(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の一態様を得るに至った経緯)
近年、ディスプレイのさらなる軽量化や湾曲化の要求が高まっており、曲げることが可能なまでに薄板化された薄型の表示装置が要望されている。このような薄型の表示装置では、曲げ応力に対して基板が破壊応力を超えないようにする必要がある。このためには、基板全体の厚みは面内で均一になっていることが好ましい。すなわち、基板の厚みが基板中央から基板端部に至るまでなるべく均一になっていることが望ましい。
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来の表示装置の製造方法のように、基板を薄板化する際に、基板周辺における端部上面および端部側面を樹脂等で保護して基板の主面をエッチング液でエッチングすると、基板の端部がエッチングされずに厚く残ってしまう。このため、基板端部の上面と基板端部以外の部分(例えば基板中央)の上面との間に、エッチング量に応じた大きな高低差が生じてしまい、基板に曲げ応力が加わると簡単に基板が割れてしまうという問題がある。
【0013】
一方、上記高低差が生じないように、基板周辺の端部上面は被覆せずに基板周辺の端部側面のみを樹脂等で保護して基板の主面をエッチングすると、エッチング液が樹脂と基板端部との間に入り込んで基板端部がエッチングされて基板端部の側面が基板中央側に後退する。このとき、基板端部の側面の後退量が大きくなりすぎると、基板端部が基板間のシール材を超えて、エッチング液が基板内に浸入してしまう場合がある。この場合、基板内に浸入したエッチング液によって基板上の配線が腐食し、配線不良が起こって表示装置の表示品位が劣化するという問題がある。
【0014】
さらに、基板の端部にフレキシブルケーブルやプリント基板などの端子部が接続された表示装置においては、基板端部の全周および基板間ギャップ全周を樹脂で完全に封止することが容易ではない。したがって、端子部が接続された表示装置を薄板化する場合において、基板端部の側面を樹脂で保護したとしても、樹脂で封止されていない箇所からエッチング液が浸入する場合がある。この場合も、基板とフレキシブルケーブルとの接続部分などの配線が腐食し、配線不良が起こって表示装置の表示品位が劣化するという問題がある。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、薄板化しても曲げ応力に対する耐性が高い基板を備える表示装置の製造方法を提供することを目的とする。特に、基板の端部にフレキシブルケーブルなどが接続された表示装置に対して基板を薄板化する場合においても、配線不良による表示品位の劣化を招くことなく所望の厚みに薄板化することのできる表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る表示装置の製造方法の一態様は、対向する一対の基板と前記一対の基板の間に形成された表示素子とを備える表示装置の製造方法であって、前記一対の基板の少なくとも一方の基板の端部の側面と当該端部の上面とを覆うように第一保護部材を形成する第一保護部材形成工程と、前記第一保護部材形成工程の後に、前記一方の基板の主面を研磨する第一研磨工程と、前記一方の基板の主面全体を覆わずに、かつ、前記一方の基板の前記端部における前記側面を覆うように第二保護部材を形成する第二保護部材形成工程と、前記第二保護部材形成工程の後に、前記一方の基板の主面全体を研磨する第二研磨工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0017】
本態様は、一対の基板のうちの一方の基板の主面が二段階の研磨工程によって研磨されることで基板を薄板化を行うものである。まず、第一研磨工程では、基板端部における側面および上面が第一保護部材で保護された状態で一方の基板の主面が研磨される。このため、第一研磨工程では、当該基板の主面のうち端部領域(端部の上面)は薄板化されずに、当該基板のうち端部を除いた部分(第一保護部材で覆われていない基板露出部分)の領域が薄板化される。次に、第二研磨工程では、基板端部における側面が第一保護部材で保護され、端部上面を含む当該一方の基板の主面全体が露出した状態で当該基板の主面が研磨される。このため、第二研磨工程では、基板端部を含めて基板全体が薄板化される。
