特許第5963140号(P5963140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963140
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】不斉脱水縮合剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/04 20060101AFI20160721BHJP
   C07C 271/54 20060101ALI20160721BHJP
   C07C 269/06 20060101ALI20160721BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20160721BHJP
   C07D 223/18 20060101ALI20160721BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20160721BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   C07D403/04CSP
   C07C271/54
   C07C269/06
   B01J31/02 102Z
   C07D223/18
   !C07B53/00 B
   !C07B61/00 300
【請求項の数】35
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2012-227249(P2012-227249)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-80371(P2014-80371A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100122688
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】國嶋 崇隆
(72)【発明者】
【氏名】北村 正典
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】正木 一将
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/074553(WO,A1)
【文献】 特開2010−222358(JP,A)
【文献】 Tetrahedron Letters,2010年,51,pp.20-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
CAPLUS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示し、
は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR(ここで、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよい芳香環基を示す。)、PR(ここで、Rは、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香環基を示す。)、Si(R)(R10)(ここで、R及びR10は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)又はC(R11)(R12)(ここで、R11及びR12は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示すか、又はR11及びR12はそれらが結合する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環状炭化水素基を形成してもよい。)を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基又は置換されていてもよい環状基を示し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルキル−カルボニル基、置換されていてもよいアルコキシ−カルボニル基、カルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ−カルボニル基、ホルミル基、シアノ基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよい環状基を示すか、或いはR−Y且つR、及び/又はR且つRはそれらが結合するベンゼン環と共に縮合環を形成してもよく、並びに
-は、求核性がないか、又は求核性が低い対アニオンを示す。]
で表される化合物。
【請求項2】
式(I)で表される化合物が、式(I’):
【化2】
[式中の各記号は、前記と同意義を示す。]で表される化合物、式(I’’):
【化3】
[式中の各記号は、前記と同意義を示す。]で表される化合物、又はそれらの混合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、置換されていてもよいC1−3アルキル基である、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Yが、単結合である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
が、置換されていてもよいアルキニル基又は置換されていてもよいアリール基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
が、アリール基により置換されていてもよいC2−6アルキニル基又は1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC6−10アリール基である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
且つRが、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成してなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
-が、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、置換されていてもよいアルキルスルホナート、置換されていてもよいアリールスルホナート、ペルクロラート、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモナート、テトラフェニルボラート及びアルセナートからなる群より選択される対アニオンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
-が、クロリド又はトリフルオロメタンスルホナートである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
が、置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC6−10アリール基であり、
が、水素原子であり、
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成し、及び
-が、クロリド又はトリフルオロメタンスルホナートである、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
が、置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、アリール基により置換されていてもよいエチニル基であり、
が、水素原子であり、
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成し、及び
-が、クロリド又はトリフルオロメタンスルホナートである、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
下記式:
【化4】
で表される化合物又はその光学異性体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物からなる脱水縮合剤。
【請求項15】
請求項2〜13のいずれか1項に記載の化合物又はその光学異性体からなる不斉脱水縮合剤。
【請求項16】
不斉脱水縮合剤が、不斉アミド化触媒である、請求項15記載の不斉脱水縮合剤。
【請求項17】
不斉脱水縮合剤が、不斉エステル化触媒である、請求項15記載の不斉脱水縮合剤。
【請求項18】
式(I):
【化5】
[式中、
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示し、
は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR(ここで、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)、PR(ここで、Rは、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)、Si(R)(R10)(ここで、R及びR10は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)又はC(R11)(R12)(ここで、R11及びR12は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示すか、又はR11及びR12はそれらが結合する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環状炭化水素基を形成してもよい。)を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基又は置換されていてもよい環状基を示し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルキル−カルボニル基、置換されていてもよいアルコキシ−カルボニル基、カルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ−カルボニル基、ホルミル基、シアノ基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよい環状基を示すか、或いはR−Y且つR、及び/又はR且つRはそれらが結合するベンゼン環と共に縮合環を形成してもよく、並びに
-は、求核性がないか、又は求核性が低い対アニオンを示す。]
で表される化合物の製造方法であって、
式(II):
【化6】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物と、式(III):
【化7】
[式中、Xは、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキルスルホニロキシ基又は置換されていてもよいアリールスルホニロキシ基であり、Rは、上記と同意義である。]
で表される化合物とを反応溶媒中で反応させる工程を含む、製造方法。
【請求項19】
式(I)で表される化合物が、式(I’):
【化8】
[式中の各記号は、前記と同意義を示す。]で表される化合物、式(I’’):
【化9】
[式中の各記号は、前記と同意義を示す。]で表される化合物、又はそれらの混合物であり、且つ式(II)で表される化合物が、式(II’):
【化10】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物、式(II’’):
【化11】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物、又はそれらの混合物である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC6−10アリール基であり、
が、水素原子であり、及び
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成するものである、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、アリール基により置換されていてもよいエチニル基であり、
が、水素原子であり、及び
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成するものである、請求項18又は19記載の方法。
【請求項22】
反応溶媒が、THF、水、アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、DME、ジグライム、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、アセトニトリル、アセトン又はそれら2種以上の混合溶媒である、請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
キラル有機酸のラセミ体を、不斉脱水縮合剤及び式(III):
【化12】
[式中、Xは、ハロゲン原子又は置換されていてもよいアルキルスルホニロキシ基であり、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基又は置換されていてもよい芳香環基である。]で表される化合物の存在下に、反応溶媒中で、求核剤と反応させることにより、立体異性体的に富化されたキラル有機酸−求核剤縮合体を得る速度論的光学分割方法であって、該不斉脱水縮合剤として請求項2〜13のいずれか1項に記載の化合物を用いることを特徴とする方法。
【請求項24】
キラル有機酸が、N−保護α−アミノ酸である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
N−保護α−アミノ酸が、N−保護α−フェニルアラニンである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
求核剤が、アルコール又はアミンであり、且つ対応するキラル有機酸−求核剤縮合体が、エステル又はアミドである、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
アミンが、第1級アミンである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
第1級アミンが、C7−14アラルキルアミンである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
反応溶媒が、低級アルコールを含む、請求項23〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
求核剤兼反応溶媒として、低級アルコールを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
不斉脱水縮合剤が、触媒量の式(II’):
【化13】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物、式(II’’):
【化14】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物、又はそれらの混合物と、式(III):
【化15】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物との反応により反応系内で形成されることを特徴とする、請求項23〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC6−10アリール基であり、
が、水素原子であり、及び
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成するものである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、アリール基により置換されていてもよいエチニル基であり、
が、水素原子であり、及び
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成するものである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
触媒量が、キラル有機酸のラセミ体に対して、0.1モル%〜50モル%である、請求項31〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
下記式:
【化16】
で表される化合物又はその光学異性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラル光学活性第三級アミンとトリアジン誘導体から調製される新規なキラル光学活性第四級アンモニウム化合物、及び該化合物からなる不斉脱水縮合剤に関する。本発明はまた、上記不斉脱水縮合剤を用いるキラル有機酸のラセミ体の新規な速度論的光学分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学活性化合物の需要は飛躍的に増大しており、特に製薬業界において医薬中間体としての需要が高まっている。このため、光学活性化合物を効率よく得る方法の開発研究が世界中で活発に行われている。光学活性化合物を得る方法の一つに光学分割法がある。光学分割法には優先結晶法、ジアステレオマー分割法、速度論的分割法などが知られている。優先結晶法は適用範囲が狭いため、得られる化合物に大きな制限がある。ジアステレオマー分割法は化学量論量の分割剤が必要な上、多段階を要し、操作が煩雑であるなどの問題点があった。一方、速度論的分割法は、光学活性触媒を用いて反応を行うことにより、ラセミ体とエナンチオマー間で反応速度差が生じることを利用して、特定のエナンチオマーだけを優先的に反応させて光学分割をする手法であり、主に酵素を用いた分割方法が実用化されており、光学活性なアミノ酸やアルコールなどを得る有効な手段となっている。しかしながら、一般に酵素を用いた速度論的分割は、反応に長時間を要する上、高い光学収率を得るためには、基質の濃度を希薄にする必要があり、大量の光学活性化合物を得るには問題が残されていた。
【0003】
化学的手法による速度論的光学分割法の研究例はいくつか報告されている。α−アミノ酸などのキラルなカルボン酸誘導体のラセミ体を化学的に光学分割する方法として、シンコナアルカロイド誘導体を触媒として用いるウレタン保護アミノ酸−N−カルボキシ無水物のアルコリシスによる光学分割方法が報告された(非特許文献1)。この方法は、触媒の選択により高い効率で光学分割を行える場合があるが、シンコナアルカロイド誘導体の合成は概して難しく、価格が高く入手が困難な物質であるため、大量の光学分割を行うには不向きである。また、上記方法は、基質濃度を高めて光学分割を行うと、エナンチオマー選択性が低下する問題も有している。
【0004】
キラルなアミンのラセミ体を化学的に光学分割する方法として、下記式(1)(非特許文献2)及び式(2)(非特許文献3)で表されるような触媒的不斉アシル化反応による光学分割方法が報告されている。
【0005】
【化1】
【0006】
【化2】
【0007】
しかし、これらはいずれもアシル化剤としてカルボン酸そのものではなく、脂溶性の酸無水物やエステルを用いた上で、非プロトン性の有機溶媒中、極低温で行われなければならないため、不斉アミド化反応としては実用性に乏しい方法であった。
【0008】
最近、Kaminskiらにより化学量論量の不斉脱水縮合剤及び0.1当量の塩基存在下、ラセミ体のN−保護アミノ酸とL体のC−保護アミノ酸との反応からなるエナンチオ選択的なペプチド合成反応(式(3))が報告された(非特許文献4)。しかし、当該反応には、光学活性なキラル3級アミンが化学量論量以上必要であり、且つ予め調製された不斉脱水縮合剤を使用する必要がある。また、プロトン性溶媒(THF−tert−BuOH)中では、高い選択性は得られていない。さらに、当該反応で用いられる光学活性なキラル3級アミンであるストリキニーネは有毒な化合物であるため、実用的な方法とはいえない。
【0009】
【化3】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Deng, L.et al., J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 12696-12697.
【非特許文献2】Fu, G. C. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2001, 40, 234-236.
【非特許文献3】Seidel, D. et al., J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 17060-17061.
