(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963214
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】合成ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
F17D 1/04 20060101AFI20160721BHJP
C10J 3/46 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
F17D1/04
C10J3/46 L
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-130796(P2014-130796)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2016-8688(P2016-8688A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179176
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 寛
(72)【発明者】
【氏名】中川 賢剛
(72)【発明者】
【氏名】講武 寛之
(72)【発明者】
【氏名】岩見 紀征
(72)【発明者】
【氏名】坂田 進
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健司
(72)【発明者】
【氏名】大平 一騎
【審査官】
吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−204558(JP,A)
【文献】
特開2006−161754(JP,A)
【文献】
特開2009−103102(JP,A)
【文献】
特開平06−058104(JP,A)
【文献】
特開2000−303855(JP,A)
【文献】
特開2003−343208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17D 1/00− 5/08
C10J 1/00− 3/86
F02C 1/00− 9/58
F04B 41/00−51/00
F22B 1/00−37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガスユーザーに合成ガスを供給する複数のガス化炉を備える合成ガス供給システムであって、
前記複数のガス化炉が接続され、少なくとも一つの前記ガスユーザーに接続された複数のヘッダー配管と、
前記複数のヘッダー配管を接続する連絡配管と、
前記連絡配管上に設置された連絡バルブと、
前記連絡配管上であって前記連絡バルブの両側に設置された圧力検出手段と、
前記ガスユーザーからの合成ガス予定必要量および前記圧力検出手段で検出された値に応じて前記連絡バルブを制御可能なように接続され、前記圧力検出手段で検出された値が予め設定された閾値を下回った場合には前記連絡バルブを開ける制御を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記圧力検出手段で検出された値に優先して前記ガスユーザーの合成ガス予定必要量に応じて前記連絡バルブを開ける制御を行うことを特徴とする合成ガス供給システム。
【請求項2】
前記ガス化炉で生成される合成ガスは石炭を原料とすることを特徴とする請求項1に記載の合成ガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭を原料として製造される合成ガスを供給する合成ガス供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油および天然ガスの価格上昇に伴い安価でかつ幅広い地域に存在する石炭の利用が見直されている。
【0003】
ここで石炭を固体のまま発電プラントに利用する従来の方法では天然ガスを燃料とするコンバインドサイクルに比べて発電効率は20%程度低くなる。
【0004】
また石炭も固体のまま利用する従来の利用方法では発電プラントあるいは製鉄プラントなどの利用に留まり、石油あるいは天然ガスのような石油化学プラントの原料としての利用は困難である。
【0005】
そのため石炭を更に効率よく利用できる発電効率の高いコンバインドサイクルを備える発電プラントに利用するため、あるいは石炭の新たな用途として石油化学プラントへ原料として利用するために、石炭をガス化し合成ガスを製造するガス化炉が開発されている。
【0006】
