(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体(LSI)製造工程の回路パターンを露光するリソグラフィ分野において、電子ビーム描画技術が利用されている。すなわち、半導体リソグラフィ技術では、通常元図となるマスクを電子ビーム描画装置で作成し、そのマスク画像を光によって半導体基板(ウェハ)に転写する写真製版技術(光リソグラフィ)が主に使われてきた。
【0003】
電子ビーム描画方式は、細く絞った電子ビームによる一筆書きと呼ばれる方式に始まり、可変矩形方式や、キャラクタプロジェクション(CP)と呼ばれる、微小マスクによる数平方μmを一括描画する方式など、描画方式を発展させてきた。
【0004】
しかしながら、電子の進む軸に沿ったZ軸方向にレンズを数段並べた1本のコラムであっては、ビーム軸付近で電子ビームがクーロン斥力によってビーム軌道が曲がり、クーロン効果によるビームの焦点距離が長くなるので、焦点距離の再調整を行わなくては、一般的にガウス像面ではビームがぼけてしまう。ガウス像面とはビームの電流量が極小であるときにかつ、近軸軌道のビームがフォーカスを結ぶ面である。長くなった焦点距離を再調整して最もフォーカシングがあった状態にし、ビームのボケを極小にできるフォーカス条件を求めることを、リフォーカシングと呼ぶ。しかしながら、クーロン効果によるビームボケとは電子が粒子として様々に散乱をすることによってビームがぼけることも含めている。これは個別電子のクーロン散乱によるボケと呼ばれる。クーロン効果全体のビームボケの量を1とするときに3分の2はリフォーカシングによって除去できるがリフォーカシングで除去できない量が3分の1残る。これは個別電子のクーロン散乱によるボケである。
前記個別電子のクーロン散乱によるボケが発生するような大きな電流量ではもはやリフォーカシングではビームをシャープにすることはできない。
【0005】
一般的にクーロン斥力によるボケは電子ビーム量に比例し、ビームの加速電圧の約1.5乗に反比例し、ビーム収束半角αに反比例すると言われている。そのためにαを大きく取った軌道が採用されることが多い。αを大きく取ると一般的にレンズの軸上球面収差と言われる収差が大きくなる。球面収差係数をCsとすると球面収差は1/2×Cs×α
3で表されるために、クーロン効果を低減するためには最終的には球面収差係数を低減する必要がある。球面収差係数を低減するためには対物レンズに厚肉レンズ(軸対称ビーム進行方向の磁界の濃いところの厚みがあること)が必要であるが、なおかつ対物レンズの焦点距離が短いことが不可欠である。
しかしながらこのような対策には限界があり、1本だけのビーム構成では電流値を大きくするとビームボケが支配的に大きくなる。
以上のようにクーロン散乱によるボケによって、微細パターンが描画できなくなることからシングルコラムにはスループットの限界が存在する。
【0006】
そこで、コラム1本あたりの電流値を小さくして、多数のコラムを採用するマルチアクシス(アクシス=コラム軸)のマルチコラムを構成し、1本のコラムあたりの電流値を小さくすることが高スループット化と、ビームシャープネス向上に寄与する方法となる。例えば300mmウェハ上において87本のビームを用いて、1本あたり1μAの電流値を用いれば、87μAの試料電流を用いて描画できるので、パターン寸法20nmで40μQ/cm
2のレジストを275秒で描画できる。これは1時間あたり12枚のスループットを達成できる速度である。
【0007】
このようにマルチコラムを使用しなくては、例えばシングルコラムで87μAの試料電流を用いて描画する場合にはビームのボケは、1.7μm以上に達するために、100nm以下の微細パターンの描画は全く不可能となる。
【0008】
このようにシングルコラムによるビームでは、クーロン効果でビームの総量が大きくなるに従って、ビームのボケが巨大になる。そのため微細パターンと描画速度の両立をはかることができずに、微細化を目的とするとビーム総量がとれずスループットが小さかった。そこでレンズを複数有するマルチコラム方式が必要となった。マルチコラム方式ではなるべくたくさんのコラムをウェハ上に並べるために、レンズを細くすることが必要となる。例えば直径が25mm程度の電子レンズを形成して、300mmウェハ上に70本から100本以上のコラムを設置して描画の高速化をはかることができる。
【0009】
しかし例えば87本のコラムを使用しても、20nm程度のガウシアンの丸い1本ビームではスループットは0.01枚/時以下の値にしかならない。例えば40μC/cm
2のレジストで200A/cm
2の電流密度の電子ビーム照射を行った場合に、200nsで露光が終了する。33mm×26mmの領域を描画するためには429000秒の時間がかかる。これでは87本のマルチコラムを利用しても、1枚のウェハを描画するのに120時間以上の時間がかかることになる。そこでどのようなビームを使用することが適しているか精査する必要があった。
【0010】
ビームとして可変矩形ビーム、すなわちVariable shaped beam 略してVSBを用いる方式では20nmの市松模様を描画するためにウェハ1枚あたり100時間以上かかる。例えば40μC/cm
2のレジストで200A/cm
2の電流密度の電子ビーム照射を行った場合に、200nsで露光が終了する。33mm×26mmの領域を描画するためには21500秒の時間がかかる。これでは87本のマルチコラムを利用しても1枚のウェハを描画するのに60時間の時間がかかることになる。
【0011】
さてCP(セルプロジェクション)法とは1μmから3μm四角程度のサイズのパターンを有限個数、デバイス設計パターンデータ中から切り出して、これらのパターンを穴開きマスクとして1枚のマスク上に形成する。1枚のマスクは複数のCPパターンを保持する。第一の矩形アパーチャを通過した電子ビームをCPマスク上に結像する。CP選択偏向器を用いて、第一の矩形アパーチャの像を、CPマスク上の任意の位置に偏向することによって、CPビームの選択を行い、1つのCPマスクの開口による透過ビームを試料面上に結像させて描画する方法である。繰り返しパターンの多いDRAMやNANDフラッシュメモリのセルパターンをCPパターンとすると効果的に高速描画ができる。
【0012】
多数のデバイスパターンの中には、デバイスパターンが非常に単純なパターンであって、CP数が少なくても当該デバイス層の全パターンが描画できるケースもごくまれには存在する。その場合にはCP法であってもスループットが10枚/時以上に増大することも考えられる。従ってCP露光法の有効性は、完全に否定されるものではない。
しかしながら、一般的なデバイスでは層内の全てのパターンが少数のCPで記述できてしまうというようなケースは非常にまれである。多くのデバイスの層においてはすべてのパターンをCP化しようとすると数千個または数万個以上のCP数を必要となる場合が多かった。パターンの繰り返し性が必ずしも有効でなく、デバイスパターン全体をCP化する場合にはCP数が膨大となりすぎてCPマスク化出来ないケースが多く存在していた。従って多くのデバイスパターンにおいては、CP露光法は適切な描画方法ではなかった。またCP数が膨大である場合には、CP選択偏向器のアナログ出力が変化する時間すなわちCP間ジャンプに時間が長大にかかることのためにスループットは大きく伸びることは無く、1時間に1枚程度のスループットが限界であった。
【0013】
ランダムパターンが多い場合には、CP描画方法では多数のパターンを可変矩形ビームVSB法での矩形分割露光に戻さざるを得ないために、ショット数は一定数以下に削減できず、膨大なショット数となり、多大な描画時間がかかることが多い。結局、現在のデバイスパターンや将来的なデバイスパターンにおいてCP描画は高速露光の方法としては全く適切な方法とは云えない。
以上のように、マルチコラム方法を用いても1本1本に使用するビームが適切でなければ、高スループットでかつ高精度の露光はできなかった。
【0014】
ランダムなパターン描画のための描画装置としては、縦方向にドットビームを並べて均一なラインビームを構成する方法が考えられる。そしてビームの長手方向と垂直である方向に走査して、パターン描画することがランダムなパターンを高速に描画するための最も近道であると一見思われる。
そのような長手方向に均一なビームを形成するための電子銃としてはくさび型の断面を有して長手方向には2枚のナイフエッジで引き出し電極ができているような形状の電子銃を用いて電子ビームを形成すればよいように考えられる。
しかしながら、細長い断面を有する強度の強い均一照射ビームを形成することは実験上困難であった。一方向に長い均一電子銃というものは、どこか1カ所で強く電子が放射されてしまうことが多く、他の箇所は弱いビームが放射されてしまい、均一な電子照射を得ることは難しかった。このような理由で一方向のマルチビームというものは、システムとして実用化されたことは今日までなかった。
【0015】
電子銃の形成の立場から議論すれば、実際に現実的に可能なことは、強い輝度での電子銃からの放射は、円形状または正方形状の領域を均一に照射することができることにとどまることが多い。
このような電子銃の円形状または正方形状の均一放射によっては、照射すべき対象のビームは可変矩形ビーム、CPビームまたは、正方形行列ビームの形成に適している。
【0016】
一方、多数のビームを用いて一方向に連続的に走査しつつ描画をしていく描画方法が存在し、多くの方法が提案されている。一般的にマッシブパラレルと呼ばれる方法である。
最初に本発明者らが始めに提案したBAA方式について記す。
図3のように、ビームをまず多数の離散的な個別要素ビームに分離する。そして各々の個別要素ビームが、同時に独立にON/OFFしながら一方向に連続的に走査していく描画形式をとる。従って、レジスト上の1点の描画箇所が多数の離散的な個別要素ビームによって重ね露光される。
走査方向は連続的に走査されるが、非走査方向は離散的に描画せざるを得ないので、一定のピッチPで互いのビームの位置をずらしておくことになる。例えばP=20nmとして千鳥格子のように並んだビームは第一列目のビームから20nmずれている。3列目はさらに20nmずれている。
【0017】
さてこのような描画方法では、以下のような問題点が発生する。
走査方向と非走査でパターンのシャープネスが異なる。一般的には、非走査方向にはエッジのシャープネスが非常に良く、急峻である。
走査方向にはビームサイズの分だけ引きずって行き、ブランカによってビームが切れるが、ビームサイズの分だけ照射エネルギー分布に傾斜ができるので、走査方向へのパターンエッジのシャープネスは良くない。走査があまり速いと、走査方向にシャープなビーム形状が得られず、XY平面内で均一なパターン形状が得られない。
【0018】
