(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963330
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】小動物飼育用ケージ
(51)【国際特許分類】
A01K 1/03 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
A01K1/03 A
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-520422(P2014-520422)
(86)(22)【出願日】2012年4月6日
(65)【公表番号】特表2014-533490(P2014-533490A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2012002441
(87)【国際公開番号】WO2013073069
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-250776(P2011-250776)
(32)【優先日】2011年11月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506237377
【氏名又は名称】株式会社イートロン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 滋
(72)【発明者】
【氏名】大島 義子
(72)【発明者】
【氏名】牧 智
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0061600(US,A1)
【文献】
実公昭48−043024(JP,Y1)
【文献】
実公昭41−002541(JP,Y1)
【文献】
特開2011−200154(JP,A)
【文献】
国際公開第03/096801(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0055542(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00−1/035
A01K 3/00
A01K 31/00−31/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口する箱体と、該箱体の開口部を覆う蓋と、該蓋に設けられた給水装置用開口部に開閉可能に装着される給水装置と、を有する密閉系の小動物飼育用ケージであって、
該箱体内に、該箱体内の収容部を左右に分割するように仕切り板が配設され、
該仕切り板に、箱体内の分割された収容部の一方と他方とを通気させる通気部が設けられ、
該仕切り板に、該給水装置に設けられたノズルの先端を配設する連通部が設けられている小動物飼育用ケージ。
【請求項2】
前記蓋に箱体内へ空気を送る給気管が設けられ、該蓋に箱体内の空気を排出する排気管が設けられ、
該箱体内の収容部の一方に該給気管が臨み、収容部の他方に該排気管が臨んでいる請求項1に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項3】
前記仕切り板が、前記通気部と、箱体内の収容部の一方と他方とを遮蔽する遮蔽部と、を有し、該通気部の仕切り板に対する面積の割合が10〜50%である請求項1に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項4】
前記通気部が、前記仕切り板に設けた開口部に取り付けた網材、または仕切り板に設けた通孔またはスリットによって形成されている請求項1に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項5】
前記連通部が、前記仕切り板の上端縁を切欠して形成されている請求項1に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項6】
前記連通部が、前記仕切り板に設けられた通孔である請求項1に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項7】
前記連通部に前記ノズルの先端を案内するための案内部材が取り付けられている請求項1に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項8】
前記案内部材が筒体であり、該筒体内に前記ノズルの先端を挿通可能である請求項7に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項9】
前記箱体と前記蓋との間にシール部材が配設され、前記蓋に形成された給水装置用開口部の周縁と前記給水装置との間にシール部材が配設されている請求項1に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項10】
前記箱体が、外箱と、内箱とを有し、該内箱内に前記仕切り板が配設され、内箱の底部に該仕切り板を保持するための嵌合突部が設けられ、該仕切り板の底部に該嵌合突部に嵌合し得る嵌合凹部が設けられ、該外箱の底部に該内箱の嵌合突部の底面側に設けられた凹部に嵌合し得る突部が設けられている請求項1に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項11】
