特許第5963235号(P5963235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5963235PWMインバータの制御方法および制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963235
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】PWMインバータの制御方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20160721BHJP
   H02M 7/483 20070101ALI20160721BHJP
【FI】
   H02M7/48 F
   H02M7/483
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-285062(P2011-285062)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-135554(P2013-135554A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利次
(72)【発明者】
【氏名】井上 馨
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−298631(JP,A)
【文献】 米国特許第05319295(US,A)
【文献】 特開2002−369546(JP,A)
【文献】 特開平09−009642(JP,A)
【文献】 特開平01−259761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相PWMインバータの各スイッチ状態に対応する複数のスイッチベクトルの選択を切り替えながら、当該PWMインバータを空間ベクトル制御する方法であって、
前記PWMインバータの出力変化の1周期を、前記複数のスイッチベクトルのうちのいくつかのスイッチベクトルで表現可能な複数の領域に分割して捉え、
イッチサイクルが切り替わる際に、
任意の出力ベクトルが前記複数の領域のうちのどの領域に含まれるのかを特定し、
特定した前記領域を表現するいくつかのスイッチベクトルを予め定められた複数の出力順序パターンにしたがって順次選択する際にスイッチ状態が変化しない節約相を特定可能とした第1のルールと、前記複数のスイッチベクトルの選択を任意に切り替える際にスイッチ状態が変化する変化相を特定可能とした第2のルールとに基づいて、新しいスイッチサイクルにおける前記節約相と、スイッチサイクルが切り替わる際の前記変化相を特定し、
特定した前記変化相の相電流に予め定められた定数k(ただし、0<k<1)を乗じた値から特定した前記節約相の相電流を減じることにより前記複数の出力順序パターンのそれぞれの評価値を算出するとともに、前記評価値が最小となる出力順序パターンを前記複数の出力順序パターンの中から選択し、
選択した前記出力順序パターンにしたがって前記いくつかのスイッチベクトルの選択を切り替えていくことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記出力順序パターンは、特定した前記領域に関係する前記いくつかのスイッチベクトルを、スイッチ状態の変化が最小となるように並べたものであることを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
複数のスイッチからなるインバータ部を備えたPWMインバータにおいて、前記スイッチの導通状態を制御する制御装置であって、
請求項1または2に記載の制御方法により前記スイッチの導通状態を変化させることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
昇降圧部と、前記昇降圧部によって昇圧または降圧された後の直流電圧が入力される、複数のスイッチからなるインバータ部を備えたPWMインバータにおいて、前記スイッチの導通状態を制御する制御装置であって、
請求項1または2に記載の制御方法により前記スイッチの導通状態を変化させることを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWMインバータの制御方法および制御装置に関し、特にスイッチベクトルを用いてPWMインバータを空間ベクトル制御する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、三相2レベル形のPWMインバータ1aは、制御部3によって制御されるインバータ部2からなり、インバータ部2の各相出力が三相負荷4に接続されている。同図に示すように、インバータ部2はIGBT等からなる6つのスイッチSW1〜SW6を有し、このうち、スイッチSW1、SW2はU相アームを、スイッチSW3、SW4はV相アームを、スイッチSW5、SW6はW相アームをそれぞれ構成する。各スイッチSW1〜SW6の導通状態は、制御部3の制御下で切り替えられる。
【0003】
PWMインバータ1aの制御方法は、従来から種々の方法が検討されている。その1つである空間ベクトル制御では、インバータ部2の各スイッチ状態に対応する2=8個のスイッチベクトルV〜V図2参照)のうちの少なくとも1つを選択することによりPWMインバータ1aを制御する(例えば、特許文献1参照)。ここで、各スイッチベクトルV〜Vの括弧内の数字“1”は、各相アームの上側スイッチがオン(下側スイッチはオフ)していることを示し、“0”は、各相アームの下側スイッチがオン(上側スイッチはオフ)していることを示す。各スイッチベクトルV〜Vとスイッチ状態の関係は、下表の通りである。
【表1】
【0004】
