(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具現化した実施の形態を例示して、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施の形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、数値範囲を示すために「〜」という標記を用いた場合、その前後の数値を包含する意味で用いることとする。すなわち、「A〜B」(A、Bは、A<Bである任意の数とする。)は、「A以上B以下」と同義である。
【0020】
1.固化剤
本発明の第1の実施の形態に係る固化剤(以下、単に「固化剤」と略称する場合がある。)は、以下の成分(A)、(B)及び(C)を以下の割合で含有する。
(A)ペーパースラッジ灰:40〜70重量%
(B)火山灰白土、フライアッシュ、アルミノシリケート及び珪藻土から選択される少なくとも1種:1〜35重量%
(C)セメント系固化材又は石膏系固化材:25〜60重量%
但し、成分(A)、(B)及び(C)の合計を100重量%とする。
【0021】
固化剤は、成分(A)、(B)及び(C)を特定の割合で含むことにより、これを、重金属成分を含む固形状重金属被汚染物とセメントと共に湿潤状態で混練することによって、重金属成分を多量に含有する固形状重金属被汚染物であっても、有害な重金属をより安定に固定化することが可能となる。
固化剤は、成分(B)として火山灰白土、フライアッシュ、アルミノシリケート及び珪藻土から選択される少なくとも1種、好ましくは火山灰白土を所定量含むことに特徴がある。成分(A)及び(C)のみを混合した場合では、セメント粉末を十分に固化し、かつ、固形状重金属被汚染物に含まれる重金属成分の溶出を抑制することはできない。
【0022】
処理対象となる固形状重金属被汚染物としては、重金属成分を含むものであればすべて対象になり、具体的には土壌、底質、汚泥や廃棄物等が挙げられる。除去対象となる重金属成分の限定はないが、環境省に告示される第二種特定有害物質に指定される重金属類である6価クロム、カドミウム、鉛、砒素、水銀から選択される1種以上の重金属を含む固形状重金属被汚染物は、固化剤の好適な処理対象である。
【0023】
固化剤の大きさは特に制限はないが、通常、5μm〜5mm、より好ましくは、20μm〜0.5mmである。
【0024】
以下、固化剤を構成する成分(A)、(B)及び(C)について説明する。
【0025】
成分(A)
成分(A)であるペーパースラッジ灰(以下、「PS灰」と記載する場合がある。)は、固化剤において吸水性、保水性の機能を果たす成分である。なお、「PS灰」には、古紙を再生するときに生ずる産業廃棄物を焼却したもののみならず、パルプ製造工程、紙製造工程、古紙処理工程等から発生する紙組成物を焼却することにより生成する灰も含まれる。なお、成分(A)のPS灰としては、多孔質PS灰が好ましい。多孔質PS灰は、上記紙組成物を高温(例えば、800℃以上)で焼成することにより得ることができる。また、紙組成物を高温で焼成することにより、ダイオキシン等の発生を抑制することができるため、環境負荷を低減させるためにも、高温焼成の多孔質PS灰が好ましい。
【0026】
PS灰の成分構成は、二酸化珪素、酸化アルミニウム及び酸化カルシウムがそれぞれ約3割前後で、他に酸化マグネシウム、三酸化硫黄、酸化第二鉄などを含み、比率が異なるものの、通常のセメント成分に近い。そのため、PS灰は、セメント原料としても好適である。
【0027】
成分(A)の割合は、成分(A)、(B)及び(C)の合計を100重量%としたときに、40〜70重量%であり、好適には、50〜60重量%である。成分(A)が40重量%未満であると、他の成分が増加し、コストが高くなるという問題があり、70重量%を超えると吸水性が悪くなり、セメント固化物を製造する際に、混合するセメントの割合を増やさないと固化が難しくなるという問題がある。
【0028】
成分(B)
成分(B)である火山灰白土、フライアッシュ、アルミノシリケート及び珪藻土は、固化剤において微粉末捕集の役割を有する成分である。すなわち、処理対象の固形状重金属被汚染物に含まれる微粉末は、従来の固化剤では完全に固化できない場合があり、これが重金属成分の溶出の一因となっているが、成分(B)を含む固化剤では、成分(B)により微粉末が捕集されるため、固形状重金属被汚染物に含まれる重金属成分の溶出を抑制することができる。火山灰白土は、白色火山灰堆積物の総称でシラスとも呼ばれる。
【0029】
火山灰白土としては、例えば、シリカを65〜73質量%、アルミナを12〜18質量%、酸化鉄を1〜3質量%、酸化カルシウムを2〜4質量%、酸化ナトリウムを3〜4質量%、酸化カリウム2〜3質量%をそれぞれ含むものが好ましい。
【0030】
また、火山灰白土と同様の性質を有するフライアッシュ又はアルミノシリケートの一種であるゼオライト若しくはシラスバルーンを使用することも可能である。使用するフライアッシュ又はゼオライトは、例えば、粒径0.3mm以下であり、シリカ50〜65質量%、アルミナ15〜30質量%、酸化鉄3〜9質量%、酸化カルシウム1〜7質量%を含むものであることが好ましい。また、シラスバルーンは、火山灰白土を高温加熱して発泡させた中空状の粒径2〜数百μm程度の粒子状物質である。シラスバルーンとしては、火山灰白土と同様、例えば、シリカを65〜73質量%、アルミナを12〜18質量%、酸化鉄を1〜3質量%、酸化カルシウムを2〜4質量%、酸化ナトリウムを3〜4質量%、酸化カリウム2〜3質量%をそれぞれ含むものが好ましい。
