特許第5962977号(P5962977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5962977ラック軸支持装置およびこれを用いたステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962977
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ラック軸支持装置およびこれを用いたステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/04 20060101AFI20160721BHJP
   B62D 3/12 20060101ALI20160721BHJP
   F16H 55/28 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F16H19/04 N
   B62D3/12 501G
   F16H55/28
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-153932(P2012-153932)
(22)【出願日】2012年7月9日
(65)【公開番号】特開2014-15986(P2014-15986A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100183450
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 太知
(72)【発明者】
【氏名】米谷 豪朗
【審査官】 村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−368283(JP,A)
【文献】 実開平05−026721(JP,U)
【文献】 特開2006−282058(JP,A)
【文献】 特開2010−036610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/04
B62D 3/12
F16H 55/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック軸においてピニオンに噛合する側と反対の背面側に設けられ、前記ラック軸に対向する一方開口と、前記一方開口から前記ラック軸から遠ざかる方向へ窪んだ内周壁と、前記内周壁の底面側に開口した他方開口とを有する収容室に配置されており、前記ラック軸を前記ピニオンへ向けて押し付けるラック軸支持装置であって、
前記一方開口から前記ラック軸を臨み、前記ラック軸を軸方向に摺動可能に支持するサポートヨークと、
前記他方開口を塞ぐプラグと、
前記収容室内において前記サポートヨークと前記プラグとの間に設けられ、第1ねじ溝が形成された内周面を有して前記プラグに一体化された第1ねじ部、第2ねじ溝が形成された外周面を有して前記第1ねじ部の内周面の内側に配置される第2ねじ部、ならびに、対向状態にある前記第1ねじ溝および第2ねじ溝によって形成された転動路に配置された複数のボールを有するボールねじ機構と、
前記ボールねじ機構と前記プラグとの間に設けられ、前記プラグに対して前記第2ねじ部を回転させつつ前記第2ねじ部を前記サポートヨーク側へ進出させるように付勢されたねじり付勢部材と、を含むことを特徴とする、ラック軸支持装置。
【請求項2】
前記サポートヨークと前記第2ねじ部との間に圧縮状態で介在され、前記サポートヨークを前記ラック軸へ向けて付勢する付勢部材をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載のラック軸支持装置。
【請求項3】
前記第2ねじ部と前記付勢部材との間の摩擦を低減させる摩擦低減部材をさらに含むことを特徴とする、請求項2記載のラック軸支持装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のラック軸支持装置を用いて前記ラック軸を軸方向に摺動可能に支持することを特徴とする、ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラック軸支持装置およびこれを用いたステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラック軸支持装置として、下記特許文献1では、サポートヨーク間隙自動調整装置が提案されている。このサポートヨーク間隙自動調整装置は、ラック軸を摺動可能に支持するサポートヨークと、サポートヨークを支持するカムと、カムを支持するとともにラックハウジングに結合されるサポートプラグと、サポートヨークに対してラック軸側への弾性力を与えるヨークスプリングとを備えている。当該弾性力によってラック軸がピニオンに押し付けられるので、ラック軸とピニオンとの噛み合い部分における異音等を抑制することができる。
【0003】
