【実施例1】
【0019】
<製品を製造する工場における、工程相互の順序関係などの説明>
本発明の実施例にかかる生産計画の作成システム及び作成プログラムを説明するに先立ち、工場において製品を製造する工程相互の順序関係などを先に説明する。
なお船舶のブロックなどを製造する工場においては、多数の工程が複雑な順番に並んでいるが、ここでは理解を容易にするため、簡略化した製造工程を示す。
【0020】
図1は、工場において製品を製造する場合の、工程相互の順序関係などの一例を示すものである。
同図に示すように、工程1の作業を最も先に開始し、工程1の作業が終了してから工程2の作業を開始し、工程2の作業が終了してから工程3の作業を開始し、工程3の作業が終了してから工程4の作業を開始し、工程4の作業が終了してから工程5の作業を開始する。
また、工程2の作業が終了してから工程6の作業を開始し、工程6の作業が終了してから工程7の作業を開始する。
工程5及び工程7の作業が終了してから工程8の作業を開始する。
更に、工程8の作業が終了してから工程11の作業を開始し、工程11の作業が終了してから工程12の作業を開始し、工程12の作業が終了してから工程13の作業を開始する。
以上が、この例における工程の相互の順序関係の制約であり、各工程に「工程相互の順序関係」の制約が課されている。
【0021】
また、この例では、製品を製造する場合に、製造開始時期T1と、検査時期T2と、製造終了時期T3が予め決まっている。
「製造開始時期T1」は、この製造開始時期以後に製品の製造作業を開始できることを示す時期である。
「製造終了時期T3」は、この製造終了時期以前までに製造作業を終了して製品を完成させなければならないことを示す時期である。
「検査時期T2」は、例えば外部の検査員により製造途中の中間製品を検査する時期であり、検査時期が予め決まった時期に設定されていることを示す時期である。
このように、作業の開始時期や終了時期を規制する予め決まっている時期のことを、本明細書では、「基準時期」と規定する。
【0022】
「基準時期」の一つである「製造開始時期T1」が決まっているので、工程1の作業の開始時期は製造開始時期T1以後でなければならない。
「基準時期」の一つである「検査時期T2」が決まっているので、工程8の作業の終了時期は検査時期T2以前でなければならない。
「基準時期」の一つである「検査時期T2」が決まっているので、工程11の作業の開始時期は検査時期T2以後でなければならない。
「基準時期」の一つである「製造終了時期T3」が決まっているので、工程13の作業の終了時期は製造終了時期T3以前でなければならない。
【0023】
上記のように基準時期T1,T2,T3の制約を守りつつ、リソースの数量を適正化して生産計画を作成するため、
工程1には、工程1での作業の開始時期を、製造開始時期T1とする制約条件(作業開始時期の制約条件)が課され、
工程8には、工程8での作業の終了時期を、検査時期T2とする制約条件(作業終了時期の制約条件)が課され、
工程11には、工程11での作業の開始時期を、検査時期T2とする制約条件(作業開始時期の制約条件)が課され、
工程13には、工程13での作業の終了時期を、製造終了時期T3とする制約条件(作業終了時期の制約条件)が課されている。
【0024】
また、時間的に先行する基準時期と時間的に後行する基準時期との間の期間を、本明細書では「ピリオド」と規定する。
図1の例では、製造開始時期T1と検査時期T2との間の期間が第1ピリオドP1であり、検査時期T2と製造終了時期T3との間の期間が第2ピリオドP2である。
【0025】
結局、ピリオドP1,P2の最初の工程である工程1、11には、「作業開始時期の制約条件」が課され、ピリオドP1,P2の最後の工程である工程8、13には、「作業終了時期の制約条件」が課される。
換言すると、「ピリオド」とは、「作業開始時期の制約条件」が課された工程の作業開始時期から、「作業終了時期の制約条件」が課された工程の作業終了時期までの期間であるといえる。
【0026】
<実施例1に係る生産計画の作成システムのシステム構成>
図2は、実施例1に係る生産計画の作成システムを示すシステム構成図である。この生産計画の作成システム1は、入力装置10と演算装置(コンピュータ)20と出力装置30を有している。
【0027】
<入力装置による入力データ>
入力装置10は、次に示すようなデータを演算装置20に入力する。
(1)製品を製造する工場における、工程相互の順序関係。
「工程相互の順序関係」とは、製品を製造するために作業を行う工程の順番である。例えば、
