【実施例】
【0101】
図14のアセンブリ装置60を用いて、
図11(a)から
図13(d)に示す工程によりHSA−CtW工程を実施した。特に断らない限り、三次元集積回路は
図11(a)から
図13(d)に示す製造方法で作製している。チップ支持基板42の電極46はバイポーラ型を用いた。アセンブリ装置60に用いた主要部を以下に示す。
スカラーロボット63:YAMAHA社製、YK600X
高精度液滴吐出部64、液滴供給部65:岩下エンジニアリング社製、AD3000CLLL
静電吸着用電源66:松定プレシジョン社製、HECA−3B10X2LPo
プローブ67:日本マイクロニクス社製、708fT−008
傾き補正機構73:坂本電機製作所製自動精密整準台(オートステージAS−21)
第1のカメラ68及び第2のカメラ69:キーエンス社製、カメラCV−200M及びCV−5500コントローラ
【0102】
(TSVの形成)
貫通穴の側壁を、SiO
2膜で被覆した。形成されたSiO
2膜上にバリヤ層となるTiNと、銅(Cu)をスパッタ法で被覆した。
次に、貫通穴にCuメッキでCuプラグを形成すると共に、自己組織化されたチップ33Aの表面にCuとAg/Snからなるマイクロバンプ38を形成した。マイクロバンプ38は、CuメッキとAg/Snの蒸着等の工程により形成した。
【0103】
図16は、アセンブリ装置60でボンディングされたチップ33Aの光学像を模式的に示す図である。
図16に示すように、チップ支持基板42となる8インチのSi基板上には、厚さが140μmで大きさが、3mm角、5mm角、4mm×9mm角、および10mm角の4種類のチップ33Aが、連続的にかつ正確に自己組織にアセンブルされていることが分かる。
【0104】
図17(a)および
図17(b)はチップのアライメント精度を示す図で、
図17(a)は本実施例、
図17(b)は比較例2である。
図17(a)に示すように、本実施例の場合には、チップ33Aのアライメント精度は1μm以内であることが分かる。さらに、
図17(b)に示すように、静電吸着を行なわない比較例2では、チップのアライメント精度は±3μmとばらつくことが分かる。実施例においては、チップ33Aをチップ支持基板42に静電吸着させることにより、チップ転写等の工程において、チップを固定できる。このため、比較例2に比べアライメント精度を向上できる。
【0105】
(静電マルチチップの仮ボンディング技術)
図18は、チップ支持基板42の光学像を模式的に示す図である。親水性領域44は、電極46が形成された領域に渡り形成されているが、
図18では、親水性領域44の一部を破線で示した。
図18に示すように、チップ支持基板42はAl/Wからなる櫛歯電極46と、酸化膜からなる親水性の親水性領域44と、これを囲む疎水性のフッ化炭素が形成された疎水性領域45とから構成されている。親水性領域44には、陽極46Aおよび陰極46Bが設けられている。
チップの自己組織化の後で、Al/Wからなる陽極46Aおよび陰極46Bに接続される2つの電極パッドの間に100V又は200VのDC高電圧が印加される。直流電圧は、静電吸着力を発生する。静電吸着力は、上記(1)式の静電力で表される。
【0106】
図19(a)および
図19(b)は、静電吸着力におけるパラメータの影響を調べた図である。
図19(a)は、陽極64Aと陰極64Bとの間に印加した直流電圧である印加電圧が静電吸着力に及ぼす影響を示す。
図19(b)は、電圧を印加した後のアニール温度が静電吸着力に及ぼす影響を示す。
図19(a)および
図19(b)の横軸は陽極64Aと陰極64Bとの間に電圧を印加した後の保持時間(分)、縦軸は陽極46Aおよび陰極46B間の電圧である。電圧は、静電吸着力に相当する。
図19(a)における印加電圧は、100V、200V、300Vおよび400Vである。
図19(b)におけるアニール温度は、100℃、200℃および300℃であり、アニール時間は10分である。印加電圧は200Vである。比較のためアニールしない(ベークしない)データも示している。
図19(a)に示すように、印加電圧が100V及び200Vの場合、静電吸着力は、15分迄は保持されていることが分かる。