カムにおいてサポートヨークに対向する対向面には、サポートヨーク側へ突出する山型の離隔材が、当該対向面において、周方向120°分の領域に1つずつ、合計で3つ形成されている。各離隔材は、サポートヨークへ向けて緩やかに傾斜する傾斜面と、傾斜面におけるサポートヨーク側端縁においてサポートヨークから離れる方向へ屈曲して延びる端面とを有している。
【0004】
サポートヨークにおいてカムに対向する部分にも、離隔材に相当する部材が3つ形成されており、カムの離隔材とサポートヨークの離隔材(離隔材に相当する部材)とが噛み合っている。カムの各離隔材の前記端面には、サポートヨークにおいて隣り合う離隔材(離隔材に相当する部材)へ向けて突出する弾性部材が設けられている。
サポートヨークがラック軸との摩擦等によって摩耗した場合、または、ラック軸とピニオンとの噛み合いによってラック軸のラック歯が摩耗した場合、弾性部材の弾性力によってカムがサポートヨークに対して相対回転運動をし、その際、カムの各離隔材がサポートヨークをラック軸側へ押す。これにより、サポートヨークが、先ほどの摩耗分だけ不可逆的にラック軸側へ押し進められるので、このような摩耗が補償され(摩耗の影響が排除され)、ヨークスプリングは、当該摩耗にかかわらず、一定の弾性力をサポートヨークに与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−296899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のサポートヨーク間隙自動調整装置では、カムがサポートヨークに対して相対回転運動する際、カムの離隔材とサポートヨークの離隔材(離隔材に相当する部材)とが面接触して相対摺動するため、カムの回転に対して多大な摩擦抵抗が与えられる。このため、前記摩耗が生じてもカムがその摩耗に応答して速やかに回転することができず、その摩耗を十分に補償できない虞がある。
【0007】
また、カムの離隔材は、サポートヨークに対向するカムの対向面において、周方向120°分の領域に1つずつ設けられていることから、カムが3分の1回転する間では、サポートヨークをラック軸側へ動かして摩耗を補償できるが、それ以上の大きさの摩耗は補償できない。
また、外力等によってラック軸が撓んでサポートヨークから急に離れてしまった場合に、サポートヨークがラック軸の撓みに追従するためにラック軸側へ急激に進出してラック軸の動きをロックしないように、高粘度のグリースをカムとサポートヨークとの間に塗り込んでおくことがある。これにより、サポートヨークがグリースによってカムにつながれているので、サポートヨークだけがラック軸側へ急激に進出してしまうことを一応は抑制できる。しかし、グリースの特性が温度によってばらつきやすいので、サポートヨークがラック軸側へ急激に進出してしまうことを安定して抑制できない虞がある。さらに、高粘度のグリースがカムとサポートヨークとの間に存在すると、カムおよびサポートヨークの一方が他方から浮いた状態となり、カムとサポートヨークとの相対位置にずれが生じてしまう。そのため、カムとサポートヨークと間には、グリースを用いないようにしたい。
【0008】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、ラック軸をピニオンへ付勢する構成において、摩耗を補償する機能の動作の確実性を向上させることができるラック軸支持装置およびこれを用いたステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、ラック軸(8)においてピニオン(7A)に噛合する側と反対の背面側に設けられ、前記ラック軸に対向する一方開口(21)と、前記一方開口から前記ラック軸から遠ざかる方向へ窪んだ内周壁(22)と、前記内周壁の底面側に開口した他方開口(23)とを有する収容室(20)に配置されており、前記ラック軸を前記ピニオンへ向けて押し付けるラック軸支持装置(15)であって、前記一方開口から前記ラック軸を臨み、前記ラック軸を軸方向(X)に摺動可能に支持するサポートヨーク(24)と、前記他方開口を塞ぐプラグ(25)と、前記収容室内において前記サポートヨークと前記プラグとの間に設けられ、第1ねじ溝(31B)が形成された内周面(31A)を有して前記プラグに一体化された第1ねじ部(31)、第2ねじ溝(32G)が形成された外周面(32F)を有して前記第1ねじ部の内周面の内側に配置される第2ねじ部(32)、ならびに、対向状態にある前記第1ねじ溝および第2ねじ溝によって形成された転動路(34)に配置された複数のボール(33)を有するボールねじ機構(26)と、前記ボールねじ機構と前記プラグとの間に設けられ、前記プラグに対して前記第2ねじ部を回転させつつ前記第2ねじ部を前記サポートヨーク側へ進出させるように付勢されたねじり付勢部材(27)と、を含むことを特徴とする、ラック軸支持装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記サポートヨークと前記第2ねじ部との間に圧縮状態で介在され、前記サポートヨークを前記ラック軸へ向けて付勢する付勢部材(28)をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載のラック軸支持装置である。
