(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2において、前記熱収縮チューブの一端と前記第2被覆体との間、および前記熱収縮チューブの他端と前記第1被覆体との間が、ホットメルト接着剤により封止されている電子ユニットの防水構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通例、ケーブルの外被を構成する被覆体とポッティング樹脂とは、異なる樹脂材料で構成されている。したがって、硬化後のポッティング樹脂とケーブルの被覆体との接着性があまり良くないため、防水性が低下するおそれがある。
そこで、本発明の目的は、ケーブル引込孔の防水性を向上することができる電子ユニットの防水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、第1端子(27A,27B,27C)が収容された収容部(40)を区画し、前記収容部に連通するケーブル引込孔(41)を有するケース(25)と、前記第1端子が連結された第2端子(44A,44B,44C)に接続されて被覆された導体(45)を有し、前記ケーブル引込孔を挿通して前記収容部に引き込まれたケーブル(42)と
、前記ケーブル引込孔の内周から突出し、前記ケーブルの外周に密接する環状の封止突起(51)と、前記ケーブル引込孔の内周から突出し、
前記封止突起よりも前記収容部側に配置された非封止突起であって、前記ケーブルの外周に当接
して前記ケーブル引込孔の前記内周と前記ケーブルの前記外周との間に隙間を形成した複数のセンタリング突起(52)と、
前記収容部および前記ケーブル引込孔内の前記隙間に充填されたポッティング樹脂(43)と、を備えた電子ユニットの防水構造(A)を提供する。
【0006】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
また、請求項2のように、前記ケーブルは、前記導体を被覆した第1被覆体(46)と、前記第1被覆体を被覆した第2被覆(47)体と、を有し、前記第2被覆体の前記ケース外側の端部(471)を前記第1被覆体と一体的に被覆した熱収縮チューブ(53)を備えていてもよい。
【0007】
また、請求項3のように、前記熱収縮チューブの一端(531)と前記第2被覆体との間、および前記熱収縮チューブの他端(532)と前記第1被覆体との間が、ホットメルト接着剤(54)により封止されていてもよい。
また、請求項4のように、
前記複数のセンタリング突起は、前記ケーブル引込孔の前記内周の周方向に離隔して配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、ケーブル引込孔の内周から突出してケーブルの外周に当接した複数のセンタリング突起が、ケーブル引込孔と前記ケーブルの芯を揃えることにより
ケーブル引込孔の内周とケーブルの外周
との間に隙間が形成され、その隙間に満遍なくポッティング樹脂を充填することができる。したがって、シール性を格段に高くすることができる。
また、請求項2の発明によれば、第2被覆体の、ケース外側の端部を、第1被覆体と一体的に熱収縮チューブで被覆しているので、第2被覆体の内側への水の侵入を確実に防止することができる。これにより、より
シール性を高めることができる。
【0009】
請求項3の発明によれば、熱収縮チューブと各被覆体との間のシール性を格段に向上することができる
。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子ユニットの防水構造が適用された車両用操舵装置としての電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール2と、ステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0012】
本実施の形態では、操舵補助機構5がステアリングシャフト6にアシスト力(操舵補助力)を与える例に則して説明する。しかしながら、本発明を、操舵補助機構5が後述するピニオン軸にアシスト力を与える構造や、操舵補助機構5が後述するラック軸にアシスト力を与える構造に適用することも可能である。
ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。
【0013】
ステアリングシャフト6の周囲に配置されたトルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に入力された操舵トルクを検出する。トルクセンサ11のトルク検出結果は、電子ユニットとしてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)12に入力される。また、車速センサ90からの車速検出結果がECU12に入力される。中間軸7は、ステアリングシャフト6と転舵機構4とを連結している。
【0014】
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示せず)を介して転舵輪3が連結されている。
ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端(
図1では下端)には、ピニオン16が設けられている。
【0015】
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の途中部には、前記ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることで、転舵輪3を転舵することができる。
【0016】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。減速機構19は、電動モータ18の駆動力が入力される駆動ギヤ(入力軸)としてのウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合う従動ギヤとしてのウォームホイール21とを含む。
【0017】
ウォーム軸20は、図示しない継手を介して電動モータ18の出力軸(図示せず)に連結されている。ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは一体回転可能に連結されている。
電動モータ18がウォーム軸20を回転駆動すると、ウォーム軸20によってウォームホイール21が回転駆動され、ウォームホイール21およびステアリングシャフト6が一体回転する。これにより、操舵補助力がステアリングシャフト6に伝達される。
【0018】
電動モータ18は、ECU12によって制御される。ECU12は、トルクセンサ11からのトルク検出結果、および車速センサ22からの車速検出結果等に基づいて電動モータ18を制御する。具体的には、ECU12では、トルクと目標アシスト量との関係を車速毎に記憶したマップを用いて目標アシスト量を決定し、電動モータ18の発生するアシスト力を目標アシスト量に近づけるように制御する。
【0019】
図2は、電子ユニットの防水構造Aの要部の断面図である。電子ユニットとしてのECU12は、基板23その他の電子部品(図示せず)を収容した、例えばアルミニウム合金製の主ケース24と、主ケース24に一体に取り付けられた、例えば合成樹脂製の副ケース25とを備えている。
図3に示すように、副ケース25(後述する副ケース本体30)内には、例えばトルクセンサ11からの信号をECU12に取り込む配線の端末の端子(図示せず)を連結する端子群26と、車両側の統合ECUとCAN(Controller Area Network:コントローラエリアネットワーク)を介して信号伝達する配線の端末の端子や、バッテリと接続する配線の端末の端子や、アースと接続する配線の端末の端子を、それぞれ、連結する第1端子27A,27B,27C(総称して言うときは、単に第1端子27とも言う)が収容されている。
【0020】
分解側面図である
図4に示すように、副ケース25は、副ケース本体30と、副ケース25の外壁の一部を構成する壁部31を有するコネクタ32とを一体に組み合わせて構成されている。
副ケース本体30は、
図2および
図4に示すように主ケース24の外壁33に設けられた取付孔34を内側から覆う底板35と、底板35から取付孔34を通して主ケース24の外方(
図2では上方)へ延びる第1壁36および第2壁37(
図3参照)と、底板35から延び開放部38aを有する第3壁38と、底板35から延び開放部39aを有する第4壁39とを有している。
【0021】
図2に示すように、電子ユニットの防水構造Aは、第1端子27等が収容された収容部40を区画し、収容部40に連通するケーブル引込孔41を有する副ケース25と、ケーブル引込孔41を通して副ケース25内に引き込まれたケーブル42と、副ケース25内および、ケーブル42とケーブル引込孔41との間の隙間に充填されたポッティング樹脂43とを備えている。ポッティング樹脂43は、液状で充填された後、硬化したものである。
【0022】
本実施形態の主に特徴とするところは、ケーブル42が、対応する第1端子27に接続された第2端子44Aを接続した導体45と、導体45を被覆した第1被覆体46と、第1被覆体46を被覆しスリーブ状の第2被覆体47とを含んでおり、ケーブル42(の第2被覆体47)とケーブル引込孔41との間の隙間に、ポッティング樹脂43が充填されている(すなわち、ケーブル引込孔41内で第2被覆体47がポッティング樹脂43にモールドされている)点である。また、第1被覆体46は、第1樹脂材料(例えばポリエチレン)で構成され、第2被覆体47とポッティング樹脂43とは、第1樹脂材料とは異なる第2樹脂材料(例えばポリウレタン)で構成されている点である。
【0023】
図4に示すように、副ケース本体30は、取付孔34を覆う状態で且つ一部が取付孔34から突出している。収容部40には、主ケース24内に配置された基板23から延びる第1端子27A〜27C(
図2では第1端子27Aのみを示してある)が、副ケース25の底板35を挿通して収容されている。