なお、本明細書では、各相アームのスイッチ状態が同一で出力電圧がゼロとなるスイッチベクトル(V、V、後述するV26)を「ゼロスイッチベクトル」と呼び、その他のスイッチベクトル(V〜V、後述するV〜V25)を「非ゼロスイッチベクトル」と呼ぶこととする。
【0005】
この空間ベクトル制御では、出力電圧を任意の波形に制御することができる。また、この空間ベクトル制御では、PWMインバータ1aの出力状態をモードI〜VIに相当する6つの領域に分割して捉える(図3参照)。各モードの領域内にある任意の出力ベクトルVは、上記スイッチベクトルV〜Vのベクトル的組み合わせにより表現することができる。つまり、空間ベクトル制御では、任意の制御則にしたがって出力ベクトルVを決定するとともに、当該出力ベクトルVを得るためのスイッチベクトルを選択し、インバータ部2を選択したスイッチベクトルに対応したスイッチ状態とすることにより、PWMインバータ1aを制御する。
【0006】
例えば、図3の時間tにおける出力ベクトルVはモードIIの領域内にあるので、出力ベクトルVはスイッチベクトルV、V、VまたはスイッチベクトルV、V、Vのベクトル的組み合わせにより表現することができる。すなわち、3つのスイッチベクトルV(V)、V、Vを適当な順序で選択し、インバータ部2を各スイッチベクトルV(V)、V、Vに対応したスイッチ状態とすることにより、時間tにおける所定の各相出力電圧を得ることができる。
【0007】
なお、上記出力ベクトルVは、例えば、各相出力電圧を正弦波状とする場合は、PWMインバータ1aの各相出力電圧が1周期変化する間に、図2の六角形内にある円軌道上を半時計周りに1周する。言い換えると、出力ベクトルVは、PWMインバータ1aの出力が電気角で60°変化する度にモードI→モードII→・・・→モードVI→モードI・・・に対応した領域内を順次移動していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−245588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記スイッチベクトルV〜Vの選択は一意的ではなく、自由度を有している。例えば、上記時間tの一例では3つのスイッチベクトルV(V)、V、Vを選択するが、これらをどのような順序で選択するのかは全くの自由である。このため、従来の空間ベクトル制御では、スイッチベクトルV〜Vの選択順序によっては、1スイッチサイクルあたりのスイッチング回数が増加して、不要なスイッチング損失が発生する場合があった。
【0010】
より詳しくは、例えば、スイッチベクトルV、V、Vをこの順序で選択したとすると、VからVでU相とV相のスイッチ状態が変化し、VからVでU相のスイッチ状態が変化し、さらにVからVでV相のスイッチ状態が変化するので、結局、1スイッチサイクルあたりのスイッチ状態が変化する相の数は4となる。これに対して、スイッチベクトルV、V、Vをこの順序で選択し、その後、スイッチベクトルV、V、Vをこの順序で選択すれば、1スイッチサイクルあたりのスイッチ状態が変化する相の数は2となる。つまり、前者を選択した場合は後者を選択した場合よりも1スイッチサイクルあたりのスイッチ状態が変化する相の数が2多く、その分だけ不要なスイッチング損失が発生していた。
【0011】
また、スイッチング損失はスイッチングする相の電流に概ね比例しているので、スイッチング回数が同一でも相電流が異なればスイッチング損失は異なる。この点においても、従来の空間ベクトル制御では、不要なスイッチング損失が発生する場合があった。
【0012】
例えば、U相電流iがW相電流iよりも大きいという条件の下で、U相およびV相のいずれかを1回だけスイッチングさせる場合は、W相のスイッチング損失よりもU相のスイッチング損失の方が大きいので、W相をスイッチングさせる方がスイッチング損失の低減の観点から好ましい。当然ながら、U相電流iがW相電流iよりも小さいという条件の下では、U相をスイッチングさせる方が好ましい。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、スイッチング回数と相電流の両方に着目することにより、不要なスイッチング損失の発生を防ぐことができるPWMインバータの制御方法および制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るPWMインバータの制御方法は、三相PWMインバータの各スイッチ状態に対応する複数のスイッチベクトルの選択を切り替えながら、当該PWMインバータを空間ベクトル制御する方法であって、PWMインバータの出力変化の1周期を、複数のスイッチベクトルのうちのいくつかのスイッチベクトルで表現可能な複数の領域に分割して捉え、スイッチサイクルが切り替わる際に、(1)任意の出力ベクトルが複数の領域のうちのどの領域に含まれるのかを特定し、(2)特定した領域を表現するいくつかのスイッチベクトルを予め定められた複数の出力順序パターンにしたがって順次選択する際にスイッチ状態が変化しない節約相を特定可能とした第1のルールと、複数のスイッチベクトルの選択を任意に切り替える際にスイッチ状態が変化する変化相を特定可能とした第2のルールとに基づいて、新しいスイッチサイクルにおける節約相と、スイッチサイクルが切り替わる際の変化相を特定し、(3)特定した変化相の相電流に予め定められた定数k(ただし、0<k<1)を乗じた値から特定した節約相の相電流を減じることにより複数の出力順序パターンのそれぞれの評価値を算出するとともに、評価値が最小となる出力順序パターンを複数の出力順序パターンの中から選択し、(4)選択した出力順序パターンにしたがっていくつかのスイッチベクトルの選択を切り替えていくことを特徴とする。
【0015】
