって、切削インサート2の上面28は、3つの頂点部(コーナ部)22、23、24を有しており、上面28と各側面25、26、27との交差稜線部に切れ刃が形成されている。
図3に示すように、切れ刃は、各頂点部22、23、24に設けられたコーナ切れ刃201と、各頂点部を結ぶ交差稜線に位置し、コーナ切れ刃201を間に挟んでそこから延在する主切れ刃202とさらい刃203とから構成されている。切れ刃が、上面28との交差稜線部だけでなく、下面29と各側面25、26、27との交差稜線部にも形成されるように、切削インサートは修正されてもよい。この場合の下面側の刃の構成は、上面28におけるものと同様である。さらに、切れ刃の構成はこれに限らず、他の構成(例えば傾斜形状、湾曲形状)をさらに備えてもよいのは言うまでもない。
【0025】
図2および
図5にみられるように、側壁面6のうち、第1側壁面61は、第2側壁面62および第3側壁面63に比べて、切削工具1の最も先端部3a側に配置される。上述したように、第1側壁面61を含む取付座4は、切削工具1の先端側に向かって開放される。すなわち、第1側壁面61は、取付座4の奥側の第2の面部分9につながる内側端部611と、該内側端部611と反対側である開放側、すなわち、切削工具1の先端側、被加工物に対峙する側に位置する外側端部612とを有し、外側端部612は、開放端となっているものである。ここで、上述したように、第1側壁面61は、切削インサート2の側面25を支持固定する部分である。また開放端部つまり外側端部612付近は、切削インサートの被加工物に当接する刃近傍を支持する部分であるから、切削時の切削抵抗による応力を強く受ける箇所でもある。切削時に応力が集中することにより、底壁面5と側壁面6とのつなぎ部分である取付座4の隅部にクラック等が生じやすくなるという問題は、上述したとおりである。したがって、本実施形態においても、応力集中を緩和するために、第1側壁面61と、底壁面5との間に、曲面状の第1の面部分81(8)が形成される。この第1の面部分81は、底壁面5、側壁面6の両方に凹む方向に曲面付けられていて、曲面(第1の曲面)を有する(
図6Bおよび
図7参照。)。すなわち、
図6Bに示すように、第1の面部分81は、第1側壁面61の延長面と底壁面5の延長面とからなる隅部52(図中点線で示す部分)を、第1側壁面61側と底壁面5側の両方に均等に曲面状に削り取った部分である。
図7に示すように、第1の面部分81を、工具ボデー3の開放側において、底壁面5および第1側壁面61に平行な方向からみるとき、第1の面部分81の最小曲率半径をR1とする。ここで、最小曲率半径R1は、第1の面部分81の外周側の開放端における丸みである。第1の面部分81は、全体にわたって同じ曲率半径で湾曲する曲面であってもよいし、部位によって曲率半径が異なるものであってもよい。この実施形態の切削工具1では、曲率半径R1は、0.80mmとされた。曲率半径R1は、0.30mm以上とされることが好ましい。曲率半径R1が、0.30mm以上とされると、応力集中がより適切に緩和され、切削インサート2の締め付け力や切削力などが作用した際に、取付座4が損傷することをより好適に防止できる。曲率半径R1は、0.50mm以上とされることがさらに好ましい。なお、曲率半径R1を0.20mmとした場合、第1の面部分81の凹みは応力集中を緩和するのに不十分であり、ある程度以上の大きな負荷がかかるようにその切削工具を繰り返し使用すると、応力集中が原因と思われる取付座の破損が発生した。これに対して、曲率半径R1を0.30mm以上とした場合、同様の実験条件で、取付座の隅部にクラックが入らなかった。このように、曲率半径R1を0.30mm以上とすることで、取付座4の隅部への応力集中を緩和し、クラック形成を十分に抑制することができ、工具ボデーの工具寿命を大きく伸ばすことができる。また、曲率半径が大きいほど、曲面の加工面積が広く加工しやすい。しかしながら、第1の面部分81が広くなるほど、第1側壁面61、底壁面5の面積が削られていくことになり、切削インサート2の保持面積が低下する。したがって、曲率半径R1は、第1側壁面61の面積が、切削インサート2の固定の点で十分に作用できる範囲を確保できるようにするため、所定の上限を備えるものとする。この上限は、装着される切削インサート2の厚みと、取付座4となる凹部の深さに応じて定められることができる。
【0026】
なお、この実施形態では、
