特許第5963051号(P5963051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963051
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】車両用エンジン始動制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02N 11/08 20060101AFI20160721BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20160721BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20160721BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20160721BHJP
   B60R 25/06 20060101ALN20160721BHJP
   B60R 25/08 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   F02N11/08 Z
   F02D29/02 K
   F02D29/02 321B
   F02D29/00 C
   F02D29/00 F
   F02D29/00 G
   B60T17/00 C
   !B60R25/06
   !B60R25/08
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-251616(P2012-251616)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-98367(P2014-98367A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】西澤 浩光
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−283727(JP,A)
【文献】 特開2005−239152(JP,A)
【文献】 特開2006−193139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 1/00−99/00
F02D 29/00−29/02
F02D 45/00
B60T 17/00
B60R 25/06−25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気管負圧によりブレーキ操作力をアシストするアシスト手段を備えた車両にあって、ブレーキペダルのストローク量を検知する検知手段によってペダルの踏込みが検知された状態であり、
AT車の場合は、シフトレバーのポジションを検出する検出手段によってシフトポジションがN(ニュートラル)又はP(パーキング)位置にあることが検出された場合であり、
MT車の場合は、クラッチの断続を検知する検知手段が、クラッチが切れていることを検知した場合であって、
エンジンスイッチの操作状態を認識する認識手段によりエンジンスイッチが押されたことが認識された場合にのみ、エンジンを始動させる車両用エンジン始動制御方法において、
前記ブレーキペダルのストローク量を検知する検知手段によってペダルの踏込みが検知されていない状態で、前記エンジンスイッチの操作状態を認識する認識手段によってエンジンスイッチが押し続けられている状態が認識された場合に、エンジンを始動させることなくクランキングさせる手段により吸気管負圧を発生させることを特徴とする車両用エンジン始動制御方法。
【請求項2】
エンジンを始動させることなくクランキングさせる手段が、ブレーキブースタの負圧値を検出する検出手段が、ブレーキブースタの負圧値が閾値から0までの範囲の値になっていることを検出した状態で、エンジンスイッチの操作状態を認識する認識手段によってエンジンスイッチが押し続けられている状態が認識された場合に、作動し負圧を発生することを特徴とする請求項1記載の車両用エンジン始動制御方法。
【請求項3】
エンジンを始動させること無くクランキングさせる手段が、シートへの着座を検出する検出手段が着座を検出した状態で、エンジンスイッチの操作状態を認識する認識手段によってエンジンスイッチが押し続けられている状態が認識された場合に、
作動し負圧を発生させることを特徴とする請求項1記載の車両用エンジン始動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーを用いることなくプッシュ式のエンジンスイッチの押圧操作によってエンジンを始動させるキーレスプッシュスタート方式を採用する車両のエンジン始動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンを始動させる方式として、キーを用いることなくエンジンを始動させるキーレスプッシュスタート方式を採用する車両が普及しつつある。このキーレスプッシュスタート方式は、ユーザーが所持する無線携帯機と車両に搭載された送受信機との間で無線通信を行うことによってID認証を行い、ID認証が正常に行われると、運転者がブレーキペダルを踏み込みながらエンジンスイッチ(エンジンスタート/ストップスイッチ)を押すことによってエンジンを始動させるものである。
【0003】