前記蓋の下面に小動物が把持する部材である把持部材が取り付けられ、該把持部材が前記給水装置用開口部の一部に臨む請求項1に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項12】
前記給水装置の一端が軸によって前記蓋に回動可能に連結されている請求項1に記載の小動物飼育用ケージ。
【請求項13】
上面が開口する箱体と、該箱体の開口部を覆う蓋と、給水装置と、を有する密閉系の小動物飼育用ケージであって、
該箱体内に、該箱体内の収容部を左右に分割するように仕切り板が配設され、
該仕切り板は、箱体内の分割された収容部の一方と他方とを通気させる通気部と、該収容部の一方と他方とを遮蔽する遮蔽部とを有し、
該仕切り板に、該給水装置に設けられたノズルの先端を配設する連通部が設けられ、
該蓋に箱体内へ空気を送る給気管が設けられ、該蓋に箱体内の空気を排出する排気管が設けられ、
該箱体内の収容部の一方に該給気管が臨み、収容部の他方に該排気管が臨んでいる小動物飼育用ケージ。
【請求項14】
上面が開口する箱体と、該箱体の開口部に装着される蓋と、該蓋に形成された給水装置用開口部に開閉可能に装着される給水装置と、を有し、
該蓋の下面に小動物が把持する部材である把持部材が取り付けられ、該把持部材が該給水装置用開口部の一部に臨む密閉系の小動物飼育用ケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規かつ画期的な発想に基づく小動物飼育用ケージに関する。詳しくは、外部と隔離した状態で、ラット、マウス、モルモット等の小動物を飼育する際に使用される密閉系の小動物飼育用ケージであって、生体遺伝子の改変された小動物を生物学的実験などに供する場合に、その小動物の品質、例えば、病原菌等に感染していないこと、感染しているならその病原菌を特定すること、を確認あるいは保証することのできる小動物飼育用ケージに関する。より詳しくは、生物学的な実験又は研究の対象となる小動物の品質を的確に見極め、小動物個々のモニタリングを施設内の他の小動物を汚染させることなく安価で容易かつ安全に行い得、しかも飼育環境の清浄化を安価でかつ容易にする、密閉系の小動物飼育用ケージに関する。
【背景技術】
【0002】
研究の激化するバイオサイエンス領域では、毎年数百万匹ものコンベンショナル動物・SPF動物・ノトバイオート動物・無菌動物等の実験用小動物(例えば、マウス・ラット等、以下小動物という。)が研究・実験・検定等に供せられている。そして遺伝子操作技術の進展に伴い、生体遺伝子の改変が設備規模の大小に関わらず容易に行えるようになって、年間数十万匹もの小動物が国内の何百箇所の研究機関等で作り出されていると共に、これら小動物の授受が研究機関同士の間などで頻繁かつ広範囲に行われ、研究・実験に使用されている。
【0003】
しかし、現状は、小動物の飼育繁殖は高度な空調管理がなされたクリーンな環境下にある飼育実験施設(以下、施設という。)から、空調管理がなされていない通常の小部屋等まで様々な場所で行われているため、小動物の微生物学的品質にバラツキが生じ、研究・実験に多大な悪影響を及ぼし、研究・実験の対象となり得る小動物の資格問題にもなっている。
【0004】
例えば、病原微生物等に汚染した小動物を施設に導入すると、施設全体が新たな汚染源となるだけでなく、施設の清浄化のために小動物の全処分や施設の消毒・改善等に何億円もの経費や労力を投じることになる。しかも、その環境の清浄化のために要する3ヶ月から1年近くの時間的損失は、研究の進展に多大な損失を招いている。
【0005】
このような状況を回避すべく、小動物の授受時には検疫(主に目視による症状検査等)やモニターリング報告書等(以下、証明書という。)の作成・添付が行われているが、この証明書は、送られてくる小動物がどのような条件下で飼育されていたかを単に示すものであるにすぎず、小動物個々の微生物学的な品質を保証するものでは決してない。
【0006】
そこで、まず大切なことは、特定の生物学的実験に供せられる特定の品質をもった動物(対象動物と言われる。)、例えば、特定の遺伝子を改変されたマウスや、遺伝子とは無関係で無菌状態で育てられた動物や特定の菌にのみ感染した動物、が何らかの病気にかかっていないこと、例えば何らかの微生物に感染していないこと、の確認が必要である。本発明のケージは、その確認のために使われる。
【0007】
この対象動物は、あちこちの異なる環境で飼育されて「特定の品質を持った動物」ということで研究機関に持ち込まれるが、果たしてそれが真実であるか否かは不明である。
【0008】
そして、たとえ対象動物が感染していることが確認できても、勿論、対象動物の最終目的である生物学的実験に、該感染が影響しないことはあり得る。しかし、このケージを介して、ある微生物に感染しているという事実がデータとして残るという意味で、このケージによる確認実験に意味がある。
【0009】
また、対象動物が遺伝子改変動物であるならば、目的の生物学的実験が遺伝子の改変などを目的とするものである場合、その対象動物が少々何らかの微生物に感染していても、あるいは病気に感染していても、遺伝子的観点からは影響がない場合が多いため、研究者はその微生物感染や病気を気にすることなく、目的の実験を進めてしまう。その結果、他の対象動物への感染という問題を生じ、それがその他の対象動物の生物学的実験の精度を低めることにもなってしまう。
【0010】
しかし、本発明のケージを用いることで、感染微生物や病気を特定することができ、他の対象動物への影響を押さえ込むことが可能となり、結局、この他の対象動物の生物学的実験の精度を高いものに仕上げることが可能となる。
【0011】
