特許第5963331号(P5963331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963331
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】X線測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/20 20060101AFI20160721BHJP
   G01N 23/205 20060101ALI20160721BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G01N23/20 310
   G01N23/205
   G01N23/223
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-12229(P2015-12229)
(22)【出願日】2015年1月26日
(62)【分割の表示】特願2012-72559(P2012-72559)の分割
【原出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-79011(P2015-79011A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100093953
【弁理士】
【氏名又は名称】横川 邦明
(72)【発明者】
【氏名】上ヱ地 義徳
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−163262(JP,A)
【文献】 特開2000−294185(JP,A)
【文献】 特開昭59−077308(JP,A)
【文献】 特開2001−201468(JP,A)
【文献】 米国特許第06459767(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に入射するX線を発生するX線源と、
前記測定対象物から出たX線を検出するX線検出手段と、
前記X線源及び前記X線検出手段を収容し、前記測定対象物とは別体であるハウジングと、
を有するX線測定装置において、
前記ハウジングの振動量を検知する振動量検知センサと、
前記X線源、前記X線検出手段及び前記振動量検知センサを制御する制御手段と、を有しており、
前記振動量検知センサは、距離の変動を検知する距離センサ、速度の変動を検知する速度センサ、加速度の変動を検知する加速度センサ、及び角速度の変動を検知する角速度センサのいずれかの2つ以上の組合せであり、
前記制御手段は、
サンプリング時間ごとに前記X線検出手段によってX線強度を求め、
求められたX線強度を積算し、
サンプリング時間ごとに前記振動量検知センサによって振動量を検知し、
その振動量に基づいて前記ハウジングの前記測定対象物に対する位置の変動量(δ(t))を求め、
その変動量に基づいてその変動量を補償するための測定条件値を求め、
前記X線検出手段を用いて得られる測定値を補正するための処理を前記測定条件値に基づいて行い、
前記測定条件値のいずれか1つが補償できない程に大きく変動したときには、対応するX線強度を前記の積算に含めない、
ことを特徴とするX線測定装置。
【請求項2】
前記振動量検知センサが検知した振動量に基づいて求められる変動量は、
(1)当該振動量検知センサと前記測定対象物との間の距離の変動量、
(2)当該振動量検知センサと前記測定対象物とを結ぶ線に対して直交する面内での変動量、及び
(3)当該振動量検知センサの前記測定対象物に対する傾きの変動量
の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載のX線測定装置。
【請求項3】
前記振動量検知センサは、前記ハウジングに固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のX線測定装置。
【請求項4】
前記X線検出手段を用いて得られる測定値を補正するための処理は、
前記X線源の位置を制御することか、
前記X線検出手段の位置を制御することか、
前記X線検出手段によって得られたデータをプログラムソフトによる演算によって加工することか、
であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1つに記載のX線測定装置。
【請求項5】
前記X線検出手段は、
1次元X線検出器、2次元X線検出器、ピクセル検出器のいずれかである
