特許第5963345号(P5963345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人上智学院の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963345
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/16 20060101AFI20160721BHJP
   C03B 19/06 20060101ALI20160721BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C04B35/16 Z
   C03B19/06 B
   C03B19/06 C
   G02B1/00
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-38761(P2012-38761)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-173643(P2013-173643A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】板谷 清司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佳織
(72)【発明者】
【氏名】辻 篤史
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 誠通
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−096653(JP,A)
【文献】 特開昭54−095619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 19/06
C04B 35/00,35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物ガラスであるガラス粉末を乾式成型により成型体とする工程、該成型体を焼結して相対密度が90〜96%である前駆体を得る工程、及び該前駆体を酸素分圧が10体積%以上である酸素ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、前記混合ガスの圧力が100MPa以上とし、前記ガラス粉末のガラス転移点に対して+10〜+50℃で1〜20時間加圧焼結して焼結体を得る工程、を含む焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記焼結体を得る工程は、熱間等方加圧法を用い前記前駆体を加圧焼結する工程を含む請求項1に記載の焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結体の製造方法に関するものであり、特に、ガラス粉末の緻密な焼結体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼結体に関する技術は、従来より特にセラミックス粉末を用いて様々な方法で検討されている。例えば特許文献1にはガラスとセラミックを混合させた焼結体、特許文献2には窒化珪素粒子間が酸窒化物の結晶化ガラス相で充填されてなる窒化珪素質焼結体、特許文献3には酸化亜鉛による緻密焼結体の作製方法、特許文献4にはセラミック粉末の表面をプラズマ処理した後成型して焼結を行う焼結体の製造方法がそれぞれ開示されている。しかしながら、一般的にセラミックス粉末を用いた緻密焼結体を得る方法は、固相反応を経るために焼結時間が10〜30時間程度と長く、また、長時間焼結を行っても、実際に得られる焼結体は内部に微細な気孔や気泡を有するものであった。
【0003】
ここで、前述したセラミックの焼結体の他に、ガラスの焼結体の製造方法についても検討が行われ、特に半導体分野へ利用されている。
【0004】
ガラス粉末を用いた焼結体の製造方法としては、ガラス粉末と有機バインダーとを用いてペレットを作製した後、当該ガラス粉末のガラス転移点以上で焼結することにより焼結体を得る方法が主流である(特許文献5)。上記のようにバインダーを用いたペレットは、焼結前に完全にバインダーを除去してから焼結を行うものであり、最終的に得られる焼結体内に気孔を生じ易い。例えば特許文献6には、成形体を形成した後、該成形体に含まれる水分を乾燥除去し、減圧雰囲気下で融点以下で焼結することで相対密度95%以上のガラスの焼結体を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−225446号公報
【特許文献2】特開平05−330919号公報
【特許文献3】特開2008−195567号公報
【特許文献4】特開2002−293649号公報
【特許文献5】特開2010-195655号公報
【特許文献6】特開2002−362967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガラスの有する特性のひとつとして、光の透過性が高く、また、樹脂等と比較して紫外光や薬品、熱等への耐久性に優れていことが挙げられ、近年、ガラス焼結体の光学部材への展開が期待されつつある。
【0007】
しかし、前述した焼結体内部に生じる気孔や気泡の存在は、焼結体の強度低下の要因となるだけでなく、光を散乱させる要因にもなるため、当該焼結体を光学物品に組み込むことは依然として難しかった。
【0008】
従って、本発明は緻密なガラス焼結体を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが上記課題について鋭意検討を行った結果、一度焼結したものを、再度加圧しながら焼結することにより、焼結体中の気孔や気泡が除去され、緻密で透明な焼結体を得られることが明らかとなった。
【0010】
すなわち本発明は、酸化物ガラスであるガラス粉末を乾式成型により成型体とする工程、該成型体を焼結して相対密度が90〜96%である前駆体を得る工程、及び該前駆体を酸素分圧が10体積%以上である酸素ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、前記混合ガスの圧力が100MPa以上とし、前記ガラス粉末のガラス転移点に対して+10〜+50℃で1〜20時間加圧焼結して焼結体を得る工程、を含む焼結体の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、緻密なガラス焼結体を得ることが可能となった。また、当該ガラス焼結体は光の散乱を抑制したものであるため、光学物品に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ガラス粉末を乾式成型により成型体とする工程、該成型体を焼結して前駆体を得る工程、及び該前駆体を酸素を含む混合ガス雰囲気下で加圧焼結して焼結体を得る工程、を含む焼結体製造方法である。