【0018】
このように、本態様では、基板の主面のうち端部領域については第二研磨工程のみで研磨され、一方、端部領域を含む基板の主面の全体領域については第一研磨工程および第二研磨工程で研磨される。これにより、基板端部の上面と基板端部以外の部分(例えば基板の中央部)の上面との間における高低差を小さくすることができる。したがって、曲げ応力に対する耐性が高い基板を得ることができる。
【0019】
また、本発明に係る表示装置の製造方法の一態様において、前記第一研磨工程および前記第二研磨工程における前記研磨は、エッチング液により行う、ことができる。
【0020】
本態様によれば、基板の研磨がエッチング液によって行われる。エッチング液によって研磨を行う場合、仮に基板端部の上面を保護部材で被覆せずにエッチングを行うと、エッチング液が保護部材と基板端部との間に入り込んで基板端部の側面がエッチングによって後退し、エッチング液が基板間に浸入して配線不良が生じる場合がある。
【0021】
これに対して、本態様によれば、第一研磨工程では、基板端部における側面および上面が第一保護部材で保護されている。これにより、第一研磨工程において、エッチング液が第一保護部材と基板端部との間に入り込んで基板端部をエッチングしてしまうことを防止することができる。したがって、第二研磨工程だけでエッチングした場合と比べて、基板端部の側面の後退量を低減することができるので、基板間にエッチング液が浸入することを防止できる。このように、本態様によれば、基板内部へのエッチング液の浸入防止と基板端部の薄板化との両立を図ることができる。
【0022】
また、本発明に係る表示装置の製造方法の一態様において、前記第一研磨工程における前記一方の基板の研磨量は、前記第二研磨工程における前記一方の基板の研磨量よりも大きい、ことが好ましい。
【0023】
上述のとおり、第二研磨工程では、基板の主面全体が露出した状態でエッチングされるので、エッチング液が基板端部と第二保護部材との間に入り込んで基板端部の側面がエッチングされて後退する。本態様では、第一研磨工程における基板の研磨量(エッチング量)が第二研磨工程における基板の研磨量(エッチング量)よりも大きくなっている。これにより、第二研磨工程において、基板端部周辺がエッチング液に曝される時間を短くすることができるので、エッチングによって基板端部の側面が後退する量(後退量)を低減することができる。これにより、基板内部にエッチング液が浸入することを一層防止することができる。
【0024】
また、本発明に係る表示装置の製造方法の一態様において、前記一対の基板のうちの一方は、他方に対して対向する主面の面積が大きい、とすることができる。
【0025】
一対の基板において一方の面積が他方に対して大きいと、エッチング液が基板間に入り込みやすくなって配線不良が発生しやすくなる。本態様では、第一研磨工程において、基板端部における側面および上面を第一保護部材で保護している。これにより、基板間へのエッチング液の入り込みを低減することができる。したがって、一方が他方に対して大きい基板であってエッチング液が基板間に入り込みやすい構造であったとしても、配線不良の発生を抑制することができる。
【0026】
さらに、本発明に係る表示装置の製造方法の一態様において、研磨される前記一方の基板は、主面の面積が小さい方の基板である、とすることができる。
【0027】
このように研磨される基板を小さい方の基板にすると、さらにエッチング液が基板間に入り込みやすくなる。本態様では、第一研磨工程において、基板端部における側面および上面を第一保護部材で保護している。これにより、基板間へのエッチング液の入り込みを低減することができる。したがって、研磨される基板が小さい方の基板であってエッチング液が基板間に入り込みやすい構造であったとしても、配線不良の発生を抑制することができる。
【0028】
また、本発明に係る表示装置の製造方法の一態様において、主面の面積が大きい方の基板の端部には、プリント基板と接続されたフレキシブルケーブルが接続されている、とすることができる。
【0029】