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1つに記載のX線測定装置。
【請求項6】
前記ハウジングは人が手で持ち運ぶことができ、人がハウジングを手で持ってハウジングのX線出射用開口を測定対象物に対面させた状態で測定が行われることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1つに記載のX線測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持運びが可能であるハウジングにX線源及びX線検出手段を収納して成るX線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1において、持運びが可能なX線測定装置が開示されている。このX線測定装置においては、ハウジングの内部にX線源及びX線検出手段が格納されている。このX線測定装置は、種々の測定場所に持ち運んでX線測定を行うことができるので、非常に便利である。
【0003】
このような持運びが可能なX線測定装置は、測定時に装置自体が振動や手振れによって動いてしまうおそれがある。特に、持ち運びが可能なX線測定装置がハンドヘルドタイプ(すなわち手持ち型)のX線測定装置である場合には、手振れの影響が大きく出てしまって、正確なデータを取得できないおそれがある。
【0004】
特許文献1に開示されたX線測定装置では、X線を出射すると共に測定対象物から出た回折X線を取込むためのX線口の周辺部分を、ゴム状のリング部材を介して測定対象物へ押し付けることにより、X線測定装置に手振れや位置変動が発生することを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第US2009/0274274号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、X線測定装置においては、測定中に測定対象物の定位置にX線を照射すること、及びX線検出器が測定対象物からの回折X線を変動の無い安定した正確な回折角度において検出すること、が信頼性の高い測定データを得る上で要請される事項であり、ゴム状のリング部材を用いてX線測定装置を保持するだけでは、その要請に十分に応えることができない。
【0007】
本発明は、従来装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、持ち運びが可能なために測定に際して手振れ、振動等の影響を受け易いX線測定装置でありながら、正確で安定した信頼性の高い測定データを得ることができるX線測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るX線測定装置は、測定対象物に入射するX線を発生するX線源と、前記測定対象物から出たX線を検出するX線検出手段と、前記X線源及び前記X線検出手段を収容し、前記測定対象物とは別体であるハウジングと、を有するX線測定装置において、前記ハウジングの振動量を検知する振動量検知センサと、前記X線源、前記X線検出手段及び前記振動量検知センサを制御する制御手段と、を有しており、前記振動量検知センサは、距離の変動を検知する距離センサ、速度の変動を検知する速度センサ、加速度の変動を検知する加速度センサ、及び角速度の変動を検知する角速度センサのいずれか2つ以上の組合せであり、前記制御手段は、サンプリング時間ごとに前記X線検出手段によってX線強度を求め、求められたX線強度を積算し、サンプリング時間ごとに前記振動量検知センサによって振動量を検知し、その振動量に基づいて前記ハウジングの前記測定対象物に対する位置の変動量(δ(t))を求め、その変動量に基づいてその変動量を補償するための測定条件値を求め、前記X線検出手段を用いて得られる測定値を補正するための処理を前記測定条件値に基づいて行い、前記測定条件値のいずれか1つが補償できない程に大きく変動したときには、対応するX線強度を前記の積算に含めない、ことを特徴とする。
【0009】
上記構成のX線測定装置において、前記ハウジングは、持ち運ぶことができる(すなわち、可搬型の)ハウジング、又は人が手で持ち運ぶことができる(すなわち、ハンドヘルドタイプの)ハウジングである。このようにX線測定装置を可搬型やハンドヘルドタイプとして形成すれば、固定型のX線測定装置に比べて振動の影響が出易くなるが、本発明を適用すればその振動の影響を効果的に解消できる。
【0010】