請求項3記載の発明は、前記第2ねじ部と前記付勢部材との間の摩擦を低減させる摩擦低減部材(39)をさらに含むことを特徴とする、請求項2記載のラック軸支持装置である。
【0011】
求項記載の発明は、請求項1〜のいずれかに記載のラック軸支持装置を用いて前記ラック軸を軸方向に摺動可能に支持することを特徴とする、ステアリング装置(1)である。
【0012】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、ラック軸とピニオンとの間やラック軸とサポートヨークとの間に摩耗が生じると、ねじり付勢部材がボールねじ機構の第2ねじ部を回転させつつサポートヨーク側へ進出させる。これにより、サポートヨークが、第2ねじ部によってラック軸へ押し付けられ、前記摩耗が補償される(摩耗の影響が排除される)。
このようにボールねじ機構を用いて摩耗を補償する場合には、摩耗を補償するために相対移動する複数の部品間(第1ねじ部および第2ねじ部間)の摩擦がボールによって極力抑えられていることから、ボールねじ機構は、摩耗が生じたときに、当該摩耗に速やかに応答して確実に当該摩耗を補償できる。その一方で、ボールねじ機構では、第2ねじ部が急激に移動するようになっていないので、ラック軸が外力で撓んだ場合(前記摩耗とは無関係の現象がおきた場合)等に、当該現象に過敏に応答してサポートヨークがラック軸側へ急激に突出することは抑制できる。さらに、ボールねじ機構のようにねじり付勢部材のねじりを第2ねじ部の直線運動に変換する構成であれば、補償できる摩耗の大きさの範囲を比較的大きく確保できる。
【0014】
よって、ラック軸をピニオンへ付勢する構成において、摩耗を補償する機能の動作の確実性を向上させることができる。
請求項2記載の発明によれば、付勢部材によってラック軸をピニオンへ向けて確実に押し付けることができる。
請求項3記載の発明によれば、第2ねじ部と付勢部材との間の摩擦が低減されるので、ボールねじ機構は、摩耗が生じたときに、第2ねじ部と付勢部材との間の摩擦の影響を極力受けることなく、当該摩耗に追従して確実に当該摩耗を補償できる。
【0015】
求項記載の発明によれば、ステアリング装置では、ラック軸をピニオンへ付勢するラック軸支持装置において、摩耗を補償する機能の動作の確実性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるラックアンドピニオン式のステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、ステアリング装置1においてラック軸支持装置15およびその周辺を抜き出して示した模式的な断面図である。
図3図3は、ラック軸支持装置15の要部における模式的な断面図である。
図4図4は、ステアリング装置1において変形例に係るラック軸支持装置15およびその周辺を抜き出して示した模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるラックアンドピニオン式のステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と、ステアリングシャフト3と、第1自在継手4と、中間軸5と、第2自在継手6と、ピニオン軸7と、ラック軸8と、ハウジング9とを主に含んでいる。ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連結されている。ステアリングシャフト3と中間軸5とは、第1自在継手4を介して連結されている。中間軸5とピニオン軸7とは、第2自在継手6を介して連結されている。
【0018】
ピニオン軸7の端部近傍には、円筒または円柱状のピニオン7Aが設けられている。ラック軸8は、車幅方向(図1における左右方向であり、「軸方向X」ともいうことがある)に延びる円柱状である。ラック軸8の外周面の周上1箇所において、軸方向Xにおける途中の領域には、ラック8Aが設けられている。ピニオン軸7は、軸方向Xに延びるラック軸8と交差方向(図1では上下方向)に配置されていて、ピニオン軸7のピニオン7Aとラック軸8のラック8Aとが噛み合っている。このようなピニオン軸7およびラック軸8によってラックアンドピニオン機構10が構成されている。そのため、このステアリング装置1は、ラックアンドピニオン式のステアリング装置である。
【0019】
ハウジング9は、たとえばアルミニウム等の金属で形成され、ラック軸8(軸方向X)に沿って長手の中空円筒状であり、車体(図示せず)に固定されている。ラック軸8は、ハウジング9内に収容されており、この状態で、軸方向Xに沿って直線往復移動可能である。ピニオン軸7(ピニオン7A)は、ハウジング9において、軸方向Xにおける両端部の間(図1では軸方向Xにおける略中央位置)に収容されている。
