特許第5963212号(P5963212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テクノロジカル リソーシーズ プロプライエタリー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許5963212-直接製錬法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963212
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】直接製錬法
(51)【国際特許分類】
   C21B 11/08 20060101AFI20160721BHJP
   F27D 3/18 20060101ALI20160721BHJP
   F27B 3/18 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C21B11/08
   F27D3/18
   F27B3/18
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-552796(P2013-552796)
(86)(22)【出願日】2012年2月9日
(65)【公表番号】特表2014-508861(P2014-508861A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】AU2012000125
(87)【国際公開番号】WO2012106769
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2015年2月6日
(31)【優先権主張番号】2011900420
(32)【優先日】2011年2月9日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】507123202
【氏名又は名称】テクノロジカル リソーシーズ プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ドライ,ロドニー ジェイムズ
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/088740(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/031116(WO,A1)
【文献】 特表2003−531294(JP,A)
【文献】 DAVIS M P et al.,The Role of CFD Modeling in Development of the HIsmelt Process,Ironmaking Conference Proceedings,2003年,p201-214
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 11/00−13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも900mm深さの金属層を有する溶融浴を含む直接製錬容器内で金属含有材料を直接製錬して溶融金属を生産するための溶融浴に基づく方法において、この方法の運転パラメータを次のように選定すること、すなわち、溶融材料と前記金属層からのガスとの上向きの運動を惹起するために、固体材料およびキャリアガスを含む供給材料が、少なくとも1本の固体噴射ランスから、名目的には静止している前記金属層の表面の下に少なくとも100mmの深さまで貫入するのに十分な運動量をもって前記金属層の上部から前記金属層の中に噴射されるように、運転パラメータを選定することを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記運転パラメータが、1本または複数の前記固体噴射ランスにおけるランスの圧力低下が少なくとも1バールとなるように供給材料を噴射することを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記運転パラメータが、1本または複数の前記固体噴射ランスにおけるランスの圧力低下が少なくとも1.5バールとなるように供給材料を噴射することを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記運転パラメータが、1本または複数の前記固体噴射ランスにおけるランスの圧力低下が少なくとも2バールとなるように供給材料を噴射することを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記運転パラメータが、1本または複数の前記固体噴射ランスの下端を金属/スラグ界面の近くに配置することを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記運転パラメータが、噴射される供給材料に対する少なくとも40m/sの噴