基板の端部にフレキシブルケーブルが接続されていると、基板端部の全周および基板間ギャップ全周を樹脂で完全に封止することが容易ではないことから、基板端部の側面を保護部材で保護して基板をエッチングしたとしても、樹脂で封止されていない箇所からエッチング液が浸入して、配線不良が発生する場合がある。本態様では、第一研磨工程において、基板端部の側面だけではなく基板端部の上面も第一保護部材で保護しているので、フレキシブルケーブルが接続された表示装置を薄板化する場合においても、基板端部周辺を確実に封止することが可能となる。これにより、基板とフレキシブルケーブルとの接続部分などの配線が腐食することを防止することができるので、配線不良の発生を防止することができる。
【0030】
また、本発明に係る表示装置の製造方法の一態様において、前記第一保護部材形成工程と前記第一研磨工程との後に、前記第二保護部材形成工程と前記第二研磨工程とを行う、とすることができる。
【0031】
本態様によれば、まず、第一研磨工程において、基板端部を研磨せずに基板端部を除く部分を薄板化し、その後、第二研磨工程において、基板端部を含む基板の主面全体を薄板化する。これにより、第二研磨工程における基板端部の側面の後退量を制御しやすくなるので、設計寸法通りの基板を作製しやすくなる。
【0032】
また、本発明に係る表示装置の製造方法の一態様において、さらに、前記一対の基板の他方の基板の端部の側面と当該端部の上面とを覆うように第三保護部材を形成する第三保護部材形成工程と、前記第三保護部材形成工程の後に、前記他方の基板の主面を研磨する第三研磨工程と、前記他方の基板の主面全体を覆わずに、かつ、前記他方の基板の前記端部における前記側面を覆うように第四保護部材を形成する第四保護部材形成工程と、前記第四保護部材形成工程の後に、前記他方の基板の主面全体を研磨する第四研磨工程と、を含む、とすることができる。
【0033】
本態様によれば、他方の基板についても、一方の基板と同様に、二段階の研磨工程によって薄板化される。これにより、他方の基板についても、曲げ応力に対する耐性を高くすることができる。
【0034】
以下、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。従って、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0035】
図1は、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法の主要工程を示すフローチャートである。
【0036】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法は、第一保護部材形成工程(S10)と、第一研磨工程(S20)と、第二保護部材形成工程(S30)と、第二研磨工程(S40)とを含む。
【0037】
以下、本実施の形態に係る表示装置の構成と、当該表示装置の製造方法における各工程とについて、
図2および
図3を用いて詳細に説明する。
図2および
図3は、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法の各工程を説明する工程図である。また、
図2および
図3において、左側に示す(a1)〜(a3)は、各工程における同表示装置の平面図であり、右側に示す(b1)〜(b3)は、(a1)〜(a3)におけるA−A’線に沿って切断した同表示装置の断面図である。なお、
図2の(a1)および(b1)は、基板を薄板化する前の表示装置100を示している。
【0038】
図2の(a1)および(b1)に示すように、本実施の形態に係る表示装置100は、画素電極および薄膜トランジスタ等がマトリクス状に形成された矩形状の第一の基板(TFTアレイ基板)10と、第一の基板10に対向して配置され、カラーフィルタ等が形成された矩形状の第二の基板20と、第一の基板10と第二の基板20との間に挟持された、液晶素子や有機EL素子などの表示素子30とを備える。第一の基板10と第二の基板20とは、基板端部の周囲に枠状に形成されたシール材40を介して貼り合わされている。第一の基板10は、第二の基板20に対して、一般的に主面の面積が大きくなるように構成されており、第一の基板10の少なくとも一辺は、第二の基板20の端部よりも外側に突出している。この突出した領域(第一の基板10の端部)には、プリント基板51とフレキシブルケーブル52とを含む端子部50が接続されている。端子部50には、図示しないが、表示装置100を駆動するための駆動回路(ICドライバなど)が形成されている。フレキシブルケーブル52は、ACF(異方性導電性フィルム)などによって、一端が第一の基板10の端部に形成された電極端子と電気的に接続され、他端がプリント基板51に形成された電極端子と電気的に接続されている。