図1に示すような「工程相互の順序関係」を入力する。
(2)基準時期。
「基準時期」とは、作業の開始時期や作業の終了時期を規制する予め決まっている時期である。例えば、
図1に示すような、製造開始時期T1、検査時期T2、製造終了時期T3を入力する。
(3)作業開始時期の制約条件が課されている工程、及び、その作業開始時期の制約条件の内容。
例えば、工程1には、工程1での作業の開始時期を、製造開始時期T1とする制約条件(作業開始時期の制約条件)が課されていること、工程11には、工程11での作業の開始時期を、検査時期T2とする制約条件(作業開始時期の制約条件)が課されていることを入力する。
(4)作業終了時期の制約条件が課されている工程、及び、その作業終了時期の制約条件の内容。
例えば、工程8には、工程8での作業の終了時期を、検査時期T2とする制約条件(作業終了時期の制約条件)が課されていること、工程13には、工程13での作業の終了時期を、製造終了時期T3とする制約条件(作業終了時期の制約条件)が課されていることを入力する。
(5)第1条件C1
第1条件C1は、各工程が「工程相互の順序関係」を守り、且つ、作業開始時期の制約条件が課されている工程が、作業開始時期の制約条件を満たすことであり、この第1条件C1を入力する。
(6)第2条件C2
第2条件C2は、作業終了時期の制約条件が課されている工程が、作業終了時期の制約条件を満たすことであり、この第2条件C2を入力する。
【0028】
<演算装置の各機能部>
演算装置20は、ピリオド判定機能部21と、予備的生産計画作成機能部22と、最終的生産計画作成機能部23を有している。
演算装置20の各機能部21,22,23は、ソフトウエア(プログラム)とハードウエア資源(コンピュータ)とが共働して、下記に示す情報演算をするものである。
【0029】
<ピリオド判定機能部の演算処理>
演算装置20のピリオド判定機能部21は、基準時期である、製造開始時期T1、検査時期T2、製造終了時期T3の時間的な前後関係を基に、時期T1から時期T2を第1ピリオドP1と判定し、時期T2から時期T3を第2ピリオドP2と判定する。
【0030】
<予備的生産計画作成機能部及び最終的生産計画作成機能部>
演算装置20の予備的生産計画作成機能部22及び最終的生産計画作成機能部23では、各ピリオドP1,P2毎に、生産計画を作成する。ここでは、
図3のフローチャートも参照しつつ、第1ピリオドP1の生産計画の作成手順を詳細に説明する。
【0031】
第1ピリオドP1の生産計画は、予備的生産計画作成機能部22による予備的生産計画の作成手順と、最終的生産計画作成機能部23による最終的生産計画の作成手順を経て、作成される。
【0032】
<予備的生産計画作成機能部の演算処理>
予備的生産計画作成機能部22による予備的生産計画の作成手順では、工程1から工程8に投入する、予め決めた任意の数量のリソースを設定する(
図3のステップ1)。各リソースの数量は、数理計画法により決定する。
【0033】
それぞれリソースの数量が投入された工程1から工程8について、第1条件C1、即ち、工程1から工程8が「工程相互の順序関係」を守り、且つ、作業開始時期の制約条件が課されている工程1が、作業開始時期の制約条件を満たす、ように生産計画を計算・策定する(ステップ2)。
【0034】
具体的には、工程1での作業開始時期が製造開始時期T1と一致するように、工程1を割り付ける。
次に、工程1の後に工程2を割り付け、工程2の後に工程3を割り付け、工程3の後に工程4を割り付け、工程4の後に工程5を割り付ける。
また、工程2の後に工程6の割り付け、工程6の後に工程7を割り付ける。
最後に、工程5及び工程7の後に、工程8を割り付ける。
【0035】
上記の割り付けにより第1条件C1を満たさない場合には(ステップ3)、ステップ1に戻ってから、ステップ2に進み、全ての工程1から工程8が、第1条件C1を満たすまで、ステップ1からステップ3を繰り返す。
【0036】
図4は、予備的生産計画の作成手順により作成した、予備的生産計画を示すガントチャートである。
図4の例では、
・工程1から工程8が「工程相互の順序関係」を守ることができ、
・第1ピリオドP1の前側の基準時間である製造開始時期T1に、先頭の工程1の作業開始時期が一致する。
しかし、
・第1ピリオドP1の後側の基準時間である検査時期T2の後に、最後の工程8の作業終了時期がきてしまう。
【0037】
<最終的生産計画作成機能部の演算処理>
予備的生産計画の作成手順により作成した、