ところで、車両には、吸気管負圧を利用して運転者によるブレーキペダルの操作力(踏力)をアシストするアシスト手段(倍力装置)が設けられているが、例えばエンジン停止中にブレーキペダルの踏み込みを繰り返すと、ブレーキブースタに残留している負圧が消費されて踏力アシストが殆ど得られない状態となってしまう。この状態でエンジンを始動させようとして運転者がブレーキペダルを踏み込んでも、ブレーキペダルが非常に重くなるためにブレーキスイッチによってブレーキペダルの踏み込みが検知されず、エンジンスイッチを押してもエンジンを始動させることができないという問題が発生する。
【0004】
そこで、特許文献1,2には、ブレーキペダルの踏み込みがブレーキスイッチによって検知されない状態であっても、運転者がエンジンスイッチを通常よりも長く押し続けたり(長押し)、或いはエンジンスイッチの押圧操作を規定回数繰り返すことによってエンジンの始動を許可するようにしたエンジン始動制御システムが提案されている。
【0005】
又、特許文献3には、上記と同様にブレーキペダルの踏み込みがブレーキスイッチによって検知されない状態であっても、第1スイッチであるエンジンスイッチと第2スイッチ(ハザードスイッチ)が押されるとエンジンの始動を許可するようにしたエンジン始動制御システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4301194号公報
【特許文献2】特許第4250149号公報
【特許文献3】特許第4333690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3において提案されたエンジン始動制御システムにおいては、ブレーキスイッチによってブレーキペダルの踏み込みを検知しない場合であっても、エンジンスイッチを長押しする等の特定条件が満足されたときにスタータに緊急時の駆動電流を流すためのスタータ駆動回路を別途設ける必要があるため、構成が複雑化するという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ブレーキを踏み込んでいるにも拘わらず、その踏み込みが検知されないためにエンジンを始動することができないという不具合をハード的な追加を要することなく解消することができる車両用エンジン始動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、吸気管負圧によりブレーキ操作力をアシストするアシスト手段を備えた車両にあって、ブレーキペダルのストローク量を検知する検知手段によってペダルの踏込みが検知された状態であり、
AT車の場合は、シフトレバーのポジションを検出する検出手段によってシフトポジションがN(ニュートラル)又はP(パーキング)位置にあることが検出された場合であり、
MT車の場合は、クラッチの断続を検知する検知手段が、クラッチが切れていることを検知した場合であって、
エンジンスイッチの操作状態を認識する認識手段によりエンジンスイッチが押されたことが認識された場合にのみ、エンジンを始動させる車両用エンジン始動制御方法において、
前記ブレーキペダルのストローク量を検知する検知手段によってペダルの踏込みが検知されていない状態で、前記エンジンスイッチの操作状態を認識する認識手段によってエンジンスイッチエンジンスイッチが押し続けられている状態が認識された場合に、エンジンを始動させることなくクランキングさせる手段により吸気管負圧を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、エンジン停止中に運転者がブレーキペダルの踏み込みを繰り返したためにブレーキブースタの残圧が少なくなり、次にエンジンを始動しようとして運転者がブレーキペダルを踏み込んでも、該ブレーキペダルが重いためにその踏み込みがブレーキスイッチによって検知されない状態であっても、エンジンスイッチを押せば、スタータが駆動されてエンジンを始動させることなくクランキングがなされて吸気管負圧が発生する。そして、この吸気管負圧がブレーキブースタに補充されるために運転者はブレーキペダルをその踏み込みがブレーキスイッチによって検知される位置まで容易に踏み込むことができる。このため、運転者がブレーキを踏み込んでいるにも拘わらず、その踏み込みが検知されないためにエンジンを始動することができないという不具合が解消される。そして、このような効果はハード的な追加を要することなく得られるため、従来の構成をそのまま流用することができ、構造の複雑化やコストアップを招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両用エンジン始動制御装置のシステム構成図である。
図2】本発明に係る車両用エンジン始動制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
図3】本発明に係る車両用エンジン始動制御方法の制御タイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は車両用エンジン始動制御装置のシステム構成図であり、本発明に係るエンジン始動制御方法を採用するを備える車両は、エンジン1を駆動源として走行するAT車(オートマチック車)であって、これにはブレーキ装置2のブレーキペダル3への操作力(踏力)をアシストするための踏力アシスト手段が設けられている。
【0014】
上記ブレーキ装置2は、上端を中心として車両前後方向に揺動する前記ブレーキペダル3を備えており、このブレーキペダル3は、ブレーキ操作時の運転者の踏力を軽減するためのアシスト手段を構成するブレーキブースタ4を介してマスタシリンダ5に連結されており、マスタシリンダ5は、運転者によるブレーキペダル3の踏み込み量に応じたブレーキ液圧を発生する。尚、ブレーキペダル3の近傍には、該ブレーキペダル3の踏み込みを検知するためのブレーキスイッチ6が配置されており、このブレーキスイッチ6からの検知信号は、本発明に係るエンジン始動制御装置を構成するECU7に送信される。
