特許第5963066号(P5963066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963066
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20060101AFI20160721BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20160721BHJP
   G03B 17/56 20060101ALI20160721BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G03B17/02
   G03B15/00 S
   G03B17/56 H
   H04N5/225 E
   H04N5/225 C
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-129634(P2015-129634)
(22)【出願日】2015年6月29日
(62)【分割の表示】特願2011-284436(P2011-284436)の分割
【原出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-207020(P2015-207020A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘典
【審査官】 越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−157194(JP,A)
【文献】 特開2007−316167(JP,A)
【文献】 特開2000−249887(JP,A)
【文献】 特開2008−148276(JP,A)
【文献】 特開平06−048273(JP,A)
【文献】 特開2011−245989(JP,A)
【文献】 特開2011−34101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G03B 15/00
G03B 17/56
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体正面にレンズ又はレンズカバーを設け、筐体内部にカメラ機構を備えたカメラ装置において、前記カメラ装置を、前記レンズが斜め下方を撮像するように設置したとき、前記筐体の上面に付着した水滴を集め、前記水滴をレンズに対して上側から流下させるための誘導路を前記筐体の上面部分に形成し、流下させた水滴と前記レンズ又はレンズカバーの表面に付着した水滴とを結合させてともに流下させることを特徴とするカメラ装置。
【請求項2】
前記誘導路は、2つのリブを設けることによって樋状に形成したものであり、前記リブ同士の間隔は前記筐体の背面側から正面側に向って狭くなっていることを特徴とする請求項1記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記レンズ又はレンズカバーの下部に付着した水滴を除去するために、前記筐体の側面に付着した水滴を側方からレンズ又はレンズカバーの下部に対して流下させるための誘導路を前記筐体の側面にさらに形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記レンズ又はレンズカバーに付着した水滴を除去するために、前記筐体の側面に付着した水滴を側方からレンズ又はレンズカバーに対して流下させるための誘導路を前記筐体の側面にさらに形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記誘導路は、前記筐体の上面部分に背面側から正面側に向かって連続した溝を複数形成したものであることを特徴とする請求項1記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記誘導路は、前記筐体の上面部分が正面視において中央が窪み両側が高くなる様に左右にテーパー面を形成したものであることを特徴とする請求項1記載のカメラ装置。
【請求項7】
前記筺体の表面に撥水加工を施したことを特徴とする請求項1乃至6記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラ等の水滴が付着する環境下で使用されるカメラ装置において、レンズ表面に付着した水滴を除去するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車において後方確認又は側方確認等のために車載カメラの設置が行われるようになっている。この車載カメラは雨天時においても使用されるため、車載カメラのレンズに水滴が付着してカメラで撮像した画像が見難くなるという問題が生じる。
【0003】
このような問題を課題としたものとして、特許文献1乃至3が既に提案されている。特許文献1には、車両が走行することによって自然に通風路に風が取り込まれてその通風路の出口から放出される風によって車載カメラ等の対象物に付着した塵、水滴などを除去する風圧発生装置が記載されている。特許文献2には、カメラ本体の外側に防水ハウジングを設けてこの防水ハウジングを振動させて水滴を除去する防水ハウジングシステムが記載されている。特許文献3には、レンズを鏡筒に固定するための環状の押え部材の前方表面に内周端から外周端にかけてレンズ表面についた水滴を押え部材の外周部から撮像範囲外に導出する役目を果たす溝を形成したレンズアッシが記載されている。
【特許文献1】特開2009−286216号公報
【特許文献2】特開2010−271435号公報