このような課題を解決しようとする本発明に対する従来技術は存在しないが、少しでも関係すると思われる従来技術を以下に述べる。
【0012】
特開平9−252676号公報(特許文献1)には、微生物学的モニターリング(以下、モニターリングという。)を行うために、飼育ラック(以下、ラックという。)に複数の動物飼育用ケージを配設し、該ケージ内に収容された動物(本発明の対象動物に相当する。)を通過した空気のみがモニター室に流入するように構成された実験用動物飼育装置が記載されている。
【0013】
この装置によれば、モニター室内の動物は、ケージ内に収容された複数の各動物に触れた空気のみを吸っているので、仮にラック内に、微生物に感染した動物が存在していると、モニター室内の動物も当然にその微生物に感染する。そのため、モニター室内の動物を観察および検査することにより、ラック内の動物の感染状況を素早く確認することができ、感染動物の増加を直ぐに防止する手段を採ることができる。
【0014】
しかしながら、この装置では、感染したモニター室の動物の病原微生物の検出ができるとしても、複数のラック内の小動物全体に由来する空気を通じて感染しているために、感染源の小動物がどれであるかを特定ができず、さらに、隣接する他のケージ内の小動物への感染が懸念される。それゆえ、ラック内のみならず、施設全体の小動物の処分や消毒等の大がかりな対応策がとられねばならない。
【0015】
特開2011−200154号公報(特許文献2)および「放射線科学」独立行政法人放射線医学総合研究所編、2007.08、第50巻第8号、11頁−13頁(非特許文献1)には、動物間の感染等を試験するために用いられる動物用分割ケージが記載されている。このケージは、上面が開口する箱体と、該箱体内に配設される金網からなる仕切り部材と、この仕切り部材によって分割された箱体内の2つの居住空間の開口部に配設される開閉可能な蓋と、を有する。各蓋には給水タンクおよびエサ箱が取り付けられている。
【0016】
しかし、このケージを使用して小動物(本発明の対象動物に相当する。)の感染状況をモニターリングする場合、蓋は金網から形成されて通風孔を形成しているので、この蓋を通してラック内および施設全体に汚染が広がる危険性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】「放射線科学」独立行政法人放射線医学総合研究所編、2007.08、第50巻第8号、11頁−13頁
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平9−252676号公報
【特許文献2】特開2011−200154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上述の欠点を解決するためになされたものであり、実験の対象となる小動物の品質を的確に見極め、小動物個々のモニターリングを安価で容易、かつ安全に行い、飼育実験環境の清浄化に要する経済的・人的投入並びに時間的損失を最小限にとどめることができる小動物飼育用ケージを提供することを目的とする。
【0020】
本発明の他の目的は、ケージ内の小動物の病原菌が他のケージ内の小動物に感染したり施設内を汚染することなく、小動物のモニターリングが行える小動物飼育用ケージを提供することにある。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、小動物の感染源を正確に特定することができる小動物飼育用ケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の小動物飼育用ケージは以下を特徴とする。
上面が開口する箱体と、該箱体の開口部を覆う蓋と、該蓋に設けられた給水装置用開口部に開閉可能に装着される給水装置と、を有する密閉系の小動物飼育用ケージであって、該箱体内に、該箱体内の収容部を左右に分割するように仕切り板が配設され、該仕切り板に、箱体内の分割された収容部の一方と他方とを通気させる通気部が設けられ、該仕切り板に、該給水装置に設けられたノズルの先端を配設する連通部が設けられている小動物飼育用ケージ。
前記蓋に箱体内へ空気を送る給気管が設けられ、該蓋に箱体内の空気を排出する排気管が設けられ、該箱体内の収容部の一方に該給気管が臨み、収容部の他方に該排気管が臨んでいる本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
前記仕切り板が、前記通気部と、箱体内の収容部の一方と他方とを遮蔽する遮蔽部と、を有し、該通気部の仕切り板に対する面積の割合が10〜50%である本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
前記通気部が、前記仕切り板に設けた開口部に取り付けた網材、または仕切り板に設けた通孔またはスリットによって形成されている本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
前記連通部が、前記仕切り板の上端縁を切欠して形成されている本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
前記連通部が、前記仕切り板に設けられた通孔である本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
前記連通部に前記ノズルの先端を案内するための案内部材が取り付けられている本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