図4に示す予備的生産計画ができたら、最終的生産計画作成機能部23による最終的生産計画の作成手順を実行する。
【0038】
最終的生産計画の作成手順では、生産計画が、第2条件C2、即ち、作業終了時期の制約条件が課されている工程8が、作業の終了時期の制約条件を満たしているかどうかを判定する(ステップ4)。具体的には、工程8での作業の終了時期が検査時期T2と一致しているかどうかを判定する。
【0039】
図4に示す予備的生産計画では、第2条件C2を満たしていない。そこで、リソースの数量を増加することにより、第2条件C2の条件を満たすようにすることができる、特定の1つの工程の選択(ステップ5)と、選択した工程での増加させるリソースの数量を決める(ステップ6)。ステップ5,6において、選択する1つの工程と、選択した工程での増加させるリソースの数量は、数理計画法により決定する。
【0040】
例えば、クリティカルパス上の工程2のリソースの数量を増加させる。工程2のリソースを増加させていけば、工程2の期間が短くなり、これにより工程8の作業の終了時期が検査時期T2に近づいていくため、工程2でのリソースの数量の増加量を調整することにより、第2条件C2を満たすようにすることができる。
【0041】
工程2のリソースを増加させても第2条件C2を満たさない場合には、ステップ5,S6を繰り返し、トライ&エラー的に、特定の1つの工程のリソース数量を増加させる。
このトライ&エラー的に行う場合にも、数理計画法により、1つの工程の選択と、選択した工程での増加させるリソースの数量を決定する。
【0042】
最終的に第2条件C2を満たしたら、即ち、工程8での作業の終了時期が検査時期T2と一致したら、生産計画の作成を終了する(ステップ7)。
【0043】
図5は、最終的生産計画の作成手順を経て作成した、第1ピリオドP1における最終的生産計画を示すガントチャートである。
図5の例では、
・工程1から工程8が「工程相互の順序関係」を守ることができ、
・第1ピリオドP1の前側の基準時間である製造開始時期T1に、先頭の工程1の作業開始時期が一致し、
更に、
・第1ピリオドP1の後側の基準時間である検査時期T2に、最後の工程8の作業終了時期が一致し、
・工程1〜工程8に投入するリソースの数量を必要最小限にする、
ことができる。
【0044】
なお第2ピリオドP2の最終的生産計画も、第1ピリオドP1のときの演算処理と同様に、予備的生産計画の作成手順により予備的生産計画を作成してから、最終的生産計画の作成手順を経て、最終的生産計画を作成することができる。
【0045】
作成された第1ピリオドP1の最終的生産計画(
図5参照)及び第2ピリオドP2の最終生産計画は、出力装置30により出力されて、画面表示されたり、プリントアウトされたりする。
【実施例2】
【0046】
<実施例2に係る生産計画の作成システムのシステム構成>
図6は、実施例2に係る生産計画の作成システムを示すシステム構成図である。この生産計画の作成システム101は、入力装置110と演算装置(コンピュータ)120と出力装置130を有している。
【0047】
<入力装置による入力データ>
入力装置110は、次の(1)から(8)に示すようなデータを演算装置120に入力する。
(1)製品を製造する工場における、工程相互の順序関係。
「工程相互の順序関係」とは、製品を製造するために作業を行う工程の順番である。例えば、
図1に示すような「工程相互の順序関係」を入力する。
(2)基準時期。
「基準時期」とは、作業の開始時期や作業の終了時期を規制する予め決まっている時期である。例えば、
図1に示すような、製造開始時期T1、検査時期T2、製造終了時期T3を入力する。
(3)作業開始時期の制約条件が課されている工程、及び、その作業開始時期の制約条件の内容。
例えば、工程1には、工程1での作業の開始時期を、製造開始時期T1とする制約条件(作業開始時期の制約条件)が課されていること、工程11には、工程11での作業の開始時期を、検査時期T2とする制約条件(作業開始時期の制約条件)が課されていることを入力する。
(4)作業終了時期の制約条件が課されている工程、及び、その作業終了時期の制約条件の内容。
例えば、工程8には、工程8での作業の終了時期を、検査時期T2とする制約条件(作業終了時期の制約条件)が課されていること、工程13には、工程13での作業の終了時期を、製造終了時期T3とする制約条件(作業終了時期の制約条件)が課されていることを入力する。
(5)第1条件C1
第1条件C1は、各工程が「工程相互の順序関係」を守り、且つ、作業開始時期の制約条件が課されている工程が、作業開始時期の制約条件を満たすことであり、この第1条件C1を入力する。