上記構成のX線測定装置によれば、振動を検知し、その検知結果に基づいて測定値を補正するので、持ち運びが可能なために測定に際して手振れ、振動等の影響を受け易いX線測定装置でありながら、正確で安定した信頼性の高い測定データを得ることができる。
【0011】
上記構成において、X線検出手段を用いて得られる測定値を補正するための処理としては、例えば、
(ア)X線検出手段によって求められた測定値を適宜のアプリケーションソフトウエアによってソフト的に補正することや、
(イ)X線測定装置の入射側の光学系を構成するX線源及び/又はX線光学要素の位置を調整して試料に照射されるX線を調整することや、
(ウ)X線測定装置の受光側の光学系を構成するX線検出手段及び/又はX線光学要素の位置を調整してX線検出手段のX線取込部に対するX線の状態を調整すること、
等が考えられる。
【0012】
本発明に係るX線測定装置において、前記振動量検知センサが検知した振動量に基づいて求められる変動量は、
(ア)当該振動量検知センサと前記測定対象物との間の距離の変動量、
(イ)当該振動量検知センサと前記測定対象物とを結ぶ線に対して直交する面内での変動量、及び
(ウ)当該振動量検知センサの前記測定対象物に対する傾きの変動量
の少なくとも1つとすることができる。
【0013】
本発明に係るX線測定装置において、前記振動量検知センサは、距離の変動を検知する距離センサ、速度の変動を検知する速度センサ、加速度の変動を検知する加速度センサ、及び角速度の変動を検知する角速度センサのいずれか2つ以上の組合せとすることができる。
距離センサは、例えば、レーザ光の発光から受光までの時間に基づいて距離を計測するセンサを用いることができる。角速度センサは、例えばジャイロセンサを用いることができる。
【0014】
例えば、速度センサによって取得した速度データに基づいて、振動、手振れ等の変化量データを演算によって求めることができ、振動等を補正するための指令信号をその変化量データに基づいて生成することができ、その補正指令信号に基づいてX線測定装置の振動を補正できる。また、例えば、加速度センサによって取得したか速度データをフーリエ変換して振れ速度データ及び振れ量データを求めることができる。
【0015】
また、例えば、ジャイロセンサによって角速度データを取得し、加速度センサによって移動方向のデータを取得し、取得したそれらのデータに基づいてX線測定装置の傾斜角を求めることができる。また、例えば、ジャイロセンサによって角速度データを取得し、その角速度データを積分して、X線測定装置の角度の変化を取得できる。
【0016】
本発明に係るX線測定装置において、前記振動量検知センサは、前記ハウジングに固定することができる。固定する位置は、ハウジングの内部でも良く、ハウジングの外部でも良い。振動量検知センサをハウジングに固定すれば、当該センサはハウジングの変動量を正確に検知できる。
【0017】
本発明に係るX線測定装置において、前記X線検出手段を用いて得られる測定値を補正するための前記処理は、前記X線検出手段の位置を制御する処理とすることができる。X線検出手段の位置の制御は、例えば、X線検出手段を機械的に移動させる装置、例えばアクチュエータを用いて行うことができる。また、アクチュエータの動作を制御するための装置は、例えば、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)とプログラムソフトとの組合せによって構成できる。
【0018】
本発明に係るX線測定装置において、前記X線検出手段の位置を制御する処理は、前記X線検出手段と前記測定対象物との間の距離を変動させることとすることができる。こうすれば、X線検出手段によって測定するX線強度を補正することができる。
【0019】
本発明に係るX線測定装置において、前記X線検出手段の位置を制御する処理は、前記測定対象物から出るX線の中心線に対して直角方向へ当該X線検出手段を移動させることとすることができる。こうすれば、X線検出手段によって測定するX線検出角度を補正することができる。
【0020】
本発明に係るX線測定装置において、前記X線検出手段の位置を制御する処理は、当該X線検出手段の前記測定対象物に対する傾斜角度を変動させる処理とすることができる。こうすれば、X線を取込む単位領域におけるX線を取込む角度及びX線を取込む強度を補正することができる。
【0021】
