特許第5963232号(P5963232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963232
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20160721BHJP
   G21C 17/003 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G21C17/00 N
   G21C17/00 EGDB
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-247583(P2011-247583)
(22)【出願日】2011年11月11日
(65)【公開番号】特開2013-104730(P2013-104730A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2014年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077816
【弁理士】
【氏名又は名称】春日 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100156524
【弁理士】
【氏名又は名称】猪野木 雄一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 淳史
(72)【発明者】
【氏名】平塚 真弘
(72)【発明者】
【氏名】大高 稔
(72)【発明者】
【氏名】小池 正浩
(72)【発明者】
【氏名】池隅 太郎
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−022160(JP,A)
【文献】 実開平02−115107(JP,U)
【文献】 特開2001−133319(JP,A)
【文献】 特開平07−311184(JP,A)
【文献】 特開2011−133241(JP,A)
【文献】 特開2010−185884(JP,A)
【文献】 特開2009−068987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00
G21C 15/25
G21C 15/243
G01H 17/00
G01N 29/00
G01B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法であって、
複数の超音波反射面が形成された超音波反射板を、前記沸騰水型原子炉内機器の振動計測対象部位に設け、
前記超音波反射板に向けて圧力容器の外面に設置した超音波センサより超音波を送信し、
前記複数の超音波反射面でそれぞれ生じた複数の反射波を前記超音波センサで受信し、
信号処理部により、前記反射波を連続して収録し、
信号処理部により、前記複数の超音波反射面の往復距離に対応した時間分だけ遅れて到達する前記複数の反射波のみを圧力容器の多重反射エコーや形状エコーと弁別して特定し、前記複数の反射波の時間移動量を連続して算出し、前記時間移動量から前記計測対象部位における振動状態を計測することを特徴とする沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法。
【請求項2】
請求項1記載の沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法において、
前記複数の超音波反射面でそれぞれ生じた複数の反射波の時間差を算出し、
前記複数の反射波の時間差と前記複数の超音波反射面の高さの差を用いて、原子炉水中での超音波の音速を算出し、
前記原子炉水中での超音波の音速と前記複数の反射波の時間移動量を用いて、前記計測対象部位における振動状態の振幅を求めることを特徴とする沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法。
【請求項3】
請求項1記載の沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法において、
前記複数の反射波が含まれるように反射波の収録時間の範囲を決定することを特徴とする沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法。
【請求項4】
請求項1記載の沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法において、
前記複数の超音波反射面は、それぞれ、平面であることを特徴とする沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法。
【請求項5】
請求項1記載の沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法において、
前記複数の超音波反射面は、それぞれ、曲面であることを特徴とする沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に係り、特に、沸騰水型原子炉の圧力容器内に設置されるジェットポンプをはじめとする炉内機器の振動状態の計測するに好適な沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な沸騰水型原子炉(BWR)の炉内機器の一例として、ジェットポンプがある。長期的な原子炉の運転において、このジェットポンプの信頼性を確保するためには、この冷却水の流体振動に伴うジェットポンプの振動状態(振幅、周波数、振動モードなど)を原子炉外より監視し、その劣化や損傷を事前に検出する必要がある。
【0003】