またビームサイズを固定して、ビームサイズS=20nmであると、任意のパターンを記述するには粗すぎる。これを微細な寸法まで記述できるようにするためには、スキャン方向にはビームが必要に応じて高速にON/OFFできるようにすればよい。100nm/100nsの速度で走査されている場合には、0.1nm単位まで寸法を指定できるためには0.1nsの単位で、ビームをON/OFF制御する必要がある。
0.1nm単位で300mmウェハを表すと(3×10
9)
2=10
19のデータ量が必要である。また矩形のショットが1Tera=10
12ショットあるとすべて合わせて10
31bitのデータが必要となる。このような膨大なデータを扱うことは大きな困難を伴う。何らかのデータ圧縮の方法を考えなくてはならない。
【0019】
さらに多数のビームをON/OFFしながら連続走査型方式で描画して行く場合には、以下の困難がある。
連続的な走査方法による、薄いプレート板状の物体からなるPSA(Programmable shaping aperture )では、ビームを整形するための多数の開口群と、
それぞれの開口を通過する個別要素ビーム群のすべてのビームを独立にON/OFFするための個別要素ビーム用の一対のブランカ電極対と、
それぞれのブランカを駆動するための、電圧(3.3Vから5V)信号をPSAの外部から個別要素ビーム用のブランカ電極までの配線に流れる電流によって形成される磁界が、
PSAを通過していくビームに影響を与え、制御上好ましく無い偏向を与えてビームのON/OFFの正常動作を邪魔したり、露光量が変化したり、正常な描画点から外れた場所に描画されたりする可能性が排除できない。
【0020】
前記配線数は数百本から数千本と多く、また配線に流れる電流による磁界はPSA面内で近いビームに対しては大きな影響を与えて、PSA面内から遠くの位置にあるビームにも強い影響を与える可能性がある。また、描画走査しつつブランカがON/OFFをするタイプのマッシブパラレル装置では、不確定な時間に配線に流れる電流による磁界がビームを偏向するために、正確で信頼度の高い描画特性が保証できない。
または、電極制御信号の配線は長さが一定でなくばらつくので配線による信号遅延があって、ブランカ信号のタイミング合わせが容易では無く、個別のビームのタイミング制御が難しい。走査しながらの個別のビームのON/OFFのタイミング制御は難しく、時間的にばらばらになる。そのようになった場合には、ビーム毎に位置制御がばらつき、パターンエッジががたがたになり、パターンの寸法精度が悪くなる。
【0021】
さらにマッシブパラレル方式ではハーフトーンによる描画方法が使用される。
ここではビームを等間隔に並べることなく、少しずつピッチを変えて位置をずらして配置しておいて、各々のビームに中間的な露光量を与えて描画されたパターンの寸法が、徐々に変わるようにしている。
一般的にハーフトーンですべてのパターンを表わそうとした場合には、少なくともパターンルールの数値の間を4分割程度にする必要がある。すなわち20nmパターンルールであれば、5nm 毎にずらしたショットを形成しておきパターンのショット時間を制御する必要がある。これによって少なくとも必要な開口パターンはX方向に4倍、Y方向にも4倍の種類が必要なので16倍の大きさのPSAが必要となる。これを均一照射するための電子銃の均一性を表わすパラメータであるエミッタンスは4倍必要であって、電子銃の輝度は16分の1に低下する。そのため、ウェハ直接描画を目指すと、スループットは16分の1に低下する。
【0022】
以上のように、マルチ電子ビーム描画においては高スループットの実現とパターンの高精度化の実現とは両立が難しく、さらに加えてデータビット容量の膨大化・電子銃均一照射条件と高スループット化の両立が困難という諸々の条件が追い打ちをかけていた。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る描画装置は、1つの電子銃21からZ軸方向に射出される電子ビームから複数の正方形ビーム(個別要素ビーム)を発生し、これを試料に照射するコラムを所定数配置したマルチコラム型の描画装置である。
【0033】
1つのコラムには、1つの電子銃21が備えられ、この電子銃21からの放出される電子ビームがPSA−BA基板4に均一に照射される。PSA−BA基板4には、複数の正方形開口を正方格子状に配置した電子遮蔽板11,12が設けられ、この電子遮蔽板11,12により、電子銃21からの電子ビームから所定の配置ピッチでX、Y方向に正方格子状に配列された複数の正方形の個別要素ビームが得られる。この例では、4×4=16本の個別要素ビームが得られる。電子遮蔽板11,12の間には、個別ブランカ13が設けられており、この個別ブランカ13の一対の電極に印加する電圧を制御することで、
図1における点線のように個別要素ビームが偏向され、これによって個別要素ビームがON/OFFされる。また、1コラムに1つの全体ブランカ16が設けられており、1コラムの複数の個別要素ビームを全体として偏向させる。ラウンドアパーチャ14には、その中心部に開口が設けられており、上述の個別ブランカ13、または全体ブランカ16によって偏向された個別要素ビームはラウンドアパーチャ14を通過することができず、個別要素ビームがOFFされ、個別ブランカ13、および全体ブランカ16によってOFFされなかった個別要素ビームがラウンドアパーチャ14を通過してZ軸方向に射出される。
そして、ラウンドアパーチャ14を通過した個別要素ビームを偏向装置(メイン偏向器17,サブ偏向器18)により所定ステップで移動することで複数の個別要素ビームを走査して、所定のパターンの描画を行う。
【0034】
本実施形態では、1コラムからの全個別要素ビームを全体ブランカ16でOFFさせておき、その状態で、パターンデータに応じて決定されたビットマップに応じて個別ブランカ13のON/OFFを決定し、この動作が静定したあと、全体ブランカ16をONして、ON/OFF制御された1コラム分の個別要素ビームが試料に照射される。そして、ステップ的に個別要素ビームの照射位置を移動して、各位置でのビットマップに基づく個別要素ビームの照射を繰り返し、所定範囲内へのパターンの描画を行う。
【0035】
本実施形態では、目標とする描画パターンをそのまま描画するのではなく、上述した描画装置でビームが照射できるエリアとの比較で、適宜変更する。すなわち、個別要素ビームの配置ピッチは、電子遮蔽板11,12の開口の配列によって決定されている。そこで、各ショットでの個別要素ビームのON/OFF(ビットマップ)は、パターンデータと、電子遮蔽板11,12の開口の配列から得られる個別要素ビームの試料への照射位置の配列とで決定される。パターンデータによっては、その照射を実現するためのショット数が膨大になる可能性がある。そこで、本実施形態では、ショット数が所定値を超える場合には、パターンデータの方を変更し、ショット数(使用するビットマップの枚数)を所定数以下に抑制する。
【0036】
このように、本実施形態に係る描画装置では、静止した状態での正方形のビームのON/OFFによって描画を行うため、いかなる寸法のパターンでも任意の寸法で描画できるものではない。パターンの形状および寸法に若干の制限を与える代わりに、高精度化と高スループット化を同時に達成できる。なお、本実施形態では、デバイスのパターンルールにあわせたビーム形成手段を用いて、ビームを形成する。
【0037】
これ以降の説明で、ビームサイズSの正方形のビーム射出部を縦横ともに整数個に配置し、これを所定のピッチで移動して描画できるパターンを、正方格子メッシュで描画できるパターンと呼ぶことにする。
【0038】
本実施形態では、目標とするパターン形状(目標パターン形状)を、例えば一辺の長さが、20,18,16,14,12,10,8,6,4,3,2,1nmのうちの1つ正方形の要素領域を縦横に配置したパターンメッシュからなるパターンデータに変形する。 すなわち、形成したい目標パターン形状を、パターンメッシュと比較して、パターンメッシュの各正方形領域について、目標パターン形状と重なる要素領域(メッシュ)について、「1」とし、重ならない要素領域について「0」となるビットマップを作成する。
【0039】
そして、ビットマップで「1」に対応する要素領域についてビームを射出して、ターゲットにビームを照射することで目標パターン形状に近いパターンを描画する。
このように、本実施形態では、描画目標である目標パターン形状をそのまま描画用のデータとして用いるのではなく、これをメッシュパターンと比較して、ビットマップに変換し、これをビーム制御のデータとして用いる。
【0040】
本実施形態では、パターンのメッシュピッチと正方格子行列ビームを一致させ、効率のよいON/OFFデータ、すなわちビットマップを作成し、このビットマップによる描画を行うことにより、描画精度と描画速度を同時に達成する。
【0041】
これは、描画すべきデバイスルールに適した描画装置であれば、効率的に描画できるということを意味している。例えばサイズS=20nmメッシュの点滅で描画できるパターンに対して、80nmピッチの正方形格子行列ビームの点滅でパターン描画を遂行する。ビームの位置走査が静止しかつビームの点滅の状態が一定の状態になった後に、全体ブランカを動作させて全体のビームを被露光物上にショットする。
【0042】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1に使用する基板は、PSA−BA基板4であり、PSA−BAは、Programmable Shaping Aperture Blanker Arrayの略である。
図1に示すように、PSA−BA基板4は、好ましくは例えば10mm四角のチップであって、直径300mmのウェハに対して87本のコラムが並んだマルチコラム全体を通じて300mmφ以上のセラミック等で形成された基板の各々のコラムの中間部に1個ずつ貼り付けられて使用されている。
図1の電子銃21から射出される電子ビーム1によってPSA−BA基板4がほぼ均一な電子ビーム強度で照射される。
PSA−BA基板4では、
図5に示されているように正方形ビームを(または丸ビーム)をビームサイズ41の整数倍の大きさのピッチ43(X方向)および46(Y方向)で、正方形格子状に配列された、ビームを通過せしめるビーム成形用のアパーチャ40を持っている。好適な例では、X方向のピッチ43と、Y方向のピッチ46は、同一である。
【0043】
本実施形態では、PSA−BA基板4に高抵抗のSiC基板を使用するが、Si基板でもよい。例えば、アパーチャ40が一辺4μmの正方向であり、16μmのピッチで、縦横に配置する。これによって、PSA−BA基板4を通過するビームサイズは4μm(4μm□)、ピッチは16μm。例えば、ビームは、横方向に40個並び、縦方向にもピッチ16μmで、40個整列している。そのために40×40=1600個の正方形ビームが正方形格子行列ビームとなって整列している。全体として640μm四角の領域にビームが配置される。
