(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記水溶性高分子(A)、(B)および(C)が質量混合比(A):(B):(C)=30〜70:20〜70:10〜30の範囲にて含有する混合物であることを特徴とする汚泥脱水剤。
水溶性高分子(A);アミジン構造単位を含有する水溶性高分子。
水溶性高分子(B);下記一般式(1)で表される単量体を重合したノニオン性単量体を共重合しないカチオン性水溶性高分子。
水溶性高分子(C);下記一般式(2)および/または(3)で表される単量体と下記一般式(4)で表される単量体を必須として含有
し、架橋剤を含まない単量体混合物
を重合した両性水溶性高分子。
【化1】
一般式(1)
R
1、R
2、R
3は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基であり同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、X
1−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】
一般式(2)
R
4は水素又はメチル基、R
5、R
6は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基、R
7は水素、炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、X
2−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】
一般式(3)
R
8、R
9は水素又はメチル基、R
10、R
11は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基、X
3−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化4】
一般式(4)
R
12は水素、メチル基またはCH
2COOY
2、R
13は水素、メチル基またはCOOY
2、QはSO
3−、C
6H
4SO
3−、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3−、C
6H
4COO
−あるいはCOO
−であり、Y
+1、Y
2は水素または陽イオンをそれぞれ表す。
下記水溶性高分子(A)、(B)および(C)が質量混合比(A):(B):(C)=30〜70:20〜
70:
10〜
30の範囲にて含有する混合物を汚泥に添加し凝集させ、その後脱水することを特徴とする汚泥脱水方法。
水溶性高分子(A);アミジン構造単位を含有する水溶性高分子。
水溶性高分子(B);下記一般式(1)で表される単量体を重合したノニオン性単量体を共重合しないカチオン性水溶性高分子。
水溶性高分子(C);下記一般式(2)および/または(3)で表される単量体と下記一般式(4)で表される単量体を必須として含有
し、架橋剤を含まない単量体混合物
を重合した両性水溶性高分子。
【化1】
一般式(1)
R
1、R
2、R
3は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基であり同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、X
1−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】
一般式(2)
R
4は水素又はメチル基、R
5、R
6は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基、R
7は水素、炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、X
2−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】
一般式(3)
R
8、R
9は水素又はメチル基、R
10、R
11は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基、X
3−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化4】
一般式(4)
R
12は水素、メチル基またはCH
2COOY
2、R
13は水素、メチル基またはCOOY
2、QはSO
3−、C
6H
4SO
3−、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3−、C
6H
4COO
−あるいはCOO
−であり、Y
+1、Y
2は水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、汚泥の種類は限定されるがアミジン系高分子やビニルアミン系高分子の特異的な凝集性能と脱水ケーキの低下機能を維持しつつ、ビニルアミン系高分子の価格の高さを軽減し、さらに処理可能な汚泥種とpH範囲を広げることが可能な配合処方を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため鋭意検討をした結果、以下に述べる発明に到達した。すなわち本発明は、下記水溶性高分子(A)、(B)および(C)が質量混合比(A):(B):(C)=30〜70:20〜70:10〜30の範囲にて含有する混合物であることを特徴とする汚泥脱水剤によって上記課題を解決できることが分かった。また本発明は、前記汚泥脱水剤を使用した汚泥脱水方法にも関する。