射速度を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法において、前記運転パラメータが、噴射される供給材料に対する少なくとも50m/sの噴射速度を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法において、前記運転パラメータが、噴射される固体供給材料とキャリアガスとの固体/ガス比であって、ガス1Nm当たり少なくとも固体10kgの固体/ガス比を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法において、前記運転パラメータが、噴射される固体供給材料とキャリアガスとの固体/ガス比であって、ガス1Nm当たり少なくとも固体15kgの固体/ガス比を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法において、前記固体供給材料が金属含有供給材料および固体の炭素質材料を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記金属含有供給材料が鉄を含有する材料を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法において、前記固体の炭素質材料が石炭を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の方法において、前記金属層の中への前記供給材料の貫入深さが少なくとも150mmである、ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の方法において、前記金属層の金属層深さが少なくとも1mである、ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項に記載の方法において、1本または複数の前記固体噴射ランスが、前記1本または複数の固体噴射ランスの流出端の中心軸が水平軸に対して20〜90°の角度になる形で、前記容器の中に下向きに延びるように配置される、ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法において、複数の前記固体噴射ランスが、前記容器の内部において、そのランスから供給材料を噴射した場合、前記溶融浴の金属層内に、噴射された供給材料の重なり合うプルームが形成されるような方向に向けられかつ配置される固体噴射ランスの相対する対を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の方法において、複数の前記固体噴射ランスが、前記溶融浴の中に下向きかつ内向きに延びる相対する噴射ランスの少なくとも1つの対を含み、その場合、前記ランスから噴射された材料のプルームが、前記金属層の表面から少なくとも100mm下の金属層の中心領域において重なり合い、溶融材料と前記金属層の中心領域からのガスとの上向きの運動が生じるように、前記ランスの縦軸が、前記容器のフロア面において、あるいは前記容器のフロア面の上部または下部において交差する、ことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1項に記載の方法において、前記容器が少なくとも6mの直径を有する、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属含有材料を直接製錬するための溶融浴に基づく方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、金属含有材料を直接製錬するための溶融浴に基づく方法において、本発明に従って溶融浴の中に固体材料を噴射するために必要なパラメータに関する。
【0003】
金属含有材料の既知の直接製錬法、特に製錬媒体としての溶融浴に基づく直接製錬法であって、一般的にHI製錬法と呼称される直接製錬法は、本出願人の名前による国際出願であるPCT/AU96/00197号明細書(国際公開第96/31627号パンフレット)に記載されている。
【0004】
酸化鉄の形の金属含有材料の直接製錬に基づくものとしてこの国際出願に記述されるHI製錬法であって、溶融鉄を生産するHI製錬法は次のステップを含む。すなわち、
(a)直接製錬容器内に鉄およびスラグの溶融浴を形成するステップと、
(b)溶融浴中に、(i)金属含有材料、通常酸化鉄、および、(ii)酸化鉄の還元剤およびエネルギー源として作用する固体の炭素質材料、通常石炭、を噴射するステップと、
(c)溶融浴中で、金属含有材料を鉄に製錬するステップと、
を含む。
【0005】
「製錬(する)(smelting)」という用語は、本明細書においては、溶融金属を生産するための、金属酸化物を還元する化学反応が生起する熱的処理を意味すると理解される。
【0006】