図19(b)に示すように、静電的な仮ボンディングの後、100℃のアニール温度においても静電吸着力は影響を受けないことが分かる。
【0107】
(ユニポーラ型電極による静電吸着)
静電吸着は、ユニポーラ型電極を用いても可能である。
図20(a)および
図20(b)は、ユニポーラ型電極46による静電吸着力におけるパラメータの影響を調べた図であり、
図20(a)は印加電圧の影響、
図20(b)は温度の影響を示す。
図20(a)および
図20(b)の横軸は保持時間(分)であり、縦軸は電圧である。
図20(a)に示すように、印加電圧が100V及び200Vの場合、静電吸着力は、10分迄は低下するが10分以降は保持されていることが分かる。この場合、基板42Aに形成されている熱酸化膜42Bはp−TEOS酸化膜とは接触していない。
図20(b)に示すように、静電的な仮ボンディングの後、100℃のアニール温度においても静電吸着力は影響を受けないことが分かる。この場合、基板42Aに形成されている熱酸化膜42Bはp−TEOS酸化膜(親水性領域44)と接触している。
【0108】
図18に示す、櫛歯電極46を有しているチップ支持基板42に高電圧が印加された後に、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の特性を測定した。
図21(a)および
図21(b)は、MOSFETの特性を示す図である。MOSFETのゲート長およびゲート幅はいずれも10μmである。ゲート酸化膜の膜厚は3nmである。
図21(a)および
図21(b)は、電極46に電圧を印加する前、電極46に100Vの電圧を10分印加した後、電極46に100Vの電圧を30分印加した後の特性を示している。
図21(a)は、ドレイン電圧が1.0Vおよび2.5Vのドレイン電流−ゲート電圧(I
D−V
G)特性およびゲート電流−ゲート電圧(I
G−V
G)特性を示す。
図21(b)は、ゲート電圧が1.5V、2.0Vおよび2.5Vのドレイン電流−ドレイン電圧(I
D−V
D)特性およびボディ電流−ドレイン電圧特性を示す。
【0109】
図21(a)および
図21(b)に示すように、電圧印加前、電圧を10分および30分印加後において、いずれの特性も一致している。このように、MOSFETの閾値電圧、ゲート漏れ電流、出力特性及び基板電流は、電極46に印加されるDC電圧により影響を受けないことが分かる。
【0110】
図22(a)から
図22(d)は、静電的な仮ボンディングの後の自己組織化チップ33Aを示す図である。
図22(a)は、静電的な仮ボンディングの後のチップ支持基板42表面、
図22(b)は、チップ支持基板42から接着ウェハ43にトランスファーした後の接着ウェハ43の表面、
図22(c)は、厚さを140μmから25μmにしたマルチチップ薄化後の接着ウェハ43の表面、
図22(d)は自己組織化したチップ33Aにボッシュプロセスを用いSiビア(Si Via)37B(チップ33Aを貫通する貫通孔)を形成した断面のSEM(Scanning Electron Microscope)像を模式的に示す図である。
図22(a)、および
図22(b)に示すように、放電により自己組織化されたチップ33Aは、15μmの厚さの熱的に安定な接着層43Aがスピンコートされた接着ウェハ43に転写されることが分かる。
【0111】
図22(d)に示すように、直径が10μmで深さが約25μmの深いビア37Bが、トランスファーされたチップ33Aの垂直方向に形成されることが分かる。ビア37Bは、ボッシュプロセスで形成される。ビア37Bの形成には、SF
6とC
4F
8ガスによるICP(Inductively Coupled Plasma)−RIEを用いる。ビア37Bの形成後にフォトレジスト37Aが剥離される。
【0112】
図23(a)から
図23(c)は、Cu/AgSnからなるマイクロバンプ38同士を多数直列接続したDaisy Chainと呼ばれる配線パターンの印加電圧に対する電流(上図)と抵抗(下図)の特性を示す図である。マイクロバンプ38のピッチは、
図23(a)が40μm、
図23(b)が60μm、
図23(c)が80μmである。
図23(a)から