【0039】
第一の基板10および第二の基板20の材質は、例えばガラスであり、その板厚は一般的に0.4mm〜0.7mm程度である。ここで、第一の基板10の中央付近の板厚をt1とし、第二の基板20の中央部の板厚をt2とし、第一の基板10の端部の板厚をt3とし、第二の基板20の端部の板厚をt4とすると、表示装置100の中央部の厚みは、t1およびt2と、表示素子30の層厚との和であり、表示装置の端部の厚みは、t3およびt4と、表示素子30の層厚との和となる。ただし、表示素子30の層厚は、第一の基板10および第二の基板20の厚さに比べて小さいため、無視できるものとする。また、基板を薄板化(エッチング)する前においては、t1=t3、t2=t4である。表示装置の画面サイズは、例えば、20インチである。
【0040】
本実施の形態における製造方法では、まず、
図2の(a1)および(b1)に示すように、対向する一対の基板である第一の基板10と第二の基板20と表示素子30とを備える表示装置100を準備する。本実施の形態において、主面の面積が大きい方の基板である第一の基板10の端部には、プリント基板51と接続されたフレキシブルケーブル52が接続されている。
【0041】
次に、
図2の(a2)および(b2)に示すように、第二の基板20の端部の側面全周と当該端部の上面全周とを覆うように保護シール材(第一保護部材)60を形成する(第一保護部材形成工程)。すなわち、第二の基板20の端部における上面と側面とを跨がるようにして第二の基板20の全周に保護シール材60を形成する。保護シール材60が形成される領域に応じて、次の研磨工程において第二の基板20が研磨される領域が制限される。保護シール材60としては、例えばエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂またはUV硬化剤のような耐酸性の樹脂を用いることができるが、この限りではない。
【0042】
本実施の形態では、さらに次工程において基板間にエッチング液が浸入することを防ぐために、保護シール材60は、第一の基板10の表面から第二の基板20の端部を覆うように配置されるとともに、第一の基板10の端部と第二の基板20の端部との間の空隙においても、シール材40の外側部分に至るまで充填されることが望まれる。
【0043】
また、第一の基板10の下側面(第二の基板20側の面とは反対側の面)の全面に、マスキング材70を形成する。なお、必要に応じて、端子部50も袋や樹脂等で全周を覆って保護してもよい。保護シール材60およびマスキング材70は、いずれも研磨工程において、配線端子や表示素子などがエッチング液と接触して損傷を受けないようなものであればよく、この目的を満たすものであれば材質や形状は特に限定されるものではない。例えば、保護シール材60およびマスキング材70として、表面保護テープなども利用できる。
【0044】
その後、
図2の(a3)および(b3)に示すように、第二の基板20の上側の主面をフッ酸系溶液などのエッチング液に浸漬させることで、第二の基板20の主面を研磨する(第一研磨工程)。この研磨工程により、第二の基板20の中央部の板厚と端部の板厚とに差が生じる。すなわち、第二の基板20の上側の主面において、中央部の上面と端部の上面との間には高低差が生じる。
【0045】
また、第一研磨工程では、第二の基板20の厚さが最終的に所望する厚さよりも厚くなるような箇所まで第二の基板20を薄板化する。例えば、研磨する前の第二の基板20の初期の板厚t2、t4が0.7mmである場合において、最終的に中央部の板厚t2を0.2mmまで薄板化し、端部の板厚t4を0.4mmまで薄板化する場合、第一研磨工程では中央部の板厚t2が0.5mmになるまで薄板化する。すなわち、第二の基板20の端部を除く領域の研磨量(エッチング量)は、0.2mmである。このとき、保護シール材60で覆われた第二の基板20の端部の上面はほとんど薄板化されず、初期の板厚に近い値となる。なお、第二の基板20において、厚みの異なる端部の上面と端部以外の上面とはなだらかな曲線により結ばれている。
