特許第5963241号(P5963241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963241
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】酵素処理剤
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20160721BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20160721BHJP
   B09C 1/02 20060101ALI20160721BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20160721BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20160721BHJP
   C02F 1/62 20060101ALI20160721BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20160721BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20160721BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20160721BHJP
   C12N 9/04 20060101ALI20160721BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20160721BHJP
   C09K 17/32 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C02F1/00 PZAB
   C02F3/34 101A
   B09B3/00 304K
   C02F1/50 510C
   C02F1/50 520K
   C02F1/50 532E
   C02F1/50 532C
   C02F1/50 532Z
   C02F1/50 532A
   C02F1/50 531J
   C02F1/50 532J
   C02F1/50 532D
   C02F1/62 A
   C02F11/02
   C02F11/00 J
   C02F3/00 D
   C12N9/04 D
   C12N9/04 F
   C12N9/24
   C09K17/32 H
【請求項の数】64
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2012-48455(P2012-48455)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-184073(P2013-184073A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】510161668
【氏名又は名称】株式会社セイネン
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 岳人
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−001961(JP,A)
【文献】 特開平06−262165(JP,A)
【文献】 特開昭50−013566(JP,A)
【文献】 米国特許第06025152(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00−3/34
B09B1/00−5/00
B09C1/00−1/10
C12N9/00−9/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓抽出液と、酵母溶解酵素と、乳酸脱水素酵素と、グルコース脱水素酵素と、水と、を含有する酵素処理剤。
【請求項2】
哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓抽出液と、酵母溶解酵素と、乳酸脱水素酵素と、グルコース脱水素酵素とを混合し、混合液(A)を調製する工程と、
前記混合液(A)をそのままで、または固形物を取り除いて、混合液(B)を調製する工程と、
前記混合液(B)をそのまま、または水と混合し、混合液(C)を調製する工程と
を含む、請求項1に記載の酵素処理剤の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の酵素処理剤を含む、窒素化合物を含有する水の水処理用複合処理剤。
【請求項4】
窒素化合物を含有する水に、請求項1に記載の酵素処理剤を添加し、混合する窒素処理工程
を備える、窒素化合物を含有する水の水処理方法。
【請求項5】
前記窒素処理工程において硝化反応および脱窒反応が行われる、請求項4に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記窒素化合物がアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項4または5に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項4〜6のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項8】
前記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含む、請求項4〜6のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項9】
前記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを、BOD成分、COD成分または有機化合物の少なくとも一部について分解処理した処理水を含む、請求項4〜6のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項10】
前記処理水が、活性汚泥法による処理水である、請求項9に記載の水処理方法。
【請求項11】
ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン酸化型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する生物処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを含む、BOD成分および/または有機化合物ならびに窒素化合物を含有する水の水処理用複合処理剤。
【請求項12】
BOD成分および/または有機化合物ならびに窒素化合物を含有する水と、活性汚泥と、請求項11に記載の生物処理剤とを混合し、曝気する生物処理工程と、
前記生物処理工程で得られた曝気混合液に、請求項1に記載の酵素処理剤を添加し、混合する窒素処理工程と
を備える、BOD成分および/または有機化合物ならびに窒素化合物を含有する水の水処理方法。
【請求項13】
前記生物処理工程の後、または前記窒素処理工程の後に、さらに、
活性汚泥を分離し、回収する汚泥回収工程と、
回収した活性汚泥を請求項11に記載の生物処理剤と混合し、前記生物処理工程に返送する汚泥返送工程と
を備える、請求項12に記載の水処理方法。
【請求項14】
前記窒素処理工程において、硝化反応および脱窒反応が行われる、請求項12または13に記載の水処理方法。
【請求項15】
前記窒素化合物がアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項12〜14のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項16】
前記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項12〜15のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項17】
前記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含む、請求項12〜15のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項18】
ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを含む、窒素化合物を含有する水の水処理用複合処理剤。
【請求項19】
窒素化合物を含有する水と、請求項1に記載の酵素処理剤と、請求項18に記載の化学処理剤とを混合する工程
を備える、窒素化合物を含有する水の水処理方法。
【請求項20】
さらに、
前記水と、前記酵素処理剤と、前記化学処理剤とを含有する混合液のpHを、pH4以下またはpH8以上に調節する工程
を備える、請求項19に記載の水処理方法。
【請求項21】
硝化反応および脱窒反応が行われる、請求項19に記載の水処理方法。
【請求項22】
pH4以下に調節して脱窒反応が行われ、pH8以上に調節して硝化反応が行われる、請求項20に記載の水処理方法。
【請求項23】
前記水において、前記窒素化合物の濃度が500ppm以上である、請求項19〜22のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項24】
前記窒素化合物がアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項19〜23のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項25】
前記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項19〜24のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項26】
前記水が生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含む、請求項19〜24のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項27】
前記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを、BOD成分、COD成分または有機化合物の少なくとも一部について分解処理した処理水を含む、請求項19〜24のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項28】
前記処理水が、活性汚泥法による処理水である、請求項27に記載の水処理方法。
【請求項29】
ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物を含有する水の水処理用複合処理剤。
【請求項30】
COD成分および/または有機化合物を含有する水と、請求項29に記載の化学処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを混合する工程
を備える、COD成分および/または有機化合物を含有する水の水処理方法。
【請求項31】
前記水が、生活排水、産業廃水または屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項30に記載の水処理方法。
【請求項32】
前記水が、生活排水、産業廃水または屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含む、請求項30に記載の水処理方法。
【請求項33】
ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物で汚染された水の浄化処理用複合処理剤。
【請求項34】
COD成分および/または有機化合物を含有する水と、請求項33に記載の化学処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを混合する工程
を備える、COD成分および/または有機化合物を含有する水の浄化処理方法。
【請求項35】
前記水が、COD成分および/または有機化合物で汚染された地下水または環境水を含む、請求項34に記載の浄化処理方法。
【請求項36】
前記水が、固形物から溶出したCOD成分および/または有機化合物を含有する溶出液を含む、請求項34に記載の浄化処理方法。
【請求項37】
前記固形物が土壌、底質またはスラグである、請求項36に記載の浄化処理方法。
【請求項38】
前記COD成分および/または有機化合物が揮発性有機化合物を含む、請求項34〜37のいずれかに記載の浄化処理方法。
【請求項39】
前記COD成分および/または有機化合物が難分解性COD成分を含む、請求項34〜37のいずれかに記載の浄化処理方法。
【請求項40】
前記COD成分および/または有機化合物が石油または石油の精製物を含む、請求項34〜37のいずれかに記載の浄化処理方法。
【請求項41】
ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物を含有する粒状物の浄化処理用複合処理剤。
【請求項42】
COD成分および/または有機化合物を含有する粒状物と、該粒状物から該COD成分および/または有機化合物の少なくとも一部を溶出するための溶出液とを混合し、懸濁液とする懸濁工程と、
前記懸濁液と、請求項41に記載の化学処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを混合する酸化分解工程と
を備える、COD成分および/または有機化合物を含有する粒状物の浄化処理方法。
【請求項43】
前記粒状物がCOD成分および/または有機化合物で汚染された土壌または底質である、請求項42に記載の浄化処理方法。
【請求項44】
前記COD成分および/または有機化合物が揮発性有機化合物を含む、請求項42または43に記載の浄化処理方法。
【請求項45】
前記COD成分および/または有機化合物が難分解性COD成分を含む、請求項42または43に記載の浄化処理方法。
【請求項46】
前記COD成分および/または有機化合物が石油または石油の精製物を含む、請求項42または43に記載の浄化処理方法。
【請求項47】
ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物を含む汚染物質で汚染された土壌および/または地下水の原位置浄化処理用複合処理剤。
【請求項48】
COD成分および/または有機化合物を含む汚染物質で汚染された土壌および/または地下水に、請求項47に記載の化学処理剤および請求項1に記載の酵素処理剤を原位置で注入する工程
を備える、COD成分および/または有機化合物を含む汚染物質で汚染された土壌および/または地下水の原位置浄化処理方法。
【請求項49】
前記化学処理剤および前記酵素処理剤を注入井から注入する、請求項48に記載の原位置浄化処理方法。
【請求項50】
前記汚染物質が揮発性有機化合物を含む、請求項48または49に記載の原位置浄化処理方法。
【請求項51】
前記汚染物質が難分解性COD成分を含む、請求項48または49に記載の原位置浄化処理方法。
【請求項52】
前記汚染物質が石油または石油の精製物を含む、請求項48または49に記載の原位置浄化処理方法。
【請求項53】
ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを含む、バイオフィルムの除去・発生防止用複合処理剤。
【請求項54】
循環水を使用する熱交換器の循環水に、請求項53に記載の化学処理剤および請求項1に記載の酵素処理剤を混合し、循環させる工程
を備える、循環水流路のバイオフィルム除去方法。
【請求項55】
前記熱交換器が冷却塔、加熱塔、凝縮器、蒸発器、ボイラー、蒸気発生器および復水器からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項54に記載の循環水流路のバイオフィルム除去方法。
【請求項56】
循環水を使用する熱交換器の循環水に、請求項53に記載の化学処理剤および請求項1に記載の酵素処理剤を混合し、循環させるバイオフィルム除去工程と、
前記循環水に、請求項53に記載の化学処理剤を混合し、循環させるバイオフィルム発生防止工程と
を備える、循環水流路のバイオフィルム発生防止方法。
【請求項57】
前記バイオフィルム発生防止工程を少なくとも1回繰り返す、請求項56に記載の循環水流路のバイオフィルム発生防止方法。