640μmの領域は、変動率0.1%以下の均一性によって電子ビーム照射される。
【0044】
図1では、各アパーチャ40によって成形される個別のビーム(個別要素ビーム)は個別ブランカ13の電極の間を通過し、下部の矩形開口を通過した後に電子レンズによって、微小な開口が形成されたアパーチャ板からなるラウンドアパーチャ14の開口に収束される。
【0045】
後述するように、個別ブランカ13の電極に電圧が印加されるとビームが偏向されて、電子銃のクロスオーバー像がラウンドアパーチャ14の開口を通過できずにラウンドアパーチャ14に遮蔽され、試料面上には射出されることはない。個別ブランカ13の電極に電圧が印加されていないと、ビームはラウンドアパーチャ14の開口を通過してONの状態を表し、電圧が印加された場合にはビームが偏向されてラウンドアパーチャ14を通過できずOFFの状態を表す。
【0046】
図示したように、電子遮蔽板11、個別ブランカ13、電子遮蔽板12は、SiCなど半導体からなるPSA−BA基板4を利用して形成される。
そのようにして、1600個の個別要素ビームのON/OFF状態が静定した後に、全体ブランカ16の電極に対する電圧印加を制御して、ONの個別要素ビームをラウンドアパーチャ14の開口を通過させてビームを試料に照射して、試料のレジスト層を感光させる。
【0047】
なお、ラウンドアパーチャ14を通過した電子ビームは、縮小レンズ20aと投影レンズ20bを用いて試料面上には例えば200分の1に縮小されて結像される。
この結像時には個別要素ビームのサイズは20nm□となり、ビームのピッチは80nmとなる。以上のビームが正方形格子状に40×40=1600個並ぶと全体ビームとして、微細な正方形ビームを内部に含む3.2μm□の正方形のショットサイズとなる。
1回のショットの照射が終了した場合には、全体ブランカ16に電圧が印加されて、行列ビーム全体はアパーチャを通過できずに試料面には照射されない。いわゆるビームのOFF状態になる。
この後、メイン偏向器17とサブ偏向器18に異なった電圧が印加される。同時に、1600個の個別要素ビーム用のブランキング信号のON/OFF情報についての新規ビットマップデータがレジスタにローディングされ、ビットマップデータが全部書き換えられる。新しいビットマップデータがローディングされている時には、個別ブランカ13のブランキング電極用の信号が変化をして、PSA−BA基板4の配線上に電流が流れているのであるから、配線を取り巻く磁界が変化している。各開口を通過すべきビームの位置が静定していないので、ビーム照射をしないように全体ブランカ16によってビームが射出されないようになっている。
ビットマップデータのローディングが全部終了し、個別要素ビーム用のブランカの信号が変化し終わり、個別要素ビームのON/OFFが制定する。なお、ビームの走査を行うために、メイン偏向器17、サブ偏向器18の偏向信号も変化する。そして、このビーム偏向についても静定し終わったあとで、全体ブランカ16が解除されて、次の試料面上のレジスト層にビームがショットされる。
電子銃21からの電子ビームがPSA−BA基板4を通過した後、縮小レンズ20a、メイン偏向器17、投影レンズ20b、サブ偏向器18を通り、試料に照射される。これらが1つのコラム2を形成する。
【0048】
このように本方式においてはビットマップデータが確定して、すべての正方行列要素ビームのON/OFF状態が静定し、ビームがショットされる偏向位置も静定した後に全体ブランカ16が解除されて描画が行われる。
したがって、常にビームが静定した状態でレジスト層に照射される。
以上のマルチビーム描画機能を果たす仕掛け全体をPSA−BA機能部3として図示してある。
【0049】
また、電子ビーム描画装置は、12インチウェハ(300mmウェハ)用にマルチアクシスのコラムを87本具備するとよい。これはウェハ処理能力すなわちスループットがデバイス量産技術者から要求されている1時間当たり10枚の値を満足するようになるからである。87本のコラムはすべて同じコラムである。
【0050】
各々のコラムはコラムの一番上部に電子銃21を具備する。電子銃21はPSA−BA基板4を均一照射し、高輝度を達成できるLaB6の平坦な先端部を有する電子銃である。温度は1600Kから1700Kの比較的低温である。先端表面には電子を引き出す強電界が印加してある。通常電子銃陰極は−50KVであるが引き出し電極には−45KVから−40KVの電位がかけられており、電子銃陰極に対して電子を引き出すように引き出し電界がかかるようになっている。
電子銃21から、出射された電子は、陽極が0KVであって、50KVのエネルギーに加速される。電子が進む方向をZ軸方向とする。
電子はサイズS(一辺の大きさS)の正方形ビームを形成する開口部を有する電子遮蔽板11ないし12に当たって整形される。たとえばS=4μmである。電子遮蔽板11ないし12は多数の開口群を具備する。前記の開口群はZ軸に直交するXY平面内部で、ピッチがSの整数倍のLである完全な正方形の格子状に並んだビームを形成できるように、正方形マトリクス状の開口群を有する。電子遮蔽板11ないし12と平行な平面内に電子遮蔽板11ないし12と異なる複数の電子遮蔽板が存在してもよい。この場合には別の電子遮蔽板の開口群のサイズS’はSよりも若干大きくてもよい。
電子遮蔽板11,12でサイズSに成形され、XY平面内に正方形状マトリクスを構成するビーム群に成形されたビームのそれぞれはそれぞれを独立に偏向可能な個別ブランカ13の2枚の電極の間を通過していく。個別ブランカ13の電極は平行平板で、2枚の極板が0Vと0Vであれば電子は曲げられることなく直進するので、レンズ19で集光されたのち、ラウンドアパーチャ14の開口を通過していく。前記のビームはON状態であるという。
個別ブランカ13の2枚の電極の電圧が異なるとき、通過していく電子は曲げられるので、ラウンドアパーチャ14を通過できないで遮蔽される。前記の通過できないビームはOFF状態となる。
個別ブランカ13の各電極には、電圧アンプからの出力が印加される。個別要素ビームのON/OFFを示すデータが対応するビットマップから転送されて対応するレジスタに記憶される。このデータは、「0」まはた「1」の信号である。
この「0」「1」信号によって、ビームのON/OFFが制御される。「0」「1」信号はビットマップと呼ばれる。正方格子行列ビーム群は一般にX方向に整数N個、Y方向に整数M個並んでおり、全体でNM個のビーム群が存在する。N=Mであってもよい。この場合には正方格子行列ビーム群は完全に正方形のビーム群となる。
個別要素ビームは個別ブランカ13を通過した後で、電子遮蔽板11は多数の個別ブランカ13が電界干渉しないための電界干渉防止板としても機能する。電界干渉防止板は個別ブランカ13に近接しておかれており、隣接するビームの軌道に個別ブランカ13の電圧が干渉することを避ける目的で設置されている。
ビームは、次にレンズ19を通過し、電子銃のクロスオーバー像がラウンドアパーチャ14上に結像する。
ビームはラウンドアパーチャ14の開口から偏向しOFF状態になるように、個別ブランカ13と全体ブランカ16がビームを偏向する。
前記の正方格子行列ビーム群はすべてのビットマップデータが確定したら、全体ブランカ16が解放されて、ビームがラウンドアパーチャ14の開口(丸穴)を通過して試料面上に照射される。すなわち、ビームは縮小レンズ20aと投影レンズ20bを通過して試料面上に結像される。
ビームは始めは4μmサイズの穴が12μm間隙を開けて16μmピッチで並び、X方向に40個並びY方向にも40個並ぶために640μm正方形の領域に1600本のビームが出射される。
【0051】
ビーム全体は縮小レンズ20aと投影レンズ20bを通して縮小され、試料面上には200分の1で投影される。従って20nm正方形のビームが60nmの間隔を離して80nmピッチで、40×40=1600個が3.2μmの正方形の領域に並ぶ。
前記3.2μmのビームはメイン偏向器17で走査される。この走査の幅は±25.6μmであり、1回分のショットのフレームが全体として走査される。
さらにビームはサブ偏向器18で20nm毎に偏向し、80nmの正方形領域を16ショットで塗りつぶすことができる。
ウェハ全体の露光時間を計算する。レジスト感度40μC/cm
2で、電流密度400A/cm
2 100ns shot、サブデフレクタジャンプ待ち時間50ns、ショットサイクル150ns、6.5MHz、26mm/33mmを描画するときには206sが露光時間となる。ステージの折り返し時間とウェハの出し入れとウェハのキャリブレーションを合計して300sがウェハの所要時間とすると、300mmウェハで12枚/時のウェハ処理量で描画することができる。
【0052】
サブ偏向器18の偏向幅は、80nm×80nmの四角領域を偏向できる。基本的にX方向のサブ偏向器18がサイズ20nmのビームを−30nm、−10nm、+10nm、+30nmの4点を偏向し、Y方向のサブ偏向器18がサイズ20nmのビームを−30nm、−10nm、+10nm、+30nmの4点を偏向することにより、16回の偏向とショットで80μm四角領域が塗り潰される。
同時に、1600本のビームが出ていれば、サブ偏向器18の偏向により3.2μm角領域が全面描画される。この時、各個別ブランカ13の一つ一つに任意のON/OFFのビットマップデータによる3.3Vから5Vの電圧を掛ければ、
図1のラウンドアパーチャ14の丸穴を通過できないので、ビームがウェハ上に照射されない。これにより、3.2μm角の内部のサイズ20nm毎の小領域を塗るか塗らないかを選択することによって、20nmのメッシュで分割した任意のパターンが描画できる。すなわち、市松模様、ラインアンドスペース、1対1のホール列や
図11のような不規則な配線パターンも描画できる。
【0053】
本実施形態では、コラムはマルチコラムが1ウェハを描画する。従って、マルチアクシス(Multi Axis:MA)方式である。かつ、1コラムの内部のビームは電気的に可変で静的に固定されたビーム形状がプログラマブルに変化するビームを用いて、ベクトル走査で描画するものである。従って、PSB(Programmable Shaped Beam)方式である。そこで、MA−PSB方式と呼ぶ。
ここで、
図1には、制御装置10が模式的に示してある。この制御装置10は、個別ブランカ13、全体ブランカ16、偏向装置(メイン偏向器17,サブ偏向器18)の制御を行うとともに、描画パターンについてのパターンデータを受け取り、これから各ショットにおける個別ブランカのON/OFFを決定するビットマップを生成する。例えば、パターンデータと、電子遮蔽板11,12における開口の配置ピッチに応じて個述するようにしてビットマップ作成する。また、必要な場合に、パターンデータを変更する演算も行うとよい。