前記案内部材が筒体であり、該筒体内に前記ノズルの先端を挿通可能である本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
前記箱体と前記蓋との間にシール部材が配設され、前記蓋に形成された給水装置用開口部の周縁と前記給水装置との間にシール部材が配設されている本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
前記箱体が、外箱と、内箱とを有し、該内箱内に前記仕切り板が配設され、内箱の底部に該仕切り板を保持するための嵌合突部が設けられ、該仕切り板の底部に該嵌合突部に嵌合し得る嵌合凹部が設けられ、該外箱の底部に該内箱の嵌合突部の底面側に設けられた凹部に嵌合し得る突部が設けられている本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
前記給水装置用開口部の一部に臨む把持部材が、前記蓋の下面に取り付けられている本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
前記給水装置の一端が軸によって前記蓋に回動可能に連結されている本発明に記載の小動物飼育用ケージ。
上面が開口する箱体と、該箱体の開口部を覆う蓋と、給水装置と、を有する密閉系の小動物飼育用ケージであって、
該箱体内に、該箱体内の収容部を左右に分割するように仕切り板が配設され、
該仕切り板は、箱体内の分割された収容部の一方と他方とを通気させる通気部と、該収容部の一方と他方とを遮蔽する遮蔽部とを有し、該仕切り板に、該給水装置に設けられたノズルの先端を配設する連通部が設けられ、該蓋に箱体内へ空気を送る給気管が設けられ、該蓋に箱体内の空気を排出する排気管が設けられ、該箱体内の収容部の一方に該給気管が臨み、収容部の他方に該排気管が臨んでいる小動物飼育用ケージ。
上面が開口する箱体と、該箱体の開口部に装着される蓋と、該蓋に形成された給水装置用開口部に開閉可能に装着される給水装置と、を有し、該給水装置用開口部の一部に臨む把持部材が、該蓋の下面に取り付けられている密閉系の小動物飼育用ケージ。
【発明の効果】
【0023】
本発明の小動物飼育用ケージは、箱体の開口部に蓋が設けられ、蓋に設けられた給水装置用開口部に給水装置が開閉可能に装着された密閉系であるので、ケージ内の小動物の病原菌(かりに小動物が病原菌を保有している場合)が、他のケージ内の小動物に感染したり、あるいは施設内を汚染することがない。
【0024】
さらに、本発明によれば、箱体内に、箱体の収容部を左右に分割するように仕切り板が配設され、この仕切り板に箱体内の収容部の一方と他方とを通気させる通気部が設けられているので、箱体内の収容部の一方から他方へ通気部を通して空気が流れることになる。しかも、仕切り板には給水装置のノズルの先端を配設する連通部が設けられているので、箱体内の収容部の一方に収容された小動物と収容部の他方に収容された小動物が共に、この共通の給水ノズルからの水を飲むことになる。そのため、収容部の他方に収容された小動物が感染した場合には、空気感染および/もしくは経口感染によって収容部の一方に収容された小動物がある病原菌に感染していることを特定することができる。
【0025】
特に、箱体内の収容部の一方に給気管が臨み、収容部の他方に排気管が臨んでいると、給気管から収容部の一方へ導入された空気は、仕切り板の通気部を通して収容部の他方へ流れ、そして排気管から排出される。このように、ケージ内に空気の通気路が形成されるので、上流側の収容部内で飼育される小動物の病原菌が、下流側の収容部内で飼育される小動物に容易に感染することになる。
【0026】
さらに、仕切り板が、そこに開口した通気部と、開口部以外の領域により形成されて箱体内空間を二分して一方の空間と他方の空間とを遮蔽する遮蔽部とを有し、開口する通気部の面積が仕切り板の面積の10〜50%であると、ケージ内へ導入される風量および風速を小さくした場合でも、遮蔽部によって一方の空間に流れる空気が他方の空間に通気部を通して誘導されるので、ケージ内に空気の流れができ、ケージ内を十分に換気できる。よって、ケージに該ケージ外から接続される換気装置の小型化ができる。
【0027】
さらに、箱体を外箱と内箱の二重箱で構成し、内箱の底部に仕切り板の底部を嵌合させ、外箱内に内箱を嵌合させることにより、内箱内に小動物を収容した状態で輸送が行え、内箱が汚れた場合には内箱だけを廃棄することができる。このようにして、動物実験に要する設備と維持費が極小化され、その結果労力の低減化ができる。さらに、内箱を所定の清浄度に維持することができる。
【0028】
さらに、給水装置用開口部に臨む把持部材が蓋の下面に取り付けられている場合には、給水装置を開くと開口部に把持部材が露出することになる。そのため、開口部から箱体内の小動物の尻尾を指などで掴み、この小動物を把持部材に掴まらせることができるので、気配を察して恐れおののいている小動物からの採血などに際し、小動物の手技保定を確実に行うことができる。把持部材は、蓋の内側に配置されるので、把持部材に付着した汚染物などが外気に放出されることもない。また、従来のような別部材である中網を使用しないので、部品点数を減らすことができる。
【0029】
