【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、研究成果最適展開支援プログラム、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
TANI, M., et al.,Efficient Electro-Optic Sampling Detection of Terahertz Radiation via Cherenkov Phase Matching,遠赤外領域開発研究,日本,福井大学 遠赤外領域開発研究センター,2011年 6月,第12巻,第193-199頁
【文献】
K. Iwaszczuk et al.,Terahertz field enhancement to the MV/cm regime ina tapered parallel plate waveguide,OPTICS EXPRESS,2012年 4月 9日,Vol.20,No.8,8344-8354
【文献】
SCHELLER, M., et al.,Heterodyne Detection of Intracavity Generated Terahertz Radiation,IEEE TRANSACTIONS OF TERAHERTZ SCIENCE AND TECHNOLOGY,2012年 5月,Vol. 2, No. 3,pp. 271-277
【文献】
RANGEL, N. L., et al.,Graphene Signal Mixer for Sensing Applications,J. Phys. Chem. C,2011年,115,pp. 12128-12134
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電磁波照射手段から照射された電磁波を、少なくとも表面が金属で形成されたV溝に導入した後、このV溝の先端部まで伝搬させて増強することを特徴とする請求項1に記載の電磁波検出方法。
前記位相整合手段及び前記和差周波発生手段が、一方の傾斜面から入射した前記電磁波をチェレンコフ位相整合角で他方の傾斜面に出力されるように形成されたプリズムと、前記他方の傾斜面に形成された非線形光学結晶との結合体であり、
前記プリズムを前記V溝の先端部に配置したこと、
を特徴とする請求項5又は6に記載の電磁波検出装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[装置構成]
図1に本発明の装置構成をブロック図で示す。
図1の装置は、サンプリング光を照射するサンプリング光照射部1と、検出対象の電磁波であるテラヘルツ(以下、「THz」と記載する)波を照射するTHz光照射部2と、THz光の位相調整を行う位相整合部3と、THz光照射部2から照射されたTHz光を金属の表面プラズモンと結合させて増強する増強部9と、位相調整及び増強されたTHz光とサンプリング光とを光結合して和周波を発生させる和差周波発生器4と、この和差周波発生器4からの出力から和周波成分を検出する検出器5とを有する。
【0014】
[サンプリング光照射部1及びTHz光照射部2]
サンプリング光照射部1やTHz光照射部2としてはフェムト秒レーザー装置を用いることができる。なお、これらレーザー装置から照射されるレーザー光を公知の2倍波発生器に通すことで、半分の波長のレーザー光に変換してもよい。また、サンプリング光照射部1から照射されたサンプリング光は、次に説明する位相整合部3でTHz光と光結合できるように、公知の遅延手段によって位相整合部3に入射されるタイミングが調整される。
【0015】
[増強部9]
この実施形態の増強部9は、THz光をV形の溝(V溝)内の金属の表面プラズモンと結合させ、前記V溝の先端に集束させることでTHz光を増強するものである。このような増強部9の原理としては、9 April
2012/Vol.20,No.8/OPTICS EXPRESS 8355に掲載されたK. Iwaszczukらによる”Terahertz field enhancement to the MV/cm regime in
a tapered parallel plate waveguide”を利用することができる。
表面プラズモンとの結合を生じさせるものであれば、金属の種類は特に問わないが、金(Au)や銀(Ag)を好適に用いることができる。アルミニウムや鉄などで形成された金属製のブロックにV溝を形成し、V溝の内面に金(Au)や銀(Ag)等の金属をメッキ又は蒸着等してもよいし、樹脂やセラミック等の非金属材料のブロックにV溝を形成し、V溝の内面に金(Au)や銀(Ag)等の金属層を形成してもよい。