【非特許文献4】Kolesinska, B. et al., Tetrahedron Lett., 2010, 51, 20-22.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
カルボン酸とアミンからアミドを合成するには、一般に脱水縮合剤が用いられる。脱水縮合反応は、カルボン酸の活性化とそれに続くアミンのアシル化からなる2段階反応であるが、第一段階で生じるカルボン酸の活性中間体は、通常、水やアルコール等の求核性のあるプロトン性溶媒中では不安定であり、溶媒分子により分解されるため、アミド化反応は効率的に進行しない。一方、カルボキシ基又はアミノ基を有する化合物は、一般に高極性であるため有機溶媒に不溶若しくは難溶であることが多い。かかる二律背反性の問題点を有していたため、これまで光学活性なキラル脱水縮合剤によるアミンとカルボン酸との触媒的不斉アミド化反応をプロトン性溶媒中で成功した例は皆無であった。
【0012】
本発明の目的は、水やアルコール等のプロトン性溶媒を含む広範な溶媒中で安定に使用し得、且つ実用的な不斉脱水縮合剤として有用な新規化合物、及びそれを用いるキラル化合物、特にキラル有機酸、の速度論的光学分割方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、下記の式(I):
【0014】
【化4】
【0015】
[式中、
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示し、
は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR(ここで、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよい芳香環基を示す。)、PR(ここで、Rは、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香環基を示す。)、Si(R)(R10)(ここで、R及びR10は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)又はC(R11)(R12)(ここで、R11及びR12は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示すか、又はR11及びR12はそれらが結合する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環状炭化水素基を形成してもよい。)を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基又は置換されていてもよい環状基を示し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルキル−カルボニル基、置換されていてもよいアルコキシ−カルボニル基、カルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ−カルボニル基、ホルミル基、シアノ基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよい環状基を示すか、或いはR−Y且つR、及び/又はR且つRはそれらが結合するベンゼン環と共に縮合環を形成してもよく、並びに
-は、求核性がないか、又は求核性が低い対アニオンを示す。]で表される化合物[以下、化合物(I)と称する場合がある。また、後述する化合物(I’)又は化合物(I’’)を含む広義の略称として、「本発明の化合物(I)」と称する場合がある。]が、安定に単離できることを初めて見出した。本発明者らは、またプロトン性溶媒存在下、化合物(I)の光学異性体である化合物(I’):
【0016】
【化5】
【0017】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]又は化合物(I’’):
【0018】
【化6】
【0019】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]を、反応系内で触媒量の光学的に純粋なキラル第三級アミンである化合物(II’):
【0020】
【化7】
【0021】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]又は化合物(II’’):
【0022】
【化8】
【0023】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]とトリアジン化合物(III):
【0024】
【化9】
【0025】
[式中、Xは、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキルスルホニロキシ基又は置換されていてもよいアリールスルホニロキシ基であり、Rは、上記と同意義である。]
との反応により用時調製することにより、化合物(I’)又は化合物(I’’)を単離することなく、そのままキラル有機酸の速度論的光学分割に使用できることも見出した。これにより、本発明の化合物(I)が新規且つ実用的な不斉脱水縮合剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]式(I):
【0027】
【化10】
【0028】
[式中、
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示し、
は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR(ここで、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよい芳香環基を示す。)、PR(ここで、Rは、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香環基を示す。)、Si(R)(R10)(ここで、R及びR10は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)又はC(R11)(R12)(ここで、R11及びR12は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示すか、又はR11及びR12はそれらが結合する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環状炭化水素基を形成してもよい。)を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基又は置換されていてもよい環状基を示し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルキル−カルボニル基、置換されていてもよいアルコキシ−カルボニル基、カルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ−カルボニル基、ホルミル基、シアノ基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよい環状基を示すか、或いはR−Y且つR、及び/又はR且つRはそれらが結合するベンゼン環と共に縮合環を形成してもよく、並びに
-は、求核性がないか、又は求核性が低い対アニオンを示す。]
で表される化合物。
[2]式(I)で表される化合物が、式(I’):
【0029】
【化11】
【0030】
[式中の各記号は、前記と同意義を示す。]で表される化合物、式(I’’):
【0031】
【化12】
【0032】
[式中の各記号は、前記と同意義を示す。]で表される化合物、又はそれらの混合物である、上記[1]記載の化合物。
[3]Rが、置換されていてもよいC1−3アルキル基である、上記[1]又は[2]記載の化合物。
[4]Rが、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物。
[5]Yが、単結合である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の化合物。
[6]Rが、置換されていてもよいアルキニル基又は置換されていてもよいアリール基である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の化合物。
[7]Rが、アリール基により置換されていてもよいC2−6アルキニル基又は1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC6−10アリール基である、上記[6]記載の化合物。
[8]R且つRが、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成してなる、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の化合物。
[9]X-が、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、置換されていてもよいアルキルスルホナート、置換されていてもよいアリールスルホナート、ペルクロラート、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモナート、テトラフェニルボラート及びアルセナートからなる群より選択される対アニオンである、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の化合物。
[10]X-が、クロリド又はトリフルオロメタンスルホナートである、上記[9]記載の化合物。
[11]Rが、置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC6−10アリール基であり、
が、水素原子であり、
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成し、及び
-が、クロリド又はトリフルオロメタンスルホナートである、上記[1]記載の化合物。
[12]Rが、置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、アリール基により置換されていてもよいエチニル基であり、
が、水素原子であり、
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成し、及び
-が、クロリド又はトリフルオロメタンスルホナートである、上記[1]記載の化合物。
[13]下記式:
【0033】
【化13】
【0034】
で表される化合物又はその光学異性体。
[14]上記[1]〜[13]のいずれかに記載の化合物からなる脱水縮合剤。
[15]上記[2]〜[13]のいずれかに記載の化合物又はその光学異性体からなる不斉脱水縮合剤。
[16]不斉脱水縮合剤が、不斉アミド化触媒である、上記[15]記載の不斉脱水縮合剤。
[17]不斉脱水縮合剤が、不斉エステル化触媒である、上記[15]記載の不斉脱水縮合剤。
[18]式(I):
【0035】
【化14】
【0036】
[式中、
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示し、
は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR(ここで、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)、PR(ここで、Rは、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)、Si(R)(R10)(ここで、R及びR10は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)又はC(R11)(R12)(ここで、R11及びR12は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示すか、又はR11及びR12はそれらが結合する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環状炭化水素基を形成してもよい。)を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基又は置換されていてもよい環状基を示し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルキル−カルボニル基、置換されていてもよいアルコキシ−カルボニル基、カルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ−カルボニル基、ホルミル基、シアノ基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよい環状基を示すか、或いはR−Y且つR、及び/又はR且つRはそれらが結合するベンゼン環と共に縮合環を形成してもよく、並びに
-は、求核性がないか、又は求核性が低い対アニオンを示す。]
で表される化合物の製造方法であって、
式(II):
【0037】
【化15】
【0038】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物と、式(III):
【0039】
【化16】
【0040】
[式中、Xは、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキルスルホニロキシ基又は置換されていてもよいアリールスルホニロキシ基であり、Rは、上記と同意義である。]
で表される化合物とを反応溶媒中で反応させる工程を含む、製造方法。
[19]式(I)で表される化合物が、式(I’):
【0041】
【化17】
【0042】
[式中の各記号は、前記と同意義を示す。]で表される化合物、式(I’’):
【0043】
【化18】
【0044】
[式中の各記号は、前記と同意義を示す。]で表される化合物、又はそれらの混合物であり、且つ式(II)で表される化合物が、式(II’):
【0045】
【化19】
【0046】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物、式(II’’):
【0047】
【化20】
【0048】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物、又はそれらの混合物である、上記[18]記載の方法。
[20]Rが、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC6−10アリール基であり、
が、水素原子であり、及び
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成するものである、上記[18]又は[19]記載の方法。
[21]Rが、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、アリール基により置換されていてもよいエチニル基であり、
が、水素原子であり、及び
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成するものである、上記[18]又は[19]記載の方法。
[22]反応溶媒が、THF、水、アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、DME、ジグライム、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、アセトニトリル、アセトン又はそれら2種以上の混合溶媒である、上記[18]〜[21]のいずれかに記載の方法。
[23]キラル有機酸のラセミ体を、不斉脱水縮合剤及び式(III):
【0049】
【化21】
【0050】
[式中、Xは、ハロゲン原子又は置換されていてもよいアルキルスルホニロキシ基であり、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基又は置換されていてもよい芳香環基である。]で表される化合物の存在下に、反応溶媒中で、求核剤と反応させることにより、立体異性体的に富化されたキラル有機酸−求核剤縮合体を得る速度論的光学分割方法であって、該不斉脱水縮合剤として上記[2]〜[13]のいずれかに記載の化合物を用いることを特徴とする方法。
[24]キラル有機酸が、N−保護α−アミノ酸である、上記[23]記載の方法。
[25]N−保護α−アミノ酸が、N−保護α−フェニルアラニンである、上記[24]記載の方法。
[26]求核剤が、アルコール又はアミンであり、且つ対応するキラル有機酸−求核剤縮合体が、エステル又はアミドである、上記[23]〜[25]のいずれかに記載の方法。
[27]アミンが、第1級アミンである、上記[26]記載の方法。
[28]第1級アミンが、C7−14アラルキルアミンである、上記[27]記載の方法。
[29]反応溶媒が、低級アルコールを含む、上記[23]〜[28]のいずれかに記載の方法。
[30]求核剤兼反応溶媒として、低級アルコールを含む、上記[29]記載の方法。
[31]不斉脱水縮合剤が、触媒量の式(II’):
【0051】
【化22】
【0052】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物、式(II’’):
【0053】
【化23】
【0054】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物、又はそれらの混合物と、式(III):
【0055】
【化24】
【0056】
[式中の各記号は、上記と同意義である。]
で表される化合物との反応により反応系内で形成されることを特徴とする、上記[23]〜[30]のいずれかに記載の方法。
[32]Rが、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC6−10アリール基であり、
が、水素原子であり、及び
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成するものである、上記[31]記載の方法。
[33]Rが、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−3アルキル基であり、
Yは、単結合であり、
が、アリール基により置換されていてもよいエチニル基であり、
が、水素原子であり、及び
且つRは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成するものである、上記[31]記載の方法。