【特許文献3】特開2007−316167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラのレンズ部分が大きい場合には、ワイパーを用いる水滴除去方法も有効であるが、車載カメラのように小型カメラのレンズ部分の水滴を除去するにはあまり現実的ではない。また、特許文献1や特許文献2による送風又は振動による水滴除去の方法も、形状及び質量の小さい水滴に対しては水滴の大きさや重さに対して水滴の付着力が大きいため、効果が小さく、有効に機能しない。さらに、特許文献3に記載の溝による水滴除去については、水滴が外周の溝に触れないとその効果が得られず、水滴がレンズ中央に付着している場合には効果が得られないため、効果が限定的であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、レンズに付着した水滴を効率よく除去可能なカメラ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1は、筐体正面にレンズ又はレンズカバーを設け、筐体内部にカメラ機構を備えたカメラ装置において、前記カメラ装置を、前記レンズで斜め下方を撮像するように設置したとき、前記筐体の上面に付着した水滴を集め、前記水滴をレンズに対して上側から流下させるための誘導路を前記筐体の上面部分に形成し、流下させた水滴と前記レンズ又はレンズカバーの表面に付着した水滴とを結合させてともに流下させることを特徴とするカメラ装置である。
【0007】
本発明の請求項2は、前記誘導路は、2つのリブを設けることによって樋状に形成したものであり、前記リブ同士の間隔は前記筐体の背面側から正面側に向って狭くなっていることを特徴とする請求項1記載のカメラ装置である。
【0008】
本発明の請求項3は、前記レンズ又はレンズカバーの下部に付着した水滴を除去するために、前記筐体の側面に付着した水滴を側方からレンズ又はレンズカバーの下部に対して流下させるための誘導路を前記筐体の側面にさらに形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のカメラ装置である。
【0009】
本発明の請求項4は、前記レンズ又はレンズカバーに付着した水滴を除去するために、前記筐体の側面に付着した水滴を側方からレンズ又はレンズカバーに対して流下させるための誘導路を前記筐体の側面にさらに形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のカメラ装置である。
【0010】
本発明の請求項5は、前記誘導路は、前記筐体の上面部分に背面側から正面側に向かって連続した溝を複数形成したものであることを特徴とする請求項1記載のカメラ装置請求項1乃至4に加えて、前記筺体の側面に付着した水滴を側方からレンズに対して流下させるための誘導路を前記筺体の側面にさらに形成したことを特徴とするカメラ装置である。
【0011】
本発明の請求項6は、前記誘導路は、前記筐体の上面部分が正面視において中央が窪み両側が高くなる様に左右にテーパー面を形成したものであることを特徴とする請求項1記載のカメラ装置である。
本発明の請求項7は、前記筺体の表面に撥水加工を施したことを特徴とする請求項1乃至6記載のカメラ装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カメラ装置を、レンズが斜め下方を撮像するように設置したとき、筐体の上面に付着した水滴を集めレンズに対して上側から流下させるための誘導路を前記筐体の上面部分に形成したので、筺体上面に付着した水滴をレンズに対して上側から流下させることでレンズ表面に付着した水滴と結合して共に流下させて除去できるため、カメラによって撮像する画像がレンズ表面に付着した水滴によって不明瞭となることを防止することが可能となる。
【0013】
誘導路としては、リブによる樋状の形状、誘導溝、テーパー面などの態様があるが、いずれによっても筺体上面に付着した水滴を効率的に集めてレンズに対して上側から流下させることができる。
【0014】
また、誘導路を筺体の側面にも形成することで、例えば、レンズの下部と筺体との境界部分において落下せずに留まっている水滴を除去することができ、これにより、撮像画像の下部に水滴が映り込む現象を軽減することが可能となる。
【0015】
さらに、前記筺体の表面に撥水加工を施すことによって、大きくなった水滴が転がり易くなり、誘導路による水滴を集める機能がより高まる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるカメラ装置10の実施例1の構成を表したものであり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
図2】本発明によるカメラ装置10の実施例2の構成を表した正面図である。
図3】本発明によるカメラ装置10の実施例3の構成を表した平面図である。
図4】本発明によるカメラ装置10の実施例4の構成を表した正面図である。
図5】カメラ装置10の概略の構成を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によるカメラ装置は、雨滴などの水滴がレンズに付着する環境において使用されることを前提としたものであり、自動車のバックモニターのための車載カメラ等に利用されるものを想定している。図5に示すように、カメラ装置10は、筺体11の正面中央にレンズ12が配置され、後方側にブラケットなどに角度調整して固定するための固定部13が設けられている。固定部13としては、図5のようにフリーで角度調整した後にネジ止めよって固定する方法の他に、歯車などの部品を噛ませることによって所定間隔で角度調整を可能にした方法など、さまざまな固定方法が存在するが、本発明は、固定部13の固定手段にかかわらず、筺体11部分における構造によってレンズ12に付着した水滴を効率よく除去するものであるため、図1乃至図4及び以降の説明においては、固定部13の構造については説明を省略する。
【実施例1】
【0018】