本発明に係るX線測定装置において、前記X線検出手段の位置を制御する処理は、(ア)前記X線検出手段と前記測定対象物との間の距離を変動させることと、(イ)前記測定対象物から出るX線の中心線に対して直角方向へ当該X線検出手段を移動させることと、(ウ)当該X線検出手段の前記測定対象物に対する傾斜角度を変動させることとのいずれか2つの組合せ又は3つの組合せとすることができる。
【0022】
本発明に係るX線測定装置において、前記X線検出手段を用いて得られる測定値を補正するための前記処理は、前記X線源から出て前記測定対象物へ入射するX線を当該測定対象物の一定位置に入射させるための処理とすることができる。
【0023】
このような処理は、例えば、前記X線源の前記測定対象物に対する向きを制御することや、入射光学系を構成する複数のX線光学要素の少なくとも1つの位置を制御することにより前記X線源から出たX線の進行方向を制御すること、等によって達成できる。
【0024】
X線源の向きを制御したり、X線光学要素の位置を制御したりするための装置は、例えば、X線源を機械的又は電気的に移動させる装置、例えばアクチュエータや、X線源から出たX線の進行方向を電界によって変化させる装置等を用いることができる。また、アクチュエータ等の動作を制御する装置は、例えば、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)とプログラムソフトとの組合せによって構成できる。
【0025】
本発明に係るX線測定装置において、前記X線検出手段を用いて得られる測定値を補正するための前記処理は、当該X線検出手段によって得られたデータをプログラムソフトによる演算によって加工する処理とすることができる。このような処理を行うための装置は、例えば、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)とプログラムソフトとの組合せによって構成できる。
【0026】
本発明に係るX線測定装置において、前記X線検出手段は、1次元X線検出器、2次元X線検出器、ピクセル検出器のいずれかとすることができる。1次元X線検出器は、直線上でのX線強度の位置分解能を有しているX線検出器である。1次元X線検出器は、例えば、X線を検出できる微小なX線受光素子を複数個、直線状に並べることによって形成できる。
【0027】
2次元X線検出器は、平面内でのX線強度の位置分解能を有しているX線検出器である。2次元X線検出手段は、例えば、複数の微小なX線受光素子を平面内に並べて成る半導体X線検出器によって形成できる。2次元X線検出手段は、画素ごとにX線を検出でき、画素ごとに信号を出力できる構成の検出器によって形成できる。2次元X線検出手段は、例えば、複数の半導体X線受光素子を平面状に並べて成る半導体イメージセンサを用いて構成できる。このような半導体X線受光素子としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を適用できる。
【0028】
また、2次元X線検出手段は、フォトン・カウンティング型ピクセル2次元X線検出器、すなわちパルス計数型ピクセルアレイ2次元検出器によって構成することもできる。フォトン・カウンティング型ピクセル2次元X線検出器は、X線によって励起されるフォトンを直接に電気信号に変換して出力するピクセル(画素)を複数個、2次元的に配列して成るX線検出器である。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るX線測定装置によれば、ハウジングの振動やハウジングを持つ手の手振れを検知し、その検知結果に基づいて測定値を補正するので、持ち運びが可能なために測定に際して手振れ、振動等の影響を受け易いX線測定装置でありながら、正確で安定した信頼性の高い測定データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係るX線測定装置の一実施形態の側面断面図である。
図2図1のX線測定装置の主要部である制御部の具体例を示すブロック図である。
図3図2の制御部によって実行される制御の流れの一部を示すフローチャートである。
図4図2の制御部によって実行される制御の内容の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るX線測定装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0032】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係るX線測定装置の一実施形態を示している。このX線測定装置1は、本実施形態では、測定対象物2に欠陥があるか否かをX線を用いて非破壊で検査するものである。また、本実施形態のX線測定装置は、いわゆるハンドヘルドタイプのX線測定装置である。なお、本発明がハンドヘルドタイプ以外の可搬型のX線測定装置に適用できることは明らかである。