[34]触媒量が、キラル有機酸のラセミ体に対して、0.1モル%〜50モル%である、上記[31]〜[33]のいずれかに記載の方法。
[35]下記式:
【0057】
【化25】
【0058】
で表される化合物又はその光学異性体、
等に関する。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、光学的に純粋な化合物(I)を簡便かつ収率良く合成することができ、且つプロトン性溶媒(水、アルコール等)を含む広範な溶媒中で安定に使用することができるので、各種キラル化合物、特にキラル有機酸(例えば、α−アミノ酸誘導体)の速度論的光学分割に適した新規な不斉脱水縮合剤を提供することができる。また、本発明によれば、光学的に純粋な化合物(I)は、触媒量の光学的に純粋なキラル第三級アミン(II)とトリアジン化合物(III)との反応により反応系内で調製することができ、該化合物(I)の単離が不要で、且つ回収・再利用が容易であることから、各種キラル化合物の簡便且つ実用的な速度論的光学分割方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0061】
(定義)
【0062】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0063】
本明細書中、「置換されていてもよいアルキル基」における「アルキル基」としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1以上のアルキル基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C1−20アルキル基であり、中でも、C1−12アルキル基がより好ましく、C1−6アルキル基が更に好ましく、C1−3アルキル基が特に好ましい。
【0064】
本明細書中、「C1−20アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシル等が挙げられる。
【0065】
本明細書中、「C1−12アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜12のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。
【0066】
本明細書中、「C1−6アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル等が挙げられる。
【0067】
本明細書中、「C1−3アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜3のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等が挙げられる。
【0068】
本明細書中、「アリール基」は、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭化水素基を意味し、具体的には、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、ターフェニル、ジフェニルナフチル、2−アンスリル、フェナントリル等のC6−22アリール基を示す。中でも、C6−14アリール基が好ましく、C6−10アリール基が特に好ましい。
【0069】
本明細書中、「C6−10アリール基」としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルが挙げられ、フェニルが特に好ましい。
【0070】
本明細書中、「C6−10アリールオキシ基」とは、酸素原子に「C6−10アリール基」が結合した基を意味し、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。中でも、フェノキシ基が好ましい。
【0071】
本明細書中、「置換されていてもよい芳香環基」における「芳香環」とは、C6−22芳香族炭化水素または芳香族複素環を示す。
本明細書中、「C6−22芳香族炭化水素」とは、「C6−22アリール基」に対応する環を示す。C6−22芳香族炭化水素としては、「C6−14アリール基」に対応する環が好ましく、「C6−10アリール基」に対応する環(例、ベンゼン又はナフタレン)が特に好ましい。
本明細書中、「芳香族複素環」とは、「芳香族複素環基」に対応する環を示す。なかでも、単環式芳香族複素環が好ましく、5または6員の単環式芳香族複素環が特に好ましい。
本明細書中、該「芳香環」は、置換可能な位置に、置換基を有していてもよい。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1ないし5個、より好ましくは1ないし3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0072】
本明細書中、「芳香族複素環基」とは、環構成原子として炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1乃至4個含有する、芳香族性を示す単環式又は多環式(縮合)複素環基を意味する。
【0073】
本明細書中、「単環式芳香族複素環基」としては、例えば、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル(1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル)、チアジアゾリル(1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル)、トリアゾリル(1,2,4−トリアゾリル、1,2,3−トリアゾリル)、テトラゾリル、トリアジニル等が挙げられる。中でも、5又は6員の単環式芳香族複素環基が好ましく、ピリジルが特に好ましい。。
【0074】
本明細書中、「多環式(縮合)芳香族複素環基」とは、上記単環式芳香族複素環基が、単環式芳香族環(好ましくは、ベンゼン環又は単環式芳香族複素環)と縮合した基を意味し、例えば、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、インダゾリル、ピロロピリジル、ピラゾロピリジル、イミダゾピリジル、チエノピリジル、ピロロピラジニル、ピラゾロピラジニル、イミダゾピラジニル、チエノピラジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、ピラゾロチエニル等が挙げられる。
【0075】
本明細書中の「複素環(基)」としては、芳香族複素環基および非芳香族複素環基が挙げられる。
【0076】
本明細書中の「芳香族複素環基」としては、前記した基が挙げられる。
【0077】
本明細書中の「非芳香族複素環基」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する4ないし7員(好ましくは5または6員)の単環式非芳香族複素環基および縮合非芳香族複素環基が挙げられる。該縮合非芳香族複素環基としては、例えば、これら4ないし7員の単環式非芳香族複素環基に対応する環と、1または2個の窒素原子を含む5または6員の芳香族複素環(例、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリジン、ピリミジン)、1個の硫黄原子を含む5員の芳香族複素環(例、チオフェン)およびベンゼン環から選ばれる1または2個の環が縮合した環から誘導される基、ならびに該基の部分飽和により得られる基等が挙げられる。
【0078】
非芳香族複素環基の好適な例としては、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、ヘキサメチレンイミニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、チアゾリニル、イミダゾリニル、ジオキソリル、ジオキソラニル、ジヒドロオキサジアゾリル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、チオピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフリル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、テトラヒドロピリミジニル、ジヒドロトリアゾリル、テトラヒドロトリアゾリル等の単環式非芳香族複素環基、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロベンゾジオキセピニル、テトラヒドロベンゾフラニル、クロメニル、ジヒドロクロメニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロフタラジニル等の縮合非芳香族複素環基等が挙げられる。
【0079】
本明細書中、「置換されていてもよいアラルキル基」における「アラルキル」とは、「アルキル基」に「アリール基」が置換した基を意味し、好ましくは、「C7−14アラルキル」である。
【0080】
本明細書中、「C7−14アラルキル」とは、「C1−4アルキル基」に「C6−10アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、(ナフチル−1−イル)メチル、(ナフチル−2−イル)メチル、1−(ナフチル−1−イル)エチル、1−(ナフチル−2−イル)エチル、2−(ナフチル−1−イル)エチル、2−(ナフチル−2−イル)エチル、ビフェニリルメチル等が挙げられる。
【0081】
本明細書中、「C7−14アラルキルオキシ」とは、酸素原子に「C7−14アラルキル基」が結合した基を意味し、例えば、ベンジロキシ、1−ナフチルメチルオキシ、2−ナフチルメチルオキシ等が挙げられる。中でも、ベンジロキシ基が好ましい。
【0082】
本明細書中、「置換されていてもよいアルケニル基」における「アルケニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2以上のアルケニル基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C2−6アルケニル基である。
【0083】
本明細書中、「C2−6アルケニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜6のアルケニル基を意味し、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。中でも、特にC2−4アルケニル基が好ましい。
【0084】
本明細書中、「置換されていてもよいアルキニル基」における「アルキニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2以上のアルキニル基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C2−6アルキニル基である。
【0085】
本明細書中、「C2−6アルキニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜6のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル等が挙げられる。中でも、C2−4アルキニル基が好ましく、エチニル基が特に好ましい。
【0086】
本明細書中、「C3−8シクロアルキル基」としては、炭素原子数3〜8の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。中でも、C3−6シクロアルキル基が好ましい。
【0087】
本明細書中、「置換されていてもよいアルコキシ基」における「アルコキシ基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1以上のアルコキシ基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1−6アルコキシ基である。
【0088】
本明細書中、「C1−6アルコキシ基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。中でも、C1−4アルコキシ基が好ましい。
【0089】
本明細書中、「C1−6アルキルチオ基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキルチオ基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、ヘキシルチオ等が挙げられる。中でも、C1−4アルキルチオ基が好ましい。
【0090】
本明細書中、「C6−10アリールチオ基」とは、硫黄原子に「C6−10アリール基」が結合した基を意味し、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ等が挙げられる。中でも、フェニルチオ基が好ましい。
【0091】
本明細書中、「置換されていてもよいアルキル−カルボニル基」における「アルキル−カルボニル基」とは、−C=O−に「アルキル基」が結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1−6アルキル−カルボニル基である。
【0092】
「C1−6アルキル−カルボニル基」とは、−C=O−に「C1−6アルキル基」が結合した基を意味し、例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ネオペンチルカルボニル、ヘキシルカルボニル等が挙げられる。中でも、C1−4アルキル−カルボニル基が好ましい。
【0093】
「C1−6アルキル−カルボニルオキシ基」とは、酸素原子に「C1−6アルキル−カルボニル基」が結合した基を意味し、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ネオペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ等が挙げられる。中でも、C1−4アルキル−カルボニルオキシ基が好ましい。
【0094】
本明細書中、「C6−10アリール−カルボニル基」とは、−C=O−に「C6−10アリール基」が結合した基を意味し、例えば、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等が挙げられる。中でも、ベンゾイル基が好ましい。
【0095】
本明細書中、「C6−10アリール−カルボニルオキシ基」とは、酸素原子に「C6−10アリール−カルボニル基」が結合した基を意味し、例えば、ベンゾイルオキシ、1−ナフトイルオキシ、2−ナフトイルオキシ等が挙げられる。中でも、ベンゾイルオキシ基が好ましい。
【0096】
本明細書中、「C1−6アルコキシ−カルボニル基」とは、−C=O−に「C1−6アルコキシ基」が結合した基を意味し、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、ネオペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、C1−4アルコキシ−カルボニル基が好ましい。
【0097】
本明細書中、「C2−6アルケニルオキシ−カルボニル基」とは、−C=O−に「C2−6アルケニルオキシ基」が結合した基を意味し、例えば、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2−メチル−1−プロペニルオキシカルボニル、1−ブテニルオキシカルボニル、2−ブテニルオキシカルボニル、3−ブテニルオキシカルボニル、1−ペンテニルオキシカルボニル、1−ヘキセニルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、特にアリルオキシカルボニル基が好ましい。
【0098】
本明細書中、「C6−10アリールオキシ−カルボニル基」とは、−C=O−に「C6−10アリールオキシ基」が結合した基を意味し、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、2−ナフチルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、フェノキシカルボニル基が好ましい。
【0099】
本明細書中、「C7−14アラルキルオキシ−カルボニル基」とは、−C=O−に「C7−14アラルキルオキシ基」が結合した基を意味し、例えば、ベンジルオキシカルボニル、1−ナフチルメチルオキシカルボニル、2−ナフチルメチルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、ベンジルオキシカルボニル基が好ましい。
【0100】
本明細書中、「C1−6アルキルスルホニル基」とは、−S(O)−に「C1−6アルキル基」が結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル等が挙げられる。中でも、C1−4アルキルスルホニル基が好ましい。
【0101】
本明細書中、「C6−10アリールスルホニル基」とは、−S(O)−に「C6−10アリール基」が結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニル等が挙げられる。中でも、フェニルスルホニル基が好ましい。
【0102】
本明細書中、「置換されていてもよいアルキルスルホニロキシ基」における「アルキルスルホニロキシ基」とは、−S(O)−O−の硫黄原子に「アルキル基」が結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニロキシ、エチルスルホニロキシ、プロピルスルホニロキシ、イソプロピルスルホニロキシ、ブチルスルホニロキシ、イソブチルスルホニロキシ、sec−ブチルスルホニロキシ、tert−ブチルスルホニロキシ、ペンチルスルホニロキシ、イソペンチルスルホニロキシ、ネオペンチルスルホニロキシ、ヘキシルスルホニロキシ等のC1−6アルキルスルホニロキシ基が挙げられる。中でも、C1−4アルキルスルホニロキシ基が好ましい。「置換されていてもよいアルキルスルホニロキシ基」としては、ハロゲン原子により置換されていてもよいメチルスルホニロキシ基(例、トリフルオロメタンスルホニロキシ基)が特に好ましい。
【0103】