底板35の上面35aが、液状のポティング樹脂が収容部40内に注入される樹脂ポッティング時に水平とされる基準面BPを構成している。底板35の下面に設けられた凹部35bに、基板23が保持されている。各第1端子27A,27B,27Bの一端は、主ケース24内で基板23の導電部に接続されている。
【0024】
図4に示すように、コネクタ32は、副ケース25に取り付けられた絶縁体48と、絶縁体48によって支持され、対応する第1端子27A,27B,27Cにそれぞれ接続される第2端子44A,44B,44Cとを備えている。各第2端子44A,44B,44Cは、対応するケーブル42の導体45をを接続した第1部分と、対応する第1端子27A,27B,27Cと接続される第2部分とを直交状に有している。
【0025】
絶縁体48は、副ケース本体30に設けられた挿入溝60(
図3も参照)に嵌合された前記壁部31と、壁部31に連結された管状のケーブル引込部49と、壁部31からケーブル引込部49とは反対側に延設され、第2端子44A〜44Cを支持した端子保持部50とを備えている。壁部31は、
図2に示すように副ケース本体30に取り付けられた状態で副ケース25の壁の一部を構成して、収容部40の一部を区画している。ケーブル引込部49は、ケーブル42を副ケース25内に引き込むための前記ケーブル引込孔41を区画している。
【0026】
図5および
図6に示すように、ケーブル引込孔41の入口の内周41aには、ケーブル42の外周(第2被覆体47の外周47aに相当)に密接する少なくとも1つの環状の封止突起51が設けられている。
また、
図5、
図6および
図7に示すように、ケーブル引込孔41の内周41aには、複数の(本実施形態では、周方向に3箇所、軸方向に2箇所の計6個の)センタリング突起52が突出形成されている。センタリング突起52は、ケーブル引込孔41の内周41aの周方向に均等に離隔して配置され、ケーブル42の外周(第2被覆体47の外周47a)に当接することにより、ケーブル引込孔41とケーブル42の芯を揃える機能を果たす。
【0027】
図4に示すように絶縁体48から外部へ引き出されている、ケーブル42の第2被覆体47の端部471(第2被覆体47の、副ケース25外側の端部471)は、
図8に示すように、熱収縮チューブ53によって、第1被覆体46と一体的に被覆されている。また、熱収縮チューブ53の一端531と第2被覆体47との間、および熱収縮チューブ53の他端532と第1被覆体47との間が、ホットメルト接着剤54により封止されている。
【0028】
図5、
図6および
図7に示すように、ケーブル引込孔41の周方向の一部(上部)は、縦溝55に連通しており、縦溝55の内上面55aは、収容部40側に向かうにしたがって上位となる傾斜状に形成されている。これにより、ポッティング樹脂43が、液状で充填されたときに、ケーブル引込孔41内に残存する空気を縦溝55を通して、ケーブル引込孔41から逃がすことができるようになっている。
【0029】
本実施形態によれば、ケーブル引込孔41の内周41aから突出した複数のセンタリング突起52が、ケーブル42の外周(第2被覆体47の外周47a)に当接して、ケーブル引込孔41とケーブル42の芯を揃えることにより、ケーブル42の外周に、均等な隙間を形成できる。その隙間に満遍なくポッティング樹脂43を充填することができる。したがって、シール性を格段に高くすることができる。
【0030】
また、ケーブル42の導体45を被覆し第1樹脂材料で構成された第1被覆体46を、第2被覆体47で被覆しており、その第2被覆体47とポッティング樹脂43とが、同じ第2樹脂材料で構成されている。したがって、ケーブル引込孔41内において、ポッティング樹脂43とケーブル42の外周(第2被覆体47の外周47a)との接着性が格段に向上することにより、高い防水性を確保することができる。
【0031】
また、ケーブル42の第2被覆体47の、副ケース25外側の端部471が、熱収縮チューブ53によって、第1被覆体46と一体的に被覆されているので、第2被覆体47の内側への水の侵入を確実に防止することができる。これにより、より防水性を高めることができる。
また、第2樹脂材料がポリウレタンであれば、ケーブル42の外皮としてもポッティング樹脂43としても十分な機能を果たすことができる。
【0032】
また、第1樹脂材料がポリエチレンであれば、強度、絶縁性等、ケーブル42の内皮としての機能を高くすることができ、また安価である。
ケーブル引込孔41の入口に設けられた封止突起51が、ケーブル42の外周(第2被覆体47の外周47a)に密接するので、ケーブル引込孔41内に侵入した硬化前の液状のポッティグ樹脂が漏れ出すことを、封止突起51によって、抑制することができる。
【0033】
また、熱収縮チューブ53の一端531と第2被覆体47との間、および熱収縮チューブの他端532と第1被覆体46との間が、ホットメルト接着剤54により封止されているので、熱収縮チューブ53と各被覆体46,47との間のシール性を格段に向上することができる。
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲で種々の変更を施すことができる。