(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、複雑な損失モデルを用いてZVSタイミングの最適解を計算するため、その計算に時間がかかる一方で、正確な最適解を得られない、つまり思うような損失低減効果を得られないという課題があった。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、簡易な計算によって、ソフトスイッチングの条件を満たしつつ、低損失化を実現可能な直流電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、直流電力変換装置に係る第1の解決手段として、トランスの一次側にインダクタを介して接続されたスイッチング素子からなる単相ブリッジ回路と、位相シフト方式のPWM制御によって前記スイッチング素子のゼロ電圧スイッチングを行う制御手段とを備えた直流電力変換装置であって、前記制御手段は、前記単相ブリッジ回路の入力電圧V
1、前記トランスの二次側回路の出力電圧V
2及び電力潮流Pに基づいて、第1モード或いは第2モードを選択するモード選択手段と、前記第1モードが選択された場合には、下記条件式(7)を満足する最適ゼロ電圧区間t
z−bar及び最適位相シフト量t
φ−barを算出する一方、前記第2モードが選択された場合には、下記条件式(9)を満足する最適ゼロ電圧区間t
z−bar及び最適位相シフト量t
φ−barを算出するスイッチングパターン計算手段と、前記最適ゼロ電圧区間t
z−bar及び最適位相シフト量t
φ−barの計算結果に基づいて、前記スイッチング素子を位相シフトPWM制御するためのPWM信号を生成するPWM信号発生手段とを備える、という手段を採用する。
【0008】
【数1】
【0009】
【数2】
【0010】
また、本発明では、直流電力変換装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記スイッチングパターン計算手段は、前記第1モードが選択された場合には、下記(8)式に基づいて、前記最適ゼロ電圧区間t
z−bar及び最適位相シフト量t
φ−barを算出する、という手段を採用する。
【0011】
【数3】
【0012】
また、本発明では、直流電力変換装置に係る第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記スイッチングパターン計算手段は、前記第2モードが選択された場合には、下記(10)(11)(12)式に基づいて、前記最適ゼロ電圧区間t
z−bar及び最適位相シフト量t
φ−barを算出する、という手段を採用する。
【0013】
【数4】
【0014】
【数5】
【0015】
【数6】
【0016】
また、本発明では、直流電力変換装置に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、前記モード選択手段は、選択した第1モード或いは第2モードに応じてスイッチング周波数を決定し、前記スイッチングパターン計算手段は、前記スイッチング周波数の決定結果に基づいてスイッチング周期を算出し、前記PWM信号発生手段は、前記PWM信号の周期を前記スイッチング周期と一致させる、という手段を採用する。
【0017】
また、本発明では、直流電力変換装置に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、前記制御手段は、前記トランスの二次側回路の出力電圧V
2の計測結果が、出力電圧目標値V
2refと一致するような操作量をPI演算によって求め、この操作量を電流目標値I
1refとして出力する電圧PI制御手段と、前記単相ブリッジ回路の入力電流I
1の計測結果が、前記電圧PI制御手段から入力される電流目標値I
1refと一致するような操作量をPI演算によって求め、この操作量を補正用位相シフト量Δt
φ−barとして出力する電流PI制御手段と、前記スイッチングパターン計算手段から出力される前記最適位相シフト量t
φ−barと、前記電流PI制御手段から出力される前記補正用位相シフト量Δt
φ−barとを加算し、その加算値を補正後の最適位相シフト量t
φ−barとして前記PWM信号発生手段に出力する加算手段とを備える、という手段を採用する。
【0018】