振動監視方法としては、例えば、圧力容器外面に超音波センサを設置し、圧力容器や炉水を介してジェットポンプに超音波パルスを送信し、圧力容器の超音波速度、炉水の超音波速度、圧力容器の板厚、および圧力容器と炉内構造物との間の距離をもとにして、超音波の伝播時間の変化分を計測して炉内構造物の振動振幅を求める原子炉振動監視装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、監視対象物の表面に超音波を反射可能な平面形状の反射面や、直行する平面を反射面として備えたコーナリフレクタを取り付け、この反射体の反射面で反射された超音波を受信して、監視対象物の振動変位を計測する振動・劣化監視装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、原子炉圧力容器の壁内部を反射した反射超音波パルスを特定して除外処理することにより、反射板を取り付けることなく、傾きや曲率がある内部機器の振動を検出することのできる原子炉振動監視装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−125688号公報
【特許文献2】特開2009−068987号公報
【特許文献3】特開2011−133241号公報
【非特許文献1】IIC REVIEW(2009/10), No.42 ,pp.39
【非特許文献2】日本機械学会 蒸気表 BASED ON IAPWS-IF97 (1999),pp.128-129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ジェットポンプをはじめとする沸騰水型原子炉内機器の振動状態を監視する際、超音波が伝播する媒質である低合金鋼やステンレス鋼、ニッケル基合金、炉水は、温度によって音速が変化する(例えば、非特許文献1参照)。軟鋼の音速変化は、室温から300℃で約4%である。また、特に沸騰水型原子炉の炉水の音速は、供用中検査終了時の40℃から定格運転に至る300℃まで昇温する間に、1531m/sから970m/sと約37%も変化することになる(例えば、非特許文献2参照)。
【0008】
このため、音速変化に伴い、例えば、超音波センサを設置したとすると、原子炉起動中の温度変化のある条件下や約300℃での定格運転中では、原子炉外に設置した超音波センサより送信した超音波が計測対象で反射し、再度超音波センサで受信するまでの時間が温度条件によって大幅に変わってくることになる。さらに、このような温度変化が生じた場合、原子炉内機器や圧力容器が熱膨張し、超音波センサを設置した際の超音波センサと計測対象の相対位置関係にずれが生じる。そのため、このような条件化での超音波計測において、計測対象部位からの超音波エコーの受信時間位置が変化するため、計測上のノイズとなるRPV内での多重反射エコーや、超音波の広がりによって生じるノイズエコーや形状エコーとの弁別が難しくなり、計測対象部位からの超音波エコーを特定する必要があった。
【0009】
また、計測対象部位からの超音波エコー受信時間位置を知るためには、温度変化による超音波伝播媒質の音速変化や、温度変化による相対位置のずれを考慮して、各媒質での伝播距離とその温度での音速による補正が必要であった。
【0010】
超音波センサやRPVの温度は熱電対などの温度計測手段により、簡単に計測が可能であるが、計測対象部位を流れる炉水の温度を計測するためには、炉内に温度計測手段を設置する必要があった。
【0011】
さらに、計測対象部位の振動の振幅を高精度に評価するためには、炉水の温度を計測する必要があり、従来の技術ではその評価ができなかった。
【0012】
以上のように、ジェットポンプをはじめとする沸騰水型原子炉内機器の振動状態を監視する技術において、超音波伝播経路の媒質である金属や炉水の超音波の音速が変化することにより、計測対象からの反射エコーを特定することが難しいという問題があった。
【0013】
本発明の目的は、沸騰水型原子炉内機器の振動状態を超音波を用いて監視する際に、計測対象からの反射エコーを特定することが容易な沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法であって、複数の超音波反射面が形成された超音波反射板を、前記沸騰水型原子炉内機器の振動計測対象部位に設け、前記超音波反射板に向けて圧力容器の外面に設置した超音波センサより超音波を送信し、前記複数の超音波反射面でそれぞれ生じた複数の反射波を前記超音波センサで受信し、信号処理部により、前記反射波を連続して収録し、信号処理部により、前記複数の超音波反射面の往復距離に対応した時間分だけ遅れて到達する前記複数の反射波のみを圧力容器の多重反射エコーや形状エコーと弁別して特定し、前記複数の反射波の時間移動量を連続して算出し、前記時間移動量から前記計測対象部位における振動状態を計測するようにしたものである。
【0015】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記複数の超音波反射面でそれぞれ生じた複数の反射波の時間差を算出し、前記複数の反射波の時間差と前記複数の超音波反射面の高さの差を用いて、原子炉水中での超音波の音速を算出し、前記原子炉水中での超音波の音速と前記複数の反射波の時間移動量を用いて、前記計測対象部位における振動状態の振幅を求めるようにしたものである。
【0016】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記複数の反射波が含まれるように反射波の収録時間の範囲を決定するようにしたものである。
【0017】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記複数の超音波反射面は、それぞれ、平面である。