【0054】
図2は、BAA(Blanker Aperture Array)システムの図である。LaB6の電子銃21から出た電子流はZ方向に進み、矩形アパーチャ22を通過して矩形ビームに整形される。電子レンズを介して、BAA23を照射し、BAA23を通過して1024本の個別要素ビームが形成される。この個別要素ビームは、個別に独立の小ブランカ電極対とラウンドアパーチャ24によって、ON/OFF制御される。BAA23では、ブランカ26も設置されているが、これはBAA23による連続走査によって描画が1列ごとに終了したあとでブランカがかかってビームがカットされるものであって、個別要素ビームのステップ毎にブランカをかける機能はない。
ビームは、メイン偏向器25とサブ偏向器27によってそれぞれの連続的な一方向への走査がなされる。描画される試料はウェハ28である。
【0055】
図3はBAA(Blanker Aperture Array)のビーム配置図である。同時に電子遮蔽板の開口の配置図でもある。BAAの開口群は横長に形成されている。縦方向はAからHまでの8つの矩形開口が並んでおり、横方向には1番から128番の128個の矩形開口が並んでいる。
1,3,5など奇数番号のついているビームを形成する矩形開口は矩形開口としては横方向に開口のサイズで2個分ずつずれていて、これを縦方向に走査した場合には矩形1つ分の描画されない間隙が残る。そこで、2,4,6など偶数番号のついたビームがこの間隙を埋めて塗りつぶしができるようになっている。
しかしながら従来のBAA描画方法のようにビームを配置しても、横方向(X方向)には個別要素ビームのサイズの整数倍のパターンしか描画ができない。
A列のビームに対してB列のビームをハーフピッチずらすなどビーム相互間の配置を微妙にずらすことを行って、ビームのON/OFFの時間を微細なタイミングでずらし制御して描画すれば、ビームサイズの整数倍以外のパターン描画も不可能ではない。また走査方向に連続的な鋸歯状波形を用いてスキャンを行いつつ、ビームブランカのタイミングを微妙に制御することで、スキャン方向のパターンサイズを微妙に調整することができる。
【0056】
ただし、以下に述べるように問題点は多い。
1.Y方向とX方向すなわち、走査方向と非走査方向でのパターンエッジのシャープネスが異なる。
2.走査方向のデータ容量が膨大となり、描画データ全体を格納し検証するための適切なデータ容量には収まらない。各描画点ON/OFFを記述するためのビットマップデータは0.1nmまで記述しようとすると、300mmウェハ全体で10
20以上のデータ容量が必要となる。そこで、ビットマップデータは全部を記憶格納せず、パターンデータである、矩形状の領域のみデータ記憶格納をしておき、描画しつつビットマップデータを作成するという形態の装置が提案されやすい。
しかしこのタイプの装置は、中間データであるビットマップデータが記憶保持されないために、描画パターンに異常があった場合に、異常の原因が特定できないので、非常に低い信頼性の装置であることに終わる。
3.BAAデバイス中での配線長はすべての要素ビームに対して異なるために、ビームのON/OFF信号のタイミングがすべての要素ビームで異なる。そのためにビームのON/OFFタイミングの制御ができずに描画パターンの精度が非常に劣悪となる。
4.BAAデバイスがX方向とY方向でサイズが異なり正方形ではない形状で、一方向に長いので、電子銃からの電子ビームの均一照射ができない。
従って、要素ビームの中で電子ビーム強度が不均一なビームが多い。
【0057】
次に、
図4について説明する。BAAで構成されるビーム群(BAAの像34)はX方向に長く、Y方向に短いのでY方向のフレーム33を連続的に走査していく。連続的に走査しつつ、Y方向の所定の位置に来た時に、ビームの個別ブランカをON/OFF駆動をすることで任意のパターンを描画していくものである。特徴的なことは走査が連続的であって、個別ブランカは任意のタイミングでON/OFF駆動を繰り返すことである。
フレーム33は長さが100μmであって、Y方向の最後までスキャンがなされたら、再び100μmのサブフィールド32の下端に戻って来る。ストライプ描画終了後から次のフレームの描画開始までの間には、ブランカ26がビームをカットしてビームが出射されないようにされる。
次に新しいフレームを+Y方向に向かって連続走査を行いつつ描画をおこなう。このようにサブフィールド100μm四角の中を連続フレームが描画していく。
さらにウェハ上のチップパターンはX方向に例えば2mmであるようなサブフィールド32の集合体を多数集めたメイン偏向範囲31によって領域が構成されている。100μmのサブフィールドをX方向に例えば右方向に20個次々に描画したのち、ステージの移動方向がY方向であるので、Y方向に1段上がって今度はX方向に次々に左方向にサブフィールドを1つ1つ描画しつつ、メイン偏向範囲31を描画する。このようにして、各チップ29の等価なY方向のストライプ30をウェハ28に対して描画していく。
このように、BAA方式や、MAPPER方式やPML2といったマッシブパラレル方式は、個別要素ビームのショット間では全体ブランカを使用しないで、個別要素ビームのブランキング電極のみを高速にON/OFF制御するとともに、ステージ連続移動方向と垂直な方向に高速なビーム走査を行い、ビームの点滅を高速に行って描画していた。そのために1回の長い走査の中で0.1nm単位という微細さで個別要素ビームをON/OFFができるという特質を有していた。しかしそれは膨大なデータ容量を保持するという犠牲の上に立つとともに、パターンの描画精度を犠牲にしたものであった。
上記の理由は、高速の多数のビームブランカが駆動するとき配線を電流が流れて電子ビームを揺らす可能性を無視していた結果である。
【0058】
また、BAAなどに用いられているデバイスはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの絶縁物を使用しており、散乱ビームがチャージアップしたり、電子線によって絶縁膜破壊を起こすものであった。本実施形態では真性半導体、アモルファス半導体、PN接合を使用して半導体の空乏層を用いるような絶縁手段を講じているので、散乱ビームがチャージアップしたり、電子線によって絶縁膜破壊を起こすことが低減される。
【0059】
図5は本実施形態のPSB(Programmable Shaping Beam)ショットの様子について説明する図である。
メッシュのビーム40サイズは20nmであって、ピッチは4倍である。サイズS=20nm□の正方形のビームが、ピッチ4倍の80nmピッチで正方形格子に並んでいる。図中、41はX方向のビームサイズ、42はX方向のビーム間スペース、43はX方向のビームのピッチであり、44はY方向のビームサイズ、45はY方向のビーム間スペース、46はY方向のビームのピッチである。
図5では3×3個の9個のビームしか描いてないが、実際には40×40個の1600個のビーム40が並ぶ。S=20nmであるので、ビーム間には20×3=60nmの隙間がある。ビームのピッチはX軸、Y軸ともに20nm×4=80nmである。一般的なパターンはビームを適切なビットマップデータに従ってON/OFF制御を行い、個別要素ビームのON状態またはOFF状態が静定した後、全体ビームで1ショットを露光する。次に全体ブランカをかけて、ビーム全体をOFF状態にし、次のショットのビットマップデータをレジスタに取り込み、ビームのON/OFF状態が一定の状態になり、かつサブデフが80nm四角の所定の位置への偏向に静定した後、全体ブランカが解除されて次のショットが露光される。
このようにして、80nm四角を16ショットで描画すると、1600本のビームによって3.2μm四角の描画が終了する。この後、メイン偏向器を偏向し、次の3.2μm四角の描画に移ってもよい。
パターンデータに依存して16ショット以外の場所に余分にショットしても良いし、3.2μmが任意の中間的な値になって描画してもよい。
【0060】
本実施形態の特徴は、同時にショットされるビームはビットマップによりON/OFF状態が決定されることと、このビームのショットはビームの位置、強度が静定した後に行われることである。すなわち、複数の同一サイズの正方形ビームが正方形格子マトリクスの格子点にあって一定の時間描画されるべき基板に静止した状態で同時に描画に寄与する。ビットマップによってON/OFFの状態はどちらも取り得るので、特定のビームがONしているかOFFしているかは、パターンデータに依存する。
【0061】
図6は、
図5のメッシュサイズ20nmの正方行列ビーム群を用いて、メッシュサイズ16nmで、ピッチは16nmの5倍の80nmである正方形格子行列パターンが描画できることを示す図である。すなわち16nmのメッシュを描画するときには、全体ビームブランカのONしている時間を0.8×0.8=0.64倍に下げて、16nm毎にサブ偏向器を移動せしめて、ビットマップデータによって個別要素ビームのON/OFFを制御し、描画していくことで16nmのメッシュパターンの描画が可能となる。図中、47はX方向のメッシュサイズ、48はY方向のメッシュサイズである。
20nmメッシュパターンの描画の場合と異なるものは、サブ偏向器の進むピッチが20nmから16nmになることと、80nm四角を塗りつぶす場合に16ショットではなくて25ショットが必要となることである。また、同じレジスト感度であるならばビーム当たりの照射時間が64%になることである。サブ偏向器の待ち時間はそれほど変化しないとするならば、全体の描画時間は若干延びるであろう。しかし16nmメッシュのパターンが20nmの正方格子行列ビーム群の描画装置で代用的に描画できることの意義は大きい。
【0062】
図7では、20nmサイズ、80nmピッチのメッシュである正方格子行列ビーム群を用いて、Y方向には直線であって、X方向には30nmのラインと30nmのスペースの繰り返し(30nmのラインアンドスペース)を有するパターンを描画するための方法について述べる。図中、61a,61b−61jは、この例のラインアンドスペースのパターンである。
一般的に80nmピッチの正方格子行列ビームを用いる場合には、描画すべきラインアンドスペースをTとし、T=60nmとの正方格子行列ビームのピッチ80nmの最小公倍数を求める。この場合には240nmとなる。
元の80nmピッチの正方格子行列ビームには始点からの距離が240nmの箇所にもビームが存在するので、X方向に30nmのラインアンドスペースを描画する際にも、この240nmの距離のビームがONにて使用できる。