また、本発明では、直流電力変換装置に係る第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれかの解決手段において、前記トランスの二次側回路もスイッチング素子からなる単相ブリッジ回路であり、双方向型の電力変換装置である、という手段を採用する。
【0019】
また、本発明では、直流電力変換装置に係る第7の解決手段として、上記第1〜第5のいずれかの解決手段において、前記制御手段は、二次側単相ブリッジ回路のゼロ電圧区間t
zを零に固定して、一次側単相ブリッジ回路の最適ゼロ電圧区間t
z−bar及び最適位相シフト量t
φ−barを算出する、という手段を採用する。
【0020】
また、本発明では、直流電力変換装置に係る第8の解決手段として、上記第1〜第5のいずれかの解決手段において、前記制御手段は、二次側単相ブリッジ回路のゼロ電圧区間t
zを零以外の所定幅に固定して、一次側単相ブリッジ回路の最適ゼロ電圧区間t
z−bar及び最適位相シフト量t
φ−barを算出する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1モードが選択された場合には条件式(7)を、第2モードが選択された場合には条件式(9)を満足する最適ゼロ電圧区間及び最適位相シフト量を算出するので、従来のような複雑な損失モデルを用いてZVSタイミングの最適解を計算することなく、簡易な計算によって、ソフトスイッチングの条件を満たしつつ、低損失化を実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下では、本発明に係る直流電力変換装置として、2つの単相ブリッジ回路が高周波絶縁トランスを介して接続されて成る、DAB(Dual Active Bridge)と呼ばれる双方向絶縁型DC/DCコンバータ(以下、DABコンバータと称す)を例示して説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るDABコンバータ1の構成概略図である。この
図1に示すように、DABコンバータ1は、一次側単相ブリッジ回路11、インダクタ12、高周波絶縁トランス13、二次側単相ブリッジ回路14、モードセレクタ15、スイッチングパターン計算器16、電圧PI制御器17、電流PI制御器18、加算器19及びPWM信号発生器20から構成されている。
なお、これらの構成要素の内、モードセレクタ15、スイッチングパターン計算器16、電圧PI制御器17、電流PI制御器18、加算器19及びPWM信号発生器20は、本発明における制御手段を構成するものである。
【0025】
一次側単相ブリッジ回路11は、ブリッジ接続された4つのスイッチング素子11a、11b、11c、11dと、これらの各々に並列接続された還流ダイオード11e、11f、11g、11h及びスナバコンデンサ11i、11j、11k、11mから構成されている。スイッチング素子11a、11b、11c、11dは、それぞれMOSFET或いはIGBT等の半導体スイッチング素子である。
【0026】
スイッチング素子11aと11bの接続点は、インダクタ12を介して高周波絶縁トランス13の一次巻線13aの一端に接続されている。また、スイッチング素子11cと11dの接続点は、高周波絶縁トランス13の一次巻線13aの他端に接続されている。なお、以下では、一次側単相ブリッジ回路11の入力電圧(直流電圧)をV
1、入力電流をI
1とする。
【0027】
このように構成された一次側単相ブリッジ回路11は、PWM信号発生器20から入力されるPWM信号によって各スイッチング素子11a、11b、11c、11dのオン/オフ状態が制御されることにより、入力電圧V
1を単相交流電圧(一次交流電圧)に変換してインダクタ12側(高周波絶縁トランスの1次側)に出力する。
【0028】
インダクタ12は、一端がスイッチング素子11aと11bの接続点に接続され、他端が高周波絶縁トランス13の一次巻線13aの一端に接続された力率調整用の誘導性素子である。高周波絶縁トランス13は、巻線比が「m:n(m、nは整数)」に設定された一次巻線13a及び二次巻線13bを備えており、一次側単相ブリッジ回路11からインダクタ12を介して一次巻線13aに入力された一次交流電圧を巻数比に応じて昇圧し、二次交流電圧として二次巻線13bから二次側単相ブリッジ回路14に出力する。
【0029】