【0020】
ハウジング9に収容されたラック軸8の(軸方向Xにおける)両端部は、ハウジング9の両外側へ突出し、各端部には、継手11を介してタイロッド12が結合されている。各タイロッド12は、対応するナックルアーム(図示せず)を介して車輪13に連結されている。
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン7Aおよびラック8Aによって、ラック軸8の軸方向Xに沿った直線運動(スライド)に変換される。これにより、各車輪13の転舵が達成される。
【0021】
図2は、ステアリング装置1においてラック軸支持装置15およびその周辺を抜き出して示した模式的な断面図である。
図2では、前述したハウジング9およびラックアンドピニオン機構10(ピニオン軸7およびラック軸8)の他に、ステアリング装置1の一部であるラック軸支持装置15が示されている。以下では、これらのそれぞれについて説明する。ちなみに、図2は、ラック軸8の軸方向Xに直交する平面に沿う断面図であり、図2の上下方向は、図1におけるステアリング装置1の上下方向と一致している。以下では、特に言及がない場合、図2の上下左右方向を基準として、各部材を説明する。
【0022】
ハウジング9は、ピニオン軸7におけるピニオン7A以外(中間軸5側)の部分を収納する中空の第1ハウジング9Aと、ピニオン7A、ラック軸8およびラック軸支持装置15を収納する中空の第2ハウジング9Bとに分割可能である。第1ハウジング9Aと第2ハウジング9Bとは、ボルト16によって組み付けられている。
第1ハウジング9Aにおける第2ハウジング9Bとの連結部分には、第2ハウジング9B側へ突出する凸部17が設けられ、第2ハウジング9Bには、凸部17を受ける(凸部17が嵌め込まれる)凹部18が設けられている。凸部17は、中空になっており、ピニオン軸7は、第1ハウジング9Aに収納されて凸部17の中空部分17Aに挿通された状態で、第2ハウジング9B内にも収容されている。凹部18は、第2ハウジング9Bの中空部分の一部になっている。
【0023】
図2の状態を基準として、第2ハウジング9B内において、凹部18の下隣の位置と、当該位置よりさらに下の位置には、環状の軸受19が1つずつ配置されている。各軸受19は、第2ハウジング9Bの内壁面に固定されている。2つの軸受19のうち、上側の軸受19Aは、玉軸受であり、下側の軸受19Bは、滑り軸受であるが、各軸受19の構造は適宜選択できる。上下2つの軸受19では、それぞれの中空部分が、上下に延びる同一直線上に配置されている。
【0024】
ピニオン軸7では、ピニオン7A側の部分が上下2つの軸受19の各中空部分に対して挿通されている。ピニオン軸7において、ピニオン7Aよりも中間軸5側(図2における上側)の部分が上側の軸受19Aによって回転自在に支持されており、ピニオン7Aの先端7B(ピニオン歯7Cが形成されていない図2における下端部)が下側の軸受19Bによって回転自在に支持されている。
【0025】
第2ハウジング9B内では、ラック軸8が、ピニオン7Aの外周面(ピニオン歯7Cが形成された部分)の周上一箇所に対して径方向外側(図2における右側)から対向するように配置されている。ラック軸8において、軸方向X(図2の紙面に垂直な方向)に垂直な平面で切断したときの断面形状は、ピニオン7Aに対向する部分だけが平坦となった円形状である。ラック軸8において、ピニオン7Aに対向する部分には、軸方向Xに沿ってラック8Aが形成されている。ラック8Aは、ピニオン7A(ピニオン歯7C)と噛み合っている。ラック軸8の外周面においてラック8Aが形成されていない部分は、背面部分8Bである。背面部分8Bの断面形状は、略C字状の円弧をなしている。
【0026】
第2ハウジング9Bでは、ピニオン7Aとの間でラック軸8を挟む位置(ラック軸8に対するピニオン7Aの反対側であって図2におけるラック軸8の右側の位置)に、ピニオン7Aおよびラック軸8の両方から離れるように右側へ突出する中空の突出部9Cが一体的に設けられている。
突出部9Cの中空部分は、ラック軸支持装置15を収納する収容室20になっている。収容室20は、第2ハウジング9Bの中空部分の一部であり、当該中空部分においてラック軸8を収容する領域に対して右側から連通している。収容室20は、突出部9Cを、その突出方向(図2における左右方向であり、符号Yを付した方向)に貫通するように延びる円筒状の貫通孔である。前述したラック軸8、ピニオン7Aおよび突出部9Cの位置関係より、収容室20は、ラック軸8においてピニオン7Aに噛合する側(図2においてラック8Aが形成された左側)と反対の背面側(背面部分8B側)に設けられていることがわかる。収容室20は、ラック軸8の背面部分8Bに対向する(背面部分8Bと重なる位置で背面部分8Bを臨む場合も含まれる)一方開口21と、一方開口21からラック軸8から遠ざかる方向へ窪んだ円筒状の内周壁22と、内周壁22の底面側(図2における右側)に開口した他方開口23とを有している。一方開口21および他方開口23は、内周壁22によって区画された丸穴である。内周壁22において他方開口23側の端部には、全周に亘ってねじ部22Aが形成されている。