ここで現在のガス化炉の連続運転時間は最長でも2〜3千時間程度であるため、発電プラントの燃料用、あるいは2年ないし4年の連続運転が通常の石油化学プラントの原料用とした場合は連続運転時間が短く、そのため連続運転時間の短さを補うガス化炉の複数設置は必須である。
【0007】
更にガス化炉に投入する石炭の性状も常に一定とは限らないので、石炭の性状の変化による運転状態の変化によりガス化炉の出力が不安定化することもある。
【0008】
またガス化炉を発電プラントの燃料として使用する場合、発電出力が一日の間でも大きく変動するのでガス化炉からの合成ガス供給が追従しきれず、一時的にせよガス化炉からの合成ガスの安定供給が損なわれる可能性がある。
【0009】
そのためガス化炉から合成ガスを安定的に供給する特許文献1のような方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−162660
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで合成ガスの安定供給が損なわれる原因が単にガス化炉の追従性に起因する出力不足にある場合であれば、特許文献1に記載のようにガス化炉内の圧力変動の応答性に優れたガス化炉への石炭の搬送システムを採用することは有効である。
【0012】
しかし合成ガスの安定供給が損なわれる原因が例えばガス化炉内での石炭の閉塞や、ガス化炉に備えられている熱交換器へのチャーと呼ばれる炭化物の付着・堆積等、ガス化炉の安定運転に関する技術的な課題に起因する場合には石炭ガス化炉を一旦停止させ、整備する必要がある。
【0013】
これは石炭をガス化するガス化炉の連続運転時間にも関係するが、長期間の安定運転に関する技術的な課題が解決しきれていない現状では、発電用燃料用あるいは特に2年ないし4年といった連続運転が通常の石油化学プラントの原料用としては、特許文献1に記載の合成ガスを安定供給するためのシステムでは対応しきれないという課題がある。
【0014】
本発明はこの課題に鑑み、石炭から製造する合成ガスを、発電用燃料や特に長期間の安定供給が求められる石油化学プラントの燃料用として安定的に供給できる合成ガス供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1) 本発明に係る合成ガス供給システムは、複数のガスユーザーに合成ガスを供給する複数のガス化炉を備える合成ガス供給システムであって、前記複数のガス化炉が接続され、少なくとも一つの前記ガスユーザーに接続された複数のヘッダー配管と、前記複数のヘッダー配管を接続する連絡配管と、前記連絡配管上に設置された連絡バルブと、前記連絡配管上であって前記連絡バルブの両側に設置された圧力検出手段と、を備え、前記連絡バルブは前記圧力検出手段で検出された値が予め設定された閾値を下回った場合、前記連絡バルブを開ける制御を行うことを特徴とする。
【0016】
(2)また本発明に係る合成ガス供給システムは(1)に記載の合成ガス供給システムにおいて、前記ガスユーザーからの合成ガス予定必要量および前記圧力検出手段で検出された値に応じて前記連絡バルブを制御可能なように接続された制御装置を備え、前記制御装置は、前記圧力検出手段で検出された値に優先して前記ガスユーザーの合成ガス予定必要量に応じて前記連絡バルブを開ける制御を行うことを特徴とする。
【0017】
(3)また本発明に係る合成ガス供給システムは(1)または(2)に記載の合成ガス供給システムにおいて、前記ガス化炉で生成される合成ガスは石炭を原料とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
(1)に記載の合成ガス供給システムによれば、通常はガス化炉それぞれとヘッダー配管はガスユーザーごと(例えば発電プラントや石油化学プラント等)に分けられ、それぞれ独立して運転されているが、例えばガス化炉の想定外の停止などで一方のガスユーザーへの合成ガス供給に支障が出る可能性がある場合、連絡配管を通じて合成ガスを融通しあうことでガスユーザーそれぞれへの合成ガスの安定供給を行うことが可能となる。
【0019】
(2)に記載の合成ガス供給システムによれば、ガスユーザーでの合成ガスの予定必要量に応じて合成ガスを融通しあうことで、更に安定的にガスユーザーそれぞれに合成ガスを供給することが可能となる。
【0020】
(3)に記載の合成ガス供給システムによれば、安価で安定的に入手可能な石炭を合成ガスの原料とすることで合成ガスを安価かつ安定的にガスユーザーへ供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第一実施形態に係る合成ガス供給システムの通常の運転状態を示した模式図である。
【
図2】第一実施形態に係る合成ガス供給システムでガス化炉を切り替えた状態を示した模式図である。