二次側単相ブリッジ回路14は、ブリッジ接続された4つのスイッチング素子14a、14b、14c、14dと、これらの各々に並列接続された還流ダイオード14e、14f、14g、14h及びスナバコンデンサ14i、14j、14k、14mから構成されている。スイッチング素子14a、14b、14c、14dは、それぞれMOSFET或いはIGBT等の半導体スイッチング素子である。
【0030】
スイッチング素子14aと14bの接続点は、高周波絶縁トランス13の二次巻線13bの一端に接続されている。また、スイッチング素子14cと14dの接続点は、高周波絶縁トランス13の二次巻線13bの他端に接続されている。なお、以下では、二次側単相ブリッジ回路14の出力電圧(直流電圧)をV
2とする。
【0031】
このように構成された二次側単相ブリッジ回路14は、PWM信号発生器20から入力されるPWM信号によって各スイッチング素子14a、14b、14c、14dのオン/オフ状態が制御されることにより、高周波絶縁トランス13の二次巻線13bから入力される二次交流電圧を直流電圧に変換し、出力電圧V
2として外部に出力する。
なお、以上の説明では、一次側単相ブリッジ回路11から二次側単相ブリッジ回路14へ向かう方向を電力潮流方向としたが、逆方向を電力潮流方向とすることも可能である。
【0032】
モードセレクタ15は、電圧・電流計測器(図示省略)から入力される、一次側単相ブリッジ回路11の入力電圧V
1及び入力電流I
1と、二次側単相ブリッジ回路14の出力電圧V
2との計測結果に基づいて、モード(Mode0 ,Mode1)及びスイッチング周波数Fsを決定し、その決定結果をスイッチングパターン計算器16に出力する。
【0033】
スイッチングパターン計算器16は、モードセレクタ15にて決定されたモード及びスイッチング周波数Fsに基づいて、最適位相シフト量t
φ−bar(上に横線の付いたt
φと同義)、最適ゼロ電圧区間t
z−bar(上に横線の付いたt
zと同義)、及びスイッチング周期Tを計算し、最適位相シフト量t
φ−barの計算結果を加算器19に出力すると共に、最適ゼロ電圧区間t
z−bar及びスイッチング周期Tの計算結果をPWM信号発生器20に出力する。
【0034】
電圧PI制御器17は、電圧・電流計測器(図示省略)から入力される、二次側単相ブリッジ回路14の出力電圧V
2の計測結果が、上位制御装置(図示省略)から入力される出力電圧目標値V
2refと一致するような操作量(電流目標値I
1ref)をPI演算によって求め、この電流目標値I
1refを電流PI制御器18に出力する。
【0035】
電流PI制御器18は、電圧・電流計測器(図示省略)から入力される、一次側単相ブリッジ回路11の入力電流I
1の計測結果が、電圧PI制御器17から入力される電流目標値I
1refと一致するような操作量(補正用位相シフト量Δt
φ−bar)をPI演算によって求め、この補正用位相シフト量Δt
φ−barを加算器19に出力する。
【0036】
加算器19は、スイッチングパターン計算器16から入力される最適位相シフト量t
φ−barと、電流PI制御器18から入力される補正用位相シフト量Δt
φ−barとを加算し、その加算値を補正後の最適位相シフト量t
φ−barとしてPWM信号発生器20へ出力する。
【0037】
PWM信号発生器20は、加算器19から得られる補正用位相シフト量Δt
φ−barを加算後の最適位相シフト量t
φ−barと、スイッチングパターン計算器16から得られる最適ゼロ電圧区間t
z−bar及びスイッチング周期Tに基づいて、一次側単相ブリッジ回路11及び二次側単相ブリッジ回路14の各スイッチング素子をオン/オフ制御するためのPWM信号を生成して、一次側単相ブリッジ回路11及び二次側単相ブリッジ回路14に出力する。
【0038】
次に、上記のように構成されたDABコンバータ1の動作原理について説明する。
本実施形態におけるDABコンバータ1は、位相シフト方式のPWM制御によって、スイッチング素子のソフトスイッチング(ZVS)を行うが、ゼロ電圧区間t
z及び位相シフト量t
φの範囲と、電力潮流方程式と、ZVS制約の異なる2つのモード(Mode0 ,Mode1)が存在する。
【0039】
図2(a)は、Mode0における電圧電流波形を表し、
図2(b)は、Mode1における電圧電流波形を表している。また、Mode0におけるゼロ電圧区間t
