(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
昨今の環境的な意識の高まりを受けて、浴槽内に張った湯の保温性を高めることが大きな課題の一つになっている。この課題に対応して、保温性に大きな影響のある風呂蓋についても、高い断熱性が求められている。
【0003】
断熱性の高い風呂蓋としては、従来から表裏の樹脂面材の間に断熱材を挟む、または充填したものなどが用いられている。
断熱性の高い風呂蓋は、特に冬場など寒い環境での浴槽保温などを行う実使用上において、必然的に蓋の上面と下面とに温度差が生じる。この温度差によって、蓋の上面及び下面の材料の熱膨張量が異なってしまい、蓋がバイメタル状に反るという事象が発生する。
【0004】
このような風呂蓋の反りを低減させるために、風呂蓋の構成素材を線膨張係数の十分小さい素材として対策する手法もある。例えば、風呂蓋の構成素材としてアルミニウムなどの金属薄板の使用や、特殊な樹脂の使用、ガラス繊維やカーボン繊維などの強化材を使った構成が挙げられる。
【0005】
特許文献1では、線膨張係数の小さいガラス繊維またはカーボン繊維を粗い目のネット状に形成して反り防止部材を構成し、この反り防止部材を断熱材の表裏面に設けた平板状の風呂蓋が開示されている。このような構成によって、使用時の風呂蓋の反りを防いでいる。
【0006】
しかし、このような手法では、重量の増加を招くとともにコストの上昇を招き、また使い勝手上でも問題が生ずる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、高い断熱性を有し、軽量で使い勝手のよい風呂蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、上方からみたときの平面視において矩形状の内側縁を有する浴槽の上方を覆うことが可能な矩形状の風呂蓋であって、
前記風呂蓋の周縁の反り量が略均一となるように、前記風呂蓋の対角線を横断するように形成された切れ目が設けられたことを特徴とする風呂蓋である。
【0010】
この風呂蓋によれば、風呂蓋の四隅における反りを抑え、浴槽の四隅と風呂蓋との間に隙間が生ずることを抑えることができる。これにより、風呂蓋を反らないように強固に形成する必要はなく、浴槽内に張られた湯の熱が外へ逃げることを抑制することができる。また、高い断熱性を有する軽量で使い勝手のよい風呂蓋を提供することができる。さらに、低コスト化を図ることができる。
【0011】
また、切れ目を設けるだけで対角線上における熱膨張量を抑えることができるため、風呂蓋自体の断熱性を損なうことはない。そのため、浴槽と風呂蓋の隙間から熱が逃げることを抑えることができる。また、切れ目を設けるための加工は、より簡易的である。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記切れ目は、前記風呂蓋に内在されたことを特徴とする風呂蓋である。
【0013】
この風呂蓋によれば、切れ目は、風呂蓋に内在されているため、汚れが切れ目に付着することはない。そのため、風呂蓋の外観を良好に保つことができる。
【0014】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、中心部から外周端に向かって複数条の前記切れ目が設けられたことを特徴とする風呂蓋である。
【0015】
この風呂蓋によれば、対角線上における熱膨張量を抑える効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の態様によれば、高い断熱性を有し、軽量で使い勝手のよい風呂蓋が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる風呂蓋を表す模式図である。
なお、
図1(a)は、風呂蓋110が浴槽300に置かれた状態を例示する模式的斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)に表したA−A線の模式的断面図である。
図1(a)に表したように、本実施形態に係る風呂蓋110は、浴槽300のリム部310における上面311に載せられる平板状の蓋である。
【0019】
風呂蓋110は、浴槽300の開口301を塞いで浴槽内302に張られた湯Wの熱が外へ逃げることを防ぐ。例えば上方からみたときの平面視において、風呂蓋110は、略矩形状を呈し、略矩形状の内側縁303を有する浴槽300の上方を覆うことができる。浴槽300は、底部330及び側壁320によって浴槽内302の空間が形成され、側壁320の上端から外方にリム部310が設けられた構成になっている。