図23(c)に示すように、これらのCu/AgSnからなるマイクロバンプ38同士は電気的に接続されており、その抵抗は十分に小さいことが分かる。
図23(a)のように、40μmのピッチの配線パターンは、バンプが5096個接続されており、バンプ1個当りのバンプと配線の抵抗は67.5mΩである。
図23(b)のように、60μmのピッチの配線パターンは、バンプが732個接続されており、バンプ1個当りのバンプと配線の抵抗は173mΩである。
図23(c)のように、80μmのピッチの配線パターンは、バンプが564個接続されており、バンプ1個当りのバンプと配線の抵抗は2705mΩである。なお、これらの抵抗にはTSVの抵抗は含まない。
【0113】
図24は、非導電性フィルムである間隙充填樹脂39を介してボンディングしたCu/AgSnからなるマイクロバンプ38の像の模式図である。
図24の下図はTEM(Transmission Electron Microscope)像の模式図、
図24の上図はX線分析のマップ図を示している。
図25(a)および
図25(b)は、
図24の下図に示すp及びqの箇所におけるX線分析スペクトルを示す図である。X線分析は、エネルギー分散型(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)の検出器を用いて行った。
図24の下図に示すように、TEM断面において、Si、マイクロバンプおよびNCF(間隙充填樹脂)が観察される。
図24の上図において、
図24の下図の破線の領域80におけるCu−K線、Sn−L線、Si−K線およびC−K線の強度の強い領域をクロスで示している。マイクロバンプ領域において、CuおよびSnが多く検出される。SiにおいてはSi、NCFにおいてはCが多く検出される。
図25(a)および
図25(b)に示すように、マイクロバンプのボンディング界面付近であるp及びqの箇所において、NCFの主成分であるCはほとんど検出されず、SnとCuが検出されている。このように、ボンディング界面では、金属間化合物が形成されている。よって、マイクロバンプ38同士は構造的に接続されている。非導電性フィルムである間隙充填樹脂39に由来する炭素は、ボンディング界面では測定されなかった。
【0114】
図26は、30μmピッチのマイクロバンプ38同士を多数直列接続したDaisy Chainと呼ばれる配線パターンの電流I−電圧V特性を示す図である。TSVパターンを用いることにより、抵抗R1からR3の和が測定できる。抵抗R1はウェハ32上に形成された配線31の抵抗、抵抗R2は、マイクロバンプ38およびチップ33Aに形成されたTSV37の抵抗、抵抗R3はチップ33Aに形成された配線31の抵抗である。
図26に示すように、Cu−TSV37が高イールドで形成され、I−V特性は抵抗性電極であることが分かる。
【0115】
第1のトランスファー後と第2のトランスファー後のアライメント精度を赤外線で観察した。
図27(a)および
図27(b)は、赤外線像を模式的に示している。アライメントマーク82と位置合わせずれ測定パターン84が図示されている。
図27(a)は接着ウェハ43へのトランスファー後、
図27(b)はNCFを介して目標ウェハとなる半導体ウェハ32へのトランスファー後の像の模式図である。
図27(a)および
図27(b)から、自己組織化と熱圧着によりマルチチップ33を2回トランスファーした後で、アライメント精度は1μm以内であることが分かる。
【0116】
図28は、HSA−CtWにより3D積層し、接着ウェハ43から他の目標ウェハ32に自己組織化された薄いチップ33がトランスファーされた後の断面のSEM像を示す図である。
図28に示すように、KGDチップ33AがHSA−CtWにより3D積層していることが分かる。
【0117】
表1は、本実施形態の変形例1の製造方法と比較例の製造方法を比較した表である。表1から、変形例1の製造方法によれば、高スループットと高イールドで三次元集積回路30を製造することができ、低コストであることが分かる。なお、スループットは、1枚のウェハに1万個のチップが形成されている例である。
【表1】
【0118】