【0031】
珪藻土(ダイアトマイト)は、藻類の一種である珪藻の殻の化石よりなる堆積岩で、二酸化ケイ素を主成分とする鉱物である。天然の珪藻土の粒径は、通常0.1〜1mmの範囲内であり、必要に応じて所望の粒径になるよう粉砕して用いてもよい。
【0032】
上記の各成分は単独で使用しても、これらの任意の割合の混合物として使用してもよい。成分(B)の好適な市販品の一例としては、HALVO株式会社製、品名「デイフロック」(登録商標)を挙げることができる。
【0033】
成分(B)の割合は、成分(A)、(B)及び(C)の合計を100重量%としたときに、1〜30重量%、好ましくは、1〜18重量%である。成分(B)が1重量%未満であると、微粉末の捕集性が不十分という問題があり、30重量%を超えても微粉末捕集作用は向上せず、相対的に他の成分量が減少して、固化力が低下するおそれがある。
【0034】
成分(C)
成分(C)であるセメント系固化材や石膏系固化材は、固化剤においてエトリンガイド生成やポゾラン反応により強度発現をする役割を有する成分である。
【0035】
ここでいう、「セメント系固化材」とは、セメント又はセメントを母材とし改良目的に応じて種々の有効成分を含む混合物を意味し、「石膏系固化材」とは、石膏(CaSO
4)等のカルシウム硫酸塩又はこれらを母材とし改良目的に応じて種々の有効成分を含む混合物を意味する。
【0036】
成分(C)としては、上記固化材の中でも石膏系固化材がより好ましい。石膏系固化材の中でも、特に硫酸カルシウム・1/2水和物が好ましい。硫酸カルシウム・1/2水和物(CaSO
4・1/2H
2O)は、半水石膏、焼石膏又はバサニ石(bassanite)とも呼ばれ、固化剤において、エトリンガイド生成の役割を有する成分である。
【0037】
石膏系固化材の好適な市販品の一例としては、チヨダウーデ社製、品名「エコハード」(登録商標)を挙げることができる。エコハードは石膏に高炉スラグを所定の割合で混合し、少量の凝集剤等の添加剤を含有するもの(いわゆる高炉セメント)である。
【0038】
また、セメント系固化剤の好適な市販品の一例としては、トクヤマ社製、品名「ハードキープ」(登録商標)を挙げることができる。
【0039】
成分(C)は、製造後の固化剤を構成する成分が十分に混練できるものが適宜選択され、例えば、嵩比重0.7〜0.8、pH8.0〜8.5のものが用いられる。
【0040】
成分(C)の重量割合は、成分(A)、(B)及び(C)の合計を100重量%としたときに、25〜60重量%であり、好適には、40〜55重量%である。成分(C)の重量割合が25重量%未満であると、エトリンガイドの生成量が少ないために固化が不十分になる問題があり、60重量%を超えるとエトリンガイドの生成に必要な水分を過剰に吸収してしまうため乾燥時聞が長くなる。成分(C)の重量割合が40〜55重量%であると、十分な量のエトリンガイドが生成し、強度の高いセメント固化物を得ることができる。
【0041】
その他の成分
固化剤は、本発明の目的を損なわない範囲で、成分(A)、(B)及び(C)以外の成分を含んでいてもよい。成分(A)、(B)及び(C)以外の成分として好ましいものとしては、ケイ酸化合物(以下、成分(D)と記載する場合がある。)及び高分子粉末(以下、成分(E)と記載する場合がある。)が挙げられる。
【0042】
成分(D)
成分(D)であるケイ酸化合物は、固化剤において、カルシウムシリケート水和物を生成し、粘土粒子を固化、硬化させる役割を有する成分である。成分(D)としては、無水シリカ(SiO
2)や含水シリカ(SiO
2・nH
2O)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等を用いることができる。
【0043】
この中でも、含水シリカ(SiO
2・nH
2O)は好ましいケイ酸化合物である。含水シリカの好適な市販品の一例としては、トクシル233(Oriental Silicas Corporation製)等のホワイトカーボンを挙げることができる。
【0044】
成分(D)の粒径は、固化剤を構成する成分が十分に混練できる範囲で適宜選択され、通常、平均粒子径が5μm〜5mm、好ましくは10μm〜150μmである。
【0045】
成分(D)の割合は、成分(A)、(B)及び(C)の合計を100重量%としたときに、3〜10重量%、好ましくは、4〜8重量%である。成分(D)が3重量%未満であると、吸水性が低下し、固化、硬化速度が遅くなるという問題があり、10重量%を超えると、固化剤の製造コストが高くなるという問題がある。
【0046】
成分(E)
成分(E)である高分子粉末は、固形状重金属被汚染物が含有する水分を吸収し、固化及び造粒を促進するための成分である。高分子粉末としては、吸水性を有する限りにおいて、任意のものを特に制限なく用いることができるが、好ましくは親水性の高分子であり、ポリアクリル酸若しくはポリメタクリル酸又はそれらの塩等のアクリル系の重合度の低いものが特に好ましい。成分(E)の割合は、成分(A)、(B)及び(C)の合計を100重量%としたときに、1〜20重量%、好ましくは、1〜15重量%、より好ましくは、1〜10重量%である。成分(E)が1重量%未満であると、吸水性が低下し、固化、硬化速度が遅くなるという問題があり、20重量%を超えると、固化剤の製造コストが高くなるという問題がある。
