【実施例1】
【0020】
本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第1の実施の形態を
図1乃至
図4を用いて説明する。
図1は本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第1の実施の形態を備えた油圧ショベルを示す側面図、
図2は本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第1の実施の形態を備えた油圧ショベルの構成を示すシステム構成図、
図3は本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第1の一実施の形態を示すシステム構成図である。
【0021】
図1において、油圧ショベルの車体は下部走行体1と、下部走行体1上に旋回可能に設けた上部旋回体2とにより構成されていて、この上部旋回体2の前部には、フロント装置3が起伏自在に装着されている。
【0022】
下部走行体1は、左右のクローラフレーム4及びクローラ5(いずれも片側のみ図示)からなり、両側のクローラ5が、左右の走行モータ7により個別に回転駆動されて走行する。
【0023】
上部旋回体2は、旋回フレーム8、運転室としてのキャブ9、機械室10等からなるが、このうちのキャブ9は、外部の騒音や塵埃等から運転者を保護するために外気と遮断された略密閉構造となっており、その居住性を確保するために空気調和装置(エアコン)などが備えられている。
【0024】
フロント装置3は、ブーム11と、このブーム11を起伏させるブームシリンダ12と、アーム13と、このアーム13を回動させるアームシリンダ14と、バケット15と、このバケット15を回動させるバケットシリンダ16とを備えている。
【0025】
さらに、上部旋回体2の旋回フレーム8上には、上述したブームシリンダ12、アームシリンダ14、バケットシリンダ16等の油圧アクチュエータを駆動するための図示しない油圧システムが搭載されている。
【0026】
次に、この油圧ショベルのシステム構成を
図2を用いて説明する。
図2に示すように、本実施の形態における油圧ショベルは、エンジン100と、このエンジン100によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ120と、この油圧ポンプ120の押しのけ容積を制御するレギュレータ140と、油圧ポンプ120の最大吐出圧を規定するメインリリーフ弁150と、油圧ポンプ120の吐出する圧油が供給される油圧駆動回路180と、油圧ポンプ120の吸収トルクがエンジン100の出力トルクを超えないようにトルク制御するとともにその他の制御も行う制御装置90とを備えている。
【0027】
制御装置90には、エンジン100の目標回転数を指示する回転数指示装置130から目標回転数信号が入力され、制御装置90は、目標回転数に応じた制御信号を回転制御手段160に出力するとともに、油圧ポンプ120の押しのけ容積を算出し、駆動信号をレギュレータ140に出力する。
【0028】
本実施の形態においては、エンジン100にかかる負荷(トルク)が上昇すると、エンジン100の排気ガスの温度は上昇する。エンジン100の負荷を上昇させる手段としては、例えば、油圧ポンプ120の吸収トルクを増加することや、エンジン回転数を増加させること等のトルク増加に関連する事項が該当する。
【0029】
次に、本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第1の実施の形態を
図3を用いて説明する。
図3において、本発明の建設機械の排気ガス浄化システムは、尿素水溶液を液体還元剤として使用し、エンジン排気中に含まれるNOxを触媒還元反応により浄化するものである。
図3において、100はエンジン、100Aはエンジンの排気通路に連設された排気ガス浄化装置を示している。エンジン100は各気筒共通のコモンレール(図示せず)を備えていて、コモンレールに蓄えられた高圧の燃料(軽油)が、各気筒に設けられた燃料噴射弁25に供給され、各燃料噴射弁25からそれぞれの気筒内に噴射されている。
【0030】
吸気通路17にはターボチャージャ18が装備されていて、図示しないエアクリーナから吸入された吸気は、吸気通路17からターボチャージャ18のコンプレッサ18aへと流入し、コンプレッサ18aで過給された吸気はインタークーラ19及び吸気弁19aを介して吸気マニフォールド20に導入されている。なお、吸気通路17には、外気温度を検出する外気温度センサ27が設けられている。
一方、エンジン100からの排気ガスは、排気マニフォールド21及びターボチャージャ18のタービン18bを介して排気管22に流入している。排気マニフォールド21と吸気マニフォールド20との間には、EGR弁23を介して連通するEGR通路24が設けられている。