【0020】
風呂蓋110は、対向する側壁320の上端に設けられたリム部310の上面311に渡されるように配置される。浴槽300には、開口301の全体を塞ぐため、1枚または複数枚の風呂蓋110が用意される。
図1(a)に表した例では、浴槽300に2つの風呂蓋110が並べて配置され、これらの風呂蓋110によって開口301の全体が覆われる。
【0021】
風呂蓋110は、浴槽300の上面311に載置されたときに、浴槽300に面する下面側表皮材10と、下面側表皮材10と対向し浴槽300とは反対の側に設けられる上面側表皮材20と、を備える。また、風呂蓋110は、上面側表皮材20と、下面側表皮材10と、のあいだに設けられた芯材30を備える。さらに、風呂蓋110は、下面側表皮材10と芯材30とのあいだに設けられた下面側繊維材40と、上面側表皮材20と芯材30とのあいだに設けられた上面側繊維材50と、を備える。
【0022】
下面側表皮材10および上面側表皮材20は、伸縮性を有する。芯材30は、例えば合成樹脂発泡体などにより形成され、断熱性を有する。下面側繊維材40および上面側繊維材50は、比較的小さい線膨張係数を有し、例えばポリエステル繊維などの有機素材を含む有機繊維により形成されている。下面側繊維材40は、下面側表皮材10と一体的に形成されていてもよい。上面側繊維材50は、上面側表皮材20と一体的に形成されていてもよい。また、風呂蓋110は、必ずしも下面側繊維材40および上面側繊維材50の両方を備えている必要はなく、下面側繊維材40および上面側繊維材50の少なくともいずれかを備えていればよい。
【0023】
風呂蓋110を浴槽300の上面311に載せたとき、下面側表皮材10には湯Wの熱(42℃程度)が加わる。一方、上面側表皮材20には浴室の温度(例えば、5℃〜30℃)が加わる。このように風呂蓋110の上下面で温度差があると、下面側表皮材10の熱膨張力と上面側表皮材20の熱膨張力とに大きな差が発生する。すると、風呂蓋110がバイメタル状に反ることがある。
【0024】
一般に、均一な線膨張係数を有する平板状の構造体において、表面と裏面とに温度差が生じると、表面及び裏面のそれぞれの膨張量に差(以下、「差Δ」という。)が発生する。この膨張量の差Δの一部は構造体の内部応力として変換及び吸収され、変換及び吸収されない分は構造体に曲げ応力を発生させ、熱反りというかたちで現れる。
【0025】
また、下面側表皮材10および上面側表皮材20の少なくともいずれかに生じた応力が歪みとなり、芯材30が反ることがある。さらに、芯材30自身が浴槽内302の湯Wの温度で暖められて線膨張することがある。すると、前述した場合と同様に、風呂蓋110が反ることがある。
【0026】
ここで、風呂蓋110の反りについて、図面を参照しつつさらに説明する。
図2は、本実施形態にかかる風呂蓋を主面に対して垂直にみたときの模式的平面図である。
【0027】
図1に関して前述したように、風呂蓋110は、浴槽300の上面311に載置されると、風呂蓋110の上下面での温度差などにより反ることがある。このとき、風呂蓋110は、中心部110cを中心として同心円状に反る。つまり、風呂蓋110は、中心部110cを中心とした円形115に略沿うように反る。一方で、風呂蓋110は、平面視において略矩形状を呈する。そのため、風呂蓋110の中心部110cと第1のコーナ部116aとの間の距離D1は、風呂蓋110の中心部110cと側辺の第1の中央部117aとの間の距離D2よりも長い。この距離(寸法)の違いにより、風呂蓋110の第1のコーナ部116aにおける膨張量は、側辺の第1の中央部117aにおける膨張量よりも大きい。これは、第2のコーナ部116b、第3のコーナ部116c、および第4のコーナ部116dと、側辺の第2の中央部117b、第3の中央部117c、および第4の中央部117dと、のそれぞれの関係についても同様である。
【0028】
そのため、平面視において略矩形状を呈する風呂蓋110では、風呂蓋110の四隅(第1〜第4のコーナ部116a、116b、116c、116d)が他の部分よりも大きく反る。すると、略矩形状の内側縁300を有する浴槽300の内側縁303のコーナ部と、風呂蓋110のコーナ部と、の間に隙間が生ずる。これにより、保温性あるいは断熱性の向上を図ることができない場合がある。