【
図3】第一実施形態に係る合成ガス供給システムで合成ガスを融通している状態の模式図である。
【
図4】第二実施形態に係る合成ガス供給システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。かかる実施形態は発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお本明細書及び図面において実質的に同一の機能、構成を有する要素については同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
図1は第一実施形態に係る合成ガス供給システム100の模式図である。
【0025】
まず合成ガス供給システム100の構成について説明する。
【0026】
合成ガス供給システム100はガス化炉10a〜10fを6基備えており、そのガス化炉のうち10a〜10cは第一ヘッダー配管12aにそれぞれガス供給配管14a〜14cによって接続されている。
【0027】
残りのガス化炉10d〜10fは第二ヘッダー配管12bにそれぞれガス供給配管14d〜14fによって接続されている。
【0028】
ガス供給配管14a〜14fはそれぞれ配管上にガス供給バルブ16a〜16fを備えている。
【0029】
第一ヘッダー配管12aはガス分配配管18Aによって第一ガスユーザー20Aに接続され、第二ヘッダー配管12bはガス分配配管18Bによって第二ガスユーザー20Bに接続されている。
【0030】
第一ヘッダー配管12aと第二ヘッダー配管12bは連絡配管22によって接続され、連絡配管22上には連絡バルブ24が設置されている。
【0031】
連絡配管22上であって連絡バルブ24の両側には、第一ヘッダー配管12aと連絡バルブ24の間に圧力検出手段26A、第二ヘッダー配管12bと連絡バルブ24の間に圧力検出手段26Bがそれぞれ設置され、圧力検出手段26A、26Bで検出された値に応じて連絡バルブ24の開度を制御可能なように連絡バルブ24と接続されている。
【0032】
この連絡バルブ24と圧力検出手段26A、26Bは自力式圧力調整弁などで構成されるが、自力式圧力調整弁の他には計装用空気や電気などで作動し、圧力検出手段26A、26Bの検出結果をDCSなどの制御装置を介して作動する圧力制御弁でも良い。(計装用空気および電気、制御装置は図示せず。)
【0033】
次に
図1に示す合成ガス供給システム100の動作について説明する。
【0034】
合成ガス供給システム100が運転を開始すると、まず合成ガスの原料として石炭がガス化炉に投入される。
【0035】
通常の運転状態においては、第一ヘッダー配管12aおよび第二ヘッダー配管12bともにそれぞれに接続されたガス化炉で製造された合成ガスによって予め設定された閾値以上の圧力を保持しているので連絡バルブ24は閉じられており、第一ヘッダー配管12aと第二ヘッダー配管12bの間で合成ガスの融通はない。
【0036】
第一ヘッダー配管12aに接続されているガス化炉10a〜10cは第一ガスユーザー20A専用として合成ガスを供給しており、一方、第二ヘッダー配管12bに接続されているガス化炉10d〜10fは第二ガスユーザー20B専用として合成ガスを供給している。
【0037】
このようにガス化炉をガスユーザーごとに分ける理由であるが、ガス化炉は連続運転時間が発電プラントや石油化学プラント等のガスユーザーに比べて短いため、安定的に合成ガスをガスユーザーに供給するためには、スタンバイ状態にあるガス化炉を持つことが必要である。
【0038】
ここでガス化炉を安定的に運転するにはスタンバイ状態にあるガス化炉を含め、できるだけ各ガス化炉の運転時間を平準化することが望ましい。
【0039】
しかしガスユーザーは例えば第一ガスユーザー20Aが発電プラント、第二ガスユーザー20Bが石油化学プラントとした場合、それぞれの運転負荷変動は異なるため、同じガス化炉から違うガスユーザーに合成ガスを供給した場合、ガス化炉の運転時間平準化を行うことが難しい。
【0040】
そのためガス化炉の運転負荷の平準化を行いやすいよう、ガスユーザーそれぞれで専用のガス化炉を設置することが望ましい。
【0041】
合成ガス供給システム100ではガス供給バルブ16cおよび16fが閉じられ、この状態ではガス化炉10cおよび10fがそれぞれ第一ガスユーザー20A、第二ガスユーザー20B用としてスタンバイ状態にある。
【0042】
このようにガスユーザーそれぞれについてスタンバイ状態のガス化炉を備えることによりガス化炉の運転時間を平準化しやすくなると同時に、一方のヘッダー配管に接続されている設備に何等かトラブルがあった場合でも、その影響がもう一方のヘッダー配管に接続されている設備に波及しにくいのでシステム全体としての安定性も確保することが可能となる。