【0031】
排気ガス浄化装置100Aは、排気管22の上流側から排気流通方向に沿って、一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)へと酸化させる酸化触媒(DOC)30と、排気ガスに含まれるPMを捕集するDPF31と、液体還元剤である尿素水溶液を噴射供給する噴射ノズル32と、尿素水溶液を加水分解して得られるアンモニアによりNOxを還元浄化するSCR触媒33と、SCR触媒33を通過したアンモニアを酸化させるアンモニア酸化触媒34とを備えている。
【0032】
酸化触媒30の上流の排気管22には、排気ガス浄化装置100A前の排気温度を検出する排気温度センサ42が設けられている。また、SCR触媒33の上流には、噴射ノズル32とSCR触媒33の入口側の排気温度を検出する排気温度センサ28とNOxの濃度を検出するNOxセンサ46とが設けられている。
【0033】
ここで、SCR触媒33は、通常脱硝に用いられている触媒であればどのような物でも良く、例えば酸化チタンにバナジウム、タングステン等の脱硝活性成分を担持した触媒や、銅、鉄、セリウムなどの遷移金属をイオン交換したゼオライトを、コージェライトハニカム構造体などに担持した触媒などが好適である。
【0034】
還元剤タンク50に貯蔵された尿素水溶液は、供給配管51とポンプ52と供給装置53とを介して、噴射ノズル32へ供給されている。噴射ノズル32には尿素水溶液の噴射量を検出する流量センサ54が設けられている。また、還元剤タンク50は、尿素水溶液の残量を検出する還元剤レベルセンサ50aと、尿素水溶液の濃度を検出する還元剤濃度センサ50bとを備えていて、それぞれの検出信号が後述のDCU70に入力されている。
【0035】
供給装置53は、還元剤供給コントロールユニット(以下DCUという)70からの指令信号で制御される。具体的には、エンジン100の運転状態に対応した流量の尿素水溶液を噴射ノズル32へ断続的に供給するように、例えばその開度が制御される。また、流量センサ54が検出した尿素水溶液の噴射量の信号は、DCU70に入力される。
【0036】
噴射ノズル32から噴射供給された尿素水溶液は、排気ガス熱及び排気ガス中の水蒸気により加水分解され、アンモニアを発生させる。発生したアンモニアは、SCR触媒33において排気ガス中のNOxと反応し、水及び無害なガスに浄化される。また、SCR触媒33を通過したアンモニアは、その排気下流に配設されたアンモニア酸化触媒34により酸化されるので、異臭を放つアンモニアの大気中への放出が防止できる。
【0037】
制御装置90は、メインコントロールユニット(以下MCUという)80と、DCU70と、エンジンコントロールユニット(以下ECUという)60とを備えている。これらのコントロールユニットは、CAN(Controller Area Networkの略称)でそれぞれ接続されていて、各種入出力信号や、演算信号を多重通信している。
【0038】
MCU80は、建設機械の総合的な制御を行うための統括制御装置であり、各種処理を実行する演算部(CPU)と、予め各種設定値を記憶する記憶部(メモリ)と、入出力装置等を備えるコントローラユニットで構成されている。具体的には、ECU60やDCU70へ統括的な指令信号を出力している。本実施の形態においては、図示しない作動油センサが検出した作動油の温度と、図示しない油圧センサが検出した作動油の圧力と、図示しないゲートロックレバー位置センセーが検出したゲートロックレバーの位置とを入力している。
【0039】
ECU60は、エンジン100の運転制御をはじめとして総合的な制御を行うための制御装置であり、MCU80と同様のコントロールユニットで構成されている。ECU60の入力側には、各種制御に必要な情報を収集するため、上述した外気温度センサ27、排気温度センサ(DOC前)42、排気温度センサ28、NOxセンサ46のほか、エンジン回転数を検出する回転速度センサや、冷却水の水温を検出する水温センサなどの各種センサ類が接続されていて、出力側には演算した制御量に基づき制御が行われる各気筒の燃料噴射弁25、吸気制御弁19及びEGR弁23などの各種デバイス類が接続されている。
【0040】
DCU70は、尿素水溶液噴射制御を行うための制御装置であり、MCU80と同様のコントローラユニットで構成されている。DCU70の入力側には、上述した尿素水溶液レベルセンサ50a、尿素水溶液濃度センサ50b、及び尿素水溶液の噴射量を検出する流量センサ54などの各種センサ類が接続されていて、出力側には演算した制御量に基づき制御が行われる供給装置53などの各種デバイス類が接続されている。また、DCU70は、ROM(Read Only Memory)などに記憶された制御プログラムを実行することで、排気温度、回転速度及び負荷に応じて供給装置53を制御する。