本明細書中、「置換されていてもよいアリールスルホニロキシ基」とは、−S(O)−O−の硫黄原子に「アリール基」が結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニロキシ、1−ナフチルスルホニロキシ、2−ナフチルスルホニロキシ等が挙げられる。中でも、フェニルスルホニロキシ基が好ましい。「置換されていてもよいアリールスルホニロキシ基」としては、メチル基により置換されていてもよいフェニルスルホニロキシ基(例、ベンゼンスルホニロキシ基、p−トルエンスルホニロキシ基)が特に好ましい。
【0104】
本明細書中、「置換されていてもよいアルキルスルホナート」における「アルキルスルホナート」とは、−SOに「アルキル基」が結合した基を意味し、例えば、メチルスルホナート、エチルスルホナート、プロピルスルホナート、イソプロピルスルホナート、ブチルスルホナート、イソブチルスルホナート、sec−ブチルスルホナート、tert−ブチルスルホナート、ペンチルスルホナート、イソペンチルスルホナート、ネオペンチルスルホナート、ヘキシルスルホナート等が挙げられる。中でも、C1−4アルキルスルホナートが好ましい。「置換されていてもよいアルキルスルホナート」としては、ハロゲン原子により置換されていてもよいメチルスルホナート(例、トリフルオロメタンスルホナート)が特に好ましい。
【0105】
本明細書中、「置換されていてもよいアリールスルホナート」における「アリールスルホナート」とは、−SOに「アリール基」が結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホナート、1−ナフチルスルホナート、2−ナフチルスルホナート等のC6−10アリールスルホナートが挙げられる。中でも、フェニルスルホナートが好ましい。「置換されていてもよいアリールスルホナート」における「アリールスルホナート」としては、メチル基により置換されていてもよいフェニルスルホナート(例、ベンゼンスルホナート、p−トルエンスルホナート)が特に好ましい。
【0106】
本明細書中、「モノ若しくはジ−C1−6アルキルアミノ−カルボニル基」とは、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基によりモノ若しくはジ−置換されたアミノ基にカルボニルが結合した基を意味し、例えば、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、イソプロピルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、ジプロピルアミノカルボニル基、ジイソプロピルアミノカルボニル基等が挙げられる。
【0107】
本明細書中、「トリ置換シリル基」とは、同一又は異なる3個の置換基(例、C1−6アルキル基、C6−10アリール基)により置換されたシリル基を意味し、当該基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が好ましい。
【0108】
本明細書中、「保護されたアミノ基」は、同一又は異なる1個又は2個の「保護基」により保護されたアミノ基を意味する。当該「保護基」としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons刊(1980)に記載のアミノ基の保護基を使用し得、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C6−10アリール基、C7−14アラルキル基、ホルミル基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C2−6アルケニルオキシ−カルボニル基、C6−10アリール−カルボニル基、C7−14アラルキル−カルボニル基、C6−10アリールオキシ−カルボニル基、C7−14アラルキルオキシ−カルボニル基、C6−10アリールスルホニル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、トリC1−6アルキルシリル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、フタロイル基等の保護基が挙げられる。上記の保護基は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基又はニトロ基でそれぞれ置換されていてもよい。当該アミノ基の保護基の具体例としては、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンズヒドリル、トリチル、フタロイル、アリルオキシカルボニル、p−トルエンスルホニル、o−ニトロベンゼンスルホニル、トリメチルシリルエトキシカルボニル等が挙げられる。
【0109】
本明細書中、「置換されていてもよい」とは、特に規定する場合を除き、1個以上の置換基を有していてもよいことを意味し、該「置換基」としては、(1)ハロゲン原子、(2)ニトロ基、(3)シアノ基、(4)ヒドロキシ基、(5)アミノ基、(6)オキソ基、(7)チオキソ基、(8)メルカプト基、(9)カルバモイル基、(10)C1−6アルキル基、(11)カルボキシ基、(12)C3−8シクロアルキル基、(13)C3−8シクロアルケニル基、(14)C2−6アルケニル基、(15)C2−6アルキニル基、(16)C1−6アルコキシ基、(17)C1−6アルコキシ−C1−6アルコキシ基、(18)C1−6アルキレンジオキシ基、(19)C6−10アリール基、(20)C6−10アリールオキシ基、(21)C7−14アラルキル基、(22)C7−14アラルキルオキシ基、(23)C1−6アルコキシ−カルボニル基、(24)C7−14アラルキルオキシ−カルボニル基、(25)C1−6アルキル−カルボニル基、(26)C6−10アリール−カルボニル基、(27)C1−6アルキル−カルボニルオキシ基、(28)C6−10アリール−カルボニルオキシ基、(29)C6−10アリールオキシ−カルボニル基、(30)C1−6アルキルスルホニル基、(31)C6−10アリールスルホニル基、(32)ホルミル基、(33)アジド基、(34)C1−6アルキルチオ基、(35)C6−10アリールチオ基、(36)モノ若しくはジ−C1−6アルキルアミノ−カルボニル基、(37)芳香族複素環基、(38)トリ置換シリル基、(39)保護されたアミノ基等が挙げられる。中でも、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、メチレンジオキシ、C1−6アルコキシ−カルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、カルバモイル、ベンジル、トリチル、フェニル、フェノキシ、ナフチル、ピリジル、チエニル、フリル、ピロリル、インドリル、キノリル、アジド、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、tert−ブトキシカルボニルアミノが好ましい。また、複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0110】
上記置換基は、さらに上記置換基で置換されていてもよい。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1乃至5個、より好ましくは1乃至3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。当該置換基はまたさらにC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−8シクロアルキル基、C3−8シクロアルケニル基、C6−14アリール基、C7−14アラルキル基、複素環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、オキソ基等で置換されていてもよい。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1乃至5個、より好ましくは1乃至3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0111】
本明細書中、「置換されていてもよい環状基」の「環状基」としては、例えば、C3−8シクロアルキル基、C3−8シクロアルケニル基、C6−10アリール基等の環状炭化水素基、複素環基等が挙げられる。中でも、C3−8シクロアルキル基又はC6−10アリール基が好ましく、C6−10アリール基が特に好ましい。
【0112】
本明細書中、「縮合環」とは、隣接するベンゼン環と1対1で辺を共有する飽和又は不飽和の炭素環又は複素環構造を意味し、例えば、インダン、テトラリン、ナフタレン、キノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、インドリン等が挙げられる。中でも、飽和又は不飽和の炭素環が好ましく、ナフタレンが特に好ましい。
【0113】
本明細書中、「キラル化合物」とは、中心性キラリティー、軸性キラリティー又は面性キラリティーを持つ化合物を意味し、例えば、中心性キラリティー(不斉中心、すなわち、不斉炭素原子)を持つ化合物が挙げられる。
【0114】
本明細書中、「キラル有機酸」とは、中心性キラリティー、軸性キラリティー又は面性キラリティーを持つカルボン酸又はスルホン酸を意味し、中でも、中心性キラリティー(不斉炭素原子)を持つカルボン酸が好ましく、カルボキシ基のα位に不斉炭素原子を有するカルボン酸がより好ましく、α−アミノ酸が特に好ましい。
【0115】
本明細書中、「求核剤」とは、反応性の孤立電子対をもつ化学種であればよく、電気的に中性なもの、有機アニオン、無機アニオンのいずれでも構わない。これら求核剤の例として、含窒素求核剤(アミン、アミド、イミド、アンモニア、ヒドラジン、アジド等)、含酸素求核剤(水、アルコール、水酸物イオン、アルコキサイド、シロキサン、カーボキシレート、パーオキサイド等)、含硫黄求核剤(メルカプタン、チオレート、ビスルファイト、チオシアネート等)、含炭素求核剤(シアニド、マロネート、アセチリド、エノレート、イノレート、グリニャール試薬、有機銅試薬、有機亜鉛試薬、有機リチウム試薬等)、ヒドリドアニオン等が挙げられ、中でもアミン、水、アルコールまたはチオールが好ましく、さらに取り扱いが容易であることからアミンまたはアルコールが特に好ましい。中でも、反応速度の観点から、アミンとしては、第一級アミンが好ましく、具体的には、アリルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、フェニルプロピルアミン等が好適に使用でき、アルコールとしては、第一級アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、トリフルオロエタノール、シンナミルアルコール等が好適に使用できる。また、求核剤部位を反応基質(例、キラル有機酸)の一部に含有させれば、分子内反応による速度論的分割も行うことができる。また、求核剤として、反応性のガス(例、HCNガス)を使用することもできる。その際のガス分圧は、好ましくは0.1〜1000atm、より好ましくは0.5〜100atm、さらに好ましくは1〜10atmの範囲である。
【0116】
本明細書中、「キラル有機酸−求核剤縮合体」とは、キラル有機酸と求核剤とが、脱水縮合反応等により結合形成した化合物を意味し、具体的には、キラル有機酸としてキラルカルボン酸を使用し、求核剤としてアルコール又はアミンを使用した場合の「キラル有機酸−求核剤縮合体」とは、それぞれキラルエステル又はキラルアミドである。
【0117】
本明細書中、「触媒量」とは、反応基質の量を基準とする触媒の準化学量論的な量を意味する。具体的には、触媒量とは、反応基質の量(100モル%)に対して、0.01モル%〜90モル%、より好ましくは、0.1モル%〜50モル%、特に好ましくは、0.1モル%〜10モル%の触媒を意味する。
【0118】
本明細書中、「立体異性的に富化された」とは、エナンチオ選択的に富化された又はジアステレオ選択的に富化された状態を意味し、具体的には、その生成物の他の可能な立体異性体類よりも優先して反応生成物の特定の立体異性体を生成するものである。「エナンチオ選択的に富化された」とは、反応生成物中の2種の可能なエナンチオマーのうちの一方の生成が、他方の生成よりも優先した状態を意味するものである。
【0119】
キラル有機酸としてラセミ体を用いる場合には、本発明の不斉脱水縮合剤の存在下で、キラル有機酸の一方の反応体エナンチオマーが他方よりもゆっくりと反応することで反応速度によって分割され、エナンチオマー的に富化されたキラル有機酸−求核剤縮合体を生じる。このようなプロセスは「速度論的光学分割」と称される。本発明の速度論的光学分割方法により分割され得る立体異性体は、二つ以上の不斉中心を有していてもよく、互いにジアステレオマーの関係であってもよい。
【0120】
本明細書中、「ee」とは、鏡像異性体過剰率(enantiomeric excess)の略称であり、キラルな化合物の光学純度を表す。「ee」は、多い方の鏡像異性体の物質量から少ない方の鏡像異性体の物質量を引き、全体の物質量で割った値に100を掛けて算出され、「%ee」で表される。
【0121】
本明細書中、「光学的に純粋な」とは、99%ee以上の光学純度を示す状態を表す。
【0122】
本明細書中、「光学活性な」とは、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する状態を意味する。好ましくは、光学的に純粋な状態である。
【0123】
本明細書中、「鏡像異性体」とは、光学活性なキラル化合物中の全ての不斉炭素原子の立体配置が異なっている光学的対掌体を意味し、光学活性なキラル化合物と互いに右手と左手との関係にある1対の光学異性体を構成している。具体的には、例えば、光学活性なキラル化合物が(L)−N−ベンゾイルフェニルアラニンである場合の鏡像異性体は、(D)−N−ベンゾイルフェニルアラニンである。
【0124】
(本発明の化合物)
本発明の化合物は、下記式(I)で表される化合物(化合物(I))である。
【0125】
式(I):
【0126】
【化26】
【0127】
[式中、
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示し、
は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR(ここで、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよい芳香環基を示す。)、PR(ここで、Rは、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香環基を示す。)、Si(R)(R10)(ここで、R及びR10は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)又はC(R11)(R12)(ここで、R11及びR12は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示すか、又はR11及びR12はそれらが結合する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環状炭化水素基を形成してもよい。)を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基又は置換されていてもよい環状基を示し、
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルキル−カルボニル基、置換されていてもよいアルコキシ−カルボニル基、カルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ−カルボニル基、ホルミル基、シアノ基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよい環状基を示すか、或いはR−Y且つR、及び/又はR且つRはそれらが結合するベンゼン環と共に縮合環を形成してもよく、並びに
-は、求核性がないか、又は求核性が低い対アニオンを示す。]で表される化合物である。
【0128】
以下、本発明の化合物(I)の各基について説明する。
【0129】
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基及び置換されていてもよい芳香環基からなる群より選択される基を表し、Rの選択により、本発明の化合物(I)の溶解性、反応性等を制御することが可能である。
【0130】
は、好ましくは、C1−20アルキル基、またはC6−22アリール基であり、中でもC1−12アルキル基、またはC6−14アリール基が好ましく、C1−6アルキル基、またはC6−10アリール基(例、フェニル基、ナフチル基)がより好ましく、C1−3アルキル基が特に好ましい。各基は、それぞれ前述した置換基により置換されていてもよく、複数の置換基を有する場合、それらは、同一でも異なっていてもよい。
【0131】
は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を表す。
【0132】
は、好ましくは、C1−3アルキル基である。該基は、前述した置換基により置換されていてもよく、複数の置換基を有する場合、それらは、同一でも異なっていてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子が好ましい。
【0133】
は、特に好ましくは、1乃至3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)により置換されていてもよいメチル基、またはエチル基である。
【0134】
Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR(ここで、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよい芳香環基を示す。)、PR(ここで、Rは、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香環基を示す。)、Si(R)(R10)(ここで、R及びR10は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示す。)又はC(R11)(R12)(ここで、R11及びR12は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい芳香環基を示すか、又はRが水素原子であり、且つR11及びR12はそれらが結合する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環状炭化水素基(例、C3−8シクロアルキル基)を形成してもよい。)を表す。