表1から分かるように、変形例1の三次元集積回路30の製造方法によれば、熱圧着工程に要する加熱と冷却時間は、20分/ウェハ、チップのアライメント精度は1μmよりも小さく、1万チップのアセンブリのスループットは約1.2時間となり、比較例1のCtWおよび比較例2に比較して、多品種・少量生産の三次元集積回路を低コストで製造することがきる。
(変形例2)
【0119】
以下に本実施形態の別の変形例について説明する。変形例2は、
図11(a)から
図13(d)で示した変形例1に対し、チップ33Aの液体15上への配置の方法を変えた例である。
図29(a)から
図31(d)は変形例2に係る三次元集積回路の製造方法を示す断面図である。なお、図では1つの三次元集積回路の範囲を図示しているが、例えば
図16のようにチップ支持基板42、接着ウェハまたは半導体ウェハ32上に複数のチップ33Aが配列している。
【0120】
図29(a)に示すように、チップ支持基板42を準備する。チップ支持基板42は、主に基板51、電極46、親水性領域44および疎水性領域45を備えている。基板51としては、半導体基板または絶縁体基板を用いることができる。その他、
図4において例示した材料を用いることができる。基板51の上面に電極46が形成されている。電極46の材料は、例えばAu、AlまたはCuを含む金属、または金属以外の導電体である。チップ支持基板42の上面には親水性領域44および疎水性領域45が形成されている。親水性領域44は、例えば親水性を有する層であり、例えば酸化シリコン膜または窒化シリコン膜等の絶縁膜である。親水性領域44および疎水性領域45として
図4で説明した材料を用いることができる。また、基板51の表面が疎水性の場合、親水性領域44に形成された親水性の層以外の領域を疎水性領域45とすることもできる。
【0121】
図29(b)に示すように、親水性領域44上に液体15を適下する。疎水性領域45には液体15が吸着しないため、複数の親水性領域44上にのみそれぞれ液体15が配置される。液体15としては水を用いるが、
図4で説明した液体を用いることができる。複数の液体15上にチップ33Aをそれぞれ配置する。例えば、
図2で説明したようなマルチチップピックアップツールを用いることにより、ウェハ状のチップ支持基板42上の複数の液体に一度にチップ33Aを配置できる。チップ33Aは複数回に分けて配置してもよい。チップ33Aは例えばシリコンチップであり、上部に素子形成領域34を有している。素子形成領域34の上面にマイクロバンプ38が形成されている。マイクロバンプ38は、Cu、Auまたは半田等の金属、金属以外の導電体を主に含み、素子形成領域34に電気的に接続されている。
【0122】
図29(c)に示すように、液体15が蒸発すると、チップ33Aは、液体15の表面張力により、親水性領域44上に自動的にX方向、Y方向および回転方向に位置決めされ、かつ親水性領域44に吸着する。つまり、チップ33Aは親水性領域44に自己組織的に吸着する。
図29(b)の工程で、疎水性領域45を除去してもよい。
【0123】
図29(d)に示すように、電極46に電圧を印加する。陽極46Aに正電圧、陰極46Bに負電圧を印加する。これにより、チップ33Aはチップ支持基板42に静電吸着される。バイポーラ型の静電吸着を行なうため、1つの親水性領域44には、少なくとも1つの陽極46Aと少なくとも1つの陰極46Bが形成されていることが好ましい。
【0124】
図30(a)に示すように、接着ウェハ43の接着層43Aをチップ33Aの上面に貼りつける。例えば、チップ支持基板42上の全てのチップ33Aを接着ウェハ43に貼りつける。
【0125】
図30(b)に示すように、電極46に逆電圧を印加する。すなわち陽極46Aに負電圧、陰極46Bに正電圧を印加する。これにより、チップ33Aは、チップ支持基板42から離脱する。
【0126】
図30(c)に示すように、接着ウェハ43上にチップ33Aを覆うように樹脂モールド41を形成する。樹脂モールド41はチップ33Aを固定するものである。
図30(c)において樹脂モールド41の形成は行なわず、チップ33Aから33Cを積層した後に形成してもよい。この場合、疎水性領域は形成されない。
【0127】
図30(d)に示すように、樹脂モールド41の上面を研磨する。これにより、チップ33Aの上面が露出する。さらに、研磨を行ない、チップ33Aを薄膜化してもよい。