【0041】
ここで、エンジン100の負荷としては、例えば、燃料噴射流量、吸気流量、過給圧力、アクセル開度、スロットル開度、など、トルクと密接に関連する状態量を適用することができる。また、エンジン100の回転速度及び負荷は、ECU60から読み込む構成に限らず、公知のセンサによって直接検出するようにしてもよい。
【0042】
制御装置90が行う制御の大略としては、排気温度センサ28で検出された排気温度と外気温度センサ27で検出された外気温度とから排気管22の壁面温度を算出し、予め設定された排気管壁面温度に対する尿素水溶液の噴射量の外気温度毎の析出特性と、流量センサ54が検出した尿素水溶液の噴射量とを比較し、検出した尿素水溶液の噴射量が析出特性の噴射量よりも高い場合に排気ガスの温度を上昇させるべく、エンジン100の増負荷制御を行う。この結果、排気管壁面温度が上昇し、尿素水溶液の噴射量が析出特性と合致すれば、エンジンの増負荷制御を停止する。
【0043】
制御装置90は、排気温度センサ28が検出した排気ガスの温度と外気温度センサ27が検出した外気温度とを取込み、噴射ノズル32とSCR33触媒との間に位置する排気管22の壁面温度を算出する排気管壁面温度算出手段と、排気管壁面温度算出手段が算出した排気管22の壁面温度と、外気温度センサ28が検出した外気温度と、流量センサ54が検出した尿素水溶液の噴射量とを取込み、排気ガスの温度を上昇させるか否かを判定する昇温判定手段と、昇温判定手段の出力信号に応じて排気ガスの温度を上昇させる排気ガス昇温手段とを備えている。
【0044】
具体的には、予め設定された排気管壁面温度に対する尿素水溶液の噴射量の外気温度毎の析出特性と、流量センサ54が検出した尿素水溶液の噴射量とを比較し、検出した尿素水溶液の噴射量が析出特性の噴射量よりも高い場合に排気ガスの温度を上昇させるべく、エンジン100の増負荷制御を行う。この結果、排気管22の壁面温度が上昇し、上昇した排気管22の壁面温度における析出特性と尿素水溶液の噴射量とが合致すれば、エンジン100の増負荷制御を停止する。
【0045】
ここで、昇温判定手段は、排気管22の壁面温度に対する尿素水溶液の噴射量における外気温度毎の析出特性を記憶する記憶部と、流量センサ54が検出した尿素水溶液の噴射量が、記憶部における排気管22の壁面温度の析出特性の噴射量よりも高い場合に、排気ガスの温度を上昇させる信号を出力する演算部とを備えている。
【0046】
次に、昇温判定手段の記憶部に記憶された排気管22の壁面温度に対する尿素水溶液の噴射量における外気温度毎の析出特性を
図4を用いて説明する。
図4は本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第1の実施の形態を構成する排気管壁面温度示に対する尿素水噴射量における外気温度毎の析出特性を示す特性図である。
【0047】
図4において、横軸は排気管壁面温度算出手段が算出した排気管壁面温度を、縦軸は尿素水噴射量を示す。
図4において特性線Aは外気温度to1のときの尿素析出特性を、特性線Bはto2のときの尿素析出特性をそれぞれ示している。ここで、外気温度to1>外気温度to2であって、外気温度が高いときは、特性線Aのように尿素水噴射量が大きい上方に位置し、外気温度が低いときは、特性線低Bのように尿素水噴射量が小さい下方に位置している。
【0048】
図4の特性線Aにおいて、排気管壁面温度がt1のとき尿素水噴射量は交点(ア)からL1となる。ここでL1は、排気管壁面温度t1かつ外気温度to1のときに、尿素が析出開始する尿素水噴射量を示している。同じ状態において、例えば、流量センサ54が検出した尿素水溶液の噴射量がL1以上のL2となると、尿素の析出が想定される。一方、流量センサ54が検出した尿素水溶液の噴射量がL1以下であれば、尿素の析出は想定されない。つまり、特性線Aと尿素水溶液の噴射量L2の交点(イ)における配管壁面温度t2まで、配管壁面温度を昇温させれば、尿素の析出を防止することができる。配管壁面温度を上昇させるためには、排気ガス温度を上昇させる必要があり、このためエンジン100を増負荷制御する。
【0049】
具体的には、制御装置90の昇温判定手段が、記憶部に記憶された排気管22の壁面温度に対する尿素水溶液の噴射量における外気温度毎の析出特性と、流量センサ54が検出した尿素水溶液の噴射量とを比較して、検出した尿素水溶液の噴射量が析出特性より高い場合には、排気ガス昇温手段に排気ガスの温度を上昇させる指令を出力する。
【0050】
排気ガス昇温手段は、例えば、
図2に示す回転数制御手段160に指令信号を出力し、回転数制御手段160によってエンジン100の回転数を上昇させることで、排気ガスの温度を上昇させる。
また、同様に、