【0046】
次に、
図3の(a1)および(b1)に示すように、第二の基板20の主面全体を覆わずに、かつ、第二の基板20の端部における側面全周を覆うようにして、保護シール材(第二保護部材)80を第二の基板20に形成する(第二保護部材形成工程)。すなわち、第二の基板20に対しては、端部の上面を覆わないように当該端部の側面全周のみを保護シール材80で保護する。
【0047】
この場合、第一保護部材形成工程で用いた保護シール材60の基板端部の上面に形成された箇所のみを取り除き、残部を保護シール材80としてもよく、あるいは、一旦保護シール材60の全てまたは一部を取り除いた後に、保護シール材60とは別の保護シール材を第二の基板20の端部の上面を覆わないように形成することで保護シール材80を形成してもよい。なお、保護シール材60の除去方法は、手やナイフなどで該当する箇所の保護シール材60を剥がす機械的除去の他、溶剤を用いた化学的除去なども利用できる。また、別途形成する保護シール材80の材料としては、保護シール材60と同じものを用いることができる。
【0048】
また、第二保護部材形成工程では、第一保護部材形成工程における保護シール材60と同様に、次工程において基板間にエッチング液が浸入することを防ぐために、保護シール材80は、第一の基板10の端部と第二の基板20の端部との間の空隙においても、シール材40の外側部分に至るまで充填されることが好ましい。
【0049】
その後、
図3の(a2)および(b2)に示すように、第二の基板20の上側の主面をフッ酸系溶液などのエッチング液に再度浸漬させることで、第二の基板20の主面全体を研磨する(第二研磨工程)。この研磨工程では、第二の基板20の主面全体が露出しているので、中央部と端部とは同じ研磨量(エッチング量)でエッチングされ、中央部および端部はともに均一に薄板化される。したがって、この工程では、第二の基板20において、中央部の上面と端部の上面との間の高低差はほとんど変化しない。
【0050】
また、第二研磨工程では、第二の基板20の厚さが所望する厚さとなるような箇所まで第二の基板20を薄板化する。例えば、第一研磨工程の前における第二の基板20の初期の板厚t2、t4が0.7mmである場合において、最終的に中央部の板厚t2を0.2mmまで薄板化し、端部の板厚t4を0.4mmまで薄板化する場合、先の第一研磨工程で、中央部のみを、板厚t2が0.5mmになるまで薄板化したとき、第二研磨工程では、中央部の板厚t2が0.2mmになるまで、また、端部の板厚t4が0.4mmになるまでエッチング液に浸漬させる。すなわち、第二研磨工程では、第二の基板20の中央部および端部の研磨量(エッチング量)はともに0.3mmである。
【0051】
この研磨工程では、保護シール材80が第二の基板20の端部の側面から上面に跨がっていないので、エッチング液が保護シール材80と第二の基板20の端部との間に入り込んでいく。これにより、第二の基板20の端部は、エッチング液によって膜厚方向だけではなく主面に水平な方向にもエッチングされることになる。このため、
図3の(b2)に示すように、第二の基板20の端部の側面は基板中央側に後退することになる。この場合、基板端部の側面の後退量が大きくなりすぎて基板端部の側面が基板間のシール材40を超えてしまうと、エッチング液が基板内に浸入してしまい、エッチング液によって第二の基板20上の配線が腐食して配線不良が生じおそれがある。
【0052】
このため、本実施の形態では、第一研磨工程における第二の基板20の中央部の研磨量(0.2mm)は、第二研磨工程における第二の基板20(中央部)の研磨量(0.3mm)よりも小さくしたが、上記端部の側面の後退量を低減するには、第一研磨工程における第二の基板20の研磨量(エッチング量)は第二研磨工程における第二の基板20の研磨量(エッチング量)よりも大きい方が好ましい。これにより、第二の基板20の端部周辺がエッチング液に曝される時間を第二工程研磨工程のみとして短くすることができるので、エッチング液によって第二の基板20の端部の側面の後退量を低減することができる。これにより、第一の基板10と第二の基板20との間にエッチング液が浸入することを防止することができるので、エッチング液によって第二の基板20上の配線が腐食することを防止することができる。