【0128】
図31(a)に示すように、チップ33Aを上下に貫通するTSV37を形成する。TSV37は、CuまたはAu等の金属または導電材料を主に含む。チップ33Aの上面にマイクロバンプ38を形成する。チップ33Aの上下のマイクロバンプ38はTSV37を介し電気的に接続される。
【0129】
図31(b)に示すように、半導体ウェハ32を接着ウェハ43上に位置合わせし配置する。半導体ウェハ32は、例えばシリコンウェハであり、上部(
図31(b)では下)に素子形成領域34を備えている。素子形成領域34上にマイクロバンプ38が形成されている。マイクロバンプ38を覆うように間隙充填樹脂39が形成されている。
【0130】
図31(c)に示すように、半導体ウェハ32をチップ33A上に貼り付ける。チップ33Aの上面のマイクロバンプ38と半導体ウェハ32のマイクロバンプ38とを接合させる。接着層43Aからチップ33Aを剥離する。剥離方法は
図13(c)と同じである。
【0131】
図29(a)から
図31(c)を繰り返すことによりチップ33A上にチップ33Bを積層する。同様に、チップ33B上にチップ33Cを積層する。ダイシング法等を用いウェハ状態の積層体を切断することにより、三次元集積回路が形成される。
【0132】
図11(a)から
図13(d)において説明した変形例1においては、
図11(b)および
図11(c)において、チップ33Aを1つずつ液体15上に配置し、チップ33Aを1つずつチップ支持基板2に吸着させる。一方、変形例2においては、
図29(b)および
図29(c)のように、複数のチップ33Aを一括して液体15上に配置し、チップ支持基板42に自己組織的に吸着させる。例えば、異なる種類のチップ33Aをチップ支持基板42に自己組織的に吸着させる。これにより、スループットを高くできる。
(変形例3)
【0133】
変形例3は、
図5(a)から
図7(d)において示した実施形態に対し、チップ3Aへの静電力の印加方法を変えた例である。
図32(a)から
図34(d)は変形例3に係る三次元集積回路の製造方法を示す断面図である。なお、図では1つの三次元集積回路の範囲を図示しているが、例えば
図16のようにチップ支持基板2上に複数のチップ3Aが配列している。
【0134】
図32(a)に示すように、
図5(a)と同様に、親水性領域4、疎水性領域5および電極6を備えるチップ支持基板2を準備する。
図32(b)に示すように、チップ支持基板2を上下に貫通する貫通電極11を形成する。貫通電極11は、Cu等の金属または導電材料を主に含む。チップ支持基板2上にマイクロバンプ8を形成する。マイクロバンプ8は、親水性領域4を形成する絶縁膜に埋め込まれている。マイクロバンプ8の表面は絶縁膜から露出している。
【0135】
図32(c)に示すように、親水性領域4上に液体15を適下する。疎水性領域5には液体15が吸着しないため、複数の親水性領域4上にのみに液体15が配置される。液体15としては例えば水を用いる。複数の液体15上にチップ3Aをそれぞれ配置する。チップ3A上(図では下)には絶縁膜7が形成されている。絶縁膜7は、例えば酸化シリコン膜または窒化シリコン膜である。絶縁膜7の材料は、親水性領域4を形成する絶縁膜と同じでもよいし、異なっていてもよい。チップ3A上にはマイクロバンプ8が形成されている。マイクロバンプ8は、絶縁膜7に埋められ、マイクロバンプ8の表面は絶縁膜7から露出している。なお、例えば絶縁膜7としてNCFを用いる場合、マイクロバンプ8の表面は絶縁膜から露出していなくともよい。電極6に電圧を印加する。陽極6Aに正電圧、陰極6Bに負電圧を印加する。これにより、チップ3Aにはアライメント精度が向上するように静電力が生じる。
【0136】
図32(d)に示すように、液体15が蒸発することにより、チップ3Aがチップ支持基板2の親水性領域4上に吸着される。熱圧着することにより、マイクロバンプ8同士を接合する。なお、
図6(b)と同様に液体15が蒸発してから電極に電圧を印加してもよい。また、
図32(d)において、疎水性領域5を除去してもよい。
【0137】
図33(a)に示すように、チップ3Aの背面(図では上面)を研磨し、チップ3Aを薄化する。