図2に示すレギュレータ140に指令信号を出力し、油圧ポンプ120の吸収トルクを増加することで、排気ガスの温度を上昇させる。
【0051】
次に、上述した本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第1の実施の形態の制御内容を
図5を用いて説明する。
図5は本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第1の実施の形態の制御内容を示すフローチャート図である。
【0052】
エンジン100の起動と共にフローチャートのスタートの信号が確立する。
制御装置90は、排気温度を読み込む(ステップS1)。具体的には、排気温度センサ28で検出された排気温度を読み込む。
【0053】
制御装置90は、外気温度を読み込む(ステップS2)。具体的には、外気温度センサ27で検出された外気温度を読み込む。
【0054】
制御装置90は、回転数及び負荷を読み込む(ステップS3)。具体的には、ECU60からエンジン100の回転数及び負荷を読み込む。
【0055】
制御装置90は、尿素水添加量を算出する(ステップS4)。具体的には、NOxセンサ46が検出したNOx濃度を読み込み、NOx排出量を算出し、このNOxを還元浄化するのに必要な尿素水溶液の添加流量(噴射量)を算出する。
【0056】
制御装置90は、排気管壁面温度を算出する(ステップS5)。具体的には、排気管壁面温度算出手段において、(ステップS1)及び(ステップS2)で取込んだ排気温度と外気温度とを基にROMなどに記憶された計算プログラムを実行することで排気管壁面温度を算出する。
【0057】
制御装置90は、尿素水添加量(噴射量)が所定流量以上であるか否かを判断する(ステップS6)。具体的には、昇温判定手段において、記憶部に記憶された排気管の壁面温度に対する尿素水溶液の添加量(噴射量)における外気温度毎の析出特性と、流量センサ54が検出した尿素水の噴射量とを比較することで行う。ここで、所定流量は、現在の排気管22の壁面温度に対して尿素が析出しない噴射量のことで、これは、記憶部に記憶された排気管の壁面温度に対する尿素水溶液の添加量(噴射量)における外気温度毎の析出特性で定まる。流量センサ54が検出した尿素水の噴射量が、析出特性の噴射量(所定流量)以上であれば、(ステップS7)へ進み、それ以外であれば、(ステップS4)に戻る。
【0058】
制御装置90は、昇温制御を開始する(ステップS7)。具体的には、昇温判定手段が排気ガス昇温手段へ排気ガスの温度を上昇させる指令を出力し、排気ガス昇温手段によりエンジン100を増負荷制御する。
【0059】
制御装置90は、排気管壁面温度が所定温度以上であるか否かを判断する(ステップS8)。具体的には、流量センサ54が検出した尿素水の現在の噴射量と、昇温判定手段の析出特性との交点における排気管壁面温度と、排気管壁面温度算出手段で算出された現在の排気管壁面温度とを比較することで行う。すなわち、所定温度とは、現在の尿素水噴射量に対して、尿素水溶液が排気管22の内壁に付着して、尿素成分が析出しない壁面温度のことである。排気管壁面温度算出手段で算出された現在の排気管壁面温度が、所定温度以上であれば、(ステップS9)へ進み、それ以外であれば、(ステップS7)へ戻る。
【0060】
制御装置90は昇温制御を停止する(ステップS9)。具体的には、昇温判定手段が排気ガス昇温手段へ排気ガスの温度を上昇させる指令の出力を停止し、排気ガス昇温手段によるエンジン100の増負荷制御を停止する。
【0061】
上述した本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第1の実施の形態によれば、エンジン排気管路等における尿素析出量を抑制するとともに、効率的な尿素水の使用による良好な排気ガスのNOx浄化が実現できる。この結果、生産コストの改善が図れ、未浄化排気ガスの大気放出が防止できる。
【実施例3】
【0068】
以下、本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第3の実施の形態を図面を用いて説明する。
図7は本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第3の実施の形態を備えた油圧ショベルを示すシステム構成図、
図8は本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第3の実施の形態の制御内容を示すフローチャート図である。
図7及び
図8において、
図1乃至
図6に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0069】
図7に示す本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第3の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