図6Bに示すように、第1の面部分81は、第1側壁面61の延長面と底壁面5の延長面とからなる隅部52(図中点線で示す部分)を、第1側壁面61側と底壁面5側の両方に均等に曲面状に削り取ったものを説明した。しかしながら、本発明は、このように、第1側壁面61側と底壁面5側との両方に均等に削り取ったものだけに限らない。すなわち、第1の面部分81は、第1側壁面61側だけを凹ませたもの、もしくは、底壁面5側だけを凹ませたものであってもよいし、両方を凹ませるとしても均等になっていなくてもよい。隅部への応力集中を緩和できるように、第1の面部分81は、第1側壁面61と底壁面5とを、一方の面から他方の面に角張らずに滑らかに結ぶ曲面であればよい。
【0027】
また、切削時の応力は、コーナ切れ刃に最も近い開放端部612付近に最も強く作用するところではあるが、応力は、開放端部612だけに限らず、第3および第2側壁面63、62と底壁面5との間にも作用する。また切削時に限らず、切削インサート2を固定するためにねじで締めつけるだけでも応力が発生する。したがって、第3及び第2側壁面63、62と底壁面5との間にも、曲面状の第1の面部分82(8)を設け、応力集中を緩和させている。
【0028】
さらに、切削インサート2は、各コーナ部22,23,24周辺に切れ刃が形成されており、取付座4に装着する上で、被加工物に作用した切れ刃を回転させて隣の未使用の切れ刃と交換することによって、結果として3回使用することができる。上述したように、各切れ刃は、主切れ刃202、コーナ切れ刃201、およびさらい刃203として作用する正面刃または底刃とを有する。この切削工具1は、肩削り加工用のエンドミルであるため、主切れ刃が、肩削り加工の壁面加工を行い、底刃が平面加工を行う。
【0029】
なお、上述したように、切削インサート2における切れ刃は、片面だけでなく、両面に形成されていてもよい。両面に形成されている切削インサートの場合は、装着面をひっくり返すことにより、合計6回使用することができる。しかしながら、切れ刃部分が取付座4に接触した状態で、切削インサート2を取付座4に押し付け固定すると、取付座4に接触している切れ刃部分が破損する恐れがある。例えば、切削インサート2の上面28を上にして切削インサート2を装着した場合、下面29側の切れ刃が、取付座4に接触しないようにしなければならない。そこで、上述した第1の面部分81、82は、ちょうど下面29の切れ刃が位置する部分となるため、この第1の面部分81、82の曲面によって、下面29の切れ刃と取付座4との間に空間を形成し、切れ刃が取付座4に接触しないようにする。これにより、切れ刃は取付座4に接触することなく、その破損も防止される。この場合、第1の面部分81、82の曲面の凹みは、切れ刃が側壁面、底壁面と接触しないように、第1側壁面61側と底壁面5側との両方が曲面上に凹んでいるのが好ましい。
【0030】
第3および第2側壁面63、62に沿った第1の面部分82の曲率半径は、第1側壁面61に沿った第1の面部分81と同じであってもよいし、異なっていてもよい。異ならせる場合は、第3および第2側壁面63、62に沿った面部分82の曲率半径を、第1側壁面61に沿った面部分81の曲率半径よりも小さくすることが好ましい。面部分82の曲率半径の上限は、上述したように、第3側壁面63、第2側壁面62にある程度以上の面積が確保できる範囲で適宜定められることができる。
【0031】
さらに、
図2にみられるように、工具ボデー3は、第1側壁面61と第2側壁面62との間に第2の面部分9を有する。すなわち工具ボデー3の先端側から、軸線A側かつ後端部側に向かって第1側壁面61、第2の面部分9が並び、さらに開放側に向かって第2側壁面62、凹部64、第3側壁面63の順で、それぞれの壁面部分または面部分がつづいている。第2の面部分9は、ここでは、第1側壁面61や第2側壁面62と交差するように延在し、さらに底壁面5と交差するように延在する。しかしながら、全体的にみたときに、第2の面部分9が底壁面5の延長面を実質的に構成するように、第2の面部分9の底壁面5に対する交差角度は緩やかであってもよい。
【0032】
ここで、切削工具1の切削中に、切削インサート2には、切削抵抗が、切削インサート2を、切削インサート2の表面側(
図3では上面側)からみて時計まわり方向CAに回転させようとする方向に作用する。つまり、上面の略三角形の辺部の作用切れ刃部分の全体が一度に作用することは少なく、作用切れ刃のうちのコーナ部付近の切れ刃および底刃だけが切削に作用することが多い。このときの切削力の合力が、切削インサート2を