【0033】
X線測定装置1は、X線を透過させない材料によって形成されたハウジング、すなわち容器3を有している。X線を透過させない材料は、例えば、鉄、タングステン及びモリブデンの少なくとも1つを含有する材料である。容器3の外周面の一部にはハンドル4が固定されている。ハンドル4は、ハウジング3の外側方向(すなわち、図の横方向)へ延びる円柱、角柱等といった柱形状に形成されている。ハンドル4は、人である測定者が片手又は両手で握ることができる大きさになっている。また、望ましくは、ハンドル4の表面を滑り難くするための表面処理が当該ハンドル4に施されている。
【0034】
ハウジング3の大きさは、長さL0が例えば100mm〜300mm、長さL0に直交する方向(すなわち、図の紙面を貫通する方向)の長さである幅が例えば100mm〜250mm、そして高さH0が例えば75mm〜200mmに設定されている。
【0035】
ハウジング3の内部には、X線発生装置であるX線管7と、X線検出手段である2次元X線検出器8とが設けられている。X線管7の内部には、例えば陰極であるフィラメント(図示せず)と、対陰極であるターゲット(図示せず)とが設けられている。フィラメントは通電によって発熱して熱電子を放出する。放出された熱電子がターゲットに衝突する領域がX線焦点Fであり、このX線焦点FからX線が発生する。こうして発生したX線は、矢印R1で模式的に示すように、X線管7の外部へ放出される。
【0036】
X線管7から放出されて測定対象物2へ照射されるX線は、測定の種類に応じて連続X線又は単色X線とされる。単色X線を用いる場合は、X線光路上にモノクロメータやフィルタ等が設けられる。本実施形態のX線測定装置1は、集中法に基づいた測定を行う装置であっても良いし、平行ビーム法に基づいた測定を行う装置であっても良いし、蛍光X線測定装置であっても良い。
【0037】
集中法に基づく場合は、X線源Fで発生して発散するX線を測定対象物2へ入射させ、測定対象物2で回折したX線をX線検出器8の受光面上の1点に集束させる。平行ビーム法に基づく場合は、発散するX線ビームを平行化するX線光学要素(例えば、コリメータ、ソーラスリット)を入射側及び/又は受光側に配置する。蛍光X線測定の場合は、X線を波長別に選択して取り出すための分光結晶を受光側に配置する。
【0038】
ハウジング3の底面には、X線管7から放出されたX線をハウジング3の外部へ放出するための開口9が設けられている。開口9は、矢印A方向から見て、円形、矩形、又はそれらに近い形状である。測定に際しては開口9が測定対象物2に対面するようにハウジング3が測定対象物2に対して配置される。こうして、開口9を通過したX線が測定対象物2の表面へ照射される。
【0039】
2次元X線検出器8は、本実施形態では、複数の微小なX線受光素子を平面内に並べて成る半導体X線検出器によって形成されている。この2次元X線検出器8は、画素ごとにX線を検出でき、画素ごとに信号を出力できる構成の検出器である。この2次元X線検出器8は、例えば、複数の半導体X線受光素子を平面状に並べて成る半導体イメージセンサを用いて構成できる。このような半導体X線受光素子としては、例えば、CCD、CMOSを適用できる。
【0040】
また、2次元X線検出器8は、フォトン・カウンティング型ピクセル2次元X線検出器、すなわちパルス計数型ピクセルアレイ2次元検出器によって構成することもできる。フォトン・カウンティング型ピクセル2次元X線検出器は、X線によって励起されるフォトンを直接に電気信号に変換して出力するピクセル(画素)を複数個、2次元的に配列して成るX線検出器である。
【0041】
また、2次元X線検出器8に代えて、1次元X線検出器を用いることもできる。1次元X線検出器は、例えば、複数の半導体X線受光素子を直線状に並べて成る半導体イメージセンサを用いて構成できる。このような半導体X線受光素子としては、例えば、CCD、CMOSを適用できる。
【0042】
図1において、ハウジング3の内部に、振動量検知センサ12と、制御部13とが設けられている。振動量検知センサ12は、レーザ光を用いて距離を検知する距離センサと、速度の変動を検知する速度センサと、加速度を検知する加速度センサと、角速度を検知する角速度センサとしてのジャイロセンサの各センサを有している。なお、必要に応じて、それらの各センサのうちの適宜の1つ、2つ又は3つを組合せて用いることができる。