z及び位相シフト量t
φの範囲と、電力潮流方程式と、ZVS制約は下記(1)式で表され、Mode1におけるゼロ電圧区間t
z及び位相シフト量t
φの範囲と、電力潮流方程式と、ZVS制約は下記(2
)式で表される。
【0042】
Mode1は、t
z=0の時に従来の方形波位相シフト変調となり、2つのモードは、t
φ=t
z/2の時に一致する。2つのモード間の境界では、I
M0,1=I
M0,2=I
M1,1=I
M1,2=0となり、全ての理想的なZVS制約を満足する。これに対応する電力潮流は、入出力電圧V
1、V
2の関数として下記(3)式で表される。なお、下記(3)式において、Tはスイッチング周期(=1/Fs)であり、Lはインダクタ12のインダクタンスである。
【0044】
上記(3)式は、必要な電力潮流に従って適切にモードを選択することにより、どのような入出力電圧(V
1、V
2)の組み合わせであっても、完全なZVSの下でDABコンバータ1を操作できることを示している。
図3(a)の曲線100は、上記(3)式において、入力電圧V
1(=40V)、インダクタンスL、スイッチング周波数Fs(=40kHz)を一定値に固定した時の、出力電圧V
2に対する電力潮流閾値P
lim(上記(3)式の計算結果)を表している。
【0045】
必要な電力潮流が上記(3)式で定義された電力潮流閾値P
limより小さければMode0を使用し、それ以外ではMode1を使用することで完全なZVSの下でDABコンバータ1を操作できる。しかしながら、上記(3)式はあくまで理想的な電力潮流閾値P
limを定義したものであり、現実には、コンバータレッグが整流する時に生じる共振の変遷の存在によって電力潮流閾値P
limの関数は変わってくる。
【0046】
上記の共振の変遷の存在を考慮して得られた、Mode0か否かを判断するために使用される現実的な電力潮流閾値P
limの関数は下記(4)式で表される。
図3(a)の曲線101は、下記(4)式において、入力電圧V
1(=40V)、インダクタンスL、スイッチング周波数Fs(=40kHz)を一定値に固定した時の、出力電圧V
2に対する電力潮流閾値P
lim(下記(4)式の計算結果)を表している。
【0048】
また、上記の共振の変遷の存在を考慮して得られた、Mode1か否かを判断するために使用される現実的な電力潮流閾値P
limの関数は下記(5)式で表される。なお、下記(5)式において、I
M1,1,Mimは下記(6)式で表される。
図3(a)の曲線102は、下記(5)式において、入力電圧V
1(=40V)、インダクタンスL、スイッチング周波数Fs(=40kHz)を一定値に固定した時の、出力電圧V
2に対する電力潮流閾値P
lim(下記(5)式の計算結果)を表している。
【0051】
現実的には、必要な電力潮流が上記(4)式で定義された電力潮流閾値P
lim(曲線101)より小さければMode0を使用し、必要な電力潮流が上記(5)式で定義された電力潮流閾値P
lim(曲線102)より大きければMode1を使用することで完全なZVSの下でDABコンバータ1を操作できる。しかしながら、
図3(a)からわかるように、現実的な電力潮流閾値P
limを用いた場合、ZVSが不可能な動作領域(曲線101と102で囲まれた領域:以下、非ZVS領域と称す)が発生する。
【0052】
このような共振の変遷から生じる非ZVS領域は、スイッチング周波数FsかインダクタンスLのどちらかを変えることで小さくすることができる。インダクタンスLは固定値なので、高周波スペクトルに影響を与えない範囲でスイッチング周波数Fsを変えることが望ましい。例えば、上記(4)式でスイッチング周波数Fsを20kHzに変えると、
図3(b)に示すように、曲線101が曲線102を越えて、Mode0と Mode1との両方でZVSが可能な領域(オーバーラップ領域)が形成される。
【0053】
このように、ZVSを確実に実現するためには、入出力電圧V1、V2及び必要な電力潮流Pに従って、適切なスイッチングパターン(Mode0かMode1か)を選択することが重要である。例えば、必要な電力潮流Pが上記(4)式によって計算されたもの以下であればMode0を選択し、それ以外であればMode1を選択する。この時、Mode1で使用されるスイッチング周波数Fsは、上述したオーバーラップ領域の形成を保証するために、Mode0で使用されるスイッチング周波数Fsの2倍程度に設定することが望ましい。