図7の第1列目の(1)と(4)と(7)のビームは30nmのラインアンドスペースを描画する際に同時にONしていてもよい。描画すべき30nmラインアンドスペースの位置は、80nmピッチの正方格子行列ビームをメイン偏向器で5nm右方向にずらして、かつ露光量を20nm線幅が30nm線幅となるように増大してある。または同じ(1)と(4)と(7)のビームを用いて、わずかにずらして露光量を2分割し、重心が描画すべき30nmラインアンドスペースの中心にある2つのショットに分割してもよい。
【0063】
しかし、通常の20nmのメッシュを描画する場合の(2)と(3)のビームは、この図では点線で書いてあるが、OFFとなっている。
同様に2列目は(1)と(4)と(7)のビームを用いて65nmずらして、描画している。
同様に3列目は(1)と(4)と(7)のビームを用いて135nmずらして、描画している。
同様に4列目は(1)と(4)と(7)のビームを用いて195nmずらして、描画している。
5列目は(1)と(4)と(7)のビームを用いて245nmずらして、描画すべきものであるが、丁度第1列目で描画すべきビームがONしているので、5列目の描画は不要である。
Y方向には同じ偏向器データで描画していく必要があるので、X方向のみのショット数を比較すると、塗りつぶしの場合にはサブ偏向器の移動を伴う4ショットで描画できていたものが、メイン偏向器の移動を伴う4ショットで描画できることになる。偏向器の待ち時間が長い分、若干ショット時間は延びると思われるので相対的に高速化するとは云えないが、著しく描画速度が落ちる訳ではない。
【0064】
図8は20nmサイズ80nm ピッチのメッシュ、正方格子行列ビームを用いて、Y方向には直線であって、X方向には25nmのラインアンドスペースを有するパターンを描画するための方法について述べる。図中、62a,62b−62lは、この例のラインアンドスペースのパターンである。
80nmと50nmの最小公倍数は400nmとなるので(1)と(6)のビームを同時に出して描画できる。そうすると1,2,3,4,5,6,7,8列目のショットが必要となって、9列目のショットは必要が無い。通常の塗り潰しパターンでは4ショット必要であったものが8ショットとなり、描画速度は落ちるが著しく効率が悪化するわけではない。
このようにハードの持っている正方格子行列ビームのピッチ80nmとパターンデータのピッチが一致しないパターンでも、描画方法を工夫することによってショット数の著しい増加をもたらさないように、スループットの低下を避けることがある程度はできる。
【0065】
しかしながら、80nmとの最小公倍数が極端に大きくなる場合には同時に描画に寄与できるビーム数が著しく小さくなるために、全体パターンのショット数が膨大となる。
例えばビームサイズが20nmを基本とする正方格子行列ビームである場合に、描画すべきパターンの基本メッシュが21nm,23nmとか19nmというように20nmと素である場合には最小公倍数は膨大な値になり、このことはすなわち同時に使用できるビーム数が著しく少なく1600に対して20分の1から40分の1以下となってマルチビームとしての効率を著しく低下する。
【0066】
例えば、20nmの4倍の80nmピッチに40個ずつ縦横に配置されてなるPSBビームの場合に、描画すべきデバイスパターンが1600nmピッチしか描画パターンがない時には、僅かに9ショットしかビーム照射を使用しない。この場合には9/1600分しかビーム照射に寄与しないのであるから、効率が大変悪い。
そこでデバイスパターンの設計ルールにおいて、パターンメッシュサイズを一定倍率以上に大きくしないことが必要である。
この場合には該当する領域のパターンルールを可能な限り変化させて、最小公倍数が所定の値を超えないように局所的にパターンルールを緩めたり厳しくして、20nmとの最小公倍数が適切に小さくて、マルチビームの同時に使用できるビームの本数が大きくできるパターンデータに改変することを目標として、デバイスとしての速度・面積などに有意の劣化がなく、機能に支障なき範囲内でパターンデータを修正せしめることが上策である。
このことによってマルチビームを効率よく使用せしめ、ショット回数を低減せしめて、描画のスループット向上に寄与することが可能となる。
【0067】
図9は、正方格子マトリクスビーム全体のビットマップデータ(例えば1600個の1と0のビットマップデータ)をPSA−BA基板に信号として伝送するための回路の図を記載したものである。
ウェハ上のすべての半導体デバイスのチップの描画データは、複数のビームサイズSを許容した上で、所定のサイズS毎の正方格子行列マトリクスによるビットマップデータと、全体ビームマトリクスの描画位置座標データとに分割できる。
始めにすべての描画パターンデータを前記、ビットマップデータと描画位置座標データに分割し記憶格納装置102に格納しておく。
図9の説明ではビットマップデータの伝送方法についてのみ述べる。
描画シーケンス制御回路101からの信号によってビットマップデータは記憶格納装置102から読み出されて、データ並べ替え装置103を通してシリアライザ104に転送されて、データは高速に伝送される連続するビット列に変形される。シリアライザ104からの信号はドライバー105を通じて、光伝送される場合にはレーザー106に導入される。この場合のレーザー伝送回路は2Gbps から、10Gbpsの速度で高速伝送される。
光はフォトダイオード107で受光し、アンプ108を通して電圧信号化される。
その後、デシリアライザ109を通して並列化して、レジスタ111からレジスタ118の8個のレジスタ(111〜118)に並列化して伝送される。各々のレジスタ111からレジスタ118のレジスタ長は、208ビットである。またデシリアライザ109の速度は62.5MHzである。また、各レジスタ111〜118の信号は、アンプ121〜128でそれぞれ増幅されて出力される。
8個のレジスタを合計して1600ビットのビットマップが格納される。
全体ビットマップは描画時に最高描画周波数10MHzで描画に消費されるので、シリアライザからデシリアライザまでの回路110は、少なくとも8個以上の複数個を並列化して保有する必要がある。
この並列度は光伝送デバイスすなわちレーザーを中心とするデバイスが高速であるならば、並列数を低減することができる。
【0068】
また
図9の説明では光伝送によるシリアライザ、デシリアライザを用いて構成したが、光伝送部分は電気伝送の回路に置き換えても良い。ここでの趣旨は、シリアライザとデシリアライザを用いてデータ信号の本数を減らすことと、データ伝送の中間部での高速化に主眼がある。
レジスタからアンプ回路を通して電圧増幅を行い、PSA−BA基板への信号配線系統に接続する。
【0069】
図10には光データシリアルパラレル伝送回路141からレジスタ142を通し、レジスタ143を通してアンプを通してPSA−BA(Programmable Shaping Aperture-Blanker Array )基板への配線につながる図が示されている。レジスタ142とレジスタ143との2段あるのは、いくつかのレジスタのラッチタイミングがずれている場合でもレジスタをすべて同時にラッチしてしまえば、1600個のビームのタイミングを配線遅延など微少量を除いて、ほぼタイミング合わせできるために2段使用している実施例である。
レジスタ143の出力をアンプ144の入力とし、ビットマップが<1>のビームONの時アンプ出力は、0Vで対向電極0Vのために、ビームはONとなる。ビットマップが<0>=ビームOFFの時、アンプ144の出力は+5Vで対向電極0Vのために、ビームはOFFとなる。
図10にはPSA−BA基板と各種機能デバイスの実装を示す。これはマルチコラムの中で1コラム分を示す。
PSAは、コラムエレメント1本毎に一つのグループで形成される。PSAの構成は、外周部からPSAセンターに向かって、外周部で光ファイバ140と受光器を含む光データ通信回路141がある。光データ通信回路141は主に光化合物半導体でできている。
シリアル・パラレルデータ変換に関するレジスタ142,143は、Siのベアチップでできている。このレジスタが2ないし3段でできていることがある。PSAの個別ブランカを駆動するアンプ144はSiのベアチップでできている。
BAAの本体の基板(PSA−BA基板)145は、主にSiCと重金属膜、熱伝導性金属膜でできている。
前記の4個の要素は別途の基板146に搭載され、この基板146は、例えばセラミック製とし、これに配線を作り、ボールグリッド147のアレイで結合するか、基板上にパッドが付けられてワイヤボンディングされる。
【0070】
また、半導体基板を同じくするレジスタ142,143や、アンプ144は一体型で形成してもよい。
PSA−BA基板は本実施例の場合にはSiC基板に銅配線で形成されている。絶縁膜は主に高抵抗SiC、アモルファスSiC、高抵抗SiまたはアモルファスSiである。
アンプ領域板はSi基板でCMOSプロセスで作られている。レジスタ142、143もSi基板でCMOSプロセスで作られている。光データ通信シリアルパラレル伝送回路は、GaAsを含むIII−V族からなる光半導体で作られていることが多く、これらの基板やプロセスが全く共通である可能性は少ない。その場合にはセラミックやエポキシの基板に種々の基板を切断して、接着し、ボールグリッドアレイによる配線接続あるいは、基板貫通孔による配線接続を使用する。あるいは手間がかかるがワイヤボンディングなどを使用してもよい。
これらのPSA−BA基板および種々のデバイスは電気的絶縁には注意を払いつつ、適切な冷却基板に熱的接触させることにより、冷却を施して、温度安定性を確保することが重要である。
PSA−BA基板のビーム軸付近ないし全ての光伝送デバイスのビームからのチャージアップとビーム照射による絶縁破壊を避けるように、散乱ビームの飛程がPSA−BA基板の中心付近のみに限定されることが重要である。
なお、機能を満たせばそれぞれのデバイスの材料は、置き換えが可能である。
【0071】
図11にはランダムな配線パターンを描画するときの正方格子行列ビーム全体の挙動を示している。
描画すべきデバイス配線パターンは灰色の領域であって、縁取りがなされている部分の内部が、塗りつぶしが必要な領域である。正方格子行列ビームのうちで、塗りつぶし領域の内部では個別要素ビームのビットマップがONとなる。正方格子行列ビームのうちで、塗りつぶし領域の外部では個別要素ビームのビットマップがOFFとなる。
ビーム走査はサブ偏向器により20nmピッチで縦横に走査されて、静定した状態で全体ビームブランカがONして描画される。一般的には16ショットでどのようなパターンでも描画することができる。ビーム走査の方法はラスタ走査ではなく隣接するショット位置への偏向はベクトル走査的に行われる。また走査波形はステップ状であるが、走査波形の立ち上がりでは全体ブランカがOFF状態になる。走査波形が静定して一定値になった後に全体ブランカが解除され露光が行われる。