【0018】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記複数の超音波反射面は、それぞれ、曲面である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、沸騰水型原子炉内機器の振動状態を超音波を用いて監視する際に、計測対象からの反射エコーを特定することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法が適用される原子炉の構成を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法が適用される原子炉に用いられるジェットポンプの構成を示す正面図である。
図3】本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法を実施するための装置の構成図である。
図4】本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法の内容説明図である。
図5】本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法によって測定された波形の説明図である。
図6】本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法によって測定された波形の波形収録範囲の決定方法の説明図である。
図7】本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の寸法の説明図である。
図8】本発明の第2の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状の説明図である。
図9】本発明の第3の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状の説明図である。
図10】本発明の第4の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状の説明図である。
図11】本発明の第5の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1図7を用いて、本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法の内容について説明する。
最初に、図1及び図2を用いて、本実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法が適用される原子炉の構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法が適用される原子炉の構成を示す断面図である。図2は、本発明の一実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法が適用される原子炉に用いられるジェットポンプの構成を示す正面図である。なお、図1及び図2にて同一符号は、同一部分を示している。
【0022】
図1は、一般的な沸騰水型原子炉(BWR)及びそれに用いられるジェットポンプの構成を示している。
【0023】
BWRの圧力容器(RPV)101は、一般的に円筒形状を有し、その上端は脱着可能な上部ヘッド103により閉じられ、その下端は底部ヘッド102により閉じられる構造となっている。核燃料を備えた炉心104での核反応により水・蒸気の二相流状態となり、気水分離器105で蒸気と水に分離される。気水分離器105で分離された蒸気は、さらに蒸気乾燥器106で湿分を除去され、蒸気タービン(図示省略)に送られる。また、炉心104は炉心シュラウド107により囲われており、炉心シュラウド支持構造108によりRPV101の内部に支持される。RPV101と炉心シュラウド107の間には、同心円状の空間(アニュラス部108)が設けられており、このアニュラス部108に複数個のジェットポンプ109が配置される。
【0024】
ジェットポンプ109の役割は、気水分離器105及び蒸気乾燥器106で分離し落下した水と給水110を混合した冷却水を再循環系111に取込み、再循環ポンプ(図示省略)により昇圧して、冷却水112を炉心104に供給することである。
【0025】
次に、図2を用いて、ジェットポンプの構成について説明する。
【0026】
図1において再循環系111に取込まれ加圧された冷却水112は、ライザ管201の下部より上部へと供給され、トランジションピース202に到達する。トランジションピース202において、冷却水112は左右に分岐されるとともに、流れの方向を上から下へと180°変え、スロート203内へ導入される。この際に、先端を絞った形状のノズル204で冷却水の流速を増加させるとともに、スロート203の入り口のベルマウス205で流路面積を絞ることで、冷却水112の速度を増加して静圧を減少させる。これにより、ジェットポンプ109の外側にある冷却水112をスロート203に吸い込み、デフューザ206から図1のRPV101の下部へ噴出する。
【0027】
このように、ジェットポンプ109の働きにより、少ない動力で冷却水112の炉心流量を確保することができる。このような役割を果たすジェットポンプ109は、冷却水112がライザ管201上昇した後、トランジションピース202でその流れを180°反転させる際の流体反力に抗するため、ジェットポンプビーム(梁)207により締結されている。
【0028】
長期的な原子炉の運転において、このジェットポンプの信頼性を確保するためには、この冷却水の流体振動に伴うジェットポンプの振動状態(振幅、周波数、振動モードなど)を原子炉外より監視し、その劣化や損傷を事前に検出する必要がある。
【0029】