上記制御方法における出力順序パターンは、例えば、特定した領域に関係するいくつかのスイッチベクトルを、スイッチ状態の変化が最小となるように並べたものである。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るPWMインバータの制御装置は、複数のスイッチからなるインバータ部を備えたPWMインバータにおいて、スイッチの導通状態を制御する制御装置であって、上記制御方法によりスイッチの導通状態を変化させることを特徴とする。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るPWMインバータの制御装置は、昇降圧部と当該昇降圧部によって昇圧または降圧された後の直流電圧が入力される、複数のスイッチからなるインバータ部を備えたPWMインバータにおいて、スイッチの導通状態を制御する制御装置であって、上記制御方法によりスイッチの導通状態を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スイッチング回数と相電流の両方に着目することにより、不要なスイッチング損失の発生を防ぐことができるPWMインバータの制御方法および制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】三相2レベル形PWMインバータの模式回路図である。
図2】三相2レベル形PWMインバータにおける空間ベクトル制御の概念を説明するための図である。
図3】三相2レベル形PWMインバータにおける空間ベクトル制御の概念を説明するための図である。
図4】本発明に係る三相2レベル形PWMインバータの制御方法における第1のルールの概念図である。
図5】出力ベクトルから分解方向ベクトルへの分解を説明するための図である。
図6】本発明に係る三相2レベル形PWMインバータの制御方法のフローチャートである。
図7】本発明に係る三相2レベル形PWMインバータの制御方法による制御の一例を示すタイミングチャートである。
図8】本発明を適用可能な三相PWMインバータの変形例を示す模式回路図である。
図9】本発明に係る制御方法により三相2レベル形PWMインバータを制御した実験結果を示す波形図である。
図10】三相3レベル形PWMインバータの模式回路図である。
図11】本発明に係る三相3レベル形PWMインバータの制御方法における第1のルールの概念図である。
図12】三相3レベル形PWMインバータにおける空間ベクトル制御の概念を説明するための図である。
図13】三相3レベル形PWMインバータの空間ベクトル制御における出力順序ベクトルの順序デューティ比の求め方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る三相2レベル形PWMインバータの制御方法および制御装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態では、既知の方法で求めた各相デューティ比(u、u、u)が入力指令値として制御部3(本発明の「制御装置」に相当する)に入力されるものとする。また、以下では、図1に示す三相2レベル形PWMインバータ1aを制御対象とする場合について詳細に説明するが、本発明は、インバータ部2の手前に昇降圧(昇圧、降圧、昇降圧)部5を設け、インバータ部2に入力される直流電圧を可変としたPWMインバータ1b(図8参照)や、後述する3レベル形以上のマルチレベルのインバータ部2cを備えたPWMインバータ1c(図10参照)にも適用することができる。
【0021】
[三相2レベル形PWMインバータ]
[ルール作成]
本発明では、事前の準備として、スイッチサイクルが切り替わる際に参照するルールを作成しておく必要がある。このルールは2つのルールを含む。すなわち、(1)1スイッチサイクル中にスイッチベクトルV〜Vの選択が切り替わっていくことに伴う定常的な損失を最小化するための第1のルールと、(2)新たなスイッチサイクルにおいて最初に選択されるスイッチベクトルV〜Vが前のスイッチサイクルにおいて最後に選択されたスイッチベクトルV〜V(以下、「直前スイッチベクトル」という)とは異なるスイッチベクトルV〜Vに変更されることによる過渡的な損失を最小化するための第2のルールとを含む。
【0022】
第1のルールは、スイッチベクトルV〜Vの選択を切り替える前と後で、スイッチ状態が変化する相の数が最小となるスイッチベクトルV〜Vの選択順序をまとめたもの(以下、「出力順序パターン」という)で、基本的に、本発明ではこの出力順序パターンにしたがってスイッチベクトルV〜Vの選択が切り替えられる。
【0023】
例えば、モードIの領域に含まれる出力ベクトルVは、ゼロスイッチベクトルV、Vと非ゼロスイッチベクトルV、Vのベクトル的組み合わせにより表現することができるが、ゼロスイッチベクトルVが選択された後に非ゼロスイッチベクトルVが選択されると、2相(U相、V相)のスイッチ状態が変化することになるので、本ルールの下ではそのような順序でスイッチベクトルV〜Vを選択することは許されない。言い換えると、本ルールの下では、選択スイッチベクトルのVからVへの移動は許されない。同様に、VからVへの移動、VからVへの移動、およびVからVへの移動も、本ルールの下では許されない。
【0024】
また、モードVの領域に含まれる出力ベクトルVは、ゼロスイッチベクトルV、Vと非ゼロスイッチベクトルV、Vの組み合わせにより表現することができるが、ゼロスイッチベクトルVが選択された後に非ゼロスイッチベクトルVが選択されると、2相(U相、W相)のスイッチ状態が変化することになるので、本ルールの下ではそのような選択スイッチベクトルの移動は許されない。同様に、VからVへの移動、VからVへの移動、およびVからVへの移動も、本ルールの下では許されない。