【0053】
例えば、第二の基板20の厚みの初期値が0.7mmである場合、第一研磨工程での研磨量を0.3mmとし、第二研磨工程での研磨量を0.2mmとすると、第一研磨工程により板厚t2が0.4mmになり、第二研磨工程により板厚t2、t4はそれぞれ0.2mm、0.5mmになる。
【0054】
但し、第一研磨工程の研磨量と第二研磨工程の研磨量は同じであっても構わない。第一研磨工程と第二研磨工程との研磨量が同じであっても、エッチング液によって第二の基板20上の配線が腐食することを防止できるとともに、第二の基板20の端部の上面と端部以外の上面との間における高低差を小さくすることができる。
【0055】
例えば、第二の基板20の厚みの初期値が0.7mmである場合、第一研磨工程での研磨量を0.25mmとし、第二研磨工程での研磨量を0.25mmとすると、第一研磨工程により板厚t2が0.45mmになり、第二研磨工程により板厚t2、t4はそれぞれ0.2mm、0.45mmになる。
【0056】
第二の基板20を研磨した後は、保護シール材80およびマスキング材70を除去し、第一の基板10に対しても研磨を行うことで、
図3の(a3)および(b3)に示すように、第一の基板10を薄板化することができる。
【0057】
本実施の形態では、第一の基板10に関しても、
図2の(a2)および(b2)から
図3の(a2)および(b2)まで工程を繰り返すことにより、中央部と端部とが所望の板厚に薄板化された第一の基板10としている。すなわち、
図2の(a2)および(b2)と同様にして、第一の基板10の端部の側面全周と当該端部の上面全周とを覆うように保護シール材(第三保護部材)を形成し(第三保護部材形成工程)、その後、
図2の(a3)および(b3)と同様にして、第一の基板10の主面を研磨し(第三研磨工程)、その後、
図3の(a1)および(a2)と同様にして、第一の基板10の主面全体を覆わずに、かつ、第一の基板10の端部における側面全周を覆うように保護シール材(第四保護部材)を形成し(第四保護部材形成工程)、その後、第一の基板10の主面全体を研磨する(第四研磨工程)。
【0058】
なお、第一の基板10を研磨する場合においても、第二の基板20の場合で例示した寸法の板厚等を用いることができる。
【0059】
以上のようにして、本実施の形態に係る薄型の表示装置100を製造することができる。
【0060】
なお、第一の基板10と第二の基板20とを、いずれも中央部の板厚t1、t2を0.2mmにまで薄板化し、端部の板厚t3、t4を0.4mmにまで薄板化した場合、表示装置100の中央部の厚みは、t1とt2との和、つまり0.4mmとなる。
【0061】
このとき、
図3の(b3)に示すように、第一の基板10と第二の基板20の大きさ及び形状が異なる等して第一の基板10の端部と第二の基板20の端部とが上下で重なり合わない場合、表示装置100の厚みは基板中央部から端部に向かって、t1+t2、t1+t4、t3となり、この場合、表示装置100の最大厚みは、第一の基板10の板厚保t1(0.2mm)と、第二の基板20の端部の板厚t4(0.4mm)との和(0.6mm)となる。
【0062】
一方、第一の基板10と第二の基板20の大きさ及び形状が同一であって、第一の基板10の端部と第二の基板20の端部が上下で重なり合う場合、表示装置100における最大厚みは、第一の基板10の端部の板厚t3(0.4mm)と、第二の基板20の端部の板厚t4(0.4mm)の和(0.8mm)となる。
【0063】
ここで、本実施の形態に係る表示装置100を湾曲させる場合における第一の基板10及び第二の基板20の板厚範囲について、
図4を用いて説明する。
図4は、基板の板厚に対する、曲げたときの基板の曲率半径とその曲げにより生じる引張応力との関係を示す図である。
図4では、ガラス基板の板厚が0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.7mmの場合において、各基板を曲げたときにおける基板の曲率半径と引張応力との関係を図示している。この場合、引張応力σは、以下の式(1)で算出される。なお、(式1)において、Eはヤング率であり、tは基板の板厚である。