【0047】
固化剤の製造方法
固化剤は、成分(A)、(B)及び(C)、並びに必要に応じて成分(D)、(E)等の他の成分を、均一になるまで混合することにより製造することができる。混合順序や混合条件も、特段の問題がない限り任意であり、固化剤の構成成分のうち、いずれか2成分又は3成分以上を予め配合し、その後に残りの成分を混合してもよいし、一度に全部を混合してもよい。
【0048】
2.重金属成分を含有する固形状重金属被汚染物の処理方法
本発明の第2の実施の形態に係る重金属成分を含有する固形状重金属被汚染物の処理方法(以下、「固形状重金属被汚染物の処理方法」、「処理方法」と略称する場合がある。)は、下記の工程(1)〜(4)を含んでいる。
工程(1):重金属成分を含有する固形状重金属被汚染物と水とを混合して固形状重金属被汚染物スラリーを得る工程
工程(2):工程(1)で得られる固形状重金属被汚染物スラリーに対して、多硫化カルシウムCaS
x(x=2〜5)及びポリシリカ鉄を添加して混合して処理後スラリーを得る工程
工程(3):工程(2)で得られる処理後スラリーと粉末状セメントを混合し、セメント混合物を得る工程
工程(4):工程(3)で得られるセメント混合物と、本発明の第1の実施の形態に係る固化剤とを混合して固化し、セメント固化物を得る工程
【0049】
本実施の形態に係る固形状重金属被汚染物の処理方法によれば、重金属成分を含有する固形状重金属被汚染物を、重金属成分の溶出を抑制した状態でセメント粉末と共に固化することができる。
【0050】
処理対象となる固形状重金属被汚染物としては、重金属成分を含むものであればすべて対象になり、具体的には土壌、底質、汚泥や廃棄物等が挙げられる。除去対象となる重金属成分の限定はないが、環境省に告示される第二種特定有害物質に指定される重金属類である6価クロム、カドミウム、鉛、砒素、水銀から選択される1種以上の重金属成分を含有する固形状重金属被汚染物は、処理方法の好適な対象である。
【0051】
以下、工程(1)〜(4)のそれぞれについて詳細に説明する。
【0052】
工程(1)
工程(1)は、重金属成分を含有する固形状重金属被汚染物と水とを混合して固形状重金属被汚染物スラリーを得る工程である。
【0053】
固形状重金属被汚染物スラリーにおける固形状重金属被汚染物の混合割合は、固形状重金属被汚染物と水との合計を100重量%として、20〜80重量%であり、好ましくは30〜70重量%である。固形状重金属被汚染物スラリーにおける固形状重金属被汚染物の混合割合が20重量%未満の場合には、後述のセメント固化の際の水分量が多くなりすぎる場合があり、また、固形状重金属被汚染物の処理量が少なすぎて処理方法としては適さない。また、固形状重金属被汚染物スラリーにおける固形状重金属被汚染物の混合割合が80重量%を超えると、固形状重金属被汚染物スラリーの粘度が高くなりすぎて、後述する工程(2)で添加する多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄の均一混合が困難になる場合があり、また、固化反応の進行速度が低下するおそれがある。
【0054】
固形状重金属被汚染物スラリーを得るための固形状重金属被汚染物と水の混合方法は特に制限はなく、処理される固形状重金属被汚染物の量を考慮して、従来公知の混合装置を使用して均一になるように十分に混合すればよい。
【0055】
工程(2)
工程(2)は、工程(1)で得られる固形状重金属被汚染物スラリーに対して、多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄を添加して混合して処理後スラリーを得る工程である。本工程では、多硫化カルシウムとポリシリカ鉄とを同時に使用することにより、多硫化カルシウム由来のカルシウムイオンと、ポリシリカ鉄由来のケイ酸塩成分が結合したケイ酸カルシウムが形成され、固形状重金属被汚染物スラリーにおける重金属を含む成分(イオン性成分含む)を捕集して、比重の高い酸化鉄成分と共に沈降する。そのため、重金属成分を高濃度から極低濃度まで除去することができる。例えば、ポリシリカ鉄に含有される塩化第二鉄は、多硫化カルシウムに含まれる水酸化カルシウムと硫化物イオンとの反応で、塩化カルシウムと硫化鉄が生成される。また、ケイ酸ナトリウムに含有されるナトリウムイオンは、多硫化カルシウムに含まれる亜硫酸イオンと反応し、亜硫酸ナトリウムを生成する。
【0056】
多硫化カルシウム
多硫化カルシウムは、化学式CaS
xで表される化合物であり、還元性が高いため、溶液中で重金属イオンを還元し、硫化物や水酸化物の形態で沈澱させて無害化する効果を有する。例えば、6価クロム(Cr
6+)は、多硫化カルシウムにより、3価クロム(Cr
3+)に還元されるとともに、大部分は水酸化クロムとして沈析して、無害化(不溶化)される。水銀、鉛及びカドミウムは、硫化物により硫化金属を形成し無害化(不溶化)される。また、硫化水素ガスの発生については極度に発生率が低いことが検証されており、安全かつ有効に使用することができる。
【0057】
工程(2)において、多硫化カルシウムとして、化学式CaS
xにおいてx=2〜12で表されるものが使用できるが、x=2〜5であることが好ましい。このような組成の多硫化カルシウムは、例えば、特開2005−213375号公報記載の方法で製造することができる。
【0058】