従来では、ケージ内の動物を検査その他の実験等を行う場合、ケージの蓋および中網を箱体から外し、箱体の開口部から箱体内の小動物(例えば、マウス)の尻尾を一匹ずつ指やピンセットを介して掴み、薬剤の投与、採血、計測などを行う。その際、マウスが暴れるので、このマウスを中網上に置くことによりマウスは中網を手で掴むので、その状態でマウスを手技保定し、上記の採血などの処置を行う。このような処置を行う場合、蓋および中網をそれぞれ箱体から取り外す作業が必要であるので作業が面倒であり、かつ小動物を過度に疲労させたり傷つけたりしてしまうという問題がある。
【0030】
しかし、上記のように給水装置用開口部に臨む把持部材を蓋の下面に取り付けることにより、蓋および中網を箱体から取り外す必要なく小動物の手技保定を行うことができ、それゆえ小動物を容易かつ安全に採り出せる作業性の良い小動物飼育用ケージを提供できる。しかも、別部材である中網の使用をなくすことによって、洗浄、滅菌を省略化できる。
【0031】
給水装置の一端が軸によって蓋に回動可能に連結されていると、給水装置を取り外す必要がなく、作業性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の小動物飼育用ケージの概略断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す飼育用ケージの蓋と給水装置を箱体から分離した状態の斜視図である。
【
図5】
図5は、給水装置のノズルの案内部材を示す要部斜視図である。
【
図6】
図6(a)は他の実施形態の案内部材を示す斜視図である。
図6(b)はその断面図である。
【
図7】
図7(a)は他の実施形態の連通部を示す斜視図である。
図7(b)はその断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の飼育用ケージの作用説明図である。
【
図9】
図9は、飼育用ケージに使用する把持部材の平面図である。
【
図10】
図10は、飼育用ケージに使用する把持部材の他の実施形態の平面図である。
【
図11】
図11は、他の実施形態の飼育用ケージの分解斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明のさらに他の実施形態の飼育用ケージの概略断面図である。
【
図16】
図16は、複数の飼育用ケージを収容したラックの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1)
本発明の小動物飼育用ケージ2は、
図16に示すように、小動物飼育ラック60の前面側に形成された開口部から出し入れ可能に、該ラック60に装着されるものである。ラック60は、アングル材などで構成される直方体形の枠体61と、この枠体61内の空間を上下に複数段に分割する棚枠62とを有する。これらの棚枠62のそれぞれの上部に形成される複数の飼育スペース63内に複数の飼育用ケージ2が載置又は吊り下げ支持される。各飼育スペース63は前面側に開口部を有し、該開口部より該スペース63内へケージ2が前方より取り出し可能に配設される。
【0034】
図1〜
図4に示すように、ケージ2は、上面が開口する直方体状の箱体4と、該箱体4の開口部を覆う蓋6と、該蓋6に設けられた給水装置用開口部33に開閉可能に装着される給水装置8と、該箱体4の収容部を左右に2分割するように箱体4内に配設される仕切り板36と、を有する。
【0035】
本発明のケージ2は、密閉系である。該密閉系とは、箱体4の開口部に蓋6を被せ、該蓋6の給水装置用開口部33に給水装置8を装着した際には、後述する給気管15および排気管14を除いて、ケージ2内の空気は外部へ実質的に漏れず、かつ外部からの空気はケージ2内へ実質的に侵入しないことをいう。従って、ケージ2内の病原菌や汚染物がケージ2の外部へ漏れることがなく、かつケージ2外の病原菌や汚染物がケージ2の内部へ入ることもない。
【0036】
箱体4は透明な合成樹脂よりなり、その上端の周縁にはフランジ21が外側方へ向けて延出されている。箱体4の外側面には、フランジ21と平行に張り出し片22が突設されている。この張り出し片22をラック60に形成した突起に係止させることで、ケージ2をラック60に吊り下げ支持することができる。
【0037】
蓋6は透明な合成樹脂よりなる。蓋6は、
図4に示すように、箱体4の上端縁を覆うように取り付けられる枠体7と、該箱体4の開口部の一部を覆う蓋部26と、上記給水装置8が装着される給水装置用開口部33とを有する。
図4および
図8に示すように、その枠体7の周縁には折曲片24が下方へ折曲して形成されている。
【0038】
箱体4の周囲にはガスケットなどのシール部材5が取り付けられており、蓋6を箱体4の上面開口部に装着した場合に、該シール部材5が折曲片24の内側に弾性的に接することで、蓋6が箱体4に弾性的かつ気密的に保持される(
図8)。
【0039】
その蓋6の給水装置用開口部33は、箱体4の開口部の全面積に対して、ほぼ40〜70%の面積とすることができ、特に45〜60%とすることが好ましい。この給水装置用開口部33の面積を大きくすることにより、箱体4内の小動物を開口部33を通して手などで容易に出し入れすることができる。
【0040】
箱体4の給水装置用開口部33に給水装置8が開閉可能に装着されている。つまり、蓋6のほぼ中央部の上縁に軸受け(図示せず)が形成され、給水装置8の端部に形成された軸部25を該軸受けに嵌め込むことにより、給水装置8は蓋6に対して上下回動可能に支持されている。なお、給水装置8は、蓋6の上面に沿って箱体4の前後方向へ移動させることによって開閉可能としてもよい。
【0041】