HI製錬法は、さらに、溶融浴から放散されるCOおよびHのような反応ガスを、溶融浴上部の空間において、酸素含有ガス、通常空気で後燃焼すること、および、この後燃焼によって発生する熱を、金属含有材料の製錬に必要な熱エネルギーに寄与するように溶融浴に伝達することを含む。
【0007】
HI製錬法は、また、さらに、溶融浴の名目的には静止している表面の上部に遷移領域を形成することをも含む。この遷移領域においては、溶融した金属および/またはスラグの好ましい量の液滴またはスプラッシュまたは流れが上昇しその後下降し、それが、溶融浴上部における反応ガスの後燃焼によって発生した熱エネルギーを溶融浴に伝達する有効な媒体となるのである。
【0008】
HI製錬法においては、金属含有材料および固体の炭素質材料は、複数個の固体噴射ランス(時には「羽口(tuyeres)」とも呼称される)によって溶融浴の中に噴射される。この複数個のランスは、直接製錬容器の側壁を貫通して下向きかつ内向きに延びるように、かつ容器の下部領域の中に延び込むように垂直線に対して傾斜しており、それによって、容器の底部内の溶融金属層の中に固体材料の少なくとも一部分を供給する。容器の上部部分における反応ガスの後燃焼を促進するために、酸素富化することができる高温空気の熱風を、下向きに延びる高温空気噴射ランスによって容器の上部領域の中に噴射する。容器内において反応ガスの後燃焼から生じるオフガスは、容器の上部領域から、オフガスダクトを通して取り出される。容器は、容器の側壁と屋根部分とに耐火物内張りされた水冷パネルを含み、水は連続回路においてパネルを通して連続的に循環される。
【0009】
HI製錬法は、溶融浴における金属含有材料の直接製錬によって、大量の溶融鉄の生産を可能にする。このようなレベルの生産を可能にするために、金属含有材料および炭素質材料の両者を大量に容器に供給しなければならない。
【0010】
上記の記述は、オーストラリアあるいは他の場所における普通の一般的知識を認めるものと解釈されるべきではない。
【0011】
本出願人の名前による米国特許第6,989,042号明細書は、HI製錬法において固体噴射ランスを介して溶融浴の中に供給材料(固体材料およびキャリアガス)を噴射するためのパラメータを開示している。このパラメータは、噴射速度、ランスの直径、ランスの方向、および、固体噴射の結果としての金属層からの見掛けのガス流れを含む。
【0012】
具体的には、この米国特許の請求項1は、金属という用語が鉄の材料からなる金属合金を含むような金属を生産するための直接製錬法のステップであって、次の各ステップを含む直接製錬法のステップを規定している。すなわち、
(a)冶金容器の中に溶融金属および溶融スラグの浴を形成するステップと、
(b)固体材料およびキャリアガスである供給材料を、40〜200mmの内径の供給管を有する下向きに延びる固体噴射ランスから、少なくとも40m/sの速度で溶融浴の中に噴射するステップであって、そのランスは、ランスの流出端の中心軸が水平軸に対して20〜90°の角度になるように配置され、かつ、少なくとも部分的には溶融浴に噴射された材料の反応によって、溶融浴内部に少なくとも0.04Nm/s/m(但しmは溶融浴の水平断面の面積である)の見掛けのガス流れを発生させ、このガス流れは、溶融金属がスプラッシュ、液滴および流れとして上方に飛び出して膨張した溶融浴の領域を形成する現象を生じさせ、さらに、前記ガス流れおよび上方に飛び出した溶融材料が溶融浴内部における材料の実質的な運動と、溶融浴の強い混合とを生起させ、この場合の供給材料は、全体的な意味において、溶融浴内の供給材料の反応が吸熱反応であるように選択される、ステップと、
(c)容器の上部領域の中に少なくとも1つの酸素ガス噴射ランスから酸素含有ガスを噴射して、溶融浴から放散される可燃ガスを後燃焼するステップであって、それによって、膨張した溶融浴の領域において上昇しその後下降する溶融材料が、溶融浴への熱伝達を促進する、ステップと、
を含む直接製錬法である。
【0013】
出願人は、直接製錬容器のサイズが増大するにつれて、金属層からの溶融材料の上向きの流れを必要な程度に高めることが難しい問題になることを見出した。特に、等価炉床径が6m以上の容器においては、この等価直径のおよそ半分の小型容器の場合より、混合の要件の達成が大幅に難しくなる。さらに、出願人は、金属層からの溶融材料の必要な程度の上向きの流れの達成が、大規模設備におけるHI製錬法の安定的かつコスト効率的な運転にとって決定的に重要であることを見出した。
【0014】
出願人は、溶融材料の必要な程度の上向きの流れを、HI製錬法に関する運転パラメータを次のように選定することによって達成できることを認識し理解した。すなわち、運転パラメータを、この方法への供給材料(固体材料およびキャリアガス)が、少なくとも900mm深さである溶融浴の金属層の中に少なくとも100mmの深さまで貫入するのに十分な運動量を有するように選定するのである。
【0015】