【請求項58】
前記熱交換器が冷却塔、加熱塔、凝縮器、蒸発器、ボイラー、蒸気発生器および復水器からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項56または57に記載の循環水流路のバイオフィルム発生防止方法。
【請求項59】
ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、請求項1に記載の酵素処理剤とを含む、重金属の不溶化処理用複合処理剤。
【請求項60】
重金属を含有する水のpHを弱酸性域に調節するpH調節工程と、
前記pH調節工程で得られたpH調節水に、請求項59に記載の化学処理剤および請求項1に記載の酵素処理剤を添加し、混合する処理剤添加工程と、
前記処理剤添加工程で得られた混合液に、鉄粉を添加し、混合する鉄粉添加工程と
を備える、重金属を含有する水の浄化処理方法。
【請求項61】
前記水が、重金属で汚染された地下水または環境水を含む、請求項60に記載の浄化処理方法。
【請求項62】
前記水が、重金属を含有する家庭排水または産業排水を含む、請求項60に記載の浄化処理方法。
【請求項63】
重金属を含有する粒状物を、該重金属を溶出するための溶出液に懸濁する懸濁工程と、
前記懸濁工程で得られた懸濁液のpHを弱酸性域に調節するpH調節工程と、
前記pH調節工程で得られたpH調節液に、請求項59に記載の化学処理剤および請求項1に記載の酵素処理剤を添加し、混合する処理剤添加工程と、
前記処理剤添加工程で得られた混合液に、鉄粉を添加し、混合する鉄粉添加工程と
を備える、重金属を含有する粒状物の浄化処理方法。
【請求項64】
前記粒状物が重金属で汚染された土壌または底質である、請求項63に記載の浄化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理または浄化処理のための酵素処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水中の窒素は、アンモニア態窒素(NH−N)、硝酸態窒素(NO−N)、亜硝酸性窒素(NO−N)等の様々な形態で存在する。その処理方法としては、例えば、好気性細菌の働きでアンモニア態窒素を硝酸態窒素へと変換させる工程(硝化工程)と、嫌気性細菌の働きで硝酸態窒素を不活性な窒素ガスにまで変換する工程(脱窒工程)とを備えた活性汚泥法(硝化脱窒法)がある(非特許文献1)。
しかし、硝化工程では曝気動力およびpHの管理を、脱窒工程ではメタノール等の炭素源を、それぞれ必要とし、コストダウンにも限界があった。
【0003】
これに対して、近年、より省エネルギー・省コストの窒素除去技術として、従来の硝化−脱窒法とは全く異なる代謝経路による窒素除去反応「嫌気性アンモニア酸化反応(Anaerobic Ammonium Oxidation:ANAMMOX)」を利用した窒素除去技術が注目されている(非特許文献2)。
しかし、さらなる設備および運転管理コストの削減に対する要求が強い。
【0004】
一方、排水中のCOD成分をヒドロキシラジカルの酸化力を利用して酸化・分解する技術として、促進酸化法がある。促進酸化法の中でも、過酸化水素と、鉄(II)イオンや銅(I)イオン等の金属イオンとを用いてヒドロキシラジカルを発生させるフェントン法は、ヒドロキシラジカルの発生に、UV照射や超音波を必要とせず、また、オゾンと過酸化水素との併用も必要ないため、管理が容易で、しかも、難分解性COD成分の処理にも適用可能であることから、広く利用されている。
【0005】
しかし、金属イオンの沈殿を防ぐため、酸性pH域で反応を行わなければならないこと、薬剤コストが大きいこと、さらに、処理後の残留過酸化水素の処理や、大量のスラッジの発生等の問題があった。
【0006】
これに対して、非特許文献3には、鉄塩触媒に触媒「ダイヤフレッシュ オルソンAT」を併用することで、従来フェントン法の問題であった大量の鉄塩使用を、数十分の一に激減させ、汚泥の発生も激減させることが可能となり、加えて、通常のフェントン法で問題となっていた、処理後の残留過酸化水素の問題も解決できたことが記載されている。
【0007】
また、特許文献1には、ジカルボキシメチルアミン系生分解性キレート剤を併用することにより、該キレート剤と鉄イオンとの錯体を形成させ、pH5〜10で、過酸化水素を添加してフェントン反応を行う「マイルドフェントン法」が記載されている。
【0008】
しかし、より低コスト化を達成でき、しかも中性〜アルカリ性pH域でもCOD成分の処理を行え、余剰の過酸化水素も金属スラッジも発生しない処理方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開2006/309519号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】特許庁ホームページ、資料室(その他参考情報)、技術分野別特許マップについて、一般8、廃水処理技術、第4章 技術の概要、4.4.4 生物学的処理、「(3)好気性処理と嫌気性処理の併用処理」、インターネット<http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/map/ippan08/4/4-2-2.htm#3>
【非特許文献2】山際秀誠,「新しい窒素除去技術〜Anammox反応〜」,テクノリッジ,和歌山県工業技術センター,平成21年1月22日,第282号,p.5
【非特許文献3】三菱ガス化学ホームページ、ニュースリリース2002年、平成14年10月10日、「画期的廃水処理方法を開発」、インターネット<http://www.mgc.co.jp/news/2002/pdf/021010.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、水処理または浄化処理のための新規な酵素処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねたところ、哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓抽出液と、酵母溶解酵素と、乳酸脱水素酵素と、グルコース脱水素酵素と、水と、を含有する新規な水系組成物が、水処理または浄化処理のための酵素処理剤として有用であることを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に掲げる(1)〜(64)を提供する。
【0013】
[酵素処理剤およびその製造方法]
(1)哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓抽出液と、酵母溶解酵素と、乳酸脱水素酵素と、グルコース脱水素酵素と、水と、を含有する酵素処理剤。
(2)哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓抽出液と、酵母溶解酵素と、乳酸脱水素酵素と、グルコース脱水素酵素とを混合し、混合液(A)を調製する工程と、
上記混合液(A)をそのままで、または固形物を取り除いて、混合液(B)を調製する工程と、
上記混合液(B)をそのまま、または水と混合し、混合液(C)を調製する工程と
を含む、上記(1)に記載の酵素処理剤の製造方法。
【0014】
[酵素処理剤の単独使用(窒素化合物の処理)]
(3)上記(1)に記載の酵素処理剤を含む、窒素化合物を含有する水の水処理用処理剤。
(4)窒素化合物を含有する水に、上記(1)に記載の酵素処理剤を添加し、混合する窒素処理工程
を備える、窒素化合物を含有する水の水処理方法。
(5)上記窒素処理工程において硝化反応および脱窒反応が行われる、上記(4)に記載の水処理方法。
(6)上記窒素化合物がアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素からなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記(4)または(5)に記載の水処理方法。
(7)上記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記(4)〜(6)のいずれかに記載の水処理方法。
(8)上記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含む、上記(4)〜(6)のいずれかに記載の水処理方法。
(9)上記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを、BOD成分、COD成分または有機化合物の少なくとも一部について分解処理した処理水を含む、上記(4)〜(6)のいずれかに記載の水処理方法。
(10)上記処理水が、活性汚泥法による処理水である、上記(9)に記載の水処理方法。
【0015】
[生物処理剤および酵素処理剤の併用(BOD成分等の処理)]
(11)ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン酸化型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する生物処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを含む、BOD成分および/または有機化合物ならびに窒素化合物を含有する水の水処理用複合処理剤。
(12)BOD成分および/または有機化合物ならびに窒素化合物を含有する水と、活性汚泥と、上記(11)に記載の生物処理剤とを混合し、曝気する生物処理工程と、
上記生物処理工程で得られた曝気混合液に、上記(1)に記載の酵素処理剤を添加し、混合する窒素処理工程と
を備える、BOD成分および/または有機化合物ならびに窒素化合物を含有する水の水処理方法。
(13)上記生物処理工程の後、または上記窒素処理工程の後に、さらに、
活性汚泥を分離し、回収する汚泥回収工程と、
回収した活性汚泥を上記(11)に記載の生物処理剤と混合し、上記生物処理工程に返送する汚泥返送工程と
を備える、上記(12)に記載の水処理方法。
(14)上記窒素処理工程において、硝化反応および脱窒反応が行われる、上記(12)または(13)に記載の水処理方法。
(15)上記窒素化合物がアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素からなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記(12)〜(14)のいずれかに記載の水処理方法。
(16)上記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記(12)〜(15)のいずれかに記載の水処理方法。
(17)上記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含む、上記(12)〜(15)のいずれかに記載の水処理方法。
【0016】
[化学処理剤および酵素処理剤の併用(窒素処理)]
(18)ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを含む、窒素化合物を含有する水の水処理用複合処理剤。
(19)窒素化合物を含有する水と、上記(1)に記載の酵素処理剤と、上記(18)に記載の化学処理剤とを混合する工程
を備える、窒素化合物を含有する水の水処理方法。
(20)さらに、
上記水と、上記酵素処理剤と、上記化学処理剤とを含有する混合液のpHを、pH4以下またはpH8以上に調節する工程
を備える、上記(19)に記載の水処理方法。
(21)硝化反応および脱窒反応が行われる、上記(19)に記載の水処理方法。
(22)pH4以下に調節して脱窒反応が行われ、pH8以上に調節して硝化反応が行われる、上記(20)に記載の水処理方法。
(23)上記水において、上記窒素化合物の濃度が500ppm以上である、上記(19)〜(22)のいずれかに記載の水処理方法。
(24)上記窒素化合物がアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素からなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記(19)〜(23)のいずれかに記載の水処理方法。
(25)上記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記(19)〜(24)のいずれかに記載の水処理方法。
(26)上記水が生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含む、上記(19)〜(24)のいずれかに記載の水処理方法。
(27)上記水が、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを、BOD成分、COD成分または有機化合物の少なくとも一部について分解処理した処理水を含む、上記(19)〜(24)のいずれかに記載の水処理方法。
(28)上記処理水が、活性汚泥法による処理水である、上記(27)に記載の水処理方法。
【0017】
[化学処理剤および酵素処理剤の併用(COD成分等含有水の水処理)]
(29)ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物を含有する水の水処理用複合処理剤。
(30)COD成分および/または有機化合物を含有する水と、上記(29)に記載の化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを混合する工程
を備える、COD成分および/または有機化合物を含有する水の水処理方法。
(31)上記水が、生活排水、産業廃水または屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記(30)に記載の水処理方法。
(32)上記水が、生活排水、産業廃水または屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含む、上記(30)に記載の水処理方法。
【0018】
[化学処理剤および酵素処理剤の併用(COD成分等汚染水の浄化処理)]
(33)ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物で汚染された水の浄化処理用複合処理剤。
(34)COD成分および/または有機化合物を含有する水と、上記(33)に記載の化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを混合する工程
を備える、COD成分および/または有機化合物を含有する水の浄化処理方法。
(35)上記水が、COD成分および/または有機化合物で汚染された地下水または環境水を含む、上記(34)に記載の浄化処理方法。
(36)上記水が、固形物から溶出したCOD成分および/または有機化合物を含有する溶出液を含む、上記(34)に記載の浄化処理方法。
(37)上記固形物が土壌、底質またはスラグである、上記(36)に記載の浄化処理方法。
(38)上記COD成分および/または有機化合物が揮発性有機化合物を含む、上記(34)〜(37)のいずれかに記載の浄化処理方法。
(39)上記COD成分および/または有機化合物が難分解性COD成分を含む、上記(34)〜(37)のいずれかに記載の浄化処理方法。
(40)上記COD成分および/または有機化合物が石油または石油の精製物を含む、上記(34)〜(37)のいずれかに記載の浄化処理方法。
【0019】
[化学処理剤および酵素処理剤の併用(COD成分等汚染土壌等の浄化処理)]
(41)ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物を含有する粒状物の浄化処理用複合処理剤。
(42)COD成分および/または有機化合物を含有する粒状物と、当該粒状物から当該COD成分および/または有機化合物の少なくとも一部を溶出するための溶出液とを混合し、懸濁液とする懸濁工程と、
上記懸濁液と、上記(41)に記載の化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを混合する酸化分解工程と
を備える、COD成分および/または有機化合物を含有する粒状物の浄化処理方法。
(43)上記粒状物がCOD成分および/または有機化合物で汚染された土壌または底質である、上記(42)に記載の浄化処理方法。
(44)上記COD成分および/または有機化合物が揮発性有機化合物を含む、上記(42)または(43)に記載の浄化処理方法。
