【実施例】
【0133】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を実証するために含まれる。当業者には、以下の実施例に開示される技術が本発明の実施において十分機能することが本発明者らによって発見された技術に相当し、したがって、その実施のための好ましい形態を構成すると考えられ得るということが理解されるはずである。しかし、当業者は、本発明の開示に照らして、開示されている特定の実施形態で多くの変化をおこなうことが可能であり、さらに本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似の結果が得られるということを理解すべきである。
【0134】
以下の実施例は、組み換え抗体分子の構造的に均一な集団を生じるように抗体を修飾する方法を提供する。
【0135】
(実施例1)
IGG2のC
H1およびヒンジ近接性のモデリング
IgG2抗体の三次元モデルを作製して、野性型抗体分子におけるジスルフィド結合の位置を研究した。このモデルでは、IgG2のC
H1のCys残基(Cys−131)とヒンジ残基Cys−219およびCys−220の密接な空間近接性、ならびに鎖間ジスルフィド結合軽鎖Cys残基(Cys−214)を図示した。IgG2抗体の三次元モデルは以下のように構築した。
【0136】
ヒトIgG2モノクローナル抗体の抗EGFrのC
H1アミノ酸配列(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第6,235,883号に記載される)を、IgG4抗体の公知のC
H1構造に対してモデリングした(pdbアクセッションコード1ad9;Banfield,M.J.およびBrady,R.L.(1997)Proteins 29:161〜171)。抗EGFrのC
H1配列とテンプレートとの間のアミノ酸配列同一性は、96%であって、全てのCys残基の位置および同一性は完全に保存されていた。得られたIgG2のC
H1モデルは、ヒンジ領域を含むヒトIgG1のC
H1構造上に重ね合わされた(pdbアクセッションコード1hzh;Saphire,E.O.,ら、(2001)Science 293:1155〜1159)。次いで、IgG2 C
H1モデルをC
H1ドメインのC末端のβ鎖の末端でIgG1構造に計算的に融合して、偽IgG2のC
H1およびヒンジを作製した。次いで、IgG1構造から残ったアミノ酸を、抗EGFr配列における対応する残基へ計算的に変異させて、最終のIgG2のC
H1およびヒンジの図示を作製した。IgG1またはIgG4由来のLCのCys残基の位置は、それぞれ1hzhおよび1ad9からとられた;1ad9の定常軽鎖ドメインが抗EGFrのドメインと同一であり、1hzhの定常軽鎖ドメインは、Cys−214から離れた単一の残基で抗EGFrとは異なるということが注目される。
図6に示される軽鎖Cys残基は、その方向が異なる。しかし、この残基での可撓性が、その残基がその軽鎖の最後のアミノ酸であるために予想される。三次元のモデリングは、MOE(Chemical Computing Group,Montreal,Quebec,Canada)を用いて行い、かつ
図6はPyMOL Molecular Graphics System(DeLano Scientific,San Carlos,CA)を用いて作製した。
【0137】
したがって、前述の抗体配列は、
図6に示されるようなIgG2抗体の三次元モデルを作製するために有用であった。このモデルでは、4つのシステインについて、位置(HC)131、(HC)219、(HC)220および(LC)214が、密接な空間近接性にある(
図6)。このことは、これらのシステイン残基が別のジスルフィド連結を生じ、これらのシステイン残基の修飾が、IgG2抗体の構造的アイソフォームを生じ得るという発見を支持する。
【0138】
(実施例2)
モノクローナル抗体である抗RANKLの変異
抗RANKLは、核因子κBリガンド受容体活性化因子(Receptor Activator of Nuclear Factor Kappa B Ligand)(RANK−L)に対するヒトモノクローナルIgG2抗体である。抗RANKLは、分子間ジスルフィド結合を通じて連結される2つのHCおよび2つのLCから構成される。各々のHCは、448個のアミノ酸を生じるようにコードされ、κサブタイプに属する各々のLCは、C末端でCys残基を有する215個のアミノ酸からなる。上記で考察されるとおり、溶液中のヒトIgG2抗体は、鎖間ジスルフィド架橋のなかに異質性を呈する。
【0139】
C
Lのなかのジスルフィド接続性を簡略にするために、抗RANKLの変異型であるC
H1ドメインおよびヒンジを作製した。この変異型では、両方の重鎖の第三のCys残基であるCys131を、セリン残基で置き換えて(
図7)C131S突然変異体を作製した。要するに、野性型抗RANKLをコードするDNAをWO03/002713(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるように得た。次いで、抗RANKLのC131S突然変異体を、部位指向性の変異誘発による周知の方法を用いて構築した。次いで、C131S突然変異体を、標準的な方法によってCHO細胞で発現した。次いで、その分泌された抗体を精製した。最終産物の濃度は3.8mg/mLであった。野性型抗体は、31.9mg/mLおよび61.2mg/mLで得た。野性型および変異型の抗RANKLタンパク質の両方とも10mMの酢酸ナトリウム、5%ソルビトール、pH5.2で処方した。
【0140】
図8は、主要IgG
2−抗RANKL抗体の構造的アイソフォームの野性型重鎖および軽鎖の予想されるジスルフィド接続性を示す。前の実施例の構造的分析では、LCはまた、ヒンジのCys残基を通じてHCに結合して別の構造的アイソフォームを形成することが可能であることが実証された。したがって、HCのCys131をC131S型のSer残基で置換する場合、LCのC末端Cys214は、HCのヒンジの他のCys残基(Cys219、220)のうちの1つとジスルフィド結合を形成し、それによって4鎖のジスルフィド結合抗体が維持されることが予想された。
【0141】
軽鎖は、もはやC131S突然変異体における位置131でジスルフィド結合を作製することができないので、抗RANKL(Cys131Ser)突然変異体は、多数の可能なアイソフォームで存在する野性型抗RANKLよりも均一なプロフィールを呈することが予想された(
図2を参照のこと)。以下の2つの実施例は、C131S突然変異体抗RANKL抗体の構造および活性の特徴を記載する。
【0142】
(実施例3)
抗RANKL突然変異体抗体の構造的特徴付け
抗RANKLのC131S変異型は、下に記載されるような種々の分析技術(SE−HPLC、CEX−HPLC、CE−SDS、SDS−PAGEおよびRP−HPLC)を用いて野性型抗RANKLと隣り合わせで特徴づけた。変異型のジスルフィド結合はまた、非還元性のペプチドマッピング技術で特徴づけた。
【0143】
抗RANKL抗体のSE−HPLC
SE−HPLCは、非変性条件下でタンパク質の分子サイズまたは流体力学的容積を決定するための信頼できる技術である。抗RANKLのSE−HPLC分析を行って、その純度を決定した。この方法は、2つのToso Hass TSK−GEL G3000SW
XLカラムを連続して、そして20mMのリン酸ナトリウム、250mMのNaCl、pH 7.0を移動相として利用して、凝集物および低分子量のクリップ型からモノマーの抗RANKLを識別した。この溶出プロフィールは、低濃度(3.8mg/mL)の抗RANKL Cys131Ser突然変異体に起因して280nmではなく215nmでモニターした。凝集物、Main Peakおよびクリップ型についての結果は、相対的な面積の割合として表した。
【0144】
抗RANKL(Cys131Ser)突然変異体のSE−HPLC分析からの結果を、抗RANKL野性型タンパク質の溶出プロフィール(実線)と重なったクロマトグラム(点線)として
図9に示す。
図9に示されるとおり、突然変異体の溶出プロフィールは、1つのメインのピークによって支配され、またマイナーな凝集体ピークを有する。この突然変異体の組み込み結果は、野性型抗RANKLで得られる結果と極めて匹敵する。抗RANKL(cys131Ser)突然変異体のメインのピークと野性型のピークとの間の溶出位置におけるわずかな相違にかかわらず、SE−HPLCの結果、その突然変異体がちょうど抗RANKL野性型と同様に2つのHCおよび2つのLCのポリペプチド鎖から構成されるという結論が全く支持される。メインのピークの溶出において観察される相違は、HCおよびLCポリペプチドの異なる化学量論を示唆するほど十分大きくはない。
【0145】
抗RANKLのCEX−HPLC分析