図33(b)に示すように、チップ3A間に樹脂モールド13を形成する。
図33(b)において樹脂モールド13の形成は行なわず、チップ3Aから3Cを積層した後に形成してもよい。この場合、疎水性領域は形成されない。
図33(c)に示すように、チップ3Aの背面に電極6を形成する。電極6を覆うように、チップ3A上に親水性領域4として絶縁膜を形成する。親水性領域4以外の領域に疎水性領域5を形成する。疎水性領域5は、樹脂モールド13の表面でもよい。
図33(d)に示すように、チップ3Aを上下に貫通するTSV17を形成する。親水性領域4である絶縁膜内にマイクロバンプ8を形成する。チップ3A上に形成されたマイクロバンプ8と
チップ支持基板2上に形成されたマイクロバンプ8は、TSV17を介し電気的に接続される。マイクロバンプ8の表面は絶縁膜から露出される。
【0138】
図34(a)に示すように、チップ3Aの親水性領域4上に液体15を滴下する。液体15上にチップ3Bを一括して配置する。チップ3Aの電極6に電圧を印加する。これにより液体15の表面張力と静電力によりチップ3Bが自己組織的に位置決めされる。
図34(b)に示すように、液体15が蒸発した後に、チップ3Aと3Bのマイクロバンプ8を接合する。
図34(c)に示すように、チップ3Bを薄化する。チップ3B内にTSV17、チップ3B上に電極6、親水性領域4、マイクロバンプ8を形成する。チップ3B間に樹脂モールド13を形成する。
【0139】
図34(d)に示すように、同様に、チップ3B上にチップ3Cを積層する。チップ3Aから3Cは樹脂モールド13に封止される。ダイシング法等を用いウェハ状態の積層体を切断することにより、三次元集積回路が形成される。
【0140】
疎水性領域5は、液体15を滴下後、除去するか低疎水性に改質してもよい。樹脂モールド13はチップ3Aから3Cを積層した後に一括して形成してもよい。
【0141】
変形例3では、チップ3Aから3Cはフェースダウンで積層されている。これにより、チップ3Aまたは3Bが積層された後に、チップ3Aまたは3Bを薄化できる。また、チップ3Aまたは3B内にTSV17を、チップ3Aまたは3B上に電極6およびマイクロバンプ8を形成できる。薄化されており、TSV、マイクロバンプおよび電極が形成されているチップを用いれば、チップ3Aから3Cをフェースアップで積層してもよい。
【0142】
図35(a)から
図35(c)はチップをチップ支持基板に吸着させる際の断面図である。
図35(a)に示すように、変形例1および変形例2のように、チップ支持基板42上にチップ33Aを直接に吸着させる場合、電極46とチップ33Aとの距離L1は小さい。よって、式1のように、チップ33Aに加わる静電力26aは大きい。
【0143】
図35(b)に示すように、実施形態のように、マイクロバンプ8を介しチップ支持基板2とチップ3Aを吸着する場合、電極6とチップ3Aとの距離L2が大きい。例えば、マイクロバンプ8の高さは10μm程度であり、距離L2は20μm程度となる。よって、チップ3Aに加わる電磁力26bは小さく、チップ3Aに対する静電吸着力が小さくなる。
【0144】
図35(c)に示すように、変形例3では、マイクロバンプ8は絶縁膜7および親水性領域4を形成する絶縁膜に埋め込まれている。これにより、電極6とチップ3Aとの距離L3を小さくできる。よって、チップ3Aに加わる静電力26cを大きくできる。
【0145】
また、
図35(b)のように、電極6とチップ3Aとが離れている場合、液体15がある状態で電極6に電圧を印加する。式1から、液体の誘電率が大きいと、チップ3Aに加わる静電力を大きくできる。
(変形例4)
【0146】
変形例4は、チップ支持基板から半導体ウェハにチップを転写する例である。
図36(a)から
図38(c)は変形例4に係る三次元集積回路の製造方法を示す断面図である。なお、図では1つの三次元集積回路の範囲を図示しているが、例えば
図16のようにチップ支持基板42上または半導体ウェハ32に複数のチップ33Aが配列している。
【0147】
図36(a)に示すように、
図29(a)と同様にチップ支持基板42を準備する。