水溶性高分子(A);アミジン構造単位を含有する水溶性高分子。
水溶性高分子(B);下記一般式(1)で表される単量体を重合したノニオン性単量体を共重合しないカチオン性水溶性高分子。
水溶性高分子(C);下記一般式(2)および/または(3)で表される単量体と下記一般式(4)で表される単量体を必須として含有
し、架橋剤を含まない単量体混合物
を重合した両性水溶性高分子。
【化1】
一般式(1)
R
1、R
2、R
3は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基であり同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、X
1−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】
一般式(2)
R
4は水素又はメチル基、R
5、R
6は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基、R
7は水素、炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、X
2−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】
一般式(3)
R
8、R
9は水素又はメチル基、R
10、R
11は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基、X
3−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化4】
一般式(4)
R
12は水素、メチル基あるいはCH
2COOY
2、R
13は水素、メチル基あるいはCOOY
2、QはSO
3−、C
6H
4SO
3−、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3−、C
6H
4COO
−あるいはCOO
−であり、Y
+1、Y
2は水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【0008】
本発明の汚泥脱水剤は、アミジン構造単位を含有する水溶性高分子(A)、メタクリル系カチオン性単量体を重合したカチオン性水溶性高分子(B)、および(メタ)アクリル系および/またはジアリルアンモニウム系単量体と(メタ)アクリル系アニオン性単量体を必須として含有する単量体混合物を重合した両性水溶性高分子(C)を含有する混合物からなることを特徴とする。また水溶性高分子(B)は、メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドであることが好ましい。
【0009】
本発明は、凝結機能と凝集機能を備えた直鎖状の高カチオン性水溶性高分子を
機能の中心とし、直鎖状の両性水溶性高分子の分子間イオン結合による見かけ分子量の増大とイオンコンプレックス生成による疎水化作用、アミジン系水溶性高分子の強い凝結機能をそれぞれ組み合わせることにより、一般の汚泥だけでなく難脱水性汚泥も効率よく凝集・脱水することができる。これは先行文献より開示されているアミジン系水溶性高分子とビニルアミン系水溶性高分子の配合物に較べ、処理有効pH範囲の拡大を実現し、アミジン系水溶性高分子と(メタ)アクリル系両性高分子の配合物、あるいは架橋性水溶性高分子、(メタ)アクリル系両性高分子および(メタ)アクリル系両性高分子の配合物に較べ、処理可能添加量の削減を実現した。
【0010】
本発明の特徴は、架橋性水溶性高分子を使用しないため処理可能領域の添加量が増加するという懸案は解決された。またアミジン系水溶性高分子の一部をメタクリル系カチオン性単量体の単独水溶性高分子に置き換えることによりコストの低減だけでなく、アミジン系水溶性高分子の処理可能pH領域の狭さを広げ、分子量を高めることが可能であるため凝集効果を向上させた。もともとメタクリル系カチオン性単量体の単独水溶性高分子は、アミジン系水溶性高分子に類似した機能は持ち合わせていたが、一部汚泥では代替は不可能であった。二種を配合することにより新たな機能を発揮することが期待できる。さらに(メタ)アクリル系両性水溶性高分子を補助的に配合することにより配合物の性能を増強することが期待できる。
【0011】
(メタ)アクリル系両性水溶性高分子は、分子内にカチオン性基とアニオン性基を有するためにこの分子を吸着し凝集した凝集粒子同士の結合もあり、さらに(メタ)アクリル系カチオン性水溶性高分子によって生成した凝集粒子同士の結合役もあり、その分カチオン性水溶性高分子単独の場合よりも添加量が節約できると考えられる。(メタ)アクリル系両性水溶性高分子の主な役割は、分子同士あるいは凝集粒子同士の仲立ちと、カチオン性基とアニオン性基によるカチオン性過多になるのを防ぎ、凝集性能低下の防止と考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の汚泥脱水剤は、アミジン構造単位を含有する水溶性高分子(A)、下記一般式(1)で表される単量体を重合したカチオン性水溶性高分子(B)、および下記一般式(2)および/または(3)で表される単量体と下記一般式(4)で表される単量体を必須として含有する単量体混合物を重合した両性水溶性高分子(C)を含有する混合物からなる。
