(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5963335
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】エレベータ用速度検出装置およびエレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 5/04 20060101AFI20160721BHJP
B66B 5/22 20060101ALI20160721BHJP
B66B 7/04 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
B66B5/04 E
B66B5/22 Z
B66B7/04 D
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-129911(P2015-129911)
(22)【出願日】2015年6月29日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門並 秀樹
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−140361(JP,A)
【文献】
特開2010−275078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/28
B66B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方および他方のレール側面を有するガイドレールと、
このガイドレールの前記レール側面により案内されるかごと、
このかごに前記ガイドレールを等間隔で挟んで保持された水平回転軸の周りにそれぞれ前記一方および他方のレール側面上を回転する第1および第2のロータリーエンコーダと、
これらのロータリーエンコーダからの出力のうちの何れか大きい回転速度値を持つ出力を選択し、前記回転速度値が予め決められた設定値を超えると停止指令を出力するコントローラと、
このコントローラからの前記停止指令により前記ガイドレールへの摩擦制動力によって前記かごを非常停止させる非常止め装置と、
を備えたことを特徴とするエレベータ用速度検出装置。
【請求項2】
前記第1のロータリーエンコーダおよび前記第2のロータリーエンコーダのうちの一方の外周部には前記水平回転軸間の距離方向への変位によって前記レール側面への押し付け力が生じ、
前記コントローラは、前記第1のロータリーエンコーダおよび前記第2のロータリーエンコーダのうちの前記押し付け力を受けた方の前記回転速度値を選択することを特徴とする請求項1記載のエレベータ用速度検出装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1のロータリーエンコーダからの前記一方のレール側面での回転速度値を含む出力信号および前記第2のロータリーエンコーダからの前記他方のレール側面での回転速度値を含む出力信号のうちの回転速度値が大きい方を選択することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエレベータ用速度検出装置。
【請求項4】
前記第1のロータリーエンコーダおよび前記第2のロータリーエンコーダは、
前記かごに対して可動な筐体と、
この筐体に互いに平行に軸支され軸間距離が固定された前記水平回転軸と、
前記水平回転軸周りで同径の外周部と、
前記水平回転軸周りの回転速度情報を出力する信号発生器とを備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベータ用速度検出装置。
【請求項5】
前記外周部は、前記軸間距離から、前記一方および他方のレール側面間の面間距離を減算した残りの寸法の半分の値の直径を有することを特徴とする請求項4記載のエレベータ用速度検出装置。
【請求項6】
前記非常止め装置は、
前記一方および他方のレール側面のうちの何れかのレール側面側の制動面および上方から下方に向かって前記レール側面から離れる方向に傾斜して形成された傾斜面を有する楔と、
前記楔の前記傾斜面に前記傾斜面から前記レール側面への力を作用させる押圧面を有する楔受けと、
前記楔に連結されたリフトと、
このリフトを通常時の前記下方位置から前記停止指令によって前記上方位置へ移動させる引上げ機構と、を備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベータ用速度検出装置。
【請求項7】
かご枠に設けられたベースと、
このベースに設けられ前記ベースに前記ガイドレールを等間隔で挟んで保持された水平回転軸の周りにそれぞれ前記一方および他方のレール側面上を回転する第1および第2のガイドローラと、を更に備え、
これらのロータリーエンコーダは前記第1および第2のガイドローラとともに回転することを特徴とする請求項1記載のエレベータ用速度検出装置。
【請求項8】
一方および他方のレール側面を有するガイドレールと、
このガイドレールの前記レール側面により案内されるかごと、
このかごおよび釣合い錘を主索によって昇降駆動する巻上機と、