【0072】
図11のビーム配置で、第一ショット目をサブ偏向器がX=−40nm,Y=+20 nmの位置でショットした後に、全体ブランキングをかけて、ビットマップデータを書き換えて、サブ偏向器がX=−20nm,Y=+20 nmの位置にビームを偏向したのち、ブランキング解除して第2ショット目が描画される。
同様に第3ショット目はビットマップデータを書き換えて、サブ偏向器がX=0nm,Y=+20nmの位置にショットされる。
以下、
第4ショット目はX=+20nm, Y=+20nmの位置にショットされる。
第5ショット目はX=+20nm, Y=+0nmの位置にショットされる。
第6ショット目はX=0nm, Y=0 nmの位置にショットされる。
第7ショット目はX=−20nm, Y=0 nmの位置にショットされる。
第8ショット目はX=−40nm, Y=0 nmの位置にショットされる。
第9ショット目はX=−40nm, Y=−20 nmの位置にショットされる。
第10ショット目はX=−20nm, Y=−20 nmの位置にショットされる。
第11ショット目はX=0nm, Y=−20 nmの位置にショットされる。
第12ショット目はX=+20nm, Y=−20 nmの位置にショットされる。
第13ショット目はX=+20nm, Y=−40 nmの位置にショットされる。
第14ショット目はX=0nm, Y=−40 nmの位置にショットされる。
第15ショット目はX=−20nm, Y=−40 nmの位置にショットされる。
第16ショット目はX=−40nm, Y=−40 nmの位置にショットされる。
サブ偏向器の通常の偏向範囲は、ビームのサイズを合わせてX=±40nm、Y=±40nm,全体で80nm 四角領域であって、16ショットで1回の塗りつぶし走査が完了する。但しサブ偏向器はベクトル走査であって、X=±40nm,Y=±40nmの範囲であれば、任意の位置に偏向が可能である。通常のパターンであれば、16ショットの露光で完了する。
【0073】
次にメイン偏向器を+X方向に3.2μm加算偏向した後、再度サブ偏向器を用いて16ショットの描画を行なう。これを繰り返してステージをY方向に移動させつつ、3.2μm四角の領域をX方向に16個、51.2μm幅で偏向描画し、X方向に1列描画したらY方向に3.2μmステージの進行方向に向かってメイン偏向器を更新して再度X方向の描画を繰り返す。
その後、隣接する例えば+X方向にメイン偏向器の偏向電圧を変えて、3.2μmジャンプして、新しい描画領域に対して3.2μm角の描画を同様に遂行していく。
ステージ位置はレーザー干渉計の値を読んで、理想的な位置からの差分をメイン偏向器に加算して印加し、実際上あたかもステージが移動していないかのように試料面上の同一箇所にビームを偏向制御するために、ステージ位置のトラッキングという方法を行っている。
【0074】
この例において、ステージは、Y方向に移動している。
レーザー干渉計によって被露光対象物ウェハを搭載したステージのX軸方向とY軸方向の位置を読み取っている。約10MHz程度で読み取っていく。
目標とすべき描画位置とのレーザー干渉計との差分をメイン偏向器に印加してステージ位置を追跡し、あたかも被露光対象物ウェハがビームに対して静止しているかのようにして描画する。
X方向のスキャン幅は51.2μmで、16回の3.2μm角の露光でX方向の一列の露光が終了する。
この時はフレーム幅51.2μmのフレームをY方向に露光していくという。
Xは−25.6μmから+25.6μmまでの幅のストライプを描画していく。メイン偏向器の中心は、−24μm,−20.8μm,−17.6μm,−14.4μm,−11.2μm,−8μm,−4.8μm,−1.6μm,1.6μm,4.8μm,8μm,11.2μm,14.4μm,17.6μm,20.8μm,24μmの16箇所へビームを偏向する。
【0075】
図11は、1つ1つの個別要素ビームのサイズが20nmの場合のものであるが同じ図を個別要素ビームが16nm,あるいは12nm,あるいは8nm,あるいは4nmであると読み替えてもよい。
それらの場合にはスループットを低下させないためには正方格子行列要素ビームの本数を多くし、全体の電子ビーム量をほぼ一定に保つように工夫する必要がある。
【0076】
図12について説明する。描画すべきパターンは横方向に長い1:1のラインアンドスペースである。
正方格子行列ビームは図の左端部の方をみると、1列目は7個、3列目は8個、5列目は8個、7,9,11列目が7個の連続したビームがONであって、それ以外の付近のビームはOFFであるビットマップを形成している。
始めに全体ブランカをカットしておき、前記のビットマップにしたがって個別要素ビームをON/OFFさせて、メイン偏向器とサブ偏向器をベクトル走査的に所定の位置に偏向してから、全体ブランカを解除して番号1のビーム群を露光する。
次に全体ブランカを動作させてビームをカットし、新しい番号2のビットマップをローディングする。ただし
図12において、番号1,2,3,4,5,6,7,8は図示されている範囲内ではビットマップは全く同じである。全く同じであっても新規なビットマップとして登録しておいてローディングし直してもよい。
【0077】
しかしビットマップが全く同じならば、新規なビットマップはローディングしないという方法もとり得る。このような取り決めはデータ圧縮の一つの方法である。ただ要素数1600ビットのビットマップが、全部同じであるとは限らず、一部分のみが同じでも、全部が一致していなくては、データ圧縮の方法が煩雑になり、却って全データ量が多くなり、データ圧縮の真の目標が却って達成できなくなることもある。従って効果的なデータ圧縮、1600ビットを16分割して、100ビット程度が一致するならば、直前のデータをそのまま使用するという程度の圧縮方法が有効であるかもしれない。
番号2のビットマップのローディングをした後、サブ偏向器をX方向に+20nm移動させて全体ブランカを解除して正方格子行列ビームで露光する。露光時間が終了したら全体ブランカを動作させてビームをカットする。
【0078】
同様に番号3、4のビーム露光を行う。これによって1列目,3列目,5列目,7列目,9列目,11列目のライン描画が完成する。
番号4のビームの露光終了後、サブ偏向器をY方向に−40nm移動して、番号5のビームでの露光を行い、続いてサブ偏向器をX方向に−20nmずつ移動しながら、番号6,7,8のビームでの露光を行うと、これによって、2列目,4列目,6列目,8列目,10列目,12列目のライン描画が完成する。
図12の1:1ラインアンドスペースパターンは、すなわちベクトル走査を用いて8ショットの描画で全体の露光が完成することになる。全面塗りつぶしでは16ショットの描画であるから、描画時間は0.5倍で済むことになる。
【0079】
図13ではホールとスペースが1:1のパターンの描画について、説明する。
正方格子行列ビーム第1列目(1,1)から続けて(1,6)、第3列目(2,1)から続けて
(2,7)、第5列目(3,1)から続けて(3,7)、第7列目(4,1)から続けて(4,6)、第9列目(5,1)から続けて(5,6)、第11列目(6,1)から続けて(6,6)間でのビームがビットマップでONしている状態である。
まず、サブ偏向器が番号1番のホール位置にある状態で、全体ブランカが解除されてビームが露光照射される。全体ブランカがビームをOFF状態にした後に、サブ偏向器がX方向に+40nm動いて、番号2のホールが露光される。全体ブランカがビームをOFF状態にした後に、サブ偏向器がY方向に−40nm動いて、番号3のホールが露光される。全体ブランカがビームをOFF状態にした後に、サブ偏向器がX方向に−40nm動いて、番号4のホールが露光される。
ということで、ホールとスペースが1:1のパターンの描画においては、完全な塗りつぶしに比較して4ショットの描画で3.2μmの四角領域が描画できるために、16ショット描画時の0.25倍の露光時間で済む。そのためにスループットは4倍になる可能性が高い。
【0080】
図14はメッシュシフトが起きた場合の格子の図を示している。すなわち正方格子行列が20nmメッシュでは粗いと思われる場合が多い。しかし、ビームの並びが20nmの4倍の80nmピッチの正方格子行列ビームであっても、偏向器によってベクトル偏向ができるので、実線のメッシュ151に対して10nm縦および横にずらした格子点でも描画が可能である。これを破線のメッシュ152で示してある。またそれ以外のずらしかたをしたビームで描画しても良い。すなわちある程度のショット数の増大を許容すれば同じ領域に様々にずれたメッシュのパターンを描画可能である。
【0081】
図15には、メッシュをずらすことによって描画した例を示している。
図15では、
図14のメッシュに対して、ON/OFFパターンをビットマップデータで定義してパターンデータを形成したものである。第1のパターン161は20nmのメッシュに対して、ON/OFFのビットマップを用いて描画してある。第2のパターン162は10nmX方向とY方向にシフトさせたメッシュに対してON/OFFのビットマップを用いて描画してある。従って、第1と第2のパターンのスペース163は10nmとなっている。さらに、同一の正方格子行列ビームを用いても、異なるメッシュを持つパターンを同一領域に混在して描画できることを示す。
【0082】
図16にはメッシュシフトをさせたパターンの例2について記載している。パターン171は20nmメッシュのパターンである。パターン172は16nmずつサブ偏向器を送り移動しながら、露光量を少なくして描画したパターンである。5本の横ラインの上下に16nmのスペース173を有するパターンが描画できる。なお、横ラインの左右にスペース174が位置する。
【0083】
図17は本システムで用いる電子銃まわりを説明するものである。陰極200は先端部から電子が均一照射できるように設計されている熱電界放射TFE電子銃である。
TFE電子銃であるから引き出し電極202に陰極200に対して正の電圧を印加して、電子を引き出す。陰極200は通常マイナス50KV程度の負の電位がかかっている。引き出し電極202はマイナス45KVからマイナス40KVの電位である。201はサプレッサである。
【0084】
さらに陽極203(電位は0V)で電子が加速される。電子光学鏡筒の下部ではコラム内部をクリーニングするためにオゾンが流されている。オゾン濃度は通常10から20%であるので、酸素が90%から80%流れている。酸素とオゾンが電子銃の表面のLaB6に吸着したり酸化して劣化の原因になることを避けるために、2重のオリフィス204、205を用いて中間空間208,209をターボ分子ポンプなどで中間引きをし、電子銃に向かって急激に真空度が良くなるようにしている。オリフィスは100μm径などの小さな穴なので、2枚のオリフィスを電子が容易に通過できるためには、陽極付近で2重のアラインメントコイル206で電子ビームを偏向して、オリフィスの穴を通過させる必要がある。ターボ分子ポンプは振動しやすいので除振機能または振動補正の機能があった方がよい。