【化1】
一般式(1)
R
1、R
2、R
3は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基であり同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、X
1−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】
一般式(2)
R
4は水素又はメチル基、R
5、R
6は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基、R
7は水素、炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、X
2−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】
一般式(3)
R
8、R
9は水素又はメチル基、R
10、R
11は炭素数1〜3のアルキル基、あるいはベンジル基、X
3−は陰イオンをそれぞれ表す。
【化4】
一般式(4)
R
12は水素、メチル基あるいははCH
2COOY
2、R
13は水素、メチル基あるいはCOOY
2、QはSO
3−、C
6H
4SO
3−、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3−、C
6H
4COO
−あるいはCOO
−であり、Y
+1、Y
2は水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【0013】
本発明で使用するアミジン構造単位を含有する水溶性高分子(A)は、以下のような物性のものであり、以下のように製造することができる。すなわち一般的には一級アミノ基または変換反応により一級アミノ基が生成しうる置換アミノ基を有するビニル単量体と、アクリロニトリルまたはメタアクリロニトリルからなる共重合体を製造し、更に、該共重合体中のシアノ基と一級アミノ基を反応させてアミジン化することにより得る。
【0014】
前記ビニル単量体としては、N−ビニルカルボン酸アミドであり、その例としては、N−ビニルホルムアミドやN−ビニルアセトアミドなどをあげることができる。共重合体中において、かかる化合物に由来する置換アミノ基は、加水分解あるいは加アルコール分解により容易に一級アミノ基に変換される。更にこの一級アミノ基は、隣接したシアノ基と反応してアミジン化する。また共重合するビニル系ニトリル類としては、アクリロニトリルが最も一般的である。
【0015】
これらのビニル単量体とニトリル類との重合モル比は、通常20:80〜80:20であるが、若し所望ならばこの範囲外の重合モル比を採用することもできる。一般的にカチオン性高分子凝集剤中に占めるアミジン単位の比率が多い方が凝集剤としての性能は優れている。また、アミン単位も凝集剤としての性能に有利に寄与していると考えられる。従って、汚泥脱水剤として好適な共重合体を与えるビニル単量体とニトリル類との重合モル比は、一般に20:80〜80:20、好ましくは40:60〜60:40である。
【0016】
アミジン化反応は、ビニル単量体として前記一般式で示されるN−ビニルアミド化合物を用いた場合には、共重合体の置換アミノ基を一級アミノ基に変換し、次いで、生成した一級アミノ基と隣接するシアノ基と反応させてアミジン構造を生成させるというニ段階反応により製造することができる。そして、好ましくは、該共重合体を、強酸また強塩基の存在下、水またはアルコール溶液中で加温して、一段階でアミジン構造を生成させる。この場合においても、先ず、一級アミノ基が中間構造として生成しているものと考えられる。
【0017】
該反応の具体的条件としては、例えば共重合体に対し、その置換アミノ基に対して通常0.9〜5.0倍、好ましくは1.0〜3.0倍当量の強酸、好ましくは塩酸を加え、通常80〜150℃、好ましくは90〜120℃の温度で、通常0.5〜20時間加熱することによりアミジン単位を有するカチオン化高分子とすることができる。一般に置換アミノ基に対する強酸の当量比が大きいほど、かつ、反応温度が高いほど、アミジン化が進行する。また、アミジン化に際しては反応に供する共重合体に対し、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上の水を反応系内に存在させる。
【0018】
アミジン化反応後の分子中アミジン構造単位のモル%は、10〜90モル%、最も好ましくは20〜90モル%である。非イオン性構造単位は、未加水分解のカルボン酸アミド基と未反応のニトリル基であり、10〜90モル%であり、好ましくは10〜80モル%である。また分子量は10万〜1000万であり、好ましくは100万〜1000万である。
【0019】