【0043】
X線管7にアクチュエータ10Aが連結されている。アクチュエータ10Aは次の動作を行うことができる。
(1)X線管7を位置調整のためにX線照射点Bを中心として矢印Cで示すように回転揺動させることができる。これにより、これにより、X線管7から出射するX線の向きを変えることができる。
(2)X線管7をハウジング3に対して横方向(Xs)、前後方向(Ys)及び高さ方向(Zs)のそれぞれの方向へ位置調整のために平行移動させることができる。
【0044】
上記の(1)及び/又は(2)の動作により、X線源Fから出て測定対象物2へ入射するX線の入射位置を調整することができる。このX線入射位置の調整により、例えば、ハウジング3を持つ手に手振れが発生した場合でも、測定対象物2へ入射するX線の位置を一定位置に維持することができる。
【0045】
X線検出器8にアクチュエータ10Bが連結されている。アクチュエータ10Bは次の動作を行うことができる。
(1)X線検出器8を位置調整のためにX線照射点Bを中心として矢印Dで示すように回転揺動させることができる。
(2)X線検出器8を位置調整のためにX線照射点Bに近づき又は遠ざかる方向(矢印E方向)へ平行移動させることができる。
(3)X線検出器8を位置調整のために、測定対象物2から出るX線R2の中心線に対して直角方向(図のG方向及びそれに直角の方向)へ平行移動させることができる。
【0046】
アクチュエータ10A及び10Bは、任意の回転揺動機構と任意の平行移動機構との組合せによって構成することができる。
【0047】
制御部13は、例えば図2に示すように、演算制御部であるCPU(Central Processing Unit)14と、記憶媒体としてのメモリ15と、通信部16とを有している。通信部16は外部の通信機器18とデータ通信を行う。CPU14、メモリ15及び通信部16の各機器は、データ伝送路であるバス17によって結ばれている。本実施形態では、外部の通信機器18としてパーソナルコンピュータが用いられている。図1の距離センサ12は、図2において入出力インターフェース19を介してCPU14に接続されている。
【0048】
メモリ15は、ハードディスク等といった機械式メモリや、半導体メモリや、その他の任意の記憶媒体によって構成されている。メモリ15の記憶領域内には、図1に示した各種の機器を用いてX線測定の作用を実現するためのプログラムであるX線測定プログラム22がインストールされている。また、メモリ15の記憶領域内には、測定結果のデータを記憶する領域である測定データファイル23が設定されている。
【0049】
図1において、ハウジング3の外部に電源24が設置されている。ハウジング3の内部に設けられた各種の電気使用機器に対してケーブル25を通して電源24から電力を供給することができる。電源24はハウジング3の内部に設置しても良い。
【0050】
本実施形態のX線測定装置1を用いて測定対象物2に対してX線測定を行う際には、まず、測定者がハンドル4を手で持って、X線測定装置1の全体を測定対象物2まで持ち運び、ハウジング3の開口9を測定対象物2の所望の測定点へ載せる。次に、起動スイッチ(図示せず)をONにすると、図2のX線測定プログラム22が起動して、以下に説明する機能を実現する。
【0051】
すなわち、図1において、まず、X線管7からX線R1が放出される。X線R1の測定対象物2に対する入射角θiが、測定対象物2の結晶格子面に対して所定の回折条件を満たす角度に一致すれば、測定対象物2から回折X線R2が発生する。このときの回折X線R2の回折角2θは入射角θiの2倍の角度である。回折角2θで回折した回折X線R2は、測定対象物2に対して見込み角θdで配置された2次元X線検出器8の受光面によって読み取られる。X線検出器8による回折線の読取りは、所定のサンプリング時間(例えば数マイクロ秒(μs))ごとに行われる。X線検出器8の見込み角θdはX線入射角θiに等しい角度である。
【0052】
2次元X線検出器8の受光面は所定の面積を持った平面であり、その平面内の位置は(x,y)座標によって特定できる。従って、X線検出器8の受光面内のどのピクセル(画素)がX線を受光したかは、(x,y)座標によって特定できる。X線検出器8は測定したX線強度を電気信号の形で制御部13へ伝送する。制御部13は送られてきたX線強度データに基づいて2次元的な図形である回折図形のデータを作成する。この回折図形を図2のコンピュータ18のディスプレイ上に画像として表示し、これを測定者が観察すれば、測定対象物2に欠陥があるか否かを即座に判定できる。