該給水装置8は、箱体4の給水装置用開口部33に、開閉可能に配置される受け部材35と、該受け部材35に取り外し可能に配設される給水ボトル18とを有する。該受け部材35は、上片17と、該上片17に形成された側面視で三角形状の凹部10とを有し、この凹部10内に給水ボトル18が配設される。該凹部10は、第1の傾斜片11と、第2の傾斜片12と、両側片13、13とを有し、第1の傾斜片11に、給水ボトル18のノズル(給水口)19を挿入するための通孔20が形成されている(
図1)。
【0042】
箱体4の給水装置用開口部33の周囲にガスケットなどの弾性部材が取り付けられ、該給水装置用開口部33に給水装置8を装着した際には、この開口部33に給水装置8の受け部材35が気密的に装着される。弾性部材は、給水装置用開口部33の周囲に設ける代わりに、該給水装置8の受け部材35の周囲に設けてもよい。または、給水装置用開口部33の周縁と該給水装置8の受け部材35とを実質的に気密的に嵌合させるようにしてもよい。
【0043】
第1の傾斜片11に形成した通孔20の周囲に筒体27が突設されている。また、給水ボトル18のノズル19にはリング状のボトル用シール部材が装着されている。この給水ボトル18を凹部10内に配設し、給水ボトル18のノズル19を通孔20に通した際には、給水ボトル18のノズル用シール部材が筒体27の内面に弾性的に接する(気密的に嵌合する)。ボトル用シール部材としては、例えば、弾性を有するパッキン、O−リングなどを使用することができる。
【0044】
図1〜
図4に示すように、該蓋6に箱体の前後方向に長い盛り上がり部41、41が形成されている。その盛り上がり部41、41の後方側の壁部42、42に、排気管14および給気管15がそれぞれ後方へ(ケージの後方へ)突出するように設けられている。これらの排気管14および給気管15は蓋6と一体に形成してもよく、あるいは排気管14および給気管15を蓋6とは別部材で構成し蓋6の壁部42に取り付けるようにしてもよい。また、これらの排気管14および給気管15は、蓋6の上面に設けてもよい。排気管14および給気管15にはフィルタ28が接続される。
【0045】
上記仕切り板36は、プラスチック板、金属板などの板材を加工して形成されている。仕切り板36は、箱体4の収容部をほぼ左右に2等分するよう箱体4内に、垂直方向に位置するよう配設されていさえすればよい。仕切り板36は、箱体4の前後方向または幅方向に長く、箱体4内に配設される。該仕切り板36は、箱体4の底部または内壁に設けた突起や凹部などの嵌合部によって固定するようにしてもよい。
図1に示す実施形態では、箱体4の開口部の一部に金属製線材からなる給餌装置9を配設し、この給餌装置9の線材間に縦方向に配置した仕切り板36の上部を通すことにより、仕切り板36は箱体4内に保持されている。
【0046】
仕切り板36が箱体4内に配設された状態では、仕切り板36の側端部と箱体4の側面との間、仕切り板36の下端部と箱体4の底面との間、および仕切り板36の上端部と蓋6の下面および給水装置8との間には、小動物が通過できない程度の隙間が形成され、あるいは隙間が実質的に形成されない。
【0047】
仕切り板36には、箱体4内の収容部の一方と他方とを通気させる通気部37が設けられている。この通気部37の大きさは、箱体4内の収容部の一方から他方へ空気が流通し、かつ対象動物側(収容部の一方A)の排泄物や床敷材が非対象動物側(収容部の他方B)へ容易に移行し、しかも小動物が通過できない程度に形成されている。
【0048】
通気部37は、例えば、仕切り板36に形成した開口部に網材を配置し、あるいは仕切り板36に多数の通孔、あるいは多数のスリットを設けることによって形成することができる。
【0049】
通気部37は、仕切り板36に複数個所設けてもよい。対象動物側の排泄物や床敷材が非対象動物側へ容易に移動するように、少なくとも1つの通気部37は、仕切り板36の下方位置(例えば、箱体4の底面から1〜4cm程度の位置)に設けるのが好ましい。または、少なくとも1つの通気部37は、仕切り板36の高さ(または箱の底面から蓋の下面までの高さ)の1/3以下の高さ位置に設けるのが好ましい。
【0050】
該通気部37の開口面積は、仕切り板36の側面側から見た仕切り板36の全面積に対して、5〜60%が好ましく、さらに好ましくは10〜50%、最も好ましくは15〜30%である。通気部37が設けられていない仕切り板36の遮蔽部34によって、ケージ内の空気の流れを誘導することができる。
さらに、仕切り板36の上縁に、給水装置8を受けるための給水装置受け部40、例えば、凹所が設けられている。該給水装置受け部40は、該仕切り板36のどの位置に設けてもよいことはいうまでもない。
【0051】
この受け部40に連続して、該給水装置8の給水ボトル18の先端に設けられたノズル19を配設する連通部(空間部分)38が切欠して設けられている。この連通部38は、箱体4の収容部の一方Aと他方Bとを連通させる空間である。
【0052】
ノズル19の先端を配設する連通部は、仕切り板36の任意の位置に設けることができる。この実施例では、該連通部38は、ノズル19の先端を配設できる程度に仕切り板36の上端縁の一部を長方形状に切り欠いて形成されている。連通部38に給水ボトル18のノズル19の先端部分を配置した場合、箱体4の収容部の一方Aおよび他方Bに収容される小動物がノズル19の水を共に飲むことになる。そのことで、小動物間で経口感染が生じる。
【0053】
連通部38の大きさは、小動物がノズル19先端から水を利用でき、かつ小動物が連通部38を通過できない程度とされる。
【0054】
該連通部38にノズル19を案内するための案内部材39が配設されている。