抗RANKLの荷電異質性は代表的には、CEX−HPLC分析を用いて評価される。抗RANKLの種々の表面荷電変異体は、pH7.5で弱い陽イオン荷電カラムに結合すること、続いて塩勾配を使用する溶出によって分離された。この方法は、抗RANKL結合およびNaCl含有勾配での溶出の間に215nmでプロフィールをモニタリングするとき、pH7.5で20mMのリン酸ナトリウムを用いて40℃でDionex ProPac WCX 10カラムを用いた。この流速は、0.6mL/分であって、注入量は180μgのタンパク質であった。この方法は、酸性の変異体をPre−Peaksとして、塩基性の変異体を特定のPost Shoulder、およびPost Peaksとして分離した。Pre−Peaks, Post ShoulderおよびPost Peaksについての結果、ならびにMain Peakは、面積の割合として表された。溶出の間の直線勾配は、1分あたり約1.25mMのNaClの流速で0〜79nMのNaClであった。
【0146】
追加のCEX−HPLC技術を抗RANKL(Cys131Ser)突然変異体の分析のために用いた。荷電の変異体を生じ得る一次配列の修飾に基づく抗体のIgG
2サブタイプを主に分離するのではなく、pH5の移動相を使用するこの方法は、
図8に記載されるIgG
2サブタイプの構造的アイソフォームを分離する。この手順は、Dionex ProPac WCX 10カラムおよび20mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH5を用いた。このタンパク質は、NaCl勾配で溶出され、215nmでモニターされた。溶出されたピークA、B、C、Dの特徴は、相対的な面積の割合として表現された。カラムの温度は、外界温度であって、流速は0.8mL/分であった。溶出の直線勾配は、1分あたり約1.1mMのNaClの増加で100〜175mMのNaClであった。
【0147】
抗RANKLおよび野性型のpH7.5でのCEX−HPLC分析は
図10に示される。抗RANKL(Cys131Ser)の溶出クロマトグラムは下側に示される野性型のクロマトグラムに比較して上側に示される。溶出位置は、野性型よりもわずかにはやく溶出する突然変異体と匹敵しており、これはわずかに多くの酸性の暴露面を示唆している。野性型についての約39分で遅く溶出するショルダーは、突然変異体のクロマトグラムには存在せず、これはいくらか広くただし対称的なピークを呈している。このショルダーは、抗RANKL野性型の特徴であって、構造的アイソフォームIgG
2−B2で富化されることが示された(抗RANKLについての4つの可能な構造の図解については
図2を参照のこと)。このIgG
2−B2の構造的アイソフォームは、HC Cys131がSer残基によって置換されるとき可能な構造ではない。したがって、CEX−HPLC pH7.5の方法によって抗RANKL(Cys131Ser)突然変異体を分析するとき、遅い溶出ショルダーは存在しないということは驚くべきことではない。
【0148】
次いで、野性型RANKLの構造的アイソフォームの部分的精製および富化のために用いられたCEX−HPLC分析(pH5)を使用して、抗RANKL突然変異体のプロフィールを評価した。下の
図11は、抗RANKL野性型のプロフィール(青)に比較した突然変異体について得られたプロフィール(赤)を示す。
【0149】
抗RANKLのCE−SDS分析
CE−SDSは最初、SDSでの処理後に非還元条件下で行い、70℃で加熱し、分子が変性された後にいずれの露出した遊離のチオール基もヨードアセトアミドで遮断する。抗RANKLをSDSでインキュベートした場合、そのタンパク質は全般的に負の電荷を呈し、陰極に向かって電場中を移動した。CE−SDSはSDS後の分子サイズ(流体力学的容積)に基づいて分離し、熱がそのタンパク質を変性した。この分析は、非還元条件および還元条件の両方を用いて行った。その分析は、UV/PDA検出を備えるAgilent HP
3Dキャピラリー電気泳動システムで行った。そのキャピラリーは、CE標準のベアー融合シリカキャピラリであって、CE−SDSサンプルおよび泳動緩衝液はBio−Radから供給された。
【0150】
抗RANKLは、Peak1AおよびPeak1Bとして特定された異質のスプリットの主要なピークとして非還元条件下で移動した。スプリットの主要なピークはIgG
2サブタイプのジスルフィド媒介アイソフォームの別の指標である。非還元条件下では、その結果は、相対的面積の割合のもとで、Pre Peaks、Main Peaks(Peak1A+Peak1B)およびPost Peaksとして表わされた。抗RANKLは、還元CE−SDSについては2−メルカプトエタノールで還元された。溶出プロフィールは、別個のLCおよびHCを示し、その結果は、LC、HCおよび非主要として、相対面積割合において報告される。
【0151】
これらの結果は
図12に示され、この図では、抗RANKL野性型について得られた結果に比較した変異の電気泳動図を提示している。
図12に示されるとおり、抗RANKL突然変異体の電気泳動図によって、対称的な主要なピークが示され、これは抗RANKL野性型について観察されるとおり予想されるIgG
2特徴的な徴候のスプリットを欠いていた。突然変異体についてのスプリットの主要ピークの欠失によって、ジスルフィド構造は2つの形態の間で異なることが示唆された。突然変異体の対称的なピークによって、1つまたは2〜3個の構造的アイソフォームしか存在しないことが示唆される。
【0152】
次に、CE−SDSを、SDSでの処置後還元条件下で行い、70℃の加熱およびDTTでHCおよびLCを遊離した。野性型に比較して得られた突然変異体の電気泳動図を
図13に示す。
【0153】
両方の構築物についてLCに対するHCの比は、2.1という値を呈し、これは、HCおよびLCポリペプチドについての平均質量値を用いる計算に基づいた2.1という理論値とよく匹敵した。この結果によって、この突然変異体は野性型とちょうど同じく、2つのHCおよび2つのLCポリペプチド鎖でアセンブルされたということが強調された。
【0154】
抗RANKLのSDS−PAGE分析
抗RANKL(Cys131Ser)を、非還元SDS−PAGEによって抗RANKL野性型と隣り合わせで分析して、SDSおよび熱変性後に抗RANKLおよび変異体のサイズ分布をモニターした。この方法は、完全にアセンブルされていない分子であってもよいし(1つまたは2つのLCのいずれかを欠く)、またはペプチド結合切断によって断片化されてもよい、共有結合したマルチマーまたは潜在的なフラグメントの検出に有用な非還元条件下でプレ・キャストした4〜20%のポリアクリルアミドゲルを用いた。遊離のLCおよびHCはまた、非還元条件下で検出され得る。抗RANKLは、非還元条件下で、116.25〜200kDaという分子量マーカーの位置で、約150kDaというみかけの分子量を有するインタクトな分子として移動した。低レベルの共有結合した二量体もこの方法によって検出された。
【0155】
ジスルフィド結合は、抗RANKLをそのサブユニットであるLCおよびHCに還元するために2−メルカプトエタノールまたはジチオスレイトール(DTT)のいずれかで破壊してもよい。抗RANKLは、還元剤としてDTTを使用することによって還元した。なぜならこの試薬を用いれば観察されるスメアおよびアーチファクトが最小限であったからである。抗RANKLのHCおよびLCは、それぞれ、ほぼ50kDaおよび26kDaというみかけの分子量で移動した。ペプチド結合切断によって産生されるフラグメントはまた、還元条件下でおよび非還元条件下で検出された。Bio−Safeクマシー染色を用いて、SDS−PAGEによって分けられた抗RANKLのペプチドバンドを可視化した。
【0156】
非還元性のSDS−PAGEの結果は
図14に示す。非還元のゲルの結果によって、この突然変異体構築物がわずかに高レベルのマイナーな改変、例えば、共有結合した凝集体(自然には二量体である可能性が高い)を呈したことが示される。なぜなら移動位置によって、200kDaの分子量標準より大きいサイズが示されたからである。この突然変異体は、たとえマイナー型のレベルが抗RANKL(Cys131Ser)突然変異体を示すサンプル中でわずかに高いとしても、野性型抗RANKLに比較して同様のアレイのマイナーな低分子型を提示した。
【0157】
還元性SDS−PAGE分析の結果は、
図15に示しており、抗RANKL突然変異体および野性型の匹敵するバンドパターンを示す。ゲル中のマイナーなバンドの強度は、2つの構築物の間でわずかに変化したが、その変動は、1つの構築物の異なる調製物から十分に予想される範囲内である。
【0158】
抗RANKLのRP−HPLC分析
RP−HPLCを用いてIgG
2サブクラスに固有の構造的アイソフォームを部分的に分離した。サンプルを、64℃で移動相A(0.1%のTFAが95/3.9/1.1(v/v/v)のH
2O/n−プロパノール/ACN中に含有される)中で平衡にしたZorbax 300 SB C
8 カラム(5μ,2.1×150mm)上に注入して、0.5mL/分の流速で溶出した。溶出の与えられた勾配は、移動相B(0.1%のTFAが10/70/20(v/v/v)のH
2O/n−プロパノール/ACN/の中に含有される)で25〜30%で23分にわたり、溶出されたタンパク質は215nmでモニターした。
図16は、野性型のクロマトグラムと比較した抗RANKL突然変異体のクロマトグラムを示す。示されるとおり、RP−HPLCによって、野性型構築物よりも数分遅く溶出された突然変異体の疎水性の増大した性質が実証された。構造的アイソフォームに相当し、かつ野性型に存在した、十分規定された4つのピーク1、2、3および4は、突然変異体のプロフィールには明らかに存在しなかった。