金属層の中への所定の貫入深さを達成するための数値計算は精密な科学ではない。異なる計算の仮定および方法を用いて、(名目的には同じ条件に対して)種々の貫入深さを計算することが可能である。「貫入深さ(penetration depth)」という用語の意味を明確にするために、カナダのMcMaster大学のモデルに基づく標準的な計算法を採用した。このモデルの詳細については添付の補遺に記載する。このモデルそのものは自由に利用できる。本明細書で用いる「貫入深さ」という用語は、添付の補遺に記載されるMcMasterモデルを用いて計算される貫入の深さとして暗黙的に定義される。従って、前項段落における溶融浴の金属層の中への少なくとも100mmの貫入への言及は、補遺に記述するMcMasterモデルによって計算される少なくとも100mmの貫入深さを意味する。
【0016】
本発明は、少なくとも900mm深さの金属層を有する溶融浴を含む直接製錬容器内において、金属含有材料を直接製錬して溶融金属を生産するための溶融浴に基づく方法を提供する。この方法は、この方法の運転パラメータを次のように選定することを含む。すなわち、溶融材料と金属層からのガスとの上向きの運動を惹起するために、固体材料およびキャリアガスを含む供給材料が、少なくとも1本の固体噴射ランスから、名目的には静止している金属層の表面の下に少なくとも100mmの深さまで貫入するのに十分な運動量をもって金属層の上部から金属層の中に噴射されるように、運転パラメータを選定するのである。
【0017】
十分な運動量を有する供給材料を供給するためのこの方法における運転パラメータは、1本または複数の固体噴射ランスにおけるランスの圧力低下が少なくとも1バールとなるように供給材料を噴射することを含むことができる。
【0018】
1本または複数の固体噴射ランスにおけるランス圧力低下は、加速の尺度、従って、1本の固体噴射ランスまたは各固体噴射ランスからの供給材料の運動量および/または速度の尺度である。
【0019】
「ランス圧力低下(lance pressure drop)」という用語は、本明細書においては、ランスおよびランスの「加速部分(acceleration section)」(以下参照)の上流側の点(A)であって、ガス速度がランスの流出先端における速度の1/2以下である点(A)から、ランスの流出先端そのもの(B)までの圧力低下を意味すると理解される。多くの場合において、点(B)における圧力は利用可能でない(例えばこの位置においては圧力センサーが設けられない)が、このような場合にも、ランス先端の圧力を、溶融物上部の圧力から、スラグ密度の推定値およびランス先端の浸漬深さを介して合理的に計算できる。
【0020】
「加速部分」という用語は、本明細書においては、その部分を通過する供給材料の見掛けのガス速度が、その部分の流入端から流出端までに2倍以上または1/2以下に変化するランスの一部分を意味すると理解される。
【0021】
ランスの圧力低下は、1本または複数の固体噴射ランスにおいて少なくとも1.5バールにすることができる。
【0022】
ランスの圧力低下は、1本または複数の固体噴射ランスにおいて少なくとも2バールにすることができる。
【0023】
ランスの圧力低下は、1本または複数の固体噴射ランスにおいて少なくとも3バールにすることができる。
【0024】
十分な運動量を有する供給材料を供給するためのこの方法における運転パラメータは、1本の固体噴射ランスまたは各固体噴射ランスの下端を金属/スラグ界面にできるだけ近接して配置することを含むことができる。
【0025】
十分な運動量を有する供給材料を供給するためのこの方法における運転パラメータは、例えばスラグの化学組成のようなこの方法の運転パラメータを次のように選択することを含むことができる。すなわち、1本または複数の固体噴射ランスのパイプの延長部の形成を促進し、それによって、1本または複数のランスから噴射される固体材料の移動距離を最小化するように、かつそれによって、1本の固体噴射ランスまたは各固体噴射ランスの下端を金属/スラグ界面にできるだけ近接して配置することを容易にするように、スラグの化学組成のような運転パラメータを選択するのである。
【0026】
十分な運動量を有する供給材料を供給するためのこの方法における運転パラメータは、噴射される供給材料に対する少なくとも40m/sの噴射速度を含むことができる。
【0027】
十分な運動量を有する供給材料を供給するためのこの方法における運転パラメータは、少なくとも50m/sの噴射速度を含むことができる。
【0028】
十分な運動量を有する供給材料を供給するためのこの方法における運転パラメータは、少なくとも60m/sの噴射速度を含むことができる。
【0029】
十分な運動量を有する供給材料を供給するためのこの方法における運転パラメータは、噴射される固体供給材料とキャリアガスとの固体/ガス比であって、ガス1Nm当たり少なくとも固体10kgの固体/ガス比を含むことができる。
【0030】
十分な運動量を有する供給材料を供給するためのこの方法における運転パラメータは、噴射される固体供給材料とキャリアガスとの固体/ガス比であって、ガス1Nm当たり少なくとも固体15kgの固体/ガス比を含むことができる。