【0027】
ラック軸支持装置15は、ラック軸8を軸方向Xに摺動可能に支持しつつピニオン7Aへ向けて押し付けるものである。そのため、ラック軸支持装置15を有するステアリング装置1は、ラック軸支持装置15を用いてラック軸8を軸方向Xに摺動可能に支持していることになる。ラック軸支持装置15は、サポートヨーク24と、プラグ25と、ボールねじ機構26と、ねじり付勢部材27と、付勢部材28とを含んでいる。
【0028】
サポートヨーク24は、内周壁22より僅かに小径の円柱状である。サポートヨーク24は、その軸方向(符号Yを付した方向)における両端面をなす一端面24Aおよび他端面24Bを有している。他端面24B(図2における右端面)は、当該軸方向に直交する方向に平坦であり、他端面24Bとは反対側の一端面24A(図2における左端面)には、他端面24B側へ円弧状に窪む凹部24Cが形成されている。凹部24Cは、サポートヨーク24をその径方向に貫通している。
【0029】
凹部24Cには、凹部24Cに沿って湾曲した板状をなす摺擦板29が外れ不能に取り付けられている。摺擦板29は、低摩擦係数を有する材料(たとえば金属)で形成されていたり、低摩擦係数を有する材料(たとえばフッ素樹脂)で形成された膜で被覆された湾曲板で構成されていたりする。
サポートヨーク24の外周面には、その周方向全域に延びる複数(ここでは2つ)の環状溝24Dが、サポートヨーク24の軸方向に並んで形成されている。各環状溝24Dには、Oリング30がサポートヨーク24の径方向外側から嵌め込まれており、この状態で、各Oリング30の外周部分は、環状溝24Dの外にはみ出ている。
【0030】
サポートヨーク24は、内周壁22と同軸状をなした状態で、収容室20内に収容されている。この状態のサポートヨーク24では、一端面24Aが、一方開口21からラック軸8の背面部分8Bを臨んでいる。そして、一端面24Aの凹部24Cには、ラック軸8の背面部分8Bが嵌まり込んでおり、凹部24Cの円弧面と、ラック軸8の背面部分8Bとは、これらの間に摺擦板29が介在された状態で、互いに沿っている。これにより、サポートヨーク24は、摺擦板29によって、ラック軸8を、前述した軸方向X(ラック軸8の軸方向)に摺動可能に支持している。また、この状態のサポートヨーク24は、その軸方向(符号Yを付した方向)に沿って移動可能である。
【0031】
また、サポートヨーク24の各環状溝24DにおけるOリング30の外周部分が、内周壁22に対して全周に亘って径方向内側から接触している。これによって、内周壁22とサポートヨーク24の外周面との隙間が、Oリング30の(サポートヨーク24の軸方向における)両側で遮断されているので、第2ハウジング9B内のグリース等が収容室20内(Oリング30よりも他方開口23側の領域)に侵入することが防止されている。
【0032】
プラグ25は、内周壁22より僅かに小径の円柱状である。プラグ25は、その軸方向における両端面をなす一端面25A(図2における左端面)および他端面25B(図2における右端面)を有している。一端面25Aおよび他端面25Bのそれぞれは、当該軸方向に直交する方向に平坦な円形状の面である。一端面25Aにおいて円中心位置から径方向外側へ離れた1箇所の位置には、他端面25B側へ凹む係止穴25Cが形成されている。他端面25Bの円中心位置には、一端面25A側へ窪む工具穴25Dが形成されている。工具穴25Dには、レンチやドライバー等の工具を差し込むことができる。プラグ25の外周面において他端面25B側の端部には、全周に亘ってねじ部25Eが形成されている。
【0033】
プラグ25は、その一端面25Aが(既に収容室20内に収容された)サポートヨーク24の他端面24Bに対向するように、他方開口23側から収容室20内に収容される。その際、収容室20の外側(図2における突出部9Cの右外側)から前記工具がプラグ25の工具穴25Dに差し込まれており、この工具を操作することによって、プラグ25をその軸周りに回転させて収容室20内にねじ込み、プラグ25のねじ部25Eと内周壁22の他方開口23側におけるねじ部22Aとを組み付ける。図2に示すように、ねじ部25Eとねじ部22Aとが噛み合ってプラグ25がこれ以上収容室20内に進めなくなると、収容室20内へのプラグ25の収容(内周壁22へのプラグ25の組み付け)が完了する。このとき、プラグ25は、内周壁22に対して同軸状で固定された状態で、他方開口23を塞いでいる。また、収容室20では、プラグ25の一端面25Aとサポートヨーク24の他端面24Bとに挟まれたスペースSが形成されている。
【0034】
ボールねじ機構26は、このスペースS(つまり、収容室20内におけるサポートヨーク24とプラグ25との間)に設けられている。ボールねじ機構26は、第1ねじ部31、第2ねじ部32および複数(多数)のボール33を有している。