【0015】
ここで、車両の左右の前輪8L,8Rと後輪9L,9Rにはディスクブレーキ10がそれぞれ設けられており、各ディスクブレーキ10には、前記マスタシリンダ5から延びるブレーキ配管11,12,13,14がそれぞれ接続されている。
【0016】
ところで、本実施の形態に係る車両は、エンジン1の始動方式としてキーを用いないキーレスプッシュスタート方式を採用している。このキーレスプッシュスタート方式は、ユーザーが所持する無線携帯機と車両に搭載された送受信機との間で無線通信を行うことによってID認証を行い、ID認証が正常に行われると、運転者がブレーキペダル3を踏み込みながら運転席の前方に設置されたエンジンスイッチ(エンジンスタート/ストップスイッチ)15を押すことによってエンジン1を始動させる方式である。
【0017】
尚、車両には、運転者が運転席に着座したか否かを検出する着座センサ16、本実施の形態に係るAT車においてはシフトレバー17のシフトポジションを検出するポジションセンサ18、ブレーキブースタ4の圧力(負圧)を検出する負圧センサ19等が設けられており、これらの着座センサ16、ポジションセンサ18、負圧センサ19は前記ブレーキスイッチ6と共の前記ECU7に電気的に接続されている。又、エンジン1の始動に際して該エンジン1をクランキングさせるスタータ20もECU7に電気的に接続されており、該スタータ20は、その駆動が前記ブレーキスイッチ6、エンジンスイッチ15、着座センサ16、ポジションセンサ18、負圧センサ19からの信号に基づいてECU7によって制御される。
【0018】
而して、例えば、エンジン1の停止中に運転者がブレーキペダル3の踏み込みを繰り返したためにブレーキブースタ4の残圧(負圧)が少なくなり、次にエンジン1を始動しようとして運転者がブレーキペダル3を踏み込んでも、該ブレーキペダル3が重いためにその踏み込みがブレーキスイッチ6によって検知されない状態となるため、エンジンスイッチ15を押してもエンジン1が始動しないという不具合が発生する。
【0019】
そこで、本発明においては、ブレーキペダル3の踏込操作を行っているにも拘わらず、その踏み込みがブレーキスイッチ6によって検知されない状態においてエンジンスイッチ15が押されると、エンジン1を始動させることなくクランキングさせて吸気管負圧を発生させるようにしている。そして、クランキングによって発生する吸気管負圧がブレーキブースタ4に補充されたために、ブレーキペダル3の踏み込みがブレーキスイッチ6によって検知されるとエンジン1を始動させるようにしている。以下、このことを図2及び図3に示すフローチャートとタイミングチャートに従って説明する。
【0020】
先ず、ECU7は、エンジンスイッチ15がONされた(押された)か否かを判定し(図2のステップS1)、エンジンスイッチ15が図3に示すように時間T1においてONされれば(ステップS1での判定結果がYesであれば)、ポジションセンサ18によって検出されたシフトレバー17のシフトポジションがN(ニュートラル)又P(パーキング)であるか否かが判定され(ステップS2)、シフトポジションがN又はPである場合(ステップS2での判定結果がYesである場合)には、ブレーキスイッチ6がONであって、ブレーキペダル3が踏み込まれたか否かが判定される(ステップS3)。尚、エンジンスイッチ15がONされていないとき(ステップS1の判定結果がNoである場合)、シフトポジションがN又はP以外である場合(ステップS2での判定結果がNoである場合)には、処理はステップS1に戻る(ステップS6)。
【0021】
エンジンスイッチ15が押され、シフトポジションがN又はPにあって、且つ、ブレーキペダル3が踏み込まれたことがブレーキスイッチ6によって検知されると(ステップS3での判定結果がYesであると)、スタータ20が駆動され、エンジン1がクランキングされて正常に始動され(ステップS4)、処理は終了する(ステップS5)。
【0022】
他方、ブレーキスイッチ6がOFFで、例えば、運転者がブレーキペダル3を踏み込んでいるにも拘わらず、何らかの理由によってブレーキブースタ4の残圧(負圧)が図3に示すように所定の閾値よりも小さい時間T1〜T3の間はブレーキペダル3が重いために運転者が相当な力でブレーキペダル3を踏み込んでも、その踏み込みがブレーキスイッチ6によって検知されるに至らない。このような場合には、ブレーキスイッチ6はOFFのままで、ブレーキペダル3の踏み込みが検知されない(ステップS3での判定結果がNoである)ため、負圧センサ19によって検出されたブレーキブースタ4の負圧が図3に示す閾値(ブレーキペダル3の踏み込みによってこれが移動する限界値)以下であるか否かが判定される(ステップS7)。
【0023】
ブレーキブースタ4の負圧が図3に示す閾値以上であって(ステップS7での判定結果がNoであって、ブレーキペダル3を軽く踏み込むことができる場合)においてもブレーキベダル3が踏み込まれていないためにブレーキスイッチ6がOFFである場合には、エンジンスイッチ15をONしている場合であっても、安全のためにエンジン1の始動は行わず、運転席前方の不図示のコンビネーションパネル上に設置された電源ポジションの表示を「IG ON」から「IG OFF」に切り替え(ステップS10)、処理はステップS1へと戻る(ステップS11)。
【0024】