V溝の頂部の角度(
図4中、符号αで示す角度)はできるだけ小さいほうがよいとされるが、V溝の角度を入射するTHz光のビーム集束角に合わせることで、V溝の頂部の角度αが大きくても効率よくTHz光を集束させることができる。最適なV溝の頂部の角度αは、THz光のビーム集束角を目安に最適値を実験等で求めることができ、例えば、THz光のビーム集束角が18°の場合には、V溝の頂部の角度αは20°程度とすることができる。
V溝の先端に狭幅の平行溝を設け、集束させたTHz光をこの平行溝内で伝搬させることで、増強したTHz光を次に説明する位相整合部3に導くことができる。前記平行溝の幅は、狭いほど増強効果を高めることができ、THz光の波長よりも狭くするのが好ましい。
【0016】
[位相整合部3]
サンプリング光とTHz光の二つの光を光結合する場合は、結合しようとする二つの光を位相整合する必要があり、二つの光の媒質中の位相速度が一致していることが条件となる。位相整合部3は、入射されたTHz光の位相速度がサンプリング光の群速度と同じになるように調整する。本発明では、サンプリング光の光軸に対して斜めにTHz光を入射させるチェレンコフ(Cherenkov)位相整合法を利用したものを用いる。
なお、THz光の位相速度がサンプリング光の群速度と同じになるように調整するための材料としては、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3:略称LN)や四ほう酸リチウム(Li
2B
4O
7:略称LBO)、βバリウムボレイト(略称BBO)など、二次の非線形光学効果を有する結晶を用いることができるが、電気光学係数の高いLN結晶を用いるのが好ましい。
【0017】
LN結晶や導波路に入射されたサンプリング光に対してTHz光をチェレンコフ位相整合角(θ
c)で入射させるには、例えば傾斜角(90°−θ
c)のSiプリズムを用いるとよい。このときチェレンコフ位相整合角θ
cはSiプリズム中のTHz光の位相屈折率n
THzとLN結晶中のサンプリングパルス光の群屈折率n
gの比で決まる。すなわち、cosθ
c=n
g/n
THzでチェレンコフ位相整合角θ
cが決まる。LN結晶としては、バルク結晶を用いるよりも導波路構造を持った結晶を用いるほうが、LN結晶内での吸収をさけ、検出帯域を広くとるために望ましい。
【0018】
[和差周波発生器4]
和差周波発生器4は、位相調整された二つの光の和周波又は差周波を発生させる。
前記した非線形光学効果を有する材料の単結晶や、この材料で形成された導波路は和差周波発生器4として利用することができる。
【0019】
ここで、サンプリング光の周波数をω
0,THz光の周波数をω
THzとすると、導波路を構成する非線形光学結晶内ではこれら2つの波の和周波ω
SFG(=ω
0+ω
THz)が発生する。有効非線形光学係数(サンプリング光とテラヘルツ光の偏光方向,および非線形光学結晶の結晶方位に依存して決まる)をd
effとすると和周波発生(Sum Frequency
Generation, 略してSFG)による非線形分極は以下の式で与えられる。和周波P
(2)は、
【0020】
【数1】
ε
0は真空の誘電率である。この非線形分極により和周波が発生する。サンプリング光が十分強く,その非線形相互作用による減衰を無視できるとし、SFGにより発生した光波の電界振幅をE
SFGとすると
【0021】
【数2】
である。ここでμ
0は真空の透磁率,cは真空中の光速度,Lはサンプリング光が電気光学結晶中を伝搬する距離,n
ω0+ωTHzは周波数ω
0+ω
THzにおける屈折率,
g(ΔkL)は次で定義される位相不整合因子である。
【0022】
【数3】
ここで波数不整合Δkは次で与えられる。
【0023】
【数4】
k
0はサンプリング光の波数,k
SFGはSFGによる光波の波数,k
THzはTHz光の波数である。光波の周波数はTHz光の周波数に比べて2桁以上大きい(ω
0>>ω
THz)ので、ω
0+ω
THzはω
0,n
ω0+ωTHzはn
ω0で近似してよい。すると(2)式は
【0024】
【数5】
と書き換えられる。
【0025】
もともとのサンプリング光と和周波発生によって発生した光は重ね合わさって検出される。和周波発生の効率が小さく、もとのサンプリング光がほとんど減衰しないと仮定すると、光強度の変化率(もともとのサンプリング光の強度I
0で規格化した全光強度)は次式で与えられる。
【0026】
【数6】