第1ねじ部31は、内周壁22より僅かに小径の円管状である。第1ねじ部31は、その中空部分を区画する内周面31Aを有している。内周面31Aには、第1ねじ溝31Bが形成されている。第1ねじ溝31Bは、第1ねじ部31の円中心を中心として旋回しながら第1ねじ部31の軸方向へ徐々にずれる螺旋状の溝である。第1ねじ部31は、スペースS内において内周壁22と同軸状に配置されていて、内周壁22に対して僅かな隙間を隔てて径方向内側から対向している。図2では、第1ねじ部31の一端部(図2における右端部)は、プラグ25の一端面25Aの外周縁を縁取るように、当該外周縁に連結されている。そのため、第1ねじ部31は、内周壁22に固定されたプラグ25に一体化されていて(つまり、内周壁22側に固定されていて)、プラグ25の一端面25Aからサポートヨーク24の他端面24Bへ向けて突出している。
【0035】
第2ねじ部32は、第1ねじ部31の内周面31Aよりも小径の円柱状である。第2ねじ部32は、その軸方向における両端面をなす一端面32A(図2における左端面)および他端面32B(図2における右端面)を有している。一端面32Aおよび他端面32Bのそれぞれは、当該軸方向に直交する方向に平坦な円形状の面である。他端面32Bの円中心位置には、一端面32Aへ窪む円筒状の凹部32Cが形成されている。凹部32Cの底面32Dは、円形状をなしている。
【0036】
底面32Dにおいてその円中心位置から径方向外側へ離れた1箇所の位置には、一端面32A側へ凹む係止穴32Eが形成されている。第2ねじ部32の外周面32Fには、全域に亘って第2ねじ溝32Gが形成されている。第2ねじ溝32Gは、第2ねじ部32の円中心を中心として旋回しながら第2ねじ部32の軸方向へ徐々にずれる螺旋状の溝である。
【0037】
第2ねじ部32は、スペースSにおいて、第1ねじ部31の内周面31Aの内側に配置されている。このとき、第2ねじ部32は、第1ねじ部31(さらには、内周壁22)に対して同軸状をなしている。このとき、凹部32Cの底面32Dは、プラグ25の一端面25Aに対して、凹部32Cの深さ以上の距離を隔てて対向している。また、一端面32Aは、サポートヨーク24の他端面24Bに対向している。また、第1ねじ部31の第1ねじ溝31Bは、第2ねじ部32の第2ねじ溝32Gに対して、内周壁22(または、第1ねじ部31や第2ねじ部32)の径方向外側から隙間を隔てて対向しており、第1ねじ溝31Bと第2ねじ溝32Gとの対向部分は、内周壁22(または、第1ねじ部31や第2ねじ部32)の円中心を中心として旋回しながら当該内周壁22の軸方向へ徐々にずれる螺旋状の転動路34を構成している。つまり、転動路34は、対向状態にある第1ねじ溝31Bおよび第2ねじ溝32Gによって形成されている。
【0038】
複数のボール33は、金属等で形成された小さな球体であって、転動路34内に配置されており、転動路34内で自由に転動できる。
このように、第1ねじ部31と第2ねじ部32との間にボール33が介在されていることによって、第2ねじ部32は、第1ねじ部31に対して互いの軸中心周りに回転しつつ、互いの軸方向(符号Yを付した方向)に沿ってスライド移動することができる。たとえば、第2ねじ部32を図2における左側から見て時計回りに回転させると、第2ねじ部32は、回転しながらプラグ25側(図2における右側)へ移動し、逆に、第2ねじ部32を左側から見て反時計回りに回転させると、第2ねじ部32は、回転しながらサポートヨーク24側(図2における左側)へ移動する。
【0039】
ここで、内周壁22の径方向外側から見たとき、転動路34(第1ねじ溝31Bおよび第2ねじ溝32G)は、当該径方向(内周壁22の軸方向に直交する方向)に対して所定角度(たとえば5°以下であり、好ましくは2°程度)で傾斜している。これにより、第2ねじ部32は効率よく回転しつつスライドできる。
ねじり付勢部材27は、コイルばねである。詳しくは、ねじり付勢部材27は、金属線を螺旋状に巻いた本体部27Aと、本体部27Aの一端(図2における右端)から本体部27Aの軸方向外側(図2における右側)へ延びた一端側係止部27Bと、本体部27Aの他端(図2における左端)から本体部27Aの軸方向外側(図2における左側)へ延びた他端側係止部27Cとを一体的に含んでいる。ねじり付勢部材27が単体で存在し、かつ、ねじり付勢部材27に外力が加えられていない状態において、一端側係止部27Bと、他端側係止部27Cとは、本体部27Aの周方向において、同じ位置にあってもよいし、ずれていてもよい。
【0040】
ねじり付勢部材27は、前述したスペースSにおけるボールねじ機構26とプラグ25との間に設けられている。詳しくは、ねじり付勢部材27は、第2ねじ部32の凹部32Cと、第1ねじ部31の中空部分において凹部32Cに対してプラグ25側から連通する部分とに跨って収容されている。この状態で、ねじり付勢部材27の本体部27Aは、第1ねじ部31および第2ねじ部32の両方(さらには、内周壁22)と同軸状をなしている。また、この状態のねじり付勢部材27において、一端側係止部27Bは、プラグ25の一端面25Aの係止穴25Cに対して嵌め込まれて係止されており、他端側係止部27Cは、第2ねじ部32の凹部32Cの底面32Dにおける係止穴32Eに対して嵌め込まれて係止されている。