図3において時計まわり方向に回転させようとするのである。この回転方向の力に対抗するには、切削インサート2の側面25、26に当接可能な側壁面6によって、切削インサート2の側面25、26をしっかりと支持することが望ましい。そうなると、側壁面6の面積は大きいほうがよい。言い換えると、切削インサート2の側面25、26は、なるべく側壁面6と接しているほうがよい。ここで、側壁面6の面積を広く確保するべく、
図8B,
図9Bの断面図に示すように、第2側壁面62を、できる限り第1側壁面61に近づけると、第2の面9の幅L1が狭くなり、切削インサート2の第2の面部分9に対峙する頂点部23付近における側面で、第2および第1側壁面62、61に接していない部分が少なくなる。回転中心軸である軸線Aに平行な基準線B1を
図8Bに示すように第2側壁面62の内側端部621に位置させた場合、第2側壁面62の基準線B1からの傾きの角度を角度αとして定めることができる。同様に、軸線Aに平行な基準線B2を
図8Bに示すように第1側壁面61の内側端部611に位置させた場合、第1側壁面61の基準線B2からの傾きの角度を角度βとして定めることができる。この角度α、角度βは、切削インサートのコーナ部の角度に応じて定められる。そして、角度α、βで第2および第1側壁面62、61を設けた際に、第2の面部分9を、できる限り取付座4の奥(
図8Bの断面図における下方、つまり取付座の開放側と反対の方向)に位置させれば、切削インサート2の側面25、26に接触する第2および第1側壁面62、61部分は広くなる。よって、第2側壁面62の第2の面部分9側の内側端部621を、切削インサートの回転中心に略一致するねじ穴51の軸線からより離れた位置まで延長するとよい。
【0033】
さて、第2側壁面62を、できる限り第1側壁面61に近づけるには、第2の面部分9を設けないことが考えられる。すなわち、取付座4を形成する上で、第2の面部分9を設けずに、第2側壁面62と第1側壁面61とによって、切削インサート2のコーナ23に合わせた角部を設ける形も考えられる。しかしながら、第2側壁面62と第1側壁面61とによって直接的に角部を形成すると、切削時にその角部に応力が集中することになり、その角部からクラックが生じやすくなる。また、切削インサート2との位置合わせにおいて、切削インサート2のコーナ23に対応する厳密な形状は、取付座4を形成する上で手間がかかり、コストが上がるなどの面もある。したがって、第2の面部分9を設けることにより、取付座4の奥部分(内側部分)における応力集中を緩和するとともに、切削インサート2を取付座4上のより適切な位置に配置された第2および第1側壁面62,61でよりしっかりと支持することができる。これらの理由により、第2の面部分9は必要ではあるが、その幅L1は、小さい方が望ましく、第2の面部分9の幅を必要最小限にするとともに、できる限り第2側壁面62を第1側壁面61側に寄せることが好ましい。
【0034】
図8B、
図9Bに示すように、第2の面部分9は、具体的には、次のような形状となっている。細かくは、第2の面部分9は、前記第1側壁面61の内側端部611と接続するつなぎ壁面911と、このつなぎ壁面911と略直交する主壁面912と、この主壁面912と略直交し、前記第2側壁面62の内側端部621と接続するつなぎ壁面913とからなる。主壁面912は、使用が想定される種々の切削インサートと干渉せず、なおかつ種々の切削インサートの外郭形状からの離れ量が必要最小限になるように配置される。さらに主壁面912は、底壁面5に対して90°以上の角度γで配置され、底壁面5上の空間を拡張するように形成される。このような角度とされると、主壁面912をエンドミルなどの工具で加工するとき、その工具が底壁面5と干渉したり、生じた切りくずにより底壁面5に傷が発生することなどを防止できる。主壁面912と底壁面5とのなす角度γに上限はないが、切削インサートの外郭形状からの離れ量を必要最小限にするため、130°以下の角度とされることが好ましい。つなぎ壁面911、913と主壁面912との接続は、略直交するものを例示したが、本発明はこれに限らず、交差角度は第2の面部分9を形成する工具の形状などに応じて適宜設定されるものである。そして、つなぎ壁面911と主壁面912との接続部には、曲面(第2の曲面)901が設けられ、主壁面912とつなぎ壁面913との接続部には、曲面(第3の曲面)902が設けられている。第2の面部分9を形成する上で、工具ボデー3を掘り込むことによって形成されるつなぎ壁面911、913の端部分においても、隅ができてしまう。この部分にも応力集中しやすいので、この隅に曲面901、902を設けることにより、隅への応力集中を緩和させることができる。