【0025】
図4は、第1のルールを整理した図である。結局、本発明に係る制御方法では、同図中の矢印で示された方向への選択スイッチベクトルの移動のみが許され、その他の移動は許されない。
【0026】
表2は、第1のルールを「現モード」(出力ベクトルVを含む領域に相当するモード)毎に具体化したものである。なお、表2中のV、V、Vは「出力順序ベクトル」であり、本発明では、出力順序ベクトルVとされたスイッチベクトルV〜Vが選択された後に、出力順序ベクトルVとされたスイッチベクトルV〜Vが選択され、その後、出力順序ベクトルVとされたスイッチベクトルV〜Vが選択される。
【表2】
【0027】
表2によれば、例えば、現モードがIの場合は、スイッチング回数を最小化するための出力順序パターンとして、ゼロスイッチベクトルVと非ゼロスイッチベクトルV、Vをこの順で選択する出力順序パターン1、非ゼロスイッチベクトルV、VとゼロスイッチベクトルVをこの順で選択する出力順序パターン2、非ゼロスイッチベクトルV、VとゼロスイッチベクトルVをこの順で選択する出力順序パターン3、およびゼロスイッチベクトルVと非ゼロスイッチベクトルV、Vをこの順で選択する出力順序パターン4が存在することが分かる(表2(A)参照)。
【0028】
表2に示すように、モードI以外のモードについてもそれぞれ4つの出力順序パターンが存在する。
【0029】
また、表2によれば、「節約相」を特定することもできる。節約相とは、スイッチ状態が変化しない相を意味する。例えば、現モードがIであり、かつ出力順序パターン1にしたがってスイッチベクトルをV→V→Vの順に選択する場合は、U相およびV相のスイッチ状態は変化するが、W相のスイッチ状態は変化しない。したがって、この場合は、W相におけるスイッチング損失が低減(節約)されることになる。別の例として、現モードがVであり、かつ出力順序パターン3にしたがってスイッチベクトルをV→V→Vの順に選択する場合は、U相およびW相のスイッチ状態は変化するが、V相のスイッチ状態は変化しない。したがって、この場合は、V相におけるスイッチング損失が低減(節約)されることになる。
【0030】
以上のように、第1のルールを具体化した表2によれば、各モードにおいて、スイッチベクトルV〜Vをどのような順序で選択すればスイッチング回数を最小化することができるのかが分かるとともに、当該順序でスイッチベクトルV〜Vを選択した場合にスイッチング損失が低減されるのはどの相なのかを特定することができる。
【0031】
また、前記の通り、スイッチング損失は相電流に概ね比例するので、各相の電流に関する情報と節約相に関する情報(表2)とがあれば、どの出力順序パターンにしたがってスイッチベクトルV〜Vを選択することが定常的なスイッチング損失を低減する観点から好ましいのかを特定することができる。例えば、現モードがIであり、かつU相電流iがW相電流iよりも大きい場合は、U相のスイッチング損失が節約される出力順序パターン2および4にしたがってスイッチベクトルV〜Vを選択するのが好ましく、W相のスイッチング損失が節約される出力順序パターン1および3にしたがってスイッチベクトルV〜Vを選択するのは適当ではない。U相電流iおよびW相電流iの大小関係が逆の場合は、当然ながら、W相のスイッチング損失を節約できる出力順序パターン1および3にしたがってスイッチベクトルV〜Vを選択するべきである。
【0032】
続いて、第2のルールについて説明する。第2のルールは、スイッチサイクルが切り替わる際にスイッチ状態が変化する相(以下、「変化相」という)を特定可能としたものであり、例えば、表3のような形式に具体化することができる。
【表3】
【0033】
この表によれば、例えば、直前スイッチベクトルがVであり、かつ新たなスイッチサイクルで最初に選択されるスイッチベクトルがVの場合の変化相は、U相およびV相であることを特定することができる。また、直前スイッチベクトルがVであり、かつ新たなスイッチサイクルで最初に選択されるスイッチベクトルがVの場合の変化相は、U相、V相およびW相であることを特定することができる。
【0034】
以上のように、第2のルールを具体化した表3によれば、スイッチサイクルが切り替わる際にスイッチベクトルV〜Vの選択が変化すると、どの相のスイッチ状態が変化するのかを特定することができる。また、前記の通り、スイッチング損失は相電流に概ね比例する。したがって、各相の電流に関する情報と変化相に関する情報(表3)とがあれば、スイッチサイクルの切り替わり時に発生する過渡的な損失を最小化するためには、次のスイッチサイクルにおいて最初にどのスイッチベクトルV〜Vを選択するのが好ましいのかが分かる。
【0035】
なお、相電流の大小関係等によっては、定常的なスイッチング損失を低減し得る出力順序パターンと過渡的なスイッチング損失を低減し得る出力順序パターンが一致しない場合がある。このため、全スイッチング損失を総合的に評価することによりいずれか一方の損失低減を優先させるための評価値が必要となるが、これについては後で詳細に説明する。
【0036】
[制御フロー]
続いて、図6のフローチャートを参照しつつ、入力指令値である各相デューティ比u、u、uが入力されてから、選択すべきスイッチベクトルV〜Vと、その順序およびデューティ比が最終決定されるまでのフローについて説明する。
【0037】
まず、ステップS1では、各相デューティ比u、u、uが制御部3に入力される。各相デューティ比u、u、uは、例えば、PWMインバータ1aの各相出力電圧波形を所定振幅・周波数の正弦波状とするためのもので、既知のインバータ制御方法により求められる。
【0038】
ステップS2では、下式(1)を用いて、入力された各相デューティ比u、u、uから出力ベクトルVの横軸成分uおよび縦軸成分uを求める。