(6)第2条件C2
第2条件C2は、作業終了時期の制約条件が課されている工程が、作業終了時期の制約条件を満たすことであり、この第2条件C2を入力する。
【0048】
(7)前詰め状態で割り付ける各工程と、前詰め状態で割り付ける際に最初に割り付ける工程
前詰め状態で割り付ける各工程とは、各工程を割り付けるときに、製品を製造するために作業を行う工程の順番に沿い割り付けを行う工程である。
例えば、工程1,工程2,工程3,工程6は前詰めする工程であり、工程1の後に工程2を割り付け、工程2の後に工程3,6を割り付けることを入力する。
また例えば、工程11は前詰めする工程であることを入力する。
この前詰め状態で割り付ける際に最初に割り付ける工程とは、例えば、作業開始時期を製造開始時期T1とする作業開始時期の制約条件が課されている工程1や、作業開始時期を検査時期T2とする作業開始時期の制約条件が課されている工程11であることを入力する。
【0049】
(8)後詰め状態で割り付ける各工程と、後詰め状態で割り付ける際に最初に割り付ける工程
後詰め状態で割り付ける各工程とは、各工程を割り付けるときに、製品を製造するために作業を行う工程の順番とは逆順で割り付けを行う工程である。
例えば、工程8,工程7,工程5,工程4は後詰めする工程であり、工程8の後に工程5,7を割り付け、工程5の後に工程4を割り付けることを入力する。
また例えば、工程13,工程12は後詰めする工程であり、工程13の後に工程12を割り付けることを入力する。
この後詰め状態で割り付ける際に最初に割り付ける工程とは、例えば、作業終了時期を検査時期T2とする作業終了時期の制約条件が課されている工程8や、作業終了時期を製造終了時期T3とする作業終了時期の制約条件が課されている工程13であることを入力する。
【0050】
<演算装置の各機能部>
演算装置120は、ピリオド判定機能部121と、予備的生産計画作成機能部122と、最終的生産計画作成機能部123を有している。
演算装置120の各機能部121,122,123は、ソフトウエア(プログラム)とハードウエア資源(コンピュータ)とが共働して、下記に示す情報演算をするものである。
【0051】
<ピリオド判定機能部の演算処理>
演算装置120のピリオド判定機能部121は、基準時期である、製造開始時期T1、検査時期T2、製造終了時期T3の時間的な前後関係を基に、時期T1から時期T2を第1ピリオドP1と判定し、時期T2から時期T3を第2ピリオドP2と判定する。
【0052】
<予備的生産計画作成機能部及び最終的生産計画作成機能部>
演算装置120の予備的生産計画作成機能部122及び最終的生産計画作成機能部123では、各ピリオドP1,P2毎に、生産計画を作成する。ここでは、
図7のフローチャート及び
図8のガントチャートも参照しつつ、第1ピリオドP1の生産計画の作成手順を詳細に説明する。
【0053】
第1ピリオドP1の生産計画は、予備的生産計画作成機能部122による予備的生産計画の作成手順と、最終的生産計画作成機能部123による最終的生産計画の作成手順を経て、作成される。
【0054】
<予備的生産計画作成機能部の演算処理>
予備的生産計画作成機能部122による予備的生産計画の作成手順では、工程1から工程8に投入する、予め決めた任意の数量のリソースを設定する(
図7のステップ11)。各リソースの数量は、数理計画法により決定する。
【0055】
それぞれリソースの数量が投入された工程1から工程8のうち、前詰めする各工程1,工程2,工程3,工程6を前詰め状態で順に割り付ける。このとき、工程1を最初に割り付け、工程1の作業開始時期を製造開始時期T1と一致させる(ステップ12)。
また、それぞれリソースの数量が投入された工程1から工程8のうち、後詰めする各工程8,工程7,工程5,工程4を後詰め状態で順に割り付ける。このとき、工程8を最初に割り付け、工程8の作業終了時期を検査時期T2と一致させる(ステップ12)。
【0056】
上記の割り付けにより、
第1条件C1、即ち、工程1から工程8が「工程相互の順序関係」を守り、且つ、作業開始時期の制約条件が課されている工程1が、作業開始時期の制約条件を満たしているかどうか、具体的には、工程1での作業の開始時期が製造開始時期T1と一致しているかどうか、
且つ、
第2条件C2、即ち、作業終了時期の制約条件が課されている工程8が、作業の終了時期の制約条件を満たしているかどうか、具体的には、工程8での作業の終了時期が検査時期T2と一致しているかどうかを判定する(ステップ13)。