さらに水溶性高分子(B)は、前記一般式(1)で表される単量体を重合して製造することができる。またノニオン性単量体やアニオン性単量体の構成単位を含有しないことを特徴とする。具体的な単量体としては、メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド重合物、メタクロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロリド重合物、メタクロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド重合物などをあげることができる。現在、通常市販されているメタクリル系カチオン性単量体重合物は、メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド重合物であり、これを使用することが最も便利である。
【0020】
上記水溶性高分子(B)の重量平均分子量は、200万〜800万であり、好ましくは300万〜600万である。水溶性高分子(B)は本発明における処方の中心的な成分であり、重要な役割を果たす。従って分子量は重要なファクターである。アミジン系水溶性高分子である水溶性高分子(A)とともに汚泥粒子の表面電荷中和作用と架橋吸着による凝集によるフロック化の機能を担う。
そのため800万より高いと巨大フロックを形成し、水を包みこみ返って脱水ケーキ含水率を増加させることがある。また200万より低いと特に凝集性能が低下し好ましくない。
【0021】
水溶性高分子(C)は、前記一般式(2)および/または(3)で表される単量体と前記一般式(4)で表される単量体を必須として含有する単量体混合物を重合した両性水溶性高分子である。水溶性高分子(C)を製造するため使用するカチオン性単量体は、前記一般式(2)及び/又は一般式(3)で表わされる単量体を必須として含有する単量体あるいは単量体混合物を重合したものである。カチオン性単量体の例は、第4級アンモニウム塩あるいは第3級アミンの塩を含有するカチオン性単量体である。具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートの塩などが挙げられる。前記一般式(2)で表される単量体は、ジアリルアンモニウム塩であり、具体的にはジアリルジメチルアンモニウム塩化物、ジアリルメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。
【0022】
本発明で使用する水溶性高分子(C)は、上記カチオン性単量体にアニオン性単量体を混合して重合する。アニオン性単量体の例は、前記一般式(4)で表される。具体例としてはアクリル酸、メタアクリル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、エチレングリコールメタクリレートホスフェートなどがあげられる。
【0023】
上記水溶性高分子(C)は、非イオン性単量体を共重合することも可能であり、非イオン性単量体は、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0024】
上記水溶性高分子(C)のカチオン性単量体の共重合率は、10〜80モル%であり、好ましくは20〜80モル%である。またアニオン性単量体の共重合率は、10〜40モル%であり、好ましくは15〜40モル%である。水溶性高分子(C)は機能的には補助剤的な使用であり、見かけ分子量の増大、イオンコンプレックス生成による疎水化などの作用を期待して配合する。そのためアニオン性単量体の共重合率は、高すぎるとマイナス効果が発生してしまい好ましくない。例えばカチオン性単量体30モル%、アニオン性単量体40モル%
の両性水溶性高分子を40質量%など配合するとフロックは大きくなるが、脱水ケーキの含水率は上昇し汚泥処理に関しては好ましくない。従って十分な注意が必要になる。従って配合する両性水溶性高分子は、カチオン性リッチが基本的に好ましいが、アニオン性リッチ両性水溶性高分子も効果を発揮する場合がある。また分子量は重量平均分子量で300万〜1000万であり、好ましくは300万〜800万である。1000万より高いと巨大フロックを形成し、水を包みこまれ返って脱水ケーキ含水率を増加させることがある。上記のような機能を担うため水溶性高分子(C)は、架橋性単量体を含有しない条件にて重合した水溶性高分子であり、架橋性単量体による架橋構造のため分子の収縮などによって水溶性高分子(A)および水溶性高分子(B)との相互作用を阻害しないよう配慮している。
【0025】
これら水溶性高分子(A)、水溶性高分子(B)および水溶性高分子(C)の質量混合比は、(A):(B):(C)=30〜70:20〜70:10〜30
であり、好ましくは(A):(B):(C)=30〜60:30〜70:10〜30である。この理由は、上記の凝集機構で考察したように水溶性高分子(C)は両性であり、分子内のアニオン性基がその他の高分子のカチオン性基に作用し水溶性高分子(A)および水溶性高分子(B)の見かけの分子量を増加させ、ポリイオンコンプレックスを形成することにより本発明の処方によって配合されたこれら高分子を疎水化し、脱水性能を向上させるなどの改良剤としての機能を担っていると考えられる。従って水溶性高分子(C)を30質量%より多量に配合すると、分子内アニオン性基が親水基として作用し脱水性能を低下させ返ってマイナスに作用する。一方、水溶性高分子(A)は、アミジン系高分子であり価格が高く多量に配合することはコスト増に繋がる。本発明の目的が、アミジン系高分子の特異的な凝集性能と脱水ケーキの低下機能を維持しつつ、価格の高さを軽減し、さらに処理可能な汚泥種とpH範囲を広げることが可能な配合処方を提供することにある点を考慮すると、多量に配合することは目的に反する。そのため脱水性能を維持しつつ価格の低下を狙い、可能な限り水溶性高分子(A)の配合料を減少させる。