【数1】
各相デューティ比u、u、uの代わりに、任意の制御則にしたがって求めた出力ベクトルV(横軸成分u、縦軸成分u)が制御部3に入力される場合は、ステップS1およびS2を省略して、ステップS3から本フローをスタートさせてもよい。
【0039】
ステップS3では、ステップS2で求めた出力ベクトルVの横軸成分uおよび縦軸成分uから、「現モード」を特定する。すなわち、出力ベクトルVが、図2に示す六角形内の6つの領域(モードI〜VIに対応)のいずれに含まれるのかを特定する。
【0040】
ステップS4では、「直前スイッチベクトル」を特定する。直前スイッチベクトルは、1つ前のスイッチサイクルで求めた出力順序ベクトルVを参照することにより特定することができる。
【0041】
ステップS5では、出力ベクトルVを分解方向ベクトルVα、Vβ、Vに分解する。より詳しくは、出力ベクトルVの横軸成分uおよび縦軸成分uを下式(2)により変換し、図5に示す分解方向ベクトルVα、Vβ、Vのデューティ比uα、uβ、u(以下、「分解デューティ比」という)を求める。
【数2】
上式(2)を用いて横軸成分uおよび縦軸成分uを分解デューティ比uα、uβ、uに変換することにより、出力ベクトルVをモードIの領域内にあるものとして取り扱うことができる。
【0042】
ステップS6では、表4を用いて現モードの領域を回転させることによりモードIの領域に変換し、分解方向ベクトルVα、Vβ、Vに相当するスイッチベクトルV〜Vを求める。
【表4】
例えば、現モードがIIの場合は、上表を用いてモードIIの領域を空間ベクトル平面上で時計周りに60°回転させ、分解方向ベクトルVα、Vβに相当するスイッチベクトルV〜Vは、それぞれ非ゼロスイッチベクトルV、Vであることが分かる。また、現モードがVの場合は、上表を用いてモードVの領域を時計周りに240°回転させ、分解方向ベクトルVα、Vβに相当するスイッチベクトルV〜Vは、それぞれ非ゼロスイッチベクトルV、Vであることが分かる。なお、分解方向ベクトルVに相当するスイッチベクトルV〜Vは、現モードにかかわらずゼロスイッチベクトルVまたはVとなる。
【0043】
ステップS7では、表2に具体化された第1のルールに基づいて、複数の出力順序パターンを構成する3つのスイッチベクトルV〜Vと、各出力順序パターンにおける節約相を特定する。例えば、現モードがIの場合は、表2(A)を参照して、ゼロスイッチベクトルVと非ゼロスイッチベクトルV、Vをこの順で選択する出力順序パターン1、非ゼロスイッチベクトルV、VとゼロスイッチベクトルVをこの順で選択する出力順序パターン2、非ゼロスイッチベクトルV、VとゼロスイッチベクトルVをこの順で選択する出力順序パターン3、およびゼロスイッチベクトルVと非ゼロスイッチベクトルV、Vをこの順で選択する出力順序パターン4が存在し、各出力順序パターンの節約相はそれぞれW相、U相、W相、U相であることが特定される。
【0044】
ステップS8では、表3に具体化された第2のルールに基づいて、選択スイッチベクトルを直前スイッチベクトルから次のスイッチサイクルで最初に選択すると考えられるスイッチベクトルV〜Vのいずれかに移動させた場合の変化相を特定する。例えば、直前スイッチベクトルがVで、かつ現モードがIIの場合は、次のスイッチサイクルにおいてV、V、V、Vのいずれかを最初に選択することが考えられるので(表2(B)参照)、表3のVの行を参照して、V→Vの移動における変化相はU相、V→Vの移動における変化相はV相、V→Vの移動における変化相はU相およびV相、V→Vの移動における変化相はV相およびW相であることが特定される。
【0045】
ステップS9では、UVW各相の相電流i、i、iを測定する。キルヒホッフの法則により相電流i、i、iの和は必ず0になるので、図1に示すように、実際に測定するのはU相電流iとW相電流iだけにして、残りの1相の電流(V相電流i)については計算により求めてもよい。
【0046】
ステップS10では、ステップS7で特定した節約相と、ステップS8で特定した変化相と、ステップS9で測定した相電流i、i、iとに基づいて、出力順序パターンを評価する。
【0047】
ステップS10における評価は、“変化相の相電流に定数k(ただし、0<k<1)を乗じた値から節約相の相電流を減じた値”に基づいて行う。例えば、直前スイッチベクトルがVで、かつ現モードがIIの場合、出力順序パターン1〜4の評価値はそれぞれ以下の通りとなる。

・出力順序パターン1の評価値:k×i−i
・出力順序パターン2の評価値:k×i−i
・出力順序パターン3の評価値:k×(i+i)−i
・出力順序パターン4の評価値:k×(i+i)−i
【0048】
本発明では、評価値が最も低い出力順序パターンが最も高く評価される。例えば、上記具体例において、k=0.5、i=0.5[A]、i=1[A]、i=−1.5[A]である場合は、出力順序パターン1〜4の評価値はそれぞれ−1.25、−1、−0.25、0.25となるので、出力順序パターン1の評価が最も高くなる。
【0049】
定数kを0<k<1の範囲内で設定することにより変化相の相電流が評価値に与える影響を相対的に低くしたのは、変化相におけるスイッチング損失はスイッチサイクルが切り替わる際に発生する過渡的なものに過ぎないからである。本発明では、定数kをこのように設定することにより、変化相における過渡的なスイッチング損失が低減される出力順序パターンよりも、節約相における定常的なスイッチング損失が低減される出力順序パターンを高く評価する。
【0050】
ステップS11では、最も高い評価が得られた出力順序パターンを構成する3つのスイッチベクトルを出力順序ベクトルV、V、Vとする。上記具体例では、スイッチベクトルV、V、Vがそれぞれ出力順序ベクトルV、V、Vとされる。