図5に示すように、この案内部材39は筒体で形成することができる。案内部材39は、連通部38内の仕切り板36の側壁に固定されている。この案内部材39によって給水ボトルのノズル19の先端を仕切り板36に確実に保持することができる。給水ボトル18内に水を追加あるいはボトル18内の水を交換するために、給水ボトル18を給水装置8の凹部10から引き抜いたときでも、連通部38に案内部材39が配設されていると、小動物は連通部38を通って他方側の収容部へ移動することを確実に阻止できる。
【0055】
案内部材39は、
図6に示すように、湾曲した板材で形成することもできる。一対の板材を連通部38に臨んで仕切り板36の両側に固定することにより、一対の板材間にノズル19を通す通孔が形成される。
【0056】
図7に示すように、連通部38は、仕切り板36に設けた通孔によって形成することもできる。給水装置8の凹部10に配設した給水ボトル18のノズル19の先端191が、この連通部38に臨む状態に位置する。そのため、ノズル19が配置される側の箱体4の収容部A内の小動物がこのノズル19の水を飲むことができるのは勿論のこと、ノズル19が配置されていない側の箱体4の収容部B内の小動物も、連通部38に位置するノズル先端191の水を飲むことができる。該連通部38の形状および大きさは限定されない。小動物が連通部38を通してノズル先端191からの水を利用でき、かつ小動物が連通部38を通り抜けできないように設計される。ノズル19の先端がふらつくことに格別の問題はないが、ノズル先端のふらつきを防止するために、ノズル19を保持する保持部材を仕切り板36に取り付けてもよい。
【0057】
上記箱体4内の分割された収容部Aに蓋6に設けた給気管15が臨み、収容部Bに該排気管14が臨んでいる。従って、
図8に示すように、給気管15から箱体4内へ送られた空気は、仕切り板36の遮蔽部34によって誘導され、箱体4内の一方側の収容部Aを移動すると共に、仕切り板36の通気部37を通り、他方側の収容部Bから排気管14を通って排出されることになる。
【0058】
把持部材30は、蓋部26の下面に片持ち状に支持され、把持部材30の大部分が給水装置8の受け部材35の下面側に配設されている(
図4)。給水装置8を上方へ回動させて開口部33を開いた場合には、把持部材30が開口部33から外部へ露出する。把持部材30の開口部33への突出寸法は適宜設定することができる。
【0059】
把持部材30の材質に格別の意味はなく、小動物が外部へ逃走しない程度の隙間をもっておればよく、通常、金網、樹脂製の網(
図9)などの網材、格子、樹脂製又は金属製の受け部材35に多数の孔を形成したもの(
図10)などで構成される。把持部材30の端部に固定片31が取り付けられ、この固定片31が蓋部26の下面に接着剤、溶着、ネジなどの固着手段によって固着されている。把持部材30の遊端部には開口部33から箱体4内へ手を容易に挿入できるように切欠凹部32が設けられている。
【0060】
次に、本発明の小動物飼育用ケージ2の使用方法を説明する。
【0061】
給水装置8を上方へ回動させて、開口部33から箱体4の収容部の一方A(給気管15が設けられている収容部)に外部から入手した対象動物を入れ、収容部の他方B(排気管14が設けられている収容部)にモニター用の非対象動物を入れ、給水装置8を開口部33に装着する。この状態で、ケージ2を小動物飼育ラック60の飼育スペース63に配設する。換気装置に接続されたラック側排気管とケージ2の排気管14とを接続すると共に、換気装置に接続されたラック側給気管とケージ2の給気管15とを接続し、換気装置の作動により、ケージ2内の空気を換気させる(
図8)。給気管15から排気管14へケージ2内の空気が流れる際に、仕切り板36によって空気が誘導されるため空気は箱体4内で滞留することがない。
【0062】
仕切り板36に、収容部の一方と他方とを通気させる通気部37が設けられているので、収容部A内の空気はこの通気部37を通して収容部Bへ流れることになる。また、仕切り板36に、給水ボトル18のノズル19の先端を配設する連通部38が設けられているので、収容部Aおよび収容部B内の小動物は、共にノズル19からの水を飲むことになる。そのため、収容部A内の小動物の病原菌などは空気感染および経口感染によって収容部B内の小動物に容易に感染することになる。また、箱体4の開口部は蓋6および給水装置8によって実質的に気密に塞がれているので、ケージ2内の病原菌や汚染物がケージ2の外部へ漏れることがない。
【0063】
ケージ2内の小動物を検査その他実験等の処置を行う場合には、ラック60からケージ2を引き出し、あるいはラック60からケージ2を別の場所(クリーンベンチあるいはバイオハザードベンチ等)に取り出し、ケージ2の給水装置8を開き、開口部33を通して箱体4内の小動物の尻尾を指やピンセットなどを用いて掴む。その際、小動物は暴れるので、開口部33側へ突出した把持部材30に小動物を掴ませる。この状態で小動物の手技保定を行う。
【0064】
このようにして、例えば、生体遺伝子が改変された小動物を外部から導入して実験などを行う場合に、この小動物(対象動物)を一方の収容部に収容し、他方の収容部におとり動物(非対象動物)を収容して一定期間飼育した後、おとり動物について定期的に繰り返し特定の微生物の有無を検査する。そのことによって、生体遺伝子が改変された小動物の品質、および病原微生物等の関与がなく動物実験が実施されたことを確認あるいは保証することができるのである。
【0065】