また、多硫化カルシウムは水に溶解させて、多硫化カルシウム溶液として用いることもできる。多硫化カルシウム溶液とすることで、処理対象となる固形状重金属被汚染物スラリーへの混合が行いやすくなる。多硫化カルシウムを水に溶解させると、溶液中には、カルシウムとの硫化物イオン、水素との硫化水素イオン、亜硫酸水素イオン等のイオンが存在する。またカルシウムは水酸化カルシウムとしても存在する。なお、多硫化カルシウム溶液の溶媒として本発明の効果を損なわない範囲で、水以外の溶媒(例えば、エタノール等)を含んでいてもよい。
【0059】
処理方法に好適に使用できる多硫化カルシウムの市販品として、株式会社柳井化学工業製の多硫化カルシウムが挙げられる。
【0060】
ポリシリカ鉄
ポリシリカ鉄(以下、「PSI」と記載する場合がある。)は、鉄とシリカを主成分とし、通常(SiO
2)
n・(Fe
2O
3)で示される無機高分子である。
【0061】
ポリシリカ鉄は、水和反応により有害重金属類の水酸化物を生成捕集する効果、pH値を調整する効果を有する。例えば、ポリシリカ鉄に含有される塩化第二鉄は、多硫化カルシウムに含まれる水酸化カルシウムと硫化物イオンとの反応で、塩化カルシウムと硫化鉄が生成される。また、ケイ酸ソーダに含有されるナトリウムイオンは、多硫化カルシウムに含まれる亜硫酸イオンと反応し、亜硫酸ナトリウムを生成する。
また、pH値が7.5以下であると、硫化物が処理中に反応して硫化水素ガスが発生しやすくなり、処理後のpH値が11.0以上になると、沈殿した重金属が再溶出するおそれがあるが、ポリシリカ鉄は、廃水のpHを中性に調整する役割があるので、硫化物添加による硫化水素ガスの発生を抑制し、それにより多硫化カルシウムにより不溶化された有害重金属類の再溶出を抑制する。
【0062】
ポリシリカ鉄は、水溶液として用いることが好ましい。ポリシリカ鉄溶液は、鉄塩を含む水溶液、ケイ酸塩水溶液及び無機酸を混合した溶液として機能し、上述の多硫化カルシウム溶液と共に好適に使用することができる。
【0063】
ポリシリカ鉄溶液のSi/Feモル比は、0.03〜3であることが好ましい。
【0064】
工程(2)に好適に使用できる市販品として、タイキ薬品工業株式会社製の「PSI−025」(シリカ:鉄=0.25:1)、「PSI−050」、「PSI−100」等が挙げられる。
【0065】
固形状重金属被汚染物スラリーと多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄の接触方法
工程(2)では、重金属成分を含有する固形状重金属被汚染物スラリーと、多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄とを接触させる方法としては、以下の(i)〜(iii)の方法が挙げられる。
(i)固形状重金属被汚染物スラリーに多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄を一括添加して接触させる。
(ii)固形状重金属被汚染物スラリーに、まず多硫化カルシウムを添加して接触させ、次いでポリシリカ鉄を添加して接触させる。
(iii)固形状重金属被汚染物スラリーに、まずポリシリカ鉄を添加して接触させ、次いで多硫化カルシウムを添加して接触させる。
【0066】
なお、(ii)、(iii)のように多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄を分割添加する場合には、多硫化カルシウムとポリシリカ鉄とをそれぞれ一回で添加・混合することのほか、それぞれ少量ずつ、数回に分けて添加及び混合することもできる。分割添加する場合の添加量や、添加時間の間隔等は、事前に少量の固形状重金属被汚染物スラリーを使用した配合試験の結果によって決定すればよい。
【0067】
処理効率を高めるために、多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄(あるいは、これらを含む処理組成物)の添加・混合は、通常、数分から数十分の範囲で選択される。
【0068】
副生ガスの発生を抑制するためには、固形状重金属被汚染物スラリーと、多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄とを接触させる方法として上記の(ii)に記載の方法を用いることが好ましい。また、多硫化カルシウムを先に添加することで固形状重金属被汚染物スラリーはアルカリ性となり、ポリシリカ鉄を混合した時に発生する硫化水素ガスも抑制できるので、硫化物の効果を減少させることがなく、また作業環境及び周辺の環境における硫化水素の発生の問題も生じない。
【0069】
固形状重金属被汚染物スラリーの処理方法において、処理対象の固形状重金属被汚染物スラリーに多硫化カルシウム0.5〜30kg/m
3、ポリシリカ鉄を1〜25kg/m
3の割合で添加する。その際、溶出液のpHが7.5以上10.5未満となるように、多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄の添加量を調整することが好ましい。
【0070】
工程(3)
工程(3)は、工程(2)で得られる処理後スラリーと粉末状セメントを混合し、セメント混合物を得る工程である。ここでいう「セメント混合物」とは、固化していない流動性がある混合物を意味する。
【0071】