【0031】
1本または複数の固体噴射ランスは少なくとも40mmの内径を有することができる。
【0032】
1本または複数の固体噴射ランスは少なくとも60mmの内径を有することができる。
【0033】
1本または複数の固体噴射ランスは少なくとも80mmの内径を有することができる。
【0034】
1本または複数の固体噴射ランスは200mmより大きい内径を有することができる。
【0035】
固体供給材料は固体の炭素質材料のみとすることができ、その固体の炭素質材料は石炭とすることができる。
【0036】
固体供給材料は固体の炭素質材料およびフラックスのみとすることができる。
【0037】
固体供給材料は金属含有供給材料および固体の炭素質材料とすることができる。
【0038】
固体供給材料は、金属含有供給材料、固体の炭素質材料およびフラックスとすることができる。
【0039】
金属含有供給材料は鉄を含有する材料とすることができる。
【0040】
鉄を含有する材料は鉄鉱石とすることができる。
【0041】
鉄鉱石は微粉粒体の形とすることができる。
【0042】
金属含有供給材料および固体の炭素質材料は、1本または複数の同じ固体噴射ランスから、あるいは別個の固体噴射ランスから噴射することができる。
【0043】
金属含有供給材料は予熱することができる。
【0044】
金属含有供給材料は大気温度とすることができる。
【0045】
キャリアガスは窒素またはアルゴンのような不活性ガスとすることができる。
【0046】
供給材料の金属層の中への貫入深さは少なくとも150mmとすることができる。
【0047】
金属層の中への貫入深さは少なくとも200mmとすることができる。
【0048】
金属層の中への貫入深さは少なくとも300mmとすることができる。
【0049】
金属層の中への貫入深さは500mm未満とすることができる。
【0050】
金属層の中への貫入深さは400mm未満とすることができる。
【0051】
金属層の深さは少なくとも1mとすることができる。
【0052】
金属層の深さは少なくとも1.5mとすることができる。
【0053】
金属層の深さは2.5m未満とすることができる。
【0054】
1本または複数の固体噴射ランスは、そのランスの流出端の中心軸が水平軸に対して20〜90°の角度になる形で、容器の中に下向きに延びるように配置することができる。
【0055】
複数の固体噴射ランスは、容器の内部において、ランスから供給材料を噴射した場合、溶融浴の金属層内に、噴射された供給材料の重なり合うプルームが形成されるような方向に向けられかつ配置される固体噴射ランスの反対向きの対を含むことができる。
【0056】
複数の固体噴射ランスは、溶融浴の中に下向きかつ内向きに延びる反対向きの噴射ランスの少なくとも1つの対を含むことができる。この場合、ランスから噴射された材料のプルームが、金属層の表面から少なくとも100mm下の金属層の中心領域において重なり合い、溶融材料と金属層の中心領域からのガスとの上向きの運動が生じるように、ランスの縦軸が、容器のフロア面において、あるいは容器のフロア面の上部または下部において交差する。
【0057】
「噴射された材料のプルーム(plumes of injected material)」という用語は、本明細書においては、ランスから直接製錬容器の中への上記のような噴射の結果として生成される(a)噴射された供給材料と(b)生成物との流れを記述すると理解される。供給材料が固体の炭素質材料を含む状況の場合は、生成物には、例えば、炭素質材料から放散される揮発物質と、COおよびCOおよびHOのような反応生成物とが含まれる。
【0058】
容器は少なくとも6mの直径を有することができる。
【0059】
容器は少なくとも7mの直径を有することができる。
【0060】
以下、PCT/AU96/00197号明細書に記載されているHI製錬法の実施に使用するのに特に適したプラントの一部を構成する直接製錬容器を表現する添付の図面を参照して、本発明を例に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、HI製錬法を実施するための直接製錬容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図を参照して以下に説明する本発明の方法の実施態様は、上記の国際出願に記載されたHI製錬法の形態であると見做すことができる。
【0063】
以下の記述は、HI製錬法に従って溶融鉄を生産するための、通常6mm未満の鉄鉱石の微粉粒体の形の金属含有材料の製錬に関する。しかし、本発明は、鉄鉱石に限定されず、任意の材料形態の任意の金属含有材料の製錬にも適用可能であることが理解されるであろう。鉱石は金属含有材料の形態の一例である。本発明は、さらに、例えば、部分還元鉱石および金属含有廃棄物の流れを含む他の形態の金属含有材料にも適用される。