【0065】
基板を湾曲化させた場合において基板の割れを防ぐためには、基板の厚みは、曲げにより破壊する応力が約50MPa以下となる厚みにする必要がある。したがって、
図4に示すように、例えば湾曲させる基板の目標曲率半径をR=400とすると、
図3の(b3)に示される表示装置100を湾曲させる場合、第一の基板10と第二の基板20とを合わせた最も厚い箇所の板厚(t1+t4)を0.5mm以下にすることが望まれる。なお、基板の破壊応力の目安は、40〜50MPaである。
【0066】
具体的には、第一の基板10および第二の基板20の主面の板厚t1、t2を0.7mmから0.1mmまで薄くする場合を考えると、第二の基板20の端部の板厚t4の目標の厚みは0.4mm以下となる。この場合、第二の基板20の研磨において、第一研磨工程にて第二の基板20の上端面を覆って主面を0.3mm研磨して主面の板厚t2を0.4mm厚さまで研磨した後(板厚t4は0.7mmのまま)、第二研磨工程にて第二の基板20の上端面を覆わずに全体を0.3mm研磨することで、主面の板厚t2が0.1mmで端部の板厚t4が0.4mmである第二の基板20を得ることができる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態に係る表示装置の製造方法は、二段階の研磨工程によって基板の主面を研磨して薄板化するものである。そして、本実施の形態によれば、第一研磨工程では、第二の基板20の端部における側面全周および上面全周が保護シール材60で保護された状態で第二の基板20の主面の一部が板厚方向にエッチング除去される。このため、第一研磨工程では、第二の基板20の主面のうち、端部領域(端部の上面)は薄板化されずに、端部を除いた部分(保護シール材60で覆われていない露出部分)の領域が薄板化される。また、第二研磨工程では、端部を含む第二の基板20の主面全体が露出した状態で第二の基板20の主面の一部が板厚方向にエッチング除去される。このため、第二研磨工程では、第二の基板20の端部を含めて第二の基板20の主面全体がエッチングされて薄板化される。
【0068】
このように、本実施の形態では、第二の基板20の主面の端部領域については第二研磨工程のみでエッチングされる一方で、端部領域を含む第二の基板20の主面の全体領域については第一研磨工程および第二研磨工程でエッチングされる。これにより、第二の基板20の端部の上面と当該端部以外の部分(例えば基板中央)の上面との間における高低差を小さくすることができる。したがって、第二の基板20の強度を曲げ応力に対して強くすることができ、曲げ応力に対する耐性の高い表示装置を実現することができる。
【0069】
また、フレキシブルケーブルやプリント基板などの端子部が接続された状態で基板を薄板化する場合、本実施の形態のように、第二の基板20の端部の側面と上面との全周を保護シール材60で覆った状態で第二の基板20の主面を研磨する第一研磨工程と、第二の基板20の端部の上面を除いた全周を保護シール材80で覆った状態で第二の基板20の主面全体を研磨する第二研磨工程とを段階的に行うことにより、第二の基板20の端部からエッチング液が浸入するリスクを最小限にとどめながら、端部も含めて第二の基板20全体を所望の厚さに薄板化することができる。これにより、第二の基板20とフレキシブルケーブルとの接続部分などの配線が腐食することを防止することができるので、配線不良の発生を防止することができる。したがって、表示品位の劣化を招くことなく薄板化した表示装置を得ることができる。
【0070】
このように薄板化された表示装置は、第一の基板10および第二の基板20がガラスの様な剛直性のある素材であっても曲げ応力に対して強く、また柔軟性を有する様になるので、湾曲ディスプレイとしてその用途が広がる。
【0071】
また、表示装置を湾曲化する場合、曲げ応力に対して破壊応力を超える厚みが面内に存在しないように、第一の基板10および第二の基板20の端部までなるべく薄板化することが好ましい。しかしながら、第二の基板20(第一の基板10)の端部の側面のみを保護部材で保護して端部の上面を保護せずにエッチングを行うと、エッチング液が保護部材と第二の基板20(第一の基板10)の端部との間に入り込んで当該端部の側面がエッチングによって後退し、この結果、エッチング液が基板間に浸入して、配線が腐食して配線不良が生じる場合がある。逆に、第二の基板20(第一の基板10)の端部の上面を保護部材で保護したまま最後までエッチングすると、当該端部が初期の板厚のまま残ることになり、第二の基板20(第一の基板10)が湾曲した時に割れが発生するという問題がある。