最後の式では発生した和周波発生の電界振幅E
SFGは、サンプリング光の電界振幅E
0よりずっと小さいとしているので、E
SFGの自乗に対応する項は無視した。
【0027】
[検出器5]
検出器5は、和差周波発生器4からの出力から和周波成分又は差周波成分を検出する。
サンプリング光強度の変化量だけをロックイン検出法で検出する場合は、信号強度は次式で与えられる。(6)式においては、和周波発生による発生した光波の電界振幅E
THzはもとのサンプリング光の波長とほとんど同じであり、このため干渉により、E
THzはE
0との積((6)式2目の真ん中の項)として検出されることが示されている。これはヘテロダイン検波と同じであり、信号はE
0だけ増強される。
(6)式を書き直すと、
【0028】
【数7】
となり、これに(5)式を用いると、(7)式は次式で与えられる。
【0029】
【数8】
LN結晶の場合,非線形感受率テンソル成分のなかでd
33が一番大きい。
また
【0030】
【数9】
の関係を用いて(8)式を書き換えると
【0031】
【数10】
を得る。ここでn
eはLN結晶の異常光の屈折率で、r
33はd
33に対応した電気光学係数である。
さらにIm[g(ΔkL)]はΔkL=2.216 のとき最大値g
max=0.723をとる。チェレンコフ位相整合では波数不整合Δkを結晶の角度で任意に調整できるので、ΔkL =2.216となるように調整することで容易にg
max=0.723を得る(結晶の伝搬長Lは一定とする)ことができる。
すなわち、波数不整合Δkを最適化することでヘテロダイン方式による信号の最大値を得ることができ、このときのヘテロダイン方式による信号強度は
【0032】
【数11】
で与えられる。
【0033】
[比較]
本発明の方法を、LN結晶を用いた従来のEOサンプリング法と比較する。
従来のEOサンプリング法における信号変調度は次式で与えられる(完全位相整合条件を仮定)。
【0034】
【数12】
ここで、DGはTHz光によって引き起こされた位相遅延である。n
oはLN結晶の正常光の屈折率である。
例えば、r
13 =9.6 [pm/V], r
33 =30.9 [pm/V], n
o= 2.255 and n
e=2.176 (800
nm)を用いてそれぞれの性能指数を計算すると従来のEOサンプリング法では、
【0035】
【数13】
となり、本発明のEOサンプリング法では、
【0036】
【数14】
となる。
以上から、本発明のEOサンプリング法は従来のEOサンプリング法よりも高効率(LN結晶の場合で約2倍)であることがわかる。
【0037】
[他の実施形態]
上記では和周波の検出を行っているが、本発明では差周波の検出を行ってもよい。結晶中では和周波だけではなく差周波も同時に発生している。この場合、差周波発生による光波のヘテロダイン信号は、和周波の場合に対して符号が反転する。どちらの信号が優勢になるかはTHz光の,サンプリング光波に対する位相で決まる。
また、上記ではサンプリング光とTHz光は単一周波数としているが、実際にはそれぞれパルス波であるので、有限の周波数スペクトル分布を持つ。差周波発生と有限の周波数スペクトルを考慮した(10)式に対応する表式は次式で与えられる。
【0038】
【数15】
ここでC(ω
THz)は次で定義されるサンプリング光の相互相関関数である。
【0039】
【数16】
ω
THz =0のとき
【0040】
【数17】
はサンプリング光の自己相関関数であり、サンプリング光強度に比例した量である。サンプリング光のスペクトル分布がTHz光のそれよりも十分広い(サンプリング光のパルス幅がTHz光に対して十分狭い場合に相当)とすると
【0041】
【数18】
と近似でき、(15)式は
【0042】
【数19】
とあらわされる。(19)式の導出においてはΔkはω
THzに依存しないと仮定した。この仮定はチェレンコフ位相整合では妥当な仮定である。
(19)式は(10)式と類似しているが,周波数ω
THzに対するTHz光の振幅E
THz(ω
THz)の代わりに、THz光の時間波形E
THz(τ)が用いられている。ここでτはTHz光とサンプリング光の相対遅延時間である。したがって(19)式はTHz光の時間波形に依存したEO信号が検出されることを示している。
【0043】
[具体的装置構成]
本発明の具体的な装置構成の一例を
図2に示す。
図2に示すように、このテラヘルツ光検出装置は、フェムト秒レーザー装置11とレンズ12とを備えたサンプリング光照射部1と、フェムト秒レーザー装置21とTHzエミッタ22とを備えたTHz光照射部2と、THz光照射部2から照射されたTHz光を金属の表面プラズモンと結合させて増強する増強部9とを有する。