【0053】
図2のメモリ15内のX線測定プログラム22は以上のようなX線測定作業を実現するのであるが、その実現プロセスの中には、図3に示すようなX線強度の取得プロセスが含まれている。以下、このプロセスについて説明する。
【0054】
まず、ステップS1において、図2のCPU14は数マイクロ秒(μs)のサンプリング時間に同期して、すなわちX線測定に対してリアルタイムで、図1のセンサ12を用いてハウジング3の測定対象物2に対する位置の変動量δ(t)を検知する。(t)は、サンプリング時間ごとに変動量が求められることを示している。
【0055】
変動量δ(t)には、振動量検知センサ12と測定対象物2との間の距離(D0)に関する変動量と、振動量検知センサ12と測定対象物2とを結ぶ線に対して直交する面内での変動量と、振動量検知センサ12の測定対象物2に対する傾きに関する変動量と、の各変動量が含まれる。
【0056】
次に、CPU14は、取得した変動量δ(t)に基づいて、ステップS2において、変動量δ(t)を補償するための各種の測定条件値を演算によって求める。具体的には、X線入射角θi、面内回転角φi、X線管7に関する平行移動量Xs,Ys,Zs、X線検出器8の測定対象物2に対する見込み角度θd、及びX線検出器8の測定対象物2に対する距離Rdの各値を変動量δ(t)を考慮して演算によって求める。
【0057】
例えば、CPU14は、図4に示すように、No.1〜4の4回のサンプリング時間に対してθi、φi、Xs,Ys,Zs、θd及びRdの各値を変動量δ(t)に基づいて演算によって求める。次に、CPU14は、求められた各条件値に基づいて図1のアクチュエータ10A及びアクチュエータ10Bを作動して、θi、φi、Xs,Ys,Zs、θd及びRdの各値を演算結果に一致させる(ステップS3)。これにより、X線検出器8によって求められる測定値が補償される。
【0058】
次に、CPU14は、No.1〜4の規定のサンプリング時間ごとにX線測定を行う(ステップS4)。具体的には、図1のX線管7からX線を放射して測定対象物2のX線照射点Bへ照射する。測定対象物2から回折X線が発生すると、その回折X線はX線検出器8によって検出される。例えば図4の個々のサンプリング時間において「単ショット」の欄で示される(a)〜(d)のような回折X線が検出される。検出された各回折X線のデータは、振動や手振れ等に起因したX線測定装置1の位置変動量を補償した後のデータであるので、正確で信頼性の高いデータである。
【0059】
CPU14は、測定された単ショットのデータを積算し(ステップS6)、その積算値が所定の値になったときに測定を終了する(ステップS6、S7、S8)。図4に示す測定の場合、測定No.2における条件値のうちZs=10は、本実施形態においては補償手段であるアクチュエータ10Aによる補償ができない程に大きな変動になっている。従って、この測定値は破棄して、積算に含めないことにする(ステップS9)。
【0060】
本実施形態に係るX線測定装置においては、ステップS1において振動量検知センサ12によって検知されたハウジング3の変動量に基づいて、ステップS3においてX線管7及び2次元X線検出器8の位置を補正することにしたので、本実施形態に係るX線測定装置は、持ち運びが可能なために測定に際して手振れ、振動等の影響を受け易いX線測定装置でありながら、正確で安定した信頼性の高い測定データを得ることができるようになった。
【0061】
(第2の実施形態)
上記の第1の実施形態では、振動量検知センサ12を、距離センサと、速度センサと、加速度センサと、ジャイロセンサとの各センサによって構成した。また、X線管7を位置調整のために、回転揺動可能(図1のC方向)及び平行移動可能(Xs,Ys,Zs)に設けた。さらに、2次元X線検出器8を位置調整のために、回転揺動可能(図1のD方向)、測定対象物2に対して平行移動可能(図1のE方向)、及びX線R2の中心線に対して直角方向(図1のG方向及びそれに直角の方向)へ平行移動可能に設けた。
【0062】
第2の実施形態に係るX線測定装置においては、X線入射角θiが一定値となるようにX線管7をハウジング3に固定し、X線検出器の見込み角θdが一定値になるように2次元X線検出器8をハウジング3に固定する。このため、図1に示したアクチュエータ10A及びアクチュエータ10Bは、本実施形態では使用しない。