前記かごに前記ガイドレールを等間隔で挟んで保持された水平回転軸の周りにそれぞれ前記一方および他方のレール側面上を回転する第1および第2のロータリーエンコーダと、
これらのロータリーエンコーダからの出力のうちの何れか大きい回転速度値を持つ出力を選択し、前記回転速度値が予め決められた設定値を超えると停止指令を出力する前記かごに設けられたコントローラと、
このコントローラからの前記停止指令により前記ガイドレールへの摩擦制動力によって前記かごを非常停止させる前記かごに設けられた非常止め装置と、
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項9】
前記第1のロータリーエンコーダおよび前記第2のロータリーエンコーダのうちの一方の外周部には前記水平回転軸間の距離方向への変位によって前記レール側面への押し付け力が生じ、
前記コントローラは、前記第1のロータリーエンコーダおよび前記第2のロータリーエンコーダのうちの前記押し付け力を受けた方の前記回転速度値を選択することを特徴とする請求項8記載のエレベータ。
【請求項10】
前記コントローラは、前記第1のロータリーエンコーダからの前記一方のレール側面での回転速度値を含む出力信号および前記第2のロータリーエンコーダからの前記他方のレール側面での回転速度値を含む出力信号のうちの回転速度値が大きい方を選択することを特徴とする請求項8又は請求項9記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータ用速度検出装置およびそれを用いたエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータではかごに連結されたガバナロープがガバナ(調速機)に巻掛けられており、かごの下降速度が予め設定した速度を超えると、ガバナがガバナロープを拘束し、かごに設けられた非常止め装置によってかごを非常停止させている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
近年、建物の高層化により長い昇降行程を持つエレベータの設置が増加し、その増加に伴って昇降路から長尺物を無くした構造のエレベータが期待されてきている。長尺物レスのエレベータの一つとして、ガバナロープを用いずにかごを制動させるロープレスの調速機(ロープレスガバナ)の導入が考えられている(例えば特許文献2参照)。非常止め装置を動作させるにはかご速度の異常を検知する必要があり、ガバナにロータリーエンコーダを設けガバナの回転に伴ってかご速度を演算する電子安全エレベータが知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−247997号公報
【特許文献2】特開2006−151610号公報
【特許文献3】特開2014−118290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ガバナを設けたエレベータでは、ガイドレールに沿って昇降するかごにはかご揺れ、振動、偏荷重が生じることがあり、かご揺れ等が生じた場合、ガバナロープの揺れにより、かごの下降速度を正しく検出することができない。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑み創案されたものであり、かご揺れ等が生じても、かごの速度を正しく検出することが可能なエレベータ用速度検出装置およびエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するため、本発明の一実施形態によれば、一方および他方のレール側面を有するガイドレールと、このガイドレールの前記レール側面により案内されるかごと、このかごに前記ガイドレールを等間隔で挟んで保持された水平回転軸の周りにそれぞれ前記一方および他方のレール側面上を回転する第1および第2のロータリーエンコーダと、これらのロータリーエンコーダからの出力のうちの何れか大きい回転速度値を持つ出力を選択し、前記回転速度値が予め決められた設定値を超えると停止指令を出力するコントローラと、このコントローラからの前記停止指令により前記ガイドレールへの摩擦制動力によって前記かごを非常停止させる非常止め装置と、を備えたことを特徴とするエレベータ用速度検出装置が提供される。
【0008】
また、本発明の別の一実施形態によれば、一方および他方のレール側面を有するガイドレールと、このガイドレールの前記レール側面により案内されるかごと、このかごおよび釣合い錘を主索によって昇降駆動する巻上機と、前記かごに前記ガイドレールを等間隔で挟んで保持された水平回転軸の周りにそれぞれ前記一方および他方のレール側面上を回転する第1および第2のロータリーエンコーダと、これらのロータリーエンコーダからの出力のうちの何れか大きい回転速度値を持つ出力を選択し、前記回転速度値が予め決められた設定値を超えると停止指令を出力する前記かごに設けられたコントローラと、このコントローラからの前記停止指令により前記ガイドレールへの摩擦制動力によって前記かごを非常停止させる前記かごに設けられた非常止め装置と、を備えたことを特徴とするエレベータが提供される。
【0009】