【0064】
図を参照すると、図示される容器11は、鉄およびスラグの溶融浴を包含する炉床であって耐火レンガから形成される底部12および側壁13を含む炉床と、一般的に炉床の側壁13から上方に延びる円筒状の筒体を形成する側壁14と、屋根部17とを有する。側壁14および屋根部17は、側壁14および屋根部17から熱を伝達するための水冷パネル(図示されていない)を備えている。このパネルの水冷却が、側壁14および屋根部17の温度を制御すると共に、温度が、側壁14および屋根部15の完全な状態に影響を及ぼすレベルに上昇しないことを保証するための主たる機構である。容器11には、さらに、前炉床19と出湯孔21とが設けられる。製錬中、前炉床19から溶融鉄が連続的に排出され、出湯孔21から溶融スラグが周期的に排出される。屋根部17には、この方法のオフガスが排出される流出部18が設けられる。
【0065】
本発明の方法の実施態様に従って溶融鉄を生産するために鉄鉱石の微粉粒体を製錬する容器11を使用する場合、容器11は、鉄およびスラグの溶融浴を含み、この溶融浴は、主として溶融鉄である層22と、鉄の層22の上の主として溶融スラグである層23とを含む。名目的には静止している鉄の層22の表面の位置は符号24によって指示され、名目的には静止しているスラグの層23の表面の位置は符号25によって指示される。「静止している表面(quiescent surface)」という用語は、容器11の中へのガスおよび固体の噴射がない時の表面を意味すると理解される。正常な運転条件の下では、この方法は、0.5〜1.2バール(ゲージ)の圧力範囲、好ましくは0.6〜1.0バール(ゲージ)の圧力範囲内で運転される。
【0066】
容器11には複数の固体噴射ランス27が設けられ、このランス27は、容器の側壁14における開口(符号表示なし)から下向きかつ内向きにスラグ層23の中に延び込んでいる。このランスは、本出願人に譲渡された米国特許第7,445,747号明細書に詳しく記述されているようなものにすることができる。この米国特許明細書における開示内容は相互参照によって本願に組み込まれる。
【0067】
ランス27は、少なくとも40mmの内径を有し、容器の内部において、この方法の運転の間、ランス27の流出端28が鉄の層22の表面の上部に位置するような方向に向けられる。ランス27のこの位置によって、溶融金属との接触による損傷のリスクが低減され、強制的な内部水冷によるランスの冷却も、水が容器11内部の溶融金属と接触するという重大なリスクなしに可能になる。
【0068】
ランス27の流出端28は溶融浴の金属/スラグ界面に可能な限り近接して配置することが望ましい。これは、金属層の中に噴射される固体材料の移動距離を最小化して、移動に伴うその運動量の損失を最小化するような安全側の考慮からの方策である。
【0069】
ランス27は、容器11の中に、通常水平軸に対して45°の角度で下向きかつ内向きに延び込む。複数のランス27は、容器11の内部において、ランス27の縦軸81が鉄の層22の中心領域において鉄の層22内で交差するような方向に向けられる。
【0070】
正常な運転条件で使用される場合には、鉄鉱石の微粉粒体と、石炭の形の固体の炭素質材料と、フラックスとの形態の固体供給材料は、窒素の形のキャリアガスと共に、ランス27の流出端28から溶融浴の中に同時噴射される。この場合、噴射される固体供給材料とキャリアガスとの固体/ガス比は少なくともガス1Nm当たり固体10kgであり、噴射される固体供給材料およびキャリアガスの噴射速度は少なくとも40m/sであり、ランスの圧力低下はランス27において少なくとも1バールである。このランスの圧力低下は、ランス27およびランスの「加速部分」の上流側の点(a)であって、ガス速度がランスの流出先端における速度の1/2以下である点(a)から、ランスの流出先端そのもの(b)までの圧力低下である。噴射された供給材料は下向きに運動する材料のプルーム71を形成し、このプルーム71は金属層23に貫入して、金属層の中心領域において重なり合う。これらの運転パラメータによって、噴射される固体供給材料に、十分な運動量および/または速度、すなわち、鉄の層22が少なくとも900mm深さの場合、名目的には静止している鉄の層22の表面24の下の少なくとも100mmの貫入深さまで下向きに鉄の層22の中に貫入するのに十分な運動量および/または速度が付与される。この場合、その貫入深さは、補遺に記載するMcMasterモデルによって計算されるものである。出願人は、これらの運転パラメータ条件における供給材料の噴射によって、この方法の安定的かつコスト効率的な運転に必要な程度の溶融金属の上向きの流れの実現が可能になることを見出した。
【0071】