【0159】
抗RANKLのペプチドマッピング
HCにおけるCys131の除去は、ヒンジ領域に関するジスルフィド接続性を簡単にすることが期待された。ジスルフィド接続性を試験する最も直接的な方法は、非還元条件下でペプチドマッピングを行うことであった。エンドプロテイナーゼLys−Cを用いる非還元性のペプチドマッピングを、突然変異体および野性型抗RANKL構築物に適用した。抗RANKLのペプチドマッピングは、非還元条件について下に概説されるように行い、Cys残基を含んでいるペプチドの間のジスルフィド接続性を確立した。この確立された非還元性の消化はまた、下に概説されるようなTCEPでの処置によって還元して、配列を特定する目的のための還元マッピングを得た。
【0160】
Lys−C消化。 3μLのサンプルを30〜60mg/mLで7μLの8MのGuHCl、0.1MのNaOAc、20mMのNEM、pH5.0の緩衝液と混合し、これを37℃で3時間インキュベートし、続いて4Mの尿素、20mMのNH
2OH、0.1Mのリン酸ナトリウム、pH7.0の緩衝液中に30倍希釈した。エンドプロテイナーゼLys−Cを添加して、酵素対基質の比が1:10(w/w)まで添加し、その消化を37℃で一晩行った。非還元性ペプチドマッピング分析については、TFAをこのサンプル消化物に0.1%(v/v)の最終濃度まで添加して、反応をクエンチし、そのペプチドを液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(LC/ESI−MS/MS)によって直接分析した。還元されたペプチドマッピング分析については、TECPを消化したサンプルに対して10mMという最終濃度まで添加して、サンプルを室温で約30分間インキュベートして、ジスルフィド連結ペプチドを還元した。TFAを分析前に0.1%(v/v)という最終濃度まで添加した。
【0161】
オンラインのLC/ESI−MS/MSペプチド分析。 LC/ESI−MS/MSシステムは、Agilent 1100 HPLCシステムと、エレクトロスプレーインターフェースを備えたThermoFinnigan LCQイオントラップ質量分析計とから構成された。用いたカラムは、60℃に設定したVydac 214TP52カラム(C−4,300Åの細孔、5μmの粒子サイズ、2.1mmの内径×250mmの長さ)であった。移動相Aは、H
2O:TFA混合物で1000:1の比(v/v)であり、移動相Bは、ACN:H
2O:TFA混合物で900:100:1の比(v/v/v)であった。ペプチドフラグメントは、90分にわたり0〜45%Bの直線勾配、または120分にわたる0〜50%Bの直線勾配を用いて0.2mL/分の流速で溶出した。LCQのAPI電源は、4.5kVに設定され、N
2圧力は80psiであり、キャピラリーの温度は220℃に設定された。LC/ESI−MS/MSの泳動は、約10分で転換して、質量分析計に入る塩の混入を回避した。LC/ESI−MS/MSデータ獲得プログラムの設定のために、3つの異なるスキャンモード(フルスキャン、ズームスキャン、およびMS/MSスキャン)を行った。第一に、フルスキャンの最も豊富なペプチドイオンピーク(m/z 300〜2000)を前駆体イオンとして選択した。第二に、ズームスキャンを行って、前駆体イオンの荷電状態を測定した。最終的に、MS/MSスキャンを用いて、35%という相対衝突エネルギーを用いる衝突誘起解離(CID)を用いて前駆体の配列を決定した。
【0162】
図17は、抗RANKL野性型(上)および抗RANKL変異体(下)の非還元性Lys−CマップのUVクロマトグラムを示す。2つのマップの間の最も明白な相違は、その変異体のマップがHCのヒンジ(H10−11−12、H10−11およびH11)ペプチドおよびH6/H7−8ペプチドをLCのL12ペプチドと一緒にして含んでいるジスルフィド変異体ペプチドを識別する極めて疎水性の遅く溶出するペプチドを含まないことであった;これらのペプチドは予想どおり、抗RANKL野性型のマップに存在した。HCのCys131およびLCのCys214;H6/H7−8/L12を接続し、約85分で溶出するジスルフィド連結ペプチドはしかし、予想どおり、変異体では失われていた。代わりに、H6(Cys131Ser)/H7−8ペプチド(
図17でH6M/H7−8として表示される)は、約87分で溶出し、抗RANKL(Cys131Ser)変異体のマップに存在した。6974Daの質量値を有するペプチドが、約80分の溶出位置で変異体のマップで観察され;このペプチドは、ジスルフィド連結ペプチド(L12−H11−12)
2に相当し、これは、HCのヒンジ領域に対するLCの連結を示した。
【0163】
還元されたLys−Cペプチドマップは、抗RANKL野性型プロフィール(上)および抗RANKL(Cys131Ser)変異体(下)で
図18に示される。このマップは、抗RANKL野性型のマップにのみ存在した、約60分で十分解像されたH6ペプチド、および抗RANKL(Cys131Ser)変異体のマップにのみ存在する、対応するH6Mペプチド(これは、約67分のH6Cys131Ser変異体に相当する)以外はほとんど同一であった。
【0164】
結論
SE−HPLC、CE−SDSおよびSDS−PAGEによる抗RANKL(Cys131Ser)変異体の評価によって、構築された分子は、ジスルフィド結合によって一緒に保持されるLCおよびHCの各々の2つのコピーを含んでいる4つのポリペプチド抗体として発現および精製されることが確認された。SE−HPLCによる溶出位置によって、野性型抗RANKLに比較した場合、変異体についてわずかに大きい流体力学半径が示唆された。pH7.5のCEX−HPLCによる、および非還元性CE−SDSによるプロフィールは、抗RANKL野性型について観察されるプロフィールよりも抗RANKL(Cys131Ser)変異体についてさらに均一でかつ簡単であった。非還元性CE−SDS、CEX−HPLC(pH5)およびRP−HPLC分析によって、代表的なIgG
2サブタイプ抗体を示す、野性型抗RANKLについて観察されるよりも抗RANKL(Cys131Ser)変異体についてジスルフィド媒介性の構造的アイソフォームの複雑性の少ないアレイが示された。非還元性のペプチドマッピングによって、HCのCys131がSer残基によって置換されるとき、LCはLCのCys215(EdelmanのナンバリングではCys214)およびHCの4つのCys残基のうちの1つを通じてHCのヒンジ領域に接続されることが示された。まとめると、これらの結果によって、Cys131の変異体は、IgG2抗体における構造的な相同性の増大を生じることが確認される。
【0165】
(実施例4)
抗RANKL変異体抗体の力価分析
抗RANKLの変異型は、均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイによってインビトロで力価を評価するために野性型抗RANKLと隣り合わせで特徴づけた。抗RANKLの力価は、それが、RANK−Lのその同族の受容体である「核因子κB受容体活性化因子」(RANK)に対する結合をブロックする能力によって定量される。均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイを利用して、定量的な結果を得た。要するに、RANK−Lを、337nmの光で励起させた場合620nmで光を発光するユーロピウム+3(Eu+3)で標識した。この受容体は、組み換え技術RNAK−FLAGを用いて融合タンパク質として産生され、これはアロフィコシアニン(APC)に結合された抗FLAG抗体で標識された。APCは、620nmで光によって励起されるとき665nmの光を発光する発蛍光団である。従って、Eu+3標識されたRANK−LがRANK−FLAG/抗−FLAG−APC複合体に結合するとき、三次の複合体は337nmの光で励起されたとき635nmの光を発光する。抗RANKLをEu+3、RANK−LおよびRANK−FLAG/抗FLAG−APCとともにインキュベートした場合、665nmの蛍光強度は用量依存性の様式で減少した。
【0166】
各々の試験サンプルの力価を、参照標準に比較して、そのデータを、参照標準に比較した相対力価として報告した。変異体抗RANKLの力価は、HTRFアッセイによって評価した。得られた結果によって、92%の相対力価を有する変異体は、アッセイ中で101%の相対力価を示した野性型に対して匹敵する活性を有することが示された。HTRFアッセイを3つの複製のサンプル調製物で1回行い、その結果を下の表3にまとめる。
【0167】
【表3】
これらの結果、抗RANKL(Cys131Ser)変異体は、HTRFベースの力価アッセイでインビトロで試験した場合、野性型に対して匹敵する活性を示したことが示される。
【0168】
(実施例5)
抗IL−1R抗体の変異体
IgG2抗体におけるジスルフィド結合形成システインに対する変異体の効果をさらに理解するために、2つの変異体抗IL−1R抗体を作製して、下に示されるように特徴づけた(
図19Aを参照のこと)。第一の変異体(C219S)は、ジスルフィド構造3型について富化されていると予想され、ここではLCジスルフィド結合がC131に強制されている(