(45)上記COD成分および/または有機化合物が難分解性COD成分を含む、上記(42)または(43)に記載の浄化処理方法。
(46)上記COD成分および/または有機化合物が石油または石油の精製物を含む、上記(42)または(43)に記載の浄化処理方法。
【0020】
[化学処理剤および酵素処理剤の併用(土壌等の原位置浄化処理)]
(47)ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物を含む汚染物質で汚染された土壌および/または地下水の原位置浄化処理用複合処理剤。
(48)COD成分および/または有機化合物を含む汚染物質で汚染された土壌および/または地下水に、上記(47)に記載の化学処理剤および上記(1)に記載の酵素処理剤を原位置で注入する工程
を備える、COD成分および/または有機化合物を含む汚染物質で汚染された土壌および/または地下水の原位置浄化処理方法。
(49)上記化学処理剤および上記酵素処理剤を注入井から注入する、上記(48)に記載の原位置浄化処理方法。
(50)上記汚染物質が揮発性有機化合物を含む、上記(48)または(49)に記載の原位置浄化処理方法。
(51)上記汚染物質が難分解性COD成分を含む、上記(48)または(49)に記載の原位置浄化処理方法。
(52)上記汚染物質が石油または石油の精製物を含む、上記(48)または(49)に記載の原位置浄化処理方法。
【0021】
[化学処理剤および酵素処理剤の併用(バイオフィルム除去・発生防止)]
(53)ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを含む、バイオフィルムの除去・発生防止用複合処理剤。
(54)循環水を使用する熱交換器の循環水に、上記(53)に記載の化学処理剤および上記(1)に記載の酵素処理剤を混合し、循環させる工程を備える、循環水流路のバイオフィルム除去方法。
(55)上記熱交換器が冷却塔、加熱塔、凝縮器、蒸発器、ボイラー、蒸気発生器および復水器からなる群から選択されるいずれか1つである、上記(54)に記載の循環水流路のバイオフィルム除去方法。
(56)循環水を使用する熱交換器の循環水に、上記(53)に記載の化学処理剤および上記(1)に記載の酵素処理剤を混合し、循環させるバイオフィルム除去工程と、
上記循環水に上記(53)に記載の化学処理剤を混合し、循環させるバイオフィルム発生防止工程と
を備える、循環水流路のバイオフィルム発生防止方法。
(57)上記バイオフィルム発生防止工程を少なくとも1回繰り返す、上記(56)に記載の循環水流路のバイオフィルム発生防止方法。
(58)上記熱交換器が冷却塔、加熱塔、凝縮器、蒸発器、ボイラー、蒸気発生器および復水器からなる群から選択されるいずれか1つである、上記(56)または(57)に記載の循環水流路のバイオフィルム発生防止方法。
【0022】
[化学処理剤および酵素処理剤の併用(改良鉄粉法)]
(59)ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを含む、重金属の不溶化処理用複合処理剤。
(60)重金属を含有する水のpHを弱酸性域に調節するpH調節工程と、
上記pH調節工程で得られたpH調節水に、上記(59)に記載の化学処理剤および上記(1)に記載の酵素処理剤を添加し、混合する処理剤添加工程と、
上記処理剤添加工程で得られた混合液に、鉄粉を添加し、混合する鉄粉添加工程と
を備える、重金属を含有する水の浄化処理方法。
(61)上記水が、重金属で汚染された地下水または環境水を含む、上記(60)に記載の浄化処理方法。
(62)上記水が、重金属を含有する家庭排水または産業排水を含む、上記(60)に記載の浄化処理方法。
(63)重金属を含有する粒状物を、当該重金属を溶出するための溶出液に懸濁する懸濁工程と、
上記懸濁工程で得られた懸濁液のpHを弱酸性域に調節するpH調節工程と、
上記pH調節工程で得られたpH調節液に、上記(59)に記載の化学処理剤および上記(1)に記載の酵素処理剤を添加し、混合する処理剤添加工程と、
上記処理剤添加工程で得られた混合液に、鉄粉を添加し、混合する鉄粉添加工程と
を備える、重金属を含有する粒状物の浄化処理方法。
(64)上記粒状物が重金属で汚染された土壌または底質である、上記(63)に記載の浄化処理方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、水処理および/または浄化処理のための新規な処理剤(「酵素処理剤」という。)を提供することができる。
【0024】
本発明の酵素処理剤は、単剤で使用して、窒素化合物を含有する水の水処理をすることができる。
【0025】
また、本発明の酵素処理剤は、ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン酸化型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する水系組成物である生物処理剤と併用して、BOD成分等ならびに窒素化合物を含有する水の水処理をすることができる。
【0026】
また、本発明の酵素処理剤は、ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する水系組成物である化学処理剤と併用して、窒素化合物を含有する水の水処理、COD成分等を含有する水の水処理、COD成分等で汚染された水の浄化処理、COD成分等を含有する粒状物の浄化処理、COD成分等を含む汚染物質で汚染された土壌等の地下水の原位置浄化処理、バイオフィルム除去・発生防止、または重金属の不溶化処理をすることができる。
【0027】
化学処理剤に併用して、有機化合物等で汚染された水、粒状物等の浄化処理をすることができる。フェントン法と比べると、本発明の浄化処理方法は、余剰の過酸化水素の発生がなく、鉄スラッジも発生しないため、これらの処理コストが不要である。さらに、中性pH域で有機化合物等の分解をすることができ、原位置浄化に適している。
【0028】
また、本発明の酵素処理剤は、化学処理剤に併用して、重金属で汚染された水、粒状物等の浄化処理をすることができる。空気酸化フェライト法では対処することができない水銀等についても、無害化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
I.酵素処理剤
本発明の酵素処理剤は、哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓抽出液と、酵母溶解酵素と、乳酸脱水素酵素と、グルコース脱水素酵素と、水と、を含有する水系組成物である。
【0030】
以下、上記酵素処理剤について説明する。
1.成分
哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓抽出液、酵母溶解酵素、乳酸脱水素酵素、グルコース脱水素酵素および水について説明する。
【0031】
(1)哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓抽出液
上記肝臓抽出液は、哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓をホモジナイズして水、食塩水、緩衝液等の水系溶媒で抽出した液であれば、特に限定されず使用することができる。抽出した液は、遠心および/またはろ過をして粗精製したものが好ましい。
【0032】
上記肝臓のホモジナイズ物からの抽出方法としては、特に限定されないが、ホモジナイズ物を水、食塩水または緩衝液に懸濁し、固形分をろ別または遠心分離することにより除去する方法が好ましい。
【0033】
上記哺乳動物(ヒトを除く)は、特に限定されないが、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ等が挙げられる。これらのうちでは、ウシまたはブタが好ましく、ブタがより好ましい。
【0034】
上記肝臓抽出液に含まれる成分のうち、どの成分が本発明の酵素処理剤が奏する効果に寄与しているのかは明らかではないが、本発明者は、カタラーゼ(EC 1.11.1.6)が寄与しているのではないかと推定している。ただし、この推定に限定して、本発明の範囲が解釈されるものではない。
【0035】
上記肝臓抽出液は、1000g中に、50〜250gの肝臓からの水溶性抽出物を含有することが好ましい。
【0036】
上記肝臓抽出液は、カタラーゼを含むが、カタラーゼ含有量は、0.5mg/L以上であることが好ましく、0.8mg/L以上であることがより好ましい。
【0037】
上記肝臓抽出液は、市販品を使用してもよく、具体的には、例えば、CT−3000(インテック社製)等を使用することができる。また、肝臓抽出液に代えて、市販のカタラーゼを使用してもよく、例えば、エンチロンOL(洛東化成工業社製)、レオネット(ナガセケムテックス社製)、カタザイム(ノボザイムズ・ジャパン社製)、オプチマーゼCA(ダニスコジャパン社製)等が挙げられる。市販のカタラーゼを使用する場合には、カタラーゼ含有量を上記肝臓抽出液の好適範囲に合わせることが好ましい。
【0038】
(2)酵母溶解酵素
上記酵母溶解酵素は、酵母細胞壁の(1→3)−β−D−グルカンの(1→3)−β−D−グルコシド結合を加水分解するβ−1,3−グルカナーゼ(EC 3.2.1.39)活性等の酵母細胞壁溶解活性を有するものであれば、特に限定されず使用することができる。
【0039】
上記酵母溶解酵素の配合量は、特に限定されないが、上記酵母溶解酵素として単位質量あたりの酵素活性が5000U/gのものを使用する場合には、上記混合液(B)中で、上記混合液(A)5200質量部に対して、好ましくは50〜150質量部、より好ましくは70〜130質量部が、さらに好ましくは70〜120質量部、いっそう好ましくは80〜110質量部である。
【0040】
上記酵母溶解酵素として、単位質量あたりの酵素活性(U/g)が異なるものを使用する場合には、酵素活性が全体として同程度となるように配合量(g)を調節することが望ましい。
【0041】
上記酵母溶解酵素としては、具体的には、例えば、酵母溶解酵素(関東化学社製,5000U/g)、Zymolyase−20T(MPバイオメディカルズ社製,20000U/g)、Westase(タカラバイオ社製,35000U/g)等を使用することができる。
【0042】
(3)乳酸脱水素酵素
上記乳酸脱水素酵素は、EC 1.1.1.27のものであれば、特に限定されず使用することができる。
以下の酵素処理剤の製造方法の説明では、乳酸脱水素酵素として、2000U/mLのものを使用する場合について記載している。そのため、単位質量あたりの酵素活性(U/mL)が異なるものを使用する場合には、比重(g/mL)を考慮しつつ、酵素活性(U)が同等となるように添加量(g)を調節することが望ましい。
上記乳酸脱水素酵素としては、具体的には、例えば、乳酸脱水素酵素(豚心臓)(関東化学社製,2000U/mL)等を使用することができる。
【0043】
(4)グルコース脱水素酵素
上記グルコース脱水素酵素は、EC 1.1.1.47のものであれば、特に限定されず、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコその他の哺乳動物の肝臓由来のものや、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、ハロフェラックス・メディテラネイ(Haloferax mediterranei)、スルフォロブス・トコダイ(Sulfolobus tokodaii)その他の細菌に由来するもの等を使用することができる。
また、上記酵素は、β−D−グルコース:NAD(P) 1−オキシドレダクターゼ(β−D−glucose:NAD(P) 1−oxidoreductase)ともいう。
以下の酵素処理剤の製造方法の説明では、グルコース脱水素酵素として、250U/mgのものを使用する場合について記載している。そのため、単位質量あたりの酵素活性(U/mg)が異なるものを使用する場合には、酵素活性(U)が同等となるように添加量(mg)を調節することが望ましい。
上記グルコース脱水素酵素としては、具体的には、例えば、グルコース脱水素酵素(NAD(P)−依存)(東洋紡社製,250U/mL)等を使用することができる。
【0044】
(6)水
上記水は、特に限定されないが、電気抵抗率1MΩ・cm(25℃)以上、すなわち電気伝導率1μS/cm(25℃)以下であるものが好ましく、電気抵抗率10MΩ・cm(25℃)以上、すなわち電気伝導率0.1μS/cm(25℃)以下であるものがより好ましい。
【0045】
上記水としては、例えば、日本薬局方精製水、滅菌精製水、注射用水等、JIS K 0557:1998 A2〜A4の水を使用することができ、いわゆる工業用精製水を使用することもできる。また、上記水としては、例えば、水道水、井戸水、地下水等をそのまま、またはそれらを、蒸留、ろ過および/またはイオン交換等の手法で精製した精製水を使用することもできる。
【0046】
2.製造方法
本発明の酵素処理剤は、哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓抽出液と、酵母溶解酵素と、乳酸脱水素酵素と、グルコース脱水素酵素とを混合し、混合液(A)を調製し、上記混合液(A)をそのままで、または固形物を取り除いて、混合液(B)を調製し、および上記混合液(B)と、水とを混合し、混合液(C)を調製し、混合液(C)を、そのまま、または水で希釈して、製造することができる。
【0047】
(1)混合液(A)の調製方法
混合液(A)は、哺乳動物(ヒトを除く)の肝臓抽出液と、酵母溶解酵素と、乳酸脱水素酵素と、グルコース脱水素酵素とを混合し、調製する。所望により、さらにインキュベートしてもよい。
【0048】
上記豚肝臓抽出液は、固形物を除去することが好ましく、例えば、フィルターで濾過することができる。フィルターは、固形物を除去できるものであれば特に限定されないが、高分子分離膜のものが好ましく、また、高分子分離膜フィルターの孔径は、1.2〜20μmのものが好ましい。
【0049】
各成分の混合量は、特に限定されないが、豚肝臓抽出液2000質量部に対して、酵母溶解酵素を好ましくは100〜300質量部、より好ましくは150〜250質量部、さらに好ましくは175〜225質量部、乳酸脱水素酵素を好ましくは0.005〜0.025質量部、より好ましくは0.010〜0.020質量部、およびグルコース脱水素酵素を好ましくは0.005〜0.010質量部、より好ましくは0.007〜0.013質量部とすることが望ましい。
【0050】
混合する方法は特に限定されず、例えば、水にその他の各成分を添加し、撹拌その他の方法によって均一化することで混合することができる。
【0051】
混合する際の温度および気圧は、特に限定されないが、0〜40℃、好ましくは常温(20±15℃)、より好ましくは常温(概ね20℃)、および常圧(概ね1013hPa)で行うことが望ましい。
【0052】
インキュベートする場合は、その方法は特に限定されないが、例えば、上記のとおり混合した混合液を、0〜10℃、好ましくは0〜5℃で、5〜14日間、好ましくは7〜10日間、静置し、その後、さらに、32〜48℃、好ましくは38〜40℃で、1〜5日間、好ましくは2〜4日間、静置することが望ましい。
【0053】
(2)混合液(B)の調製方法
混合液(B)は、上記のとおり調製した混合液(A)をそのまま混合液(B)としてもよいが、これから固形物を取り除いて調製したものが好ましい。
【0054】
混合液(B)から固形物を取り除く方法は特に限定されないが、フィルターでろ過することが好ましい。フィルターは、固形物を除去できるものであれば特に限定されないが、高分子分離膜のものが好ましく、また、高分子分離膜フィルターの孔径は、1.2〜20μmのものが好ましい。
【0055】
固形物を取り除く際の温度および気圧は、特に限定されないが、0〜40℃、好ましくは常温(20±15℃)、より好ましくは常温(概ね20℃)、および常圧(概ね1013hPa)で行うことが望ましい。
【0056】
(3)混合液(C)の調製方法
混合液(C)は、上記のとおり調製した混合液(B)をそのままで、または水で希釈して、調製される。
【0057】
各成分の混合量は、特に限定されないが、混合液(B)500質量部に対して、水を好ましくは1000〜3000質量部、より好ましくは1500〜2500質量部、所望により、さらに、水を、全量が好ましくは10000〜30000質量部、より好ましくは15000〜25000質量部となる量とすることが望ましい。
【0058】