他方、ブレーキブースタ4の負圧が図3に示す閾値以下である場合(ステップS7での判定結がYesである場合)、ブレーキペダル3が重く、これを運転者が踏み込んでもその踏み込みがブレーキスイッチ6によって検知されない。このような場合、運転者がエンジンスイッチ15を所定時間(図3に示す時間T1〜T2までの時間)だけ長押ししたか否かが判定される(ステップS8)。運転者がエンジンスイッチ15を長押しした場合(ステップS8での判定結果がYesである場合)には、着座センサ16によって運転者が運転席に着座しているか否かが判定される(ステップS9)。
【0025】
上記状態において、運転者が運転席に着座している場合(ステップS9での判定結果がYesである場合)、所定時間(図3に示す時間T2)においてスタータ20を駆動し、エンジン1を始動させることなくクランキングのみを行う(ステップS12)。他方、エンジンスイッチ15を長押ししていない場合(ステップS8での判定結果がNoである場合)、或いはエンジンスイッチ15を長押ししていても運転者が運転席に着座していない場合(ステップS9での判定結果がNoである場合)には、エンジン1をクランキングさせることなく、運転席前方のコンビネーションパネル上の電源ポジションの表示を「IG ON」から「IG OFF」に切り替え(ステップS10)、処理はステップS1へと戻る(ステップS11)。
【0026】
而して、前述のように所定時間(図3に示す時間T2)においてエンジン1のクランキングを行うと、吸気管負圧が図1に示すブレーキブースタ4に補充されて該ブレーキブースタ4の負圧が図3に示すように次第に高くなる。そして、ブレーキブースタの負圧が図3に示すように時間T3において閾値を超えると、ブレーキブースタ4の負圧によるアシスト力によってブレーキペダル3が軽くなるため、運転者の踏み込みによってブレーキペダル3はブレーキスイッチ6によってその踏み込みが検知される位置まで移動する。そして、エンジン1のクランキングを行っている間にブレーキスイッチ6がONしたか否かが判定され(ステップS13)、図3に示す時間T3においてブレーキペダル3の踏み込みがブレーキスイッチ6によって検知されると(ステップS13での判定結果がYesであると)、図3に示す時間T4においてエンジン1のクランキングが停止されて該エンジン1が始動され(ステップS14)、処理は終了する(ステップS15)。
【0027】
他方、エンジン1のクランキングを行っている間にブレーキスイッチ6がONしないでブレーキペダル3の踏み込みが検知されない場合(ステップS13での判定結果がNoである場合)には、エンジンスイッチ15のON(押圧)が継続しているか否かが判定され(ステップS16)、エンジンスイッチ15のONが継続している場合(ステップS16での判定結果がYesである場合)には、ステップS9〜S16までの処理が繰り返される。
【0028】
上記状態において、エンジンスイッチ15のONが継続されず、運転者がエンジンスイッチ15を押す動作を途中で中止した場合(ステップS16での判定結果がNoである場合)には、その時点でエンジン1のクランキングを終了し(ステップS17)、処理はステップS1に戻る(ステップS18)。
【0029】
以上のように、本発明に係るエンジン始動制御方法においては、例えば、エンジン1の停止中に運転者がブレーキペダル3の踏み込みを繰り返したためにブレーキブースタ4の残圧が少なくなり、次にエンジン1を始動しようとして運転者がブレーキペダル3を踏み込んでも、該ブレーキペダル3が重いためにその踏み込みがブレーキスイッチ6によって検知されない状態であっても、エンジンスイッチ15を長押しすれば、スタータ20が駆動されてエンジン1を始動させることなくクランキングがなされて吸気管負圧が発生する。そして、この吸気管負圧がブレーキブースタ4に補充されるために運転者はブレーキペダル3をその踏み込みがブレーキスイッチ6によって検知される位置まで容易に踏み込むことができる。このため、運転者がブレーキペダル3を踏み込んでいるにも拘わらず、その踏み込みが検知されないためにエンジン1を始動することができないという不具合が解消される。そして、ブレーキペダル3の踏み込みがブレーキスイッチ6によって検知されると、そのときにエンジンスイッチ15が継続して押されている場合には、エンジン1の始動条件が満足されて該エンジン1が正常に始動される。
【0030】
従って、本発明によれば、ブレーキペダル3を踏み込んでいるにも拘わらず、その踏み込みが検知されないためにエンジン1を始動することができないという不具合が解消される。そして、このような効果は、従来のシステムをそのまま流用することによって得られ、ハード的な追加が不要となるため、構造の複雑化やコストアップを伴うことがない。
【0031】
又、本実施の形態においては、運転席に運転者が着座し、シフトレバー17のシフトポジションがN(ニュートラル)又はP(パーキング)位置にある(エンジン1が始動しても車両が動くことがない)ことの安全が確認された上で、エンジン1をクランキングさせ、ブレーキペダル3の踏み込みが検知されるとエンジン1を始動させるようにしたため、エンジン1が始動した状態において車両に高い安全性が確保されるという効果が得られる。尚、安全確認の項目にエンジンフードが閉じているという要件を加えても良い。又、本実施の形態に係るAT車ではなく、MT車(マニュアル.車)においてはクラッチが切れている(エンジンが始動しても車両が動かない)ことをエンジンのクランキングを行うための要件とすべきである。
【符号の説明】
【0032】
1 エンジン
2 ブレーキ装置
3 ブレーキペダル
4 ブレーキブースタ(アシスト手段)
6 ブレーキスイッチ
7 ECU(エンジン始動制御装置)
15 エンジンスイッチ
16 着座センサ
17 シフトレバー
18 ポジションセンサ
19 負圧センサ
20 スタータ
図1
図2
図3