本発明によれば、かご揺れ等が生じても、かごの速度を正しく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエレベータの概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るエレベータの昇降路平面を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るロータリーエンコーダの単体例を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るエレベータ用速度検出装置の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るエレベータの非常止め装置の一例を示す正面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るエレベータの第1及び第2のロータリーエンコーダからの出力信号の信号波形例を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るエレベータに用いられるロータリーエンコーダの配置例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るエレベータ用速度検出装置およびエレベータについて、
図1乃至
図7を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るエレベータの概略構成図である。
図2は本実施形態に係るエレベータの昇降路平面を示す図である。これらの図中同じ符号は互いに同じ要素を表す。本実施形態に係るエレベータは、それぞれレール側面10(一方のレール側面)およびレール側面11(他方のレール側面)を有するガイドレール12、13と、ガイドレール12、13のレール側面10、11により案内されるかご14とを備えている。このエレベータは、かご14に一方のガイドレール12を等間隔で挟んで保持された水平回転軸の周りにそれぞれレール側面10、11上を回転するロータリーエンコーダ15(第1のロータリーエンコーダ)およびロータリーエンコーダ16(第2のロータリーエンコーダ)を備えている。
【0013】
更に本実施形態に係るエレベータは、これらのロータリーエンコーダ15、16からの出力のうちの何れか大きい回転速度値を持つ出力を選択し、回転速度値が予め決められた設定値を超えると停止指令を出力するかご14に設けられたコントローラ17と、このコントローラ17からの停止指令によりガイドレール12、13への摩擦制動力によってかご14を非常停止させる左右の非常止め装置18、19とを備えている。左右とはかご14の出入口からかご奥を見て昇降路左壁面及び昇降路右壁面側を指す。
【0014】
ガイドレール12、13は昇降路20に立設されている。ガイドレール12は、上下方向に沿うレール頂面27(
図2)を有し、このレール頂面27の側部にそれぞれ一方および他方のレール側面10、11を有する。ガイドレール12は、T字状の水平断面形状を有する。この水平断面内において、ガイドレール12は、レール側面10上のレール頂面27からレール底部に向かう途中部分がくびれを有する。くびれからレール頂面27までの部分の各面領域においてロータリーエンコーダ15、16は回転する。ガイドレール13の形状、構造はガイドレール12と実質同じである。
【0015】
かご14は主索21に連結されており、この主索21の他端には釣合い錘22が連結されている。主索21は巻上機23に巻き掛けられており、この巻上機23の巻上げ及び巻戻し駆動によって、かご14は釣合い錘22とともに昇降路20をつるべ式に昇降する。このかご14はかご枠24により囲まれており、かご床25(
図1)は、かご枠24の下梁26上に設けられている。下梁26の下方に非常止め装置18、19が設けられている。
【0016】
図3はロータリーエンコーダ15単体例を示す斜視図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。ロータリーエンコーダ15はかご14に対して可動なユニットケース40と、ユニットケース40に互いに平行に軸支され軸間距離Lが固定された2本の水平回転軸(同図では片方のみが表示されている)と、これらの水平回転軸周りの外周部41と、水平回転軸周りの回転速度情報を出力する信号発生器42とを備えている。ロータリーエンコーダ15は外周部41内にセンサを設け、このセンサの回転径方向の位置と、センサが検出した回転角度又は回転数とを乗じて得た回転角速度を出力するようになっている。ロータリーエンコーダ16もロータリーエンコーダ15の形状、構造と同じであり、ロータリーエンコーダ15の外周部41と同径の外周部41を有する。
【0017】
図4は本発明の第1実施形態に係るエレベータ用速度検出装置の構成例を示す図である。同図には