混合する方法は特に限定されず、例えば、水にその他の各成分を添加し、撹拌その他の方法によって均一化することで混合することができる。
【0059】
混合する際の温度および気圧は、特に限定されないが、0〜40℃、好ましくは常温(20±15℃)、より好ましくは常温(概ね20℃)、および常圧(概ね1013hPa)で行うことが望ましい。
【0060】
インキュベートする方法は特に限定されず、例えば、0〜45℃、好ましくは5〜40℃、より好ましくは5〜35℃で、1〜7日間、好ましくは2〜4日間、静置することでインキュベートすることができる。
【0061】
3.標準酵素処理剤
本発明においては、以下の手順に従って、またはそれをスケールアップもしくはスケールダウンして製造した酵素処理剤を「標準酵素処理剤」という。
(1)豚肝臓抽出液をフィルター(高分子分離膜、孔径1.2〜20μm)でろ過し、得られた豚肝臓抽出液のろ過液2000gに、酵母溶解酵素200gと、乳酸脱水素酵素15mgと、グルコース脱水素酵素10mgを添加し、撹拌し、混合した混合液を、0〜5℃で冷蔵しながら、10日間静置し、その後、さらに、38〜40℃で保温しながら、3日間静置する。
(2)得られた混合液をフィルター(高分子分離膜、孔径0.45〜1.2μm)でろ過する。
(3)ろ過した混合液500gを精製水2000gに添加し、さらに精製水で全量を20000gとして、撹拌し、混合して得られた混合液を、常温(5〜35℃)に保ちながら、3日間静置し、静置後、直射日光を避け、常温で保存する。
(4)得られた混合液を、そのまま、酵素処理剤とする。
【0062】
II.生物処理剤
上記酵素処理剤と組み合わせて使用することができる生物処理剤は、水と、ヘキサメタリン酸塩と、グルタチオン酸化型と、グリセロール脱水素酵素と、酵母溶解酵素と、グリセリンと、ペルオキソ二硫酸塩と、エチレンジアミン四酢酸と、を含有する生物処理剤である。
【0063】
以下、上記生物処理剤について説明する。
1.成分
ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン酸化型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水について説明する。
【0064】
(1)ヘキサメタリン酸塩
上記ヘキサメタリン酸塩は、水溶性のものであれば特に限定されないが、水溶性の金属塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩またはカリウム塩がさらに好ましく、ナトリウム塩がいっそう好ましい。
【0065】
上記ヘキサメタリン酸塩としてヘキサメタリン酸ナトリウムを使用する場合、ヘキサメタリン酸ナトリウムは、組成式(NaPOで表されるヘキサメタリン酸ナトリウム(CAS# 10124−56−8)のみに限定されず、化学式(NaPOで表されるものの混合物であってもよい(好ましいn=5.8〜6.2)。また、グレードは特に限定されず、工業用、食品用、試薬用その他各種のグレードのものを使用することができる。
【0066】
上記ヘキサメタリン酸塩の配合量は、特に限定されないが、上記ヘキサメタリン酸塩としてヘキサメタリン酸ナトリウムを使用する場合には、上記混合液(A)中で、上記水4000質量部に対して、好ましくは800〜1600質量部、より好ましくは900〜1500質量部、さらに好ましくは1000〜1400質量部、いっそう好ましくは1100〜1300質量部である。
【0067】
上記ヘキサメタリン酸塩として、ヘキサメタリン酸ナトリウム以外のヘキサメタリン酸塩を使用する場合は、モル数が同程度となるように、分子量に基づいて、配合量を調節することが望ましい。
【0068】
(2)グルタチオン酸化型
上記グルタチオン酸化型は、特に限定されず、CAS# 27025−41−8のものを使用することができる。
【0069】
上記グルタチオン酸化型の配合量は、特に限定されないが、上記混合液(A)中で、上記水4000質量部に対して、好ましくは0.001〜0.100質量部、より好ましくは0.005〜0.050質量部、さらに好ましくは0.010〜0.040質量部、いっそう好ましくは0.015〜0.035質量部である。
【0070】
(3)グリセロール脱水素酵素
上記グリセロール脱水素酵素(グリセロール:NAD 2−オキシドレダクターゼ)は、特に限定されず、EC 1.1.1.6のものを使用することができる。
【0071】
上記グリセロール脱水素酵素の配合量は、特に限定されないが、上記グリセロール脱水素酵素として単位質量あたりの酵素活性が50U/mgのものを使用する場合には、上記混合液(A)中で、上記水4000質量部に対して、好ましくは0.001〜0.100質量部、より好ましくは0.005〜0.050質量部、さらに好ましくは0.005〜0.030質量部、いっそう好ましくは0.005〜0.020質量部である。
【0072】
上記グリセロール脱水素酵素として、単位質量あたりの酵素活性(U/mg)が異なるものを使用する場合には、酵素活性が全体として同程度となるように配合量(mg)を調節することが望ましい。
【0073】
(4)酵母溶解酵素
上記酵素処理剤に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0074】
(5)グリセリン
上記グリセリンは、特に限定されず、CAS# 56−81−5のものを使用することができる。また、上記グリセリンは、試薬グレードのものに限定されず、工業用、食品(添加)用等も使用することができる。
【0075】
上記グリセリンの配合量は、特に限定されないが、上記混合液(B)中で、上記混合液(A)5200質量部に対して、好ましくは800〜1500質量部、より好ましくは900〜1200質量部が、さらに好ましくは950〜1150質量部である。
【0076】
(6)ペルオキソ二硫酸塩
上記ペルオキソ二硫酸塩は、水溶性の塩であれば特に限定されないが、水溶性の金属塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩またはカリウム塩がさらに好ましく、ナトリウム塩がいっそう好ましい。
【0077】
上記ペルオキソ二硫酸塩として、ペルオキソ二硫酸ナトリウムを使用する場合は、ペルオキソ二硫酸ナトリウムは、CAS# 7775−27−1のものが好ましい。また、ペルオキソ二硫酸ナトリウムのグレードは、特に限定されず、各種のグレードのものを使用することができる。
【0078】
上記ペルオキソ二硫酸塩としてペルオキソ二硫酸ナトリウムを使用する場合、その配合量は、特に限定されないが、上記混合液(C)中で、上記混合液(B)800質量部に対して、好ましくは1000〜4000質量部、より好ましくは1500〜3500質量部、さらに好ましくは1750〜3250質量部、いっそう好ましくは2000〜3000質量部である。
【0079】
上記ペルオキソ二硫酸塩として、ペルオキソ二硫酸ナトリウムに代えて、ペルオキソ二硫酸カリウム等、ペルオキソ二硫酸ナトリウム以外の水溶性金属塩を使用するときは、分子量に基づいて配合量を調節することが望ましい。
【0080】
(7)エチレンジアミン四酢酸
上記エチレンジアミン四酢酸は、特に限定されず、CAS# 60−00−4のものを使用することができる。
【0081】
上記エチレンジアミン四酢酸の配合量は、特に限定されないが、上記混合液(C)中で、上記混合液(B)800質量部に対して、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは30〜150質量部、さらに好ましくは50〜130質量部、いっそう好ましくは80〜120質量部である。
【0082】
上記エチレンジアミン四酢酸として、エチレンジアミン四酢酸に代えて、エチレンジアミン四酢酸の水溶性塩を使用してもよく、具体的には、例えば、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム二水和物、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムマグネシウム水和物等の金属塩(水和物を含む)を使用することができる。
【0083】
上記エチレンジアミン四酢酸として、エチレンジアミン四酢酸の水溶性塩を使用する場合は、全体的なモル数が同程度となるように、分子量に基づいて、配合量を調節することが望ましい。
【0084】
(8)水
上記酵素処理剤に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0085】
2.製造方法
上記生物処理剤は、水と、ヘキサメタリン酸塩と、グルタチオン酸化型と、グリセロール脱水素酵素とを混合し、混合液(A)を調製し、上記混合液(A)と、酵母溶解酵素と、グリセリンとを混合し、混合液(B)を調製し、および上記混合液(B)と、水と、ペルオキソ二硫酸塩と、エチレンジアミン四酢酸とを混合し、混合液(C)を調製し、混合液(C)をそのまま、または水で希釈することによって製造することができる。
【0086】
(1)混合液(A)の調製方法
混合液(A)は、ヘキサメタリン酸塩と、グルタチオン酸化型と、グリセロール脱水素酵素と、水とを混合し、調製される。所望により、さらにインキュベートしてもよい。
混合する方法は特に限定されず、例えば、水にその他の各成分を添加し、撹拌その他の方法によって均一化することで混合することができる。
混合する際の気温および気圧は、特に限定されず、例えば、常温(20±15℃)、好ましくは常温(概ね20℃)および常圧(概ね1013hPa)で混合することができる。
インキュベートする場合は、その方法は特に限定されず、例えば、0〜10℃、好ましくは0〜5℃で、1〜14日間、好ましくは5〜10日間、静置することでインキュベートすることができる。
【0087】
(2)混合液(B)の調製方法
混合液(B)は、上記混合液(A)と、酵母溶解酵素と、グリセリンとを混合し、調製する。所望により、さらにインキュベートしてもよい。
混合する方法は特に限定されず、例えば、水にその他の各成分を添加し、撹拌その他の方法によって均一化することで混合することができる。
混合する際の気温および気圧は、特に限定されず、常温(20±15℃)、好ましくは常温(概ね20℃)で混合することができる。
インキュベートする場合は、その方法は特に限定されず、例えば、上記のとおり混合した混合液を、30〜45℃、好ましくは35〜42℃で、常圧(20±15℃)、好ましくは常圧(概ね20℃)で、1〜10日間、好ましくは3〜7日間、静置することが望ましい。
【0088】
(3)混合液(C)の調製方法
混合液(C)は、上記混合液(B)と、水と、ペルオキソ二硫酸塩と、エチレンジアミン四酢酸とを混合し、調製する。
混合する方法は特に限定されず、例えば、水にその他の各成分を添加し、撹拌その他の方法によって均一化することで混合することができる。
混合する際の温度および気圧は、特に限定されないが、0〜40℃、好ましくは常温(20±15℃)、より好ましくは常温(概ね20℃)、および常圧(概ね1013hPa)で行うことが望ましい。
インキュベートする場合は、その方法は特に限定されず、例えば、5〜35℃、好ましくは概ね20℃で、1〜14日間、好ましくは5〜10日間、紫外線を避けながら、静置することでインキュベートすることができる。
混合液(C)は、そのまま生物処理剤としてもよいし、水で希釈して生物処理剤とする生物処理剤原液、またはストック溶液としてもよい。
インキュベート後、直ちに使用しない場合は、紫外線を避け、常温(20±15℃)で保管することが望ましい。
【0089】
3.標準生物処理剤
本明細書において、精製水4000gに、ヘキサメタリン酸ナトリウム1200gと、グルタチオン酸化型20mgと、グリセロール脱水素酵素10mgとを添加して撹拌・混合し、さらに0〜5℃、常圧(概ね1013hPa)で、7日間、インキュベートして混合液(A2)を調製し、当該混合液(A2)5200gに、酵母溶解酵素100gと、グリセリン1020gとを添加して撹拌・混合し、さらに、37〜40℃、常圧(概ね1013hPa)で、5日間、インキュベートして混合液(B2)を調製し、精製水10000gに、当該混合液(B2)800gと、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2500gと、エチレンジアミン四酢酸100gとを添加して撹拌・混合し、常温(概ね20℃)常圧(概ね1013hPa)で、紫外線を避け、インキュベートして混合液(C2)を調製し、当該混合液(C2)の全量を水で20000質量部として製造される生物処理剤を、特に、「標準生物処理剤」という場合がある。
【0090】
III.化学処理剤
上記酵素処理剤と組み合わせて使用することができる化学処理剤は、水と、ヘキサメタリン酸塩と、グルタチオン還元型と、グリセロール脱水素酵素と、酵母溶解酵素と、グリセリンと、ペルオキソ二硫酸塩と、エチレンジアミン四酢酸と、を含有する化学処理剤である。
【0091】
以下、上記化学処理剤について説明する。
1.成分
ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水について説明する。
【0092】
(1)ヘキサメタリン酸塩
上記生物処理剤に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0093】
(2)グルタチオン還元型
上記グルタチオン還元型は、特に限定されず、CAS# 70−18−8のものを使用することができる。
【0094】
上記グルタチオン還元型の配合量は、特に限定されないが、上記混合液(A)中で、上記水4000質量部に対して、好ましくは0.010〜1.000質量部、より好ましくは0.050〜0.400質量部、さらに好ましくは0.100〜0.400質量部、いっそう好ましくは0.150〜0.350質量部である。
【0095】
(3)グリセロール脱水素酵素
上記生物処理剤に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0096】
(4)酵母溶解酵素
上記酵素処理剤に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0097】
(5)グリセリン
上記生物処理剤に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0098】
(6)ペルオキソ二硫酸塩
上記生物処理剤に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0099】
(7)エチレンジアミン四酢酸
上記生物処理剤に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0100】
(8)水
上記酵素処理剤に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0101】
2.製造方法
上記化学処理剤は、水と、ヘキサメタリン酸塩と、グルタチオン還元型と、グリセロール脱水素酵素とを混合し、混合液(A)を調製し、上記混合液(A)と、酵母溶解酵素と、グリセリンとを混合し、混合液(B)を調製し、および上記混合液(B)と、水と、ペルオキソ二硫酸塩と、エチレンジアミン四酢酸とを混合し、混合液(C)を調製し、混合液(C)をそのまま、または水で希釈することによって製造することができる。
【0102】
(1)混合液(A)の調製方法
混合液(A)は、ヘキサメタリン酸塩と、グルタチオン還元型と、グリセロール脱水素酵素と、水とを混合し、調製される。所望により、さらにインキュベートしてもよい。
混合する方法は特に限定されず、例えば、水にその他の各成分を添加し、撹拌その他の方法によって均一化することで混合することができる。
混合する際の気温および気圧は、特に限定されず、例えば、常温(20±15℃)、好ましくは常温(概ね20℃)および常圧(概ね1013hPa)で混合することができる。
インキュベートする場合は、その方法は特に限定されず、例えば、0〜10℃、好ましくは0〜5℃で、1〜14日間、好ましくは5〜10日間、静置することでインキュベートすることができる。
【0103】
(2)混合液(B)の調製方法
混合液(B)は、上記混合液(A)と、酵母溶解酵素と、グリセリンとを混合し、調製する。所望により、さらにインキュベートしてもよい。
混合する方法は特に限定されず、例えば、水にその他の各成分を添加し、撹拌その他の方法によって均一化することで混合することができる。
混合する際の気温および気圧は、特に限定されず、常温(20±15℃)、好ましくは常温(概ね20℃)で混合することができる。