【0135】
Yは、好ましくは、単結合である。
【0136】
は、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基又は置換されていてもよい環状基を表す。
【0137】
は、好ましくは、置換されていてもよいアルキニル基又は置換されていてもよい環状基であり、より好ましくは、置換されていてもよいC2−6アルキニル基又は置換されていてもよいアリール基であり、更に好ましくは、置換されていてもよいエチニル基又は置換されていてもよいC6−22アリール基であり、特に好ましくは、置換されていてもよいエチニル基又は置換されていてもよいC6−10アリール基(例、フェニル基、ナフチル基)である。各基は、前述した置換基により置換されていてもよく、複数の置換基を有する場合、それらは、同一でも異なっていてもよい。該アルキニル基の置換基としては、置換されていてもよいアリール基が好ましく、また該環状基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アリール基、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基、または1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルコキシ基が好ましい。中でもフェニル基により置換されたエチニル基、又は1乃至3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)により置換されていてもよいC6−10アリール基(例、フェニル基、ナフチル基)が、Rとして最も好ましい。
【0138】
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルキル−カルボニル基、置換されていてもよいアルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、ホルミル基、シアノ基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよい環状基を表すか、或いはR−Y且つR、及び/又はR且つRはそれらが結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。
【0139】
は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、カルバモイル基、ホルミル基、シアノ基、C1−6アルコキシ基である。各基は、それぞれ前述した置換基により置換されていてもよく、複数の置換基を有する場合、それらは、同一でも異なっていてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、C1−6アルキル基、またはC1−6アルコキシ基が好ましい。
【0140】
は、より好ましくは、水素原子またはハロゲン原子である。
【0141】
及びRは、好ましくは、それらが結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。該縮合環は、前述した置換基により置換されていてもよく、複数の置換基を有する場合、それらは、同一でも異なっていてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アリール基、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基、または1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルコキシ基が好ましい。
【0142】
及びRは、より好ましくは、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成するものである。
【0143】
-は、求核性がないか、又は求核性が低い対アニオンを表し、好ましくは、例えば、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、置換されていてもよいアルキルスルホナート、置換されていてもよいアリールスルホナート、ペルクロラート、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモナート、テトラフェニルボラート、およびアルセナートからなる群より選択される対アニオンである。
【0144】
-は、より好ましくは、クロリド、トリフルオロメタンスルホナート、ペルクロラート、またはテトラフルオロボラートであり、特に好ましくは、クロリド、トリフルオロメタンスルホナートである。
【0145】
化合物(I)としては、式(I’):
【0146】
【化27】
【0147】
[式中の各記号は、前記と同意義を示す。]で表される光学的に純粋な化合物(以下、「化合物(I’)」と称することもある。)、式(I’’):
【0148】
【化28】
【0149】
[式中の各記号は、前記と同意義を示す。]で表される光学的に純粋な化合物(以下、「化合物(I’’)」と称することもある。)、又はそれらの非等量混合物が好適であり、中でも以下の化合物がより好適である。
【0150】
[化合物(IA)]
が、置換されていてもよいC1−3アルキル基であり;
が、置換されていてもよいC1−3アルキル基であり;
Yが、単結合であり;
が、置換されていてもよいアリール基であり;
が、水素原子であり;
且つRが、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成し;及び
-が、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、置換されていてもよいアルキルスルホナート、置換されていてもよいアリールスルホナート、ペルクロラート、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモナート、テトラフェニルボラート又はアルセナートである、化合物(I’)、化合物(I’’)又はそれらの非等量混合物。
【0151】
[化合物(IB)]
が、C1−3アルキル基であり;
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよい置換されていてもよいC1−3アルキル基であり;
Yが、単結合であり;
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC6−10アリール基であり;
が、水素原子であり;
且つRが、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成し;及び
-が、クロリド、トリフルオロメタンスルホナート、ペルクロラート、またはテトラフルオロボラートである、化合物(I’)、化合物(I’’)又はそれらの非等量混合物。
【0152】
[化合物(IC)]
が、メチル基、エチル基又はイソプロピル基であり;
が、1乃至3個のフッ素原子により置換されていてもよい置換されていてもよいメチル基であり;
Yが、単結合であり;
が、1乃至3個のハロゲン原子により置換されていてもよいフェニル基又はナフチル基であり;
が、水素原子であり;
且つRが、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成し;及び
-が、クロリド又はトリフルオロメタンスルホナートである、化合物(I’)、化合物(I’’)又はそれらの非等量混合物。
【0153】
[化合物(ID)]
が、メチル基、エチル基又はイソプロピル基であり;
が、1乃至3個のフッ素原子により置換されていてもよい置換されていてもよいメチル基であり;
Yが、単結合であり;
が、フェニル基により置換されていてもよいエチニル基であり;
が、水素原子であり;
且つRが、それらが結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成し;及び
-が、クロリド又はトリフルオロメタンスルホナートである、化合物(I’)、化合物(I’’)又はそれらの非等量混合物。
【0154】
特に好適な化合物(I)は、具体的には以下の化合物、又はそれらの光学異性体である。
【化29】
【0155】
また、本願発明には、上記化合物(I)の合成中間体である、以下のキラル第三級アミン化合物(II)、又はそれらの光学異性体も含まれる。
【化30】
【0156】
(本発明の化合物(I)の合成)
本発明の化合物(I)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のような反応を経て合成することができる。
【0157】
原料化合物は、特に述べない限り、市販品として容易に入手できるか、あるいは、自体公知の方法(Ooi, T. et al., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 5139-5151.)またはこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
【0158】
[製造法1]
本発明の化合物(I)は、例えば、以下の工程により製造することができる。
【0159】
【化31】
【0160】
[式中の各記号は、前記と同義である。]
【0161】
工程(1−1)
当該工程は、化合物(1a)の2個のヒドロキシ基をトリフルオロメタンスルホニル化することにより、化合物(1b)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基の存在下、トリフルオロメタンスルホニル化剤を用いて行われる。
【0162】
トリフルオロメタンスルホニル化剤としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸ハライド等が使用可能であり、中でも、トリフルオロメタンスルホン酸無水物が好ましい。
該トリフルオロメタンスルホニル化剤の使用量は、化合物(1a)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0163】
塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ金属;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピコリン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、テトラメチルグアニジン等の有機塩基類等が挙げられ、中でもトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が好ましい。
該塩基の使用量は、化合物(1a)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0164】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム(diglyme))等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類が挙げられ、中でもジクロロメタン、クロロホルム、DME等が特に好ましい。
【0165】
反応温度は、通常−78℃〜120℃、好ましくは−78℃〜室温である。
反応時間は、通常0.1〜30時間である。
【0166】
工程(1−2)
当該工程は、化合物(1b)の2個のトリフルオロメタンスルホニロキシ基を、メチル基へと変換して、化合物(1c)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、ニッケル(II)触媒存在下、グリニャール試薬(メチルマグネシウムヨージド)を用いて行われる。
【0167】
ニッケル(II)触媒としては、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)ジクロリド等が挙げられ、中でも、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリドが好ましい。
該ニッケル(II)触媒の使用量は、化合物(1b)1当量に対して、通常0.0001〜0.2当量であり、好ましくは、0.01〜0.1当量である。
【0168】
グリニャール試薬の使用量は、化合物(1b)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0169】
溶媒としては、例えば、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類が挙げられ、中でもジエチルエーテル等が特に好ましい。
【0170】
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは、室温〜60℃である。
反応時間は、通常0.1〜30時間である。
【0171】
工程(1−3)
当該工程は、化合物(1c)の2個のメチル基(ベンジル位)をブロモ化して、化合物(1d)を製造する工程である。
【0172】
当該工程に使用し得るブロモ化剤としては、N−ブロモコハク酸イミド(NBS)が好適である。当該ブロモ化剤は、触媒量のアゾイソブチロニトリル(AIBN)と共に使用される。
【0173】
AIBNの使用量は、化合物(1c)1当量に対して、通常0.001〜0.5当量であり、好ましくは、0.01〜0.1当量である。
【0174】
NBSの使用量は、化合物(1c)1当量に対して、通常2〜4当量であり、好ましくは、2〜2.4当量である。
【0175】
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられ、中でもベンゼンが特に好ましい。
【0176】
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜80℃である。
反応時間は、通常0.1〜30時間である。
【0177】
工程(1−4)
当該工程は、化合物(1d)と第一級アミン(RNH)との反応により、キラル第三級アミン化合物(II)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。
【0178】
第一級アミンとしては、メチルアミン等が挙げられ、第一級アミンが水溶液として入手可能な場合、当該水溶液をそのまま反応に使用することもできる。
第一級アミンの使用量は、化合物(1d)1当量に対して、通常2〜20当量である。
【0179】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類が挙げられ、中でもジクロロメタン、クロロホルム、THF、アセトニトリル等が特に好ましい。
【0180】
反応温度は、通常−78℃〜120℃、好ましくは0℃〜60℃である。
反応時間は、通常0.1〜30時間である。
【0181】
工程(1−5)
当該工程は、キラル第三級アミン化合物(II)とトリアジン化合物(1f)との反応により、化合物(I)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。
【0182】
化合物(1f)の使用量は、化合物(II)1当量に対して、通常1〜4当量である。
【0183】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられ、中でもジクロロメタン、クロロホルム、THF、アセトニトリル等が特に好ましい。
【0184】
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜80℃である。
反応時間は、通常0.1〜6時間である。
【0185】
当該反応により得られた化合物(I)は、必要に応じて、反応に影響を及ぼさない溶媒中、MX’と混合することにより、対アニオンであるX-を他の対アニオンX’へと変換することができるので、化合物(I)の他の塩を容易に調製することができる。
【0186】
MX’で表される反応剤におけるMは、金属原子、または4級アンモニウム基を示し、具体的には、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、金、銀等の貴金属、タリウム等の重金属、テトラメチルアンモニウム基等が挙げられ、中でも好ましくは、リチウム、ナトリウムまたは銀である。
【0187】
MX’で表される反応剤におけるX’は、前記X-に対応する基のうち、塩素原子、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基又は置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基以外の求核性がないか、又は求核性が低い基を示し、具体的には、例えば、ペルクロラート、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモナート、テトラフェニルボラート、アルセナート等が挙げられる。
【0188】
該MX’の使用量は、化合物(I)1当量に対して、通常1〜10当量であり、好ましくは、1〜3当量である。
【0189】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;それらの混合溶媒等が挙げられ、中でもジクロロメタンが特に好ましい。
【0190】
反応温度は、通常−30〜100℃、好ましくは0〜40℃である。
反応時間は、通常0.1〜30時間である。
【0191】
[製造法2]
化合物(I)において、Yが単結合であり、且つRが置換されていてもよいアリール基である化合物(本明細書中、化合物(I−1)と略記することがある)は、例えば、下記製造法2またはこれに準ずる方法により製造することができる。
【0192】
【化32】
【0193】
(式中の各記号は前記と同義を示す。)
【0194】
工程(2−1)
当該工程は、化合物(2a)の2個のヒドロキシ基をメトキシメチル化することにより、化合物(2b)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基の存在下、メトキシメチルクロリドを用いて行われる。