本実施例によれば、ケージに設けた給気管15および排気管14を換気装置に接続し、該給気管15からケージ2内へ清浄な空気を導入し、ケージ2内の空気を排気管14から排気している。ケージ内へ導入する空気は、ケージ内を清潔に保つためには、ケージの換気回数が40〜60回/時間(換気量は、ケージ内の容積×40〜60回/時間)で、ケージ内の風速が20〜30m/時間となるように設定される。この風量および風速はケージ内の小動物にとって台風並みである。そのため、小動物に与える気流の影響は大きく、生態への悪影響があるものと思われる。それゆえ、適切な飼育環境が必要とされている。
【0066】
特許文献2に記載の仕切り部材は、外枠に金網を張って構成されている。従って、このケージを用いてケージ内の換気を行う場合、上記のように設定された風量および風速が必要とされる。
【0067】
本実施例のように、ケージ内に配置した仕切り板36の一部に通気部37を設け、仕切り板36の他部に遮蔽部34を設けることにより、給気管からケージ内へ導入された空気は、仕切り板36の通気孔37を通過して、収容部の一方から他方へ通る。それゆえ、ケージ内に空気の流通路ができる。そのため、ケージ内の風量および風速を小さくした場合でも、ケージ内を十分に換気でき、それゆえ、小動物にとって適切な飼育環境となる上に、換気装置を小型化できる。
(実施例2)
上記実施形態では、1つの箱体4内に仕切り板36を設置したが、箱体4を外箱46と内箱43とから構成し、内箱43内に仕切り板36を設置するようにしてもよい。
【0068】
この場合には、
図11〜
図13に示すように、内箱43の底部の両端側に、仕切り板36を保持するための嵌合突部44が設けられ、仕切り板36の底部の両端側に該嵌合突部44に嵌合し得る嵌合凹部45が設けられている。また、該外箱46の底部の両端側に、該内箱43の嵌合突部44の底面側に設けられた凹部に嵌合し得る突部47が設けられている。
【0069】
このような構成とすることにより、仕切り板36を箱体4内に容易に立てた状態に取り付けることができる。また、内箱43を使用することで、内箱43内に小動物を収容した状態で移動できるので、小動物の移動が容易にかつ小動物にストレスを与えることなく行える。内箱43が汚れた場合には、比較的安価な内箱43を外箱46から取り出して廃棄できるので、衛生的でかつ経済的でもある。
上記嵌合突部44、突部47などの表面は湾曲面に形成されており、小動物が嵌合突部44および突部47を齧ることを防止できる。またこれらの部材を重ねて保管、滅菌することができる。
【0070】
図6に示すように、仕切り板36を箱体4内に縦状態で保持するために、仕切り板36の下端に水平な支持板48を固定してもよい。
【0071】
図14は仕切り板36の他の実施形態を示している。
【0072】
この仕切り板36は、板状の仕切り板本体36aと、該仕切り板本体36aの下端部の両側に折り曲げ可能に形成された折曲片36bと、を有する。仕切り板36を箱体4内で使用する際には、
図14(b)に示すように、2つの折曲片36b、36bを、例えば、それぞれ反対側へ折り曲げることにより、仕切り板36を箱体4内で自立させることができる。
【0073】
仕切り板36をこのような構成とすることにより、仕切り板36を安価に作製でき、しかも仕切り板36を箱体4内に容易に立てた状態に取り付けることができる。さらに、複数の仕切り板36を積み重ねて保管、殺菌を行うことができる。
(実施例3)
図15はさらに他の実施形態を示したものである。
【0074】
この実施形態では、箱体4の上面の開口部の一部に、開口部を覆う蓋6を開閉可能に装着し、該開口部の他部に給水装置8を装着したものである。
【0075】
蓋6の一端部には軸部25が形成され、箱体4のほぼ中央部の上縁に、該軸部25に嵌合する軸受け(図示せず)が形成され、蓋6の軸部25を軸受けに嵌め込むことにより、蓋6は箱体4に対して上下回動可能に支持される。
【0076】
把持部材30は、給水装置8を下面に片持ち状に支持され、把持部材30の大部分が蓋6の下面側に配設されている。蓋6を上方へ回動させた場合には、把持部材30が開口部から外部へ露出する。
【0077】
図15の矢印で示すように、蓋6を箱体4に軸支して回動させることにより、蓋6を開いた場合には傾斜した状態で蓋6を保持でき、作業性が向上する。蓋6は箱体4の上面に沿って箱体4の前後方向へ移動させることによって開閉可能としてもよい。ラック側排気管とケージ2の排気管14との間、ラック側給気管とケージ2の給気管15との間に、それぞれフィルタ装置28を介在させてもよい。
【0078】
なお、上記各実施例では、仕切り板36が、通気部37と、箱体4内の収容部の一方と他方とを遮蔽する遮蔽部34とを有する。しかし、仕切り板36は、金網、樹脂製の板材に多数の小孔を設けたもの、外枠に金網を張ったものなどで構成してもよい。
【0079】
上記給餌装置9として、金属製線材からなるものを箱体4の開口部の一部に設けたが、給水装置8側に設けてもよく、あるいは箱体4内に給餌装置を設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、外部と隔離した状態で、ラット、マウス、モルモット等の小動物を飼育する際に使用される小動物飼育用ケージを提供することができる。
【符号の説明】
【0081】
2 飼育用ケージ
4 箱体
6 蓋
7 枠体
8 給水装置
14 排気管
15 給気管
19 ノズル
26 蓋部
30 把持部材
35 受け部材
36 仕切り板
37 通気部
38 連通部