図19Bを参照のこと)。第二の変異体(C131S)は、ジスルフィド構造1型について富化されていると予想され、ここではLCジスルフィド結合がHCヒンジ領域に強制されている(
図19Bを参照のこと)。この抗IL−1Rのヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列は、米国特許出願公開第2004/097712号、Varnumら、(その全体が参照によって本明細書に援用される)に示される。C219SおよびC131S変異体は、上記の実施例2に記載されるような標準的な部位指向性の変異誘発を用いて作製された。その変異体は、DNA配列決定によって確認され、その変異した発現構築物をCOS細胞に一過性にトランスフェクトした。分泌された抗体を精製し、次いで次の2つの実施例に記載されるように特徴づけた。
【0169】
(実施例6)
抗IL−1R変異体抗体の構造的特徴付け
実施例5で作製されるC219およびC131S変異体抗体を、RP−HPLCで分析して、安定にトランスフェクトされたCHO細胞および一過性にトランスフェクトされたCHO細胞由来の野性型抗IL−1Rと比較した。RP−HPLC手順は以下のとおり行った。
【0170】
要するに、バイナリ・ポンプを備えたAgilent 1100 HPLCシステムにUV検出器を装備し、Agilent 1100キャピラリーHPLCシステムを、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源を装備したMicromass Q− TOF Micro質量分析計にオンラインで接続した。このタンパク質を、75℃で作動するZorbax 300SB C8カラム(150×2.1mm、5μm)上に注入した。この流速は0.5mL/分であった。移動相Aは0.1%のTFAを含んでいる水であった。移動相Bは、70%のイソプロピルアルコール、20%のアセトニトリル、および0.1%のTFA水溶液であった。サンプルを10%Bというローディング条件で注入して、2分にわたって19%Bまで増大した。1.1%B/分という直線溶出勾配で2分で開始して、24分で終わった。次いで、そのカラムを95%のBを用いて5分間フラッシュした。そのカラムを5分間のローディング条件で再度平衡化した。バイナリ・ポンプを備えたAgilent 1100 HPLCシステムを標準分析に用い、Agilent 1100キャピラリーHPLCシステムを、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源を装備したMicromass Q−TOF Micro質量分析計にオンラインで接続した。
【0171】
その結果を
図20に示す。そのクロマトグラムによって、野性型抗IL−1Rは4つのピークに分かれたが、C219SおよびC131Sは各々単一のピークとして、異なる保持時間で溶出したことが示される。詳細には、C219およびC131変異体は、野性型IgG2の遅れて溶出する型と同時に溶出し、これによって、この変異体が野性型IgG2の遅れて溶出する型と同様の可塑性の増大および力価の増大を保有することが示唆される。溶出するアイソフォームのオンラインの質量分析計によって測定される質量は、システインからセリンへの置換と一致していた。これらのデータによって、C219またはC131のいずれかの変異体が単一の構造的アイソフォームの富化を生じることが強力に示唆される。
【0172】
(実施例7)
抗IL−1R変異体抗体の力価
各々の抗IL−1R変異体の力価を、下に記載されるように軟骨細胞および全血のバイオアッセイを用いて野性型と比較した。
【0173】
これらの研究における抗体を、インターロイキン−1細胞表面受容体1型(IL−1RI)に特異的に結合するように設計した;これは、インターロイキン−1β(IL−1b)リガンドと競合し、それによってIL−6の産生を含めて、IL−1媒介性の細胞事象を阻害する。従って、この抗体の生物活性を、一次的なヒト軟骨細胞およびヒト全血によってIL−1b誘発性のIL−6産生の阻害をモニタリングすることによって評価した。
【0174】
軟骨細胞アッセイについては、IL−I受容体mAb(抗IL−1R)ならびにC219SおよびC131S変異体を、アッセイ培地中で40nM〜1.5256pMまで連続希釈した。この希釈された試験抗体(50μL)を、100μLの溶液で10000細胞/ウェルという密度でヒト軟骨細胞を播種した96ウェルプレートのウェルに添加した。最終抗体濃度は10nM〜0.3815pMにおよんだ。30分のインキュベーション後、50μLの組み換えヒトIL−1βを10pMという最終濃度まで添加した。一晩のインキュベーション後、その抗体活性を電気化学発光検出(Meso Scale Discovery,Gaithersburg,MD)を用いるIL−6イムノアッセイを用いて分析した。IL−6産生の阻害は、最大IL−1β活性の割合として算出した。各々の試験抗体についての阻害応答曲線を確立して、対応するIC50値(シグナルを50%まで減少する抗体の濃度)は、GraphPad PRISMソフトウェアを用いて導いた。
【0175】
全血アッセイについては、抗体を10ポイントのIC50曲線について半対数増分における10nM〜0.0003nMの50%ヒト全血(最終濃度)で評価した。抗体との45分のプレインキュベーション後、血液を30pM(〜IC50)という最終濃度について組み換えIL−1βで刺激した。一晩のインキュベーション後、その抗体活性を電気化学発光検出(Meso Scale Discovery,Gaithersburg,MD)を用いるIL−6イムノアッセイを用いて分析した。IL−6産生の阻害は、最大IL−1β活性の割合として算出した。IC50値は、6つの別のドナー(2つの異なる日の3つのドナー)を用いて算出した(Graph Pad PRISMソフトウェア)。
【0176】
バイアッセイのデータはGraphPad Prism Softwareを用いて分析した。IC50値は非線形回帰(勾配変化)によって導いた。用量応答曲線が不完全である場合、その底部を0に拘束した。有意性は、チューキー多重比較事後検定による1元ANOVAを用いて算出した。P値が0.05未満を有意とみなした。
【0177】
図21に代表的な結果を示す。反復したアッセイの結果を下の表4にまとめる。
図21および表4に示されるように、抗IL−1R C131Sおよび抗IL−1R C219Sは一貫して、最初のヒト軟骨細胞およびヒトの全血によるIL−1b誘導性のIL−6産生の阻害において野性型に比較して2〜3倍大きい力価を示した。
【0178】
【表4】
(実施例8)
抗EGFR抗体の変異
実施例1に示さるとおり、近い空間的近接性(
図6)の、位置(HC)131、219、220および(LC)214の4つのシステインの抗体位置の三次元構造に基づくIgG2抗体配列のモデリングによって、これらの残基の可変性の配列がIgG2の構造的アイソフォームを生じ得ることが示唆されている。空間的に近いシステインの変異がこれらの形態を排除し得る可能性を以下のとおり試験した。
【0179】
2つの特異的なシステインからセリンへの変異体は、219または220のいずれかの位置での部位指向性の変異誘発によって調製した(
図22を参照のこと)。部位指向性の変異誘発は、完全ヒトモノクローナル抗体抗EGFr(その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第6,235,883号にmAbE7.6.3として記載)をコードするベクターでのQuickChange部位指向性変異誘発キット(Stratagene,La Jolla,CA)を用いることによって行い、その所望の変異体の存在はDNA配列決定によって確認した。所望の変異を有する発現プラスミドを、ジヒドロ葉酸還元酵素活性を欠いている懸濁適合CHO細胞中に安定にトランスフェクトした。目的の抗体を発現する細胞を、グリシン、ヒポキサンチンおよびチミンを欠いている培地中での増殖によって選択した。トランスフェクションおよび選択からの回収後、CHO細胞プールをスピナーフラスコ中で増殖させた。発現された抗体を、収集された細胞培養上清から、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。変異体C219SおよびC220Sは、野性型抗EGFrと比較した場合、発現および精製の特徴に有意な相違を呈さなかった。
【0180】
(実施例9)
抗EGFR変異体抗体の構造の特徴付け
変異体抗EGFr抗体を次に、非還元性CE−SDSおよび天然ペプチドマッピングによって以下のように比較して分析した。
【0181】
変異体抗体のジスルフィド結合異質性の評価
第一に、抗体の見かけの大きさを非還元性のキャピラリー電気泳動のドデシル硫酸ナトリウム(nrCE−SDS)によって評価し、完全に変性した分子でゲル篩い分け法を行った。
【0182】
要するに、2.5mg/mlという最小濃度の抗体サンプルを以下の手順に従って1mg/mlの最終濃度まで希釈した:150μgの抗体溶液を10μlのヨードアセトアミド(IAM)と合わせて、3μlの内部標準(10kDa分子量マーカー、Beckman)を添加し、その溶液をCE−SDSサンプル緩衝液(BioRad)で150μlにした。その溶液を混合し、遠心分離し、75℃で水浴中で10分間加熱した。その混合物を室温で冷却し、12,000rpmで6分間遠心分離し、注射のためにサンプルバイアルに移した。