石炭は、それが溶融浴内において下向きに運動する際に揮発分除去され、それによってガスが生成される。炭素は、部分的に金属の中に溶解し、かつ、部分的に固体炭素として残存する。鉄鉱石は金属に製錬され、製錬反応によって一酸化炭素ガスが生成される。ガスは鉄の層22内に輸送されると共に、揮発分除去と製錬とによって生成されるが、このガスによって、溶融材料(金属およびスラグを含む)と、固体炭素と、溶融浴からのガスとの顕著な浮揚運動が生成され、この浮揚運動によって、スプラッシュと、液滴と、溶融材料およびガスの流れとの、容器の上部領域83、すなわち容器の上部ガス空間内への上向きの運動が生じる。この上部の運動が、図において、符号69によって特定される領域として示されている。浮揚運動は、また、溶融浴内における実質的な撹拌をも惹起すると共に、溶融浴を事実上膨張させる。撹拌の程度は、合理的に一様な温度−通常1450〜1550℃で、溶融浴全体にわたる温度変化が50℃程度である温度−になる程の溶融材料の強力な混合が溶融浴内部に存在する程度に強い。さらに、溶融材料の上向きの運動は、容器11の側壁14および屋根部17を形成する湿式水冷パネルに対して、パネルからの熱損失が3000kW/パネルm未満、さらに好ましくは2000kW/パネルm未満となる程度に熱損失を最小化すると共に実質的な撹拌を惹起するのに十分である。
【0072】
以上述べた本発明の方法の実施態様に対して、本発明の本質および範囲から逸脱することなく多くの変更をなすことができる。
【0073】
例えば、図は、複数の固体噴射ランス27を備えた容器11を示しているが、本発明は、ただ1本の固体噴射ランスが設けられる構成に拡大し得ることが容易に理解できる。
【0074】
さらに、図は、水平軸に対して45°の角度で容器11の中に下向きかつ内向きに延びる固体噴射ランス27を示しているが、本発明は、それには限定されず、ランスが、水平軸に対して20〜90°の範囲の任意の適切な角度で下向きに延びるような構成をも対象としている。
【0075】
さらにまた、前記の実施態様は、鉱石、石炭およびフラックスを固体噴射ランス27から同時噴射することを含んでいるが、本発明は、それには限定されず、石炭および/またはフラックスのみをランス27から噴射し、鉱石は容器の頂部から供給する方式にも適用される。このような鉱石の頂部供給は、屋根部から、あるいは、側壁および屋根部の間の内向きかつ上向きに傾斜した移行部を貫通して下向きに延びるランスによる噴射を含むことができる。
【0076】
さらにまた、前記の実施態様は、容器の中への高温空気の噴射を含んでいるが、本発明は、それに限定されず、冷温酸素を酸素含有ガスとして噴射する方式にも適用される。
【0077】
補遺
McMaster噴射モデル
背景
噴射された固体+キャリアガスの流れが金属およびスラグの中にどこまで貫入するかについての計算は、簡単な第一原理の解析には従わない。ガスのみの噴射の状況に比べて、固体が存在するために、不可避の複雑さが持ち込まれ、解析が困難になる。種々の仮定が可能であるが、これらは異なる結果をもたらすであろう。この影響を極小化するため、「最良の利用可能計算法(best available calculation method)」を見つけ出して、これに基づいて計算を標準化することが妥当である。
【0078】
McMaster噴射モデルはこの目的のために広く受け入れられている。その淵源は1980年代半ばにおけるカナダのMcMaster大学にあり、基本的な科学的基礎(方程式、仮定など)は広く公刊されている。
【0079】
一般的に引用される公刊文献は次のとおりである。
G A Irons and L R Farias,“The Influence of Lance Orientation and Gas Evolution on Particle−Liquid Contact During Submerged Power Injection”,Canadian Metallurgical Quarterly,Vol.25,No.4,pp 297−306,1986
L R Farias and G A Irons,“A Unified Approach to Bubbling−Jetting Phenomena in Powder Injection into Iron and Steel”,Metallurgical Transactions B,Volume 16B,June 1985,pp 211−225
Irons,G.A.,1992.“Fundamental Aspects of Solids Injection for Bath Smelting”,Savard/Lee International Symposium on Bath Smelting,October 18−22,Montreal,QC,The Metallurgical Society and The Iron and Steel Society of AIME,and CIM pp.493−506
【0080】