【0051】
ステップS12では、ステップS6およびステップS11の結果から、出力順序ベクトルV、V、Vのデューティ比u、u、u(以下、「順序デューティ比」という)と、ステップS5で求めた分解デューティ比uα、uβ、uとを紐付ける。例えば、ステップS6で分解方向ベクトルVαに相当するスイッチベクトルがVであると求められ、ステップS11で非ゼロスイッチベクトルVが出力順序ベクトルVとされた場合は、分解方向ベクトルVαおよび出力順序ベクトルVが両ベクトルに共通する非ゼロスイッチベクトルVを介して紐付けられる(お互いに等しいことが特定される)。同様に、出力順序ベクトルVの順序デューティ比uと、ステップS5で求めた分解方向ベクトルVαの分解デューティ比uαも紐付けられる。
【0052】
ステップS13では、ステップS11において出力順序ベクトルV、V、VであるとされたスイッチベクトルV〜Vと、ステップS12で求めた順序デューティ比u、u、uとに基づいて、インバータ部2の各スイッチSW1〜SW6の導通状態を切り替える。
【0053】
以上をまとめると、上記フローを採用した本発明に係る制御方法(制御装置)によれば、出力順序ベクトルV、V、VとされるスイッチベクトルV〜Vと、順序デューティ比u、u、uを求めることができる。そして、出力順序ベクトルV、V、VとされたスイッチベクトルV〜VをV→V→Vの順に選択するとともに、それぞれの選択時間、すなわち選択したスイッチベクトルV〜Vのスイッチ状態とする時間を順序デューティ比u、u、uに比例した時間とすることにより、入力指令値に応じた所定の各相出力電圧を得ることができる。
【0054】
また、本発明に係る制御方法(制御装置)によれば、最も評価が高い出力順序パターンにしたがってスイッチベクトルV〜Vの選択を切り替えていくので、入力指令値に応じた所定の各相出力電圧を得る過程において発生するスイッチング損失を最小化することができる。
【0055】
[制御の具体例]
次に、図7を参照しながら、本発明に係る制御の具体的一例を特徴的な部分に限って説明する。なお、本具体例では、ステップS3で特定した現モードはII、ステップS4で特定した直前スイッチベクトルはVであるとする。また、本具体例では、ステップS9で測定されるU相電流i、V相電流i、W相電流iはそれぞれ0.5[A]、1[A]、−1.5[A]であり、定数kは予め0.5に設定されているものとする。
【0056】
本具体例のステップS6では、表4のモードIIの行を参照して、分解方向ベクトルVαに相当するのは非ゼロスイッチベクトルVであり、分解方向ベクトルVβに相当するのは非ゼロスイッチベクトルVであることが求められる。また、分解方向ベクトルVに相当するのはゼロスイッチベクトルVまたはVであることが求められる。
【0057】
ステップS7では、現モードがIIであることから、表2(B)を参照して、ゼロスイッチベクトルVと非ゼロスイッチベクトルV、Vをこの順で選択する出力順序パターン1と、非ゼロスイッチベクトルV、VおよびゼロスイッチベクトルVをこの順で選択する出力順序パターン2と、非ゼロスイッチベクトルV、VおよびゼロスイッチベクトルVをこの順で選択する出力順序パターン3と、ゼロスイッチベクトルVおよび非ゼロスイッチベクトルV、Vをこの順で選択する出力順序パターン4とが存在し、各出力順序パターンにおける節約相は、W相、W相、V相、V相であることが特定される。
【0058】
ステップS8では、現モードがII、直前スイッチベクトルがVであることから、表3のVの行を参照して、V→Vの移動における変化相はU相、V→Vの移動における変化相はV相、V→Vの移動における変化相はU相およびV相、V→Vの移動における変化相はV相およびW相であることが特定される。
【0059】
ステップS10では、モードIIの出力順序パターン1〜4の評価値が計算される。出力順序パターン1の評価値は、k×i−i=−1.25、出力順序パターン2の評価値は、k×i−i=−1、出力順序パターン3の評価値は、k×(i+i)−i=−0.25、出力順序パターン4の評価値は、k×(i+i)−i=0.25となるので、最も評価の高い出力順序パターンとして出力順序パターン1が選択される。
【0060】
ステップS11では、ゼロスイッチベクトルVが出力順序ベクトルVとされ、非ゼロスイッチベクトルVが出力順序ベクトルVとされ、さらに非ゼロスイッチベクトルVが出力順序ベクトルVとされる。
【0061】
ステップS12では、ゼロスイッチベクトルVを介して分解方向ベクトルVと出力順序ベクトルVが紐付けられ、非ゼロスイッチベクトルVを介して分解方向ベクトルVβと出力順序ベクトルVが紐付けられ、さらに非ゼロスイッチベクトルVを介して分解方向ベクトルVαと出力順序ベクトルVが紐付けられる。その結果、ゼロスイッチベクトルVの順序デューティ比uは、分解デューティ比uとなる。同様に、非ゼロスイッチベクトルVおよびVの順序デューティ比u、uは、それぞれ分解デューティ比uβ、uαとなる。
【0062】
結局、本具体例では、図7に示すように、u・T(ただし、Tは1スイッチサイクルの時間)の時間だけゼロスイッチベクトルVを選択した後に、uβ・Tの時間だけ非ゼロスイッチベクトルVを選択し、さらにその後、uα・Tの時間だけ非ゼロスイッチベクトルVを選択することにより、出力ベクトルVを得て、所定の各相出力電圧を得ることができる。
【0063】
なお、図5から明らかなように、出力ベクトルVが分解方向ベクトルVαに等しい場合は、分解デューティ比uα(=u)が1となり、分解デューティ比uβ(=u)、u(=u)が0となる。したがって、この場合は、ゼロスイッチベクトルVおよび非ゼロスイッチベクトルVの選択時間が0となり、ゼロスイッチベクトルVおよび非ゼロスイッチベクトルVは選択されないこととなる。出力ベクトルVが分解方向ベクトルVβ、Vに等しい場合も同様のことがいえる。つまり、本発明に係る制御方法(制御装置)では、1スイッチサイクルにつき必ず3つのスイッチベクトルV〜Vが選択されるとは限らない。