【0057】
上記の割り付けにより第1条件C1及び第2条件C2を満たさない場合には(ステップ13)、ステップ11に戻ってから、ステップ12に進み、全ての工程1から工程8が、第1条件C1及び第2条件C2を満たすまで、ステップ11からステップ13を繰り返す。
【0058】
図8(a)は、第1条件C1及び第2条件C2を満たした割り付けをして得た、予備的生産計画を示すガントチャートである。
図8(a)の例では、工程1から工程8が「工程相互の順序関係」を守り、工程1での作業の開始時期が製造開始時期T1と一致し、工程8での作業の終了時期が検査時期T2と一致している。
しかし、前詰めした工程1,2,3と後詰めした工程8,5,4との間に余裕時間M1があり、前詰めした工程6と後詰めした工程7との間に余裕時間M2がある。
複数の余裕時間がある場合には、時間が最も短いものを絶対余裕時間という。この例では、2つの余裕時間M1,Mのうち時間の短い余裕時間M1を絶対余裕時間という。
余裕時間があるということは、各工程に投入したリソースの数量が多すぎる、ということを意味する。
【0059】
<最終的生産計画作成機能部の演算処理>
予備的生産計画の作成手順により作成した、
図8(a)に示す予備的生産計画ができたら、最終的生産計画作成機能部123による最終的生産計画の作成手順を実行する。
【0060】
最終的生産計画の作成手順では、余裕時間の有無を判定し(ステップ14)、余裕時間が有る場合には、絶対余裕時間の時間変動に無関係な工程、無関係な工程がないときには絶対余裕時間の時間変動に対する影響の少ない工程を1つ選択し(ステップ15)、選択した工程で減少させるリソースの数量を決める(ステップ16)。ステップ15,16において、選択する1つの工程と、選択した工程での減少させるリソースの数量は、数理計画法により決定する。
そして、余裕時間が無くなるまで、ステップ14からステップ16の処理を繰り返す。
【0061】
ステップ14からステップ16の処理を繰り返す具体例を示すと次の通りである。
図8(a)に示す予備的生産計画の工程7のリソースの数量を減少させて、工程7の作業時間を伸ばしたものが、
図8(b)に示す生産計画である。
図8(b)の生産工程は
図8(a)の生産工程に対して、前詰めした工程1,2,3と後詰めした工程8,5,4と間の余裕時間M1は変化しないが、前詰めした工程6と後詰めした工程7との間の余裕時間はM2からM2−1と短くなる。
【0062】
図8(b)に示す予備的生産計画の工程2のリソースの数量を減少させて、工程2の作業時間を伸ばしたものが、
図8(c)に示す生産計画である。
図8(c)の生産工程は
図8(b)の生産工程に対して、前詰めした工程1,2,3と後詰めした工程8,5,4と間の余裕時間はM1からM1−1と短くなり、前詰めした工程6と後詰めした工程7との間の余裕時間はM2−1からM2−2と短くなる。
【0063】
図8(c)に示す予備的生産計画の工程8のリソースの数量を減少させて、工程8の作業時間を伸ばしたものが、
図8(d)に示す生産計画である。
図8(d)の生産工程は
図8(c)の生産工程に対して、前詰めした工程1,2,3と後詰めした工程8,5,4と間の余裕時間はM1−1から0時間となり、前詰めした工程6と後詰めした工程7との間の余裕時間はM2−2から0時間となる。
【0064】
図8(d)に示すように余裕時間が無くなったら、生産計画の作成を終了する(ステップ17)。
【0065】
図8(d)は、最終的生産計画の作成手順を経て作成した、第1ピリオドP1における最終的生産計画を示すガントチャートである。
図8(d)の例では、
・工程1から工程8が「工程相互の順序関係」を守ることができ、
・第1ピリオドP1の前側の基準時間である製造開始時期T1に、先頭の工程1の作業開始時期が一致し、
・第1ピリオドP1の後側の基準時間である検査時期T2に、最後の工程8の作業終了時期が一致し、
・前詰めした工程と後詰めした工程との間の余裕時間がなくなり、
・工程1〜工程8に投入するリソースの数量を必要最小限にする、
ことができる。
【0066】
なお第2ピリオドP2の最終的生産計画も、第1ピリオドP1のときの演算処理と同様に、予備的生産計画の作成手順により予備的生産計画を作成してから、最終的生産計画の作成手順を経て、最終的生産計画を作成することができる。
【0067】
作成された第1ピリオドP1の最終的生産計画(
図8(d)参照)及び第2ピリオドP2の最終生産計画は、出力装置130により出力されて、画面表示されたり、プリントアウトされたりする。