図1中の同じ昇降路高さを持つ位置AA´を通る水平面によるエレベータ用速度検出装置の水平断面構造が示されている。ユニットケース40はかご14の下梁26に水平に変位可能に設けられている。軸間距離Lは、外周部41の半径、及びレール側面10、11間の面間距離Dにより一定値に決められる。具体的には、外周部41は、軸間距離Lから、レール側面10、11間の面間距離Dを減算した残りの寸法の1/2の値の直径を有する。外周部41は耐摩耗性を有する材質を有する。外周部41は何れの回転方向についても回転の抵抗力を受けずに回転自在にかご14に保持されている。信号発生器42は例えば回転速度値を出力する。ロータリーエンコーダ15の外周部41には水平回転軸間の距離方向への変位によってレール側面10への押し付け力が生じ、コントローラ17はこの押し付け力を受けた方のロータリーエンコーダ15の回転速度値を選択する。押し付け力は、かご揺れ、振動あるいは偏荷重により生じる。
【0018】
コントローラ17は、ロータリーエンコーダ15からのレール側面10での回転速度値を含む出力信号およびロータリーエンコーダ16からのレール側面11での回転速度値を含む出力信号のうちの回転速度値が大きい方を選択する。コントローラ17の機能は、CPU、ROM、RAM等のソフトウェアにより実行される。
【0019】
図5は非常止め装置18の一例を示す正面図である。同図には
図1でAからA´への方向を見たときの例が示されている。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。非常止め装置18は、レール側面10側の制動面28および上方から下方に向かってこのレール側面10から離れる方向に傾斜して形成された傾斜面29をそれぞれ有する楔30と、この楔30と同じ形状を有するレール側面11側の楔31とを備えている。更に非常止め装置18は、楔30、31の各傾斜面29にこれらの傾斜面29からレール側面10、11への力を作用させる押圧面32をそれぞれ有する楔受け33、34と、それぞれ楔30、31に連結されたリフト36、37と、これらのリフト36、37を通常時の下方位置からコントローラ17からの停止指令によって上方位置へ移動させる引上げ機構38とを備えている。
【0020】
楔受け33、34はそれぞれレール頂面27に向かって楔30、31を付勢している。引上げ機構38は下梁26に設けられてもよい。この引上げ機構38は例えばリフト36、37にそれぞれ一端が連結された複数のワイヤと、ワイヤの各他端に連結された電動アクチュエータと、電動アクチュエータの駆動回路とを有する。ガイドレール13側の非常止め装置19も非常止め装置18の構造例と実質同じ構造を有する。
【0021】
次に上述の構成を有する本実施形態に係るエレベータ(
図1〜
図5)の動作について説明する。
【0022】
エレベータ据え付け時あるいは点検時においては、最初に2つのロータリーエンコーダ15、16を配置したユニットケース40を作業員がかご14に取り付ける。2つのロータリーエンコーダ15、16が互いにガイドレール12を挟み込むようにして配置される。また、ユニットケース40内の2つのロータリーエンコーダ15、16間の距離は固定とし、作業員の計測により2つの回転軸間が距離Lを隔てた状態でこれらのロータリーエンコーダ15、16が配置される。ユニットケース40自体は左右方向で可動にされる。
【0023】
図6はロータリーエンコーダ15、16からの各出力信号の信号波形例を示す図である。実線で表された波形Aは第1のロータリーエンコーダ15の検出信号である。破線で表された波形Bは第2のロータリーエンコーダ16の検出信号である。横軸は昇降路20での高さ位置を表す。縦軸は検出された回転速度値(検出速度)を表す。
【0024】
走行開始時、ロータリーエンコーダ15、16は同じ信号波形を出力する(
図6のI参照)。エレベータ制御部39は、かご位置及び各階からのかご呼びに応じて目的階を決定し、かご14を出発階から目的階へ決められた速度パターンで走行させる。かご14の速度パターンは、走行開始から一定の加速度で加速し、定格速度に達して暫くこの定格速度を保ち、その後、一定の減速度で速度を下げながら行先階において停止するという変化を有する。ロータリーエンコーダ15は上方(
図3)から見て右側において外周部41がガイドレール12と接触してレール側面10上を従動回転する。ロータリーエンコーダ16は左側において外周部41がレール側面11上を接触して従動回転する。
【0025】
乗客の乗り降り又は乗車人数の増加によって、かご14にはかご揺れ及び振動が生じる。かご床25上の乗客の位置の偏りによってかご14には偏荷重が生じる。かご14のかご揺れ、振動あるいは偏荷重によって、ロータリーエンコーダ15、16は水平軸間距離の方向に変位する。水平回転軸間が距離Lにされているため、変位によりレール側面10、11の何れかに押し付け力が生じる。ロータリーエンコーダ15の右側又は左側(
図3)への変位によって、ロータリーエンコーダ16も右側又は左側へ変位する。かご揺れ等によって、例えばロータリーエンコーダ15、16が左側(
図3)へ変位すると、ロータリーエンコーダ15はレール側面10から離れる。レール側面10によるロータリーエンコーダ15の従動回転が途切れると、波形Aの値が落ち込む。ロータリーエンコーダ16は一定値の波形Bを出力し続ける(
図6のII参照)。コントローラ17は波形A、Bのうちの回転速度値が大きい波形Bを選択する。つまりコントローラ17はロータリーエンコーダ15、16のうち押し付け力を受けた方の波形Bを選択する。
【0026】