【0183】
nrCE−SDS分析方法をまた、システイン/システイン酸化還元電位を用いて再折り畳み手順に供した抗EGFr分子でも行い、ジスルフィド結合の配置が別個の構造的アイソフォームを担ったか否かを確認した。酸化還元−再折り畳み抗体を作製するために、天然の抗体サンプルを6mMのシステインおよび0.6mMのシスチンが含まれる0.2MのTis−HCl(pH8.6)で96時間、2〜8℃で処理した。次いでサンプルをその処方物の緩衝液で透析した。ヒト骨髄腫由来のヒトIgG2を、その元の処方物の緩衝液、40mMのリン酸塩、および150mMのNaCl、pH7.4に透析した。次いで、再折り畳みされたサンプルを上記のようにnrCE−SDSに供した。その結果を(
図23)に示す。
図23Aによって、野性型抗EGFrが、nrCD−SDS中に2つのピークによって提示される2つの構造的アイソフォームに存在することが示される。酸化還元電位での野性型抗EGFrの処理によって、構造的アイソフォームが修飾され、その結果、アイソフォーム2の増大(60%から88%へ)をともなうアイソソーム1の有意な減少(40%から12%へ)が生じる。この結果、この構造的アイソフォームはジスルフィド結合配置に基づいて別個であることが確認される。骨髄腫患者から単離した市販のIgG2分子について同様の結果が得られた(
図23B)。対照的に、変異体抗EGFrは代表的なIgG2の二重性を失い、nrCE−SDSによって単一ピークに解像された(
図23C)。従って、この構造的アイソフォームは、グリコシル化に関連せず、ただし(HC−LC)
2の形態の完全な共有構造の存在に依存することが示された。
【0184】
ペプチドマッピング
野性型およびC219S抗EGFrのジスルフィド構造は、非還元性ペプチドマッピングによって検討した。遊離のシステインは、(Bures ら,1998,Biochemistry 37:12172)によって記載されるとおり酸性pHでN−エチルマレイミド(NEM)でアルキル化された。NEMアルキル化後、その溶液を緩衝液交換して、酵素消化を非還元性分子で行った。要するに、NEM標識材料を、10%w/wのトリプシン含有0.1MのTris/2Mの尿素pH8.3を1mg/mLの濃度で用いて37℃で4時間、消化した。その消化反応を10%TFAの10μLの添加でクエンチした。次いで、このトリプシン消化サンプルを60℃で加熱するカラムを備えたRP−HPLCを介して分析した。移動相は、(A)水に含まれる0.12%のTFA(w:v)、および(B)40:40:20のアセトニトリル:イソプロパノール:水(w:v)に含まれる0.11%のTFAから構成された。分離は、移動相A中で調整した、Jupiter C5(2.1×250mm)カラム上で20分間行った。100μgの消化物を注入して、ペプチドフラグメントを0〜65%のBの勾配で0.2mL/分の流速で、165分溶出させた。ペプチド溶出は、214nmのUV吸収およびオンラインの質量獲得によってモニターした。
【0185】
ジスルフィド対の割り当ては、質量分析を用いて架橋したペプチドの特定によって行った。全ての質量分析は、Agilent 1100ポンプ(Agilent,USA)に接続されたエレクトロスプレー源を装備したLCQ Decaイオン・トラップ装置(Thermo−Finnigan,San Jose,CA)を用いて行った。分析は、5.0kVというスプレー電圧を用いて正のイオンモードで行い、MSキャピラリー温度は225℃で維持した。その装置は、カフェイン、MRFAペプチドおよびUltramark1621の混合物を用いて500〜2000というm/z範囲で較正した。重鎖および軽鎖のエレクトロスプレーイオン化質量スペクトルのデコンボリューションは、XcaliburソフトウェアについてProMassを用いて行った。タンパク質消化のためのスペクトルデータは、200〜2000m/zの範囲でオンラインで獲得した。MS/MS分析はデータ依存性の方式で行った。衝突データは、40%の相対衝突エネルギーを用いて得た。
【0186】
その結果を
図24に示しており、変異体の天然のトリプシンのペプチドマッピングは、ヒンジダイマーの定量的回収ならびに従来の鎖間接続C
H1−C
Lから予想されるH
10−L
18ヘテロペプチドの定量的回収を示したことが実証される(
図24)。
【0187】
結論として、nrCE−SDSおよび天然のペプチドマッピングによって分析した場合、その変異体分子は、野性型とは異なって挙動した。これらの結果によって、単一のシステイン残基の変異はIgG2構造的アイソフォームを特異的に廃して、同質の構造を有する抗体を有する溶液を生じたことが示される。
【0188】
(実施例10)
抗EGFr変異体抗体の生物学的活性の特徴付け
変異体のC219S、C220Sおよび野性型の抗EGFrの力価を、以下のように行うEGFrリガンドおよびリン酸化バイアッセイによって比較する。抗EGFrは、ヒト上皮成長因子受容体(EGFr)に対する完全ヒト組み換えIgG2モノクローナル抗体である。従って、力価は、その抗体が細胞表面でリガンド−受容体結合を阻害し、それによってシグナル伝達経路のリガンド誘導性活性を妨げる能力によって測定する。2つの力価アッセイを用いて、EGF媒介性のEGFrの自己リン酸化の遮断、またはレポーター遺伝子発現アッセイによる細胞増殖の阻害のいずれかを測定する。EGFr自己リン酸化の阻害を測定するために、96ウェルの組織培養プレートにA431細胞を播種する。参照標準および試験サンプルの連続希釈を行って、0.1125mg/ml〜0.02μg/mlにおよぶ濃度範囲を得る。50μlの各々の連続希釈をA431細胞を含んでいる組織培養プレートに添加する。各々の細胞にまた、作業希釈範囲まで希釈した50μlのrhEGFを添加する。そのプレートを37℃でかつ10%のCO
2で60分間インキュベートする。その上清を廃棄して、細胞を1ウェルあたり105μlの緩衝液(10mMのTris,150mMの塩化ナトリウム、5mMのEDTA、1%のTriton X−100)で溶解した。そのプレートを2〜8℃で60分間インキュベートする。85μlのこの細胞の溶解液を、E752 EGF抗体でコーティングしたELISAプレートに添加する。そのプレートを室温でかつ暗野で90分間インキュベートする。次いで、そのプレートを洗浄して100μlのHRPコンジュゲートした検出抗体を各々のウェルに添加する。そのプレートを60分間インキュベートし、次いで洗浄した後に100μlの基質の添加をする。そのプレートを15〜25分間発色する。その発色は、50μlの2M H
2SO
4を添加することによって停止して、そのプレートを450nmおよび650nmで読み取る。各々の試験サンプルの力価は、三通り計算して、平均値を報告する。
【0189】
遺伝子発現アッセイは、ヒトEGFrおよびEGFrシグナル伝達に応答するルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物を発現する操作された細胞株を用いて行った。抗EGFrは、EGFrに対する結合についてTGF−αと競合し、ルシフェラーゼ産生の用量依存性の阻害を生じる。ルシフェラーゼ産生は、細胞溶解およびルシフェリンの添加後に発光によって測定される。参照標準、コントロールおよび試験サンプルをアッセイ培地中で440ng/mlに希釈する。400〜87ng/mlという濃度範囲への連続希釈を調製する。固定濃度のTGF−αの等容積を各々の試験管に添加する。アッセイウェル中の最終濃度は細胞の添加後、110〜22ng/mlの抗EGFrである。懸濁物中の細胞増殖物を4つの96ウェルプレートに添加し、抗EGFrの25μlの各々の連続希釈する。代表的な用量応答によって、約87ng/mlのIC50値でのシグモイド反応が示される。このシグナル反応を測定して、アイソフォームの力価は、サンプルの反応を参照標準の反応と比較することによって測定する。
【0190】
両方のバイオアッセイによって示されるとおり、両方の変異体は、これらのアッセイにおいて野性型と同様の力価を有する。
【0191】
(実施例11)
IgG2抗体のヒンジ領域における挿入変異によるジスルフィド異質性の排除
上で考察したとおり、ヒトIgG2抗体は、ヒンジでのジスルフィド異質性に起因して構造的改変を有する。ジスルフィド異質性は、IgG2抗体の重鎖でのみ生じる、ヒンジ中での反応性でかつ固有のシステイン219−システイン220(C219C220)モチーフによって誘導される。この例では、ジスフルフィド異質性は、
図25に示されるように重鎖の残基C219とC220の間、または上に1、2またはそれ以上のアミノ酸残基を挿入することによって排除される。
【0192】
ヒトIgG2のヒンジにおける2つのタンデムシステイン(抗IL−1R重鎖アミノ酸番号219および220)の間または上の1つ以上のアミノ酸の挿入は、2つのジスルフィド結合を分離するか、またはヒンジセクションを延長し、それによって均質なジスルフィド型の産生を強制することによって上部ヒンジ領域中のC219および/またはC220の反応性を低下するように設計する。これらの変異体から産生された予想されるジスルフィド型は3型であって、LCのC214がHCのC131とジスルフィド結合を形成している。これは、天然のシステイン残基を変異することなく行われる(