次に、図3及び図4を用いて、本実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法を実施するための装置構成及び実施内容について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法を実施するための装置の構成図である。図4は、本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法の内容説明図である。なお、図1及び図2と同一符号は,同一部分を示している。
【0030】
図3に示すように、原子炉内機器の振動計測システムは、超音波反射板301と、超音波センサ302と、超音波送受信装置303と、これらを結ぶ同軸線304と、超音波受信波形を収録し処理する超音波信号処理部305から構成される。
【0031】
ジェットポンプ109には、超音波反射板301が取り付けられている。図示の例では、3つの超音波反射板301が、ジェットポンプ109のそれぞれの場所に取り付けられている。超音波反射板301の取り付け箇所が、ジェットポンプ109の計測対象部である。超音波反射板301の詳細構成については、図4を用いて後述する。超音波反射板301の取付け方法は、ネジ止めや取付けジグ、計測対象部位への溶接など、温度変化や振動に対して長期的に耐性のある取付け方であればいずれでもよいものである。
【0032】
超音波反射板301に超音波305が効率良く当たるRPV101の外面の位置に超音波センサ302が取り付けられる。耐熱性のある超音波センサ302の取付け方法としては、金、銀や銅などの軟金属を挟んで圧力をかけて設置する方法や、高温接着剤、ろう付けや高温ハンダで物理的に取り付ける方法が用いられ、高温でも安定して超音波を送受信できる方法であれば、いずれの技術を用いてもよいものである。また、超音波センサ302を設置する際には、後述する超音波反射板301から反射される複数の超音波反射エコーを検出して設置位置を決めてもよいものであるし、設置時の温度条件と計測時の温度条件の違い、特に温度変化に対する媒質の音速変化を考慮し、シミュレーションなどを用いて各温度条件での超音波伝播経路を事前に解析して超音波センサ302の設置位置を決定してもよいものである。
【0033】
超音波センサ302と超音波送受信装置303を結ぶ同軸線304は、RPV101と原子炉格納容器(PCV)307との間を配線し、PCVの配線引き出しハッチを通して、超音波送受信装置303と連結される。この状態で、超音波センサ302から超音波306を送信し、RPV101と炉水30を介して超音波反射板301で反射エコーとなり再び超音波センサ302に受信される。受信された超音波エコーは電気信号として超音波送受信装置303で受信され、その波形が経時的に記録される。ここで、ジェットポンプ109が紙面水平方向に振動していたとすると、超音波306の伝播距離が、経時的に変化することになる。超音波信号処理部305に経時的に保存された反射エコーの時間位置は、前述のジェットポンプの振動に対応して、時間軸上で変化する。この反射エコーの時間軸上での変化を検出すれば計測対象部位の振動を計測したことになる。なお、反射エコーの時間変化と計測対象部位の炉水の音速を乗算することで振動振幅の絶対値を求めることができる。また、その時間変化の振動波形を一般的に用いられている高速フーリエ変換処理(FFT)を行うことで、計測対象の振動の周波数スペクトルを得ることができる。
【0034】
次に、図4を用いて、図3にて説明した超音波反射板301(図4では、401の構造と超音波伝播経路について説明する。
図4(A)は超音波反射板401の斜視図であり、図4(B)は超音波伝播経路の説明図である。
【0035】
超音波反射板01は、ジェットポンプ109の上に固定されている。超音波反射板01は、円盤状であり、その中央に窪みを有している。すなわち、超音波反射板01は、第1の超音波反射面402と、第2の超音波反射面403の2つの平行平面を備えている。
【0036】
超音波反射板01に対して超音波センサ302から超音波を送信すると、超音波は超音波センサ302の内部の前面板404を伝播し、前面板404とRPV101の音響インピーダンス(音速×密度)の差に対応した透過率でRPV101に透過波WA1として伝播、音響インピーダンスに対応した反射率で前面板内で反射波WA2として反射する。同様に、RPV101に伝播した超音波WA1は、炉水への透過波WAとRPV内での反射波WAに分かれる。ここで、RPV101から炉水への透過率は、音響インピーダンスの差が大きいため室温で約5%(300℃で3.5%)と低く、反射率は95%(300℃で96.5%)高くなる。そのため、超音波センサ302から送信された超音波は、そのほとんどがRPV101内を多重反射することとなる。このため、この多重反射波WA5が残響としてノイズとなることがある。
【0037】
さらに、炉水中に伝播した超音波WAは、反射板401に到達する。この例では、反射板01には2つの超音波反射面402,403が付与されているため、反射板401からの反射エコーは反射面の高さの2倍、つまり往復距離に対応した時間分だけ遅れて到達する2つの反射エコーが、これまで説明してきた超音波伝播経路の逆の経路で超音波センサ302に受信されることとなる。
【0038】
本実施形態では、反射板に2つの超音波反射面402,403を備えることで、その反射面の高さの2倍に相当する時間だけずれた2つの反射エコーが得られるため、例えば、1波分(サイン波1サイクル)の超音波を送信したとするとRPV101内の多重反射波WA5はサイン波1サイクルであるのに対して、本実施形態の反射板で反射した反射エコーは時間軸上でずれた2つのサイン波1サイクルが得られることになり、複数の反射波を含む超音波信号の中から反射板で反射した反射エコーのみを弁別し、収録する波形を特定することが容易に可能となる。