粉末状セメントにおけるセメントの種類に特に制限はなく、ポルトランドセメント、ボルトランドセメントを主体とする混合セメント、アルミナセメント等が使用できる。廃棄物処理の観点では、高炉スラグの微粉末とポルトランドセメントを混合した高炉セメントや、フライアッシュ(火力発電所等で発生する石炭の焼却灰)とボルトランドセメントを混合したフライアッシュセメントが、粉末状セメントとして好適である。粉末状セメントの好適な市販品の一例としては、麻生ファラージュ製高炉セメントが挙げられる。
【0072】
処理後スラリーと粉末状セメントの混合割合は、水分量が40〜65重量%(好適には45〜55重量%)、粉末状セメントが35〜60重量%(好適には40〜60重量%)となるように決定される。水分量が40重量%未満、粉末状セメントが60重量%超であると、粘度が高すぎて均一に混合することができない。また、水分量が65重量%超、粉末状セメントが35重量%未満であると、後工程で固化剤を添加しても十分な硬度まで固化しない場合がある。
【0073】
処理後スラリーと粉末状セメントの混合方法は特に制限はなく、処理される固形状重金属被汚染物の量や粉末状セメントの量を考慮して、従来公知の混合装置を使用して均一になるように十分に混合すればよい。また、水分が不足する場合は加水すればよい。
【0074】
工程(4)
工程(4)は、工程(3)で得られるセメント混合物と、本発明の第1の実施の形態に係る固化剤とを混合して固化し、セメント固化物を得る工程である。
処理方法の最大の特徴は、工程(4)にて固化剤として上記固化剤を使用することにある。
上述の通り、固化剤は、成分(A)、(B)及び(C)(好ましくは、更に成分(D)及び成分(E))を上述の特定の割合で含むことにより、重金属の溶出を抑制することができ、有害な重金属をセメント固化物としてより安定に固定化することが可能となる。
【0075】
セメント混合物に対する固化剤の割合は、セメント混合物が十分に固化する範囲で決定され、通常、セメント混合物100重量%に対し、50重量%であり、好適には40重量%である。なお、セメント混合物の固化の判断は、例えば、後述の実施例記載の方法で行うことができる。
【0076】
セメント固化物の用途
処理方法で得られるセメント固化物は、重金属成分を含有する固形状重金属被汚染物とセメント粉末とを、重金属成分の溶出を抑制して固化されているため、重金属成分による汚染の問題がない。そのため、処理方法で得られるセメント固化物は、コンクリート用骨材や藻礁ブロック、路肩材ブロック等として使用できる。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない
【0078】
実施例1:固化剤の製造
使用した試料用煤塵、薬剤は下記のとおりである。
(1)固化剤の構成成分
[成分(A)]
ペーパースラッジ灰として、ポピー製紙株式会社製のペーパースラッジ灰を使用した。
[成分(B):火山灰白土]
火山灰白土として、HALVO株式会社製、品名「デイフロック」(登録商標)を使用した。
[成分(C)」
石膏系固化材として、チヨダウーデ社製、品名「エコハード」(登録商標)を使用した。
[成分(D)]
ケイ酸化合物として、Oriental Silicas Corporation製、含水シリカ(SiO
2・nH
2O);ホワイトカーボン(トクシル233)を使用した。
(2)処理組成物成分
[多硫化カルシウム]
多硫化カルシウムは、株式会社柳井化学工業製、石炭硫黄合剤(CaS
x:x=2〜5)商品名「セグロ」(登録商標)(全硫化態硫黄:13%以上、カルシウムイオン濃度:7%以上、硫化水素イオン濃度:3,000ppm以上)を使用した。
[ポリシリカ鉄]
ポリシリカ鉄は、タイキ薬品工業株式会社製、「PSI−025」(シリカ:鉄=0.25:1(Si/Fe=0.25))を使用した。
[粉末状セメント]
粉末状セメントは、麻生ラファージュセメント社製、「高炉セメントB種」を使用した。
【0079】
(3)固化剤の製造
以下の固化剤1〜8を製造した。
【0080】
固化剤1
上記成分(A)40g、成分(B)1g、成分(C)54g、成分(D)5gを均一になるまで十分に混合することで、固化剤1を得た。
【0081】
固化剤2
上記成分(A)40g、成分(B)3g、成分(C)52g、成分(D)5gを均一になるまで十分に混合することで、固化剤2を得た。
【0082】
固化剤3
上記成分(A)40g、成分(B)5g、成分(C)50g、成分(D)5gを均一になるまで十分に混合することで、固化剤3を得た。
【0083】
固化剤4
上記成分(A)40g、成分(B)10g、成分(C)45g、成分(D)5gを均一になるまで十分に混合することで、固化剤4を得た。
【0084】
固化剤5
上記成分(A)50g、成分(B)15g、成分(C)30g、成分(D)5gを均一になるまで十分に混合することで、固化剤5を得た。
【0085】
固化剤6
上記成分(A)40g、成分(B)30g、成分(C)25g、成分(D)5gを均一になるまで十分に混合することで、固化剤6を得た。
【0086】
固化剤7
上記成分(A)40g、成分(B)40g、成分(C)15g、成分(D)5gを均一になるまで十分に混合することで、固化剤7を得た。
【0087】
固化剤8
上記成分(A)40g、成分(C)55g、成分(D)5gを均一になるまで十分に混合することで、固化剤8を得た。
【0088】
固化剤9
上記成分(A)45g、成分(B)1g、成分(C)54gを均一になるまで十分に混合することで、固化剤9を得た。
【0089】