インキュベートする場合は、その方法は特に限定されず、例えば、上記のとおり混合した混合液を、30〜45℃、好ましくは35〜42℃で、常圧(20±15℃)、好ましくは常圧(概ね20℃)で、1〜10日間、好ましくは3〜7日間、静置することが望ましい。
【0104】
(3)混合液(C)の調製方法
混合液(C)は、上記混合液(B)と、水と、ペルオキソ二硫酸塩と、エチレンジアミン四酢酸とを混合し、調製する。所望により、さらにインキュベートしてもよい。
混合する方法は特に限定されず、例えば、水にその他の各成分を添加し、撹拌その他の方法によって均一化することで混合することができる。
混合する際の温度および気圧は、特に限定されないが、0〜40℃、好ましくは常温(20±15℃)、より好ましくは常温(概ね20℃)、および常圧(概ね1013hPa)で行うことが望ましい。
インキュベートする場合は、その方法は特に限定されず、例えば、5〜35℃、好ましくは概ね20℃で、1〜14日間、好ましくは5〜10日間、紫外線を避けながら、静置することでインキュベートすることができる。
インキュベート後、直ちに使用しない場合は、紫外線を避け、常温(20±15℃)で保管することが望ましい。
【0105】
3.標準化学処理剤
本明細書において、精製水4000gに、ヘキサメタリン酸ナトリウム1200gと、グルタチオン還元型200mgと、グリセロール脱水素酵素10mgとを添加して撹拌・混合し、さらに0〜5℃、常圧(概ね1013hPa)で、7日間、インキュベートして混合液(A3)を調製し、当該混合液(A3)5200gに、酵母溶解酵素100gと、グリセリン1020gとを添加して撹拌・混合し、さらに、37〜40℃、常圧(概ね1013hPa)で、5日間、インキュベートして混合液(B3)を調製し、精製水10000gに、当該混合液(B3)600gと、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2500gと、エチレンジアミン四酢酸40gとを添加して撹拌・混合し、常温(概ね20℃)常圧(概ね1013hPa)で、紫外線を避け、インキュベートして混合液(C3)を調製し、当該混合液(C3)の全量を水で20000質量部として製造される化学処理剤を、特に、「標準化学処理剤」という場合がある。
【0106】
IV.酵素処理剤の単独使用
1.窒素化合物を含有する水の水処理
(1)本発明は、酵素処理剤を含む、窒素化合物を含有する水の水処理用処理剤を提供する。
本発明の水処理用処理剤は、上記酵素処理剤を単独で提供してもよいし、上記酵素処理剤を含むキットとして提供してもよく、所望により、さらに、プロトコール、取扱説明書、パッケージ等を含んでもよい。
【0107】
(2)本発明は、窒素化合物を含有する水に、本発明の酵素処理剤を添加し、混合する窒素処理工程を備える、窒素化合物を含有する水の水処理方法を提供する。
【0108】
上記水に上記酵素処理剤を添加し、混合する方法は特に限定されず、従来公知の添加方法および混合方法によって行うことができる。混合方法としては、撹拌が好ましい。混合後は、窒素化合物の処理が終了するまで撹拌を続けることが望ましい。
【0109】
上記水に対する上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、窒素化合物の濃度その他の条件に合わせて適宜設定すればよい。上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、例えば、10〜1000ppm、好ましくは10〜300ppm、より好ましくは10〜100ppm、さらに好ましくは10〜50ppmとすることができる。低コストを重視する場合には、酵素処理剤の添加量をより少なくすることが望ましい。
【0110】
(3)その他
水処理とは、水を使用目的にあわせた水質にするため、または周辺環境に影響を与えないよう排出するために、各種の処理を行うことをいう。
【0111】
上記窒素化合物は、特に限定されないが、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素からなる群から選択される少なくとも1つを含むものが好ましい。
【0112】
上記窒素化合物を含有する水は、特に限定されないが、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含むもの、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含むもの、または生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを、BOD成分、COD成分もしくは有機化合物の少なくとも一部について分解処理した処理水を含むものが好ましい。
【0113】
上記分解処理は、特に限定されないが、生物処理または化学処理が好ましく、生物処理がより好ましく、活性汚泥法による処理がさらに好ましく、標準活性汚泥法による処理がいっそう好ましい。
【0114】
環境水とは、公共用水域(河川、湖沼、港湾、沿岸海域、公共溝渠、かんがい用水路、その他公共の用に供される水域や水路(下水道を除く))の水をいう。地下水または環境水は、採取したものについて水処理または浄化処理をすることが好ましい。
【0115】
上記有機化合物は、特に限定されないが、具体的には、例えば、グルコース、マルトース、サッカロース等の糖類、デンプン、セルロース等の多糖類、メタノール等のアルコール類、油脂類、酢酸等の有機酸類などが挙げられる。
【0116】
上記BOD成分は、JIS K 0102:2008 21に定める方法によってBODとして測定されるものであれば特に限定されない。BOD成分としては、例えば、グルコース等の有機物、チオ硫酸イオン等の無機物などが挙げられる。
【0117】
V.生物処理剤および酵素処理剤の併用
1.BOD成分等の処理
(1)本発明は、ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン酸化型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する生物処理剤と、本発明の酵素処理剤とを含む、BOD成分および/または有機化合物ならびに窒素化合物を含有する水の水処理用複合処理剤を提供する。
【0118】
上記水処理用複合処理剤は、酵素処理剤および生物処理剤を含むキットとして提供してもよく、さらに、所望により、プロトコール、取扱説明書、パッケージ等を含んでもよい。
【0119】
(2)本発明は、BOD成分および/または有機化合物ならびに窒素化合物を含有する水と、活性汚泥と、生物処理剤とを混合し、曝気する生物処理工程と、上記生物処理工程で得られた曝気混合液に、酵素処理剤を添加し、混合する窒素処理工程とを備える、BOD成分および/または有機化合物ならびに窒素化合物を含有する水の水処理方法を提供する。
【0120】
混合する方法は、特に限定されず、従来公知の混合方法を用いることができる。混合後、撹拌することが望ましい。
【0121】
曝気する方法は、特に限定されず、従来公知の曝気方法を用いることができる。曝気量は、特に限定されず、BOD成分および/または有機化合物の濃度その他の条件に合わせて適宜設定すればよい。
【0122】
上記水処理方法は、所望により、上記生物処理工程の後、または上記窒素処理工程の後に、さらに、活性汚泥を分離し、回収する汚泥回収工程と、回収した活性汚泥を生物処理剤と混合し、上記生物処理工程に返送する汚泥返送工程とを備えてもよい。
【0123】
活性汚泥を分離し、回収する方法は、特に限定されず、沈殿法、膜分離法その他の従来公知の方法を用いることができる。
【0124】
生物処理剤と返送汚泥とを混合する方法は特に限定されず、どのタイミングで混合してもよい。
【0125】
生物処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、BOD成分および/または有機化合物の濃度その他の条件に合わせて適宜設定すればよい。上記生物処理剤の添加量(添加濃度)は、例えば、曝気混合液中での初期濃度で、1〜100ppm、好ましくは5〜80ppm、より好ましくは5〜50ppmとすることができる。
【0126】
酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、窒素化合物の濃度その他の条件に合わせて適宜設定すればよい。上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、例えば、10〜1000ppm、好ましくは10〜300ppm、より好ましくは10〜100ppm、さらに好ましくは10〜50ppmとすることができる。低コストを重視する場合には、酵素処理剤の添加量をより少なくすることが望ましい。
【0127】
(3)その他
水処理とは、水を使用目的にあわせた水質にするため、または周辺環境に影響を与えないよう排出するために、各種の処理を行うことをいう。
【0128】
上記窒素処理工程においては、硝化反応および脱窒反応が行われることが望ましい。硝化および脱窒を同じ反応槽で行うことができるからである。
【0129】
上記水は、特に限定されないが、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含むもの、または生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含むものが好ましい。ここで、環境水とは、公共用水域(河川、湖沼、港湾、沿岸海域、公共溝渠、かんがい用水路、その他公共の用に供される水域や水路(下水道を除く))の水をいう。地下水または環境水は、採取したものについて水処理または浄化処理をすることが好ましい。
【0130】
上記有機化合物は、特に限定されないが、具体的には、例えば、グルコース、マルトース、サッカロース等の糖類、デンプン、セルロース等の多糖類、メタノール等のアルコール類、油脂類、酢酸等の有機酸類などが挙げられる。
【0131】
上記BOD成分は、JIS K 0102:2008 21に定める方法によってBODとして測定されるものであれば特に限定されない。BOD成分としては、例えば、グルコース等の有機物、チオ硫酸イオン等の無機物などが挙げられる。
上記窒素化合物は、特に限定されないが、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素からなる群から選択される少なくとも1つを含むものが好ましい。
【0132】
VI.化学処理剤および酵素処理剤の併用
1.窒素化合物の処理
(1)本発明は、ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、本発明の酵素処理剤とを含む、窒素化合物を含有する水の水処理用複合処理剤を提供する。
【0133】
上記水処理用複合処理剤は、酵素処理剤および化学処理剤を含むキットとして提供してもよく、さらに、所望により、プロトコール、取扱説明書、パッケージ等を含んでもよい。
【0134】
(2)本発明は、窒素化合物を含有する水と、酵素処理剤と、化学処理剤とを混合する工程を備える、窒素化合物を含有する水の水処理方法を提供する。
【0135】
上記工程においては、硝化反応および脱窒反応が行われることが好ましい。一つの反応槽で硝化および脱窒を行うことができるからである。
【0136】
酵素処理剤および化学処理剤を水に混合する順序は特に限定されず、同時に添加してもよいし、どちらか一方を先に添加してもよい。
【0137】
酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、窒素化合物の濃度その他の条件に合わせて適宜設定すればよく、例えば、10〜1000ppm、好ましくは10〜300ppm、より好ましくは10〜100ppm、さらに好ましくは10〜50ppmとすることができる。低コストを重視する場合には、酵素処理剤の添加量をより少なくすることが望ましい。
【0138】
化学処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、窒素化合物の濃度その他の条件に合わせて適宜設定すればよく、例えば、1〜500ppm、好ましくは1〜300ppm。より好ましくは1〜100ppm、さらに好ましくは1〜50ppmとすることができる。
【0139】
酵素処理剤の添加量(添加濃度)と、化学処理剤の添加量(添加濃度)との関係は、酵素処理剤の添加量(添加濃度)/化学処理剤の添加量(添加濃度)=kとして、1.0≦k≦10が好ましく、1.2≦k≦5がより好ましく、1.5≦k≦3がさらに好ましい。
本水処理方法は、さらに、混合液のpHを、pH4以下またはpH8以上に調節する工程を備えてもよい。
【0140】
上記工程においては、好ましくは、pH4以下に調節して脱窒反応が行われ、pH8以上に調節して硝化反応が行われる。pH4以下に調節すると、還元反応が進行し、pH8以上に調節すると酸化反応が進行し、同じ反応槽内で酸化−還元の窒素循環を行うことができ、一槽型の反応槽とすることができる。
【0141】
上記水において、窒素化合物の濃度は、特に限定されないが、500ppm以上が好ましく、1000ppm以上がより好ましい。
【0142】
(3)その他
水処理とは、水を使用目的にあわせた水質にするため、または周辺環境に影響を与えないよう排出するために、各種の処理を行うことをいう。
【0143】
上記窒素化合物は、特に限定されないが、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素からなる群から選択される少なくとも1つを含むものが好ましい。
【0144】
上記窒素化合物を含有する水は、特に限定されないが、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含むもの、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含むもの、生活排水、産業排水および屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを、BOD成分、COD成分または有機化合物の少なくとも一部について分解処理した処理水を含むものが好ましい。
【0145】
上記処理水は、特に限定されないが、活性汚泥法による処理水が好ましい。
上記有機化合物は、特に限定されないが、具体的には、例えば、グルコース、マルトース、サッカロース等の糖類、デンプン、セルロース等の多糖類、メタノール等のアルコール類、油脂類、酢酸等の有機酸類などが挙げられる。
【0146】
上記BOD成分は、JIS K 0102:2008 21に定める方法によってBODとして測定されるものであれば特に限定されない。BOD成分としては、例えば、グルコース等の有機物、チオ硫酸イオン等の無機物などが挙げられる。
【0147】
環境水とは、公共用水域(河川、湖沼、港湾、沿岸海域、公共溝渠、かんがい用水路、その他公共の用に供される水域や水路(下水道を除く))の水をいう。地下水または環境水については、採取したものについて水処理をすることが好ましい。
【0148】
2.COD成分等含有水の水処理
(1)本発明は、ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、本発明の酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物を含有する水の水処理用複合処理剤を提供する。
【0149】
上記水処理用複合処理剤は、酵素処理剤および化学処理剤を含むキットとして提供してもよく、さらに、所望により、プロトコール、取扱説明書、パッケージ等を含んでもよい。
【0150】
(2)本発明は、COD成分および/または有機化合物を含有する水と、化学処理剤と、酵素処理剤とを混合する工程を備える、COD成分および/または有機化合物を含有する水の水処理方法を提供する。
【0151】
酵素処理剤および化学処理剤を水と混合する方法は特に限定されず、従来公知の混合方法によって行うことができる。
【0152】
酵素処理剤および化学処理剤を水と混合する順序は特に限定されず、同時に添加してもよいし、どちらか一方を先に添加してもよい。
【0153】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、COD成分および/または有機化合物の濃度その他の条件に基づいて適宜設定すればよいが、例えば、10〜20000ppm、好ましくは100〜10000ppmとすることができる。
【0154】