【0072】
これに対して、本実施の形態における製造方法によれば、第二の基板20(第一の基板10)の端部の上面を保護した状態で研磨する第一研磨工程と、第二の基板20(第一の基板10)の端部の上面を保護せずに研磨する第二研磨工程とを段階的に行うため、第二の基板20(第一の基板10)の端部を所望の曲げが可能な厚みまで薄板化するといった調整が可能となる。
【0073】
従って、本実施の形態によれば、基板内部へのエッチング液の浸入防止と基板端部の適度な薄板化との両立を図ることができるので、表示装置の表示品質の劣化防止と湾曲化時の割れ防止との両立が期待できる。
【0074】
以上、本発明に係る表示装置の製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。
【0075】
例えば、上記の実施の形態において、第一の基板10と第二の基板20は、いずれも同じ厚さの基板を使用したが、厚さの異なる基板を使用してもよい。また、第一の基板10と第二の基板20の材質は、ガラスに限らない。第一の基板10および第二の基板20としては、透明絶縁基板、金属基板、または、プラスチック製の樹脂基板などを用いてもよく、また、同材質または異なる材質の組合せとしてもよい。
【0076】
また、上記の実施の形態において、最終的な第一の基板10の中央部の板厚t1と第二の基板20の中央部の板厚t2とが同じであり、最終的な第一の基板10の端部の板厚t3と第二の基板20の端部の板厚t4とが同じになっている。しかしながら、板厚t1と板厚t2とが同じである必要はなく、板厚t3と板厚t4とが同じである必要も無い。すなわち、研磨後における第一の基板10の板厚と第二の基板20の板厚とが異なっていてもよい。本発明においては、第一の基板10および第二の基板20の少なくともどちらか一方について、基板の中央部と端部とで異なる板厚となり、中央部に対して端部が厚く形成されていればよい。
【0077】
また、上記の実施の形態において、第一の基板10または第二の基板20を薄く加工する研磨方法として、フッ酸と硫酸との混合溶液の様な基板を溶かす強酸性溶液(エッチング液)中に基板を浸漬する方法を用いたが、溶液(エッチング液)を散布して行う方法などを用いてもよい。また、上記の実施の形態では、エッチング液を用いた化学的な研磨方法を用いたが、研磨剤などを用いて研磨機を使用して研磨する機械的な研磨方法との組合せである化学的機械的研磨(CMP)などを用いても良く、その他、通常のガラスの研磨やエッチングに用いられている汎用の処理技術または処理装置をそのまま利用してもかまわない。
【0078】
また、上記の実施の形態では、工程順序が、第一保護部材形成工程、第一研磨工程、第二保護部材形成工程および第二研磨工程の順序となるように行ったが、必ずしも上述の通りの順序で実施されるものには限定されない。また、上記の実施の形態では、二段階に渡って保護部材形成工程と研磨工程とを行っているが、保護部材形成工程および研磨工程は二段階に限らず、三段階以上にわたって行ってもよい。また、上記の実施の形態では、第二の基板20を薄板化した後に、第一の基板10の薄板化を行ったが、この限りではなく、両方の基板を同時に薄板化してもよく、順番を逆に行ってもよく、あるいは、どちらか一方のみの基板を薄板化してもよい。
【0079】
また、上記の実施の形態において、保護シール材60により、第一の基板10の端部の上面全周および側面全周を覆ったが、必ずしも基板端部の全周を覆う必要はない。ただし、上記の実施の形態のように、フレキシブルケーブル52が接続された表示装置をエッチングする場合には、配線の腐食を防止するために、基板端部の上面全周および側面全周を保護シール材60で覆うことが好ましい。なお、保護シール材80についても同様に、必ずしも基板端部の側面全周を覆う必要はない。
【0080】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。