【0054】
上記のように、モード(Mode0、Mode1)とスイッチング周波数Fsが定まると、ZVSを確実に実現して効率を最適化する(損失を最小化する)ために、さらにもう1つの自由度であるゼロ電圧区間t
zを決定する。
【0055】
原理的には、DABコンバータ1の詳細な損失モデルを作成し、その損失モデルを用いてZVSタイミングの最適解、つまり損失が最小となるゼロ電圧区間t
zと位相シフト量t
φとの組み合わせを計算によって求めることは可能である(非特許文献1参照)。しかしながら、既に述べたように、この手法では、複雑な損失モデルを用いてZVSタイミングの最適解を計算するため、その計算に時間がかかる一方で、正確な最適解を得られない、つまり思うような損失低減効果を得られない。
【0056】
そこで、本願発明者は、インダクタ電流波形の幾何学的問題に基づく簡単な部分最適アプローチを提案するものである。
図4(a)は、モードとしてMode0が選択され、所定の運転条件(スイッチング周波数Fs=20kHz、入力電圧V
1=50V、出力電圧V
2=180V、電力潮流P=1.0kW)下でのゼロ電圧区間t
zとインダクタ電流I
M0,0、I
M0,1、I
M0,2との関係を示すものである。
【0057】
図4(b)は、モードとしてMode1が選択され、所定の運転条件(スイッチング周波数Fs=40kHz、入力電圧V
1=50V、出力電圧V
2=180V、電力潮流P=1.5kW)下でのゼロ電圧区間t
zとインダクタ電流I
M1,0、I
M1,1、I
M1,2、I
M1,1Minとの関係を示すものである。
【0058】
図4(a)において、完全なZVSを実現できるゼロ電圧区間t
zの範囲に着目すると、電流の最も高いピークがゼロ電圧区間t
zからほとんど独立している一方で、電流波形の他の2つの限界点はゼロ電圧区間t
zに強く依存していることがわかる。ゼロ電圧区間t
zのどの値によって最適な効率が得られるかは明確でないが、本実施形態では、モードとしてMode0を選択している間、電流波形の2つの限界点が大きさにおいて等しく、符号において反対となるゼロ電圧区間t
zを、最適な効率が得られる最適ゼロ電圧区間t
z−barとして決定する。
【0059】
すなわち、Mode0を選択した場合には、下記条件式(7)を満足する最適ゼロ電圧区間t
z−barと、最適位相シフト量t
φ−barを位相シフトPWM制御に使用する。なお、下記条件式(7)を満たす最適ゼロ電圧区間t
z−barと、最適位相シフト量t
φ−barは、下記(8)式で表される。
【0062】
図4(b)で示すMode1を選択した場合も同様である。すなわち、Mode1を選択した場合には、下記条件式(9)を満足する最適ゼロ電圧区間t
z−barと、最適位相シフト量t
φ−barを位相シフトPWM制御に使用する。なお、下記条件式(9)を満たす最適ゼロ電圧区間t
z−barと、最適位相シフト量t
φ−barは、下記(10)(11)(12)式で表される。また、下記(10)(11)(12)式において、I
minは上記(6)式で表される値である。
【0067】
図5は、Mode0を選択した場合において、従来の位相シフトPWM制御を採用した時の電圧電流波形(a)と、本願発明者が提案した位相シフトPWM制御を採用した時の電圧電流波形(b)を比較したものである。このように、本願発明者が提案した位相シフトPWM制御を採用することにより、従来と比較して効率が86.5%から95%に向上し、ピーク電流が80Aから68Aまで低下(つまり損失が低下)していることが見出された。
【0068】
以上のようなDABコンバータ1の動作原理を踏まえて、以下ではDABコンバータ1の電力変換動作について説明する。
まず、モードセレクタ15は、一次側単相ブリッジ回路11の入力電圧V
1及び入力電流I
1と、二次側単相ブリッジ回路14の出力電圧V
2との計測結果を用い、上述した動作原理(
図3参照)に従ってモード及びスイッチング周波数Fsを決定し、その決定結果をスイッチングパターン計算器16に出力する。例えば、モードセレクタ15は、Mode0を選択した場合、スイッチング周波数Fsを20kHzとし、Mode1を選択した場合、スイッチング周波数Fsを40kHzとする。
【0069】
スイッチングパターン計算器16は、モードセレクタ15にて決定されたモードがMode0の場合には、上記(8)式に基づいて最適ゼロ電圧区間t