上記酵素処理剤の添加量(添付濃度)は、特に限定されず、COD成分および/または有機化合物の濃度その他の条件に基づいて適宜設定すればよいが、例えば、1〜5000ppm、好ましくは10〜1000ppmとすることができる。
【0155】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)と上記酵素処理剤の添加量(添付濃度)との関係は、特に限定されないが、化学処理剤の添加量(添加濃度)/上記酵素処理剤の添加量(添付濃度)=kとして、好ましくは1≦k≦10000、より好ましくは10≦k≦10000、さらに好ましくは10≦k≦100である。
【0156】
(3)その他
水処理とは、水を使用目的にあわせた水質にするため、または周辺環境に影響を与えないよう排出するために、各種の処理を行うことをいう。
【0157】
上記水は、特に限定されないが、生活排水、産業廃水または屎尿からなる群から選択される少なくとも1つを含むもの、または生活排水、産業廃水または屎尿からなる群から選択される少なくとも1つが混入した地下水または環境水を含むものが好ましい。環境水とは、公共用水域(河川、湖沼、港湾、沿岸海域、公共溝渠、かんがい用水路、その他公共の用に供される水域や水路(下水道を除く))の水をいう。地下水または環境水については、採取したものについて水処理をすることが好ましい。
【0158】
上記有機化合物は、特に限定されないが、具体的には、例えば、グルコース、マルトース、サッカロース等の糖類、デンプン、セルロース等の多糖類、メタノール等のアルコール類、油脂類、酢酸等の有機酸類などが挙げられる。
【0159】
上記COD成分は、JIS K 0102:2008 17に定める方法によってCODMnとして測定される成分であれば特に限定されない。COD成分としては、例えば、デンプン、ショ糖、ブドウ糖等の糖類;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性合成ポリマー;アクリル酸、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アリルアルコール等の水溶性ビニル系モノマー;イソプロピルアルコール、エタノール、ホルムアルデヒド等の飽和脂肪族含酸素化合物;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の界面活性剤;PCB、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3−ジクロロプロペン等の有機ハロゲン化合物;チウラム、シマジン、チオベンカルブ等の農薬;シアン化合物イオン、銅、ニッケル、鉄、カドミウム等のシアノ錯イオン、チオシアン酸イオン、硫化物イオン、チオ硫酸イオン、ジチオン酸イオン、過酸化水素等の無機COD成分;などが挙げられる。
【0160】
3.COD成分等汚染水の浄化処理
(1)本発明は、ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物で汚染された水の浄化処理用複合処理剤を提供する。
上記水処理用複合処理剤は、酵素処理剤および化学処理剤を含むキットとして提供してもよく、さらに、所望により、プロトコール、取扱説明書、パッケージ等を含んでもよい。
【0161】
(2)本発明は、COD成分および/または有機化合物を含有する水と、化学処理剤と、酵素処理剤とを混合する工程を備える、COD成分および/または有機化合物を含有する水の浄化処理方法を提供する。
【0162】
酵素処理剤および化学処理剤を水と混合する方法は特に限定されず、従来公知の混合方法によって行うことができる。
【0163】
酵素処理剤および化学処理剤を水と混合する順序は特に限定されず、同時に添加してもよいし、どちらか一方を先に添加してもよい。
【0164】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、COD成分および/または有機化合物の濃度その他の条件に基づいて適宜設定すればよいが、例えば、10〜20000ppm、好ましくは100〜10000ppmとすることができる。
【0165】
上記酵素処理剤の添加量(添付濃度)は、特に限定されず、COD成分および/または有機化合物の濃度その他の条件に基づいて適宜設定すればよいが、例えば、1〜5000ppm、好ましくは10〜1000ppmとすることができる。
【0166】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)と上記酵素処理剤の添加量(添付濃度)との関係は、特に限定されないが、化学処理剤の添加量(添加濃度)/上記酵素処理剤の添加量(添付濃度)=kとして、好ましくは1≦k≦10000、より好ましくは10≦k≦10000、さらに好ましくは10≦k≦100である。
【0167】
(3)その他
水処理とは、水を使用目的にあわせた水質にするため、または周辺環境に影響を与えないよう排出するために、各種の処理を行うことをいう。
【0168】
上記水は、特に限定されないが、COD成分および/または有機化合物で汚染された地下水または環境水を含むもの、または固形物から溶出したCOD成分および/または有機化合物を含有する溶出液を含むものが好ましい。
【0169】
上記固形物は、特に限定されないが、土壌、底質またはスラグが好ましい。
【0170】
上記COD成分および/または有機化合物は、特に限定されないが、揮発性有機化合物を含むもの、難分解性COD成分を含むもの、または石油もしくは石油の精製物を含むものが好ましい。石油の精製物は、原油、ナフサ、ガソリン、ケロシン、灯油、軽油、重油等を含む。
【0171】
上記有機化合物は、特に限定されないが、具体的には、例えば、グルコース、マルトース、サッカロース等の糖類、デンプン、セルロース等の多糖類、メタノール等のアルコール類、油脂類、酢酸等の有機酸類などが挙げられる。
【0172】
上記COD成分は、JIS K 0102:2008 17に定める方法によってCODMnとして測定される成分であれば特に限定されない。COD成分としては、例えば、デンプン、ショ糖、ブドウ糖等の糖類;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性合成ポリマー;アクリル酸、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アリルアルコール等の水溶性ビニル系モノマー;イソプロピルアルコール、エタノール、ホルムアルデヒド等の飽和脂肪族含酸素化合物;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の界面活性剤;PCB、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3−ジクロロプロペン等の有機ハロゲン化合物;チウラム、シマジン、チオベンカルブ等の農薬;シアン化合物イオン、銅、ニッケル、鉄、カドミウム等のシアノ錯イオン、チオシアン酸イオン、硫化物イオン、チオ硫酸イオン、ジチオン酸イオン、過酸化水素等の無機COD成分;などが挙げられる。
【0173】
4.COD成分等汚染土壌等の浄化処理
(1)本発明は、ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物を含有する粒状物の浄化処理用複合処理剤を提供する。
【0174】
上記水処理用複合処理剤は、酵素処理剤および化学処理剤を含むキットとして提供してもよく、さらに、所望により、プロトコール、取扱説明書、パッケージ等を含んでもよい。
【0175】
(2)本発明は、COD成分および/または有機化合物を含有する粒状物と、当該粒状物から当該COD成分および/または有機化合物の少なくとも一部を溶出するための溶出液とを混合し、懸濁液とする懸濁工程と、上記懸濁液と、化学処理剤と、酵素処理剤とを混合する酸化分解工程とを備える、COD成分および/または有機化合物を含有する粒状物の浄化処理方法を提供する。
【0176】
上記粒状物を上記溶出液に懸濁する方法は、特に限定されず、従来公知の懸濁方法を用いて行うことができる。上記溶出液は、COD成分および/または有機化合物を溶出することができるものであれば、特に限定されず、例えば、水、塩酸水溶液、硫酸水溶液、緩衝液等が挙げられる。
【0177】
酵素処理剤および化学処理剤を水と混合する方法は特に限定されず、従来公知の混合方法によって行うことができる。
【0178】
酵素処理剤および化学処理剤を水と混合する順序は特に限定されず、同時に添加してもよいし、どちらか一方を先に添加してもよい。
【0179】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記COD成分および/または有機化合物の濃度その他の条件によって適宜設定することができ、例えば、10〜20000ppm、好ましくは10〜10000ppm、より好ましくは100〜10000ppmとすることができる。
【0180】
上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記COD成分および/または有機化合物の濃度その他の条件によって適宜設定することができ、例えば、1〜2000ppm、好ましくは1〜5000ppm、より好ましくは10〜1000ppmとすることができる。
【0181】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)と上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)との関係は、特に限定されないが、上記化学処理剤の添加量(添加濃度)/上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)=kとして、1≦k≦1000、好ましくは10≦k≦100とすることが望ましい。
【0182】
(3)その他
上記粒状物は、特に限定されないが、COD成分および/または有機化合物で汚染された土壌または底質が好ましい。
【0183】
上記COD成分および/または有機化合物は、特に限定されないが、揮発性有機化合物を含むもの、難分解性COD成分を含むもの、または石油もしくは石油の精製物を含むものが好ましい。石油の精製物は、原油、ナフサ、ガソリン、ケロシン、灯油、軽油、重油等を含む。
【0184】
上記有機化合物は、特に限定されないが、具体的には、例えば、グルコース、マルトース、サッカロース等の糖類、デンプン、セルロース等の多糖類、メタノール等のアルコール類、油脂類、酢酸等の有機酸類などが挙げられる。
【0185】
上記COD成分は、JIS K 0102:2008 17に定める方法によってCODMnとして測定される成分であれば特に限定されない。COD成分としては、例えば、デンプン、ショ糖、ブドウ糖等の糖類;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性合成ポリマー;アクリル酸、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アリルアルコール等の水溶性ビニル系モノマー;イソプロピルアルコール、エタノール、ホルムアルデヒド等の飽和脂肪族含酸素化合物;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の界面活性剤;PCB、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3−ジクロロプロペン等の有機ハロゲン化合物;チウラム、シマジン、チオベンカルブ等の農薬;シアン化合物イオン、銅、ニッケル、鉄、カドミウム等のシアノ錯イオン、チオシアン酸イオン、硫化物イオン、チオ硫酸イオン、ジチオン酸イオン、過酸化水素等の無機COD成分;などが挙げられる。
【0186】
5.土壌等の原位置浄化処理
(1)本発明は、ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、酵素処理剤とを含む、COD成分および/または有機化合物を含む汚染物質で汚染された土壌および/または地下水の原位置浄化処理用複合処理剤を提供する。
【0187】
上記水処理用複合処理剤は、酵素処理剤および化学処理剤を含むキットとして提供してもよく、さらに、所望により、プロトコール、取扱説明書、パッケージ等を含んでもよい。
【0188】
(2)本発明は、COD成分および/または有機化合物を含む汚染物質で汚染された土壌および/または地下水に、化学処理剤および酵素処理剤を原位置で注入する工程を備える、COD成分および/または有機化合物を含む汚染物質で汚染された土壌および/または地下水の原位置浄化処理方法を提供する。
【0189】
上記化学処理剤および上記酵素処理剤を注入する方法は、特に限定されないが、注入井を掘り、そこから注入することが望ましい。
【0190】
上記化学処理剤と、上記酵素処理剤との注入の順序は、特に限定されず、上記化学処理剤を注入し、その後、上記酵素処理剤を注入してもよいし、上記酵素処理剤を注入し、その後、上記化学処理剤を注入してもよい。
【0191】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記COD成分および/または有機化合物の濃度その他の条件によって適宜設定することができ、例えば、10〜20000ppm、好ましくは10〜10000ppm、より好ましくは100〜10000ppmとすることができる。
【0192】
上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記COD成分および/または有機化合物の濃度その他の条件によって適宜設定することができ、例えば、1〜2000ppm、好ましくは1〜5000ppm、より好ましくは10〜1000ppmとすることができる。
【0193】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)と上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)との関係は、特に限定されないが、上記化学処理剤の添加量(添加濃度)/上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)=kとして、1≦k≦1000、好ましくは10≦k≦100とすることが望ましい。
【0194】
上記汚染物質は、特に限定されないが、揮発性有機化合物を含むもの、難分解性COD成分を含むもの、または石油もしくは石油の精製物を含むものが好ましい。石油の精製物は、原油、ナフサ、ガソリン、ケロシン、灯油、軽油、重油等を含む。
【0195】
上記有機化合物は、特に限定されないが、具体的には、例えば、グルコース、マルトース、サッカロース等の糖類、デンプン、セルロース等の多糖類、メタノール等のアルコール類、油脂類、酢酸等の有機酸類などが挙げられる。
【0196】
上記COD成分は、JIS K 0102:2008 17に定める方法によってCODMnとして測定される成分であれば特に限定されない。COD成分としては、例えば、デンプン、ショ糖、ブドウ糖等の糖類;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性合成ポリマー;アクリル酸、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アリルアルコール等の水溶性ビニル系モノマー;イソプロピルアルコール、エタノール、ホルムアルデヒド等の飽和脂肪族含酸素化合物;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の界面活性剤;PCB、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3−ジクロロプロペン等の有機ハロゲン化合物;チウラム、シマジン、チオベンカルブ等の農薬;シアン化合物イオン、銅、ニッケル、鉄、カドミウム等のシアノ錯イオン、チオシアン酸イオン、硫化物イオン、チオ硫酸イオン、ジチオン酸イオン、過酸化水素等の無機COD成分;などが挙げられる。
【0197】
6.バイオフィルム除去・発生防止
(1)本発明は、ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、上記(1)に記載の酵素処理剤とを含む、バイオフィルムの除去・発生防止用複合処理剤を提供する。
【0198】
上記水処理用複合処理剤は、酵素処理剤および化学処理剤を含むキットとして提供してもよく、さらに、所望により、プロトコール、取扱説明書、パッケージ等を含んでもよい。
【0199】