【0039】
次に、図5及び図6を用いて、本実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法によって測定された波形について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法によって測定された波形の説明図である。図6は、本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法によって測定された波形の波形収録範囲の決定方法の説明図である。
【0040】
図5は、超音波センサで超音波を送受信し、その際に収録した全波形の概要を示している。
【0041】
図5(A)は従来の反射板を用いた場合である。本実施形態の反射板は、図4に示した反射板40のように、中央に窪みを有し、2つの平行な反射面を有している。それに対して、従来の反射板とは、特許文献2に示されているようなコーナーリフレクタである。
【0042】
図5(A)に示すように、収録した全波形にはRPV101内の多重反射波WA5の波形501が複数存在し、また、形状エコーに伴うノイズ波形502も存在する。従来技術の場合には、反射板は平面により構成されたコーナーリフレクタが用いられるため、反射波形は多重反射の波形501やノイズ波形502と同じような波形となり、特にこれらが同程度の強度で計測された際には計測対象部位に設置した従来の反射板からの反射波形503を特定するのは難しい。さらに、前述のように超音波が伝播するRPVと炉水の温度が変化するとそれぞれの音速も変化するため、この反射波形503の時間位置は時間軸上を移動し、その特定がますます難しくなる。
【0043】
これに対し、本実施形態における反射板401を用いた場合には、図5(B)に示すように、反射板401から2つの反射波形504が得られることになる。この2つの反射波形504の時間間隔は、前述したように超音波反射面の高さの2倍に相当する。またこの2つの反射エコーは、前述したRPV101内の多重反射波形501や形状エコーに伴うノイズの波形502とは波形そのものが異なるため、特定が容易である。さらに、温度変化に伴う媒質の音速変化によりこの2つの反射波形504の時間軸上での位置が変化しても、多重反射波やノイズ波との干渉がない限り容易に特定することが可能である。
【0044】
さらに、この2つの反射波形504を特定した後は、図6に図示されるように、この波形が含まれる範囲に超音波の収録範囲601を設定し、経時的に波形を収録する。なお、図6(B)は、図6(A)における超音波の収録範囲601を収録したときの波形を示している。
【0045】
この場合、計測対象振動するとこの2つの反射波形のみが、時間軸上で振動振幅に伴って時間軸上を左右に移動することになる。また、振幅を求める際には、2つの反射波形の時間差Δtと超音波反射面の高さの差ΔHを用いて、計測対象部位の炉水の音速Vwを次式(1)で求めることができる。

Vw = 2ΔH/Δt …(1)

計測対象部位の振動振幅を求める際には、各時刻で計測された反射波形の時間移動量に式(1)で示した炉水の音速を乗算することで、従来よりも高い精度で振動振幅602を評価することができる。ここで、ジェットポンプが振動していると、その振動に応じて、計測された反射波形は時間軸上で移動して観察されるため、この移動量が、前述の反射波形の移動量である。また、振幅に加えて、周波数、振動モードなどの振動状態を評価することができる。
【0046】
次に、図7を用いて、本実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の寸法について説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の寸法の説明図である。
【0047】
図7で示すように、超音波反射板401の寸法については、超音波センサ302から送信される超音波の広がり701と反射板におけるその強度分布702を元にシミュレーションなどを用いて、超音波センサで受信される2つの超音波エコー強度が同程度になるよう、それぞれの超音波反射面の寸法を決定する。超音波の広がりやその強度分布の解析方法については、円形の超音波振動素子であれば、ベッセル関数型の強度分布になる。これについては、専門書に詳述されているのでここでは省略する。また、それぞれの超音波反射面の高さの差は、計測に用いる超音波センサの周波数と波数、送信方式(シングルパルス、バースト)などを考慮し、2つの反射エコーが互いに干渉しないような時間差ができるような高さに設定する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、ジェットポンプをはじめとする沸騰水型原子炉内機器の振動計測において、計測対象部位に2つ以上の平面あるいは曲面から形成される超音波反射板を設けることで、特徴的な2つ以上の超音波反射エコーが生じ、これを受信することにより、RPV内での多重反射エコーや、超音波の広がりによって生じるノイズエコーや形状エコーとの弁別や特定ができ、温度変化による超音波伝播媒質の音速変化や、温度変化による相対位置のずれを考慮した各媒質での伝播距離とその場の音速による補正をすることなく、超音波の収録範囲を設定できる。また、2つ以上の超音波反射エコーのそれぞれの反射波の時間差と反射面の高さの差から算出される炉水の超音波伝播距離差を用いて、計測時の温度での炉水の超音波の音速を求め、対象部位における振動状態の振幅を補正することで、高精度にその振動振幅を評価できる。
【0049】
したがって、沸騰水型原子炉内機器の振動状態を超音波を用いて監視する際に、計測対象からの反射エコーを特定することが容易となる。
【0050】