【0029】
これに対して、本実施形態にかかる風呂蓋110は、浴槽300の上方を覆うと浴槽内302の熱で反り、下面側表皮材10(風呂蓋110の裏側)が内側縁303のコーナ部(隅部)と密接するように変形する。そして、風呂蓋110は、風呂蓋110自身と、浴槽300の内側縁303のコーナ部と、の間に隙間が生じないようにする。
【0030】
これによれば、本実施形態にかかる風呂蓋110は、浴槽300の略矩形状の内側縁303と密接するように反る。そのため、浴槽内302の熱で反った風呂蓋110と、浴槽300の四隅と、の間に隙間が生じにくい。これにより、風呂蓋110を反らないように強固に形成する必要はなく、浴槽内302に張られた湯Wの熱が外へ逃げることを抑制することができる。また、高い断熱性を有する軽量で使い勝手のよい風呂蓋110を提供することができる。さらに、低コスト化を図ることができる。
【0031】
言い換えれば、本実施形態にかかる風呂蓋110は、風呂蓋110の下面(裏面:浴槽300の側の面)の対角線111、113上における熱膨張量を、風呂蓋110の中心部110cおよび側辺の第1〜第4の中央部117a、117b、117c、117dをそれぞれ通る仮想線118、119上における熱膨張量よりも抑制する切れ目を備える。後述するが、この切れ目は、風呂蓋110の第1〜第4のコーナ部116a、116b、116c、116dにおける反り量を、風呂蓋110の側辺の第1〜第4の中央部117a、117b、117c、117dにおける反り量と略同等にする。
【0032】
これによれば、風呂蓋110の下面の対角線111、113上の熱膨張量をより小さく抑える、すなわち風呂蓋110の方向によって熱膨張量を制御することにより、風呂蓋110の周縁の反り量を略均一化させ、浴槽300の内側縁303に風呂蓋110をより確実に密接させることができる。
【0033】
次に、本実施形態にかかる風呂蓋の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態の風呂蓋の具体例を例示する模式的平面図である。
また、
図4は、
図3に表したB−B線の模式的断面図である。
また、
図5は、
図3に表したB−B線の他の模式的断面図である。
【0034】
本具体例の風呂蓋120には、対角線111、113を横断するように形成された第1の切れ目121、第2の切れ目122、および第3の切れ目123が設けられている。
図3に表した風呂蓋120では、第1〜第4のコーナ部116a、116b、116c、116dの近傍のそれぞれにおいて、風呂蓋の中心部110cから第1〜第4のコーナ部116a、116b、116c、116dのそれぞれに向かって3条の切れ目(第1〜第3の切れ目121、122、123)が配置されている。但し、切れ目の設置数は、3条に限定されず、例えば1条、2条、あるいは4条以上であってもよい。
【0035】
以下では、第1〜第3の切れ目121、122、123のうち第1の切れ目121を例に挙げて説明する。なお、第2の切れ目122および第3の切れ目123の構造や作用効果などは、第1の切れ目121の構造や作用効果などと同様である。また、第1〜第4のコーナ部116a、116b、116c、116dのうちの第1のコーナ部116aを例に挙げて説明する。
【0036】
図4に表したように、第1の切れ目121は、芯材30に形成されており、風呂蓋120に内在されている。つまり、第1の切れ目121は、風呂蓋120の外観には露出していない。第1の切れ目121は、芯材30の上面と芯材30の下面との間を貫通している。この第1の切れ目121の幅(一つの切れ目の中心部側の端部とコーナ部側の端部との距離)D3は、断熱性を損なわないように、より小さい方が好ましい。また、第1の切れ目121と風呂蓋110の中心部110cとの距離は、風呂蓋110の中心部110cと側辺の第1の中央部117aとの間の距離D2と同じ程度であることが好ましい。
【0037】
本具体例によれば、風呂蓋120は、浴槽300の上面311に載置されると、風呂蓋120の上下面での温度差などにより反る一方で、熱膨張力および膨張量は、第1の切れ目121により縁切りされる。そのため、第1の切れ目121よりも中心部110cの側の芯材30aにおける膨張量と、第1の切れ目121よりも第1のコーナ部116aの側の芯材30bにおける膨張量と、を分断したり不連続とすることができる。これにより、対角線111、113上における熱膨張量を仮想線118、119上における熱膨張量よりも抑制することができる。つまり、第1の切れ目121は、風呂蓋110の中心部110cと第1のコーナ部116aとの間の距離D1を、風呂蓋110の中心部110cと側辺の第1の中央部117aとの間の距離D2と略等価の距離とすることで、対角線111、113上における熱膨張量を抑える。