図2の例では、位相整合部3及び和差周波発生器4は、プリズム31とこのプリズム31の一面に形成された導波路41とを有する構成としてある。
プリズム31としては、テラヘルツ帯での吸収と分散が小さいシリコン(Si)プリズムを用いるのが好ましい。
図3に、
図2の装置に用いられる位相整合部3及び和差周波発生器4の一例を示す。
【0044】
プリズム31は、一つの傾斜面がTHz光の入射面として形成された三角形状をなしていて、前記傾斜面から入射したTHz光が斜めに入射する面にLN結晶の薄膜からなる導波路41が形成されている。
前記傾斜面の傾斜角は、前記傾斜面から入射したTHz光がチェレンコフ位相整合に適した角度θになるように形成されている。チェレンコフ位相整合角はプリズム31中のTHz光の位相屈折率n
THzとLN結晶中のサンプリングパルス光の群屈折率n
gの比で決まる。すなわち、cosθ
c=n
g/n
THzでチェレンコフ位相整合角θが決定される。
【0045】
上記構成のプリズム31は、
図4に示すような増強部9に取り付けられる。
増強部9は、金属ブロックで形成された本体90と、この本体90に形成されたV溝91と、このV溝91の先端に形成された細幅の平行部92とを有している。本体90をアルミニウムや鉄等の金属材料で形成する場合や、樹脂やセラミックスなどの非金属材料で形成する場合は、V溝91及び平行部92の内表面に金(Au)や銀(Ag)等の金属層を形成するのが好ましい。
本体90の一端面には、V溝の幅広部分が開口し、この開口から取り入れたTHz光がV溝の金属の表面プラズモンと結合して増強されながら細幅の先端部へと伝搬される。
【0046】
平行部92の幅寸法t1は小さいほど増強効果が大きくなることから、幅寸法t1は可能な限り小さいものとするのが好ましい。より好ましくは、THz光の波長よりも小さいものであるのがよい。例えば、THz光の波長が1THz(波長0.3mm)である場合には、幅寸法t1は0.3mm以下とするのが好ましい。
【0047】
平行部92の先端が開口する本体90の他端面には、二つのプリズム保持部93,93が対向して設けられている。プリズム保持部93,93は、本体90と一体に形成されていてもよいし、図示するように本体90とは別体のブロック状の部材から形成されていてもよい。この二つのプリズム保持部93,93は、平行部92に連通する隙間を有するように互いに離間して平行に配置される。そして、前記隙間に、平行部92を伝搬したTHz光が入射するプリズム31が挿入して保持される。
【0048】
プリズム31と接触する二つのプリズム保持部93,93の対向面は、平行部92の一部を構成するように、平行部92の内面と同様に仕上げられているのが好ましい。
プリズム31は、THz光を入射させる斜面を平行部92側に差し向け、かつ、THz光が前記斜面に対して垂直に入射するように、向きを調整してプリズム保持部93,93に保持させる。
【0049】
プリズム31の幅寸法t2は、平行部92の幅寸法t1と同じとするのが好ましいが、薄肉のプリズム31や導波路41の形成が困難な場合には、平行部92の幅寸法t1よりも大きいものであってもよい。
なお、
図4の例では
図3に示した支持基板6を省略しているが、
図4の例ではプリズム保持部材93,93が
図3の支持基板6に相当するためである。
図4の例では、必要に応じて、プリズム保持部材93,93間の隙間から露出する導波路41を覆う被覆材を設けてもよい。
【0050】
[導光経路]
サンプリング光照射部1から照射されたサンプリング光及びTHz光照射部2から照射されたTHz光を、増強部9を経てプリズム31及び導波路41に導く導光経路は、
図2に示すように、サンプリング光照射部1に対向して設置された反射鏡8と、THz光照射部2に対向して設置された凹面鏡7aと、この凹面鏡7aに対向して設置された凹面鏡7bとから構成される。
【0051】
反射鏡8は、サンプリング光が導波路41に入射するように配置され、凹面鏡7a,7bは、THz光が増強部9のV溝91からプリズム31の傾斜面に入射するように配置される。
以上の構成より、サンプリング光照射部1から照射されたサンプリング光は、反射鏡8によってその進行方向を変換されて導波路41の側面から入射する。
また、THz光照射部2から照射されたTHz光は、凹面鏡7a,7bによってその進行方向を変換され、増強部9のV溝91に導入され、その先端部で集束される。このように増強されたTHz光は、平行部92を伝搬してプリズム31の傾斜面に入射される。