図26〜28)。挿入された残基は、グリシン、プロリン、セリンおよび他のアミノ酸残基を含んでいるリストから選択される。
【0193】
図25〜28に示される挿入変異は、部位指向性の挿入変異誘発を用いて作製される。配列2〜4の異なるバージョンが作製される。配列2の1バージョンでは、単一のグリシンがC219とC220との間に挿入される。配列2の別のバージョンでは、単一のプロリンがC219とC220との間に挿入される。配列3および4の異なるバージョンでは、
図26に示すように、2もしくは3つのグリシン、2もしくは3つのプロリン、または2もしくは3つのグリシンまたはプロリンの組み合わせがC219とC220との間に挿入される。
【0194】
配列9および10の異なるバージョンは、
図27に示される挿入変異誘発によって作製された。配列9の1バージョンでは、単一のグリシンがK218とC219との間に挿入される。配列9の別のバージョンでは、単一のプロリンがK218とC219との間に挿入される。配列10の異なるバージョンでは、2つのグリシン、2つのプロリン、または1つのグリシンおよび1つのプロリンの組み合わせがK218とC219との間に挿入される。
【0195】
配列5〜8の異なるバージョンをまた、
図28に示される挿入変異誘発によって作製する。配列1〜4および9〜10で行われるとおり、グリシン、プロリンまたは他のアミノ酸の異なる組み合わせを用いて、K218とC219との間に、またC219とC220の間にも1または2つのアミノ酸を挿入する。
【0196】
IgG2ヒンジ領域の挿入変異誘発によって、LC214と、HC219またはHC220との間のジスルフィド結合形成が妨げられる。いくつかのまたは全ての変異体では、LC C214は、HC C131とのジスルフィド結合を形成する。
【0197】
挿入変異における構造的アイソフォームの異質性を分析して、異質性が変異によって減少されることが示される。CD−SDS、CEXおよびRP−HPLC分析によって、野性型IgG2抗体に比較して、挿入変異体のいくつかまたは全てで構造的異質性の有意な減少が示される。ある場合には、ジスルフィド構造は、完全に同質性を呈する。
【0198】
挿入変異の力価は、抗IL−1R抗体に特異的なバイオアッセイを用いて分析する。軟骨細胞および全血のIL−6産生バイオアッセイを、実施例7で記載のとおり行って、それらの標的分子について力価の増強を呈する挿入変異の多くまたは全てが明らかになる。
【0199】
(実施例12)
酸化還元変換によるIgG2抗体高次構造のアイソフォームの富化
酸化還元変換
封入体状態からタンパク質の酸化的再折り畳みは、組み換えタンパク質の微生物産生においては通常の手順であるが、哺乳動物の細胞産生では通常は行われない。しかし、IgG2の異質性は、ジスルフィドに関連すると考えられ、酸化還元処理に対するその型の反応性を試験した。野性型の抗IL−1R抗体(その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2004/097712に記載される)を、グアニジンHCl(GuHCl)の有無において種々の酸化還元条件に供した。
【0200】
抗IL−1R抗体を以下の2つの緩衝液のうちの一方において3mg/mLでインキュベートした:1)200mMのTris緩衝液(pH8.0);2)200mMのTris緩衝液pH8.0(0.9MのGuHCl含有)。システインおよびシスタミンの組み合わせを6mM:0.6mMのモル比で添加した。そのサンプルは2〜8℃で24〜48時間おいた。これらの実験で用いたGuHClの最適濃度0.9Mは、抗体の二次構造または三次構造全体に影響することが公知の温度未満であって(Teerinenら、2006,J.Mol.Biol.361:687〜697)、これは、IgG2κの別の高次構造の形成を可能にする、構造のマイナーな変化のみを誘導する。従って、酸化還元処理のパラメーターを変化することによって、RP−HPLCのピーク1およびピーク3を、それぞれゼロおよび0.9MのGuHClを用いて優先的に富化した(
図29)。この再折り畳みした材料は、コントロール(非酸化還元)でみられるピークと整列した単一の均質な種として本質的に溶出した。さらに、いくつかの他のIgG2のmAbを同じ条件を用いて酸化還元処理した。RP−HPLCの結果によって、試験した全てのIgG2のmAbが酸化還元処理に反応性であったことが示された。一般には、RP−HPLCのピーク3および1は、その抗体がそれぞれ、GuHClの存在の有無において酸化還元に曝されるとき、優先的に富化された。この富化された形態は、酸化還元溶液から取り出された後さらなる変換を示さず、PBS緩衝液中に保管された。
【0201】
(実施例13)
酸化還元再折り畳みIgG2抗体高次構造アイソフォームの生理活性
IgG2酸化還元再折り畳み高次構造アイソフォームの生理活性を試験して各々のアイソフォームがバルクの未処理の抗体の力価を保持していたか否かを決定した。
【0202】
再折り畳みされた抗IL−1Rアイソフォームを実施例7に記載のとおり軟骨細胞および全血アッセイを用いて試験した。IL−1Rバイオアッセイの結果、酸化還元富化材料のIl−6阻害における相違が示され(
図30)、再折り畳みされた材料がバルクの異質の抗体よりも少なくとも強力、またはそれより強力であることが実証される。平均して、酸化還元富化された材料の間のIC50値において統計学的に有意な相違があり、そして1型は3型よりもほぼ3倍低い活性を示した(
図31A〜B)。
【0203】
再折り畳みされた抗IL−4R抗体を、IL−4R活性の阻害を測定する生理活性アッセイを用いて試験した。その結果を下の表5に示しており、再折り畳みされた材料が、バルクの異質性抗体と少なくとも同じく強力、またはそれよりも強力であったことが示される。
【0204】
【表5】
再折り畳みされた抗HGF抗体をHGFシグナル伝達活性の阻害を測定する生理活性アッセイを用いて試験した。その結果を下の表6に示しており、これは、再折り畳みされた材料が、バルクの異質性抗体と少なくとも同じく強力、またはそれよりも強力であってことを示す。
【0205】
【表6】
ヒトグルカゴン受容体に対する再折り畳みされた抗体を、その抗体の力価を測定する生理活性アッセイを用いて試験した。その結果を下の表7に示しており、これは、再折り畳み材料が、バルクの異質性抗体と少なくとも同じく強力、またはそれよりも強力であってことを示す。
【0206】
【表7】
再折り畳みされた抗EGFr抗体を、実施例10に記載のEGFrレポーター遺伝子発現アッセイを用いて試験した。その結果を下の表8に示しており、これは、再折り畳み材料が、バルクの異質性抗体と同様の生理活性を有することを示す。
【0207】
【表8】
(実施例14)
IgG2抗体の挿入変異の構造の特徴付け
実施例11に記載のヒンジ領域挿入変異体を、抗IL−1R抗体で作製した。変異体は、配列2(配列番号14)のアラニンの挿入によって作製して、ヒンジ領域配列CACVECPPC(配列番号32)を有するIgG2抗体を作製し、配列3(配列番号15)の2つのプロリンの挿入によって、ヒンジ領域配列CPPCVECPPC(配列番号33)を有するIgG2抗体を作製した。
【0208】
構造的な異質性をRP−HPLCによって分析し、その結果を
図32に示す。野性型(WT)のサンプル(
図32A)は、他のヒトIgG2サンプルでみられるような代表的な4つのピークプロフィールを示した。cAc構築物(
図32B)は改善された同質性を示した。cPPc構築物(
図32C)は、検出可能な量のピーク1および2がない高い程度の同質性を示した。これらの結果によって、ジスルフィド交換を停止させるために必要であり得る、システインの間の重要な距離および方向が得られたことが示唆される。
【0209】
(実施例15)
IgG2抗体の軽鎖のC末端領域における挿入変異によるジスルフィド異質性の排除
上記で考察されるとおり、ヒトIgG2抗体は、ヒンジでのジスルフィドの異質性に起因して構造的変異体を有する。このジスルフィド異質性は、IgG2抗体の軽鎖のC末端システイン残基(C214)と反応するヒンジにおける反応性および固有のシステイン219−システイン220(C219C220)モチーフによって誘導される。この実施例では、ジスルフィド異質性は、
図33および34に示されるように軽鎖の残基C214およびC215の後ろに1、2またはそれ以上のアミノ酸残基を挿入することによって排除される。
【0210】
ヒトIgG2の軽鎖のC末端領域の残基C214およびC215後の1つ以上のアミノ酸の挿入は、重鎖のヒンジセクションからC末端システインを分離し、それによって同質性のジスルフィド型の産生を強制することによってC214の酸化還元電位を低くするように設計されている。これらの変異体から産生される予想されるジスルフィド型は、3型であって、LCのC214がHCのC131とのジスルフィド結合を形成する。これは、天然のシステイン残基を変異することなく行われる(
図33〜36)。この挿入された残基は、グリシン、プロリン、セリンおよび他のアミノ酸残基を含む列挙から選択される。
【0211】