図1に示すのは、本発明によるカメラ装置10の実施例1の構成を表したものであり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。この図1に示すカメラ装置10は、図5と同様に、筺体11の正面中央にレンズ12が配置されたものである。ここで、図1(a)及び(b)において、14は、筺体11の上面に付着した水滴Aをレンズ12に対して上側から流下するための誘導路としてリブである。このリブ14は、図1(b)からもわかるように、筺体11の上面から一定の高さをもって形成されている。このリブ14を筺体11の上面に2つ設け、かつ、平面視において筺体11の後方側から正面側に近づくにつれて初めは平行でその後2つのリブ14の間隔を狭めて、最も正面側の部分においてリブ14の間隔がレンズ12の幅以内となるように形成する。このように形成した2つのリブ14と筺体11の上面とによって樋状に形成されることで、水滴Aを集める働きをする誘導路として機能する。また、図1(b)において、15は、筺体11の側面に付着した水滴Aを側方からレンズ12の下部に対して流下させるための誘導路としてのリブである。この図1(b)においては、リブ15は凸状部として形成しているが、リブ上面が90°折れ曲がった断面がL字状になるように構成して文字通り樋状に形成するようにしてもよい。
【0019】
ここで、水滴については、自然現象として次の2つの性質が知られている。1つは、水玉同士が接触すると一つの大きな水玉に成長する性質であり、もう1つは、大きな水玉ほど重力により下方へ流れ落ちやすくなる性質である。これらの性質を利用して、レンズ12に付着した水滴Bを効率よく除去するのが本発明の特徴である。
【0020】
前述の通り、本発明によるカメラ装置10は、自動車のバックモニターのための車載カメラ等に利用されることを想定しており、この場合、カメラ装置10は、斜め下方を撮像出来るように斜め下方に傾けて設置される。よって、このような状況においては、筺体11の上面に付着した水滴Aは、筺体11の上面が傾斜面となってレンズ12に向かって水滴が落ちる方向に重力が働く。よって、筺体11の上面に付着した水滴Aは、レンズ12の設けられた正面側に向かって流下するとともに、徐々に近接する水滴Bと結合してより大きな水滴となっていくということになる。このとき、図1(a)及び(b)に示すように、筺体11の上面に2つのリブ14を設けることによって、正面側に流下する水滴Aが必ずレンズ12の表面を通過するようにする。このような構成によって、レンズ12の表面に付着した水滴Bを筺体11の上面からの水滴Aと結合させてともに流下させて除去することができる。これにより、カメラによって撮像する画像が水滴Bによって不明瞭となることを防止することが可能となる。
【0021】
また、レンズ12の下部と筺体11との境界部分において、水滴Cが流下せずに留まる現象が生じる。この部分の水滴Cを効率的に除去するために、図1(b)に示すように、筺体11の側面に付着した水滴Dを側方からレンズ12の下部に対して流下させるための誘導路としてのリブ15を形成した。これにより、撮像画像の下部に水滴Cが映り込む現象を軽減することが可能となる。
【0022】
以上のように、本発明によるカメラ装置10は、レンズ12の表面に付着して留まる水滴Bを除去するために、筺体11の上面に付着した水滴Aをレンズ12に対して上側から流下させるための誘導路としてリブ14を設け、また、レンズ12の下部において筺体11との境界部分に留まっている水滴Cを除去するために、筺体11の側面に付着した水滴Dを側方からレンズ12の下部に対して流下させるための誘導路としてのリブ15を設けたので、カメラによって撮像する画像が水滴B、Cによって不明瞭となることを防止することが可能となる。
【実施例2】
【0023】
前記実施例1では、筺体11の上面に形成したリブ14と、筺体11の側面に付着した水滴Eを側方からレンズ12の下部に対して流下させるための誘導路としてのリブ15とを設けているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図2に示すように、筺体11の側面に付着した水滴Eをレンズ12に対して側方から流下させるための誘導路としてのリブ16を更に追加するような構成であってもよい。このような構成とすることで、レンズ12の表面に付着して留まる水滴Bをより効率的に除去することが出来る。
【実施例3】
【0024】
前記実施例1、2においては、誘導路としてのリブ14乃至16を形成して水滴A、D、Eを誘導する構成としていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、筺体11の上面に誘導路としての誘導溝17を複数形成するようにしてもよい。誘導溝17は、図3に示すように、正面側から背面側に向かうにつれて互いの間隔が広がるように放射状に形成することが好ましい。誘導溝17を形成することによって、水滴が溝の毛細管現象によって誘導されて、筺体11の上面に付着した水滴をレンズ12に対して上側から流下するための誘導路として機能する。
【実施例4】
【0025】
前記実施例1、2においては、誘導路としてのリブ14乃至16を形成して水滴A、D、Eを誘導する構成としていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、筺体11の上面部分が正面視において中央が窪み外側が高くなる様に左右にテーパー面18を設け、これを水滴の誘導路としてもよい。このような構成であっても、筺体11の上面に付着した水滴をレンズ12に対して上側から流下させることが可能である。
【0026】
前記実施例1乃至4においては、筺体11の断面が概略正方形となる形状のものを用いて説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、概略円筒形の筺体からなるカメラ装置であっても、前記実施例1乃至4の発明は同様に適用可能である。また、本実施例ではレンズ表面に水滴を流下させ、レンズ表面に留まる水滴を除去する例を示したが、レンズを覆う様に透明なレンズカバー19を設け、レンズを保護する構造とした場合でも本発明は適用可能であり、レンズカバー19に付着した水滴を効果的に除去することができる。
【0027】
前記実施例1乃至4に加えて、更に、筺体11の表面に撥水加工を施すことで、大きくなった水滴が転がり易くなり、誘導路による集水機能がより高まるという効果がある。
【符号の説明】
【0028】
10…カメラ装置、11…筺体、12…レンズ、13…固定部、14…リブ、15…リブ、16…リブ、17…誘導溝、18…テーパー面。19…レンズカバー、A…水滴、B…水滴、C…水滴、D…水滴、E…水滴
図1
図2
図3
図4
図5