【0041】
付勢部材28は、いわゆる皿ばねや圧縮ばねであって、この実施形態では円板状またはリング状の皿ばねである。付勢部材28は、第2ねじ部32の一端面32Aとサポートヨーク24の他端面24Bとの間において、一端面32Aおよび他端面24Bによって内周壁22の軸方向両側から圧縮された状態で介在されている。付勢部材28では、その外周部分28Aが、サポートヨーク24の他端面24B側へ傾斜しており、前述したように圧縮されることで弾性変形されている。外周部分28Aは、元の形状に復元しようとしており、その際、サポートヨーク24の他端面24Bを第2ねじ部32側から押圧している。これにより、サポートヨーク24は、ラック軸8へ向けて付勢されている。そのため、付勢部材28によってラック軸8をピニオン7Aへ向けて確実に押し付けることができる。よって、ピニオン7Aとラック8Aとの噛み合い部分の遊びをなくして、当該噛み合い部分での異音を抑制できる。
【0042】
ここで、ラック軸支持装置15では、付勢部材28と第2ねじ部32の一端面32Aとの間には、摩擦低減部材39が設けられていてもよい。摩擦低減部材39は、前述した摺擦板29と同様に、低摩擦係数を有する材料(たとえば金属)で形成されていたり、低摩擦係数を有する材料(たとえばフッ素樹脂)で形成された膜で被覆された板状体等で構成されていたりする。または、摩擦低減部材39は、グリース等の潤滑剤であってもよい。摩擦低減部材39は、第2ねじ部32の一端面32Aと付勢部材28との間の摩擦を低減させる。
【0043】
そして、ねじり付勢部材27は、ラック軸支持装置15として内周壁22に組み付けられるときには、予め本体部27Aの軸中心周りにねじられている。詳しくは、予め、第2ねじ部32が図2における左側から見て時計回りに回転させられていて、第2ねじ部32は、初期状態でプラグ25側(図2における右側)へ偏った位置に配置されている。これにより、第2ねじ部32とプラグ25との間に架設された状態にあるねじり付勢部材27は、自身の周方向において、与圧が与えられ、第2ねじ部32が回転した分だけねじられている。
【0044】
ねじり付勢部材27がねじられた状態で第2ねじ部32を自由にすると(たとえば第2ねじ部32から手を離すと)、ねじり付勢部材27がねじられる前の状態に戻ろうと付勢力を発揮して、第2ねじ部32を逆向きに回転させようとする。このようにねじり付勢部材27がねじられる前の状態に勝手に戻ることを防止するために、図3に示すように、ねじり付勢部材27がねじられた状態における第2ねじ部32およびプラグ25の両方に対して、共通の仮止めピン35(ドットで塗り潰した部分)が差し込まれる。
【0045】
詳しくは、第2ねじ部32の凹部32Cの底面32Dにおいて、円中心から径方向に離れた位置であって、係止穴32Eから外れた位置には、第2ねじ部32の軸方向に延びる位置決め穴36が形成されている。また、プラグ25において、円中心から径方向に離れた位置であって、係止穴25Cから外れた位置には、プラグ25を軸方向に貫通する貫通孔37が形成されている。第2ねじ部32を前記初期状態とすることによってねじり付勢部材27をねじると、位置決め穴36と貫通孔37とが、第2ねじ部32およびプラグ25の各軸方向に沿う同一直線上に配置される。このときに、プラグ25の他端面25B側から、仮止めピン35を貫通孔37および位置決め穴36の両方に対してこの順で挿通すると、ねじり付勢部材27がねじられたものの付勢力を発揮できない状態で、第2ねじ部32とプラグ25とが相対移動不能に仮組みされ、プラグ25とボールねじ機構26とねじり付勢部材27とが1つのユニット38を構成する。
【0046】
そして、図2に示すように、サポートヨーク24および付勢部材28が既に収容された収容室20に対して他方開口23側からユニット38を挿入し、前述したように、プラグ25のねじ部25Eと内周壁22のねじ部22Aとを組み付ける。組み付けが完了した状態では、第2ねじ部32の一端面32Aは、付勢部材28に接触して付勢部材28の外周部分28Aをある程度弾性変形させていてもよいし、外周部分28Aを弾性変形させない程度に付勢部材28に接触していてもよいし、付勢部材28から僅かに離れていてもよい。
【0047】
次いで、工具等を用いて仮止めピン35を貫通孔37および位置決め穴36から引き抜くと(図3参照)、第2ねじ部32がプラグ25とが相対移動できるようになることから、ねじり付勢部材27が、ねじられる前に戻ろうと、付勢力を発揮できるようになる。付勢力を発揮した状態にあるねじり付勢部材27は、第2ねじ部32を、先ほどねじり付勢部材27をねじるときとは逆向き(ここでは、図2における左側から見て反時計回り)へ向けてプラグ25に対して回転させつつ、サポートヨーク24側(図2における左側)へ進出させるように常に付勢されている。