図33〜35に示される挿入変異は、部位指向性の挿入変異誘発を用いて作製される。配列11〜13の異なるバージョンは、κ軽鎖を有するIgG2抗体変異体について作製される。配列11の1バージョンでは、単一のグリシンをC214の後に挿入する。配列11の別のバージョンでは、単一のプロリンをC214の後ろに挿入する。配列11のさらに別のバージョンでは、単一のセリンをC214の後ろに挿入する。配列12および13の異なるバージョンでは、2もしくは3つのグリシン、2もしくは3つのプロリン、2もしくは3つのセリン、あるいは2もしくは3つのグリシンまたはプロリンまたはセリンの組み合わせのいずれかを
図33に示されるようにC214の後に挿入する。
【0212】
配列14、15および16の異なるバージョンをまた、
図34に示されるλ軽鎖を有するIgG2抗体変異体の挿入変異誘発によって作製する。配列14の1バージョンでは、単一のグリシンをC214とC215との間に挿入する。配列14の別のバージョンでは、単一のプロリンをC214およびC215に挿入する。配列14のさらに別のバージョンでは、単一のセリンをC214とC215との間に挿入する。配列15および16の別のバージョンでは、2もしくは3つのグリシン、2もしくは3つのプロリン、2もしくは3つのセリン、あるいは2もしくは3つのグリシンまたはプロリンまたはセリンの組み合わせのいずれかをC214とC215との間に挿入する。
【0213】
配列17、18および19の異なるバージョンをまた、
図35に示されるλ軽鎖を有するIgG2抗体変異体について挿入変異誘発によって作製する。配列17の1つのバージョンでは、単一のグリシンをS215の後ろに挿入する。配列17の別のバージョンでは、単一のプロリンをS215の後ろに挿入する。配列17のさらに別のバージョンでは、単一のセリンをS215の後ろに挿入する。配列18および19の異なるバージョンでは、2もしくは3つのグリシン、2もしくは3つのプロリン、2もしくは3つのセリン、あるいは2もしくは3つのグリシンまたはプロリンまたはセリンの組み合わせがS215の後ろに挿入される。
【0214】
IgG2軽鎖C末端領域の挿入変異誘発は、LC214とHC219またはHC220のいずれかとの間のジスルフィド結合形成を妨げる。いくつかのまたは全ての変異では、LCのC214は、HCのC131とジスルフィド結合を形成する。
【0215】
挿入変異における構造的アイソフォームの異質性を分析して、この変異によって異質性が減少することが示されている。CD−SDS、CEXおよびRP−HPLC分析で、野性型のIgG2抗体に比較して挿入変異のいくつかまたは全てで構造的異質性の有意な減少が示される。いくつかの場合には、ジスルフィド構造は、完全に同質性であると考えられる。
【0216】
挿入変異の力価は抗LI−1R抗体に特異的なバイオアッセイを用いて分析される。軟骨細胞および全血のIL−6産生のバイオアッセイは、実施例7に記載のように行われ、これによって挿入変異の多くまたは全てがその標的分子について力価の増強を示すことが明らかになる。
【0217】
(実施例16)
追加の抗EGFR抗体の変異および特徴付け
実施例8で作製され、かつ実施例9および10で特徴づけられた抗EGFR抗体変異体に加えて、抗EGFR抗体に対する他の変異を作製した。本実施例は、変異体の作製ならびにそれらの構造的および生物学的活性の特徴付けを記載する。
【0218】
抗EGFR抗体(米国特許第6,235,883号にmAb E7.6.3として記載され、配列番号57として本明細書に示される可変領域を含んでいる)の重鎖に対する種々の変異が作製された。その変異体を消化し、次いで上記の例で記載される技術と同様の技術を用いて、CHO安定プールまたはCOS一過性産生系のいずれかで発現した。単一のシステインからセリンへの変異を有する抗体を作製するように、いくつかの変異体を設計した。2つまたは3つのシステインからセリンへの変異体を組み込むように他の変異体を設計した。CHO細胞対COS細胞のどちらで発現するかの決定は、都合だけに基づいて行い、いずれかの発現系で所定の構築物を発現できるかできないかには基づかなかった。下の表9に行った変異をまとめている。
【0219】
【表9】
変異体抗体を精製し、次いで上記の実施例に記載されたように、天然および還元のLys−Cペプチドマッピング、非還元性CE−SDSおよびNEM/CnBr/トリプシン/dSEC分離、および複合ジスルフィド−連結ペプチドの単離を用いて分析した。C131S変異の部分的な還元およびアルキル化も行った。非還元性CE−SDSによって、変異型と野性型との間で明確な相違が示された。ペプチドマッピングによって、抗EGFR参照および野性型におけるヒンジペプチドの回収が低いことが示され、このことは、ヒンジに関する複雑なジスルフィド連結構造の存在を示している。しかし、ペプチドマッピングは、219および220の位置で変異体についてのヒンジペプチドの良好な回収を示し、このことは、このヒンジに関与する複雑なジスルフィド−連結構造がないことを示している。
【0220】
nrCE−SDSによるC226S分子の分離は、野性型とは異なったプロフィールを有し、異なるピーク1/ピーク2比を呈した。C226Sのペプチドマッピングは、野性型参照に比較して複雑なジスルフィド−連結の同じ分布を示し、このことはこのヒンジに関与する複雑なジスルフィド−連結構造の存在を示している。
【0221】
変異体C131Sの分析によって、ヒンジおよび軽鎖に関与する型が1つだけ観察されることが示された。従って、C131Sを有する構造的な型は、異質性を示す野性型よりも簡易である。この観察を確認することで、部分還元−アルキル化実験によって、C220への軽鎖の接続が示された。
【0222】
次いで、各々の精製された変異体の生物学的活性を、実施例10において上記されるELISA結合アッセイおよび力価アッセイを用いて評価した。ヒンジ領域において変異体を有する分子の、この力価およびELISA結合アッセイの結果は、参照および野性型に匹敵した。しかし、ヒンジ領域の外側の重鎖において変異(C131S)を有する分子の力価およびELISA結合アッセイの結果は、参照および野性型よりも20〜25%低かった。
【0223】
従って、これらの実験によって、表9に列挙される抗EGFR重鎖システイン残基の変異が力価に影響を生じず、100%活性である分子を生じることが示される。さらに、これらのデータによって、219または220での単一の残基の変異が構造的アイソフォームの異質性を廃するのに十分であることが示される。これらの実験によってまた重鎖残基C131の変異体が低い力価を生じ、野性型で観察される多重の分布とは異なりC220に連結された軽鎖を有している均質な構造型を生じることが示される。結局のところ、C226の変異は、野性型複合体と同様である(ヒンジ−HC−LC)複合体を有する構造的アイソフォームを維持している。
【0224】
(実施例17)
IgG2抗体の挿入変異体の構造、安定性および生物学的活性の特徴付け
実施例14に記載される結果に基づいて確認および拡張するために、以下の実験を行った。この実施例では、ジスルフィド異質性を、重鎖のC219およびC220の残基の間に2つのアミノ酸残基を挿入することによって2つの異なるmAb中で排除した。さらに、抗IL−1R1の挿入変異体を処方安定性、酸化還元環境でのジスルフィド安定性、および生物学的活性について試験した。下に示されるとおり、挿入変異体は、異質性が少なく、血液様の酸化還元環境においてさらに安定であって、力価の有意な増大を示した。試験したいくつかの挿入残基のなかでも、cPPc挿入変異体は、生物学的活性の増大および酸化還元処理に対する非反応性に加えて、野性型mAbに対して、全体的な最大の処方安定性を示した。
【0225】
いくつかの挿入変異体構築物(表10に示される)を、抗IL−1RIのIgG2のmAbについて調製し、それらの特性について試験した。
【0226】
【表10】
ジスルフィド 接続性
挿入変異のジスルフィド接続性を、非還元性Lys−Cペプチドマッピングに加えてESI−MSをタンデムで用いて非還元性逆相(RP)分析によって評価した。前の実施例に考察されるとおり、IgG2 mAbのインタクトなRP分析は、IgG2ジスルフィドアイソフォームを評価するための鋭敏かつ選択的な方法である。野性型の(WT)抗IL−1RIのIgG2のmAbは、RP−HPLCによって代表的な4つのピークの異質IgG2プロフィールを提示した。RP分析による挿入変異体の分析では、ジスルフィドアイソフォーム分布上の重鎖(HC)のCys
219/Cys
220の前および間にアミノ酸を挿入することの影響が示された。4つの挿入変異体(cAc、PNcc、およびANcc)のうちの3つが複数のピークを呈したが、異なる分布では、WTに匹敵していた。Cys
219/Cys
220の前に作製された2つの挿入によって、RPのピーク2の量の顕著な増大および他のピークの量の引き続く減少が示された。これによって、2つのアミノ酸の距離によりヒンジ領域を低下することによって、ジスルフィド分布が中間アイソフォーム(RPピーク2)へシフトすることが可能であるが、ジスルフィド異質性を完全には排除しないことが示唆される。他方では、2つのタンデムシステイン(Cys
219/Cys