(2)本発明は、循環水を使用する熱交換器の循環水に、化学処理剤および酵素処理剤を混合し、循環させる工程を備える、循環水流路のバイオフィルム除去方法を提供する。
【0200】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記バイオフィルムの付着量その他の条件によって適宜設定することができ、例えば、10〜20000ppm、好ましくは10〜10000ppm、より好ましくは100〜10000ppmとすることができる。
【0201】
上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記バイオフィルムの付着量その他の条件によって適宜設定することができ、例えば、1〜2000ppm、好ましくは1〜5000ppm、より好ましくは10〜1000ppmとすることができる。
【0202】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)と上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)との関係は、特に限定されないが、上記化学処理剤の添加量(添加濃度)/上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)=kとして、1≦k≦1000、好ましくは10≦k≦100とすることが望ましい。
【0203】
(3)本発明は、また、循環水を使用する熱交換器の循環水に、化学処理剤および酵素処理剤を混合し、循環させるバイオフィルム除去工程と、上記循環水に化学処理剤を混合し、循環させるバイオフィルム発生防止工程とを備える、循環水流路のバイオフィルム発生防止方法を提供する。
【0204】
上記バイオフィルム発生防止工程は、少なくとも1回繰り返すことが望ましい。継続的にバイオフィルムの発生を防止することができる。
【0205】
バイオフィルム除去工程での、化学処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記バイオフィルムの付着量その他の条件によって適宜設定することができ、例えば、10〜20000ppm、好ましくは10〜10000ppm、より好ましくは100〜10000ppmとすることができる。
【0206】
バイオフィルム除去工程での、酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記バイオフィルムの付着量その他の条件によって適宜設定することができ、例えば、1〜2000ppm、好ましくは1〜5000ppm、より好ましくは10〜1000ppmとすることができる。
【0207】
バイオフィルム除去工程での、化学処理剤の添加量(添加濃度)と上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)との関係は、特に限定されないが、上記化学処理剤の添加量(添加濃度)/上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)=kとして、1≦k≦1000、好ましくは10≦k≦100とすることが望ましい。
【0208】
バイオフィルム発生防止工程での、化学処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、循環水の流量、交換インターバルその他の条件によって適宜設定することができ、例えば、1〜100ppm、好ましくは5〜100ppm、より好ましくは5〜50ppmとすることができる。
【0209】
(4)その他
上記熱交換器は、冷却・加熱プロセスのために使用されるものであれば、特に限定されないが、冷却塔、加熱塔、凝縮器、蒸発器、ボイラー、蒸気発生器および復水器からなる群から選択されるいずれか1つが好ましい。
【0210】
7.改良鉄粉法(重金属の不溶化処理)
(1)本発明は、ヘキサメタリン酸塩、グルタチオン還元型、グリセロール脱水素酵素、酵母溶解酵素、グリセリン、ペルオキソ二硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸および水を含有する化学処理剤と、酵素処理剤とを含む、重金属の不溶化処理用複合処理剤を提供する。
上記水処理用複合処理剤は、酵素処理剤および化学処理剤を含むキットとして提供してもよく、さらに、所望により、プロトコール、取扱説明書、パッケージ等を含んでもよい。
【0211】
(2)本発明は、重金属を含有する水のpHを弱酸性域に調節するpH調節工程と、上記pH調節工程で得られたpH調節水に、化学処理剤および酵素処理剤を添加し、混合する処理剤添加工程と、上記処理剤添加工程で得られた混合液に、鉄粉を添加し、混合する鉄粉添加工程とを備える、重金属を含有する水の浄化処理方法を提供する。
【0212】
上記水は、特に限定されないが、重金属で汚染された地下水または環境水を含むもの、または重金属を含有する家庭排水または産業排水を含むものが好ましい。
【0213】
上記水に対する上記化学処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記重金属の含有量(濃度)その他の条件により適宜設定すればよいが、例えば、50〜5000ppm、好ましくは100〜2000ppm、より好ましくは500〜1500ppmとすることができる。
【0214】
上記水に対する上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記重金属の含有量(濃度)その他の条件により適宜設定すればよいが、例えば、5〜1000ppm、好ましくは10〜1000ppm、より好ましくは100〜500ppmとすることができる。
【0215】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)と、上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)との関係は、化学処理剤の添加量(添加濃度)/酵素処理剤の添加量(添加濃度)=kとして、2.0≦k≦10が好ましく、2.5≦k≦7.5がより好ましい。
【0216】
(3)本発明は、また、重金属を含有する粒状物を、当該重金属を溶出するための溶出液に懸濁する懸濁工程と、上記懸濁工程で得られた懸濁液のpHを弱酸性域に調節するpH調節工程と、上記pH調節工程で得られたpH調節液に、化学処理剤および酵素処理剤を添加し、混合する処理剤添加工程と、上記処理剤添加工程で得られた混合液に、鉄粉を添加し、混合する鉄粉添加工程とを備える、重金属を含有する粒状物の浄化処理方法を提供する。
【0217】
上記粒状物は、特に限定されないが、重金属で汚染された土壌または底質が好ましい。
上記溶出液に対する上記化学処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記重金属の含有量(濃度)その他の条件により適宜設定すればよいが、例えば、50〜5000ppm、好ましくは100〜2000ppm、より好ましくは500〜1500ppmとすることができる。
【0218】
上記溶出液に対する上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)は、特に限定されず、上記重金属の含有量(濃度)その他の条件により適宜設定すればよいが、例えば、5〜1000ppm、好ましくは10〜1000ppm、より好ましくは100〜500ppmとすることができる。
【0219】
上記化学処理剤の添加量(添加濃度)と、上記酵素処理剤の添加量(添加濃度)との関係は、化学処理剤の添加量(添加濃度)/酵素処理剤の添加量(添加濃度)=kとして、2.0≦k≦10が好ましく、2.5≦k≦7.5がより好ましい。
【0220】
(4)その他
弱酸性域とは、pH3.0以上、pH6.0未満をいう。pHを調節する方法は特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。例えば、硫酸水溶液等の酸および/または水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより、pHを調節することができる。この際、pHをpHメーター等で測定しながらpHを調節することが好ましい。
【0221】
上記重金属としては、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、砒素(As)、セレン(Se)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、バリウム(Ba)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、プラチナ(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)およびセリウム(Ce)からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0222】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではないことを確認的に記載しておく。
【実施例1】
【0223】
[酵素処理剤の製造]
1.原材料
(1)豚肝臓抽出液(CT−3000,インテック株式会社製)
(2)酵母溶解酵素(関東化学社製;5000U/g)
(3)乳酸脱水素酵素(豚心臓)(EC 1.1.1.27;2000U/mL)
(4)グルコース脱水素酵素(EC 1.1.1.47;250U/mg)
2.製造方法
(1)豚肝臓抽出液をフィルター(高分子分離膜、孔径1.2〜20μm)でろ過した。
(2)豚肝臓抽出液のろ過液2000gに、酵母溶解酵素200gと、乳酸脱水素酵素15mgと、グルコース脱水素酵素10mgを添加し、撹拌・混合した。
(3)この混合液を、0〜5℃で冷蔵しながら、10日間静置した。
(4)その後、さらに、38〜40℃で保温しながら、3日間静置した。
(5)この混合液をフィルター(高分子分離膜、孔径0.45〜1.2μm)でろ過した。
(6)精製水2000gに、ろ過した混合液500gを添加し、さらに精製水で全量を20000gとして、撹拌・混合した。
(7)この混合液を、常温(5〜35℃)に保ちながら、3日間静置した。
(8)静置後、直射日光を避け、常温で保存した。
【0224】
【表1】
【0225】
[生物処理剤の製造]
1.原材料
(1)ヘキサメタリン酸ナトリウム(CAS# 10124−56−8)
(2)グルタチオン酸化型(CAS# 27025‐41‐8)
(3)グリセロール脱水素酵素(EC 1.1.1.6;50U/mg)
(4)酵母溶解酵素(5000U/g;関東化学社製,#360954−N)
(5)グリセリン(CAS# 56−81−5)
(6)ペルオキソ二硫酸ナトリウム(CAS# 7775−27−1)
(7)エチレンジアミン四酢酸(CAS# 60−00−4)
(8)精製水(イオン交換水、電気抵抗率1MΩ・cm)
【0226】
2.製造方法
(1)精製水4000gと、ヘキサメタリン酸ナトリウム1200gと、グルタチオン酸化型20mgと、グリセロール脱水素酵素10mgとを配合して撹拌・混合し、さらに0〜5℃に温度制御した冷蔵庫内で、7日間、インキュベートした。この混合液を混合液(A)とした(表1Bの「混合液(A)」の欄を参照)。
(2)その後、混合液(A)5200gに、酵母溶解酵素100gと、グリセリン1020gとを添加して撹拌・混合し、さらに37〜40℃に温度制御したインキュベーター内で、5日間、インキュベートした。この混合液を混合液(B)とした(表1Bの「混合液(B)」の欄を参照)。
(3)その後、精製水16600gに、混合液(B)800gと、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2500gと、エチレンジアミン四酢酸100gとを添加して撹拌・混合し、さらに室温(20±15℃)で、紫外線を避けながら、7日間、インキュベートした。この混合液を混合液(C)とした(表1Bの「混合液(C)」の欄を参照)。
(4)混合液(C)を、そのまま、生物処理剤とした。以下の実施例では、このようにして製造した生物処理剤を「生物処理剤X」ということとする。
【0227】
【表2】
【0228】
[化学処理剤の製造]
1.原材料
(1)ヘキサメタリン酸ナトリウム(CAS# 10124−56−8)
(2)グルタチオン還元型(CAS# 70‐18‐8)
(3)グリセロール脱水素酵素(EC 1.1.1.6;50U/mg)
(4)酵母溶解酵素(5000U/g;関東化学社製,#360954−N)
(5)グリセリン(CAS# 56−81−5)
(6)ペルオキソ二硫酸ナトリウム(CAS# 7775−27−1)
(7)エチレンジアミン四酢酸(CAS# 60−00−4)
(8)精製水(イオン交換水、電気抵抗率1MΩ・cm)
【0229】
2.製造方法
(1)精製水4000gに、ヘキサメタリン酸ナトリウム1200gと、グルタチオン還元型200mgと、グリセロール脱水素酵素10mgとを添加して撹拌・混合し、さらに0〜5℃、常圧(概ね1013hPa)で、7日間、インキュベートした。この混合液を混合液(A)とした(表1Cの「混合液(A)」の欄を参照)。
(2)その後、混合液(A)5200gに、酵母溶解酵素100gと、グリセリン1020gとを添加して撹拌・混合し、さらに、37〜40℃、常圧(概ね1013hPa)で、5日間、インキュベートした。この混合液を混合液(B)とした(表1Cの「混合液(B)」の欄を参照)。
(3)その後、精製水16860gに、混合液(B)600gと、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2500gと、エチレンジアミン四酢酸40gとを添加して撹拌・混合し、常温(概ね20℃)常圧(概ね1013hPa)で、紫外線を避け、インキュベートした。この混合液を混合液(C)とした(表1Cの「混合液(C)」の欄を参照)。
(4)混合液(C)を、そのまま、化学処理剤とした。以下の実施例では、この化学処理剤を「化学処理剤Y」ということとする。
【0230】
【表3】
【実施例2】
【0231】
[めっき廃液凝集処理水の窒素処理]
一律排水基準では、窒素(T−N)について、120mg/L(日間平均60mg/L)に規制されている。
【0232】
1.試料
めっき廃液凝集沈殿処理水
【0233】
2.処理剤等
酵素処理剤Z(実施例1で製造したもの)
【0234】
3.測定方法
窒素含有量(T−N)
JIS K 0102:2008 45.2に定める方法により窒素含有量を測定した。
【0235】
4.処理方法
(1)試料廃水の一部を採取し、窒素含有量を上記方法により測定した。
(2)試料廃水2000gに、酵素処理剤Zを20ppmの濃度となるように添加した。
(3)試料廃水と酵素処理剤Zとの混合液を12時間撹拌し続けた。
(4)処理後の混合液の一部を採取し、窒素含有量を上記方法により測定した。
【0236】
5.処理結果
処理前後のT−Nの測定値を表2に示す。
【表4】
【0237】
6.まとめ
(1)窒素含有量
処理前72mg/Lから処理後21mg/Lに減少した。
【実施例3】
【0238】
[食品加工工場廃水の処理]
一律排水基準では、BODについて160mg/L(日間平均120mg/L)、窒素について、120mg/L(日間平均60mg/L)に規制されている。
【0239】
1.試料
食品加工工場廃水
【0240】
2.処理剤等
(1)酵素処理剤Z(実施例1で製造したもの)
(2)生物処理剤X(実施例1で製造したもの)
【0241】
3.測定方法
(1)生物化学的酸素要求量(BOD)
JIS K 0102:2008 21に定める方法によりBODを測定した。
(2)窒素含有量(T−N)
JIS K 0102:2008 45.2に定める方法により窒素含有量を測定した。
【0242】
4.処理方法
(1)食品加工廃水処理設備における連続式活性汚泥処理装置の曝気槽(通気量:0.5mL/min)に流入する食品加工廃水のBODおよび窒素含有量(T−N)を上記方法により測定した。
(2)食品加工廃水の流入速度を600mL/minに設定し、活性汚泥返送ラインに生物処理剤Xを20ppm濃度で添加した。
(3)酵素処理剤Zを曝気撹拌後側に0.5ppm濃度で添加した。
(4)沈殿槽で活性汚泥を沈降分離し、上澄分離水を採取し、BODおよび窒素含有量(T−N)を上記方法により測定した。
【0243】
5.処理結果
【表5】
【0244】
6.まとめ
(1)BOD
処理前34mg/Lから処理後12mg/Lに低下した。
(2)T−N
処理前37mg/Lから処理後22mg/Lに低下した。