本実施の形態においては、オートアイドルスイッチ300を設けた建設機械に適用した点が異なる。オートアイドル制御は、燃費の節減や騒音の低減等を目的としたものであって、建設機械の被駆動体の動作を指示する操作レバーの全てが中立状態となった時点から予め設定された遅延時間まで、この状態が継続した場合、エンジンの回転数を回転数指示装置130が指示する回転数より低いアイドル回転数(エンジン停止も含む)に制御するものである。
【0070】
このような建設機械においては、オートアイドルスイッチ300をONの状態とした場合、条件が成立するとオートアイドル制御が実行される。したがって、例えば、制御装置90の昇温判定手段が、排気ガス昇温手段に排気ガスの温度を上昇させる指令を出力した場合と、オートアイドル制御の条件が成立した場合には、相反する制御が要求されることになる。
【0071】
本実施の形態において制御装置90は、複数の油圧アクチュエータの非操作状態を検出する非操作状態検出手段と、この非操作状態検出手段が、複数の油圧アクチュエータすべての非操作状態を検出したときであって、オートアイドルスイッチ300のON信号を入力した場合に、エンジン100の回転数を予め定めたアイドル回転数に設定するオートアイドル制御手段を更に備えている。
【0072】
制御装置90の昇温判定手段は、排気ガスの温度を上昇させると判定した場合には、オートアイドルスイッチ300がONの場合であっても、オートアイドル制御手段を無効にすると共に、排気ガス昇温手段により、排気ガスの温度を上昇させる制御を行う。
【0073】
次に、上述した本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第3の実施の形態の制御内容を
図8を用いて説明する。
図8において、(ステップS11)から(ステップS16)までは、
図5に示す本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第1の実施の形態の制御内容を示すフローチャート図の(ステップS1)から(ステップS6)までと同じなので説明を省略し、(ステップS17)から説明する。
【0074】
制御装置90は、オートアイドルスイッチ300がONか否かを判断する。具体的には、オートアイドル制御手段がオートアイドルスイッチ300の状態を判断する。オートアイドルスイッチ300がONであれば、(ステップS18)へ進み、それ以外であれば、(ステップS19)へ進む。
【0075】
制御装置90は、オートアイドル制御を無効とする(ステップS18)。具体的には、オートアイドル動作を無効にするとともに、図示しない報知装置にオートアイドル無効信号を出力し、オペレータにこの旨を報知する。例えば、エンジン100の回転数は、オートアイドル制御のアイドル回転数の設定がなくなる。
【0076】
(ステップS17)においてオートアイドルスイッチ300がON以外であると判断された場合、または、(ステップS18)の処理終了後、制御装置90は、昇温制御を開始する(ステップS19)。具体的には、昇温判定手段が排気ガス昇温手段へ排気ガスの温度を上昇させる指令を出力し、排気ガス昇温手段によりエンジン100を増負荷制御する。
【0077】
制御装置90は、排気管壁面温度が所定温度以上であるか否かを判断する(ステップS20)。具体的には、流量センサ54が検出した尿素水の現在の噴射量と、昇温判定手段の析出特性との交点における排気管壁面温度と、排気管壁面温度算出手段で算出された現在の排気管壁面温度とを比較することで行う。すなわち、所定温度とは、現在の尿素水噴射量に対して、尿素水溶液が排気管22の内壁に付着して、尿素成分が析出しない壁面温度のことである。排気管壁面温度算出手段で算出された現在の排気管壁面温度が、所定温度以上であれば、(ステップS21)へ進み、それ以外であれば、(ステップS19)へ戻る。
【0078】
制御装置90は昇温制御を停止する(ステップS21)。具体的には、昇温判定手段が排気ガス昇温手段へ排気ガスの温度を上昇させる指令の出力を停止し、排気ガス昇温手段によるエンジン100の増負荷制御を停止する。
【0079】
上述した本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第3の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0080】
また、上述した本発明の建設機械の排気ガス浄化システムの第3の実施の形態によれば、オートアイドル制御機能を備えた建設機械に適用する場合であっても、制御装置90の昇温判定手段が、排気ガス昇温手段に排気ガスの温度を上昇させる指令を出力した場合に適切な制御が実行できる。この結果、建設機械の操作性が向上する。