McMaster大学における当初の作業(G A Irons教授の監督の下で2人のポスドク研究員L R Farias博士およびH Gou博士による)は、性能を計算するのに噴射プロセスに対するFortranモデルを使用していた。現在のMcMaster噴射モデルの基礎になっているのは、この当初のMcMaster Fortranコードである。このFortranコードはC#に翻訳され、Windows環境に再コード化されている(忠実性を確保するためG A Irons教授の厳格な検証が行われた)。これは「最良の実際の(best practice)」計算方法を代表するものと見做されている。HI製錬法も、そのモデルを、その方法に関連する条件に対して拡充してきた。
【0081】
目標は、固体+キャリアガスが金属およびスラグの中に貫入する距離を計算するための一般的手段として、このモデルを使用することである。他の人たちはこの計算そのものを(同じ入力、方法および仮定を用いて)繰り返すことを選択するかもしれない。その結果同じ結果を得るであろう。しかし、(煩わしくかつ時間が掛かる可能性が高い)この種の再計算の必要性を回避するために、ソフトウェアを関心のある誰にでも(即座にかつ無料で)利用可能にすることが意図されている。
【0082】
モデルのパラメータ
この補遺の表1は、モデルの必要な入力を示している。付番された各入力の説明が記載されているが、この内5項(入力32〜36)については付加的な説明が必要である(以下参照)。

【0083】
入力32:説明A
入力「加速時間係数(Acceleration Time Factor)」は、固体が、ガス流れ中においてどの程度の速さでその最終速度に達するかを記述するパラメータである。各粒子サイズ/密度の画分に対して、ガス速度から、ガス媒体中におけるそのタイプの粒子(単独)の終端速度を差し引いた値に合致する最終速度が存在する。実際には、粒子は一緒に集団化する傾向があり、この最終速度に達するにはきわめて長い加速距離が必要になる可能性がある。この「加速時間係数」パラメータは、使用者が、所定の距離(通常、入力3のランス長さに等しい)内で達成される粒子加速の程度を調整することを可能にするものである。個々の粒子サイズ/密度に対する計算は以下のとおりである。
先端固体速度=(先端ガス速度)−(粒子終端速度)×e−(ランス長さ)/(時定数)
但し、時定数は次のように定義される。
時定数=(加速時間係数)×(ミクロン表示の粒子サイズ)/100
【0084】
「加速時間係数」が高い程、粒子は、ランス先端において遅くなる。この計算の目的のために、加速時間係数の数値設定は、1〜2の範囲に制限される。
【0085】
入力33および34:説明BおよびC
噴射される固体は、その性質に応じて金属およびスラグと反応し得る。特に、石炭は揮発分除去され、鉄鉱石は(炭素含有金属内で)製錬されることが可能で、それによりCOガスが発生する。従って、流入する固体は、それが金属に流入すると、その目標「衝撃(impact)」領域において(以前に噴射された固体からの)ガス−液体懸濁物に衝突し得ることが可能になる。このモデルは、これを、使用者が、目標領域において「気泡(bubbly)」金属を有する選択肢をスイッチオン(またはスイッチオフ)する(入力33のチェックボックス)ことを可能にすることによって、表現している。この選択肢が「オン(on)」である(すなわちチェックされている)場合は、モデルは、空隙百分率(すぐ下に入力34として特定される)を用いて、次式によって目標金属の密度を修正する。
有効金属密度=(入力11からの密度)×(1−(空隙百分率)/100)
【0086】
結果は、目標領域の空隙率が増大するにつれて、プルームがより深く貫入するということである。直接製錬法の場合には、この仮定は、チェック(活性化)された「目標領域におけるガス気泡の発生(Generate Gas Bubbles in Target Zone)」と、目標領域における50%空隙率とにおいて(上記のように)標準化される。
【0087】
入力35および36:説明DおよびE
時には、使用者が、ランス先端における平均固体速度を直接特定したいと希望することがある。このモデルは、これを、前記の加速計算をバイパスする選択肢を設けることによって可能にする。この選択肢を使用するには、使用者が、入力35のチェックを外し(「自動加速百分率の使用(Use Auto Acceleration Percentage)」)、入力36(すなわちすぐ下のテキストボックス)において、先端のガス速度のどれだけの百分率が固体に割り当てられるべきかを直接特定する必要がある。
【0088】
このモデルの標準的な使用は、前記のように入力35を活性化(チェック)して、固体が達成する先端ガス速度の平均百分率をモデルに計算させることを含んでいる。
【0089】
表1に示す入力条件に対するモデルの結果をこの補遺の表2に示す。

【0090】
重要な出力パラメータは「金属貫入(Metal Penetration)」である。
【0091】
「金属貫入」は、噴射プルームの曲線の中心線(赤いプルームの中央における黒い線として示される)に沿う金属層の中への貫入の計算最大深さとして定義される。
図1