原料化合物(2a)は市販のものを用いるか、または自体公知の方法[例えば、「Advanced Organic Chemistry, 4th Ed.」(Jerry March著)、「Comprehensive Organic Transformations, 2nd Ed.」(Richard C. Larock著)、「Brunel, J. M., Chem. Rev., 2005, 105, 857-897.」に記載の方法]またはこれらに準ずる方法で製造することができる。
【0195】
メトキシメチルクロリドの使用量は、化合物(2a)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0196】
塩基としては、例えば、水素化ナトリウム等のヒドリド系塩基;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ金属;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピコリン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、テトラメチルグアニジン等の有機塩基類等が挙げられ、中でも水素化ナトリウムが好ましい。
該塩基の使用量は、化合物(2a)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0197】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられ、中でもTHFが特に好ましい。
【0198】
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜80℃である。
反応時間は、通常0.1〜6時間である。
【0199】
工程(2−2)
当該工程は、化合物(2b)の2個のメトキシメトキシ基のオルト位に臭素原子を導入し、化合物(2c)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、化合物(2b)の2個のメトキシメトキシ基のオルト位をリチオ化後、求電子的にブロモ化剤を用いて行われる。
【0200】
化合物(2b)の2個のメトキシメトキシ基のオルト位のリチオ化に使用する有機リチウム試薬としては、n−ブチルリチウムが好適に使用される。
n−ブチルリチウムの使用量は、化合物(2b)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0201】
求電子的なブロモ化剤としては、臭素が好適に使用される。
該ブロモ化剤の使用量は、化合物(2b)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0202】
溶媒としては、例えば、ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類が挙げられ、中でもTHFが特に好ましい。
【0203】
反応温度は、通常−78℃〜100℃、好ましくは−78℃〜室温である。
反応時間は、通常0.1〜6時間である。
【0204】
工程(2−3)
当該工程は、化合物(2c)の2個のメトキシメチル基を除去し、化合物(2d)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、化合物(2c)を酸処理することにより行われる。
【0205】
酸としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons刊(1980)に記載のメトキシメチル基の脱保護に使用可能なものが挙げられるが、化合物(2c)上の他の置換基に影響を与えないものであれば、特に限定されない。好ましい酸としては、塩酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられ、塩酸が特に好ましい。
該酸の使用量は、化合物(2c)1当量に対して、通常0.1〜10当量である。
【0206】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;メタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸エチル等のエステル類が挙げられ、中でもジオキサンが特に好ましい。
【0207】
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜80℃である。
反応時間は、通常0.1〜6時間である。
【0208】
工程(2−4)
当該工程は、化合物(2d)の2個のヒドロキシ基をトリフルオロメタンスルホニル化して、化合物(2e)を製造する工程である。
本工程は、前記製造法1の工程(1−1)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0209】
工程(2−5)
当該工程は、化合物(2e)の2個のブロモ基を所望のアリール基で置換して、化合物(1b)を製造する工程である。
本工程は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、例えば、パラジウム触媒及び塩基の存在下、アリールボロン酸とのクロスカップリング反応(鈴木カップリング反応)等により行うことができる。
【0210】
パラジウム触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムやトリフェニルホスフィン存在下での酢酸パラジウム等が挙げられ、中でも、トリフェニルホスフィン存在下、酢酸パラジウムを使用する系が好ましい。
パラジウム触媒の使用量は、化合物(2e)1当量に対して、通常0.001〜0.5当量であり、好ましくは、0.05〜0.2当量である。
【0211】
所望のアリールボロン酸は、市販品を使用するか、又は市販の原料から自体公知の方法により合成したものを使用することができる。
アリールボロン酸の使用量は、化合物(2e)1当量に対して、通常2〜4当量である。
【0212】
塩基としては、例えば、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられ、中でもリン酸三カリウムが好ましい。
【0213】
溶媒としては、例えば、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類、ジオキサン、DMFが挙げられ、中でもTHFが特に好ましい。
【0214】
反応温度は、通常50℃〜150℃、好ましくは60℃〜110℃である。
反応時間は、通常0.1〜12時間である。
【0215】
工程(2−6)
本工程は、化合物(2f)から前記製造法1の工程(1−2)〜工程(1−5)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0216】
[製造法3]
化合物(I)において、Yが単結合であり、且つRが置換されていてもよいアリール基(例、3,4,5−トリフルオロフェニル基)である化合物(I−1)は、例えば、下記製造法3またはこれに準ずる方法によっても製造することができる。
【0217】
【化33】
【0218】
(式中の各記号は前記と同義を示す。)
【0219】
工程(3−1)
当該工程は、化合物(2b)の2個のメトキシメトキシ基のオルト位にヒドロキシ基を導入して、化合物(3a)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、化合物(2b)の2個のメトキシメトキシ基のオルト位をリチオ化後、ボロナート化に続く酸化により行われる。
【0220】
化合物(2b)の2個のメトキシメトキシ基のオルト位のリチオ化に使用する有機リチウム試薬としては、n−ブチルリチウムが好適に使用される。
n−ブチルリチウムの使用量は、化合物(2b)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0221】
ボロナート化には、トリメトキシボランが使用される。
トリメトキシボランの使用量は、化合物(2b)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0222】
ボロナート化に続く酸化反応に使用する酸化剤としては、過酸化水素が好適に使用される。
酸化剤の使用量は、化合物(2b)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0223】
溶媒としては、例えば、ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類が挙げられ、中でもベンゼンが特に好ましい。
【0224】
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜80℃である。
反応時間は、通常0.1〜6時間である。
【0225】
工程(3−2)
当該工程は、化合物(3a)の2個のヒドロキシ基をメチル化することにより、化合物(3b)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基の存在下、メチル化剤を用いて行われる。
【0226】
メチル化剤としては、特に限定されないが、メチルヨージドが好適に使用される。
【0227】
メチル化剤の使用量は、化合物(3a)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0228】
塩基としては、例えば、水素化ナトリウム等のヒドリド系塩基;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ金属;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピコリン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、テトラメチルグアニジン等の有機塩基類等が挙げられ、中でも炭酸カリウムが好ましい。
該塩基の使用量は、化合物(3a)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0229】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン等のケトン類が挙げられ、中でもアセトンが特に好ましい。
【0230】
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜80℃である。
反応時間は、通常0.1〜24時間である。
【0231】
工程(3−3)
当該工程は、化合物(3b)の2個のメトキシメチル基を除去し、化合物(3c)を製造する工程である。
本工程は、前記製造法2の工程(2−3)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0232】
工程(3−4)
当該工程は、化合物(3c)の2個のヒドロキシ基をトリフルオロメタンスルホニル化することにより、化合物(3d)を製造する工程である。
本工程は、前記製造法1の工程(1−1)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0233】
工程(3−5)
当該工程は、化合物(3d)の2個のトリフルオロメタンスルホニロキシ基を、メチル基へと変換して、化合物(3e)を製造する工程である。
本工程は、前記製造法1の工程(1−2)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0234】
工程(3−6)
当該工程は、化合物(3e)の2個のメトキシ基を、脱メチル化して、化合物(3f)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、ルイス酸を用いて行われる。
【0235】
ルイス酸としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons刊(1980)に記載のメトキシ基の脱保護に使用可能なものが挙げられるが、化合物(3e)上の他の置換基に影響を与えないものであれば、特に限定されない。好ましいルイス酸としては、塩化アルミニウム、三臭化ホウ素等が挙げられ、三臭化ホウ素が特に好ましい。
該ルイス酸の使用量は、化合物(3e)1当量に対して、通常2〜10当量であり、好ましくは2〜3当量である。
【0236】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類等が挙げられ、中でもジクロロメタンが特に好ましい。
【0237】
反応温度は、通常0℃〜室温である。
反応時間は、通常0.1〜24時間である。
【0238】
工程(3−7)
当該工程は、化合物(3f)の2個のヒドロキシ基をトリフルオロメタンスルホニル化することにより、化合物(3g)を製造する工程である。
本工程は、前記製造法1の工程(1−1)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0239】
工程(3−8)
当該工程は、化合物(3g)の2個のトリフルオロメタンスルホニロキシ基を所望のアリール基で置換して、化合物(3h)を製造する工程である。
本工程は、前記製造法2の工程(2−5)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0240】
工程(3−9)
本工程は、化合物(3h)から前記製造法1の工程(1−3)〜工程(1−5)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0241】
[製造法4]
化合物(I)において、Yが酸素原子である化合物(本明細書中、化合物(I−2)と略記することがある)は、例えば、下記製造法4またはこれに準ずる方法により製造することができる。
【0242】
【化34】
【0243】
(式中、Xは、脱離基を示し、他の各記号は前記と同義を示す。)
【0244】
工程(4−1)
当該工程は、化合物(3a)の2個のヒドロキシ基をRによりアルキル化又はアラルキル化することにより、化合物(4a)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基の存在下、所望のアルキル化剤又はアラルキル化剤を用いて行われる。
【0245】
で表されるアルキル化剤又はアラルキル化剤としては、特に限定されないが、脱離基Xとしては、例えば、ハロゲン原子(好ましくは、ヨウ素原子、臭素原子など)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等が挙げられる。Rの具体例としては、例えば、tert−ブチルクロリド、トリチルクロリド等が挙げられる。
【0246】
で表されるアルキル化剤又はアラルキル化剤の使用量は、化合物(3a)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0247】
塩基としては、例えば、水素化ナトリウム等のヒドリド系塩基;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ金属;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピコリン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、テトラメチルグアニジン等の有機塩基類等が挙げられ、中でも水素化ナトリウムが好ましい。
該塩基の使用量は、化合物(3a)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0248】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられ、中でもTHFが特に好ましい。
【0249】
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜80℃である。
反応時間は、通常0.1〜6時間である。
【0250】
工程(4−2)
当該工程は、化合物(4a)の2個のメトキシメチル基を除去し、化合物(4b)を製造する工程である。
本工程は、前記製造法2の工程(2−3)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0251】
工程(4−3)
本工程は、化合物(4b)から前記製造法1の工程(1−1)〜工程(1−5)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0252】
[製造法5]
化合物(I)において、YがSi(R)(R10)又はC(R11)(R12)(式中の各記号は前記と同義を示す。)である化合物(本明細書中、化合物(I−3)と略記することがある)は、例えば、下記製造法5またはこれに準ずる方法により製造することができる。
【0253】
【化35】
【0254】
(式中、Xは、脱離基を示し、他の各記号は前記と同義を示す。)
【0255】
工程(5−1)
当該工程は、化合物(2c)の2個のブロモ基をY−R基で置換して、化合物(5a)を製造する工程である。
本工程は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、化合物(2c)の2個のメトキシメトキシ基のオルト位をリチオ化後、RYXとの反応により行われる。
【0256】
化合物(2c)の2個のメトキシメトキシ基のオルト位のリチオ化に使用する有機リチウム試薬としては、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等が好適に使用される。
有機リチウム試薬の使用量は、化合物(2c)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0257】
YXで表されるシリル化剤又はアルキル化剤としては、特に限定されないが、脱離基Xとしては、例えば、ハロゲン原子(好ましくは、ヨウ素原子、臭素原子など)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等が挙げられる。RYXの具体例としては、例えば、tert−ブチルジメチルシリルクロリド、tert−ブチルジフェニルシリルクロリド、トリフェニルクロリド等のシリルハライド;tert−ブチルクロリド、トリチルクロリド等のアルキルハライド等が挙げられる。
該塩基の使用量は、化合物(2c)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0258】
溶媒としては、例えば、ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類が挙げられ、中でもTHFが特に好ましい。