表1に固化剤1〜9の成分組成を示す。なお、表1において、成分(A)、(B)及び(C)の重量割合は、これらの合計を100重量%としたときの各成分の重量割合(重量%)であり、成分(D)は、成分(A)、(B)及び(C)の重量割合の合計を100重量%としたときの成分(D)の重量割合(重量%)である。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例2:煤塵試料の固化試験
使用した煤塵試料、薬剤は下記のとおりである。
(1)煤塵試料
鉛含有煤塵(実サンプル、風乾物)
鉛化合物の含有量:0.5013重量%(蛍光X線解析、福岡工業技術センター)
【0092】
(2)評価実験
実験例1(比較例)
上記煤塵試料(50g)に水(20g)を添加して混合し、固形状重金属被汚染物スラリーを得た。得られた固形状重金属被汚染物スラリーに、上記多硫化カルシウム(セグロ)0.25mL、ポリシリカ鉄(PSI−025)2.5mLを添加し、処理済スラリーを得た。次いで、処理済スラリーに対し、セメント粉末(高炉セメントB種)15gを添加し、均一になるまで混合しセメント混合物を得た。得られたセメント混合物に、固化剤を添加することなく、所定のカップ(10×10×6cm)に入れ、常温で3日間養生して固化の程度を評価した。
【0093】
実験例2
実験例1と同様の方法で得た処理済スラリーに対し、セメント粉末(高炉セメントB種)15gを添加し、均一になるまで混合してセメント混合物を得た。次いで、固化剤1を20g添加し、均一になるまで混合した。固化剤を添加したセメント混合物を所定のカップ(10×10×6cm)に入れ、常温で3日間養生して固化の程度を評価した。
【0094】
実験例3
固化剤1(20g)に代えて、固化剤3(20g)を使用した以外は実験例2と同様の方法で、固化剤を添加したセメント混合物の固化評価を行った。
【0095】
実験例4
固化剤1(20g)に代えて、粉末状固化剤6(20g)を使用した以外は実験例2と同様の方法で、固化剤を添加したセメント混合物の固化評価を行った。
【0096】
実験例5(比較例)
固化剤1(20g)に代えて、固化剤7(20g)を使用した以外は実験例2と同様の方法で固化剤を添加したセメント混合物の固化評価を行った。
【0097】
実験例6(比較例)
煤塵(50g)への水添加量を30gとし、粉末セメント量を15gとし、固化剤1(20g)に代えて、固化剤8(20g)を使用した以外は実験例2と同様の方法で固化剤を添加したセメント混合物の固化評価を行った。
【0098】
表2に実験例1〜6の配合割合、固化評価(常温、3日後)の結果をまとめて示す。なお、表中の「CaS
x」は多硫化カルシウム(セグロ)、「PSI」は、ポリシリカ鉄(PSI−025)である。また、表2における評価基準は以下の通りであり、「O」及び「△」を固化剤による固化効果があると判断した。
(評価基準)
○:セメント混合物の固化が認められる。
△:セメント混合物は固化するが、若干柔らかい。
×:セメント混合物の固化が認められない。
【0099】
【表2】
【0100】
実験例7
上記試料用煤麗(50g)に水(15g)を添加して混合し、固形状重金属被汚染物スラリーを得た。得られた固形状重金属被汚染物スラリーに上記多硫化カルシウム(セグロ)0.25mL、ポリシリカ鉄(PSI−025)2.5mLを添加し、処理済スラリーを得た。次いで、セメント粉末(高炉セメントB種)15gを添加し、均一になるまで混合しセメント混合物を得た。次いで、固化剤1を20g添加し、均一になるまで混合した。得られた固化剤を添加したセメント混合物を所定のカップ(10×10×6cm)に入れ、常温で5日間養生して固化の程度を評価した。
【0101】
実験例8
煤塵(50g)への水添加量を43gとし、粉末セメント量を43gとした以外は実験例7と同様の方法で粉末状固化剤を添加したセメント混合物の固化評価を行った。
【0102】
実験例9
煤塵(50g)への水添加量を58gとし、粉末セメント量を58gとした以外は実験例7と同様の方法で固化剤を添加したセメント混合物の固化評価を行った。
【0103】
表3に実験例7〜9の配合割合、固化評価(常温、3日後)の結果をまとめて示す。なお、表3における評価基準は、上記表2と同様である。なお、固化状態の判定は、5日後に行った。
【0104】
【表3】
【0105】
実験例10
上記実験例9の試料を、更に20日以上常温で養生して、セメント固化物を得た。当該セメント固化物を、1mの高さからコンクリート床へ落下させた際の破損程度から、以下の基準でセメント固化物の硬度を評価した。なお、落下試験は同一サンプルで5回行った。
(評価基準)
○:セメント固化物に破損は認められない。
△:セメント固化物に一部破損が生じる。
×:セメント固化物の破損が大きい。
【0106】
実験例11
固化剤1(20g)に代えて、固化剤2(20g)を使用した以外は実験例9と同様の方法で固化剤を添加したセメント混合物を得た。得られたセメント混合物の固化評価(5日開)を行った後、更に20日以上常温で養生して得られたセメント固化物について実験例10と同様に落下試験を行った。
【0107】
実験例12
固化剤1(20g)に代えて、固化剤3(20g)を使用した以外は実験例9と同様の方法で固化剤を添加したセメント混合物を得た。得られたセメント混合物の固化評価(5日間)を行った後、更に20日以上常温で養生して得られたセメント固化物について実験例10と同様に落下試験を行った。