【0043】
次に
図2に示す合成ガス供給システム200について説明する。
【0044】
合成ガス供給システム200は合成ガス供給システム100が使用するガス化炉を切り替えた状態を示しており、これも通常の運転状態の状態である。
【0045】
すなわち、合成ガス供給システム100ではガス供給バルブ16c、16fは閉じられ、スタンバイ状態のガス化炉は10cおよび10fであったが、合成ガス供給システム200ではガス供給バルブ16aおよび16eが閉じられスタンバイ状態のガス化炉は10aおよび10eである。
【0046】
このように各ヘッダー配管12a、12bに接続されているガス化炉は少なくとも1基のスタンバイ炉を備えており、通常の運転状態においてはスタンバイ状態にある炉を順次切り替えながらガス化炉の運転時間の平準化を図っている。
【0047】
次に
図3に示す合成ガス供給システム300について説明する。
【0048】
合成ガス供給システム300は合成ガス供給システム100の緊急時の状態を示している。
【0049】
すなわちガス化炉10bおよび10cが停止状態にあり、第一ガスユーザー20Aに合成ガスを送るガス化炉がガス化炉10aのみとなった場合、第一ガスユーザー20Aへ送る合成ガスが不足する可能性がある。
【0050】
第一ガスユーザー20Aに送る合成ガスが不足しそうな場合、第一ヘッダー配管12aの圧力が低下することになる。
【0051】
第一ヘッダー配管12aの圧力は圧力検出手段26Aで検出され、圧力検出手段26Aで検出された圧力値が予め設定された閾値を下回った場合(すなわち第一ガスユーザー20Aへ送る合成ガスが不足しそうな場合)、連絡バルブ24を開け、第二ヘッダー配管12bから第一ヘッダー配管12aに合成ガスを送る。なおこの場合、第二ヘッダー配管12bの圧力が予め設定された閾値を下回ることのないよう、ガス化炉10d〜10fのうちスタンバイ状態にあるものを起動することが望ましい。
これによりガス化炉が何らかのトラブルにより停止し、ガスユーザーへ送る合成ガスが不足しそうな状態になっても迅速に他のヘッダー配管から合成ガスが供給されることになり、システム全体として高い安定性を持つことが可能となる。
【0053】
図4は第二実施形態に係る合成ガス供給システム400の模式図である。
【0054】
第一実施形態と異なっているのは、第一ガスユーザー20Aおよび第二ガスユーザー20Bの合成ガス予定ガス必要量を電気信号等で通信し、連絡バルブ24の開度を制御可能な制御装置28を備えている点である。
【0055】
第一実施形態のようにヘッダー配管の圧力を検知することで連絡バルブ24の開閉を制御することは合成ガス供給システム全体としての安定性を向上させる。
【0056】
しかし例えばガス化炉とガスユーザーの物理的な距離が遠く、ガス分配配管18Aおよび18Bが数キロメートルにも及ぶ場合などはヘッダー配管の圧力低下を検知し、一方のヘッダー配管から他方のヘッダー配管に合成ガスの融通を行ったとしてもガス分配配管での圧力低下に対応しきれず結果的にガスユーザーへの合成ガス供給が一時的に途絶する可能性がある。
【0057】
そのためガスユーザーの合成ガス予定必要量と圧力検出手段26Aおよび26Bで検出された結果を基に制御装置28で演算し、圧力検出手段26Aおよび26Bの検出結果を基に連絡バルブ24の開度を制御した場合ではガスユーザーへの合成ガス供給が途絶する可能性がある場合には、制御装置28は圧力検出手段26Aおよび26Bの圧力検出結果に先だって連絡バルブ24を開ける制御を行う。
これによりガス分配配管18Aおよび18Bの距離が長い場合であっても、ガスユーザーへ安定的に合成ガスを供給することが可能となる。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明した。
【0059】
当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、石炭を原料として製造される合成ガスを供給する合成ガス供給システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
100:合成ガス供給システム、200:合成ガス供給システム、300:合成ガス供給システム、400:合成ガス供給システム、10a〜10f:ガス化炉、12a:第一ヘッダー配管、12b:第二ヘッダー配管、14a〜14f:ガス供給配管、16a〜16f:ガス供給バルブ、18A〜18B:ガス分配配管、20A:第一ガスユーザー、20B:第二ガスユーザー、22:連絡配管、24:連絡バルブ、26A〜26B:圧力検出手段、28:制御装置