220)の間のアミノ酸の挿入は、ジスルフィド異質性を排除した。2つのタンデムシステインの間の1つのアミノ酸(cAc)の挿入は、システイン上に作製された挿入に匹敵する結果を生じ、これによって単一アラニンアミノ酸挿入が、ジスルフィド異質性を排除するのに最も有効ではない場合もあることが示唆される。しかし、アラニンより大きい単一アミノ酸の異なる選択によって、ジスルフィド異質性を停止することが可能である。その後の質量分析によって、IgG2のRPピークの間の有意な質量の相違が示された。
【0227】
抗IL−1R1挿入変異体の正確なジスルフィド接続性を確認するため、非還元性Lys−Cペプチドマッピングを行った。mAbとLys−Cプロテアーゼとのインキュベーションによって、ペプチド骨格の予測可能な断片化を行い、それによってRP−LC/MS分析で引き続き分析して、その分子のジスルフィド接続性を決定することが可能である。非還元性ペプチドマッピングについてのプロトコールおよび質量分析による特定を含む、IgG2ジスルフィド接続性の詳細な特徴付けは、上の実施例に記載される。さらに、IgG2アイソフォームを規定する特定のジスルフィド連結ペプチドのグループ分けは、実施例3に詳細に記載され、下におよび表11にまとめて記載される。
【0228】
【表11】
IgG2挿入変異体(cAc挿入変異体は、サンプルが不十分なせいで除外した)およびIgG2 WT材料の非還元性Lys−Cエンドペプチダーゼペプチドマップは、いくつかの後期溶出ピークを除いて同じクロマトグラフィーのプロフィールを示した。これらのピークは、予想されるLCからHCへのジスルフィド連結ペプチド(P1)、および2つの他の別個のジスルフィドペプチドを含み、ここでこのヒンジは、1つまたは両方のC−末端LCペプチド、およびCys131を含んでいる1つまたは両方のHCペプチド(P2,P3)に共有結合される。この抗IL−1RIのmAbのcPPc挿入変異体は、LCからHCへのジスルフィド架橋が予想されるジスルフィド架橋されたペプチドP1のみを含み(P1=LCフラグメントL12+HC ジスルフィド−連結フラグメントH6−7−8)、ペプチドP2もP3も含まない(P2=L12フラグメント+H6−7−8フラグメント+2つのH11−12フラグメント、P3=2つのL12フラグメント+2つのH6−7−8フラグメント+2つのH11−12フラグメント)構築物であった。他のIL−1RI mAb構築物(WT、ANcc、およびPNcc)は、ジスルフィド−架橋されたペプチドP1、P2、およびP3の全てを含んだが、P1がこの変異体では部分的に富化された。
【0229】
安定性(処方された)
抗IL−1RI挿入変異体の安定性を、PBS(pH7.2)に2mg/mLで含有されるタンパク質を処方すること、およびそのサンプルを上昇した温度(37℃および45℃)でインキュベートすること、およびサイズ排除クロマトグラフィーによってモニタリングすることによって試験した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、連続した(2つのTosoh Bioscience TSK−Gel G3000 SW×1(カラム7.8内径×30cm、5μmの粒子)で、Agilent 1100 HPLCシステム(Agilent Technologies,Inc.,Palo Alto CA USA)で行った。この装置に20μgをロードして2mg/mLでサンプルを分析した。移動相は、100mMのリン酸ナトリウム、500mMの塩化ナトリウム、5%のエタノール(pH7.0)を含んだ。この流速は、0.5mL/minであって、カラム温度は25℃で制御した。そのシグナルは、215nmおよび280nmの波長での吸光度によってモニターした。
【0230】
cPPc挿入変異体は、主要なピークの損失の速度が遅い、経時的に大きい安定性を示した。凝集体およびクリップの相対増大パーセントはWTおよび他の構築物に比較してcPPc挿入変異体について有意に低かった。さらに、その構造的安定性は、示差走査熱量測定を用いて評価した。抗IL−1R1サンプルを、1℃/分という走査速度で、30℃から95℃までPBS中で0.5mg/mLでモニターした。サンプルをMicroCal VP−キャピラリー示差走査熱量測定システムを用いて分析した。
【0231】
挿入変異体の熱融解プロフィールをWTと比較した。PBS(pH7.2)中で熱安定性に有意差は検出できなかった。従って、処方された安定性は、本明細書に記載の挿入変異体では改善されていた。
【0232】
安定性(酸化還元)
以前に考察したとおり、IgG2ジスルフィドアイソフォームは、酸化還元環境におかれた場合、不安定でかつ不活性変換される。この抗IL−1RIのcPPc挿入変異体を酸化還元の安定性について試験した。なぜならこれは、単一のIgG2ジスルフィドアイソフォームから構成されることが示されたからである。このサンプルを、4μMのシステインの出発濃度を含有しているPBS(pH7.2)溶液中で約1mg/mLでインキュベートした。このシステイン濃度は、定常状態の酸化還元環境では維持されなかった。なぜなら、システインは水溶液中では急速にシスチンに変換するからである。このサンプルを最大144時間までインキュベートして、ジスルフィド変換についてRPクロマトグラフィーによってモニターした。この抗体を、Zorbax 300SB C8カラム(150×2.1mm、5μmまたは50×1mm、3.5μm)を用いて、インタクトなRP−HPLCによって分析した。そのカラム温度は75℃であって、その流速は0.5mL/分であった。移動相Aは4%のIPA/1%のACN/0.11%のTFAであり、移動相Bは70%のIPA/20%のACN/0.10%のTFAであった。
【0233】
実験の経過にわたってcPPc挿入変異体についてRPでは変換は見られなかった。変異体とは対照的に、WTは、同様の酸化還元条件のもとでRPピーク1に変換された。これらのデータによって、cPPc挿入変異体がインビボにおいて循環中で安定であることが強力に示唆される。
【0234】
生物学的活性
抗IL−1RI挿入変異体の力価は、軟骨細胞のバイオアッセイを用いてWTと比較した。この抗IL−1RIのIgGサンプルをアッセイ培地で400nMから1.5pMまで連続希釈した。希釈された試験抗体(50μl)を、100μlの容積に10,000細胞/ウェルの密度でヒト軟骨細胞を播種された96−ウェルプレートのウェルに添加した。最終抗体濃度は、100nMから0.38pMまでにおよんだ。30分のインキュベーション後、50μlの組み換え体ヒトIL−1βを最終濃度10pMまで添加した。一晩のインキュベーション後、電気化学発光検出(Meso Scale Discovery,Gaithersburg,MD)によるIL−6のイムノアッセイを用いて抗体活性を分析した。IL−6産生の阻害は、最大IL−1β活性の割合として算出した。各々の試験抗体の阻害応答曲線を確立して、対応するIC50値(シグナルを50%まで低下する抗体の濃度)は、GraphPad Prismソフトウェアを用いて導いた。
【0235】
3つの独立した実験からのデータによって、WTの抗IL−1RIのmAbが、いずれの変異体よりも活性が有意に弱かった(p<0.001)ことが示される。いずれの変異体の間にも有意な相違はなかった(p>0.05)。このデータは、酸化還元的富化によって研究したIgG2アイソフォームの間の活性の有意な相違を示した、上記の実施例13の結果と一致している。
【0236】
挿入変異体の一過性の産生の間、挿入変異体構築物の少なくとも1つでより高い収率が観察された。さらに、挿入変異体構築物の少なくとも1つは、産生の間に少ないIgGフラグメントを示した。これらのデータによって、IgG2ヒンジにおいてシステインを再構築することは、収率に影響を有し得ることが示唆される。理論で束縛されるものではないが、これらのデータによって、IgGヒンジ内およびその周囲のジスルフィド結合形成は、IgGの発現および収率に影響し得るタンパク質折り畳みのボトルネックを生じることが示される。
【0237】
本実施例および先行する実施例に示される結果によって、産生およびインビボ安定性について分子のジスルフィド構造を安定化する方法でIgG2 mAbのヒンジを操作することが可能であることが示される。
【0238】
本明細書に開示されかつ特許請求される組成物および/または方法の全ては、本発明の開示に照らして過度の実験なしに作製および行うことができる。本発明の組成物および方法は、いくつかの実施形態に関して記載されているが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、バリエーションが、本明細書に記載される、組成物および/または方法に、ならびにその方法の工程にまたはその方法の工程の順序に適用され得ることが当業者には明白であろう。さらに詳細には、化学的におよび生理学的に両方で関連する特定の剤を、本明細書に記載の剤について置き換えても、同じまたは同様の結果が達成され得るということが明白であろう。当業者に明白な全てのこのような類似の置換および修飾は、添付の請求項の範囲によって規定されるとおり本発明の趣旨、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【0239】
本明細書全体を通じて引用される引用文献は、それが本明細書に示されるものに対して例示的な手順または補充的な他の詳細を提供する程度まで、全てが参照によって本明細書に詳細に援用される。