【0038】
ここで、
図4に表したように、第1の切れ目121の設置位置における下面側表皮材10、上面側表皮材20、下面側繊維材40、および上面側繊維材50に材料の余分を与えておくことがより好ましい。これによれば、熱膨張力および膨張量を第1の切れ目121においてより確実に縁切りさせることができる。
【0039】
また、第1の切れ目121よりも第1のコーナ部116aの側の芯材30bは、湯Wの上ではなく浴槽300の上面311に載置されている場合がある。この場合には、芯材30bやその両側の下面側表皮材10および上面側表皮材20に湯Wの熱が加わり難い。そのため、この場合には、第1の切れ目121よりも第1のコーナ部116aの側の風呂蓋120の部分がバイメタル状に反ることを抑え、対角線111、113上における熱膨張量を抑えることができる。
【0040】
図4に表した具体例では、第1の切れ目121は、芯材30の上面と芯材30の下面との間を貫通しているが、必ずしも貫通していなくともよい。
図5に表したように、第1の切れ目131は、溝として形成されていてもよい。つまり、本願明細書において「切れ目」という範囲には、部材を貫通したスリットや穴などだけではなく、部材を貫通していない溝や凹部などが含まれるものとする。言い換えれば、本願明細書において「切れ目」とは、部材の表面が切り欠かれた形状や、部材の表面が分断あるいは不連続な形状を有する部分をいうものとする。
【0041】
図5に表した具体例の風呂蓋130には、
図4に関して前述した風呂蓋120と同様に第1の切れ目131が設けられている。第1の切れ目131は、第1の溝131aと、第2の溝131bと、第3の溝131cと、を有する。例えば、第1の溝131aは、上面側表皮材20の側に形成されている。一方、第2の溝131bおよび第3の溝131cは、下面側表皮材10の側に形成されている。第1の溝131aは、第2の溝131bと第3の溝131cとの間に設けられている。つまり、第1の切れ目131は、例えば蛇腹などのような構造を形成する。
【0042】
本具体例によれば、風呂蓋130は、浴槽300の上面311に載置されると、風呂蓋130の上下面での温度差などにより反る一方で、熱膨張力および膨張量は、第1の切れ目131により縁切りされる。そのため、第1の切れ目131よりも中心部110cの側の芯材30aにおける膨張量と、第1の切れ目131よりも第1のコーナ部116aの側の芯材30bにおける膨張量と、を分断したり不連続とすることができる。これにより、
図4に関して前述した具体例の効果と同様の効果が得られる。
【0043】
図3〜
図5に関して前述した具体例によれば、風呂蓋120、130の四隅における反りを抑え、浴槽300の四隅と風呂蓋120、130との間に隙間が生ずることを抑えることができる。これにより、
図2に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0044】
また、芯材30に切れ目を設けるだけで対角線111、113上における熱膨張量を抑えることができるため、風呂蓋120、130自体の断熱性を損なうことはない。そのため、浴槽300と風呂蓋120、130の隙間から熱が逃げることを抑えることができる。また、切れ目を設けるための加工は、より簡易的である。
【0045】
さらに、切れ目は、風呂蓋120に内在されているため、汚れが切れ目に付着することはない。そのため、風呂蓋120、130の外観を良好に保つことができる。また、風呂蓋の中心部110cからコーナ部に向かって複数条の切れ目が設けられているため、対角線111、113上における熱膨張量を抑える効果を高めることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、風呂蓋110、120、130、140などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや切れ目121、122、123、下面側繊維材40、および上面側繊維材50の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。