【0063】
さらに、本実施形態では、振動量検知センサ12は、レーザ光を用いた距離センサだけによって構成する。従って、センサ12によって検知される変動量は、ハウジング3の測定対象物2に対する距離の変動量だけである。
【0064】
制御部13は、X線管7及びX線検出器8を機械的に移動させることによってハウジング3の変動量を補償するのではなく、図2のメモリ15内にインストールされた所定のアプリケーションソフトによって実現される機能に従って、2次元X線検出器8によって得られた測定データを演算によって数値的に補償する。具体的には、ハウジング3の変動量をX線検出器8のX線受光面の平面座標内の直交2成分に分割し、測定によって得た回折線データにおける位置情報をそれらの変動量成分によって補償する。
【0065】
この第2の実施形態においても、振動量検知センサ12によって検知されたハウジング3の変動量に基づいて2次元X線検出器8の測定情報を補償することにしたので、本実施形態に係るX線測定装置は、持ち運びが可能なために測定に際して手振れ、振動等の影響を受け易いX線測定装置でありながら、正確で安定した信頼性の高い測定データを得ることができるようになった。
【0066】
(変形例)
上記第2の実施形態では、X線管7をハウジング3に固定し、2次元X線検出器8をハウジング3に固定した上で、2次元X線検出器8によって得られた測定データをアプリケーションソフトによって実現される機能に従って演算によって数値的に補償するようにした。このような構成とは別に、X線管7をアクチュエータ10Aによって位置調整できるようにし、2次元X線検出器8をアクチュエータ10Bによって位置調整できるようにした上で、2次元X線検出器8によって得られた測定データをアプリケーションソフトによって実現される機能に従って演算によって数値的に補償するように構成することもできる。
【0067】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0068】
例えば、上記の第1の実施形態では、図1において、振動量検知センサ12を、距離センサと、速度センサと、加速度センサと、ジャイロセンサとの各センサによって構成した。また、X線管7を位置調整のために、回転揺動可能(図1のC方向)及び平行移動可能(Xs,Ys,Zs)に設けた。さらに、2次元X線検出器8を位置調整のために、回転揺動可能(図1のD方向)、測定対象物2に対して平行移動可能(図1のE方向)、及びX線R2に対して直角方向(G方向及びそれと直角方向)に平行移動可能に設けた。
【0069】
これに対し、振動量検知センサ12は、距離センサと、速度センサと、加速度センサと、ジャイロセンサとの全てを含んで構成する場合に限られず、距離センサ、速度センサ、加速度センサ及びジャイロセンサのいずれか1つ、それらの2つ、又はそれらの3つの組合せとすることができる。また、距離センサ、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ以外の任意のセンサを用いることもできる。
【0070】
さらに、本発明は、X線管7及び2次元X線検出器8の両方を位置調整のために移動させる場合に限られず、どちらか一方を位置調整のために選択的に移動させる構成とすることもできる。
【0071】
以上に説明した実施形態では、X線管7をアクチュエータ10Aによって機械的に移動させることにより、入射X線R1の進行方向を調整した。これに対し、X線管7の内部又は外部に電極を設け、この電極によって形成される電界の作用によって入射X線R1の進行方向を調整することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1.X線測定装置、 2.測定対象物、 3.ハウジング(容器)、 4.ハンドル、 7.X線管(X線発生装置)、 8.2次元X線検出器(X線検出手段) 9.開口、 10A,10B.アクチュエータ、 12.振動量検知センサ、 13.制御部、 14.CPU、 15.メモリ、 16.通信部、 17.バス、 18.コンピュータ(外部の通信機器)、 19.入出力インターフェース、 25.ケーブル、 B.X線照射点、 C,D.回転揺動方向、 E.平行移動方向、 F.X線焦点(X線源)、 L0.長さ、 H0.高さ、 R1.入射X線、 R2.回折X線、 X0.高さ方向中心線、 θi.入射角、 θd.X線検出器の見込み角、 2θ:回折角、 φi.面内角
図1
図2
図3
図4