【0259】
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜80℃である。
反応時間は、通常0.1〜6時間である。
【0260】
工程(5−2)
当該工程は、化合物(5a)の2個のメトキシメチル基を除去し、化合物(5b)を製造する工程である。
本工程は、前記製造法2の工程(2−3)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0261】
工程(5−3)
本工程は、化合物(5b)から前記製造法1の工程(1−1)〜工程(1−5)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0262】
[製造法6]
化合物(I)において、YがNR(式中のRは前記と同義を示す。)である化合物(本明細書中、化合物(I−4)と略記することがある)は、例えば、下記製造法6またはこれに準ずる方法により製造することができる。
【0263】
【化36】
【0264】
(式中の各記号は前記と同義を示す。)
【0265】
工程(6−1)
当該工程は、化合物(2c)の2個のブロモ基をN(R)(R)基で置換して、化合物(6a)を製造する工程である。
本工程は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、例えば、パラジウム触媒存在下、アミン((R)(R)NH)とのクロスカップリング反応(Buchwald−Hartwigカップリング反応)等により行うことができる。
【0266】
パラジウム触媒としては、例えば、リン配位子存在下、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムもしくは酢酸パラジウムを使用する系等が挙げられ、中でも、二座キレート型リン配位子存在下、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを使用する系が好ましい。
リン配位子として使用可能な二座キレート型有機リン化合物としては、例えば、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル(BINAP)や1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(Xantphos)等が挙げられ、中でもBINAPが好ましい。
パラジウム触媒の使用量は、化合物(2c)1当量に対して、通常0.01〜0.2当量である。
有機リン化合物の使用量は、化合物(2c)1当量に対して、通常0.01〜0.2当量である。
【0267】
(R)(R)NHとしては、特に限定されず、(R)(R)NHのR及びRが、それらが結合する窒素原子と共に環状基を形成していてもよい。
(R)(R)NHの使用量は、化合物(2c)1当量に対して、通常2〜8当量である。
【0268】
溶媒としては、例えば、ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類が挙げられ、中でもトルエンが特に好ましい。
【0269】
反応温度は、通常室温〜150℃、好ましくは60℃〜110℃である。
反応時間は、通常0.1〜6時間である。
【0270】
工程(6−2)
当該工程は、化合物(6a)の2個のメトキシメチル基を除去し、化合物(6b)を製造する工程である。
本工程は、前記製造法2の工程(2−3)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0271】
工程(6−3)
本工程は、化合物(6b)から前記製造法1の工程(1−1)〜工程(1−5)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0272】
[製造法7]
化合物(I)において、Yが単結合であり、且つRが置換されていてもよいアルキニル基である化合物(本明細書中、化合物(I−5)と略記することがある)は、例えば、下記製造法7またはこれに準ずる方法により製造することができる。
【0273】
【化37】
【0274】
(式中の各記号は前記と同義を示す。)
【0275】
工程(7−1)
当該工程は、化合物(3g)の2個のトリフルオロメタンスルホニロキシ基を所望のアルキニル基で置換して、化合物(7a)を製造する工程である。
本工程は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、例えば、パラジウム触媒、銅触媒及び塩基の存在下、末端アルキン(例えば、アリールアセチレン)とのクロスカップリング反応(薗頭クロスカップリング反応)等により行うことができる。
【0276】
パラジウム触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドやトリフェニルホスフィン存在下での酢酸パラジウム等が挙げられ、中でも、トリフェニルホスフィン存在下、酢酸パラジウムを使用する系が好ましい。
パラジウム触媒の使用量は、化合物(3g)1当量に対して、通常0.001〜0.5当量であり、好ましくは、0.05〜0.2当量である。
【0277】
銅触媒としては、例えば、臭化銅(I)やヨウ化銅(I)等が挙げられ、中でも臭化銅(I)が好ましい。
銅触媒の使用量は、化合物(3g)1当量に対して、通常0.001〜0.5当量であり、好ましくは、0.05〜0.2当量である。
【0278】
塩基としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機アミンが挙げられ、中でもジエチルアミンが好ましい。
【0279】
末端アルキンの種類は、特に限定されないが、アリールアセチレン(例、フェニルアセチレン)が好ましい。
末端アルキンは、市販品を使用するか、又は市販の原料から自体公知の方法により合成したものを使用することができる。
末端アルキンの使用量は、化合物(3g)1当量に対して、通常2〜4当量である。
【0280】
溶媒としては、例えば、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、ジグライム等のエーテル類、ジオキサン、DMF、酢酸エチル、ベンゼン等が挙げられ、中でもDMFが特に好ましい。
【0281】
反応温度は、通常室温〜150℃、好ましくは室温〜110℃である。
反応時間は、通常0.1〜12時間である。
【0282】
工程(7−2)
本工程は、化合物(7a)から前記製造方法1の工程(1−3)〜工程(1−5)と同様の反応条件下で行うことができる。
【0283】
化合物(I)が、光学異性体、立体異性体、位置異性体等の異性体を有する場合には、いずれの異性体もそれらの混合物も本発明の化合物(I)に包含される。例えば、化合物(I)に光学異性体が存在する場合には、ラセミ体から分割された光学異性体も化合物(I)に包含される。これらの異性体は、自体公知の合成手法、分離手法(例、濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶)等によりそれぞれを光学的に純粋な化合物として得ることができる。
【0284】
化合物(I)は、溶媒和物であっても、無溶媒和物であってもよい。
【0285】
化合物(I)はまた、同位元素(例、H,14C等)などで標識されていてもよい。
さらに、化合物(I)は、重水素変換体であってもよい。
【0286】
本発明の化合物(I)は、安定に単離することができ、取扱いが容易であること、また、アルコール等のプロトン性溶媒を含む反応系中でも失活することなく、不斉脱水縮合剤として使用することができる。また、本発明の化合物(I)は、触媒量の光学活性なキラル第三級アミン化合物(II)と化合物(III)との反応により容易に用時調製でき、単離することなく、そのまま不斉脱水縮合剤(不斉脱水縮合触媒)として使用することができるので、以下に示すように、実用的なキラル化合物の速度論的光学分割方法を提供することができる。
【0287】
(光学的に純粋な化合物(I)を用いるα−アミノ酸のラセミ体の速度論的光学分割方法)
光学的に純粋な本発明の化合物(I)、すなわち、化合物(I’)又は化合物(I’’)は、アルコール等のプロトン性溶媒を含む反応系内でも失活することなく不斉脱水縮合剤として使用することができる。また、反応系中で容易に調製することもできるので、実用的には、触媒量の光学活性なキラル第三級アミン化合物(II)(化合物(II’)又は化合物(II’’))、トリアジン化合物(III)及び各種求核剤の存在下でキラル有機酸のラセミ体の速度論的光学分割に使用することが好ましい。すなわち、少量の光学活性なキラル第三級アミン化合物(II)を触媒的に用いて、繰り返し脱水縮合剤を発生させてもよい。例えば、キラル有機酸であるN−保護−α−アミノ酸の速度論的光学分割は、以下のように実施することができる。
【0288】
【化38】
【0289】
(式中の各記号は前記と同義を示す。)
【0290】
本発明において使用される「N−保護−α−アミノ酸」としては、アミノ基が保護されていればよく、特に限定されないが、N−保護−フェニルアラニン、N−保護−ロイシン等が好適である。N−保護−α−アミノ酸のアミノ基の保護基としては、例えば、前述したProtective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons刊(1980)に記載のアミノ基の保護基を使用し得る。当該アミノ基の保護基の具体例としては、ベンゾイル、ベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル等が挙げられ、好ましくは、ベンゾイル又はベンジルオキシカルボニルである。
【0291】
本発明において使用される「求核剤」としては、前述のものが挙げられるが、中でも、アミン又はアルコールが好適に使用できる。具体的には、アミンとしては、第一級アミン(例、アリルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、フェニルプロピルアミン等)が好ましく、また、アルコールとしては、第一級アルコール(例、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、トリフルオロエタノール、シンナミルアルコール等)が好ましい。
【0292】
本発明にて使用される求核剤の量は、N−保護−α−アミノ酸1当量に対して、好ましくは、0.1〜10当量、より好ましくは、0.25〜5当量、特に好ましくは、0.4〜2当量の範囲である。
【0293】
本発明にて使用されるキラル第三級アミン化合物(II)の量は、触媒量であればよく、N−保護−α−アミノ酸1当量に対して、好ましくは、0.001〜0.5当量、より好ましくは、0.01〜0.3当量、特に好ましくは、0.05〜0.2当量の範囲である。
【0294】
本発明にて使用される化合物(III)の量は、N−保護−α−アミノ酸0.5当量に対して、1.0〜5当量、より好ましくは、1.0〜3当量、特に好ましくは、1〜2当量の範囲である。
【0295】
本発明における速度論的分割方法は、溶媒中で行うのが好ましい。溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されない。反応液は均一系、不均一系のいずれでもよいが、均一系の方が反応速度に優れる利点がある。好適な溶媒としては、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)、THF、ジオキサン、シクロプロピルメチルエーテルなど)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、炭化水素系溶媒(ヘキサン、ペンタンなど)、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、アニソール、N,N−ジメチルアニリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、安息香酸メチルなど)、エステル系溶媒(酢酸エチルなど)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトンなど)、プロトン性溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等の低級アルコール、水)、非プロトン性極性溶媒(アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイドなど)等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0296】
本発明の化合物(I)は、アルコールや水等のプロトン性溶媒を使用しても失活することなく、高いエナンチオマー選択性を示す傾向にあることから、アミノ酸等のような高極性且つ各種溶媒に対する溶解性が低い化合物の光学分割に特に好適に使用することができる。
【0297】
本発明における速度論的分割方法では、イオン性液体や超臨界流体などを溶媒として使用することもできる。また、エマルジョンやサスペンションなどの二相系溶媒および脂質二重相を溶媒として使用することもできる。さらには、固相中で反応を行うこともできる。
【0298】
本発明の速度論的光学分割方法を第一級アミンのような求核剤非存在下で、アルコール含有溶媒中で行うと、溶媒として使用したアルコールが求核剤としても作用し、N−保護−α−アミノ酸−求核剤縮合体として対応する光学活性なN−保護−α−アミノ酸エステルが得られる。
【0299】
本発明の速度論的分割方法は、特殊な温度調節を必要とせず、室温下で効率良く行える。また、本発明によれば、キラル第三級アミン化合物である化合物(II’)又は化合物(II’’)は、反応終了後に容易に回収・再利用することも可能であることから、実用性に優れた方法を提供することができる。
【0300】
以下に合成例、参考実施例、実施例及び試験例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
反応は、Merck 60 F254 シリカゲルプレート(厚さ0.25mm)を用いて、薄層クロマトグラフィーによりモニターした。
H及び13C−NMRスペクトルは、JEOL ECS400またはECS600を用い、重クロロホルムまたは重メタノールを溶媒として測定した。H−NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、m=マルチプレット、dd=ダブルダブレット、dt=ダブルトリプレット、brs=ブロードシングレット、sep=セプテット)、カップリング定数(Hz)、積分及び割当てとして報告する。
高分解能質量スペクトル解析(HRMS)は、JEOL JMS-SX102Aを用いて実行した。
融点(mp)測定は、柳本微量融点測定器を用いて行った。
元素分析は、Yanaco CHN Corder MT−5を用いて実行した。
調製した本発明の化合物(I)、(II)の光学純度の測定には日本分光製高速液体クロマトグラフィーポンプPU−2080、日本分光製紫外可視検出器 MD−910、日本分光製旋光検出器 OR−990を用いた。キラルカラムとしては、ダイセル製CHIRALPAK IB-3若しくはCHIRALPAK ADを用いた。
分取薄層クロマトグラフィーは、Merck 60 F254 シリカゲルプレート(厚さ0.5mm)を用いて行った。フラッシュクロマトグラフィーは、関東化学株式会社(日本、東京)のシリカゲル60Nを用いて行った。
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約30℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
【0301】
以下の実施例において、化合物(III)として使用した4,6−ジメトキシ−2−トリフルオロメタンスルホニロキシ−1,3,5−トリアジンは、自体公知の方法(Kunishima, M. et al., Tetrahedron Lett., 2002, 43, 3323-3326.)により製造したものを使用した。また、キラル第三級アミン化合物(II)の合成に使用した原料化合物である(R)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル、(R)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−3,3’−ビス(2−ナフチル)−1,1’−ビナフチル、及び(R)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−3,3’−ビス(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1,1’−ビナフチルは、市販品、又は自体公知の方法(Ooi, T. et al., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 5139-5151.)若しくはこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
【実施例】
【0302】
(合成例1)
2−クロロ−4,6−ジイソプロポキシ−1,3,5-トリアジン
【0303】
【化39】
【0304】
100mLのナスフラスコ中に60%水素化ナトリウム(1.80g,45.0mmol)、テトラヒドロフラン(30mL)を加えた。この溶液に窒素雰囲気下、0℃で2−プロパノール(2.29mL,30.0mmol)を滴下し、滴下終了後30分反応させアルコキシド溶液とした。別の100mLナスフラスコ中に塩化シアヌル(2.77g,15.0mmol)とテトラヒドロフラン(30mL)を加えた。この溶液に、アルコキシド溶液を窒素雰囲気下、−78℃中で滴下した。その後、0℃まで昇温し12時間反応させた。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液で希釈した後、酢酸エチルで抽出を行った。抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10:1)にて分離精製を行い目的物(2.10g,収率61%)で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 5.37(sep,2H),1.40(d,12H);
ESI−MS:m/z=232((M+H)).