【実施例4】
【0245】
[有機溶剤を含有する廃水の処理]
一律排水基準では、CODについて160mg/L(日間平均120mg/L)に規制されている。
【0246】
1.試料
化学品製造工場廃水
【0247】
2.処理剤等
(1)酵素処理剤Z(実施例1で製造したもの)
(2)化学処理剤Y(実施例1で製造したもの)
【0248】
3.測定方法
(1)生物化学的酸素要求量(BOD)
JIS K 0102:2008 21に定める方法によりBODを測定した。
(2)化学的酸素要求量(COD)
JIS K 0102:2008 17に定める方法によりCODを測定した。
(3)窒素含有量(T−N)
JIS K 0102:2008 45.2に定める方法により窒素含有量を測定した。
(4)水素イオン濃度(pH)
JIS K 0102:2008 12.1に定める方法によりpHを測定した。
【0249】
4.処理方法
(1)試料廃水の処理前のBOD、COD、T−NおよびpHを上記方法で測定した。
(2)試料廃水に酵素処理剤Zを1000ppm濃度で添加して撹拌した。
(3)これに、化学処理剤Yを8000ppm濃度で添加し、常温(おおむね20℃)常圧(概ね1気圧)で撹拌した。
(4)化学処理剤Yを添加してから260時間経過時に撹拌を止め、処理後のBOD、COD、T−NおよびpHを上記方法で測定した。
【0250】
5.処理結果
BOD、CODおよびT−Nの処理前後の測定値を表4に示す。
処理の前後で、pHはpH3.2からpH3.8に変化した。
【表6】
【0251】
6.まとめ
(1)BOD
処理前95600mg/Lから処理後2400mg/Lに低下した。
(2)COD
処理前25400mg/Lから処理後2100mg/Lに低下した。
(3)T−N
処理前12000mg/Lから処理後225mg/Lに低下した。
【実施例5】
【0252】
[エタノールを含有する廃水の処理]
1.試料
5質量%エタノール含有水
【0253】
2.処理剤等
(1)酵素処理剤Z(実施例1で製造したもの)
(2)化学処理剤Y(実施例1で製造したもの)
【0254】
3.測定方法
(1)化学的酸素要求量(COD)
JIS K 0102:2008 17に定める方法によりCODを測定した。
(2)全有機炭素(TOC)
JIS K 0102:2008 22に定める方法によりTOCを測定した。
また、処理の前後に、pHを測定した。
【0255】
4.処理方法
(1)廃水試料1000Lに、化学処理剤Yを濃度1000ppmとなるように添加し、混合した。
(2)次いで、この混合液に、酵素処理剤Zを濃度10ppmとなるように添加し、その後420分間撹拌を続けた。
【0256】
5.処理結果
表5に処理前後のCODおよびTOCの測定値を示す。
なお、pHは処理の前後で、pH6.9からpH6.0に変化した。
【表7】
【0257】
6.まとめ
(1)COD
処理前14000mg/Lから処理後370mg/Lに減少した。
(2)TOC
処理前19000mg/Lから処理後440mg/Lに減少した。
【実施例6】
【0258】
[アセトニトリルを含有する廃水の処理]
1.試料
5質量%アセトニトリル含有水
【0259】
2.処理剤等
(1)酵素処理剤Z(実施例1で製造したもの)
(2)化学処理剤Y(実施例1で製造したもの)
【0260】
3.測定方法
(1)水素イオン濃度(pH)
JIS K 0102:2008 12.1に定める方法によりpHを測定した。
(2)化学的酸素要求量(COD)
JIS K 0102:2008 17に定める方法によりCODを測定した。
(3)全有機炭素(TOC)
JIS K 0102:2008 22に定める方法によりTOCを測定した。
【0261】
4.処理方法
(1)廃水試料1000Lに、化学処理剤Yを濃度1000ppmとなるように添加し、混合した。
(2)次いで、この混合液に、酵素処理剤Zを濃度10ppmとなるように添加し、添加後、140時間が経過するまで撹拌を続けた。
【0262】
5.処理結果
表6に、処理前後のCODおよびTOCの測定値を示す。
なお、pHは処理の前後で、pH6.9からpH6.0に変化した。
【表8】
【0263】
6.まとめ
(1)COD
処理前90mg/Lから処理後6.0mg/Lに減少した。
(2)TOC
処理前29000mg/Lから処理後9.4mg/Lに減少した。
【実施例7】
【0264】
[残土の水銀溶出量低減]
金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準(昭和48年2月17日 総理府令第5号)では、水銀またはその化合物の溶出量基準は0.005mg/Lである。
土壌等を汚染している重金属を不溶化し、無害化する方法としては、従来、空気酸化フェライト法、鉄粉法、キレート化法、セメント固化法等が知られている。
空気酸化フェライト法は、鉄、マンガン、コバルト、ニッケルといった鉄族元素のほか、銅、鉛、スズ、カドミウム、クロム、ヒ素などの重金属をスピネルフェライト化し、再溶出の極めて少ない安定な磁性体を形成する。しかし、空気酸化フェライト法では水銀をフェライト化することはできず、水銀で汚染された土壌等については、適用することができなかった。
鉄粉法は、重金属を含有する液を最適pHに調節してから鉄粉を加えたときに進行する鉄粉反応によって、有害金属の不溶化、シアン化合物、フッ素化合物等の分解が行われる反応であり、水銀の不溶化をすることも可能である。
キレート化法は、キレート剤に重金属を取り込み、溶出濃度を低減する方法である。重金属ごとに適したキレート剤を用いることができる。キレート化法に中和凝集沈殿法等が組み合わせられることも多い。
セメント固化法は、化学的な反応だけではなく、物理的な固化も期待できるため、よく用いられている。
【0265】
本実施例では、水銀で汚染された土壌の水銀不溶化処理を鉄粉法で行うにあたり、本発明の化学処理剤と酵素処理剤との組合せを用いた例を示す。
【0266】
1.試料および試験方法
水銀およびその化合物の溶出量の測定は、産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(昭和48年2月17日 環境庁告示第13号)に定める方法によった。すなわち、総水銀の測定方法(昭和46年12月28日 環境庁告示第59号 付表1)により、還元気化原子吸光法で定量を行った。
1−1)例1
(1)水銀で汚染された残土を採取し、水銀およびその化合物の溶出量を測定した。
(2)水銀で汚染された残土600gを1Lビーカーに採取し、これに蒸留水600mLを加え、撹拌し、懸濁した。
(3)懸濁液のpHを、希硫酸(濃度50質量%)および水酸化ナトリウム水溶液(濃度48%w/v)を用いて、pH4.5に調節した。
(4)これに、酵素処理剤Z 0.12mLおよび化学処理剤Y 0.3mL(いずれも、実施例1で製造したもの)を添加し、約30分間撹拌した。
(5)撹拌後、微細鉄粉0.3gを添加し、さらに約10分間撹拌した。
(6)撹拌後、ろ過し、回収した固形分を風乾した。
(7)風乾した固形分を検体として、水銀およびその化合物の溶出量を測定した。
1−2)例2
上記(4)において、酵素処理剤Zおよび化学処理剤Yを、それぞれ、0.12mLおよび0.6mLとした点のみ相違する。
【0267】
2.試験結果
表7に、例1、例2についての処理前後の水銀およびその化合物の溶出量の測定値を示す。
【表9】
【0268】
3.まとめ
(1)例1
水銀およびその化合物の溶出量は、処理前には0.015mg/Lであったが、処理後には0.0034mg/Lまで低減された。
溶出量基準(0.005mg/L)を満たすことができた。
(2)例2
水銀およびその化合物の溶出量は、処理前には0.015mg/Lであったが、処理後には0.0040mg/Lまで低減された。
溶出量基準(0.005mg/L)を満たすことができた。
【実施例8】
【0269】
[硝化剤・脱窒剤用途]
本発明の酵素処理剤は、単剤で窒素化合物を含有する水の窒素処理をすることができるが、本発明の化学処理剤を併用すると、反応槽内各所に酸化域と還元域とが分散して効率よく窒素処理を行うことができる。
【0270】
本実施例では、高濃度(1900mg/L、1100mg/L)の全窒素を含有する廃水の窒素処理を酵素処理剤と化学処理剤とを併用して行った例(例1、2)、比較的低濃度(240mg/L)の全窒素を含有する廃水の窒素処理を酵素処理剤と化学処理剤とを併用して行った例(例3)、および低濃度(72mg/L)の全窒素を含有する廃水の窒素処理を酵素処理剤の単剤で行った例(例4)を示し、処理時間および処理前後の全窒素について比較した。
【0271】
1.試料および試験方法
以下の例において、全窒素(T−N)の測定は、紫外吸光光度法(JIS K 0102:2008 45.2に定める方法)によって行った。
1−1)例1
(1)窒素含有廃水(T−N 1900mg/L,pH11.6)1000gを採取し、この廃水のpHを希硫酸(濃度50質量%)および水酸化ナトリウム水溶液(濃度10質量%)を用いてpH6.8に調節した。
(2)酵素処理剤Zおよび化学処理剤Y(いずれも、実施例1で製造したもの)を、それぞれ、1000ppmおよび500ppmの添加濃度となるように添加し、混合液を撹拌した。
(3)撹拌開始から6時間経過時に撹拌を止め、全窒素(T−N)を測定した。
【0272】
1−2)例2
(1)窒素含有廃水(T−N 1100mg/L,pH2.86)1000gを採取し、この廃水のpHを水酸化ナトリウム水溶液(濃度48%w/v)および希硫酸(濃度50質量%)を用いてpH7.4に調節した。
(2)酵素処理剤Zおよび化学処理剤Y(いずれも、実施例1で製造したもの)を、それぞれ、500ppmおよび300ppmの添加濃度となるように添加し、混合液を撹拌した。
(3)撹拌開始から10時間経過時に撹拌を止め、全窒素(T−N)を測定した。
【0273】
1−3)例3
(1)窒素含有廃水(T−N 240mg/L,pH10.8)1000gを採取した。
(2)酵素処理剤Zおよび化学処理剤Y(いずれも、実施例1で製造したもの)を、それぞれ、100ppmおよび40ppmの添加濃度となるように添加し、混合液を撹拌した。
(3)撹拌開始から1時間経過時に撹拌を止め、全窒素(T−N)を測定した。
【0274】
1−4)例4
(1)窒素含有廃水(T−N 72mg/L,pH6.8)1000gを採取した。
(2)酵素処理剤Z(実施例1で製造したもの)を、20ppmの添加濃度となるように添加し、混合液を撹拌した。
(3)撹拌開始から12時間経過時に撹拌を止め、全窒素(T−N)を測定した。
【0275】
2.試験結果
処理剤添加量(添加濃度)、処理時間および処理前後の全窒素量(T−N)を表8に示す。
【表10】
【0276】
3.まとめ
本発明の酵素処理剤と化学処理剤とを併用すると、酵素処理剤を単剤で用いた場合に比べ、効率よく窒素処理を行うことができることがわかる。
【実施例9】
【0277】
[バイオフィルムの除去・発生防止]
冷却塔、凝縮器等の熱交換器は、熱媒体として水を使用するものがある。これらの熱交換器に使用される水は、何ら対策を講じなければ、開放型はいうまでもなく、密閉型であっても、細菌や藻類をはじめとする微生物が増殖し、流路にバイオフィルムを形成しやすい。
バイオフィルムは熱伝導率を悪化させ、エネルギー消費を増大させるおそれがある。また、レジオネラ菌、緑膿菌等の病原細菌がバイオフィルムを形成していた場合には、人の健康被害が生じるおそれもある。
このような微生物の増殖を阻止し、バイオフィルムの発生を防止するため、殺菌剤や防腐剤等の薬剤が入れられることがある。しかし、既に発生してしまったバイオフィルムを、このような薬剤によって除去することは容易ではない。
【0278】
本実施例では、本発明の化学処理剤と酵素処理剤との組合せを用いて、配管に発生したバイオフィルムを除去し、かつ、バイオフィルムの発生を防止できることを示す。
【0279】
1.試料および試験方法
バイオフィルムを除去する前および除去した後の発生防止処置中の冷却塔循環水を試料として、一般細菌数および従属栄養細菌数を測定し、比較する。
(1)バイオフィルムを除去する前の配管を流れる循環水を2カ所(例1、2)からサンプリングし、一般細菌数および従属栄養細菌数を測定する。
(2)バイオフィルムを除去することを目的として、化学処理剤Yを1000ppm、酵素処理剤Zを100ppmの濃度となるように循環水に添加し、循環水を1〜24時間循環させる。
(3)その後、バイオフィルムの発生を防止することを目的として、1日1回、化学処理剤Yを20ppmの濃度となるように循環水に添加し、循環水を循環させる。
(4)1週間後、バイオフィルムを除去した後の配管を流れる、バイオフィルムの発生防止処置をしている循環水をバイオフィルム除去前にサンプリングしたのと同じ2カ所(例1、2)からサンプリングし、一般細菌数および従属栄養細菌数を測定する。
(5)一般細菌数の測定は、用水・排水中の一般細菌試験方法(JIS K 0350−10−10:2002)に定める方法で、従属栄養細菌数の測定は、用水・排水中の従属栄養細菌試験方法(JIS K 0350−30−10:2002)に定める方法で、それぞれ行う。
【0280】
2.試験結果
バイオフィルム除去前およびバイオフィルム除去後のバイオフィルム発生防止処理中の循環水中の一般細菌数および従属栄養細菌数の測定結果を表9に示す。
【表11】
【0281】
3.まとめ
一般細菌数は、バイオフィルム除去前には、水道水質基準(平成15年5月30日 厚生労働省令第101号)の100個/mLを大きく超えているが、バイオフィルム除去直後およびバイオフィルム除去後のバイオフィルム発生防止処置中では、0個/mLとなり、検出されなくなる。
一方、従属栄養細菌数は、バイオフィルム除去前には、水質管理目標設定項目の目標値の2000個/mLを大きく超えているが、バイオフィルム除去直後およびバイオフィルム除去後のバイオフィルム発生防止処置中では、0個/mLとなり、検出されなくなる。
本発明の化学処理剤および酵素処理剤は、従来のバイオフィルム除去剤のように、使用後に中和をしたりする必要がなく、取扱いが容易で、熱交換器設備や人に対する安全性も高い。
また、バイオフィルム発生防止のために使用する化学処理剤Yは、20ppmと低濃度で、しかも、容易に分解されるため、従来用いられている殺菌剤、防腐剤等に比べ、人に対する安全性が高い。
【実施例10】
【0282】
実施例1の表1Aに表した配合の酵素処理剤において、肝臓抽出液を、40g〜250gのブタ肝臓から水抽出した肝臓抽出液に変更した処理剤(以下「酵素処理剤(肝臓量変更)」とう。)、乳製品製造廃水の全窒素(T−N)濃度を低減する試験を行った。また、対照として、実施例1の表1Aに表した配合の酵素処理剤において、所定濃度(0.3〜1.0mg/L)のカタラーゼ水溶液を肝臓抽出液の代わりに配合した処理剤(以下「酵素処理剤(カタラーゼ)」という。)を調製し、NMP(Nメチルピロリドン)含有廃水を処理して、全窒素(T−N)濃度を測定した。
【0283】
1.酵素処理剤(肝臓量変更)による、乳製品製造廃水中のT−N低減処理
(1)乳製品製造廃水(T−N:95mg/L)に表10Aに示す質量の肝臓から水抽出した肝臓抽出液を、実施例1の表1Aの配合量で混合して製造した酵素処理剤(肝臓量変更)を500ppm濃度で添加し、その後5時間撹拌して、T−N低減処理を行った。
(2)T−N低減処理を行った乳製品製造廃水中のT−Nを、JIS K 0102:2008 45.2に定める方法により測定した。測定結果を表10Aに示す。
(3)T−Nが30mg/L以下であれば優(A)、30mg/L超40mg/L以下であれば良(B)、40mg/L超50mg/L未満であれば可(C)、50mg/L以上であれば不可(D)と判定した。判定結果を表10Aに示す。
【0284】
【表12】
【0285】
2.酵素処理剤(カタラーゼ)による、NMP含有廃水中のT−N低減処理
(1)NMP含有廃水(T−N:2100mg/L)に表10Bに示す量のカタラーゼを、実施例1の表1Aの肝臓抽出液の代わりに配合して製造した酵素処理剤(カタラーゼ)を1000ppm濃度で添加し、その後10時間撹拌して、T−N低減処理を行った。
(2)T−N低減処理を行ったNMP含有廃水中のT−Nを、JIS K 0102:2008 45.2に定める方法により測定した。測定結果を表10Bに示す。
(3)T−Nが30mg/L以下であれば優(A)、30mg/L超40mg/L以下であれば良(B)、40mg/L超50mg/L未満であれば可(C)、50mg/L以上であれば不可(D)と判定した。判定結果を表10Bに示す。
【0286】
【表13】