陰極および引き出し電極を格納する電子銃室207は、イオンポンプまたはターボ分子ポンプで真空引きされている。
【0085】
図18は前記のPSA−BA基板の中核技術について記載する。正方格子行列ビーム群を形成するための手段について述べる。
均一な電子ビームによって電子遮蔽板が照射される。4μmの四角の開口220にビームが整形されて4μmの四角の断面を有するビームが射出される。4μm四角の開口220は16μmピッチで正方形マトリクスを形成している。すなわちX軸方向(横方向)に16μmピッチで並び、Y軸方向(縦軸方向)に16μmピッチで配列されていて、X軸とY軸は互いに直交している。
4μmのビームの通過軸の両側に個別ブランカの2枚一対の電極221,222が設置されている。個別ブランカの2枚一対の電極221,222はすべての個別要素ビームを挟む形で配列されている。
図18ではすべての電極群が同一方向に並んで平行電極群を構成しているがこれらは方向が別々に異なっていても、ビームを個別に偏向できればよい。また4μmの寸法は別の数値であってもよい。
【0086】
図19にはPSA−BA基板の断面技術について記載する。
ビームは
図19の上部から照射されてビームを整形したり、偏向するための機能を有するPSA−BA基板である。
一番上部には金属または半導体または半導体のアモルファス基板でできている電子遮蔽板242が存在する。
図19では、矩形開口の寸法は6μmとなっているが、これは本電子遮蔽板242でビームの完全整形をせず、大部分の電子ビームを受け止める機能を有することにしているからである。現実には
図19の中央部に設置された半導体基板の電子遮蔽板241の4μmの穴が、ビーム整形の主たる機能を担うが、電子ビームの総合熱量は一番上部の電子遮蔽板241がほぼ90%以上の熱を吸収する。
電子遮蔽板242は、例えばSiC半導体でできており、厚さは例えば10から20μmである。SiCは銅と同様の熱伝導率を有する。
ビーム開口を具備する領域のサイズが640μm四角である場合には、熱伝導性の良い高融点金属板であって厚みが数百μmから2,3mm以上あって、開口部の大きさが640μm四角以上の放熱板251を電子遮蔽板242の上に設置することで電子銃からの熱を逃がすことができる。
【0087】
このようにして電子遮蔽板242の640μm四角領域よりも大きな部分の温度を常温すなわち23度C付近の温度に保つようにすれば、SiCからなる電子遮蔽板242は、10から20μmの薄膜領域全体の大きさである640μm四角の領域内部での温度上昇は1から5度C以内に押さえられる。
配線244の電気的絶縁膜243は、真性半導体からなる。
【0088】
図19の一番下部には開口6μm四角を有する電子遮蔽板242がさらに存在するが、この電子遮蔽板242は配線領域および電極と接触しなければ、電子遮蔽板242は金属や低抵抗の半導体一般である他材料の基板を使用してもよい。
図19の配線領域および電極と接触する場合には、電子遮蔽板242は高抵抗の半導体基板乃至はアモルファス半導体を使用する必要がある。
図19の開口4μm四角を具備する電子遮蔽板241は、この場合にはSiCの高抵抗ないしは絶縁性の半導体基板からなり、厚みは約2μmである。
厚み2μmの半導体基板では4μmの四角の開口の加工がかなり精密に実施できる。4μmの四角の開口は6μmの四角の開口を通過した電子ビームのうち、さらにエッジの部分を整形する。電子遮蔽板241の上面には個別ブランカの偏向電極である電極221、222に
図19の外部から電圧を印加するための配線244が形成されている。配線材料はここでは銅を使用している。低抵抗の高融点金属であれば他の材料でも良い。
配線の厚みは1μm程度で、配線太さは0.5μm、配線間隔は0.1μmから0.5μm程度である。配線244間と配線244下部の配線部の電気的絶縁膜243は、この場合にはアモルファスのSiCを用いているが、高抵抗の半導体であって配線244の絶縁が可能であれば他の材料であっても良い。
【0089】
配線244から電子遮蔽板241に貫通孔を通してビア245を銅で形成して電子遮蔽板241の下部に個別ブランカの2枚一対の電極221、222が形成されている。個別ブランカの2枚一対の電極221、222は厚みが2μmで、高さが20μmから100μmである。電子遮蔽板241の4μmの開口部は電子が通過するために、個別ブランカの2枚一対の電極221、222が露出しているが、電極の裏面は隣接する個別要素ビームの個別ブランカの2枚一対の電極221、222を固定するために背中合わせにSiCの電極支持半導体223を介して機械的な構造強度を維持している。
個別ブランカの2枚一対の電極は、銅でできている。
図19で特徴的なことを述べると個別要素ビームが通過する4乃至6μm□の開口の周辺および全体に、絶縁物が全く使用されていないということである。
従来の先行技術BAA特許文献(特開平06−132203号公報)では、配線などの絶縁を行うために絶縁物を使用していた。
これまでのBAAデバイスの致命的欠点はデバイス内部の電極に電圧を印加するために、絶縁膜を使用していたことである。配線金属膜を絶縁するための絶縁物は2つの意味で害をなす。
【0090】
絶縁膜とはシリコンの酸化膜、シリコンの窒化膜、アルミニウムの酸化物膜すなわちアルミナ・サファイヤ、またタンタルの酸化膜などをさす。
通常いかに巧妙に絶縁膜を使用しても、ビーム通過軸から全く見えないように絶縁膜を使用することは困難が伴うことであった。この場合には散乱した電子ビームが当たり絶縁膜上に帯電してチャージアップすることによるビームドリフトを発生していた。またチャージアップドリフトは充電放電を繰り返すためにビームの位置安定性が得られないで、高精度のパターン描画ができなかった。
第2の問題点は絶縁膜の破壊であった。絶縁膜にビームが照射されると絶縁膜が帯電するとともに放射線損傷ができ、内部の微細穴、微細亀裂を通じて電流が流れるために絶縁膜破壊が起こる。絶縁膜破壊が起きれば、配線に電圧が印加できなくなる。そのためにビームのブランキングに必要な5Vなどの電圧がかからなくなって、ビームブランキング作用を行う機能が損なわれる。このためにBlanker Aperture Array(BAA)に使用する絶縁物の選択には困難がともなっていた。
本実施形態では上記の困難を克服するために大きく分けて2つの方法が提示できる。
第一に述べる方法はバンドギャップの大きな半導体または高抵抗の半導体を用いて絶縁をすることである。
【0091】
しかしながら注意すべきことがある。半導体を真性半導体として不純物を非常に少ない状態で使用する分には、チャージアップしないで、絶縁破壊を起こさない、絶縁性も十分取れる材料として使用することができる。このような真性半導体としてはシリコン、SiC,BN(ボロンナイトライド)、GaP(ガリウムリン)、GaN(窒化ガリウム)、ダイヤモンド、窒化アルミニウム、ゲルマニウム、ヒ素化ガリウム、リン化ガリウムなどがある。
【0092】
しかし、シリコンのようなバンドギャップが1.1eVと比較的に小さい半導体などではごくわずかな不純物でも混入するとN型もしくはP型の導電性のある基板になってしまうし、配線を金属で製作した場合に金属の上面に再度真性のシリコン結晶を成長させることは簡単ではない。
【0093】
第二の方法は半導体のP型N型の接合を用いて絶縁耐性をもたせることである。
半導体は絶縁物では無いので放射線によって絶縁破壊が起きる閾値は絶縁物に比較して格段に大きく、放射線耐性は十分にある。半導体は放射線によっては破壊しない。電子とホールのペアができてこれが互いに電圧がかかった電極に引きつけられて電子もホールも消滅してしまう。結晶内部に電気的欠陥を残すことがないので、放電によって絶縁破壊をすることがない。
この実施形態については、後述する。
【0094】
図20はPSA−BA基板の縮小断面図である。PSA−BA基板の上部にはビーム群が通過する640μmの四角領域よりも大きな開口を有した、電気伝導性があって、熱伝導性の高い、放熱板251が設置されており、外部より水冷などの方法を使用して温度を一定に保つように工夫されている。
【0095】
図21は本実施形態の1600本のビームの個別要素ビーム用のブランカの電極への外部からの配線パターン301を示している。
ブランカ電極対の一方向はアースへ設置されており、配線の必要はないと考えている。40×40=1600個の配線パターンであるが、4つの領域に分割して20×20個のブランカの片側電極からの配線を考えれば、後は上下、左右反転パターンを考えればよいので、20×20=400本の配線を考えればよい。プロセスが複雑化することを避けるためになるべく2層の配線は使用したくはない。そこで1層の配線を考える。周辺は20個+20個=40個あるので平均10本の配線を出せば良さそうに見えるが、実際上は対角線付近では配線同士がぶつかるので、配線図を書いてみると1つの開口と開口の間で最高14本の配線を通せばよいことがわかった。
本特許の説明としてビームサイズ20nmで、1600本のビームシステムについて述べたが、ビームサイズ16nmで、2500本のビーム、12nmで4500本、10nmで6400本、8nmで10000本、6nmで18000本、5nmで25600本、 4nmで40000本のシステムとなることがある。
【0096】
図22には正方格子行列ビーム群の正方格子のビームサイズとピッチが異なった4種の行列ビームを、形成し選択できるように構成されたPSA−BA基板について記載する。
PSA−BA基板145の中心には4種類の異なる行列ビームを形成するための4種類のPSA−BA機能素子145a,145b,145c,145dが配列されている。アンプ144a〜144dは、PSA−BA機能素子145a〜145dのためのアンプである。4種類の正方格子行列ビーム群は、ビームのサイズとピッチと個別要素ビームの個数が異なっている。
【0097】
例えば、以下のように4種類の正方格子行列ビーム群を持つことができる。本実施形態では、縮小率を500分の1に固定した場合について記載する。
行列ビーム145aではビームサイズが8nmで、ビーム間のピッチが32nmであり、個別要素ビームの数は100個×100個=10000個である。PSA−BA基板上の開口サイズは4μmでピッチは16μmであり、行列ビーム145aのための全体サイズは1600μm×1600μmである。