z−bar及び最適位相シフト量t
φ−barを算出し、モードセレクタ15にて決定されたモードがMode1の場合には、上記(10)(11)(12)式に基づいて最適ゼロ電圧区間t
z−bar及び最適位相シフト量t
φ−barを算出する。
このスイッチングパターン計算器16は、最適位相シフト量t
φ−barの計算結果を加算器19に出力すると共に、最適ゼロ電圧区間t
z−bar及びスイッチング周期T(=1/Fs)の計算結果をPWM信号発生器20に出力する。
【0070】
一方、電圧PI制御器17は、二次側単相ブリッジ回路14の出力電圧V
2の計測結果が、上位制御装置から入力される出力電圧目標値V
2refと一致するような操作量(電流目標値I
1ref)をPI演算によって求め、この電流目標値I
1refを電流PI制御器18に出力する。
【0071】
電流PI制御器18は、一次側単相ブリッジ回路11の入力電流I
1の計測結果が、電圧PI制御器17から入力される電流目標値I
1refと一致するような操作量(補正用位相シフト量Δt
φ−bar)をPI演算によって求め、この補正用位相シフト量Δt
φ−barを加算器19に出力する。
【0072】
加算器19は、スイッチングパターン計算器16から入力される最適位相シフト量t
φ−barと、電流PI制御器18から入力される補正用位相シフト量Δt
φ−barとを加算し、その加算値をPWM信号発生器20へ出力する。スイッチングパターン計算器16から出力される最適位相シフト量t
φ−barには計算による誤差が含まれているため、このように、クローズドループ(フィードバックループ)によって求めた補正用位相シフト量Δt
φ−barを最適位相シフト量t
φ−barに加算して補正することで、より精度の高い最適位相シフト量t
φ−barを求めることができる。
【0073】
PWM信号発生器20は、加算器19から得られる補正用位相シフト量Δt
φ−barを加算後の(補正後の)最適位相シフト量t
φ−barと、スイッチングパターン計算器16から得られる最適ゼロ電圧区間t
z−bar及びスイッチング周期Tに基づいて、一次側単相ブリッジ回路11及び二次側単相ブリッジ回路14の各スイッチング素子をオン/オフ制御するためのPWM信号を生成して、一次側単相ブリッジ回路11及び二次側単相ブリッジ回路14に出力する。なお、二次側単相ブリッジ回路14に出力するPWM信号は、最適ゼロ電圧区間t
z−bar=0とする。
【0074】
このような位相シフトPWM制御により、一次側単相ブリッジ回路11及び二次側単相ブリッジ回路14の各スイッチング素子がスイッチング動作(ZVS動作)し、二次側単相ブリッジ回路14の出力電圧V
2が出力電圧目標値V
2refと一致するように、一次側単相ブリッジ回路11の入力電圧V
1の電力変換が行われる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態では、インダクタ電流波形の幾何学的問題に基づく簡単な部分最適アプローチによって、第1モード(Mode0)が選択された場合には条件式(7)を、第2モード(Mode1)が選択された場合には条件式(9)を満足する最適ゼロ電圧区間及び最適位相シフト量を算出するので、従来のような複雑な損失モデルを用いてZVSタイミングの最適解を計算することなく、簡易な計算によって、ソフトスイッチングの条件を満たしつつ、真の損失最小とはならないが、低損失化を実現することが可能となる。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
例えば
、スイッチングパターン計算器16によって計算される最適位相シフト量t
φ−barの精度が高い場合には、必ずしもクローズドループ回路(電圧PI制御器17、電流PI制御器18及び加算器19)は必要ではない。
また、
図2(a)及び
図2(b)で例示して説明した本発明による部分最適PWM簡易式による計算方法において、二次側単相ブリッジ回路14はゼロ電圧区間t
z=0に固定して、一次側単相ブリッジ回路11側を部分最適簡易式によるPWM制御する方法を説明したが、二次側単相ブリッジ回路14のゼロ電圧区間t
zは、tz=0にfixすることを限定するものではない。二次側単相ブリッジ回路14のゼロ電圧区間t
zは、ゼロでない所定幅に固定してもよい。