【0108】
実験例13
固化剤1(20g)に代えて、固化剤4(20g)を使用した以外は実験例9と同様の方法で粉末状固化剤を添加したセメント混合物を得た。得られたセメント混合物の固化評価(5日間)を行った後、更に20日以上常温で養生して得られたセメント固化物について実験例10と同様に落下試験を行った。
【0109】
実験例14
固化剤1(20g)に代えて、固化剤5(20g)を使用した以外は実験例9と同様の方法で固化剤を添加したセメント混合物を得た。得られたセメント混合物の固化評価(5日間)を行った後、更に20日以上常温で養生して得られたセメント固化物について実験例10と同様に落下試験を行った。
【0110】
表4に実験例10〜14の固化評価の結果をまとめて示す。なお、表4における評価基準は、上記実験例10に示すとおりである。
【0111】
【表4】
【0112】
実施例3:燃焼灰を用いた実機試験
試験例1
鉛及びクロムを含有する燃焼灰(900kg、含水率31.8%)に水(90kg)を添加して混合し、固形状重金属被汚染物スラリーを得た。得られた固形状重金属被汚染物スラリーに、多硫化カルシウム(セグロ)1.28kgを添加し5分間撹拌、次いでポリシリカ鉄(PSI−025)1.11kgを添加し3分間撹拌し、処理済スラリーを得た。次いで、処理済スラリーに対し、セメント粉末(高炉セメントB種)40kgを添加し、60秒間混合しセメント混合物を得た。得られたセメント混合物に、固化剤1(2.7kg)を添加し60秒間撹拌後、常温で7日間又は28日間養生した。IPC−MSを用い、鉛及びクロムの溶出量を評価した。溶出試験の検液の作成は環境庁告示第46号(平成3年8月23日)付表に掲げる方法により作成した。また、その検液の測定方法は、環境庁告示第18号、19号(平成15年3月6日)の方法を採用した。
【0113】
試験例2
上記燃焼灰(900kg)に、多硫化カルシウム(セグロ:登録商標)1.28kgを添加し5分間撹拌、次いでポリシリカ鉄(PSI−025)1.11kgを添加し3分間撹拌し、処理済スラリーを得た。次いで、処理済スラリーに対し、セメント粉末(高炉セメントB種)40kgを添加し、60秒間混合しセメント混合物を得た。得られたセメント混合物に、固化剤1(2.7kg)を添加し60秒間撹拌後、常温で7日間又は28日間養生した。IPC−MSを用い、鉛及びクロムの溶出量を評価した。溶出試験の検液は、環境庁告示第46号(平成3年8月23日)付表に掲げる方法により作成した。また、その検液の測定方法は、環境庁告示第18号、19号(平成15年3月6日)の方法を採用した。
【0114】
試験例3
上記燃焼灰(900kg)に多硫化カルシウム(セグロ:登録商標)1.28kgを添加し30秒間撹拌、次いでポリシリカ鉄(PSI−025)1.11kgを添加し15秒間撹拌し、処理済スラリーを得た。次いで、処理済スラリーに対し、セメント粉末(高炉セメントB種)40kgを添加し、30秒間混合し、セメント混合物を得た。得られたセメント混合物に、固化剤1(2.7kg)を添加し15秒間撹拌後、常温で7日間又は28日間養生した。IPC−MSを用い、鉛及びクロムの溶出量を評価した。溶出試験の検液は、環境庁告示第46号(平成3年8月23日)付表に掲げる方法により作成した。また、その検液の測定には、環境庁告示第18号、19号(平成15年3月6日)の方法を採用した。
【0115】
表5に試験例1〜3の配合割合、固化評価(常温、7日後、28日後)の結果をまとめて示す。いずれの場合も、鉛及び六価クロムの溶出量は、土壌汚染対策法の基準値(鉛:0.0mg/L、六価クロム:0.05mg/L)を下回っていると共に、28日養生後の溶出量が、7日間養生後の溶出量を下回っていることが確認された。
【0116】
【表5】
【0117】
実施例4:固形状重金属被汚染物の処理方法における多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄の添加量の効果
実験例15(比較例)
実施例3で使用したのとは異なる燃焼灰200cm
3(228g)を500mLビーカーに取り、水120mLを加え、樹脂製撹拌棒を使って手で撹拌した。その後、処理物を粒状化するために、焼却灰に対して8%(w/v)の高炉セメントを添加後1分間撹拌し、次いで、焼却灰に対して0.5%(w/v)の固化剤1を添加し、粒状化の状況を見ながら1分間以上撹拌した。その処理物をトレーに広げて7日間常温で養生風乾した後、株式会社環境分析技術センターに依頼して溶出試験を実施し、対象重金属の溶出量を測定した。溶出試験の検液は、環境庁告示第46号(平成3年8月23日)付表に掲げる方法により作成した。また、その検液の測定には、環境庁告示第18号、19号(平成15年3月6日)の方法を採用した。
【0118】
実験例16
上記燃焼灰200cm
3(228g)を500mLビーカーに取り、水120mLを加え、樹脂製撹拌棒を使って手で撹拌しながら、多硫化カルシウムを、燃焼灰に対し、0.5L/m
3の割合で添加した。多硫化カルシウムの添加後、更に5分間撹拌した。次いで同様に撹拌しながら、PSIを多硫化カルシウムと同様の割合で添加し、添加後も継続して3分間撹拌した。その後、処理物を粒状化するために、焼却灰に対して8%(w/v)の高炉セメントを添加後1分間撹拌し、次いで、焼却灰に対して0.5%(w/v)の固化剤1を添加し、粒状化の状況を見ながら1分間以上撹拌した。その処理物をトレーに広げて7日間常温で養生風乾した後、株式会社環境分析技術センターに依頼して溶出試験を実施し、対象重金属の溶出量を測定した。溶出試験の検液は、環境庁告示第46号(平成3年8月23日)付表に掲げる方法により作成した。また、その検液の測定には、環境庁告示第18号、19号(平成15年3月6日)の方法を採用した。