【0064】
次に、図9を参照しながら、本発明に係る制御方法により三相2レベル形PWMインバータ1aを動作させた実験の結果について説明する。なお、本実験は、総合負荷装置を用いて力率を1.0(図9(A))および0.8(図9(B))に変化させて行った。いずれの場合も、インバータ部2に入力される直流電圧は100[V]であり、交流出力が、周波数が50[Hz]、振幅が50[V]の正弦波状となるように制御を行った。
【0065】
図9(A)に示すように、力率が1.0の場合は、U相電流iのピーク付近の60°の区間において現モードがVIまたはIとなり、スイッチベクトルV〜Vの選択がV→V→V(表2(F)の出力順序パターン3参照)、V→V→V(表2(F)の出力順序パターン4参照)、V→V→V(表2(A)の出力順序パターン2参照)またはV→V→V(表2(A)の出力順序パターン4参照)の順に行われることにより、U相のスイッチングが節約された。すなわち、他の相よりも相電流が大きいU相のスイッチングが積極的に節約され、定常的なスイッチング損失を低減することができた。図示していないが、他の相についても同様の結果であり、相電流が他の相の相電流よりも大きくなる、1周期のほぼ1/3の区間においてスイッチングが節約された。
【0066】
図9(B)に示すように、力率が0.8の場合は、U相電流iのピーク付近の60°の区間において現モードがIとなり、スイッチベクトルV〜Vの選択がV→V→V(表2(A)の出力順序パターン2参照)またはV→V→V(表2(A)の出力順序パターン4参照)の順に行われることにより、力率が1.0の場合と同様にU相のスイッチングが節約された。他の相についても同様の結果となった。
【0067】
[三相3レベル形PWMインバータ]
続いて、三相3レベル形PWMインバータを制御対象とする場合について説明する。図10に示すように、三相3レベル形のPWMインバータ1cは、制御部3(本発明の「制御装置」に相当する)によって制御されるインバータ部2cからなり、インバータ部2cの各相出力が三相負荷4に接続されている。同図に示すように、インバータ部2はIGBT等からなる12個のスイッチを有し、このうち、スイッチSWUpp、SWUpo、SWUno、SWUnnはU相アームを、スイッチSWVpp、SWVpo、SWVno、SWVnnはV相アームを、そしてスイッチSWWpp、SWWpo、SWWno、SWWnnはW相アームをそれぞれ構成する。各スイッチの導通状態は、制御部3の制御下で切り替えられる。図8に示す三相2レベル形のPWMインバータ1bと同様、インバータ部2cの手前に昇降圧(昇圧、降圧、昇降圧)部を設け、インバータ部2cに入力される直流電圧を可変としてもよい。
【0068】
三相3レベル形PWMインバータ1cの空間ベクトル制御では、インバータ部2cの各スイッチ状態に対応する3=27個のスイッチベクトルV〜V26図11、表5参照)のうちの少なくとも1つを選択することによりPWMインバータ1cを制御する。
【表5】
ここで、各スイッチベクトルV〜V26のスイッチ状態を表す数字“1”は、例えば、U相で説明すると、スイッチSWUpp、SWUpoがオンしていることを示し、“1/2”は、スイッチSWUpo、SWUnoがオンしていることを示し、“0”は、スイッチSWUno、SWUnnがオンしていることを示す。
【0069】
三相2レベル形PWMインバータ1aの場合と同様に、三相3レベル形PWMインバータ1cの空間ベクトル制御においても出力状態をモードI〜VIに相当する6つの領域に分割して捉えるが、三相3レベル形PWMインバータ1cの場合はこのモードI〜VIのそれぞれがさらに4つに細分化されている。例えば、モードIは、図12に示すように細分化モードIa〜Idに細分化されている。このため、細分化モードIaの領域内にある任意の出力ベクトルVは、ゼロスイッチベクトルV、V、V26と非ゼロスイッチベクトルV14〜V17のベクトル的組み合わせにより表現されるが、細分化モードIbの領域内にある任意の出力ベクトルVは、非ゼロスイッチベクトルV、V、V14、V15のベクトル的組み合わせにより表現される。すなわち、同一のモードでも、細分化モードが異なれば、選択すべきスイッチベクトルV〜V26は異なる。
【0070】
他のモードII〜VIも、同様に、4つの細分化モードに細分化されている。したがって、三相3レベル形PWMインバータ1cの空間ベクトル制御においては、計24個の細分化モードIa、Ib・・・VIc、VIdが存在する。
【0071】
三相3レベル形PWMインバータ1cの制御においても、スイッチサイクルが切り替わる際に参照するルールを作成しておく必要がある。三相2レベル形PWMインバータ1aの場合と同様に、このルールは2つのルールを含む。すなわち、(1)1スイッチサイクル中にスイッチベクトルV〜V26の選択が切り替わっていくことに伴う定常的な損失を最小化するための第1のルールと、(2)新たなスイッチサイクルにおいて最初に選択されるスイッチベクトルV〜V26が前のスイッチサイクルにおいて最後に選択されたスイッチベクトルV〜V26とは異なるスイッチベクトルV〜V26に変更されることによる過渡的な損失を最小化するための第2のルールとを含む。
【0072】
表6〜11は、第1のルールを具体化したものである。なお、表6は現モードがモードI(細分化モードIa〜Id)である場合、表7は現モードがモードIIである場合、表8は現モードがモードIIIである場合、表9は現モードがモードIVである場合、表10は現モードがモードVである場合、表11は現モードがモードVIである場合に参照するものである。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0073】