【0026】
本発明においては、その代替として水溶性高分子(B)を用いる。水溶性高分子(B)はメタクリル系高分子のホモポリマーであるが、α−位の炭素にメチル基が結合していて汚泥脱水剤としては万能ではないが、アクリル系高分子にはない機能を有している。例えば余剰汚泥の脱水にはアクリル系高分子を適用しても脱水ケーキ含水率が低下しない場合でも、メタクリル系高分子のホモポリマーを適用すれば脱水ケーキ含水率が、前記高分子に較べ低下し、この機能は現在のところアクリル系高分子では代替できない。
【0027】
メタクリル系高分子のホモポリマーは、若干の疎水性と比較的高いイオン当量値を有しているためアミジン系高分子の完全な代替はできないが、それに近い性質を有している。本発明においてはこの性質を利用し、アミジン系高分子と配合することにより、汚泥処理pHを拡大し、同時にコスト削減も果たすことが可能になる。
【0028】
本発明の処方によって配合した水溶性高分子は、0.1質量%濃度の水溶液とした時の水溶液pHが通常4.0以下、好ましくは3.0以下にする。水溶液pHが4.0を上回ると十分な性能が得られない。そのため酸性物質を配合する。この理由は二つある。すなわち両性水溶性高分子を配合するため溶液pHが約5〜約9の範囲でイオンコンプレックスを形成し溶液が白濁する。このイオンコンプレックスが生成した状態で汚泥など処理対照に添加すると、性能が低下するためである。またpHが5付近より高い範囲では本発明で使用する(メタ)アクリル系水溶性高分子が加水分解を受け、劣化しやすくなる。0.1質量%濃度というのは、処理対照に添加する場合の下限に近い溶液濃度である。これら現象を防止するため水溶液のpHは3以下にすることが好ましい。
【0029】
このような酸性物質の例として、無機あるいは有機の酸として塩酸、硫酸、酢酸、スルファミン酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸などである。これら酸性物質の添加量として水溶性高分子の固形分換算として、5〜20質量%であり、好ましくは7〜15質量%であり、0.1質量%濃度に溶解してもpHが4以下を確保できる。
【0030】
本発明の水溶性高分子(A)、水溶性高分子(B)および水溶性高分子(C)からなる汚泥脱水剤は、油中水型エマルジョンあるいは粉末などの形態を採ることができる。従って水溶性高分子(A)、水溶性高分子(B)および水溶性高分子(C)の化学組成に相当する市販の油中水型エマルジョンあるいは粉末があれば、それらを入手し、適宜配合を検討し混合することなどの政策も実施可能である。
【0031】
上記水溶性高分子の油中水滴型エマルジョン状製品は、例えば水に非混和性の有機液体を連続相、カチオン性単量体を含む単量体水溶液混合物を分散相となるよう界面活性剤により乳化し重合することにより得られる。また上記粉末状の水溶性高分子は、種々の製法によって製造した粉末状の水溶性高分子を使用することができる。例えば水に非混和性の有機液体を連続相、カチオン性単量体を含む単量体水溶液混合物を分散相となるよう界面活性剤により乳化し重合した後、得られる油中水滴型エマルジョン状液体を乾燥し造粒したイオン性高分子の粉末である。具体的な乾燥方法としては、噴霧乾燥機中に油中水滴型エマルジョン状液体を噴霧し、乾燥する方法がある。これは操作が簡便であり容易であるが、粒径が細かくなり、更に粒径調節の加工が必要である。また油中水滴型エマルジョン状液体を直接乾燥機に入れ、一定時間乾燥し、塊状物を粉砕する方法もある。この方法は、乾燥温度や乾燥時間の管理に注意する必要がある。
【0032】
別の例としては、塩水中あるいは水に非混和性有機液体中にて分散重合した分散液、および水溶液重合による粘性液体、あるいは流動性のない水性ゲル状物を乾燥し造粒するなどの方法がある。すなわち塩水中にて分散重合した分散液の場合は、直接乾燥機に入れ、一定時間乾燥し、塊状物を粉砕する方法がある。また水に非混和性有機液体中にて分散重合した分散液の場合は、非混和性有機液体を分離し、湿潤な重合粒子を乾燥機にて乾燥し粉末状とする。水溶液重合により生成した粘性液体は、水混和性有機液体により重合物を析出させ、それを乾燥し粉砕する。単量体を高濃度で水溶液重合した流動性のない水性ゲル状物の場合は、ミートチョッパーなどでゲル状物をミンチ化し、それを乾燥後、粉砕し粉末とする方法を採る。
【0033】
本発明のアミジン構造単位を含有する水溶性高分子(A)、下記一般式(1)で表される単量体を重合した水溶性高分子(B)、および前記一般式(2)および/または(3)で表される単量体と前記一般式(4)で表される単量体を必須として含有する単量体混合物を重合した水溶性高分子(C)の混合物からなる汚泥脱水剤は、単独で汚泥脱水に使用しても良いが、鉄塩、アルミ塩等の無機多価金属塩と併用しても良い。該無機多価金属塩としては、塩鉄、硫鉄、ポリ鉄、PAC、硫酸バンド、石灰などがあげられる。併用される無機多価金属塩の添加量は、通常汚泥固形分に対し0.2〜0.6質量%である。また汚泥に対する本発明の汚泥脱水剤添加量は、通常汚泥固形分に対し0.3〜2質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0034】