図36(b)に示すように、親水性領域44上に液体15を滴下する。液体15上にチップ33Aを配置する。チップ33Aは一括して配置する。チップ33Aは上部に素子形成領域34を備えている。素子形成領域34上にマイクロバンプ38が形成されている。マイクロバンプ38を覆うように素子形成領域34上に間隙充填樹脂39が形成されている。チップ33Aは、素子形成領域34の逆の側が液体15上に配置される。
【0148】
図36(c)に示すように、液体15を蒸発させ、電極46に電圧を印加することにより、チップ33Aを液体15の表面張力と電極46による静電吸着によりチップ支持基板42に吸着させる。なお、変形例3の
図32(c)のように、液体15の存在する状態で電極46に電圧を印加してもよい。
【0149】
図37(a)に示すように、チップ33A上に半導体ウェハ32を位置合わせし配置する。半導体ウェハ32上には素子形成領域34が形成され、素子形成領域34にマイクロバンプ38が形成されている。
【0150】
図37(b)に示すように、チップ33A上のマイクロバンプ38を半導体ウェハ32下のマイクロバンプ38に接合させる。これにより、チップ33Aが半導体ウェハ32に接合させる。
【0151】
図37(c)に示すように、電極46に逆電圧を印加することにより、チップ33Aがチップ支持基板42から離脱する。これにより、チップ支持基板42から半導体ウェハ32にチップ33Aが一括して転写される。なお、疎水性領域45は、
図37(c)まで、除去しなくともよい。
【0152】
図38(a)に示すように、上下を逆にし、チップ33Aの裏面(上面)を研磨することにより、チップ33Aを薄化する。
図38(b)に示すように、チップ33Aを貫通するTSV37を形成する。チップ33Aの上面にマイクロバンプ38を形成する。
【0153】
図38(c)に示すように、
図36(a)から
図37(b)を繰り返すことにより、チップ33A上にチップ33Bを積層する。チップ33B上にチップ33Cを積層する。その後、チップ33Aから33Cを樹脂モールドを用い封止する。積層体を切断することにより三次元集積回路が完成する。
【0154】
変形例4は、変形例2と比べ接着ウェハ43を用いず、チップ支持基板42から直接半導体ウェハ32にチップを転写できる。
【0155】
電極46の配置の別の例である。
図39(a)は、チップ支持基板の平面図、
図39(b)および
図39(c)はA−Aに相当する断面図である。
【0156】
図39(a)に示すように、チップ支持基板42の上面には複数の電極46が形成されている。電極46には陽極46Aと陰極46Bが含まれる。電極46は格子状に配列されている。電極46は、正方形の格子状でなくとも、例えば菱形格子状、三角格子状でもよい。陽極46Aと陰極46Bとは互い違いに配列されている。親水性領域44内には複数の陽極46Aおよび複数の陰極46Bが配列されている。
【0157】
図39(b)に示すように、親水性領域44上に液体15を介しチップ33Aが配置されている。陽極46Aに正電圧、陰極46Bに負電圧を印加すると、陽極46Aから陰極46Bに電気力線47が伸びる。液体15は空気に比べ比誘電率が高く、電気力線47が密になる。このため、親水性領域44の中心の電気力線47が最も密となる。チップ3Aの中心が親水性領域44の中心に移動するように静電力27が発生する。
【0158】
図39(c)に示すように、チップ33Aは、親水性領域44に精度よく位置決めされる。このように、液体15の表面張力に加え静電力により、チップ33Aのアライメント精度が向上する。
【0159】
図40(a)および
図40(b)は、チップ支持基板の別の例を示す平面図である。
図40(a)および
図40(b)に示すように、チップ支持基板42上には複数の電極46が格子状に配列されている。チップ支持基板42は例えば多層基板である。チップ支持基板42内には、電極46間を電気的に接続する配線が形成されている。制御部49は、電極46間の配線を任意に接続することができる。例えば、
図40(a)に示すように、陽極46Aと陰極46Bとが互い違いになるように陽極用配線48Aおよび陰極用配線48Bを接続する。これにより、チップに加わる静電力を大きくできる。
【0160】