引き続きかご揺れ等がなくなって、ロータリーエンコーダ15、16の水平変位量が均等位置に復帰すると、ロータリーエンコーダ15はレール側面10に接触し従動回転を再開する。波形Aの値は再度立上り、ロータリーエンコーダ15、16は同じ値の波形A、Bを出力し続ける(
図6のIII参照)。
【0027】
また、かご揺れ等によって、ロータリーエンコーダ15、16が右側(
図3)へ変位すると、ロータリーエンコーダ16はレール側面11から離れ、波形Bの値が落ち込む。他方ロータリーエンコーダ15は波形Aを出力する(
図6のIV参照)。コントローラ17はガイドレール12により押し付け力を受けた方の波形Aを選択する。
【0028】
かご揺れ等の消滅により、ロータリーエンコーダ16はレール側面11上で従動回転を再開する。波形Aの値は再度立上り、ロータリーエンコーダ15、16は同じ値の波形A、Bを出力する(
図6のV参照)。その後、かご14の目的階への着床により波形A、Bの値はゼロになる。
【0029】
以上のようにコントローラ17は、2つのロータリーエンコーダ15、16の検出値のうち、高い方の値を正の検出値として使用し、かご14の速度情報を得ている。
【0030】
仮にロータリーエンコーダ15が1つだけしかかご14に取付けられていないとすると、レール側面10からロータリーエンコーダ15が離れる方向にかご揺れが生じた場合、ロータリーエンコーダ15には押し付け力不足が生じる。
図6のII又はIVの波形落ち込み例のように、ロータリーエンコーダ15による検知波形Aの値が下がる。ロータリーエンコーダ15の押し付け力の低下によって実際よりも低い値をコントローラ17が検出し、コントローラ17は正しいかご速度を検出できない。つまり、ロータリーエンコーダが一本のガイドレール12に対して一つだけしか設けられていないと、実際のかご速度よりも遅いかご速度が検出されるリスクが存在する。
【0031】
本実施形態に係るエレベータ用速度検出装置およびエレベータによれば、かご揺れが生じた場合でも、2つのロータリーエンコーダ15、16のうち、どちらか一方は必ずガイドレール12に押し付けられる状態となるため、出力された2つの回転速度値のうちの最大値を検出値として使用することにより、正しいかご速度を検出することができるようになる。ロータリーエンコーダ15、16の何れかのガイドレール12への押し付け力が過多になった場合でも、ロータリーエンコーダ15、16は従動回転時の回転速度値以上の値を出力することはない。実際のかご速度よりも高い値が検出されることは無い。本実施形態に係るエレベータ用速度検出装置およびエレベータでは、誤検知のリスク無しでロータリーエンコーダ15、16の値をモニタリングすることができる。
【0032】
また、コントローラ17はロータリーエンコーダ15、16の検出値のうちの値が高い方の検出値を予め決められたかご下降速度閾値と常時比較している。万が一、かご14の下降によって、何れか高い方の検出値が閾値を超えた場合、コントローラ17は非常止め装置18、19に停止指令を引上げ機構38に通知する。
図5のように非常止め装置18が引上げ機構38によりリフト36、37を上方へ引上げると、楔30、31は上方へ移動し、これらの楔30、31はガイドレール12を挟み込む。左方の制動面28、右方の制動面28がそれぞれレール側面11、10に押し当てられ、摩擦力が発生する。楔30、31は摩擦力により押し上げられ、一対の楔受け33、34とガイドレール12との隙間に圧入される。かご14は減速し安全に停止する。
【0033】
コントローラ17をエレベータ制御部39に設けずに、かご14に設けることによって、かご14の異常に対して即座に対応できる。万が一かご14とエレベータ制御部39との間でデータ授受が途切れたとしても異常に対応できる。
【0034】
このようにして、本実施形態に係るエレベータ用速度検出装置およびエレベータによれば、ガバナロープを用いない構成で、かご揺れ等が生じても、かご14の速度を正しく検出することができるようになる。ガバナ及びガバナロープを用いずにかご14を制動させるロープレスガバナ構成のエレベータにおいてかご14の速度を正しく検出できる。
【0035】
(第2の実施形態)
上記第1実施形態では、ロータリーエンコーダ15、16がユニットケース40を介してかご14に設けられていたが、ロータリーエンコーダ15、16の別の箇所に設けることが可能である。特に断らない限り本発明の第2実施形態に係るエレベータ用速度検出装置およびエレベータは、上記
図1〜
図6の構成や出力と同じ構成、出力を有する。
【0036】
図7は本発明の第2実施形態に係るエレベータに用いられるロータリーエンコーダの配置例を示す上面図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
【0037】