【0035】
しかしながら、
図8Bから分かるように、この曲面901、902の大きさが大きくなると、第2側壁面62における、外周面3c側に位置する外側端部に対して反対側の内側端部621は、第1側壁面61の内側端部611から離れてしまうこととなる。よって、
図8Bに示す曲面901の曲率半径R2、曲面902の曲率半径R3はできる限り小さくして、第2側壁面62の内側端部621と第1側壁面61の内側端部611を近づけることが好ましい。特に曲面902の断面(底壁面に略平行な断面)での曲率半径R3が重要である。曲面902の曲率半径R3を小さくすることで、第2側壁面62を第1側壁面61に近づけることが可能となる。曲率半径R3は、0.30mm未満であることが好ましい。すなわち、曲率半径R3は、前述の曲率半径R1よりも小さくすることが好ましい。この実施形態の切削工具で曲率半径R3は、約0.20mmとされた。このように曲率半径R3が、曲率半径R1よりも小さくされたことで、第2側壁面62の幅、すなわち、開放側から第2の面部分9までの長さを延長し、切削インサート2の側面26と接する第2側壁面62の部分を多くし、側面26の保持性能を向上させることができる。このことにより、切削インサート2が回転することを防止するとともに、一方で応力集中を緩和して取付座4が損傷することを防止するという、相反する問題を解決できる。曲面901の曲率半径R2も、R3と同程度の大きさでよい。また、両者は、同じ値であってもよく、異なった値であってもよい。ただし、異なっていても、両者とも0.30mm未満であることが好ましい。なお曲率半径R2、R3は、0.05mm以上であるとよい。曲率半径R2、R3は、例えば切削加工で形成可能な大きさであれば、切削工具1の破壊の起点となる可能性が低い。
【0036】
本実施形態の切削工具1の取付座4は、特に第1の面部分8および第2の面部分9は、ボールエンドミルや、ラジアスエンドミル、スクエアエンドミルなどのエンドミルを用いて、容易に加工することができる。ただし、ボールエンドミルによって加工する場合、曲面901、902の曲率半径R2、R3を小さくするには、工具径の小さなボールエンドミルを使用しなければならない。したがって、工具径の小さなものでは切り込み量などの切削条件が低下するため、加工コストが増大する場合がある。この実施形態における取付座4の形状は、ラジアスエンドミルまたはスクエアエンドミルにより加工することが可能である。したがって高能率な切削条件で加工することが可能であり、加工コストを大幅に抑制できる。特に、曲率半径R2およびR3に対応するコーナの丸みを有するラジアスエンドミルを用いると、高能率な切削条件で加工できる。その場合、曲率半径R2およびR3は、ラジアスエンドミルのコーナの形状が、そのまま転写される。
【0037】
上記第2の面部分9は、2つのつなぎ壁面911、913を介して第1および第2側壁面に接続する主壁面を備え、そしてそれらの間に第2および第3の曲面を有した。しかし、第2の面部分9は、取付座の底壁面に略平行な断面において、非角形形状を有してもよく、例えば略半円形などの略円弧形状を有してもよい。この場合、第2の面部分9は、底壁面に略平行な断面において、上記第1曲率半径よりも小さな第2曲率半径を少なくとも部分的に有するとよい。
【0038】
これらの切削工具は、保持具(ホルダ)を介して工作機械に装着されることにより、鋼材などの切削加工に利用できる。本発明は、旋盤用のバイトや回転切削工具などに適用され、適用切削工具への制約がほとんどない。実施形態には回転切削工具だけを記載したが、本発明は旋盤用の工具にも適用可能である。それぞれの切削工具の形態に応じて、切削抵抗の加わる切れ刃に最も近い側壁面を、第1側壁面とする。
【0039】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更および追加が可能である。例えば、貫通穴のない切削インサートを用いる切削工具にも本発明は適用可能である。また、例えば、第1の面部分8の外側端部つまり開放端周囲に、さらに面取りが施されてもよい。