【0016】
尚、成型体とは前記ガラス粉末が圧力により押し固められて成型されたものを指すものとする。
【0017】
上記成型体は、加熱を行わない乾式成型法により形成され、特に量産性に富んだ一軸加圧成型法を用いるのが好ましい。
【0018】
一軸加圧成型法を用いて成型体を作製する場合、金型内のガラス粉末をプレスすることにより押し固める。プレス時の圧力は40MPa以上、60MPa以下とするのが好ましい。上記範囲を外れると、プレスが不十分となったり、成型体にクラックが生じることがある。
【0019】
上記加圧成型に用いられるガラス粉末は酸化物ガラスであり、製造の各工程において焼結が可能でかつ結晶が析出しないガラスを用いればよい。加圧焼結時の温度は一般的に少なくとも400℃まで上昇するため、焼結・焼結が可能となるように、例えばガラス転移点が390℃以上のガラス粉末を用いるとしてもよい。
【0020】
また、本発明では前駆体を得る工程において第一の加熱を行い、焼結体を得る工程において第二の加熱を行うことから、再加熱時の結晶析出温度がガラス転移点の+30〜+100℃であるガラス粉末を用いるのが好ましい。
【0021】
また、前記ガラス粉末は平均粒径が0.5〜5.0μmであるのが好ましい。0.5μm以下のガラス粉末は凝集し易くなることから前駆体の作製が困難となることがある。一方、5.0μmを越えるガラス粉末は成型体中の空隙が大きくなりすぎるために、その後の焼結で内部の気孔や気泡を無くすことが困難となることがある。また、より好ましくは1.0〜3.0μmとしてもよい。
【0022】
また、前記ガラス粉末はガラス転移点が前述した範囲内になるように適宜決定されればよい。また、ガラス粉末以外に50質量%以下であれば任意の第三成分を混合して成型体を形成してもよい。例えば機能性無機フィラーやYAG等の蛍光体等が挙げられる。
【0023】
前駆体を得る工程は、前記成型体を加熱により焼結し前駆体を形成するものであり、特に加圧を必要とするものではない。当該前駆体は、該成型体を構成するガラス粉末同士が加熱により融着したものであるが、気孔や気泡を含有した状態で融着するため、該前駆体は光を散乱する。この時、該前駆体の相対密度は90〜96%とするのが好ましい。相対密度が90%未満となると、その後の焼結工程を経ても相対密度が99%以上となる緻密体になり難くなる。また、96%を越える場合、加熱時間が長時間となり製造コストが増大することがある。尚、相対密度はアルキメデス法を用いて測定した。
【0024】
焼結時の温度は結晶を生じない程度であればよく、例えば、成型体を構成するガラス粉末のガラス転移点に対して−30〜+50℃としてもよい。
【0025】
焼結工程において、前述した焼結温度まで段階的に昇温すると温度ムラ等が生じるのを抑制できるため好ましい。昇温温度を1〜20℃/分、昇温時間を10〜60分程度とすると効率的に前駆体を得ることができる。
【0026】
また、焼結時間は焼結温度の保持時間であり、1〜5時間とするのが好ましい。保持時間が1時間未満の場合、焼結が不十分となり前駆体の相対密度が著しく低くなるため不適である。また、ある程度の時間焼結を行えば前駆体の相対密度が一定となるため、上限は特に限定する必要はないが、例えば5時間以下としてもよい。
【0027】
焼結体を形成する工程は、熱間等方加圧法(HIP)等により、加熱と加圧とを同時に行い、前駆体を焼結させるものであり、本発明においては高温・高圧の混合ガスを媒体として該前駆体を緻密に焼結する。
【0028】
混合ガスは、酸素ガスと不活性ガスとを有するものである。酸素は10体積%以上含有するのが好ましく、より好ましくは15体積%以上としてもよい。酸素が存在しない場合焼結が進まず、また、安全に製造を行うために酸素は100体積%未満とするのが望ましい。また、不活性ガスは希ガス、Nが挙げられ、特にArは安価で入手しやすいことから好適に利用される。
【0029】
また、混合ガスの圧力を100MPa以上とするのが好ましい。100MPa未満では十分に緻密化が進行しないことがある。また、安全に製造を行う為に200MPa以下とするのがよい。
【0030】
また、本発明は上記混合ガスを用いた高圧条件下で焼結を行う。この時の焼結温度は前駆体を形成する際と同様に結晶が生じない程度であればよいが、十分に焼結させるために、使用したガラス粉末のガラス転移点に対して+10〜+50℃とするのが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に本発明の実施例を記載する。
【0032】
実施例1
1.5gのガラス粉末(ガラス転移点470℃、平均粒径1.0μm、製品名:B20、セントラル硝子社製)を一軸加圧成型用の金型に入れ、50MPaでプレス成型し成型体を作製した。次に、得られた成型体を電気ヒーターで加熱される箱型炉を用い、空気中で、昇温温度を10℃/分、昇温時間を46分とし、460℃で30分間の焼結を行い、前駆体を得た。得られた前駆体について相対密度を測定した。
【0033】
次に上記の前駆体を用いて、熱間等方加圧法(以下HIPと記載することもある)により焼結体の製造を行った。加圧焼結装置は(株)KOBELCO製ドクターHIPを用いた。また、前駆体を白金皿上に乗せて同装置内に置き、酸素ガス(20体積%)とArガス(80体積%)を有する混合ガスを150MPaの圧力となるように満たした後、490℃で12時間焼結を行い、ガラス焼結体を得た。得られたガラス焼結体について相対密度を測定した。各相対密度と加圧焼結時の混合ガス雰囲気を表1に記載した。
【0034】
比較例1
Arガス中で2時間、490℃の条件下で加圧焼結を行い、焼結体を得た以外は、実施例1と同様の方法でガラス焼結体を得た。
【0035】
比較例2
前駆体を得るための焼結工程を経ずに、それ以外の条件は全て実施例1と同様の方法でガラス焼結体を得た。
【0036】
純Ar雰囲気で焼結を行った比較例1はガラスの一部に着色が見られた。また、前駆体を経ずに加圧焼結した比較例2は焼結が不十分となり、得られた焼結体の内部に気孔が残るものであった。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は透明なガラス焼結体であることから、高屈折率なガラス製品として用いることが可能である。特に、光学物品のレンズやフィルターのように小サイズな形状を要求される物品として有用である。