本実施形態に係るエレベータは、かご枠24に設けられたベース43と、このベース43に設けられベース43にガイドレール12を等間隔で挟んで保持された水平回転軸の周りにそれぞれレール側面11、10上を回転する第1および第2のガイドローラ45、46と、レール頂面27上を回転する第3のガイドローラ47とを備えている。これらのロータリーエンコーダ15、16はこれらのガイドローラ45、46とともに回転する。ガイドローラ47に、ロータリーエンコーダ15と同じ構造のロータリーエンコーダ48を設けてもよい。ガイドローラ45、46、47は何れもベース43上で図示しない軸受けによる水平回転軸を有し、水平回転軸周りに保持されている。ロータリーエンコーダ15、16、48には同図では図示しない信号発生器42が設けられ、信号発生器42からコントローラ17へ検出信号が送られるようになっている。エレベータは、ガイドレール13にもベース43,ガイドローラ45、46、47を備えている。
【0038】
このような構成の本実施形態に係るエレベータ用速度検出装置及びエレベータでは、かご揺れ、振動あるいは偏荷重の発生により、例えばガイドローラ45、46が同図で上側へ変位すると、ガイドローラ45はレール側面10から離れ、ロータリーエンコーダ15からの波形Aの値は落ち込む。ガイドローラ46は一定値の波形Bを出力し続ける。ガイドローラ45、46が同図で下側へ変位した場合の例も同様である。更にガイドローラ47からの出力は、ベース43がガイドレール12のレール頂面27から離れない限り、一定値を出力し続ける。コントローラ17は、同図中のロータリーエンコーダ15、16と追加のロータリーエンコーダ48からの出力のうちの最も大きい回転速度値を持つ出力を選択する。
【0039】
本実施形態に係るエレベータ用速度検出装置およびエレベータによれば、かご14に既設のガイドローラ45、46、47にロータリーエンコーダを追加し簡素な構成によってロープレスガバナ構成のエレベータにおいてかご14の速度を正しく検出できる。
【0040】
(変形例)
上記各実施形態において、ロータリーエンコーダ15、16はガイドレール12の代わりにガイドレール13に設けてもよい。あるいはロータリーエンコーダ15、16の対をガイドレール12、13の両方に設け、ガイドレール12のレール側面10、11及びガイドレール13のレール側面10、11の上でそれぞれ回転する4つの回転速度値の最大値をモニタしてもよい。
【0041】
各実施形態において、2つ又3つのロータリーエンコーダ15等のうちの何れか大きい回転速度値を出力したものを選択していたが、複数のロータリーエンコーダ15等が同じ回転速度値を出力した場合、異常動作が存在しないことを条件としてロータリーエンコーダ15の出力信号を選択するように初期設定をしておいてもよい。
【0042】
第2の実施形態では3つのロータリーエンコーダから一つの速度値を選択していたが、4つ以上のロータリーエンコーダを設けた場合、4つ以上のロータリーエンコーダからの回転速度値のうちの最も大きい回転速度値の信号を選択する。これらのロータリーエンコーダが同じ回転速度値を出力した場合、第1のロータリーエンコーダ等、何れか一つのロータリーエンコーダの出力信号を選択するように初期設定をしておいてもよい。
【0043】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
図1、
図2の昇降路配置は例示であり、エレベータを構成する要素の昇降路20内の配置は種々変形可能である。例えば昇降路平面形状、かご形状、ローピング等を変更して実施をしたに過ぎない実施品に対して本実施形態に係るエレベータの優位性は何ら損なわれるものではない。
【0044】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…レール側面(一方のレール側面)、11…レール側面(他方のレール側面)、12,13…ガイドレール、14…かご、15…ロータリーエンコーダ(第1のロータリーエンコーダ)、16…ロータリーエンコーダ(第2のロータリーエンコーダ)、17…コントローラ、18,19…非常止め装置、20…昇降路、21…主索、22…釣合い錘、23…巻上機、24…かご枠、25…かご床、26…下梁、27…レール頂面、28…制動面、29…傾斜面、30,31…楔、32…押圧面、33,34…楔受け、36,37…リフト、38…引上げ機構、39…エレベータ制御部、40…ユニットケース(筐体)、41…外周部、42…信号発生器、43…ベース、45…ガイドローラ(第1のガイドローラ)、46…ガイドローラ(第2のガイドローラ)、47…ガイドローラ(第3のガイドローラ)、48…ロータリーエンコーダ。
【要約】
【課題】かご揺れ等が生じても、かごの速度を正しく検出することが可能なエレベータ用速度検出装置およびエレベータを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態によれば、レール側面10、11を有するガイドレール12と、ガイドレール12のレール側面10、11により案内されるかご14と、かご14にガイドレール12を等間隔で挟んで保持された水平回転軸の周りにそれぞれレール側面10、11上を回転する第1および第2のロータリーエンコーダ15、16と、ロータリーエンコーダ15、16からの出力のうちの何れか大きい回転速度値を持つ出力を選択し、回転速度値が予め決められた設定値を超えると停止指令を出力するコントローラ17と、コントローラ17からの停止指令によりガイドレール12への摩擦制動力によってかご14を非常停止させる非常止め装置とを備えたエレベータ用速度検出装置が提供される。
【選択図】
図1