【0305】
(参考実施例1)
(R)−4,5−ジヒドロ−4-メチル−2,6−ジフェニル−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピン(化合物(II−1a))の合成
【0306】
【化40】
【0307】
(R)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル(2.72g,4.60mmol)のTHF溶液(18mL)に、40%メチルアミン水溶液(4.6mL,55.2mmol)を加え、室温で8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを加えて希釈し、蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過後、溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン-ヘキサン溶液から再結晶して化合物(II−1a)(1.94g、収率92%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 7.95(d,2H,J=9.2Hz),7.94(s,2H),7.59-7.57(m,4H),7.50-7.37(m,10H),7.29(d,2H,7.3Hz),3.82(d,2H,J=12.4Hz),3.07(d,2H,J=12.8Hz),1.85(s,3H);
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ 141.38,140.43,136.07,132.51,131.70,130.82,130.05,128.99,128.27,128.10,127.54,127.05,125.77,125.68,52.69,42.90;
IR(KBr):3037,3020,3005,2976,2931,1589,1494,1448,1194,1047,895,752,725,687cm−1
HRMS(FAB):計算値(C3538N(M+H)):462.2222;実測値:462.2218;
元素分析(C3527N):計算値:C,91.07;H,5.90;N,3.03.実測値:C,91.01;H,5.98;N,3.15;
融点:234-238℃.
【0308】
(参考実施例2)
(R)−4,5−ジヒドロ−4-メチル−2,6−ビス(2−ナフチル)−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピン(化合物(II−1b))の合成
【0309】
【化41】
【0310】
(R)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−3,3’−ビス(2−ナフチル)−1,1’−ビナフチル(21mg,0.0303mmol)のTHF溶液(0.120mL)に、40%メチルアミン水溶液(0.03mL,0.364mmol)を加え、室温で30分間反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、残渣を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5:1)で分離精製することにより、化合物(II−1b)(11mg、収率65%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 8.06-8.04(d,2H),8.04(s,2H),8.00-7.98(m,2H),7.93-7.89(m,6H),7.74-7.73(m,2H),7.54-7.50(m,8H),7.34-7.30(m,2H),3.91-3.89(d,2H),3.18-3.14(d,2H),1.84(s,3H);
ESI-MS:m/z=562((M+H)+).
【0311】
(参考実施例3)
(R)−2,6−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−4,5−ジヒドロ−4−メチル−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピン(化合物(II−1c))の合成
【0312】
【化42】
【0313】
(R)−3,3’−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−2,2’−ビス(ブロモメチル)−1,1’−ビナフチル(4.0mg,4.6μmol)のTHF溶液(46μL)に、40%メチルアミン水溶液(5μL,55μmol)を加え、室温で4時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを加えて希釈し、蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過後、溶媒を除去し、残渣を分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5:1)で精製することにより、化合物(II−1c)(3.0mg,収率89%)を得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ 8.13(brs,4H),8.00(d,2H,J=8.3Hz),7.98(s,2H),7.57-7.54(m,2H),7.47(d,2H,J=8.3Hz),7.37-7.34(m,2H),3.59(d,2H,J=12.7Hz),3.13(d,2H,J=12.7Hz),1.93(s,3H);
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ 143.32,137.21,136.31,132.49,131.70,131.48,131.24,130.86,130.19,129.62,128.52,127.46,126.78,126.53,124.26,122.45,121.04,52.74,42.47;
ESI-MS:m/z=734((M+H)+).
【0314】
(参考実施例4)
(R)−4,5−ジヒドロ−4−メチル−2,6−ビス(3,4,5,−トリフルオロフェニル)−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピン(化合物(II−1d))の合成
【0315】
【化43】
【0316】
(R)−2,2’−ビス(ブロモメチル)−3,3’−ビス(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1,1’−ビナフチル(78.8mg,0.113mmol)のTHF溶液(0.45mL)に、40%メチルアミン水溶液(0.113mL,1.35mmol)を加え、室温で8時間反応させた。反応終了後、反応液を濃縮した。残渣をメタノールに溶解させ、水を加えて固体を析出させ濾取することにより、化合物(II−1d)(61.2mg、収率95%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 7.96(d,2H,J=8.2Hz),7.90(s,2H),7.54-7.50(m,2H),7.41(d,2H,J=8.2Hz),7.33-7.29(m,2H),3.71(d,2H,J=12.4Hz),3.04(d,2H,J=12.4Hz),1.95(s,3H);
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ 150.81(ddd,J=251,4.6,4.6Hz),139.27(d,J=252Hz),137.38,137.17,136.22,132.41,131.04,130.74,129.32,128.40,127.40,126.51,126.37,114.18(dd),52.54,42.81;
ESI−MS:m/z=570((M+H)).
【0317】
(参考実施例5)
(R)−4,5−ジヒドロ−4−メチル−2,6−ビス(フェニルエチニル)−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピン(化合物(II-1e))の合成
【0318】
【化44】
【0319】
(R)−2,2’−ビス(ブロモメチル)− 3,3’−ビス(フェニルエチニル)−1,1’−ビナフチル(16.3mg,25.4μmol)のTHF溶液(0.25mL)に、40%メチルアミン水溶液(25μL,305μmol)を加え、室温で5時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを加えて希釈し、蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過後、溶媒を除去し、残渣を分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5:1)で精製し、化合物(II−1e)(11.0mg、収率85%)を得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ 8.27(s,2H),7.93(d,2H, J=8.2Hz),7.61-7.60(m,4H),7.48(dd,2H, J=7.9,6.9Hz),7.39-7.35(m,8H),7.29-7.26(m,2H),4.46(d,2H, J=12.4Hz),3.13(d,2H,J=12.4Hz),2.57(s,3H);
ESI-MS:m/z=510((M+H)+).
【0320】
(実施例1)
(R)−4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4,5−ジヒドロ−4−メチル−2,6−ジフェニル−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピニウム トリフルオロメタンスルホナート(化合物(I−1a))の合成
【0321】
【化45】
【0322】
参考実施例1で得られた化合物(II−1a)(25.0mg,54.2μmol)のTHF溶液(0.3mL)に、4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジニル-2-トリフルオロメタンスルホン酸(23.5μL,81.2μmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で5分間反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、得られた残渣に無水ジエチルエーテルを加えて上澄みを除去した。この操作を5回繰り返し、残留した固体を乾燥させて化合物(I−1a)(35.9mg、収率88%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 8.15(s,1H),8.09(d,1H,J=8.2Hz),7.99(d,1H,J=7.8Hz),7.87(s,1H),7.71−7.63(m,2H),7.52−7.38(m,14H),5.65(d,1H,J=13.3Hz),5.12(d,1H,J=13.3Hz),4.66(d,1H,J=13.3Hz),4.19(d,1H,J=13.3Hz),3.91(s,6H),3.09(s,3H).
【0323】
(実施例2)〜(実施例4)は、上記(実施例1)と同様の方法により、参考実施例2〜4のいずれかの化合物(化合物(II−1c)〜(II−1e))と、4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジニル-2-トリフルオロメタンスルホン酸との反応により化合物(I−1c)〜(I−1e)を合成した。化合物(I−1c)〜(I−1e)の化学収率、及び物性データを以下に示す。
【0324】
(実施例2)
(R)−2,6−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5-トリアジン−2−イル)−4,5−ジヒドロ−4−メチル−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピニウム トリフルオロメタンスルホナート(化合物(I−1c))
【0325】
【化47】
【0326】
収率 43%、白色固体;
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 8.16(s,1H),8.13(d,1H,J=8.2Hz),8.05(d,1H,J=8.2Hz),7.99(s,1H),7.96-7.29(br,3H)7.92(s,1H),7.91(s,1H),7.78-7.70(m,3H),7.54−7.46(m,4H),5.37(d,1H,J=13.5Hz),5.14(d,1H,J=13.5Hz),4.68(d,1H,J=13.5Hz),4.40(d,1H,J=13.5Hz),3.95(s,6H),3.20(s,3H);
ESI-MS:m/z=873((M)+).
【0327】
(実施例3)
(R)−4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4,5−ジヒドロ−4−メチル−2,6−ビス(3,4,5−トリフルオロフェニル)−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピニウム トリフルオロメタンスルホナート(化合物(I−1d))
【0328】
【化48】
【0329】
収率 60%、白色固体;
H−NMR(400MHz,CDCl):δ ;8.12(s,1H),8.09(d,1H,J=8.2Hz),8.00(d,1H,J=8.2Hz),7.84(s,1H),7.72(d,1H,J=8.2Hz),7.68(d,1H,J=8.7Hz),7.49-7.41(m,4H),7.11(brs,4H),5.43(d,1H,J=13.7Hz),5.09(d,1H,J=13.7Hz),4.84(d,1H,J=13.7Hz),4.21(d,1H,J=13.7Hz),4.06(s,6H),3.22(s,3H);
ESI-MS:m/z=709((M)+).
【0330】
(実施例4)
(R)−4,5−ジヒドロ−4−メチル−2,6−ビス(フェニルエチニル)−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピニウム トリフルオロメタンスルホナート(化合物(I−1e))
【0331】
【化49】
【0332】
収率 34%、白色固体;
ESI-MS:m/z=649((M)+).
【0333】
(試験例1)
化合物(II−1a)及び化合物(III−1)を用いるN−ベンジロキシカルボニル−フェニルアラニンのラセミ体の速度論的光学分割
【0334】
【化50】
【0335】
10mLのナスフラスコに2−プロパノール(0.65mL)、N−ベンジロキシカルボニルフェニルアラニン(19.5mg、65.0μmol)、キラル第三級アミン化合物(II−1a)(3.00mg、6.50μmol、10mol%)、2−フェネチルアミン(8μL、65.0μmol)を加えた。2−クロロ−4,6−ジイソプロポキシ−1,3,5−トリアジン(化合物(III−1))(16.6mg、71.5μmol)を加え、室温下で1.5時間反応させた。N,N−ジメチルエチレンジアミン(8μL、71.5μmol)を加えて30分間撹拌することで反応を終了させた。この溶液に、酢酸エチルを加えて希釈し、1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、目的のアミド化合物(8.4mg、収率32%、>99%ee)で得た。目的のアミド化合物の光学異性体のHPLC分析条件:ダイセルキラルパックIB−3、ヘキサン/2−プロパノール=9:1、流速=1.0mL/min、保持時間12分(S体)と17分(R体)。2−プロパノール
【0336】
【化51】
【0337】
本反応は、上図のような触媒サイクルを経て進行すると考えられる。すなわち、化合物(II−1a)と化合物(III−1)との反応により生成する脱水縮合剤である化合物(I−1e)が、N−Cbz−フェニルアラニンの一方の光学異性体と優先的に反応し、キラル中間体を生成した後、アミンと縮合することにより、一方のキラルアミドが高エナンチオ選択的に得られ、N−Cbz−フェニルアラニンの他方の光学異性体は、未反応のまま高い光学純度で回収される。
【0338】
本アミド化反応において、高エナンチオ選択性が実現できたのは、不斉脱水縮合剤である化合物(I−1e)及びキラル中間体が、プロトン性溶媒中においても十分な安定性を有することに起因すると考えられ、この点も従来技術にはみられない本発明の特徴の1つである。
【産業上の利用可能性】
【0339】
本発明の化合物(I)は、安定に単離することができ、取扱いが容易であること、また、アルコール等のプロトン性溶媒を含む反応系中でも失活することなく、不斉脱水縮合剤として使用することができる。また、本発明によれば、触媒量の光学活性な化合物(II)とトリアジン化合物(III)との反応により容易に本発明の化合物(I)を用時調製することができ、単離することなく、そのまま触媒として使用することができるので、キラル化合物の実用的な速度論的光学分割方法を提供することができる。