本発明の水溶性高分子は、下水、し尿、産業排水の処理で生じる有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥およびこれらの混合物)に希釈した0.2〜0.4質量%の水溶液として添加される。対象とする汚泥にはとくに限定ないが、繊維分の少ない汚泥、有機分含有量の高い汚泥、腐敗度の高い汚泥などに対し有効であり、特に下水余剰汚泥に対し好ましい。
【0035】
使用する脱水機の種類は、デカンター、スクリュープレス、ベルトプレス、ロータリープレスなど通常の脱水機が可能である。
【0036】
(実施例)以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
(粉末水溶性高分子の調製)
下記表1で示される物性を有する水溶性高分子(A)水溶性高分子(B)、水溶性高分子(C)、およびスルファミン酸を表2で示される比率で配合した汚泥脱水を調製した。なお添加される酸性物質の配合比は、水溶性高分子の合計量に対する質量%により表わされている。配合後の結果を表2に示す。
【0038】
(表1)
DMQ;アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物
AAM;アクリルアミド、AAC:アクリル酸、
DD;ジアリルジメチルアンモニウム塩化物、
DMC;メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物
AN;アクリリロニトリル、NVF;N−ビニルホルムアミド、
P;粉末品、
【0039】
(表2)
混合比;質量%(全量100)、酸性物質:水溶性高分子全量に対する質量%であり、スルファミン酸を添加。
【実施例2】
【0040】
下水処理場より発生する下水余剰汚泥(pH6.6、ss分12,250mg/L)を用い、本発明の水溶性高分子を用い汚泥脱水試験を実施した。200mLをポリビ−カ−に採取し、表2の試料−11〜試料−13をそれぞれ対汚泥SS分1.0%(懸濁粒子質量%)加え、ビ−カ−移し替え攪拌20回行った後、T−1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、50秒間の濾液量の測定、及びフロック強度(大きさ)を目視により測定した。その後50秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m
2で1分間脱水する。その後、濾布剥離性を目視によりチェックし、ケ−キ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表3に示す。
【0041】
(比較例1)
実施例2と同様な操作により、比較−12および比較−14に関して試験を実施した。結果を表3に示す。
【0042】
比較−12は、両性水溶性高分子が40質量%配合し本発明の範囲より外れたものであり、比較−14は両性水溶性高分子が配合されていないものであり、フロックの生成能が低下しまた比較品は共に本発明品と較べ特に脱水ケーキ含水率が増加している。
【0043】
(表3)
ケーキ含水率:質量%、添加量:対ss質量%、30秒間濾液量:mL
フロック大きさ:mm
【実施例3】
【0044】
実施例2と同じ尿余剰汚泥(pH6.6、ss分12,250mg/L)を用い、試料−14および試料−15に関し汚泥脱水試験を実施した。結果を表4に示す。
【0045】
(比較例2)
実施例3と同様な操作により、比較−11および比較−13に関して試験を実施した。結果を表4に示す。
【0046】
比較−11および比較−12は、両性水溶性高分子が40質量%配合し本発明の範囲より外れたものであり、比較−14は両性水溶性高分子が配合されていないものであり、フロックの生成能が低下しまた比較品はみな本発明品と較べ特に脱水ケーキ含水率が増加している。
【0047】
(表4)
ケーキ含水率:質量%、添加量:対ss質量%、30秒間濾液量:mL
フロック大きさ:mm
【実施例4】
【0048】
実施例2と同じ尿余剰汚泥(pH6.6、ss分12,250mg/L)を用い、試料−16〜試料−18に関し汚泥脱水試験を実施した。結果を表5に示す。
【0049】
(比較例3)
実施例4と同様な操作により、比較−15および比較−16に関して試験を実施した。結果を表5に示す。
【0050】
比較−15は、カチオン性高分子(B)がアクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体であり、比較−15は、アミジン系高分子の替わりにアクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体を配合している。これら比較品はフロック生成能はあるが、脱水ケーキ含水率が低下しない。
【0051】
(表5)
フロック径;mm、30秒後濾水量;mL、ケーキ含水率;質量%