増強されたTHz光とサンプリング光は導波路41内で結合され、和周波出力又は差周波出力として導波路41から出力される。出力された和周波出力又は差周波出力は、検出する信号が最大になるように位置調整されたヘテロダイン方式の検出器5によって検出される。
【0052】
[実施例1]
以下の条件で本発明の効果の試験を行った。
レーザー光源:波長780nm,パルス幅<100fs,繰り返し50MHz
THz光発生素子:ボウタイ型光伝導アンテナ,バイアス+/-50 Vp-p @95kHz (Sin波),ポンプパワー約6mW
EO素子:Siプリズム結合LiNbO
3結晶(厚さ 2mm, 1% Mol. MgO-doped stoichiometric LN),プローブパワー約1mW
増強部のV溝の頂部の角度α:20°(THz光の集束角18°)
増強部の平行部92の幅寸法t1:0.3mm
プリズムの幅寸法t2:0.3mm
導波路:プリズム保持部93,93の表面にプリズムに接するように肉厚2mmの導波路を貼り付けた。
[実施例2]
導波路の肉厚を40μmとした以外は実施例1と同じである。
[比較例]
増強部9を設けず、THz光が直接プリズム31に入射されるようにしたこと以外は実施例1と同じである。
【0053】
図5に、比較例及び従来方法によるTHz光の検出結果を示す。
図5は、比較例におけるEOサンプリング方式で検出したTHzパルス波の時間領域波形を,従来のEOサンプリングで検出した場合の波形とともに示したものである。増強部9を有しない比較例においても、波長板や偏光素子等を用いずに従来と同様にTHz光の検出ができることがわかる。
図6は、増強部9を用いない比較例と、増強部9を使った実施例1,2との比較結果を示す
図5と同様のグラフである。
本発明のように増強部9を用いることで、信号強度が増強されるのがわかる。実施例1と比較例のように導波路の肉厚が同じ場合(肉厚2mm)では、実施例1は比較例の約5.5倍である。また、増強の度合いは導波路の肉厚が小さいほど高くなり、実施例2のように導波路の肉厚を40μmとすると比較例の約17倍になる。
【0054】
[他の実施形態]
図7(a)に、本発明の検出方法及び検出装置における検出器5の他の実施形態を示す。上記したように、結晶中では和周波だけではなく差周波も同時に発生していて、差周波発生による光波のヘテロダイン信号は、和周波の場合に対して符号が反転する。また、和周波出力と差周波出力は、波数ベクトル整合により、出力のほぼ中心で対称に二分割することができる。そこで、この実施形態の検出器5は、左右一対のフォトダイオードPDA,PDBを備えているとともに、導波路41からレンズ52を経て出力された和周波出力及び差周波出力が、三枚の反射鏡51a,51b,51cにより分割されるようになっている。すなわち、反射鏡51aにより反射鏡51bに指し向けられた出力は、
図7(b)にA部を拡大して示すように、反射鏡51bにより真っ直ぐ検出器5に向かう出力IIと、向きを変えて反射鏡51cに向かう出力Iとに二分割される。分割された二つの出力は、それぞれのフォトダイオードPDA,PDBに入力される。この実施形態において検出器5は、
図7(a)(i)(ii)に示すようにフォトダイオードPDA,PDBによって検出される信号の極性が反転するように、位置合わせされる。
【0055】
図8に、フォトダイオードPDA,PDBによって検出されたそれぞれの信号を重ね合わせたグラフと、両信号の差分(Balance detection)を求めたグラフを示す。
図8のグラフからわかるように、この実施形態の検出器5では、フォトダイオードPDA,PDBによって検出されたそれぞれの信号の差分を求めることで、検出感度をほぼ倍にすることができる。また、ノイズ信号は左右のフォトダイオードPDA,PDBで極性が同じであるため、差分を求めることでノイズ成分も低減することができる。
【0056】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明に限定されるものではない。
例えば、上記の説明ではV溝91の先端に平行部92を設けて、V溝91で増強したTHz光を平行部92を介してプリズム31にまで導くようにしているが、V溝91の先端にプリズム31を配置して平行部92を設けないようにすることも可能である。また、この場合、プリズム31はV溝91の先端の外側に配置してもよいし、V溝91の先端の内側に配置してもよい。
さらに、THz光を伝搬させる平行部92は直線状に限らず、一部又は全部が湾曲していてもよい。