図40(b)に示すように、近接する4つの電極46を陽極46A、近接する4つの電極46を陰極46Bとするように、配線する。これにより、チップに加わる静電力を小さくできる。このように、制御部49が電極46を任意に配線することで、チップの静電吸着力を制御することができる。
【0161】
本実施形態およびその変形例に係るチップ支持基板2または42によれば、基板上に複数のチップに対応する複数の親水性領域4または44(親液性領域)が形成されている。また、基板上であって複数の親水性領域4または44それぞれ内に、複数のチップに静電力を発生させる電極6または46が形成されている。
【0162】
このようなチップ支持基板を用い、複数の親水性領域4または44上にそれぞれ液体15を介し複数のチップ3Aまたは33Aを配置する。電極6または46に電圧を印加することにより電極6または46に対応するチップ3Aまたは33Aに静電力を発生させる。
【0163】
例えば、対応するチップ3Aまたは33Aがチップ支持基板2または42に吸着するように静電力を発生させる。これにより、複数のチップ3Aまたは33Aをチップ支持基板2または42に吸着するときに、液体15の表面張力に加え静電吸着により、チップ3Aまたは33Aを吸着できる。よって、転写工程等の以降の工程においてチップの整列状態が悪化することを抑制できる。このように、チップのアライメント精度を向上できる。さらに、電極6または46に電圧を印加することにより、多くのチップを一括で吸着させることができる。よって、スループットを向上できる。
【0164】
例えば、液体15が存在する状態で陽極6Aまたは46Aと陰極6Bまたは46Bとに電圧を供給することにより、対応するチップ3Aまたは33Aの中心が陰極と陽極との間に配置するように静電力を発生させる。これにより、チップ3Aまたは33Aは液体15の表面張力に加え、静電力によりチップ3Aが電極6または46に位置合わせされる。よって、チップ3Aまたは33Aのチップ支持基板2または42へのアライメント精度がより向上する。
【0165】
実施形態および変形例3のように、チップ支持基板42に吸着された複数のチップ3A上にそれぞれチップ3Bを積層することにより三次元集積回路を形成することができる。この方法では、チップ3Aをトランスファーしないため、トランスファーによるチップ3Aのアライメントずれを抑制できる。また、トランスファー用の基板を用いなくともよい。
【0166】
変形例1および2のように、チップ支持基板42に吸着された複数のチップ33Aを接着ウェハ43等の別の基板にトランスファーする。接着ウェハ43にトランスファーされた複数のチップ33Aを半導体ウェハ32にトランスファーする。このように、三次元集積回路を形成することができる。この方法では、実施形態および変形例3のようにチップ3Aに電極6等を形成しなくともよい。また、実施形態および変形例3においては、基板にストレスが蓄積され易いが、変形例1および2では、基板にストレスが蓄積され難い。
【0167】
変形例4のように、チップ支持基板42に吸着された複数のチップ33Aを半導体ウェハ32上にトランスファーする。このように、三次元集積回路を形成することができる。この方法では、変形例1および2に比べトランスファーの回数を削減できる。
【0168】
また、複数の親水性領域内に陰極と陽極とが形成されている。これにより、
図9のように、チップに電圧を印加することなく、チップを静電吸着することができる。
【0169】
さらに、
図39(a)のように、複数の親水性領域44それぞれ内に、基板の上面に平行な第1方向(例えば
図39(a)の上下方向)に形成された陽極46Aと陰極46Bと、上面に平行であり第1方向に交差する第2方向(例えば
図39(a)の左右方向)に形成された陽極46Aと陰極46Bと、が形成されている。これにより、
図39(a)および35(b)のように、チップ33Aのアライメント精度を向上できる。
【0170】
また、
図40(a)および
図40(b)のように、制御部49は、電極46のうち、陽極46Aと陰極46Bと、の配置を任意に設定する。これにより、チップに加わる静電力を任意に設定できる。
【0171】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。