【0119】
実験例17
上記燃焼灰200cm
3(228g)を500mLビーカーに取り、水120mLを加え、樹脂製撹拌棒を使って手で撹拌しながら、多硫化カルシウムを、燃焼灰に対し、1L/m
3の割合で添加した。多硫化カルシウムの添加後、更に5分間撹拌した。次いで同様に撹拌しながら、PSIを多硫化カルシウムと同様の割合で添加し、添加後も継続して3分間撹拌した。その後、処理物を粒状化するために、焼却灰に対して8%(w/v)の高炉セメントを添加後1分間撹拌し、次いで、焼却灰に対して0.5%(w/v)の固化剤1を添加し、粒状化の状況を見ながら1分間以上撹拌した。その処理物をトレーに広げて7日間常温で養生風乾した後、株式会社環境分析技術センターに依頼して溶出試験を実施し、対象重金属の溶出量を測定した。溶出試験の検液は、環境庁告示第46号(平成3年8月23日)付表に掲げる方法により作成した。また、その検液の測定には、環境庁告示第18号、19号(平成15年3月6日)の方法を採用した。
【0120】
実験例18
上記燃焼灰200cm
3(228g)を500mLビーカーに取り、水120mLを加え、樹脂製撹拌棒を使って手で撹拌しながら、多硫化カルシウムを、燃焼灰に対し、3L/m
3の割合で添加した。多硫化カルシウムの添加後、更に5分間撹拌した。次いで同様に撹拌しながら、ポリシリカ鉄を多硫化カルシウムと同様の割合で添加し、添加後も継続して3分間撹拌した。その後、処理物を粒状化するために、焼却灰に対して8%(w/v)の高炉セメントを添加後1分間撹拌し、次いで、焼却灰に対して0.5%(w/v)の固化剤1を添加し、粒状化の状況を見ながら1分間以上撹拌した。その処理物をトレーに広げて7日間常温で養生風乾した後、株式会社環境分析技術センターに依頼して溶出試験を実施し、対象重金属の溶出量を測定した。溶出試験の検液は、環境庁告示第46号(平成3年8月23日)付表に掲げる方法により作成した。また、その検液の測定には、環境庁告示第18号、19号(平成15年3月6日)の方法を採用した。
【0121】
表6に実験例15〜18の試験結果(溶出検液中の鉛含有量及び六価クロム含有量並びに溶出検液のpH)をまとめて示す。なお、表6中、「***」は検出限界以下であることを示す。多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄の添加量の増大に伴い、鉛及びクロムの溶出量が共に減少していることがわかる。
【0122】
【表6】
【0123】
実施例5:セレン含有鋳物砂の不溶化試験
実験例19〜24
処理対象物の鋳物砂廃棄物1kgを容器に取り、所定量(各実験例における添加量は表7を参照。以下同じ。)の水を加え、樹脂製撹拌棒を使って手で撹拌しながら所定量の多硫化カルシウムを添加した。多硫化カルシウム添加後更に5分間撹拌した。次いで同様に撹拌しながら、多硫化カルシウムと同量のポリシリカ鉄を添加し、添加後も継続して3分間撹拌した。その後、処理物を粒状化するために、所定量の高炉セメントを添加後1分間撹拌し、次いで所定量の固形剤1を添加して粒状化の状況を見ながら1分間以上撹拌した。その処理物をトレーに広げて7日間常温で養生風乾した後、株式会社環境分析技術センターに依頼して溶出試験を実施し、対象重金属の溶出量を測定した。溶出試験の検液は、環境庁告示第46号(平成3年8月23日)付表に掲げる方法により作成した。また、その検液の測定には、環境庁告示第18号、19号(平成15年3月6日)の方法を採用した。
【0124】
表7に実験例19〜24の試験結果(溶出検液中の鉛及びセレンの含有量)をまとめて示す。なお、実験例19の「1次ショット」は、ショットブラストにより鋳物表面より除去した鋳物砂廃棄物を意味し、実験例24の「鋳物砂集塵」は、型ばらし工程において集塵機で回収した鋳物砂廃棄物を意味する。また、表7中、「N.D.」は測定を行っていないことを示す。全ての実験例において、処理後の鉛及びセレンの溶出量が、処理前のそれよりも大幅に減少していることがわかる。
【0125】
【表7】
【0126】
実施例6:煤塵の粒状化試験
鉛及びクロムを含有する煤塵(900kg、含水率29%)に、煤塵の容量の50%程度の体積の水を添加して混合し、固形状重金属被汚染物スラリーを得た。得られた固形状重金属被汚染物スラリーに、多硫化カルシウム(セグロ)9kgを添加し5分間撹拌、次いでポリシリカ鉄(PSI−025)9kgを添加し3分間撹拌し、処理済スラリーを得た。次いで、処理済スラリーに対し、セメント粉末(高炉セメントB種)36kgを添加し、60秒間混合しセメント混合物を得た。得られたセメント混合物に、固化剤1(2.7kg)を添加し60秒間撹拌後、常温で7日間又は14日間養生した。IPC−MSを用い、鉛及びクロムの溶出量を評価した。溶出試験の検液は、環境庁告示第46号(平成3年8月23日)付表に掲げる方法により作成した。また、その検液の測定には、環境庁告示第18号、19号(平成15年3月6日)の方法を採用した。
【0127】
表8に、養生前、7日間養生後及び14日間養生後の溶出液の評価結果をまとめて示す。なお、表8中、「***」は検出限界以下であったことを示す。
【0128】
【表8】