次に、図8を用いて、本発明の第2の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状の説明図である。
【0051】
図4に示した例では、凹型に超音波反射面を備えた反射板を用いていた。それに対して、本実施形態では、超音波反射板801に凸型に配置した2つの超音波反射面802,803を備えている。超音波反射面の機能は、第1の実施形態同様であり、2つの平行平面からの2つの超音波の反射波形を特定して、経時間的に計測することで、計測対象部位での振動を計測するとともに、超音波反射面802及び803の高さの差と2つの反射波の時間差からその時の炉水の音速を計測し、従来よりも高い精度で振動振幅を評価することができる。
【0052】
本実施形態によっても、沸騰水型原子炉内機器の振動状態を超音波を用いて監視する際に、計測対象からの反射エコーを特定することが容易となる。
【0053】
次に、図9を用いて、本発明の第3の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状について説明する。
図9は、本発明の第3の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状の説明図である。
【0054】
図4及び図8の例では、2つの超音波反射面を備えた反射板を用いていたた。それに対して、本実施形態では、超音波反射板901に3つの超音波反射面902,903,904を備えている、超音波反射面の数は、2つに限定する必要はなく、2つ以上であれば、超音波反射面の高さの差との反射波の時間差からその時の炉水の音速を計測することができ、従来よりも高い精度で振動振幅を評価することができる。ここで示したように、超音波反射面が3つの場合には、それぞれの高さの差とそれぞれの反射面からの反射波の時間差を用いて、それぞれの炉水の音速を計測し、その平均値を取ることで音速の評価精度を向上することができる。但し、超音波反射面の数が多くなると、分割数に応じてそれぞれの反射波のエコー強度が低下するため、十分なエコー強度を保てる範囲内で超音波反射面の数を選定する必要がある。
【0055】
本実施形態によっても、沸騰水型原子炉内機器の振動状態を超音波を用いて監視する際に、計測対象からの反射エコーを特定することが容易となる。
【0056】
次に、図10を用いて、本発明の第4の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状について説明する。
図10は、本発明の第4の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状の説明図である。
【0057】
前述の各実施形態では、2つ以上の平行平面の超音波反射面を備えた反射板を用いていた。それに対して、本実施形態では、超音波反射板1001を曲面による反射レンズ形状とした、2つの超音波反射面1002,1003を備えている。超音波反射面の機能はこれまでの例と同様であるが、反射レンズ形状とすることで各反射面からの反射エコーの拡散による強度低下を防止でき、反射エコー強度を高く保持でき高いSN比(Signal to Noise比)で計測することができる点が特徴である。このレンズ形状の反射板の形状については、図7でも示したように超音波センサから発振される超音波の広がりを考慮して、焦点距離を設定すればよく、2つの反射面それぞれの焦点距離がほぼ同一となるように設定すればよい。またこの場合にも反射面の数に対応して、反射面の数だけ波形が得られ、超音波反射面1002及び1003の高さの差と2つの反射波の時間差からその時の炉水の音速を計測し、従来よりも高い精度で振動振幅を評価することができる。
【0058】
本実施形態によっても、沸騰水型原子炉内機器の振動状態を超音波を用いて監視する際に、計測対象からの反射エコーを特定することが容易となる。
【0059】
次に、図11を用いて、本発明の第5の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状について説明する。
図11は、本発明の第5の実施形態による沸騰水型原子炉内機器の振動計測方法に用いる反射板の形状の説明図である。
【0060】
前述の各例では、2つ以上の超音波反射面を備えたジェットポンプとは別体の反射板を用いいた。それに対して、本実施形態では、超音波反射板を計測対象部位に取付けるのではなく、対象部位、例えばジェットポンプ1101の表面に、複数の反射面1102,1103から形成される超音波反射部1104を直接加工する。ジェットポンプの外径は円筒形状であるが、その下部の直径は200mmφ程度と大きく、容易に平面等の切削加工が可能である。ジェットポンプの上部は、下部に比べて直径が小さい。一方、ジェットポンプの各部は鋳造により成形されるため、予めほぼ平坦となるような部分を設けておき、その部分を切削加工して反射面を形成することができる。超音波反射部の形状は、図4図8図10に示した形状を加工すれば、同様の機能を備えることができることになる。これにより、沸騰水型原子炉運転中に反射板が脱落して計測できなくなることを防止することできるうえ、反射板を介することなく、計測対象そのものの振動状態を計測することができる。
【0061】
本実施形態によっても、沸騰水型原子炉内機器の振動状態を超音波を用いて監視する際に、計測対象からの反射エコーを特定することが容易となる。
【符号の説明】
【0062】
101…BWRの圧力容器(RPV)
109…ジェットポンプ
301…超音波反射板
302…超音波センサ
303…超音波送受信装置
304…同軸線
305…超音波信号処理部
306…超音波
307…原子炉格納容器(PCV)
308…配線引き出しハッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11