【0048】
以上によれば、ラック軸支持装置15では、ラック軸8とピニオン7Aとの間やラック軸8とサポートヨーク24との間に摩耗が生じると、ねじり付勢部材27がボールねじ機構26の第2ねじ部32を回転させつつサポートヨーク24側へ不可逆的に進出させる。これにより、サポートヨーク24が、第2ねじ部32によってラック軸8へ押し付けられ、当該摩耗が補償される(摩耗の影響が排除される)。よって、付勢部材28は、当該摩耗にかかわらず、一定の弾性力をサポートヨーク24に与えることができる。換言すれば、当該弾性力が一定となるように(付勢部材28の外周部分28Aの弾性変形量が一定となるように)、付勢部材28を圧縮するサポートヨーク24の他端面24Bと第2ねじ部32の一端面32Aとのクリアランスが一定に保たれる。よって、永続的に、ピニオン7Aとラック8Aとの噛み合い部分の遊びをなくして、当該噛み合い部分での異音を抑制できる。
【0049】
このようにボールねじ機構26を用いて摩耗を補償する場合には、摩耗を補償するために相対移動する複数の部品間(第1ねじ部31および第2ねじ部32間)の摩擦がボール33によって極力抑えられていることから、ボールねじ機構26は、摩耗が生じたときに、当該摩耗に速やかに応答して確実に当該摩耗を補償できる。その一方で、ボールねじ機構26では、第2ねじ部32が急激に移動するようになっていないので、ラック軸8が外力で撓んだ場合(前記摩耗とは無関係の現象がおきた場合)等に、当該現象に過敏に応答してサポートヨーク24がラック軸8側へ急激に突出することは抑制できる。さらに、ボールねじ機構26のようにねじり付勢部材27のねじりをスムーズに第2ねじ部32の直線運動に変換する構成であれば、補償できる摩耗の大きさの範囲を比較的大きく確保できる。
【0050】
よって、ラック軸8をピニオン7Aへ付勢する構成(ラック軸支持装置15)において、摩耗を補償する機能の動作の確実性を向上させることができる。これにより、ラック軸支持装置15では、前述した摩耗に追従して摩耗を補償することと、サポートヨーク24でのラック軸8の摺動特性との両立を、外的影響を極力受けることなく達成できる。そして、ステアリング装置1では、ラック軸8をピニオン7Aへ付勢するラック軸支持装置15において、摩耗を補償する機能の動作の確実性を向上させることができる。
【0051】
また、このようにボールねじ機構26によって(内周壁22の)軸方向(符号Yを付した方向)に精度よく直線移動する第2ねじ部32を用いてサポートヨーク24を動かす場合には、第2ねじ部32やサポートヨーク24の無駄な動き(たとえば前記軸方向に傾斜する方向への傾き)を抑制できる。これにより、当該無駄な動き(いわゆるがたつき)を抑制できる分、サポートヨーク24および第2ねじ部32のそれぞれと内周壁22との隙間を小さく抑えることができる。また、当該無駄な動きを抑制できる分、付勢部材28の圧縮状態を安定させることができるので、当該無駄な動きを勘案して付勢部材28の圧縮量を大きめに確保せずに済み、その分、付勢部材28を圧縮させるために付勢部材28に与える荷重(セット荷重)を低く抑えられる。
【0052】
また、前述した摩擦低減部材39によって、第2ねじ部32と付勢部材28との間の摩擦が低減されるので、ボールねじ機構26は、摩耗が生じたときに、第2ねじ部32と付勢部材との間の摩擦の影響を極力受けることなく、当該摩耗に追従して確実に当該摩耗を補償できる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0053】
図4は、ステアリング装置1において変形例に係るラック軸支持装置15およびその周辺を抜き出して示した模式的な断面図である。なお、図4では、今まで説明した部材と同様の部材には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
また、前述した第1ねじ部31は、プラグ25に連結されていたが(図2参照)、図4に示すように、ラック軸支持装置15が配置される収容室20の内周壁22に一体形成されていてもよい。
【0054】
また、前述したねじり付勢部材27は、コイルばねの代わりに、一端側係止部27Bおよび他端側係止部27Cを有するゴムのブロックやぜんまいであってもよい。
また、内周壁22とサポートヨーク24との間には、潤滑性を確保するためにグリース等を塗布してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…ステアリング装置、7A…ピニオン、8…ラック軸、15…ラック軸支持装置、20…収容室、21…一方開口、22…内周壁、23…他方開口、24…サポートヨーク、25…プラグ、26…ボールねじ機構、27…ねじり付勢部材、28…付勢部材、31…第1ねじ部、31A…内周面、31B…第1ねじ溝、32…第2ねじ部、32F…外周面、32G…第2ねじ溝、33…ボール、34…転動路、39…摩擦低減部材、X…軸方向
図1
図2
図3
図4