行列ビーム145bではビームサイズが12nmで、ビーム間のピッチが48nmであり、個別要素ビームの数は64個×64個=4096個である。PSA−BA基板上の開口サイズは6μmでピッチは24μmであり、行列ビーム145bのための全体サイズは1536μm×1536μmである。
行列ビーム145cではビームサイズが16nmで、ビーム間のピッチが64nmであり、個別要素ビームの数は50個×50個=2500個である。PSA−BA基板上の開口サイズは8μmでピッチは32μmであり、行列ビーム145cのための全体サイズは1600μm×1600μmである。
行列ビーム145dではビームサイズが20nmで、ビーム間のピッチが80nmであり、個別要素ビームの数は40個×40個=1600個である。PSA−BA基板上の開口サイズは10μmでピッチは40μmであり、行列ビーム145dのための全体サイズは1600μm×1600μmである。
4種類の行列ビームのどれを使用するかに応じて、必要な個別要素ビーム制御用のブランカ信号を切り替えるようにする。
【0098】
図23には、
図22の多種類選択用PSA−BA基板を具備する描画装置を使用するための描画装置の説明図を示している。正方格子行列ビームのビームサイズとピッチの異なる行列ビームを選択する。そのためには、まず始めに矩形に整形する矩形アパーチャ310を通過せしめてビームを整形する。そしてレンズ311にて4種の行列ビームを形成できるように構成されたPSA−BA基板145上に矩形ビームを結像する。多種類行列ビーム選択偏向器312を駆動して所定の種類の行列ビームを選択する。
上記の場合に、必要な処置がある。第一にクロスオーバー点が移動しないように制御することである。これは電流密度が変化することを避けるためである。そのためには多種類行列ビーム選択偏向器312を2段に分離して、それぞれの偏向能率比を、クロスオーバー位置がラウンドアパーチャ14の位置で動かないように、決定する必要がある。
また、多種類行列ビーム選択偏向時の位置ずれ補正用偏向器314を多種類行列ビーム選択偏向器313と同期させて駆動し、かつ両者の偏向能率比を一定に保つようにして、選択されたビーム位置が不動であり電流密度が変化しないようにすることである。選択された行列ビームは全体としての大きさが異なることもあり、左下コーナー位置が不動点であるように、全体ビームの偏向器の座標データを与える必要がある。
また、全体の行列ビームブランカは4種類程度であれば共通の全体ブランカ16を具備することで対応できる。
【0099】
図24には塗り潰しパターンを、ラインスキャンで描画したときの露光量分布を示している。連続走査型露光方法では本実施形態よりもスループットが低減することを証明するために以下の説明を行う。
連続走査型の露光方法では近接効果補正を行うためには、走査をしながらブランカを用いて露光時間の間引きをすることで達成すると主張している。
しかし、結論を先に言えば例えば塗りつぶしパターンの場合には連続走査型の描画方法ではスループットは本実施形態の半分に低下する。
ここでは電子の加速電圧は50KVであるとする。塗りつぶし面積比が100%である場合には、入射ビームのエネルギーと反射電子ビームのエネルギー総量は丁度等しくなる。
前記の場合には、100%塗りつぶし領域での露光エネルギー孤立した点での露光エネルギーの丁度2倍になってオーバー露光となるので、入射電子の総量を半分である50%にする必要がある。孤立した点D点での露光量を必要値にするためには、同じ走査速度で描画する連続走査型露光方法では、塗りつぶし面積比100%のパターンの内部では50%の時間はビームを出してはいけないことになる。点Dを含む実線に沿って走査する場合に、全体のブランカ波形(一定速度連続走査モードでのブランカ波形)は波形320のようになり、塗りつぶし領域(塗り潰し面積比100%箇所)では波形321のようになり、50%のOFF状態であり無駄時間を含んだ露光をしていることになる。波形322は、D点付近でのブランカ波形である。以上により、スループットは半分に落ちていることになる。
【0100】
図25について説明する。本実施形態ではビームを別の位置に偏向する時には、必ず全体ブランカ16がビームをOFF状態にし、しかる後に偏向器でのビーム偏向が行われるので、連続的に偏向に従ってビームが出ているという状況はあり得ない。しかし、従来のBAAによる連続走査露光や、一般的なラスタ走査によるマルチビーム描画方法では、連続的にビームが出たままビーム走査が継続される。描画パターン330を描画する場合に、ビームをONするが露光量分布は実線333のように、ある傾斜角度を持って直線的に増加していく。そして、一定値の露光量になった後に、今度は一定の傾斜角度を持って減少していく。
【0101】
しかし、図形331と図形332の2点に一定時間照射された場合には、電子ビーム照射強度は破線のような階段関数334のようになる。このどちらの分布が良いかは明確ではないが、いずれにしても、孤立して1点に描画するときよりも描画パターンのエッジのシャープネスが劣化し、所望の電子量分布335で示すような照射はできない。
ここで注目すべきことは、連続走査によるビーム露光を行う場合には、走査方向と非走査方向とでは全くパターンエッジのシャープネスが異なってしまい、同じようには描画できないということを認識すべきことである。
本実施形態では近接効果補正もでき、スループットも低下しない方法を提示できる。
【0102】
図26では近接効果補正の方法を説明するために、正方形露光量域の中で曲線的に露光量分布を与える方法について述べている。すなわち40×40=1600個の正方格子行列ビーム340のうちで、曲線341で示された境界部を挟んでビットマップがOFFであるビーム部342を<0>とし、ビットマップがONであるビーム部343を<1>とする。
このことを
図26の部分
図344では簡単に省略して曲線341を挟んで<0>と<1>とで表す。
【0103】
図27に示すように、パターンの塗りつぶしがXY座標軸の第2象限のみが塗りつぶしである場合を考える。図のO点が原点である。この図の中で、3.2μm正方形領域である(−1,2)の領域について説明する。
前記(−1,2)領域はO点に対して、−X方向に3.2μm正方形で−1個すなわち左へ1個、+Y方向で2個すなわち上方向へ2個上がった位置である。近接効果補正を正しく行うためには、部分
図345のように、描画時間=t1、描画時間=t1+t2、描画時間=t1+t2+t3、描画時間=t1+t2+t3+t4の4つの領域に分離する3本の等高線にしたがって、露光強度を変化させねばならない。
始めに、345aの状態で示されるビットマップは、正方形行列要素全体が1であるビットマップをビームに与えて、描画時間t1でビーム描画する。その後、345bで表される一番左側の曲線の左上部分が0のビットマップを有し、右下部分が1のビットマップで描画時間はt2としビーム描画する。その後、345cで表される左側から2本目の曲線の左上部分が0のビットマップを有し、右下部分が1のビットマップで描画時間t3としビーム描画する。その後、345dで表される左側から3本目の曲線の左上部分が0のビットマップを有し、右下部分が1のビットマップで描画時間t4としビーム描画する。
【0104】
以上のように、同一のメイン偏向器、サブ偏向器の偏向位置において、異なるビットマップで重ね描画を実施することで、各ビーム要素に対して露光量を変化させることができる。このようにして近接効果補正ないしは露光量補正を行うことが、ベクトル走査かつ、ビームを静止させた状態において可能になる。
この方法は連続走査露光方法において、露光時間に間引きを入れて露光量を制御する方法に比べて、描画パターンのエッジ位置が動かないというメリットがある。
また近接効果補正が必要な領域付近では、パターンが疎となっていて描画時間が短い領域が多いので、スループットが低下しないで補正ができる。
先に見たように連続走査型露光方法に比較すると、スループットは約2倍にも達する。これは本実施形態のメリットである。
【0105】
本実施形態では、正方格子行列ビーム群によって描画していくという特殊な描画方法を採用しているようにみえ、一般的なマルチビーム描画方法に比較して融通性が乏しいように考えられる懸念がある。しかしながら、電子遮蔽版を用いて多数のビームを形成する場合には、正方格子行列ビーム群状に並んだマルチビームを形成するのが最も単純である。
複雑化されたマルチビーム描画の種々の提案は、ビームの配置が千鳥状ないし少しずつXY方向にずれていくビーム群を形成し、それらのビーム群を用いて全体の偏向位置と露光照射量を微細に制御し、重ね合わせて多重描画するものが多く、基本的には描画精度の劣化と描画時間の膨大化を引き起こしていた。また、前記のビーム群のうち個別要素ビーム毎に異なるタイミングでブランカのON/OFFの時間制御をなし、微妙なパターンを描画する方法ではパターンデータの爆発的膨大化を招き、パターン描画の複雑さのために描画パターンの信頼性を損なっていた。
【0106】
本実施形態においては、単純な正方格子行列ビーム群を用いてビットマップによりON/OFF制御を行い、全てのアナログ信号が静定したのちに全体ビームを照射するという単純描画法に徹することにより、パターンデータ量の極小化と描画精度の確保と描画速度の高速化を同時に実現するものである。
正方格子行列ビーム群のピッチは、最も細密なデバイス領域に適合するもので描画される。デバイスパターンの他の領域で細密度が緩くなる場合には、逆にショット数の増大を招くことが多い。しかしながら、必要な描画時間に描画可能なようにデバイスパターンの形状を細密度が最も細密なパターン描画時のピッチに向かって変更し、パターン変形することによって、デバイスの機能を損なうことなく描画精度と描画時間を高速にし、総合的にデバイスの生産効率を最大限にするものである。
正方格子行列ビーム群は、縦横ピッチを変えるか、あるいは、配列する個数を縦横で変えて長方格子行列ビーム群としてもよい。
個別要素ビームは丸もしくは正方形ではなく、長方形の断面をもったビームであってもよい。
【0107】
製造すべきデバイスのパターンルールが決定して、生産計画が決められたならば、装置のPSA−BA基板をパターンルールに適合するように設置し直す。すなわち板金加工の型ないし半導体リソグラフィのマスクと同様に製造計画にしたがって、製造し、設置を行う。しかし、同じサイズのパターンルールのデバイス品種であれば、マスクを製作し直したり、マスク交換しなくても、異なったパターンを円滑に間断なく描画することができる。
個別要素正方ビームのサイズが、それぞれ20,16,12,8nm単位などの4種類のPSA−BA基板を具備し、1種類の正方格子行列ビーム群を選択して描画する方法をとってもよい。
描画すべきデバイスのパターンルールに合わせた、正方格子行列ビーム群を形成して描画することが、精度と高速描画性を両立させるための最も効果的な方法となる。