表6〜11の使い方は表2の使い方と同じなので、説明は省略する。
【0074】
表12は、第2のルールを部分的に具体化したものである。この表は変化相を3進法で求め、その結果を10進法で数値化したものである。U相のスイッチ状態が“1”と“1/2”の間、または“0”と“1/2”の間で変化する場合は、1セットの変化があるので表中の値は“9×1=9”となる。また、U相のスイッチ状態が“0”と“1”の間で変化する場合は、2セットの変化があるので表中の値は“9×2=18”となる。同様に、V相において1セットの変化がある場合は“3×1=3”、2セットの変化がある場合は“3×2=6”、W相において1セットの変化がある場合は“1×1=1”、2セットの変化がある場合は“1×2=3”となる。例えば、直前スイッチベクトルがV(0 0 0)で、次のスイッチベクトルで最初に選択されるスイッチベクトルがV(1/2 1 0)である場合は、U相において1セットの変化があり、V相において2セットの変化があるので、表2の値は“9×1+3×2+1×0=15”となる。
【表12】
【0075】
表2に基づいて変化相を特定する場合は、この逆の計算をすればよい。すなわち、選択スイッチベクトルがV(0 0 0)からV(1/2 1 0)に移動する場合の変化相を特定したい場合は、表中の値“15”を“9(=9×1)”と“6(=3×2)”とに分解することにより、U相における1セットの変化と、V相における2セットの変化とが同時に起こることを特定することができる。また、選択スイッチベクトルがV(1 1 1)からV10(0 1 1/2)に移動する場合の変化相を特定したい場合は、表中の値“19”を“18(=9×2)”と“1(=1×1)”とに分解することにより、U相における2セットの変化と、W相における1セットの変化とが同時に起こることを特定することができる。
【0076】
三相3レベル形PWMインバータ1cを制御対象とする場合も、基本的には表6に示すフローにしたがって選択すべきスイッチベクトルV〜V26と、その順序およびデューティ比が決定されるが、いくつかの相違点がある。
【0077】
1つ目の相違点として、ステップS7では、表2ではなく、表6〜11に基づいて各出力順序パターンにおける節約相を特定する。例えば、現細分化モードがIIbの場合は、表7(B)を参照して、非ゼロスイッチベクトルV、V、V16をこの順で選択する出力順序パターン1、非ゼロスイッチベクトルV、V、V17をこの順で選択する出力順序パターン2、非ゼロスイッチベクトルV16、V、Vをこの順で選択する出力順序パターン3、および非ゼロスイッチベクトルV17、V、Vをこの順で選択する出力順序パターン4が存在し、各出力順序パターンの節約相はそれぞれW相、V相、W相、V相であることが特定される。
【0078】
2つ目の相違点として、ステップS8では、表3ではなく、表12に基づいて変化相を特定する。例えば、直前スイッチベクトルがVで、かつ現細分化モードがIIbの場合は、次のスイッチサイクルにおいてV、V、V16、V17のいずれかを最初に選択することが考えられるので(表7(B)参照)、表12のVの行を参照して、V→Vの移動における変化相はV相(2セット)、V→Vの移動における変化相はU相(1セット)およびV相(2セット)、V→V16の移動における変化相はU相(1セット)およびV相(1セット)、V→V17の移動における変化相はV相(2セット)およびW相(1セット)であることが特定される。
【0079】
ステップ8において特定される変化相が三相2レベル形PWMインバータ1aの場合とは若干相違するので、これに伴ってステップS10における評価も三相2レベル形PWMインバータ1aの場合とは若干相違する。例えば、直前スイッチベクトルがVで、かつ現細分化モードがIIbの場合、4つの出力順序パターンの評価値は以下の通りとなる。

・出力順序パターン1の評価値:k×2i−i
・出力順序パターン2の評価値:k×(i+2i)−i
・出力順序パターン3の評価値:k×(i+i)−i
・出力順序パターン4の評価値:k×(2i+i)−i
【0080】
3つ目の相違点として、ステップS12では、出力順序ベクトルV、V、Vの順序デューティ比u、u、uに分解デューディ比uα、uβ、uを直接紐付けるのではなく、例えば、直前スイッチベクトルがVであり、かつ現細分化モードがIbである場合は、式(3)に示されているように、出力順序ベクトルV、V、Vの順序デューティ比u、u、uは、それぞれ“2uβ”、“2uα−1”、“2(1−uα−uβ)”となる。
【数3】
上式は、図13から幾何学的に導きだすことができる。直前スイッチベクトルまたは現細分化モードが上記一例と異なる場合も、同様の手法により出力順序ベクトルV、V、Vの順序デューティ比u、u、uを求めることができる。
【0081】
4つ目の相違点として、ステップS13では、6個(SW1〜SW6)ではなく、12個(SWUpp、SWUpo・・・・SWWno、SWWnn)のスイッチの導通状態を切り替える。
【0082】
以上、本発明に係るPWMインバータの制御方法および制御装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではない。例えば、第1のルールおよび第2のルールは、表2、表3、表6〜11、表12の表現形式に限定されることはなく、任意の形式に変更することができる。
【符号の説明】
【0083】
1a、1b、1c PWMインバータ
2 インバータ部
3 制御部(制御装置)
4 三相負荷
5 昇降圧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13